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特開2022-158459還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物、並びにその品質評価方法および酵素反応性の判定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158459
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物、並びにその品質評価方法および酵素反応性の判定方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/048 20060101AFI20221006BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20221006BHJP
   C12N 9/04 20060101ALN20221006BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C07H19/048 CSP
A23L33/10
C12N9/04 F ZNA
C12N9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063378
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】松川 寛和
(72)【発明者】
【氏名】砂原 美子
(72)【発明者】
【氏名】大場 貴史
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 亘平
【テーマコード(参考)】
4B018
4B050
4C057
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD18
4B018ME14
4B050CC03
4B050DD02
4B050LL01
4B050LL03
4C057BB02
4C057DD03
4C057LL05
4C057LL41
4C057LL44
(57)【要約】
【課題】HPLCで測定したときの純度が高く、波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であり、且つβ-NADHに変換した際に補酵素として高い触媒活性を示し、これにより高い生理活性を有するβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物、並びにβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の品質評価方法および酵素反応性の判定方法を提供すること。
【解決手段】β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物であって、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上である化合物である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物であって、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(Nmnat)により還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(β-NADH)に変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを特徴とする化合物。
【請求項2】
HPLCで測定したときの純度が98%以上であり、且つ乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が90%以上である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
波長340nmにおけるモル吸光係数が5,500[L/(mol・cm)]以上である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
波長340nmにおけるモル吸光係数が6,000[L/(mol・cm)]以上7,000[L/(mol・cm)]以下である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
乳酸脱水素酵素が、哺乳類の心臓由来の乳酸脱水素酵素である請求項1~4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
乳酸脱水素酵素が、配列番号2のアミノ酸配列を有する請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Nmnatが耐熱性Nmnat(Thermococcus kodakaraensis TK0067遺伝子)である請求項1~6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
実質的にニコチンアミドジヌクレオチドを含まない請求項1~7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物の品質評価方法であって、
HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(Nmnat)により還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(β-NADH)に変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを指標として、前記還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物の品質を評価することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物の酵素反応性の判定方法であって、
HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(Nmnat)により還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(β-NADH)に変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを指標として、前記還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物の乳酸脱水素酵素に対する反応性を判定することを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物、並びにその品質評価方法および酵素反応性の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化型のβ-ニコチンアミドモノヌクレオチド(以下、「β-NMN」と称することがある。)は、補酵素NADの生合成中間代謝産物である。近年、β-NMNは、老化マウスにおけるインスリン分泌能の改善効果、高脂肪食や老化によってひき起こされる2型糖尿病のマウスモデルにおいてインスリン感受性や分泌を劇的に改善する効果を有すること(例えば、特許文献1参照)、サーカディアンリズムの制御に関与していること(例えば、特許文献2参照)、老化した筋肉のミトコンドリア機能を顕著に高める効果を有することなどが報告されている。さらに、β-NMNの投与により、肥満、血中脂質濃度の上昇、インシュリン感受性の低下、記憶力低下、及び黄斑変性症等の眼機能劣化といった加齢に伴う各種疾患の症状の改善や予防に有用であることも報告されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、β-NMNの投与は、生体中のNAD量を高め、サーチュイン遺伝子を活性化することより、生体の加齢に伴う身体機能の低下を抑制・遅延させ、抗老化の効果が期待されている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
また、β-NMNを医薬やサプリメント、化粧料等に適用するにあたり、β-NMNの純度を高めたり、保存安定性を向上させるために結晶化することが提案されている(例えば、特許文献5および6参照)。
【0004】
一方、還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(以下、「β-NMNH」と称することがある。)については、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(以下、「Nmnat」と称することがある。)により還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、「β-NADH」と称することがある。)に変換されること(例えば、非特許文献1参照)やNMNHが細胞内においてNADH前駆体として機能すること(例えば、非特許文献2参照)が報告されているが、β-NMNHの生理作用は明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7737158号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/123510号明細書
【特許文献3】国際公開第2014/146044号
【特許文献4】国際公開第2017/200050号
【特許文献5】特表2018-534265号公報
【特許文献6】国際公開第2018/047715号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biochemistry, 2007 April, Vol.46 No.16, pp.4912-4922
【非特許文献2】Nature metabolism, 2020 April, Vol. 2, pp.364-379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、化学的に製造したβ-NMNHや酵素学的に製造したβ-NMNHであっても同様に高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography;以下、「HPLC」と称することがある。)で測定したときの純度が高いにもかかわらず、また波長340nmにおけるモル吸光係数(分子吸光係数と称することもある。)がβ-NMNHを示す所定値であるにもかかわらず、β-NADHに変換した際に補酵素として酵素活性、即ち触媒としての活性(触媒活性)に差があり、また、β-NMNHを生体に投与した際に同じ投与量でも同様な生理作用が得られないということを見出した。すなわち、HPLCで測定したときの純度が同等であっても、また波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であっても生理活性が異なるβ-NMNHがあるため、より生理活性が高いβ-NMNHの提供が必要である。
【0008】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、HPLCで測定したときの純度が高く、波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であり、且つβ-NADHに変換した際に補酵素として高い触媒活性を示し、これにより高い生理活性を有するβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物、並びにβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の品質評価方法および酵素反応性の判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、HPLCで測定したときの純度ならびに波長340nmにおけるモル吸光係数が同等であってもβ-NADHに変換したときの触媒活性とβ-NMNHそれ自体でも生理活性が異なるのは、これら化合物中のβ-NMNHをβ-NADHに変換したときの触媒活性が異なることによるものであることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物であって、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを特徴とする化合物である。
<2> HPLCで測定したときの純度が98%以上であり、且つ乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が90%以上である前記<1>に記載の化合物である。
<3> 波長340nmにおけるモル吸光係数が5,500[L/(mol・cm)]以上である前記<1>又は<2>に記載の化合物である。
<4> 波長340nmにおけるモル吸光係数が6,000[L/(mol・cm)]以上7,000[L/(mol・cm)]以下である前記<3>に記載の化合物である。
<5> 乳酸脱水素酵素が、哺乳類の心臓由来の乳酸脱水素酵素である前記<1>~<4>のいずれかに記載の化合物である。
<6> 乳酸脱水素酵素が、配列番号2のアミノ酸配列を有する前記<5>に記載の化合物である。
<7> Nmnatが耐熱性Nmnat(Thermococcus kodakaraensis TK0067遺伝子)である前記<1>~<6>のいずれかに記載の化合物である。
<8> 実質的にニコチンアミドジヌクレオチドを含まない前記<1>~<7>のいずれかに記載の化合物である。
<9> β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の品質評価方法であって、
HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを指標として、前記β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の品質を評価することを含むことを特徴とする方法である。
<10> β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の酵素反応性の判定方法であって、
HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(Nmnat)により還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(β-NADH)に変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを指標として、前記還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物の乳酸脱水素酵素に対する反応性を判定することを含むことを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、HPLCで測定したときの純度が高く、波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であり、且つβ-NADHに変換した際に補酵素として高い触媒活性を示し、これにより高い生理活性を有するβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物、並びにβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の品質評価方法および酵素反応性の判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、試験例3-1における実施例1のβ-NMNHのNmnatによる変換反応前のHPLC溶出パターンを示す図である。
図1B図1Bは、試験例3-1における実施例1のβ-NMNHのNmnatによる変換反応後のHPLC溶出パターンを示す図である。
図2A図2Aは、試験例3-1における比較例1の1,4-ジヒドロNMNのNmnatによる変換反応前のHPLC溶出パターンを示す図である。
図2B図2Bは、試験例3-1における比較例1の1,4-ジヒドロNMNのNmnatによる変換反応後のHPLC溶出パターンを示す図である。
図3A図3Aは、試験例3-2におけるブタ心臓由来の乳酸脱水素酵素を用いた場合の結果を示すグラフである。
図3B図3Bは、試験例3-2におけるウサギ骨格筋由来の乳酸脱水素酵素を用いた場合を用いた場合の結果を示すグラフである。
図4図4は、試験例4の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(化合物)
本発明の化合物は、β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物(以下、「β-NMNH化合物」と称することがある。)であって、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上である。本発明の化合物は、波長340nmにおけるモル吸光係数がβ-NMNHを示す所定値であることが好ましい。
【0014】
β-NMNH化合物としては、いずれの方法で調製されたものであってもよい。例えば、化学合成法、酵素法等により、人工的に合成したβ-NMNHを精製したものを、有効成分として用いることができる。また、動物、植物、微生物などの天然原料から抽出・精製することによって得られたβ-NMNHを有効成分として用いることもできる。また、市販されている精製されたβ-NMNHを使用してもよい。
【0015】
β-NMNHを合成する化学合成法としては、例えば、β-NMNを還元する化学薬剤(例えば、亜ジチオン酸ナトリウム、ハイポサルファイト、チオウレアジオキサイドなど)と反応させることによりβ-NMNHを製造できる。また、酵素法としては、例えば、NADHから、NADHピロホスファターゼ(EC 3.6.1.22)によりβ-NMNHを製造できる。
【0016】
NADHピロホスファターゼの詳細は、https://www.brenda-enzymes.org/enzyme.php?ecno=3.6.1.22に記載されている。NADHピロホスファターゼの特徴としては、補酵素であるNAD(酸化型のβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)およびその還元型であるNADHの両者を基質として利用することが知られている。
【0017】
NADHピロホスファターゼの使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常100~10,000U/Lであり、1,000~5,000U/Lが好ましい。本発明において、NADHピロホスファターゼの活性単位(U)は、1分間あたり1μモルのNADを加水分解する触媒量と定義する。
前記NADHピロホスファターゼを用いる場合の反応条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0018】
前記β-NMNHは、薬理学的に許容される塩であってもよい。前記β-NMNHの薬理学的に許容される塩としては、無機酸塩であってもよく、アミンのような塩基性部位を有する有機酸塩であってもよい。このような酸塩を構成する酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。また、β-NMNの薬理学的に許容される塩としては、アルカリ塩であってもよく、カルボン酸のような酸性部位を有する有機塩であってもよい。このような酸塩を構成する塩基としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であって、水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、アンモニア、トリメチルアンモニア、トリエチルアンモニア、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、プロカイン、ジエタノールアミン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基から誘導されるものが挙げられる。
【0019】
<HPLC純度>
本発明に係るβ-NMNH化合物の純度としては、HPLCで測定したときの純度(以下、「HPLC純度」と称することがある。)が95%以上であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、98%以上が好ましい。
【0020】
本発明におけるHPLC純度とは、β-NMNHを含有する試料をHPLCで測定し、検出される様々なピーク面積の総量に対するNMNH由来ピーク面積の割合を意味する。具体的には、下記の(式1)から求めることができる。
-(式1)-
HPLC純度(%)={(β-NMNH由来ピーク面積)/(測定されるピーク面積の総量)}×100
【0021】
本発明において、HPLC純度を測定する際のHPLC分析方法としては、β-NMNHを効率よく分離・測定できる方法・条件であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、カラムとしてNucleosil4000-7 PEI(長さ:12.5cm、内径:4.0mm、粒子径:7μm、マッハライ・ナーゲル社製)を使用し、「THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 280, NO. 43, pp. 36334-36341, October 28, 2005」に記載される方法で、またはカラムとしてXBrigde Amideカラム(長さ:15cm、内径:10.0mm、Waters社製)を使用し、「bioRxiv,2020, Reduced Nicotinamide Mononucleotide (NMNH) Potently Enhances NAD+, Suppresses Glycolysis, TCA Cycle and Cell Growth, https://doi.org/10.1101/2020.11.03.366427」に記載される方法で測定することができる。本発明においては以下の方法で測定した。
・ HPLC機器として、HPLCシステムProminence(島津製作所製)を使用する。
・ β-NMNH試料を1mMになるように200mM NaHCOバッファー(pH10.0)に溶解し、これを試料液とする。
・ 試料液10μLをTSK-GEL ODS-80TSカラム(長さ:15cm、内径:4.6mm、粒子径:5μm、東ソー社製)にアプライする。
・ カラム吸着したβ-NMNH画分の分離は、以下の方法で実施する。
溶離液として50mM Tris-酢酸(pH7.5)/メタノールを用い、0-15%メタノールの濃度勾配にて、流速0.15mL/分になるよう調整して溶出・分離し、吸光度340nmで測定する。
【0022】
<波長340nmにおけるモル吸光係数>
本発明に係るβ-NMNH化合物の波長340nmにおけるモル吸光係数は、β-NMNHを示す所定値であることが好ましい。前記β-NMNH化合物の波長340nmにおけるモル吸光係数としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、5,500[L/(mol・cm)]以上が好ましく、6,000[L/(mol・cm)]以上7,000[L/(mol・cm)]以下がより好ましい。
【0023】
波長340nmにおけるモル吸光係数は、下記の(式2)で算出される。測定は、NMNHのモル濃度を明らかとした試料を調製し、検出器に適する濃度まで適宜希釈したサンプルの波長340nmでの吸光度を光路長既知のセルで測定する。
-(式2)-
波長340nmにおけるモル吸光係数[L/(mol・cm)]=波長340nmにおける吸光度/[測定試料中のNMNHのモル濃度(mol/L)×セル光路長(cm)]
【0024】
ここで測定試料中のNMNHのモル濃度を明らかとする方法としては、既存のNMNHのモル吸光係数を適用する方法を利用しない限り、特に制限はなく、適宜選択でき、例えば、重量基準のNMNH含量の既知試料を用いてNMNH分子量で換算する方法、定量NMR、NMNHを分子吸光係数が既知の物質へ定量的に変換して測定する方法などが挙げられる。本発明においては以下の方法でモル濃度を明らかとした。
・ 粉末重量当たりに含まれる水分含量(%)をカールフィッシャー法によって算出する。
・ 粉末重量当たりに含まれるナトリウム含量(%)を原子吸光分析法によって算出する。
・ HPLC純度を算出する。
・ NMNH粉末約0.3gを秤量し、粉末秤量値を記録する。200mM NaHCOバッファー(pH10.0)に溶解し50mLにメスアップする、下記の(式3)より、この試料中のNMNHモル濃度を算出する。NMNH分子量(g/mol)には無水無塩NMNHの分子量336.2g/molを使用する。
-(式3)-
試料中のNMNHモル濃度(mol/L)=[A×{(100-B-C)/100}×{D/100}]/0.05(L)/E
上記式中、Aは粉末秤量値(g)、Bは水分含量(%)、Cはナトリウム含量(%)、DはHPLC純度(%)、EはNMNH分子量(g/mol)を表す。
【0025】
測定試料の波長340nmでの吸光度を測定する方法としては、測定試料中のβ―NMNH化合物が安定な条件で操作し、検出に適した条件で測定すればよく、特に制限はなく適宜選択できる。本発明では以下の方法を用いた。
NMNHのモル濃度が明らかな試料を、約0.2mmol/L NMNH相当になるように200mM NaHCOバッファー(pH10.0)で希釈し、モル濃度既知の測定試料を調製する。分光光度計UV-1800(島津製作所製)を用いて測定試料の波長340nmにおける吸光度を測定する。測定試料の吸光度ならびにモル濃度を用いて、上記した(式2)より波長340nmにおけるモル吸光係数を算出する。
【0026】
<β-NADHに変換したときの補酵素としての触媒活性>
本発明に係るβ-NMNH化合物の、Nmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性としては、85%以上であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、90%以上が好ましい。
本発明において、「ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性」の値は、β-NADHの標準物質の活性を100%とした場合の相対活性値(%)のことをいう。
本発明において、「β-NADHの標準物質」とは、日本臨床化学会「ヒト血清中酵素活性測定の勧告法」内の試薬規格を満たすNADHのことをいう。
【0027】
本発明において、β-NMNH化合物の、Nmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性は、下記のようにして測定して得られる値のことをいう。
【0028】
-β-NMNH化合物からのβ-NADH変換合成-
まず、β-NMNH化合物をNmnatによりβ-NADHに変換する。
【0029】
前記Nmnat(EC 2.7.7.1)の酵素的性質は、https://www.brenda-enzymes.org/enzyme.php?ecno=2.7.7.1&Suchword=&reference=&UniProtAcc=&organism%5B%5D=に記載されている。例えば、ヒトNmnatはNMNHを基質として利用することが知られている(Biochemistry 2007, 46, 16, 4912-4922)。
前記Nmnatとしては、耐熱性Nmnat(Thermococcus kodakaraensis TK0067遺伝子、アミノ酸配列は配列番号3参照)が好ましい。前記耐熱性Nmnatは、大腸菌などで発現させたものであってもよい。
【0030】
前記Nmnatを用いた反応は、後述する実施例の項目に記載した方法で行うことができる。後述する実施例の項目に示したように、前記Nmnatを用いることで、β-NMNH化合物からβ-NADHを合成することができる。
【0031】
-触媒活性-
Nmnatにより変換したβ-NADHのピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性は、下記のようにして測定できる。
--Nmnat変換混合液--
・ 3mM NADH相当
・ 100mM NaHCOバッファー(pH8.5)
・ 20mM ATP
・ 5mM MgCl
--R1試験液--
0.15mM NADH相当になるように、Nmnat変換混合液0.15mLを、0.02%のNaNを含む0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)4.85mLにて希釈する。
なお、対照(標準物質)として、β-NADH粉末(オリエンタル酵母工業社製)を用いたR1試験液を同一の手順にて調製する。
--R3試験液--
・ 5mM になるようにピルビン酸ナトリウムを純水に溶解する。
--酵素溶液--
・ 乳酸脱水素酵素(以下、「LDH」と称することがある。)が、反応液中の終濃度で、5U/mLとなるように酵素溶液を調製する。希釈液には、0.5%BSAおよび0.02%NaNを含む0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)を用いる。
本発明において、LDHの活性単位(U)は、NADを補酵素として使用したときの活性単位であり、IFCC準拠のヒトLDH測定法で測定したときの活性単位を使用する。
【0032】
--活性測定--
補酵素活性の測定には7170形日立自動分析装置(日立ハイテク社製)を使用する。測定パラメーターを以下に示す。
[測定パラメーター]
・ 測定温度 ・・・ 37℃
・ 測定波長(副/主) ・・・ 405nm/340nm
・ 測定モード ・・・ 2ポイントレート[10][18][20][0][0]
・ 検体量(酵素溶液量) ・・・ 4μL
・ R1試験液量 ・・・ 160μL(0.15mM NADH相当)
・ R3試験液量 ・・・ 40μL
・ スタートアップキャリブ ・・・ あり(精製水)
【0033】
[測定手順]
酵素溶液4μLとR1試験液160μLを混合して37℃で4.5分間インキュベートした後(測光ポイント1-16)、R3試験液40μLを添加して反応を開始する(測光ポイント17)。反応開始後5分間測定し、反応開始から0.3-0.9分(測光ポイント18-20)の測定試料の吸光値から、水(ブランク)の同測光ポイントにおける吸光度を差し引き、1分間当たりの吸光度変化の値(ΔmAbs/min)を算出する。
【0034】
本発明におけるLDHはL-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)とも称される脱水素酵素である。
前記乳酸脱水素酵素としては、哺乳類の心臓由来の乳酸脱水素酵素が好ましく、配列番号2のアミノ酸配列を有する、ブタ由来乳酸脱水素酵素(LDH)1がより好ましいが、哺乳類の他の乳酸脱水素酵素、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有する、サブユニットの4量体からなる骨格筋由来の乳酸脱水素酵素(LDH)5、ヒト由来乳酸脱水素酵素(LDH)1、ヒト由来乳酸脱水素酵素(LDH)5なども使用することができる。LDHは、ピルビン酸を基質として反応を触媒して乳酸に変換するが、このときNADHはNADに変換される。
【0035】
本発明に係るβ-NMNH化合物は、実質的にニコチンアミドジヌクレオチド(以下、「NAD」と称することがある。)を含まないことが好ましい。NADが含まれていると乳酸脱水素酵素に対する反応性を正確に測定できない可能性があるためである。
本発明において、実質的にニコチンアミドジヌクレオチドを含まないとは、前記β-NMNH化合物におけるNADが前述のHPLC分析で検出されないことをいう。なお、本発明に係るβ-NMNH化合物を配合する製剤や飲食品にNADが含まれている実施形態を排除するものではない。
【0036】
本発明のβ-NMNH化合物は、HPLCで測定したときの純度が高いだけでなく、β-NADHに変換した際に補酵素として高い触媒活性を示す。そのため、従来のβ-NMNH製品(原薬)と比較して生体利用性が高く、β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩とこれを含有する製品として高品質であると同時に、高い生理作用を有している。したがって、β-NMNHを有効成分とする医薬としてだけでなく、飲食品(サプリメントを含むが、これに限定されない)や飼料の原料としてまたはこれを投与または摂取することにより高い効果を与えることができる。
【0037】
(化合物の品質評価方法)
本発明の化合物の品質評価方法は、β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の品質評価方法であって、評価工程を少なくとも含み、必要に応じて更に測定工程などのその他の工程を含む。
【0038】
<評価工程>
本発明の化合物の品質評価方法における評価工程は、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを指標として、前記β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の品質を評価する工程である。
前記HPLCで測定したときの純度の指標としては、95%以上であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、98%以上が好ましい。
前記指標であるピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性の数値としては、85%以上であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、90%以上が好ましい。
前記評価工程では、さらに波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であることを指標とすることが好ましい。前記指標である波長340nmにおけるモル吸光係数としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、5,500[L/(mol・cm)]以上が好ましく、6,000[L/(mol・cm)]以上7,000[L/(mol・cm)]以下がより好ましい。
【0039】
-評価-
本発明の化合物の品質評価方法における評価工程では、評価対象のβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物が、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上である場合に、前記評価対象の品質が良いと評価する。より具体的には、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上である場合に、前記評価対象は生体利用性が高いβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなる化合物であると評価する。また、前記指標として波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であることを用いる場合には、前記所定値である場合に、前記評価対象の品質が良いと評価する。より具体的には、前記所定値である場合に、前記評価対象は生体利用性が高いβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなる化合物であると評価する。
前記HPLCで測定したときの純度、Nmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性、および波長340nmにおけるモル吸光係数は、本発明の化合物の品質評価方法を行う際に測定したものであってもよいし、別途測定したものであってもよい。
【0040】
<その他の工程>
本発明の化合物の品質評価方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、測定工程などが挙げられる。
【0041】
-測定工程-
本発明の化合物の品質評価方法における測定工程は、評価対象のβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物のHPLCで測定したときの純度およびNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性を測定する工程である。前記測定工程では、必要に応じてさらに波長340nmにおけるモル吸光係数を測定してもよい。
前記HPLCで測定したときの純度、Nmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性、および波長340nmにおけるモル吸光係数は、上記した(化合物)の<HPLC純度>の項目、<β-NADHに変換したときの補酵素としての触媒活性>の項目、および<波長340nmにおけるモル吸光係数>の項目に記載したものと同様にして測定することができる。
【0042】
(化合物の酵素反応性の判定方法)
本発明の化合物の酵素反応性の判定方法は、β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の酵素反応性の判定方法であって、判定工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0043】
<判定工程>
本発明の化合物の酵素反応性の判定方法における判定工程は、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上であることを指標として、前記β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の乳酸脱水素酵素に対する反応性を判定する工程である。
前記HPLCで測定したときの純度の指標としては、95%以上であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、98%以上が好ましい。
前記指標であるピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性の数値としては、85%以上であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、90%以上が好ましい。
前記判定工程では、さらに波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であることを指標とすることが好ましい。前記指標である波長340nmにおけるモル吸光係数としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、5,500[L/(mol・cm)]以上が好ましく、6,000[L/(mol・cm)]以上7,000[L/(mol・cm)]以下がより好ましい。
【0044】
-判定-
本発明の化合物の酵素反応性の判定方法における判定工程では、判定対象のβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物が、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上である場合に、前記判定対象の酵素反応性が高いと判定する。より具体的には、HPLCで測定したときの純度が95%以上であり、且つNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性が85%以上である場合に、前記判定対象は乳酸脱水素酵素に対する反応性が高い還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物であると判定する。また、前記指標として波長340nmにおけるモル吸光係数がβ―NMNHを示す所定値であることを用いる場合には、前記所定値である場合に、前記判定対象の酵素反応性が高いと評価する。より具体的には、前記所定値である場合に、前記判定対象は乳酸脱水素酵素に対する反応性が高い還元型β-ニコチンアミドモノヌクレオチド又はその薬理学的に許容される塩からなる還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド前駆体化合物と評価する。
前記HPLCで測定したときの純度、Nmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性、および波長340nmにおけるモル吸光係数は、本発明の化合物の酵素反応性の判定方法を行う際に測定したものであってもよいし、別途測定したものであってもよい。
【0045】
<その他の工程>
本発明の化合物の酵素反応性の判定方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、測定工程などが挙げられる。
【0046】
-測定工程-
本発明の化合物の酵素反応性の判定方法における測定工程は、評価対象のβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物のHPLCで測定したときの純度およびNmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性を測定する工程である。前記測定工程では、必要に応じてさらに波長340nmにおけるモル吸光係数を測定してもよい。
前記HPLCで測定したときの純度、Nmnatによりβ-NADHに変換したときに、ピルビン酸を乳酸に変換する乳酸脱水素酵素に対する触媒活性、および波長340nmにおけるモル吸光係数は、上記した(化合物)の<HPLC純度>の項目、<β-NADHに変換したときの補酵素としての触媒活性>の項目、および<波長340nmにおけるモル吸光係数>の項目に記載したものと同様にして測定することができる。
【0047】
本発明の化合物の評価方法および化合物の酵素反応性の判定方法によれば、β-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物のHPLC純度だけでは評価できない生体利用性を評価・判定することができ、これにより高品質なβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物を提供することができる。
【0048】
また、本発明は、前記化合物の評価方法または化合物の酵素反応性の判定方法を包含する、高品質なβ-NMNH又はその薬理学的に許容される塩からなるβ-NADH前駆体化合物の製造方法をも包含する。
【実施例0049】
以下、実施例、比較例、および試験例を示して本発明を説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1:β-NMNH化合物粉末の調製)
市販のNADH粉末(オリエンタル酵母工業社製)を出発材料とし、自家調製した組換えNADHピロホスファターゼ(配列番号4)にて、β-NMNHを生成させた。具体的な反応組成と条件は下記のとおりである。
・ 反応温度 : 37℃
・ pH : pH8.0~9.0(0.1M NaHCO-NaOHバッファー)
・ 基質NADH濃度 : 1リットルあたり20g粉末
・ NADHピロホスファターゼ添加量 : 4,000U/L
【0051】
<β-NMNHの生成のモニタリングと反応停止>
ODS80Tsカラム(東ソー社製)を用いた逆相クロマトグラフィーにてβ-NMNHの生成をモニタリングした。下記のHPLC操作条件では、β-NMNHは7分目、ならびにNADHは60分目に溶出された。NADHピークが完全に消失したところで分子量10,000カットの限界ろ過膜を用い、添加した酵素を除去することで反応を停止した。β-NMNHは、限外ろ過工程では、ろか外液に回収された。
-HPLC条件-
・ C18逆相カラムサイズ : TSKgel ODS80Ts(内径2mm、長さ15cm、粒子径5μm)
・ 流速 : 0.15mL/分
・ 測定波長 : 340nmと260nm
・ 溶出条件 : A液) 50mM Tris-Acetate buffer(pH7.5)
B液) 15%メタノールを含む上記A液
・ グラジエントプログラム :
0-20分 ; A液 100% - B液 0%
20-60分 ; A液/B液 グラジエント
60-80分 ; A液 0% - B液 100%
【0052】
<β-NMNH混合液からの精製>
β-NMNHをイオン交換樹脂によるカラムクロマトグラフィーにて精製した。HPA25(三菱化学社製)樹脂1mLあたり10~20mL反応混合液相当の割合でチャージし、平衡化バッファーにてよく洗浄した後に、0~0.2M NaCl(pH9.0)にてグラジエント溶出を行なった。β-NMNHは、50~100mM NaClの溶出位置にて回収された。
-HPA25樹脂クロマトグラフィー条件-
・ 操作温度 : 冷蔵
・ 平衡化バッファー : 10mM NaHCO-NaOH(pH9.0)
・ 溶出バッファー : 0.2M NaClを含む上記NaHCO-NaOHバッファー
・ 溶出操作 : グラジエント
【0053】
精製主分画を集めた後に、電気透析にて過剰なNaClを取り除き、凍結乾燥操作にて一次濃縮を行なった。得られた黄色味を呈する粉末を少量の精製水にて再溶解し、最終粉末あたりβ-NMNH(無水無塩)として75重量%になるように調整し、最終のバイアル凍結乾燥を実施した。20gNADH粉末から約2gのβ-NMNH化合物粉末が得られた。
【0054】
(比較例1:化学薬剤処理によるβ-NMNH化合物粉末の調製)
β-NMNを還元する化学薬剤として、参考文献(ChemRxiv,2019,NADH in Solution: A Single State, https://chemrxiv.org/articles/preprint/NADH_in_Solution_A_Single_State/8208407/1)に従い亜ジチオン酸ナトリウム(Na)を用いてβ-NMNH化合物(以下、「1,4-ジヒドロNMN」と称することがある。)の調製を行なった。下記の化学反応条件下で340nmにおける吸光度上昇を確認した後に、実施例1に記載の方法と同様にして1,4-ジヒドロNMNの分離精製を試みた。
<化学反応混合液の組成(1リットルあたり)>
・ β-NMN粉末(オリエンタル酵母工業社にて製造) 5g
・ 亜ジチオン酸ナトリウム粉末 5g
・ NaHCO 5g
・ NaCO 10g
【0055】
詳しくは、上記の亜ジチオン酸ナトリウムのアルカリ溶液に対して、β-NMN粉末を溶解し遮光しながら室温で30分以上静置した。340nmにおける吸光度増加が安定した、淡黄色を呈する還元液をHPA25イオン交換樹脂によるカラムクロマトグラフィーに供し、1,4-ジヒドロNMNを単離した。
【0056】
(試験例1:HPLC純度の測定)
下記の方法により、実施例1および比較例1で製造したβ-NMNH化合物について、HPLC純度を測定した。得られた結果を下記の表1に示す。なお、測定結果は3回行った平均値である。
【0057】
〔HPLC純度測定〕
・ HPLC機器として、HPLCシステムProminence(島津製作所製)を使用した。
・ β-NMNH試料を1mMになるように200mM NaHCOバッファー(pH10.0)に溶解し、これを試料液とした。
・ 試料液10μLをTSK-GEL ODS-80TSカラム(長さ:15cm、内径:4.6mm、粒子径:5μm、東ソー社製)にアプライした。
・ カラム吸着したβ-NMNH画分の分離は、以下の方法で実施した。
溶離液として50mM Tris-酢酸(pH7.5)/メタノールを用い、0-15%メタノールの濃度勾配にて、流速0.15mL/分になるよう調整して溶出・分離し、吸光度340nmで測定した。
【0058】
【表1】
【0059】
なお、実施例1および比較例1で製造したβ-NMNH化合物はいずれもHPLCではNADのピークは観察されず、実質的にNADを含まないものであった。
【0060】
(試験例2:モル吸光係数の算出)
下記の方法により、実施例1の方法で製造した3ロットのβ-NMNH化合物の、波長340nmにおけるモル吸光係数を算出した。得られた結果を下記の表2に示す。
【0061】
〔分子吸光係数の算出〕
NMNHのモル濃度を明らかとした試料を調製し、検出器に適する濃度まで適宜希釈したサンプルの波長340nmでの吸光度を光路長既知のセルで測定し、上記した(式2)により波長340nmでのモル吸光係数を算出した。
NMNHのモル濃度を明らかとした試料は以下のようにして調製した。
・ 粉末重量当たりに含まれる水分含量(%)をカールフィッシャー法によって算出した。
・ 粉末重量当たりに含まれるナトリウム含量(%)を原子吸光分析法によって算出した。
・ HPLC純度を算出した。
・ NMNH粉末約0.3gを秤量し、粉末秤量値を記録した。200mM NaHCOバッファー(pH10.0)に溶解し50mLにメスアップした、上記した(式3)より、この試料中のNMNHモル濃度を算出した。
測定試料の波長340nmでの吸光度は以下のようにして測定した。
NMNHのモル濃度が明らかな試料を、約0.2mmol/L NMNH相当になるように200mM NaHCOバッファー(pH10.0)で希釈し、モル濃度既知の測定試料を調製した。分光光度計UV-1800(島津製作所製)を用いて測定試料の波長340nmにおける吸光度を測定した。測定試料の吸光度ならびにモル濃度を用いて、上記した(式2)より波長340nmにおけるモル吸光係数を算出した。
【0062】
【表2】
【0063】
(試験例3)
<試験例3-1:β-NMNH化合物からのβ-NADH変換合成>
実施例1および比較例1で製造したβ-NMNH化合物にNmnatを作用させ、ATP共存下でβ-NADHの変換合成を行った。
前記Nmnatとして、本試験例では、β-NMNHおよびその化学還元誘導体である1,4-ジヒドロNMNを共に基質として認識して作用する、大腸菌にて発現させた耐熱性Nmnat(Thermococcus kodakaraensis TK0067遺伝子、アミノ酸配列は配列番号3参照)を用いた。
【0064】
Nmnat変換反応の反応液の組成は、下記のとおりである。
・ 100mM NaHCO buffer(pH8.5)
・ 5mM MgCl
・ 20mM ATP
・ 50U/L 耐熱性Nmnat
Nmnatの活性単位(1U)は、ATP存在下でβ-NMNより1分間あたり1μモルのNADを生成する触媒量と定めた。
・ 3mM β-NMNH(実施例1)または1,4-ジヒドロNMN(比較例1)
β-NMNHおよび1,4-ジヒドロNMNのモル濃度は、波長340nmにおけるモル吸光係数6,500[L/(mol・cm)](比較例1に記載の参考文献で報告されている数値)を用いて求めた。
【0065】
37℃で一晩静置後のNmnat変換反応の様相をHPLC溶出パターンの比較により確認した。HPLC条件は下記のとおりである。
-HPLC条件-
・ HPLC機器として、HPLCシステムProminence(島津製作所製)を使用した。
・ 試料をNMNH相当、NADH相当で合計約1mMになるように200mM NaHCOバッファー(pH10.0)に溶解し、これを試料液とした。
・ 試料液10μLをTSK-GEL ODS-80TSカラム(長さ:15cm、内径:4.6mm、粒子径:5μm、東ソー社製)にアプライした。
・ カラム吸着したβ-NMNH画分、NADH、またはNADH誘導体の分離は、以下の方法で実施した。
溶離液として50mM Tris-酢酸(pH7.5)/メタノールを用い、0-15%メタノールの濃度勾配にて、流速0.15mL/分になるよう調整して溶出・分離し、吸光度340nmで測定した。β-NMNH画分は7分、NADHまたはNADH誘導体は60分に溶出された。
【0066】
実施例1のβ-NMNHのNmnat変換反応前のHPLC溶出パターンを図1Aに、Nmnat変換反応後のHPLC溶出パターンを図1Bに、比較例1の1,4-ジヒドロNMNのNmnat変換反応前のHPLC溶出パターンを図2Aに、Nmnat変換反応後のHPLC溶出パターンを図2Bに示す。
図1A~2Bに示したように、両者間におけるNADH前駆体並びに変換後のNADHおよびその誘導体の溶出保持時間は同一であった。また、両者共にNADH前駆体はNADHまたはその誘導体にほぼ100%変換されており、Nmnat変換反応において両者に差が無いことが確認された。
【0067】
<試験例3-2:LDHに対する補酵素活性応答性から見たNADH前駆体能の比較>
-β-NMNH化合物からのβ-NADH変換合成-
試験例3-1と同様にして、実施例1および比較例1で製造したβ-NMNH化合物をβ-NADHに変換した。反応の停止は、分子量10,000カットの限外ろ過にて行った。
【0068】
-LDHに対する補酵素活性応答性の評価-
ろ過外液(以下、Nmnat変換混合液と称することがある。)をそのまま用い、変換後のNADHおよびNADH誘導体のLDH活性に対する応答性を下記のようにして調べた。
【0069】
〔評価〕
-Nmnat変換混合液-
・ 3mM NADH相当
・ 100mM NaHCOバッファー(pH8.5)
・ 20mM ATP
・ 5mM MgCl
-R1試験液-
0.15mM NADH相当になるように、Nmnat変換混合液0.15mLを、0.02%のNaNを含む0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)4.85mLにて希釈した。
なお、対照(標準物質)として、β-NADH粉末(オリエンタル酵母工業社製)を用いたR1試験液を同一の手順にて調製した。
-R3試験液-
・ 5mM になるようにピルビン酸ナトリウムを純水に溶解した。
-酵素溶液-
・ LDHが、反応液中の終濃度で、0、0.5、1、2、5、または10U/mLとなるように酵素溶液を調製した。希釈液には、0.5%BSAおよび0.02%NaNを含む0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)を用いた。
前記LDHは、組換えLDH(ブタ心臓由来、配列番号2)または組換えLDH(ウサギ骨格筋由来、配列番号1)を用いた。
【0070】
-活性測定-
補酵素活性の測定には7170形日立自動分析装置(日立ハイテク社製)を使用した。測定パラメーターを以下に示す。
--測定パラメーター--
・ 測定温度 ・・・ 37℃
・ 測定波長(副/主) ・・・ 405nm/340nm
・ 測定モード ・・・ 2ポイントレート[10][18][20][0][0]
・ 検体量(酵素溶液量) ・・・ 4μL
・ R1試験液量 ・・・ 160μL(0.15mM NADH相当)
・ R3試験液量 ・・・ 40μL
・ スタートアップキャリブ ・・・ あり(精製水)
【0071】
--測定手順--
酵素溶液4μLとR1試験液160μLを混合して37℃で4.5分間インキュベートした後(測光ポイント1-16)、R3試験液40μLを添加して反応を開始した(測光ポイント17)。反応開始後5分間測定し、反応開始から0.3-0.9分(測光ポイント18-20)の測定試料の吸光値から、水(ブランク)の同測光ポイントにおける吸光度を差し引き、1分間当たりの吸光度変化の値(ΔmAbs/min)を算出した。
【0072】
反応液中の終濃度が5U/mLとなるように調製した酵素溶液を用いた場合のβ-NADH標準物質の活性値を100%としたときのそれぞれの場合の相対活性値(%)を算出し、その結果を図3A(ブタ心臓由来のLDHを用いた場合)、3B(ウサギ骨格筋由来のLDHを用いた場合)に示した(○:対照、●:実施例1、△:比較例1)。また、反応液中の終濃度が5U/mLとなるように調製した酵素溶液を用いた場合における、実施例1で製造したβ-NMNH化合物から変換したβ-NADHを用いた場合、比較例1で製造した1,4-ジヒドロNMNから変換したβ-NADHを用いた場合の相対活性値を表3に示した。なお、測定結果は3回行った平均値である。
【0073】
【表3】
【0074】
図3Aおよび3B、並びに表3に示したように、本発明の実施例1で製造したβ-NMNH化合物は、比較例1で製造した1,4-ジヒドロNMNと比べて、β-NADHに変換した際に補酵素として高い触媒活性を示し、優れたNADH前駆体能を有することが確認された。
【0075】
(試験例4:ロテノン誘発細胞死に基づくパーキンソン病細胞モデルでのβ-NMNH化合物の効果)
実施例1および比較例1で製造したβ-NMNH化合物の生物活性の評価を下記のようにして行った。
【0076】
ヒト神経幹細胞(SH-SY5Y)を出発材料に、レチノイン酸ならびにホルボール12-ミリステート-13酢酸により分化誘導したヒト神経細胞アッセイにて、ロテノン誘発細胞死に対する抑制度合いを、細胞内ATP量を指標として求めた。下記に手順を示した。
【0077】
<第0日目>
生細胞数として1ウェルあたり10個となるように、SH-SY5Y細胞を96ウェルプレートに播いた。
【0078】
<第1日目>
10μMレチノイン酸を添加した培地にて培地交換を行った。
【0079】
<第4日目>
終濃度80μMになるように、ホルボール12-ミリステート-13酢酸を培地に添加し、分化誘導した。
【0080】
<第7日目>
100μMロテノンを含む培地にて培地交換を行い、細胞死の誘発をかけた。このとき、β-NMN(酸化型NMN、対照)、または実施例1若しくは比較例1で製造したβ-NMNH化合物を種々の濃度(0、5、50、または500μM)で培地中に添加した。
【0081】
<第9日目>
培養上清を除去し、接着細胞内ATP量を市販の細胞ATP測定試薬(東洋ビーネット社製、CAT NO. CA2-100)を用いて測定した。なお、細胞内ATP量は、前記測定試薬に基づき発光プレートリーダーにて得られた発光量と正比例の関係を示すことをATP標準液での検量線より予め確かめた。
【0082】
本試験で用いた培地組成は下記のとおりである。
・ 細胞増殖用
F12/E-MEM+1%NEAA(非必須アミノ酸)+15%FBS(牛胎児血清)
・ 分化誘導・ロテノン誘発アッセイ用
F12/E-MEM+1%NEAA+1%N+1mg/mL HSA(人血清アルブミン)
【0083】
結果を図4に示す。図4は、実測値(n=3)の平均値を縦棒で、SD(標準偏差)をエラーバーで示した。図4に示したように、比較例1のβ-NMNH化合物と比べて、実施例1のβ-NMNH化合物を用いた場合の方が、ロテノン誘発細胞死に対する抑制度合いが高いことが確認された。また、500μM添加した場合では、実施例1のβ-NMNH化合物は、対照の酸化型のβ-NMNよりも優れた結果が得られた。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
【配列表】
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