(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158383
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】無線受電装置、無線送電装置、及び無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20221006BHJP
【FI】
H02J50/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063239
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木下 岳
(72)【発明者】
【氏名】東 純史
(72)【発明者】
【氏名】内野 直孝
(72)【発明者】
【氏名】和城 賢典
(57)【要約】
【課題】電極を収容する筐体をより薄型化できる無線受電装置、無線送電装置、及び無線電力伝送システムを提供すること。
【解決手段】無線電力伝送システム100は、電界結合方式による電力の送電が可能な無線送電装置1と、無線送電装置1から伝送される電力を受電可能な無線受電装置2と、を備え、無線送電装置1は、送電側電極10と、送電側電極10に電気的に接続される送電側コイルL1と、送電側電極10を収容する送電側第1筐体110と、送電側コイルL1を収容する送電側第2筐体120と、を備え、無線受電装置2は、受電側電極20と、受電側電極20に電気的に接続される受電側コイルL2と、受電側電極20を収容する受電側第1筐体130と、受電側コイルL2を収容する受電側第2筐体140と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電側電極と、
前記受電側電極に電気的に接続される受電側コイルと、
前記受電側電極を収容する受電側第1筐体と、
前記受電側コイルを収容する受電側第2筐体と、を備え、電界結合方式による電力の受電が可能な無線受電装置。
【請求項2】
前記受電側第2筐体は、前記受電側第1筐体よりも導電性及び熱伝導性が高い請求項1に記載の無線受電装置。
【請求項3】
前記受電側第2筐体は、前記受電側電極と前記受電側コイルを接続する伝送線が挿通する挿通孔を備え、
前記挿通孔の周縁部は、少なくとも前記挿通孔の軸方向両端が曲面状に形成される請求項2に記載の無線受電装置。
【請求項4】
前記挿通孔は、前記伝送線に沿って延びるように形成され、
前記挿通孔の軸方向の長さは、前記挿通孔が形成される面の厚みよりも長い請求項3に記載の無線受電装置。
【請求項5】
送電側電極と、
前記送電側電極に電気的に接続される送電側コイルと、
前記送電側電極を収容する送電側第1筐体と、
前記送電側コイルを収容する送電側第2筐体と、を備え、電界結合方式による電力の送電が可能な無線送電装置。
【請求項6】
前記送電側第2筐体は、前記送電側第1筐体よりも導電性及び熱伝導性が高い請求項5に記載の無線送電装置。
【請求項7】
前記送電側第2筐体は、前記送電側電極と前記送電側コイルを接続する伝送線が挿通する挿通孔を備え、
前記挿通孔の周縁部は、少なくとも前記挿通孔の軸方向両端が曲面状に形成される請求項6に記載の無線送電装置。
【請求項8】
前記挿通孔は、前記伝送線に沿って延びるように形成され、
前記挿通孔の軸方向の長さは、前記挿通孔が形成される面の厚みよりも長い請求項7に記載の無線送電装置。
【請求項9】
電界結合方式による電力の送電が可能な無線送電装置と、
前記無線送電装置から伝送される電力を受電可能な無線受電装置と、を備え、
前記無線送電装置は、
送電側電極と、
前記送電側電極に電気的に接続される送電側コイルと、
前記送電側電極を収容する送電側第1筐体と、
前記送電側コイルを収容する送電側第2筐体と、を備え、
前記無線受電装置は、
受電側電極と、
前記受電側電極に電気的に接続される受電側コイルと、
前記受電側電極を収容する受電側第1筐体と、
前記受電側コイルを収容する受電側第2筐体と、を備える無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受電装置、無線送電装置、及び無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電気自動車などの普及に伴い、無線で電力を供給する無線電力伝送システムの開発が積極的になされている。例えば、特許文献1~特許文献3には、筐体内に収容される電極とコイルを有する無線送電装置や無線受電装置を備える無線電力伝送システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/046366号
【特許文献2】特開2016-115789号公報
【特許文献3】特許第5786949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電界結合方式を用いた無線電力伝送システムでは、電極の面積を大きくすれば伝送効率は向上するものの、電極を収容する筐体が大型化してしまう。例えば、装置の配置スペースが限られている機器や電気自動車等の移動体等にこの無線電力伝送システムを適用する場合は、電極を収容する筐体をより小型化することが望ましい。特許文献1~特許文献3の技術では電極を収容する筐体の厚みをより薄くするという点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、電極を収容する筐体をより薄型化できる無線受電装置、無線送電装置、及び無線電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、受電側電極と、前記受電側電極に電気的に接続される受電側コイルと、前記受電側電極を収容する受電側第1筐体と、前記受電側コイルを収容する受電側第2筐体と、を備え、電界結合方式による電力の受電が可能な無線受電装置に関する。
【0007】
前記受電側第2筐体は、前記受電側第1筐体よりも導電性及び熱伝導性が高くてもよい。
【0008】
前記受電側第2筐体は、前記受電側第1筐体側の面に形成され、前記受電側電極と前記受電側コイルを接続する伝送線が挿通する挿通孔を備え、前記挿通孔の周縁部は、少なくとも前記挿通孔の軸方向両端が曲面状に形成されてもよい。
【0009】
前記挿通孔は、前記伝送線に沿って延びるように形成され、前記挿通孔の軸方向の長さは、前記挿通孔が形成される面の厚みよりも長くてもよい。
【0010】
また本発明は、送電側電極と、前記送電側電極に電気的に接続される送電側コイルと、前記送電側電極を収容する送電側第1筐体と、前記送電側コイルを収容する送電側第2筐体と、を備え、電界結合方式による電力の送電が可能な無線送電装置に関する。
【0011】
前記送電側第2筐体は、前記送電側第1筐体よりも導電性及び熱伝導性が高くてもよい。
【0012】
前記送電側第2筐体は、前記送電側第1筐体側の面に形成され、前記送電側電極と前記送電側コイルを接続する伝送線が挿通する挿通孔を備え、前記挿通孔の周縁部は、少なくとも前記挿通孔の軸方向両端が曲面状に形成されてもよい。
【0013】
前記挿通孔は、前記伝送線に沿って延びるように形成され、前記挿通孔の軸方向の長さは、前記挿通孔が形成される面の厚みよりも長くてもよい。
【0014】
また本発明は、電界結合方式による電力の送電が可能な無線送電装置と、前記無線送電装置から伝送される電力を受電可能な無線受電装置と、を備え、前記無線送電装置は、送電側電極と、前記送電側電極に電気的に接続される送電側コイルと、前記送電側電極を収容する送電側第1筐体と、前記送電側コイルを収容する送電側第2筐体と、を備え、前記無線受電装置は、受電側電極と、前記受電側電極に電気的に接続される受電側コイルと、前記受電側電極を収容する受電側第1筐体と、前記受電側コイルを収容する受電側第2筐体と、を備える無線電力伝送システムに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電極を収容する筐体をより薄型化できる無線受電装置、無線送電装置、及び無線電力伝送システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線電力伝送システムを示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る無線電力伝送システムの回路構成の模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る無線電力伝送システムを
図1に示すXZ平面で切断した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る無線受電装置の挿通孔及びその近傍の拡大断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る無線受電装置の挿通孔及びその近傍の拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る無線受電装置の第1変形例の挿通孔及びその近傍の拡大断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る無線受電装置の第2変形例の挿通孔及びその近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態)
以下、本発明の実施形態に係る無線電力伝送システムについて説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。なお、図に示す直交座標系XYZにおいて、電極平面に平行な一方向をX軸方向、X軸方向に直交する平面内の方向をY軸方向、電極平面と直交する方向をZ軸方向とする。
【0018】
まず、本実施形態に係る無線電力伝送システム100の全体的な構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、無線電力伝送システム100の構成図である。
図2は、無線電力伝送システム100の回路構成の模式図である。
【0019】
無線電力伝送システム100は、無線送電装置1と無線受電装置2を備える。無線電力伝送システム100は、無線送電装置1と無線受電装置2を近接させた状態で電力を伝送するシステムであってもよく、受入側カプラの一対の電極間に挿入側カプラの一対の電極を挿入した状態で電力を伝送するスロットイン方式のカプラであってもよい。本実施形態では、無線送電装置1が駐車スペースの地面に設けられ、無線受電装置2が電気自動車等の移動体に搭載され、該駐車スペースに駐車中の該移動体に無線で電力を伝送するシステムを例に説明する。なお、本実施形態では、無線送電装置1が地面に設けられ、無線受電装置2が該地面の上に駐車した移動体に搭載されるので、Z軸方向は上下方向となる。
【0020】
無線送電装置1について説明する。無線送電装置1は、送電側電極10と、送電側コイルL1と、伝送線30である伝送線31~34と、電源3と、送電側第1筐体110と、送電側第2筐体120と、を備える。なお、
図1において、送電側第1筐体110、送電側第2筐体120、後述する受電側第1筐体130、及び受電側第2筐体140は一点鎖線で図示されている。
【0021】
送電側電極10は、平板状の送電側第1電極11と、平板状の送電側第2電極12を有する。送電側第1電極11と送電側第2電極12は、同一平面上(
図1ではXY平面上)に間隔を空けて配置される。
【0022】
送電側コイルL1は、送電側電極10に電気的に接続される。送電側コイルL1は、送電側第1コイルL11と、送電側第2コイルL12を有する。
【0023】
送電側第1コイルL11は、
図1及び
図2に示すように、伝送線31を介して送電側第1電極11に接続される。即ち、伝送線31は、送電側第1電極11と送電側第1コイルL11を接続する。
【0024】
送電側第2コイルL12は、
図1及び
図2に示すように、伝送線32を介して送電側第2電極12に接続される。即ち、伝送線32は、送電側第2電極12と送電側第2コイルL12を接続する。
【0025】
電源3は、送電側コイルL1及び送電側電極10に対して交流電力を供給する交流電源である。電源3は、端子4,5を有する。
図2に示すように、端子4には、伝送線33が接続される。伝送線33の端子4が接続される側とは反対側の端部には、送電側第1コイルL11が接続される。即ち、
図1及び
図2に示すように、送電側第1電極11は、伝送線31、送電側第1コイルL11、伝送線33をこの順に介して電源3に接続される。一方、端子5には、伝送線32が接続される。伝送線32の端子5が接続される側とは反対側の端部には、送電側第2コイルL12が接続される。即ち、
図1及び
図2に示すように、送電側第2電極12は、伝送線32、送電側第2コイルL12、伝送線34をこの順に介して電源3に接続される。電源3から送出された電力は、伝送線30、送電側コイルL1を介して送電側電極10に伝送される。
【0026】
送電側第1筐体110は、箱状であり、送電側電極10を収容する。送電側第2筐体120は、箱状であり、送電側コイルL1と、電源3を収容する。送電側第2筐体120は、送電側第1筐体110に隣接する位置に配置される。本実施形態では、送電側第1筐体110と送電側第2筐体120は互いに接続される。送電側第1筐体110と送電側第2筐体120の構成については後述する。
【0027】
無線受電装置2について説明する。無線受電装置2は、受電側電極20と、受電側コイルL2と、伝送線40である伝送線41~44と、受電側第1筐体130と、受電側第2筐体140を備え、負荷6に接続される。負荷6とは、例えば蓄電池であり、産業機器や携帯電子機器等に採用されている。産業機器としては、電気自動車、携帯電子機器としては、ラップトップパソコン、スマートフォン、携帯音楽プレーヤ等が挙げられる。
【0028】
受電側電極20は、平板状の受電側第1電極21と、平板状の受電側第2電極22を有する。受電側第1電極21と受電側第2電極22は、同一平面上(
図1ではXY平面上)に間隔を空けて配置される。
【0029】
受電側コイルL2は、受電側電極20に電気的に接続される。受電側コイルL2は、受電側第1コイルL21と、受電側第2コイルL22を有する。
【0030】
受電側第1コイルL21は、
図1及び
図2に示すように、伝送線41を介して受電側第1電極21に接続される。即ち、伝送線41は、受電側第1電極21と受電側第1コイルL21を接続する。
【0031】
受電側第2コイルL22は、
図1及び
図2に示すように、伝送線42を介して受電側第2電極22に接続される。即ち、伝送線42は、受電側第2電極22と受電側第2コイルL22を接続する。
【0032】
負荷6は、端子7,8を有する。
図2に示すように、端子7には、伝送線43が接続される。伝送線43の端子7が接続される側とは反対側の端部には、受電側第1コイルL21が接続される。即ち、
図1及び
図2に示すように、受電側第1電極21は、伝送線41、受電側第1コイルL21、伝送線43をこの順に介して負荷6に接続される。一方、端子8には、伝送線44が接続される。伝送線44の端子8が接続される側とは反対側の端部には、受電側第2コイルL22が接続される。即ち、
図1及び
図2に示すように、受電側第2電極22は、伝送線42、受電側第2コイルL22、伝送線44をこの順に介して負荷6に接続される。
【0033】
受電側第1筐体130は、箱状であり、受電側電極20を収容する。受電側第2筐体140は、箱状であり、受電側コイルL2と、負荷6を収容する。受電側第2筐体140は、受電側第1筐体130に隣接する位置に配置される。本実施形態では、受電側第1筐体130と受電側第2筐体140は互いに接続される。受電側第1筐体130及び受電側第2筐体140の詳細な構成については後述する。
【0034】
図1に示すように、送電側電極10と受電側電極20が互いに対向するように間隔を空けて配置することで、無線送電装置1から無線受電装置2に電界結合方式による電力の伝送が可能な状態となる。この電界結合方式による電力の伝送時において、無線送電装置1の送電側電極10に伝送された電力は、無線受電装置2の受電側電極20に伝送される。受電側電極20に伝送された電力は、伝送線40及び受電側コイルL2を介して負荷6に伝送される。
【0035】
次に、無線電力伝送システム100の電界結合方式による電力の伝送の詳細について
図2を参照しながら説明する。
【0036】
送電側電極10と受電側電極20が互いに対向した状態で電源3から電力が伝送されると、送電側第1電極11と受電側第1電極21の間に容量Cm1が形成され、送電側第2電極12と受電側第2電極22の間に容量Cm2が形成される。電源3からは交流電力が伝送されるので、容量Cm1及び容量Cm2に電荷は溜められ、あるいは放出されることで無線送電装置1から無線受電装置2に電力が伝送され、負荷6に電力が供給される。具体的には、電源3からプラス電圧が送出されて、送電側第1電極11に電源3からのプラス電荷が蓄積されると、容量Cm1を介して受電側第1電極21にマイナス電荷が誘起される。そして、マイナス電圧が無線受電装置2に伝達される。電源3からマイナス電圧が送出されて、送電側第1電極11に電源3からのマイナス電荷が蓄積されると、容量Cm1を介して受電側第1電極21にプラス電荷が誘起される。そして、プラス電圧が無線受電装置2に伝達される。そして、交流電力が無線受電装置2に伝達されることとなる。送電側第2電極12と受電側第2電極22との間においても同様に交流電力が伝達される。即ち、送電側コイルL1や受電側コイルL2、容量Cm1、容量Cm2等によって共振回路を形成し、電界結合方式によって電力を伝送している。以上のように、無線送電装置1から伝送される電力は、容量Cm1および容量Cm2を通して、無線受電装置2に伝達される。
【0037】
次に、無線受電装置2の受電側第1筐体130及び受電側第2筐体140と、無線送電装置1の送電側第1筐体110及び送電側第2筐体120の詳細な構成について
図1及び
図3を参照しながら説明する。
図3は、無線電力伝送システム100を
図1に示すXZ平面で切断した断面図である。
【0038】
まず、無線受電装置2の受電側第1筐体130及び受電側第2筐体140の構成について説明する。
【0039】
本実施形態の無線受電装置2は、移動体の底部に配置される。具体的には、受電側第2筐体140は移動体の内部に位置する。一方で、受電側第1筐体130は、給電時に受電側電極20と無線送電装置1の送電側電極10の間で容量Cm1,Cm2を形成させる必要があるので移動体の最下部又はその近傍に位置する。
【0040】
受電側第1筐体130は、受電側電極20を保持する電極保持板131と、電極保持板131に対向する第1隣接板132と、電極保持板131から第1隣接板132に延びる側板133を含んで構成される。電極保持板131、第1隣接板132、及び側板133に囲まれる内部空間134には、受電側第1電極21と、受電側第2電極22と、伝送線41,42の一部が配置される。
【0041】
電極保持板131は、無線送電装置1からの電力の受電時に、送電側第1電極11及び送電側第2電極12に対向する面である。
図3に示すように、電極保持板131の内側面には、受電側第1電極21及び受電側第2電極22が間隔を空けて取り付けられる。電極保持板131は、容量C
m1,C
m2を形成させるために、絶縁性の非金属等であることが好ましい。本実施形態の受電側第1筐体130は樹脂製である。
【0042】
第1隣接板132は、受電側第2筐体140に隣接する面である。第1隣接板132には、伝送線40が挿通する挿通孔70である挿通孔71,72が形成される。具体的には、
図3に示すように、第1隣接板132には、伝送線41が挿通する挿通孔71と、伝送線42が挿通する挿通孔72が間隔を空けて形成される。
【0043】
受電側第2筐体140は、第1隣接板132に隣接する第2隣接板141と、第2隣接板141に対向する天面142と、第2隣接板141から天面142に延びる側板143を含んで構成される。第2隣接板141、天面142、及び側板143に囲まれる内部空間144には、受電側コイルL2と、伝送線41,42の一部と、伝送線43,44と、負荷6が配置される。
【0044】
第2隣接板141は、受電側第1筐体130の第1隣接板132と接続される。
図3に示すように、第2隣接板141には、伝送線40が挿通する挿通孔80である挿通孔81,82が形成される。具体的には、
図3に示すように、第2隣接板141には、伝送線41が挿通する挿通孔81と、伝送線42が挿通する挿通孔82が形成される。挿通孔81は、その中心軸が挿通孔71の中心軸と略一致する位置に形成される。挿通孔82は、その中心軸が挿通孔72の中心軸と略一致する位置に形成される。
【0045】
本実施形態では、受電側の電界結合方式の電気回路を構成する受電側電極20と受電側コイルL2がそれぞれ異なる筐体に収容されている。この構成により、給電時に送電側電極10と対向させる必要がある受電側電極20を収容する受電側第1筐体130の厚みd1をより薄くできる。
【0046】
また、受電側第2筐体140は、受電側第1筐体130よりも導電性及び熱伝導性が高いことが好ましい。本実施形態の受電側第2筐体140は金属製である。本実施形態の受電側第2筐体140は、移動体とは別体であり、移動体の内部に配置されるが、移動体自体であってもよい。
【0047】
本実施形態では、受電側コイルL2を収容する受電側第2筐体140が金属製であり、導電性を有するので、受電側コイルL2から発生するノイズを遮蔽できる。また、受電側第2筐体140は高い熱伝導性を有するので、受電側コイルL2から発生する熱を外部に逃がすことができ、受電側コイルL2の発熱による伝送効率の低下や受電側第2筐体140自体の変形等を抑制できる。
【0048】
次に、受電側第2筐体140に形成される挿通孔80の詳細な構造について
図4を参照しながら説明する。
図4は、
図3に示す二点鎖線で囲まれた領域Aにおける無線受電装置2の挿通孔80及びその近傍の拡大断面図である。
図4では伝送線41に交流電流が流れている状態を示している。なお、挿通孔80の挿通孔81と挿通孔82は同様の構造であり、
図4に示す挿通孔81について説明し、挿通孔82についての説明は省略する。
【0049】
図4に示すように、挿通孔81の周縁部811は、少なくとも挿通孔81の軸方向DXの両端である端部812,813が曲面状に形成される。具体的には、本実施形態では、挿通孔81は、軸方向DXの両側に向かうに従って拡径するように形成される。言い換えれば、第2隣接板141に形成される挿通孔81の周縁部811は、軸方向DXの両側に向かうに従って挿通孔81の中心軸から離れるように形成される。
【0050】
ここで、受電側第2筐体140が高い導電性を有する場合において、挿通孔81の周縁部811に生じる電界集中について説明する。
図5は、軸方向DXにおいて径が一定である挿通孔81’及びその近傍の拡大断面図である。
図5に示す挿通孔81’の周縁部811’における軸方向DXの両端である端部812’,813’は、断面視において第2隣接板141’の内部空間144側の面に対して略直角に形成される。受電側第2筐体140’の導電性が高く、挿通孔81’が
図5の形状である場合、伝送線41に電流が流れると周縁部811’における端部812’、813’に電界が集中し易い。
【0051】
これに対して、本実施形態では、
図4に示すように周縁部811の端部812,813が曲面状に形成されている。この構成により、受電側第2筐体140の導電性が高い場合であっても、周縁部811の端部812,813に発生する電界集中を抑制できる。よって、受電側コイルL2から発生するノイズを受電側第2筐体140内で遮蔽しつつ、受電側電極20が収容される受電側第1筐体130へ伝送線40を挿通させるための挿通孔80に生じる電界集中の抑制できる。
【0052】
次に、無線送電装置1の送電側第1筐体110及び送電側第2筐体120について説明する。本実施形態の無線送電装置1は、移動体の駐車スペースに設けられる。具体的には、無線送電装置1は、送電側第1筐体110が送電側第2筐体120の上方に位置するように駐車スペースの地面に設置される。
【0053】
送電側第1筐体110は、送電側電極10を保持する電極保持板111と、電極保持板111に対向する第1隣接板112と、電極保持板111から第1隣接板112に延びる側板113を含んで構成される。電極保持板111、第1隣接板112、及び側板113に囲まれる内部空間114には、送電側第1電極11と、送電側第2電極12と、伝送線31,32の一部が配置される。
【0054】
電極保持板111は、無線受電装置2への電力の送電時に、受電側第1電極21及び受電側第2電極22に対向する面である。
図3に示すように、電極保持板111の内側面には、送電側第1電極11及び送電側第2電極12が間隔を空けて取り付けられる。電極保持板111は、容量C
m1、C
m2を形成させるために、絶縁性の非金属等であることが好ましい。本実施形態の送電側第1筐体110は樹脂製である。
【0055】
第1隣接板112は、送電側第2筐体120に隣接する面である。第1隣接板112には、伝送線30が挿通する挿通孔50である挿通孔51,52が形成される。具体的には、
図3に示すように、第1隣接板112には、伝送線31が挿通する挿通孔51と、伝送線32が挿通する挿通孔52が間隔を空けて形成される。
【0056】
送電側第2筐体120は、第1隣接板112に隣接する第2隣接板121と、第2隣接板121に対向する底面122と、第1隣接板112から底面122に延びる側板123を含んで構成される。第2隣接板121、底面122、及び側板123に囲まれる内部空間124には、送電側コイルL1と、伝送線31,32の一部と、伝送線33,34と、電源3が配置される。
【0057】
第2隣接板121は、送電側第1筐体110の第1隣接板112と接続される。
図3に示すように、第2隣接板121には、伝送線30が挿通する挿通孔60である挿通孔61,62が形成される。具体的には、
図3に示すように、第2隣接板121には、伝送線31が挿通する挿通孔61と、伝送線32が挿通する挿通孔62が形成される。挿通孔61は、その中心軸が挿通孔51の中心軸と略一致する位置に形成される。挿通孔62は、その中心軸が挿通孔52の中心軸と略一致する位置に形成される。なお、挿通孔60の構造は、上述した挿通孔80の構造と同様であり、その説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、送電側の電界結合方式の電気回路を構成する送電側電極10と送電側コイルL1がそれぞれ異なる筐体に収容されている。この構成により、給電時に受電側電極20と対向させる必要がある送電側電極10を収容する送電側第1筐体110の厚みd2をより薄くできる。
【0059】
また、送電側第2筐体120は、送電側第1筐体110よりも導電性及び熱伝導性が高いことが好ましい。本実施形態の送電側第2筐体120は金属製である。
【0060】
上記実施形態においては、受電側第2筐体140に形成される挿通孔80の構成について次のような変形例を採用することができる。上記説明を援用しつつ、変形例の挿通孔の構成について説明する。なお、以下の説明において、受電側第2筐体140と対応する構成については同一の規則性を有して対応する符号を付す。その説明が省略されたり、援用されたりする場合がある。また、送電側第2筐体120に形成される挿通孔60の構成についても受電側第2筐体140の以下変形例と同様の構成を適用できる。
【0061】
まず、第1変形例について、
図6を参照しながら説明する。
図6は第1変形例に係る受電側第2筐体140Aの挿通孔80A及びその近傍を示す断面図である。
【0062】
受電側第2筐体140Aは、挿通孔80Aの構成が受電側第2筐体140と主に異なる。
【0063】
図6に示すように、挿通孔81Aは、第2隣接板141Aに形成され、伝送線40が挿通する。また、挿通孔81Aの軸方向DXの長さd4は、挿通孔80Aが形成される第2隣接板141Aの厚みd3よりも長く形成される。
【0064】
挿通孔81Aは、第2隣接板141Aを貫通する貫通孔814と、第2隣接板141Aの両側の面に形成され、貫通孔814の周縁から第2隣接板141Aから離れる方向に延びる円筒部815,816と、から構成される。円筒部815,816は、第2隣接板141Aから離れるにつれて拡径するように形成される。このため、挿通孔80Aの周縁部811Aは、軸方向DXの両端である端部812A,813Aが曲面状に形成される。
【0065】
第1変形例の挿通孔80Aは例えば以下の方法によって形成してもよい。まず、第2隣接板141Aに貫通孔814を形成する。そして、貫通孔814と略等しい内径の筒状部材を貫通孔814の同軸上に位置するように第2隣接板141Aの両側の面に接続する。そして、該筒状部材の第2隣接板141Aとは反対側の端部を筒状部材が拡径する方向に折り曲げることで第2隣接板141Aから離れるにつれて拡径する円筒部815,816が形成される。
【0066】
次に、第2変形例について、
図7を参照しながら説明する。
図7は第2変形例に係る受電側第2筐体140Bの挿通孔80B及びその近傍を示す断面図である。
【0067】
受電側第2筐体140Bは、挿通孔80Bの構成が受電側第2筐体140と主に異なる。
【0068】
図7に示すように、挿通孔81Bは、第2隣接板141Bに形成され、伝送線40が挿通する。挿通孔81Bは、伝送線40に沿って延びるように形成される。挿通孔81Bの軸方向DXの長さd4は、挿通孔81Bが形成される第2隣接板141Bの厚みd3よりも長く形成される。また、挿通孔81Bの周縁部811Bは、軸方向DXの両端である端部812B,813Bが曲面状に形成される。
【0069】
具体的には、挿通孔81Bは、第2隣接板141Bを貫通する貫通孔814Bと、第2隣接板141Bの両側の面に形成され、貫通孔814Bの周縁から第2隣接板141Bから離れる方向に延びる円筒部815B,816Bと、から構成される。
【0070】
円筒部815B,816Bは、第2隣接板141B側ではその径が一定であり、軸方向DXにおける第2隣接板141Bとは反対側では第2隣接板141Bから離れるにつれて拡径する。即ち、挿通孔81Bは、その径が軸方向DXの中央側において一定であり、軸方向DXの両側において第2隣接板141Bから離れるにつれて拡径する。また、
図7に示すように、円筒部815,816Bの第2隣接板141B側における径が一定の範囲の軸方向DXの長さd5は、第2隣接板141Bの厚みd3よりも長い。
【0071】
挿通孔81Bが軸方向DXにおいて第2隣接板141Bの厚みd3よりも長く一定の径で伝送線40に沿って延びるように形成されるので、伝送線40から外部へ放射されるノイズを遮断できる。
【0072】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0073】
本実施形態に係る無線受電装置2は、受電側電極20と、受電側電極20に電気的に接続される受電側コイルL2と、受電側電極20を収容する受電側第1筐体130と、受電側コイルL2を収容する受電側第2筐体140と、を備え、電界結合方式による電力の受電が可能である。
【0074】
これにより、受電側の電界結合方式の電気回路を構成する受電側電極20と受電側コイルL2がそれぞれ異なる筐体に収容されているので、受電側第1筐体130の厚みd1をより薄くできる。例えば、上記実施形態のように無線受電装置2を移動体の底部に搭載する場合は、給電時に送電側電極10と対向させる必要がある受電側電極20を収容する受電側第1筐体130をより薄型化できるので、移動体の地上高の低下を抑制できる。
【0075】
また、本実施形態に係る無線受電装置2において、受電側第2筐体140は、受電側第1筐体130よりも導電性及び熱伝導性が高い。
【0076】
これにより、より導電性及び熱伝導性が高い筐体に受電側コイルL2を収容するので、受電側コイルL2の発熱による伝送効率の低下、筐体の変形等を抑制できるとともに、受電側コイルから発生するノイズの外部への漏れを抑制できる。
【0077】
また、本実施形態に係る無線受電装置2において、受電側第2筐体140は、受電側第1筐体130側の第2隣接板141に形成され、受電側電極20と受電側コイルL2を接続する伝送線41,42が挿通する挿通孔80を備え、挿通孔80の周縁部811は、少なくとも挿通孔80の軸方向DXの両端812,813が曲面状に形成される。
【0078】
これにより、受電側第2筐体140の導電性が高い場合であっても、伝送線41,42が挿通される挿通孔80の周縁部811の端部812,813が湾曲しているので、挿通孔の両端に発生する電界集中を抑制できる。
【0079】
また、本実施形態に係る無線受電装置2において、挿通孔80は、伝送線41,42に沿って延びるように形成され、挿通孔80の軸方向DXの長さは、挿通孔80が形成される第2隣接板141の厚みよりも長い。
【0080】
これにより、伝送線40から発生するノイズの外部への放射を抑制できる。
【0081】
本実施形態に係る無線送電装置1は、送電側電極10と、送電側電極10に電気的に接続される送電側コイルL1と、送電側電極10を収容する送電側第1筐体110と、送電側コイルL1を収容する送電側第2筐体120と、を備え、電界結合方式による電力の送電が可能である。
【0082】
これにより、送電側の電界結合方式の電気回路を構成する送電側電極10と送電側コイルL1がそれぞれ異なる筐体に収容されているので、送電側第1筐体110の厚みd2をより薄くできる。例えば、上記実施形態のように無線送電装置1を地面に設ける場合は、給電時に受電側電極20と対向させる必要がある送電側電極10を収容する送電側第1筐体110をより薄型化できるので、地面からの突出する無線送電装置1の高さを抑制できる。
【0083】
また、本実施形態に係る無線送電装置1において、送電側第2筐体120は、送電側第1筐体110よりも導電性及び熱伝導性が高い。
【0084】
これにより、より導電性及び熱伝導性が高い筐体に受電側コイルを収容するので、送電側コイルの発熱による伝送効率の低下、筐体の変形等を抑制できるとともに、送電側コイルから発生するノイズの外部への漏れを抑制できる。
【0085】
また、本実施形態に係る無線送電装置1において、送電側第2筐体120は、送電側第1筐体110側の第2隣接板121に形成され、送電側電極10と送電側コイルL1を接続する伝送線30が挿通する挿通孔60を備え、挿通孔60の周縁部は、少なくとも挿通孔60の軸方向両端が曲面状に形成される。
【0086】
これにより、送電側第2筐体120の導電性が高い場合であっても、伝送線31,32が挿通される挿通孔60の周縁部の軸方向両端が湾曲しているので、挿通孔60の両端に発生する電界集中を抑制できる。
【0087】
また、本実施形態に係る無線送電装置1において、挿通孔60は、伝送線30に沿って延びるように形成され、挿通孔60の軸方向DXの長さは、挿通孔60が形成される面の厚みよりも長い。
【0088】
これにより、伝送線30から発生するノイズの外部への放射を抑制できる。
【0089】
本実施形態に係る無線電力伝送システム100は、電界結合方式による電力の送電が可能な無線送電装置1と、無線送電装置1から伝送される電力を受電可能な無線受電装置2と、を備え、無線送電装置1は、送電側電極10と、送電側電極10に電気的に接続される送電側コイルL1と、送電側電極10を収容する送電側第1筐体110と、送電側コイルL1を収容する送電側第2筐体120と、を備え、無線受電装置2は、受電側電極20と、受電側電極20に電気的に接続される受電側コイルL2と、受電側電極20を収容する受電側第1筐体130と、受電側コイルL2を収容する受電側第2筐体140と、を備える。
【0090】
これにより、送電側電極10を収容する送電側第1筐体110と受電側電極20を収容する受電側第1筐体130をより薄型化できる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものではない。
【0092】
上記実施形態では、送電側第1筐体110は樹脂製であったが、送電側電極10を保持する電極保持板111のみを樹脂製とし、その他の面を金属製としてもよい。また、受電側第1筐体130も同様に、受電側電極20を保持する電極保持板131のみを樹脂製とし、その他の面を金属製としてもよい。
【0093】
上記実施形態では、送電側第2筐体120及び受電側第2筐体140は金属製であったが、樹脂製等の非金属製としてもよい。
【0094】
上記実施形態では、挿通孔80の周縁部811や挿通孔60の周縁部は、少なくとも軸方向DXの両端が曲面状に形成されるが、
図5に示す挿通孔80’の周縁部811’のように断面視において第2隣接板141の内部空間144側の面に対して略直角に形成されていてもよい。
【0095】
上記実施形態では、送電側第1筐体110と送電側第2筐体120又は受電側第1筐体130と受電側第2筐体140は互いに接続されているが、互いに接続されていなくてもよい。
【0096】
上記実施形態では、送電側第1筐体110と送電側第2筐体120又は受電側第1筐体130と受電側第2筐体140は互いに隣接しているが、互いに隣接させずに離隔して配置してもよい。
【0097】
上記実施形態では、送電側コイルL1や受電側コイルL2、容量Cm1、容量Cm2が直列共振回路を形成するように配置されていたが、並列共振回路を形成するように配置してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 無線送電装置
2 無線受電装置
10 送電側電極
20 受電側電極
100 無線電力伝送システム
110 送電側第1筐体
120 送電側第2筐体
130 受電側第1筐体
140 受電側第2筐体
L1 送電側コイル
L2 受電側コイル