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特開2022-158109磁気マーカシステム、及び磁気マーカシステムの設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158109
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】磁気マーカシステム、及び磁気マーカシステムの設計方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G01R33/02 Q
G01R33/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062795
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA04
2G017AD69
2G017CB18
2G017CB23
2G017CD02
(57)【要約】
【課題】磁気マーカシステムにおいて磁気マーカの仕様を適切に設定するための設計方法を提供すること。
【解決手段】路面53Sに配設する個片状の磁気マーカ10の仕様を設定するための設計方法において、各車両2において想定される磁気センサの取付高さの範囲のうち、最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの進行方向における第1の分布と、1点の磁気発生源から磁気が発生すると仮定した場合に最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの進行方向における分布を表す第2の分布と、の相関係数に基づいて磁気マーカ10の仕様を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサを備える車両が検出できるように走路の表面をなす路面に、個片状あるいは柱状の磁石である磁気マーカが配設された磁気マーカシステムであって、前記路面を基準とした前記磁気センサの取付高さが車両の種類に応じて異なっており、
各車両において想定される前記磁気センサの取付高さの範囲のうち、最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向における分布を表す第1の分布と、
磁気発生源としての前記磁気マーカを磁気双極子に置き換えた場合に、前記最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向に相当する方向における分布を表す第2の分布と、
が近似している度合いに基づいて個片状の前記磁気マーカの仕様が設定されている磁気マーカシステム。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の分布及び前記第2の分布は、鉛直方向の磁気成分の大きさの分布であり、前記第2の分布は、前記磁気双極子周りの磁気分布である磁気マーカシステム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記近似している度合いと、
前記磁気マーカの真上において、前記磁気センサの取付高さの範囲のうちの最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさと、
の組合せに基づいて個片状の前記磁気マーカの仕様が設定されている磁気マーカシステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、前記近似している度合いは、前記第1の分布と、前記第2の分布と、の相関係数である磁気マーカシステム。
【請求項5】
請求項4において、前記磁気センサに対面する前記磁気マーカの表面のサイズ的な仕様として、前記相関係数が所定の係数値以上あるいは所定の係数値を超えており、かつ、前記磁気マーカの直上において、前記磁気センサの取付高さの範囲のうちの最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさが最も大きくなるような、大きさが設定されている磁気マーカシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、前記磁気マーカの鉛直方向の寸法の仕様として、前記最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさが所定の大きさ以上あるいは所定の大きさを超えるような、寸法が設定されている磁気マーカシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、前記磁気マーカは円形状である磁気マーカシステム。
【請求項8】
磁気センサを備える車両が検出できるように走路の表面をなす路面に、個片状あるいは柱状の磁石である磁気マーカを配設する際の該磁気マーカの仕様を設定する方法であって、前記路面を基準とした前記磁気センサの取付高さが車両の種類に応じて異なっており、
各車両において想定される前記磁気センサの取付高さの範囲のうち、最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向における分布を表す第1の分布と、
磁気発生源としての前記磁気マーカを磁気双極子に置き換えた場合に、前記最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向に相当する方向における分布を表す第2の分布と、
が近似している度合いに基づいて個片状の前記磁気マーカの仕様を設定する磁気マーカシステムの設計方法。
【請求項9】
請求項8において、前記第1の分布及び前記第2の分布は、鉛直方向の磁気成分の大きさの分布であり、前記第2の分布は、前記磁気双極子周りの磁気分布である磁気マーカシステムの設計方法。
【請求項10】
請求項8または9において、前記近似している度合いと、
前記磁気マーカの真上において、前記磁気センサの取付高さの範囲のうちの最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさと、
の組合せに基づいて個片状の前記磁気マーカの仕様を設定する磁気マーカシステムの設計方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項において、前記近似している度合いは、前記第1の分布と、前記第2の分布と、の相関係数である磁気マーカシステムの設計方法。
【請求項12】
請求項11において、前記磁気センサに対面する前記磁気マーカの表面のサイズ的な仕様として、前記相関係数が所定の係数値以上あるいは所定の係数値を超えており、かつ、前記磁気マーカの直上において、前記磁気センサの取付高さの範囲のうちの最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさが最も大きくなるような、大きさを設定する磁気マーカシステムの設計方法。
【請求項13】
請求項11において、前記磁気センサに対面する前記磁気マーカの表面のサイズ的な仕様として、前記相関係数が所定の係数値の範囲に属するか、あるいは前記相関係数が所定の係数値となるような、大きさを設定する磁気マーカシステムの設計方法。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか1項において、前記磁気マーカの鉛直方向の寸法の仕様として、前記最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさが所定の大きさ以上あるいは所定の大きさを超えるような、寸法を設定する磁気マーカシステムの設計方法。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか1項において、前記磁気マーカは円形状である磁気マーカシステムの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走路に磁気マーカが配設された磁気マーカシステム、及び磁気マーカシステムの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走路に配設された磁気マーカを含む磁気マーカシステムが知られている(例えば特許文献1及び2参照。)。磁気マーカシステムでは、車両の移動を自動化したり、車両の運転を支援するために、磁気マーカが利用される。磁気マーカシステムを利用する車両は、例えば、車体の底面に取り付けられた磁気センサを備えており、路面に配設された磁気マーカを磁気的に検出する。
【0003】
磁気マーカシステムを利用する車両にバリエーションがあって、磁気センサの取付高さが様々である場合がある。このような場合、磁気センサの取付高さに応じて磁気マーカの検出難易度に差が生じ、磁気センサの取付高さが高くなるほど検出難易度が高くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-078910号公報
【特許文献2】特開2019-137521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の磁気マーカシステムでは、次のような問題がある。すなわち、車両の種類によって磁気センサの取付高さにばらつきがある場合に、磁気マーカの仕様をどのように設定すれば良いかの判断が難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、磁気マーカの仕様が適切に設定された磁気マーカシステム、及び磁気マーカの仕様を適切に設定するための磁気マーカシステムの設計方法、を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、磁気センサを備える車両が検出できるように走路の表面をなす路面に、個片状あるいは柱状の磁石である磁気マーカが配設された磁気マーカシステムであって、前記路面を基準とした前記磁気センサの取付高さが車両の種類に応じて異なっており、
各車両において想定される前記磁気センサの取付高さの範囲のうち、最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向における分布を表す第1の分布と、
磁気発生源としての前記磁気マーカを磁気双極子に置き換えた場合に、前記最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向に相当する方向における分布を表す第2の分布と、
が近似している度合いに基づいて個片状の前記磁気マーカの仕様が設定されている磁気マーカシステムにある。
【0008】
本発明の一態様は、磁気センサを備える車両が検出できるように走路の表面をなす路面に、個片状あるいは柱状の磁石である磁気マーカを配設する際の該磁気マーカの仕様を設定する方法であって、前記路面を基準とした前記磁気センサの取付高さが車両の種類に応じて異なっており、
各車両において想定される前記磁気センサの取付高さの範囲のうち、最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向における分布を表す第1の分布と、
磁気発生源としての前記磁気マーカを磁気双極子に置き換えた場合に、前記最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの前記磁気マーカの径方向に相当する方向における分布を表す第2の分布と、
が近似している度合いに基づいて個片状の前記磁気マーカの仕様を設定する磁気マーカシステムの設計方法にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る磁気マーカシステムは、磁気センサの取付高さの範囲のうちの最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの分布を表す第1の分布を考慮して設計されたシステムである。この磁気マーカシステムでは、磁気発生源としての磁気マーカを磁気双極子に置き換えた場合に前記最小の取付高さの位置に作用する磁気の大きさの分布を表す第2の分布と、上記の第1の分布と、が近似している度合いに基づいて、個片状あるいは柱状の磁石である磁気マーカの仕様が設定されている。本発明に係る磁気マーカシステムの設計方法によれば、磁気センサの最小取付高さという磁気センサ側の仕様に応じて、磁気マーカの仕様を適切に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】磁気マーカシステムの説明図。
図2】磁気マーカの上面図及び側面図。
図3】無人搬送車を示す斜視図。
図4】搬送かごを示す斜視図。
図5】無人搬送車の底面図。
図6】無人搬送車の電気的構成を示すブロック図。
図7】磁気マーカを通過する際、磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの変化を表す分布を示すグラフ。
図8】磁気マーカを通過する際、進行方向の磁気勾配の変化を示すグラフ。
図9】磁気マーカが作用する磁束密度の高さ方向の減衰度合いを示すグラフ。
図10】磁気マーカを通過する際、取付高さ10mmの磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの分布を示すグラフ。
図11】磁気マーカを通過する際、取付高さ20mmの磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの分布を示すグラフ。
図12】磁気マーカを通過する際、取付高さ50mmの磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの分布を示すグラフ。
図13】磁気マーカを通過する際に磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの変化を表す分布と、磁気マーカの径方向に相当する方向における磁気双極子周りの磁気分布と、の相関の度合いを表す相関係数と、磁気センサの取付高さと、の関係を示すグラフ。
図14】磁気マーカを通過する際に磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの変化を表す分布と、磁気マーカの径方向に相当する方向における磁気双極子周りの磁気分布と、の相関の度合いを表す相関係数と、磁気マーカの直径と、の関係を示すグラフ。
図15】磁気マーカの厚さと、高さ200mmに作用する磁束密度と、の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
磁気双極子とは、正負の磁極の対を意味している。そして、磁極双極子周りの磁気分布とは、正負の磁極の対により形成される磁気の大きさの分布を意味している。磁気双極子周りの磁気分布は、磁気双極子をなす磁極の大きさに関係なく、磁極双極子をなす磁極が、その中心に位置するものとした磁気分布である。磁気双極子の磁気分布は、磁極の中心をなす一点から磁力線が湧き出す場合の磁気分布であると言える。
【0012】
公共の道路(走路の一例)を通行する車両については、例えば道路交通に関する法規等により、最低地上高の仕様が予め定められている。車両の最低地上高を下回る高さに磁気センサを取り付けることはできないので、各車両の最低地上高が、磁気センサを取り付けることができる最も低い高さとなる。例えば自家用で利用される車両の場合、スポーツカーやセダンやSUVなどの車種(車両の種類)に応じて最低地上高が様々である。例えば日本の交通法規では、最低地上高90mm以上と定められている。一方、荷物の運搬等に利用される作業車両は、最低地上高が高い傾向にある。例えば土砂などを運搬するダンプカーなどは、最低地上高が250mm近くに達している。例えば日本の道路を通行する車両の場合、磁気センサの取付高さが90mm~250mm程度の範囲となる。
【0013】
工場などの施設内を移動する無人搬送車(AGV、Automated Guided Vehicle)などの車両の場合、公共の道路を通行する車両と比べて、車両の走行速度が比較的低いといった実情がある。また、工場内の通路は、公共の道路と比べて、メンテナンス等の管理が比較的容易であるといった実情がある。それ故、工場内の通路のみを移動する車両の場合、最低地上高をより低く設定でき、より低い位置に磁気センサを取付け可能である。
【0014】
工場では、多種多様な部品や材料が取り扱われ、部品や材料の運び方も多種多様である。多種多様な部品や材料を運搬するため、様々な無人搬送車が利用されている工場もある。無人搬送車であっても、車両の種類毎に最低地上高に違いがあり得る。そのため、無人搬送車向けの磁気マーカシステムであっても、システム設計において、磁気センサの取付高さのばらつきの考慮が必要になる。
【0015】
磁気マーカは、個片状あるいは柱状の磁石である。磁石そのものが磁気マーカであっても良いし、コーティング層や樹脂モールド層や複合材料よりなる層などを磁石の表面の一部に設けた磁気マーカであっても良い。これらの層を設ける磁石の表面は、全面であっても良く、表面であっても良く、裏面であっても良く、外周面であっても良い。
【0016】
なお、磁気センサの最小の取付高さの位置に作用する磁気としては、例えば、鉛直方向の磁気成分や、車両の前後方向に当たる進行方向の磁気成分や、車両の幅方向に当たる左右方向の磁気成分を採用することも良い。鉛直方向および幅方向の磁気成分については、磁気マーカを磁気双極子に置き換えた場合の磁気マーカの径方向に相当する方向における磁気の大きさの分布(第2の分布)が、正規分布に近い分布となる。進行方向の磁気成分については、この分布が正弦波形に近い分布となる。
【実施例0017】
(実施例1)
本例は、無人搬送車2などの車両が磁気マーカ10を利用して移動する磁気マーカシステム1に関する例である。この内容について、図1図15を参照して説明する。
【0018】
磁気マーカシステム1(図1)は、無人搬送車2を利用する工場に導入されたシステムである。工場内には、生産機械や生産ラインなど各種の生産設備(図示略)が設置されている。隣り合う生産設備の間には、人が移動したり、生産設備に供給する部品を運搬したり、加工後の部品を運搬するための通路(走路の一例)53が設けられている。
【0019】
工場内の通路53には、無人搬送車2や巡回車両(図示略)などの車両の自律的な移動を実現するための磁気マーカ10が配列されている。磁気マーカ10は、個片状をなし、通路53の表面をなす路面53Sに、間隔を空けて配列されている。本例の磁気マーカシステム1では、無人搬送車2などの車両が磁気マーカ10を検出しながら、例えば、磁気マーカ10が配列されたライン10Lに沿って移動する。
【0020】
磁気マーカ10は、図2のごとく、直径50mm、厚さ2.6mmのシート状をなし、路面53Sに貼り付け可能である。磁気マーカ10は、厚さ2.6mmの磁石シート10Sそのものである。なお、磁石シート10Sの表面に保護層が形成された磁気マーカを採用することも良い。保護層として、例えば、ガラス繊維に樹脂を含浸させた複合材料による層を採用すれば、防滑性や耐摩耗性の向上を実現できる。
【0021】
磁石シート10Sは、等方性フェライトラバーマグネットをシート状に成形した磁石である。等方性フェライトラバーマグネットは、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた磁石である。この磁石の最大エネルギー積(BHmax)は、6.4kJ/立方メートルである。
【0022】
この磁気マーカ10の表面の磁束密度Gsは約50ミリテスラである。例えばオフィス等のホワイトボードや家庭の冷蔵庫の扉等に貼り付けて使用されるマグネットシートや、車両ボディに貼り付ける初心者マーク等のマグネットシート等は、表面の磁束密度が20~40ミリテスラ程度である。これらのマグネットシートとの比較により、本例の磁気マーカ10が発生する磁力について、金属物を吸着する一般的な磁石としては機能できない程の微弱な磁力であることを直感的に把握できる。
【0023】
なお、本例の磁気マーカ10に代えて、2枚の磁石シート(図示略)を貼り合わせた磁気マーカを採用することも良い。この場合、2枚の磁石シートの間に、シート状のRFIDタグ(Radio Frequency Identification Tag、無線タグ)を挟み込むことも良い。タグリーダを備える車両であれば、無線給電によりRFIDタグを動作させ、位置情報などのタグ情報を無線通信により取得できる。磁石シート10Sは、酸化鉄の磁粉を高分子材料中に分散させたシート状の磁石であり、導電性が低く無線給電時に渦電流等が生じ難いという電気的特性を有する。この場合、RFIDタグは、2枚の磁石シート10Sに挟まれた状態であっても、無線伝送された電力を効率良く受電できる。
【0024】
無人搬送車2(図3)は、搬送かご4(図4)を連結可能な自走車両である。無人搬送車2の形状は、前後50cm、幅40cm、高さ38cmの箱型である。無人搬送車2は、搬送かご4の床下に潜り込んだ状態で搬送かご4を連結して牽引可能である(図1参照。)。無人搬送車2の上面には、昇降可能な連結ピン2Pが設けられている。この連結ピン2Pが上方に突出することで、搬送かご4を連結できる。
【0025】
搬送かご4は、フレーム構造の台車である。4隅の鉛直方向のメインパイプ40の下端には、それぞれ、自在車輪401が取り付けられている。搬送かご4では、これら4本のメインパイプ40により、部品等を載置するための底板42が支持されている。底板42の高さは、路面53Sから約40cmである。路面53Sと底板42との間隙のスペースは、無人搬送車2が下側に潜り込むスペースである。底板42には、無人搬送車2の連結ピン2Pの挿入孔420が穿設されている。
【0026】
搬送かご4では、底板42の上側に、パイプによる骨組みによってかご状の載置空間が形成されている。底板42の下側では、搬送かご4の両側面に当たる箇所に、それぞれ、水平なガイドバー44が設けられている。左右のガイドバー44の間隔は、約43cmである。無人搬送車2が連結したとき、左右一対のガイドバー44が、幅40cmの無人搬送車2を挟み込む状態となる。左右一対のガイドバー44は、搬送かご4と無人搬送車2との相対回転を規制するために役立つ。
【0027】
無人搬送車2は、図5の底面図のごとく、個別制御が可能な左右一対の駆動輪26L・Rと、前後一対の自在車輪27F・Rと、を備えている。駆動輪26L・Rは、それぞれ、駆動モータ260L・Rによって個別に回転駆動される。また、車体の前後方向において、前側の自在車輪27Fと、左右一対の駆動輪26L・Rと、の間に当たる位置には、磁気マーカ10を検出するためのセンサアレイ21が配置されている。
【0028】
無人搬送車2は、図6に示す電気的な構成を備えている。無人搬送車2は、磁気センサCnを含むセンサアレイ21、画像センサ231や超音波センサ233などの各種のセンサ、制御回路20等を備えている。制御回路20は、左右の駆動輪26L・Rを回転駆動する駆動モータ260L・Rや、連結ピン2Pを昇降させる昇降モータ251等を制御する回路である。
【0029】
制御回路20は、左右の駆動輪26L・Rを個別に回転駆動することで、無人搬送車2を移動させる。例えば、左右の駆動輪26L・Rを同じ速度で回転させれば、無人搬送車2を直線的に移動させることができる。例えば、左右の駆動輪26L・Rを反対方向に回転させれば、無人搬送車2をその場で回転させることが可能である。
【0030】
制御回路20は、磁気マーカ10に対する無人搬送車2の横ずれ量を抑制するよう、無人搬送車2の進行方向を制御する。このような制御によれば、磁気マーカ10が配列されたライン10Lに沿うように無人搬送車2を移動させることが可能である。さらに、制御回路20は、超音波センサ233や画像センサ231による周囲の障害物の検知結果等に応じて、停止制御を含めて速度の制御を実行する。
【0031】
センサアレイ21は、複数の磁気センサCnが一直線上に配列された棒状のセンサユニットである。センサアレイ21は、各磁気センサCnによる磁気計測値を処理する検出処理回路212を備えている。センサアレイ21は、車幅方向に沿うように取り付けられている。磁気センサCnとしては、例えば、公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出する高感度のMIセンサなどが好適である。MI効果は、例えばアモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという電磁気的な効果である。
【0032】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±50ミリテスラであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.2マイクロテスラという高感度のセンサである。発明者らは、このような磁気センサの磁気的特性に鑑み、磁気マーカ10を確実性高く検出するために必要な磁気の大きさ(磁束密度)の閾値の条件として、0.2ミリテスラ以上であることを設定している。この0.2ミリテスラの閾値(所定の大きさの一例)は、磁気発生源でもある生産設備に取り囲まれた環境下であっても確実に磁気マーカ10を検出できるよう、発明者らが長年の経験や実証実験を通じて定める値である。
【0033】
センサアレイ21では、磁気の検出方向が一致するように各磁気センサCn(nは1~15までの整数。)が組み込まれている。さらに、センサアレイ21の各磁気センサCnが鉛直方向の磁気成分を検出できるよう、無人搬送車2にセンサアレイ21が取り付けられている。通路53の路面53Sを基準としたセンサアレイ21(磁気センサCn)の取付高さは50mmである。
【0034】
センサアレイ21が備える検出処理回路212は、磁気計測値の時間的な差分を各磁気センサCn毎に演算すると共に、車幅方向に配列された磁気センサCnのうちの隣り合う磁気センサCnの磁気計測値の位置的な差分を演算する。各磁気センサCn毎の磁気計測値の時間的な差分は、無人搬送車2の進行方向の磁気勾配を示す指標である。隣り合う磁気センサCnの磁気計測値の位置的な差分は、無人搬送車2の車幅方向の磁気勾配を示す指標である。
【0035】
無人搬送車2が磁気マーカ10を通過する際、磁気マーカ10の直上を通過する磁気センサによる鉛直方向の磁気計測値の理想的な変化を表す分布(第2の分布の一例)は、図7のごとく、磁気マーカ10の直上がピークである正規分布に近い磁気双極子周りの磁気分布である。同図中の横軸の進行方向は、磁気マーカ10の径方向に相当している。同図中の縦軸は、磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさ(磁気センサによる磁気計測値の大きさ)を示している。上記の理想的な分布は、磁気発生源である磁気マーカ10を磁気双極子に置き換えた場合の分布を意味している。磁気マーカ10が配設された路面53Sから磁気センサが十分に離れている場合、磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの分布は理想的な分布に近くなる。
【0036】
また、図7に例示する理想的な分布の場合、各磁気センサCnの磁気計測値の時間的な差分である進行方向の磁気勾配は、図8のごとく、磁気マーカ10の手前側に磁気センサが位置するか、磁気マーカ10を通り過ぎた位置に磁気マーカがあるか、に応じて正負が反転する正弦波形のようになる。無人搬送車2が磁気マーカ10の直上を通過するときの進行方向の磁気勾配は、磁気マーカ10の直上の位置でゼロを交差するように変化する。
【0037】
センサアレイ21が備える検出処理回路212(図6)は、進行方向の磁気勾配(図8)の正負の反転を検出することで磁気マーカ10を検出する。無人搬送車(車両)2の進行方向において、この進行方向の磁気勾配の正負が反転する位置が、磁気マーカ10の直上に当たる位置である。
【0038】
磁気マーカ10の直上にセンサアレイ21が位置するとき、磁気マーカ10に対して左右どちら側に位置する磁気センサであるかに応じて、上記の車幅方向の磁気勾配の正負が反転する。検出処理回路212は、例えば、車幅方向の磁気勾配の正負の反転を検出することで、車幅方向における磁気マーカ10の位置を特定する。検出処理回路212は、車幅方向における磁気マーカ10の位置を特定することで、磁気マーカ10に対する車両の車幅方向のずれ量(横ずれ量)を計測する。
【0039】
次に、以上のように構成された本例の磁気マーカシステム1において磁気マーカ10の仕様を設定するための設計方法について説明する。本例の設計方法では、車両の種類によってばらつきがある磁気センサの取付高さの範囲を考慮して、磁気マーカ10の仕様が設定されている。
【0040】
例えば無人搬送車2などの車両には、用途等に応じて様々な種類があり、底面の高さの違いがある。センサアレイ2は車両の底面に取り付けられるため、各車両の底面の高さに応じて磁気センサの取付高さが異なってくる。また、工場内の車両の移動ルートは、車両毎に設定され、車両側に求められる最低地上高がルート毎に異なっている。例えば、移動ルートの中には、段差を含むルートもある。段差を含む移動ルートが設定される車両については、磁気センサ(センサアレイ)が段差と干渉するおそれを未然に回避できるよう、磁気センサの取付高さを高くする必要がある。これらの事情により、本例の構成では、各車両において想定される磁気センサの取付高さの範囲が30~200mmになっている。
【0041】
本例では、磁気マーカをなす磁石の磁気的特性に基づいて、磁気マーカ10の仕様が設定されている。そこで、磁気マーカ10の仕様の設計方法の説明に先立ち、まず、図9図13を参照して磁気マーカの磁気的特性を説明する。これらの図は、コンピュータシミュレーションによる計算結果を示す図である。なお、コンピュータシミュレーションを利用するに当たっては、一部のシミュレーション条件下の実証実験によりシミュレーションの精度を予め確認している。
【0042】
図9は、磁気マーカ10の表面(磁石シート10Sの表面)の磁束密度が同じで直径が異なる数種類の磁気マーカについて、高さ方向における磁束密度の減衰の度合いを示すグラフである。同図中の凡例には、プロットの種類毎に、磁気マーカの直径と厚さを示している。例えば、Φ80T0.8は、直径80mmで、厚さが0.8mmであることを示している。各磁気マーカの厚さは、表面の磁束密度がいずれも10ミリテスラとなるように設定されている。
【0043】
図9によれば、磁気マーカの直径に応じて、高さ方向の磁束密度の減衰の度合いが相違しており、直径が大きいほど減衰の度合いが抑制されていることがわかる。つまり、磁気センサに対面する磁気マーカの表面のサイズ的な仕様である直径が大きいほど、表面の磁束密度を抑えながら、磁気センサに対して大きな磁気を作用でき、有利である。
【0044】
図10図12は、直径100mmの磁気マーカを車両が通過する際、磁気センサが検出する鉛直方向の磁気計測値の変化を表す分布を示すグラフである。これらの図の横軸は、磁気マーカの径方向に相当する車両の進行方向を示し、ゼロ点が磁気マーカの直上の位置に対応している。図10図12の磁気計測値の分布は、磁気センサの取付高さの位置に作用する磁気(鉛直方向の磁気成分)の大きさの磁気マーカの径方向における分布(第1の分布の一例)である。
【0045】
図10図12では、磁気センサの取付高さが異なっている。図10は、磁気センサの取付高さが10mmのときの分布を示している。図11は、磁気センサの取付高さが20mmのときの分布を示している。図12は、磁気センサの取付高さが50mmのときの分布を示している。図10図12では、磁気マーカの取付高さの影響により、鉛直方向の磁気計測値の分布(鉛直方向の磁気成分の大きさの分布)に、形状的な違いが生じている。
【0046】
図10図12の比較に基づけば、磁気センサの取付高さが高くなると、鉛直方向の磁気計測値の分布(第1の分布の一例)が、図7に例示した理想的な磁気双極子周りの磁気分布(第2の分布の一例)に近づく一方、磁気センサの取付高さが低くなると、鉛直方向の磁気計測値の分布が理想的な磁気双極子周りの磁気分布から乖離することがわかる。特に、取付高さ10mmの図10の波形では、磁気マーカの外縁に当たる位置、すなわちゼロ点の前後50mmの各位置の近辺に、磁気マーカの直上に当たるゼロ点での磁気計測値よりも大きなピーク値が現れている。
【0047】
鉛直方向の磁気計測値の分布が正規分布に近い磁気双極子周りの磁気分布(図7参照。)から乖離する場合、進行方向の磁気勾配が正弦波形(図8参照。)に近い波形(分布)を示さなくなる。そうすると、進行方向の磁気勾配について、磁気マーカの直上に当たる位置で現れるはずのゼロクロスの判別が難しくなり、磁気マーカの検出確実性が損なわれる。
【0048】
なお、発明者らは、シミュレーション演算や検証実験等を通じて、鉛直方向の磁気成分の大きさの分布(第1の分布の一例)と、理想的な分布である正規分布に近い磁気双極子周りの磁気分布(第2の分布の一例)と、の正規化相関の度合い(近似している度合い)を表す相関係数が0.9以上であれば、磁気マーカ10の検出精度に対する影響を十分に抑制できることを実験的に確認している。そこで、本例では、この相関係数が0.9以上であることを、磁気センサ側の要求仕様として設定している。
【0049】
図13は、磁気マーカを通過する際の鉛直方向の磁気計測値の分布と、正規分布に近い磁気双極子周りの磁気分布と、の正規化相関による相関係数が、磁気センサの取付高さに応じてどのように変化するかを表すグラフである。同図では、直径20mm、50mm、100mmの3種類の磁気マーカの結果を図示してある。同図によれば、いずれの大きさの磁気マーカも、磁気センサの取付高さが低いと相関係数が小さくなり、磁気センサの取付高さが高くなるにつれて相関係数が次第に大きくなることがわかる。例えば0.9以上の相関係数を実現できる磁気センサの取付高さは、磁気マーカの直径が大きいほど高くなることがわかる。
【0050】
ここで、本例の磁気マーカシステム1における磁気センサ側の要求仕様をまとめておく。上記のごとく、各車両(無人搬送車2)において想定される磁気センサの取付高さの範囲は、30~200mmの範囲である。磁気センサが最小の取付高さ(30mm)の場合、磁気マーカを通過する際に磁気センサに作用する磁気の大きさの分布が、理想的な正規分布から乖離する度合いが最も大きくなる。そこで、上記のごとく本例では、最小の取付高さの磁気センサに作用する磁気の大きさの分布と、正規分布に近い磁気双極子周りの磁気分布と、が近似している度合いを表す相関係数が、0.9(所定の係数値の一例)以上であるという要求仕様を設定している。
【0051】
一方、磁気センサが最大の取付高さ(200mm)の場合、磁気マーカから磁気センサに作用する磁気の大きさが不足して、磁気マーカの検出確実性が損なわれるおそれがある。磁気マーカを確実に検出するための安全マージン等を考慮し、上記のごとく本例では、磁気センサの最大の取付高さの位置に作用するべき磁束密度として、0.2ミリテスラという所定の大きさ以上であるという要求仕様を設定している。
【0052】
本例における直径50mm、厚さ2.6mmのシート状をなし、表面の磁束密度Gsが50ミリテスラという磁気マーカの仕様は、以上のような磁気センサ側の要求仕様に鑑みて設定された仕様である。この磁気マーカシステムの設計方法について、図14及び図15を参照して説明する。
【0053】
図14は、磁気マーカを通過する際に磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの変化を表す分布(第1の分布の一例)と、理想的な分布である磁気双極子周りの磁気分布(第2の分布の一例)と、の正規化相関による相関係数が、磁気マーカの直径に応じてどのように変化するかを示すグラフである。同図における磁気センサの取付高さは30mmである。30mmの磁気センサの取付高さは、本例の磁気マーカシステム1における磁気センサの取付高さの範囲である30~200mmにおける最小の取付高さである。
【0054】
図14によれば、磁気マーカの直径が大きくなるに従って、上記の相関係数が次第に低下する傾向を明確に把握できる。また、磁気センサの取付高さが30mmの場合、磁気マーカの直径が50mmを超えたときに相関係数が0.9を下回ることが分かる。本例では、これらを根拠として、上記の相関係数が0.9(所定の係数値の一例)以上となる直径のうち、最大の直径である50mmを磁気マーカの大きさに設定している。
【0055】
このように最大の直径を選択する理由は、図9を参照して上述した磁気マーカの磁気特性にある。直径が大きいほど高さ方向における磁束密度の減衰の度合いが抑制され、磁気センサの最大の取付高さに作用する磁束密度を大きくできるからである。つまり、最大の直径を磁気マーカの大きさとして設定することは、磁気センサの最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさが最も大きくなる大きさ(直径)を設定すること、に相当している。
【0056】
図15は、直径50mmの磁気マーカの厚さに応じて高さ200mmの位置に作用する磁束密度がどのように変化するかを示している。なお、磁気センサの200mmの取付高さは、本例の磁気マーカシステム1における磁気センサの取付高さの範囲である30~200mmにおける最大の取付高さである。なお、磁気マーカの厚さは、磁気マーカの鉛直方向の寸法の一例である。
【0057】
図15によれば、磁気マーカ(磁石シート)の厚さと、高さ200mmの位置に作用する磁束密度とは、ほぼ比例関係にあることがわかる。また、磁気マーカの厚さが2.6mmのとき、高さ200mmの位置に作用する磁束密度が、上記の通り、所定の大きさとして定めた0.2ミリテスラとなっている。これにより、本例では、直径50mmの磁気マーカ(磁石シート)の厚さを2.6mmに設定している。なお、厚さを3mmに設定しても良い。2.6mmよりも厚い3mmであれば、高さ200mmの位置に作用する磁束密度が所定の大きさである0.2ミリテスラ以上となる。但し、磁気マーカを厚くすると、表面の磁力が強くなるので、過度に厚くすることは好ましくない。
【0058】
本例の磁気マーカシステム1における磁気マーカの仕様は、以上のような設計方法によって設定されている。以上の設計方法によれば、車両の種類によって磁気センサの取付高さのばらつきがある磁気マーカシステム1において、磁気マーカの仕様を適切に設定できる。
【0059】
本例では、磁気センサの最小の取付高さにおける上記の相関係数を0.9以上、かつ、最大の取付高さにおける磁束密度を0.2ミリテスラ以上、であるという磁気センサ側の要求仕様に基づき、磁気マーカの仕様を設定している。最小の取付高さにおける相関係数に関する磁気センサ側の要求仕様は、磁気マーカを検出するためのアルゴリズムの検出性能に依存しており、検出性能に応じて任意に設定すると良い。また、最大の取付高さにおける磁束密度の値についても、磁気マーカを検出する際の安全マージンの考え方や磁気センサの検出性能等に依存しており、例示した値は一例に過ぎない。
【0060】
なお、本例では、最小の取付高さの位置に作用する鉛直方向の磁気成分の大きさの分布が理想的な分布に近似している度合いと、最大の取付高さの磁気センサに作用する磁気の大きさと、の組合せに基づいて磁気マーカの仕様を設定している。すなわち、本例では、上記の相関係数が0.9以上となる直径のうち、最大の取付高さの位置に作用する磁気の大きさが最も大きくなる最大直径を、磁気マーカの表面のサイズ的な仕様として設定している。
【0061】
これに代えて、上記の近似している度合いに基づいて磁気マーカの表面のサイズ的な仕様を設定することも良い。例えば、近似している度合いとして、上記の相関係数が、0.9以上0.95未満となる磁気マーカの仕様を設定したり、この相関係数が0.9となる磁気マーカの仕様を設定すると良い。
【0062】
例えば、図14の場合であれば、相関係数0.9以上0.95未満は、概ね、磁気マーカの直径35mm~50mmの範囲に対応している。仮に相関係数1に対応する直径を選択する場合、直径が小さすぎる磁気マーカが候補に含まれる可能性が高い。一方、上記のごとく、相関係数が1を下回る領域で相関係数の範囲(所定の係数値の範囲の一例)を設定すれば、直径が過度に小さい磁気マーカを候補から除外できる。
【0063】
あるいは、図14のグラフに基づき、相関係数が0.9(所定の係数値の一例)となる直径を選択的に設定することも良い。同図の通り、磁気マーカの直径に応じた相関係数の変化は、相関係数が1に満たない範囲において、右下がりに減少する変化である。それ故、1に満たない0.9などの所定の係数値に対応する直径を選択することは、相関係数が0.9以上であって、かつ、直径が最も大きい磁気マーカを選択することに相当している。
【0064】
本例では、シート状の磁石シートあるいは磁気マーカを例示しているが、磁気マーカの形状はシート状に限定されない。柱状であっても良い。本例では、磁気センサに対面する磁気マーカの表面の形状として、円形状を例示している。磁気マーカのこの表面の形状は、円形状に限定されない。円形状に代えて、三角形や四角形や六角形などの多角形状であっても良く、長方形状であっても良く、2つの長方形状を交差させたような十字形状等であっても良い。
【0065】
本例では、鉛直方向に感度を有する磁気センサを例示している。これに代えて、互いに直交する2軸方向、あるいは互いに直交する3軸方向に感度を有する磁気センサを採用することも良い。例えば、進行方向に感度を有する磁気センサによる磁気計測値は、磁気マーカを通過する際、図8に似た変化カーブを呈する。また例えば、車幅方向に感度を有する複数の磁気センサが車幅方向に配列されたセンサアレイの場合、磁気マーカの直上に位置するとき、各磁気センサの車幅方向の磁気計測値の近似曲線は、ゼロクロスを含む正弦波形を呈する。ゼロクロスの位置を特定すれば、磁気マーカに対する横ずれ量を把握できる。
【0066】
磁気センサとしてMI素子を用いたMIセンサを例示したが、これに代えて、フラックスゲートセンサ、TMR型センサを磁気センサとして採用することもできる。2個以上の磁気センサを利用する場合には、MIセンサ、フラックスゲートセンサ、TMR型センサのうちの2種類以上を組み合わせて採用することもできる。
【0067】
磁気マーカを構成する磁石シートの磁性材料や磁石の種類は、本例には限定されない。磁性材料や磁石の種類としては、様々な材料や種類を採用できる。磁気マーカに要求される磁気的仕様や環境仕様等に応じて、適切な磁性材料や種類を選択的に決定するのが良い。
【0068】
本例は、工場内を移動する車両のシステムの例である。公道を移動する車両について本例の構成を適用することもできる。さらに、BRT(Bus Rapid Transit)などのシステムに本例の構成を適用することも良い。本例の設計方法は、磁気マーカを利用する各種のシステムについて、汎用的に適用可能である。
【0069】
なお、本例では、コンピュータシミュレーションの結果を利用して磁気マーカの仕様を選択的に決定している。コンピュータシミュレーションを利用するに当たっては、一部のシミュレーション条件下の実証実験によりシミュレーション精度を予め確認している。また、磁気マーカについては、コンピュータシミュレーションの結果に近い磁気特性が得られることを実証実験により確認している。
【0070】
相関係数を求めるための理想的な磁気分布(図7に例示した正規分布に近い磁気双極子周りの磁気分布)は、コンピュータシミュレーションによって求めた分布であっても良く、実験条件が理想的に近く制御された実験室等で予め測定された実測値の分布であっても良い。理想的な磁気分布との相関を求める磁気分布についても、コンピュータシミュレーションによる分布であっても良く、実験室等で測定された実測値の分布であっても良い。
【0071】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0072】
1 磁気マーカシステム
10 磁気マーカ
10S 磁石シート
2 無人搬送車(車両)
21 センサアレイ
Cn 磁気センサ
4 搬送かご
53 通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15