(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158509
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】樹脂成形体、熱線遮蔽板、屋根材、及び窓材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221006BHJP
C08L 33/12 20060101ALI20221006BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20221006BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20221006BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20221006BHJP
C01G 23/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L33/12
C08K9/02
C08K5/54
C08J5/00 CEY
C01G23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063466
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】國本 健司
(72)【発明者】
【氏名】奥元 卓也
(72)【発明者】
【氏名】恩田 智士
【テーマコード(参考)】
4F071
4G047
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AB30
4F071AD05
4F071AD06
4F071AE06
4F071AF29Y
4F071AF30Y
4F071AH03
4F071BA03
4F071BB01
4F071BB12
4F071BC03
4F071BC12
4G047CA02
4G047CA10
4G047CB08
4G047CC01
4G047CD03
4J002AA011
4J002BC031
4J002BC061
4J002BC071
4J002BG061
4J002BN151
4J002CG001
4J002DJ056
4J002FB076
4J002FD016
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】透明性、低着色性及び熱線遮蔽性に優れた樹脂成形体;並びに前記樹脂成形体を含む熱線遮蔽板、屋根材、窓材を提供する。
【解決手段】透明樹脂(A)及びパール顔料(B)を含有し、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)が22.0μm以上41.0μm以下である、樹脂成形体。透明樹脂(A)及びパール顔料(B)を含有し、JIS K7375に準拠して測定した全光線透過率が40%以上であり、ISO9050に準拠して測定した日射反射率と日射吸収率の合計が63%以上である、樹脂成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂(A)及びパール顔料(B)を含有し、
前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)が22.0μm以上41.0μm以下である、樹脂成形体。
【請求項2】
前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が50%となる粒径(D50)が12.0μm以上23.0μm以下である、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)と累積頻度が10%となる粒径(D10)との比率(D90/D10)が3.3以上である、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
透明樹脂(A)及びパール顔料(B)を含有し、
全光線透過率が40%以上であり、
日射反射率と日射吸収率の合計が63%以上である、
樹脂成形体。
【請求項5】
拡散率が3.0以上60以下である、請求項4に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
日射遮蔽係数が0.35以上0.70以下である、請求項4又は5に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)が22.0μm以上41.0μm以下である、請求項4~6のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が50%となる粒径(D90)が12.0μm以上23.0μm以下である、請求項4~7のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項9】
前記パール顔料(B)が金属酸化物被覆雲母を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項10】
前記金属酸化物被覆雲母が、酸化チタンで被覆された雲母を含む、請求項9に記載の樹脂成形体。
【請求項11】
前記樹脂成形体の投影面積における単位面積あたりの、前記パール顔料(B)の含有量が、1.00g/m2以上60.00g/m2以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項12】
前記透明樹脂(A)がメタクリル系樹脂である、請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂成形体を含む、熱線遮蔽板。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂成形体を含む、屋根材。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂成形体を含む、窓材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体、熱線遮蔽板、屋根材、及び窓材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建造物、自動車、列車、バス等の屋根材及び窓材、並びに照明装置、看板等の保護材には、太陽光、蛍光灯、ランプ等の光源からの光に含まれる赤外線領域の光(以下、「熱線」と略する)を遮断する性質(以下、「熱線遮蔽性」と略する。)を有していることが要求されている。すなわち、熱線遮蔽性に優れた樹脂成形体が要望されている。
【0003】
さらに、上記の用途では、ある程度の光を透過して明るさを確保する観点から、太陽光、蛍光灯、ランプ等の光源からの光に含まれる可視光領域の光を適度に透過することが要求されている。すなわち、適度な透明性を有する樹脂成形体が要望されている。
【0004】
また、照明看板用途や照明用途では、蛍光灯やLED等の光源の形状を、照明看板や照明灯カバーで隠蔽するために、適度な隠蔽性を有する樹脂成形体が要望されている。
【0005】
樹脂成形体に隠蔽性を付与する技術として、例えば、特許文献1には、メタクリル系樹脂に特定の粒子サイズのパール柄材を配合したメタクリル系樹脂板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているパール柄付き樹脂板は、熱線遮蔽性と光拡散性が不十分であった。
【0008】
さらに、本発明者らの検討によれば、熱線遮蔽性を高めるための光拡散剤等の添加剤の含有割合を調整するだけでは、透明性と隠蔽性を両立することが困難である。
【0009】
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、熱線遮蔽性に優れ、適度な透明性及び適度な隠蔽性を有する樹脂成形体;並びに前記樹脂成形体を含む熱線遮蔽板、屋根材、窓材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の要旨は、透明樹脂(A)及びパール顔料(B)を含有し、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)が22.0μm以上41.0μm以下である、樹脂成形体にある。
本発明の第2の要旨は、透明樹脂(A)及びパール顔料(B)を含有し、JIS K7375に準拠して測定した全光線透過率が40%以上であり、ISO9050に準拠して測定した日射反射率と日射吸収率の合計が63%以上である、樹脂成形体にある。
本発明の第3の要旨は、前記樹脂成形体を含む、熱線遮蔽板にある。
本発明の第4の要旨は、前記樹脂成形体を含む、屋根材にある。
本発明の第5の要旨は、前記樹脂成形体を含む、窓材にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱線遮蔽性に優れ、適度な透明性及び適度な隠蔽性を有する樹脂成形体;並びに前記樹脂成形体を含む熱線遮蔽板、屋根材、窓材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」は、各々「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種並びに「アクリル酸」及び「メタクリル酸」から選ばれる少なくとも1種を意味する。
また、「単量体」は未重合の化合物を意味し、「繰り返し単位」は単量体が重合することによって形成された前記単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。「構造単位」とは、樹脂成形体の製造に用いる単量体に由来する単位を意味する。
本発明において、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。
特に断らない限り、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0014】
<樹脂成形体>
本発明の樹脂成形体の第一の実施形態として、後述する透明樹脂(A)及び後述するパール顔料(B)を含有し、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)が22.0μm以上41.0μm以下である、樹脂成形体(以下、樹脂成形体(1)とも言う。)が挙げられる。
【0015】
本発明の樹脂成形体(1)は、さらに、後述する理由により、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が50%となる粒径(D50)が12.0μm以上23.0μm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の樹脂成形体(1)は、さらに、後述する理由により、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)と累積頻度が10%となる粒径(D10)との比率(D90/D10)が3.3以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂成形体の第二の実施形態として、後述する透明樹脂(A)及び後述するパール顔料(B)を含有し、全光線透過率が40%以上であり、日射反射率と日射吸収率の合計が63%以上である樹脂成形体(以下、樹脂成形体(2)とも言う。)が挙げられる。
【0018】
樹脂成形体(2)の全光線透過率の下限が40%以上であれば、屋根材及び窓材、並びに照明装置、看板等の用途において、太陽光、蛍光灯、ランプ等の光源からの光に含まれる可視光領域の光を適度に透過でき、明るさを確保できる。55%以上が好ましい。一方、樹脂成形体(2)の全光線透過率の上限は、特に限定されないが、屋根材及び窓材、並びに照明装置、看板等の用途において、樹脂成形体が熱線遮蔽性と適度な隠蔽性を維持することから、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましい。上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
樹脂成形体(2)の全光線透過率は、後述するパール顔料(B)の粒子径(D90、D50、D10)や、パール顔料(B)の含有割合を適宜選択することで制御できる。
なお、本発明における全光線透過率の測定方法の詳細は後述する。
【0019】
樹脂成形体(2)の日射反射率と日射吸収率の合計の下限が63%以上であれば、樹脂成形体は熱線遮熱性に優れる。65%以上が好ましく、70%以上がさらに好ましい。一方、日射反射率と日射吸収率の合計の上限は特に限定されないが、樹脂成形体(2)が適度な透明性と適度な隠蔽性を維持することから、95%以下が好ましく、93%以下がより好ましく、91%以下がさらに好ましい。上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0020】
樹脂成形体(2)の日射反射率の下限は、特に限定されないが、樹脂成形体は熱線遮熱性に優れることから、30%以上が好ましい。35%以上がより好ましい。一方、樹脂成形体(2)の日射反射率の上限は、特に限定されないが、樹脂成形体(2)が適度な透明性と適度な隠蔽性を維持することから、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0021】
樹脂成形体(2)の日射吸収率の下限は、特に限定されないが、樹脂成形体は熱線遮熱性に優れることから、25%以上が好ましい。28%以上がより好ましい。一方、樹脂成形体(2)の日射吸収率の上限は、特に限定されないが、樹脂成形体(2)が適度な透明性と適度な隠蔽性を維持することから、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
樹脂成形体(2)の日射反射率と日射吸収率は、後述するパール顔料(B)の粒子径(D90、D50、D10)や、パール顔料(B)の含有割合を適宜選択することで制御できる。
なお、本発明における日射反射率と日射吸収率の測定方法の詳細は後述する。
【0022】
本発明の樹脂成形体(2)は、拡散率が3.0以上60以下であることが好ましい。
樹脂成形体の拡散率の下限は特に限定されないが、3.0以上であれば、樹脂成形体は隠蔽性に優れる。4.0以上がより好ましく、5.0以上がさらに好ましい。一方、樹脂成形体の拡散率の上限は特に限定されないが、60以下であれば、樹脂成形体は熱線遮熱性に優れ、適度な透明性を維持できる。30以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
樹脂成形体の拡散率は、後述するパール顔料(B)の粒子径(D90、D50、D10)や、パール顔料(B)の含有割合を適宜選択することで制御できる。
なお、本発明における拡散率の測定方法の詳細は後述する。
【0023】
本発明の樹脂成形体(2)は、さらに、日射遮蔽係数が0.35以上0.70以下であることが好ましい。
日射遮蔽係数は、樹脂成形体の熱線遮熱性の指標であり、樹脂成形体の日射熱取得率を0.88で除した値とほぼ同じであり、この値が小さいほど、熱線遮熱性が高いことを意味する。
樹脂成形体の日射遮蔽係数の下限は特に限定されないが、0.35以上であれば、樹脂成形体は適度な透明性と適度な隠蔽性を有する。0.40以上がより好ましい。一方、樹脂成形体の日射遮蔽係数の上限は、特に限定されないが、0.70以下であれば、樹脂成形体は熱線遮熱性と適度な隠蔽性に優れる。0.60以下がより好ましく、0.49以下がさらに好ましい。上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
樹脂成形体の日射遮蔽係数は、後述するパール顔料(B)の粒子径(D90、D50、D10)や、パール顔料(B)の含有割合を適宜選択することで制御できる。
なお、本発明における日射遮蔽係数の測定方法の詳細は後述する。
【0024】
本発明の樹脂成形体(2)は、さらに、後述する理由により、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)が22.0μm以上41.0μm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の樹脂成形体(2)は、さらに、後述する理由により、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が50%となる粒径(D90)が12.0μm以上23.0μm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の樹脂成形体(2)は、さらに、後述する理由により、前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)と累積頻度が10%となる粒径(D10)との比率(D90/D10)が3.3以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂成形体(1)及び(2)(以下、単に「樹脂成形体」という。)が含むことのできる透明樹脂(A)の含有割合の下限は、透明樹脂(A)が本来有している透明性、耐候性、機械的強度などの性能を良好に維持できることから、樹脂成形体100質量%に対して、97.0質量%以上であることが好ましく、98.0質量%以上がより好ましく、99.0質量%以上がさらに好ましい。一方、透明樹脂(A)の含有割合の上限は、樹脂成形体の熱線遮蔽性を確保することから、樹脂成形体100質量%に対して、99.95質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以下がより好ましく、99.8質量%以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。たとえば、本発明の樹脂成形体に含まれる透明樹脂(A)の含有量は、樹脂成形体100質量%に対して、97.0質量%以上99.95質量%以下が好ましく、98.0質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、99.0質量%以上99.8質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
本発明の樹脂成形体が含むことのできるパール顔料(B)の含有割合の下限は、樹脂成形体の熱線遮蔽性が良好となることから、樹脂成形体100質量%に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。一方、パール顔料(B)の含有割合の上限は、樹脂成形体の透明性と隠蔽性を良好に維持できることから、樹脂成形体100質量%に対して、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。たとえば、本発明の樹脂成形体に含まれるパール顔料(B)の含有量は、樹脂成形体100質量%に対して、0.05質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、0.2質量%以1.0質量%以下がさらに好ましい。
【0029】
本発明の樹脂成形体においては、樹脂成形体の投影面積における単位面積(単位:m2)あたりのパール顔料(B)の含有量(以下、「単位面積あたりのパール顔料(B)の含有量」という。)の下限は、樹脂成形体の熱線遮蔽性が良好となることから、1.00g/m2以上が好ましい。2.00g/m2以上がより好ましく、3.00g/m2以上がさらに好ましい。一方、前記の含有量の上限は、樹脂成形体の透明性、低着色性を良好に維持できることから、60.00g/m2以下が好ましい。40.00g/m2以下がより好ましく、20.00g/m2以下がさらに好ましい。上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
或いは又、本発明の樹脂成形体の単位面積あたりのパール顔料(B)の含有量は、1.00g/m2以上60.00g/m2以下が好ましい。2.00g/m2以上40.00g/m2以下がより好ましく、3.00g/m2以上20.00g/m2以下がさらに好ましい。
本発明において、樹脂成形体の投影面積とは、樹脂成形体を平面上に投影したときの面積、すなわち樹脂成形体を主平面の略垂直方向から見たときの2次元での平面積である。樹脂成形体の主平面が曲面形状、複雑な凹凸形状を有している場合には、樹脂成形体の投影面積は実成形体の展開面積より小さくなる。
また、樹脂成形体の投影面積が小さい場合には、例えば、1平方センチメートルあたりのパール顔料(B)の含有量を、1平方メートルあたりのパール顔料(B)の含有量に換算すればよい。
【0030】
本発明の樹脂成形体は、必要に応じて、一般の配合剤を含有させることができる。配合剤としては、例えば、溶剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、艶消剤、紫外線吸収剤、熱可塑性重合体を挙げることができる。
【0031】
本発明の樹脂成形体の形状としては、例えば、板状の成形体(樹脂板)が挙げられる。樹脂板の厚みは、特に制限されるものではないが、0.2mm~15mmであればよく、0.3mm~5mmが好ましい。
【0032】
<透明樹脂(A)>
透明樹脂(A)は、本発明の樹脂成形体を構成する構成成分の1つである。
透明樹脂(A)は、少なくとも可視光領域で高い光線透過率を有する透明樹脂であれば、特に制限されるものではなく、公知の透明樹脂を用いることができる。公知の透明樹脂として、具体的には、公知のメタクリル系樹脂、公知のポリカーボネート樹脂及び公知のポリスチレン樹脂から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。これらの透明樹脂は、パール顔料(B)と併用したときに、樹脂成形体が、熱線遮蔽性に優れ、適度な透明性及び適度な隠蔽性を有することから好ましい。中でも、メタクリル系樹脂は、特に好ましい。
【0033】
(メタクリル系樹脂)
本発明において透明樹脂(A)として用いることができるメタクリル系樹脂は、特に限定されないが、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略する。)の単独重合体、又はMMAとMMA以外の単量体(以下、「他の単量体」と略する。)との共重合体(以下、「MMA共重合体」と略する。)であって、MMA由来の繰り返し単位(以下、「MMA単位」と略する。)の含有率が、MMA共重合体の総質量の70質量%以上100質量%未満であるMMA共重合体が好ましい。
また、メタクリル系樹脂を共重合可能な公知の架橋性単量体により架橋することも可能である。
【0034】
上記他の単量体は、MMAと共重合可能なものであれば、特に限定されない。上記他の単量体の例は、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル等の炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体等である。
メタクリル系樹脂は、後述する樹脂成形体の製造方法を用いて製造することができる。具体的には、セルキャスト法や連続キャスト法等の公知の注型重合法を用いて製造したメタクリル系樹脂が挙げられる。
或いは又、メタクリル系樹脂の市販品としては、アクリペット(登録商標)VH、MD、MF、IRK304、VRL40(いずれも商品名、三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0035】
(ポリカーボネート樹脂)
本発明において透明樹脂(A)として用いることができるポリカーボネート樹脂としては、例えば、公知の二価フェノールと公知のカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られるもの;公知のカーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られるもの;公知の環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるものなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の市販品としては、パンライトシリーズ(商品名、帝人化成社製)、ユーピロンシリーズ(商品名、三菱エンジニアリングプラスチック社製)、SDポリカシリーズ(商品名、住友ダウ社製)、カリバー(商品名、ダウケミカル社製)、CZシリーズ及びPCZシリーズ(商品名、三菱ガス化学社製)、APECシリーズ(商品名、バイエル社製)等が挙げられる。
【0036】
(ポリスチレン樹脂)
本発明において透明樹脂(A)として用いることができるポリスチレン樹脂は、スチレン(以下、「St」と略する。)の単独重合体、又は、St由来の繰り返し単位(以下、「St単位」と略する。)の含有率が、該ポリスチレン樹脂の総質量に対して、50質量%以上100質量%未満であるスチレン共重合体を挙げることができる。
ポリスチレン樹脂としては、具体的にはポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、メタクリル酸メチル-スチレン樹脂(MS樹脂)が挙げられる。好ましくは、メタクリル酸メチル-スチレン樹脂である。
ポリスチレンの市販品としては、PSJポリスチレンやETシリーズ、(商品名、PSジャパン社製)が挙げられる。
MS樹脂の市販品として、エスチレンMSシリーズ(商品名、新日鉄住金化学社製)や、セビアンMASシリーズ、MASシリーズ(商品名、ダイセルポリマー社製)が挙げられる。
【0037】
<パール顔料(B)>
本発明の樹脂成形体は、パール顔料(B)を構成成分の一つとして含む。
【0038】
本発明の樹脂成形体は、前記パール顔料(B)を含有することで、熱線遮蔽性に優れ、且つ、適度な透明性及び適度な隠蔽性を有するという、予想外の効果を奏する。
【0039】
本発明におけるパール顔料(B)としては、例えば、表面がパール調の色調を有する光輝性薄片状微粒子が挙げられる。
【0040】
本発明におけるパール顔料(B)は、樹脂成形体が熱線遮蔽性により優れ、且つ、より適度に優れた透明性及びより適度に優れた隠蔽性を有することから、金属酸化物被覆雲母を含むことが好ましい。
【0041】
前記金属酸化物被覆雲母は、樹脂成形体が熱線遮蔽性により優れ、且つ、より適度に優れた透明性及びより適度に優れた隠蔽性を有することから、表面が金属および/または金属酸化物で被覆された雲母を含むことが好ましい。中でも、表面が酸化チタンおよび/または酸化鉄等で被覆された雲母が好ましく、表面が酸化チタンで被覆された雲母を含むことがより好ましい。
【0042】
本発明におけるパール顔料(B)としては、具体的には、日本光研工業株式会社製のTWINCLEPEARL(登録商標)BXD、RXD、VXD、RXB、RXC-S0や、Merck社製のIriodin(登録商標)223WNT等の市販品を用いることができる。これらは単独で使用又は2種以上を併せて使用できる。
【0043】
本発明におけるパール顔料(B)は、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)の下限は、22.0μm以上であれば、樹脂成形体が熱線遮蔽性により優れ、且つ、より適度に優れた透明性及びより適度に優れた隠蔽性を有する。26.0μm以上がより好ましく、30.0μm以上がさらに好ましい。一方、前記粒径(D90)の上限は、41.0μm以下であれば、樹脂成形体の熱線遮蔽性と隠蔽性を良好に維持できる。39.0μm以下がより好ましく、38.0μm以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。たとえば、本発明におけるパール顔料(B)の累積頻度が90%となる粒径(D90)は、22.0μm以上41.0μm以下が好ましく、26.0μm以上39.0μm以下がより好ましく、30.0μm以上38.0μm以がさらに好ましい。
【0044】
前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が50%となる粒径(D50)の下限は、12.0μm以上であれば、樹脂成形体が熱線遮蔽性により優れ、且つ、より適度に優れた透明性及びより適度に優れた隠蔽性を有する。14.5μm以上がより好ましく、16.8μm以上がさらに好ましい。一方、前記粒径(D50)の上限は、23.0μm以下であれば、樹脂成形体の熱線遮蔽性と隠蔽性を良好に維持できる。22.0μm以下がより好ましく、21.0μm以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。たとえば、本発明におけるパール顔料(B)の累積頻度が50%となる粒径(D50)は、12.0μm以上23.0μm以下が好ましく、14.5μm以上22.0μm以下がより好ましく、16.8μm以上21.0μm以下がさらに好ましい。
【0045】
前記パール顔料(B)が、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)と累積頻度が10%となる粒径(D10)との比率(D90/D10)の下限は、3.3以上であれば、樹脂成形体が熱線遮蔽性により優れ、且つ、より適度に優れた透明性及びより適度に優れた隠蔽性を有する。3.4以上がより好ましく、3.5以上がさらに好ましい。一方、前記比率(D90/D10)の上限は、特に限定されないが、通常は5.0以下である。4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。たとえば、本発明におけるパール顔料(B)の粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)と累積頻度が10%となる粒径(D10)との比率(D90/D10)は、3.3上5.0以下が好ましく、3.4以上4.5以下がより好ましく、3.5以上4.0以下がさらに好ましい。
【0046】
<樹脂成形体の製造方法>
本発明の樹脂成形体の製造方法としては、透明樹脂(A)が前記メタクリル系樹脂である場合、セルキャスト法や連続キャスト法等の公知の注型重合法を用いることができる。
注型重合法は、対向配置された2枚の無機ガラス板または金属板(SUS板)の外周部を、軟質樹脂チューブ等のガスケットでシールして、これを鋳型とし、続いて、後述する重合性原料を前記鋳型内に注入して、重合させることによりシート状の樹脂組成物を形成する。次いで、得られた樹脂組成物を鋳型から剥離して、板状の樹脂成形体を得る方法である。
【0047】
注型重合用の鋳型の形態は特に限定されず、公知の鋳型を用いることができる。例えば、セルキャスト用の鋳型と連続キャスト用の鋳型が挙げられる。
セルキャスト用の鋳型としては、例えば、無機ガラス板、クロムメッキ金属板、ステンレス鋼板等の2枚の板状体を所定間隔で対向配置し、その縁部にガスケットを配置して、板状体とガスケットにより密封空間を形成させたものが挙げられる。
連続キャスト用の鋳型としては、例えば、同一方向へ同一速度で走行する一対のエンドレスベルトの対向する面と、エンドレスベルトの両側辺部においてエンドレスベルトと同一速度で走行するガスケットとにより密封空間を形成させたものが挙げられる。
【0048】
注型重合法を用いた場合の重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、メタクリル系樹脂やスチレン系樹脂の製造に用いられる公知の重合方法を採用できる。具体的には、単量体を重合溶媒として用いるいわゆるバルク重合法(塊状重合法)を、公知のラジカル重合の条件を用いて行うことができる。
【0049】
注型重合法を用いて重合する場合、下記工程(1)~(3)を順次行うことができる。
工程(1):メタクリル酸メチルを主成分とする単量体原料中に、パール顔料(B)を添加した重合性原料を、反応容器に注入し、該反応容器を重合装置に導入する。
工程(2):前記反応容器中の重合性原料を、重合装置内の、第1加熱領域にて50℃以上100℃以下の温度範囲に加熱し、且つ、第2加熱領域にて100℃以上150℃以下の温度範囲に加熱して重合し、重合物を得る。
工程(3):前記得られた重合物を前記反応容器から取り出して本発明の樹脂成形体を得る。
【0050】
或いは又、透明樹脂(A)がメタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリスチレン樹脂から選ばれる少なくとも一種である場合、射出成形法、押出成形法、カレンダー成形法等の公知の溶融混錬法を用いて、パール顔料(B)が、成形加工時の加熱により分解又は変性して、熱線遮蔽性を損なわないように注意しながら、メタクリル系樹脂にパール顔料(B)を配合してもよい。
【0051】
<重合性原料>
重合性原料は、本発明の樹脂成形体の原料である。
透明樹脂(A)がメタクリル系樹脂の場合、重合性原料は、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体原料中に、パール顔料(B)を添加した重合性原料である。
重合性原料として、具体的には、メタクリル酸メチルの単独物とパール顔料(B)と公知の重合開始剤の混合物、又は、メタクリル酸メチル70質量%以上100質量%未満及び上述した他の単量体0質量%を超えて30質量%以下を含む単量体組成物とパール顔料(B)と公知の重合開始剤の混合物を用いることができる。
なお、公知の重合開始剤としては、メタクリル系樹脂の製造に用いられる、公知のアゾ系開始剤や過酸化物系開始剤を使用できる。
【0052】
本発明の樹脂成形体の厚みは、特に制限されるものではないが、0.2mm~15mmであればよく、0.3mm~5mmが好ましい。
【実施例0053】
以下に本発明を、実施例を用いて説明する。以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、実施例及び比較例で使用した化合物の略号は以下のとおりである。
MMA:メタクリル酸メチル
AVN:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65、富士フイルム和光純薬社製)
HPP:t-ヘキシルペルオキシピバレート(商品名:パーヘキシルPV、日油社製)
【0054】
パール顔料(B)としては、以下のものを用いた。各パール顔料(B)の粒子径(D90、D50、D10)を表1に示した。
パール顔料(B-1):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:TWINCLEPEARL(登録商標)BXD、日本光研工業株式会社製)
パール顔料(B-2):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:TWINCLEPEARL(登録商標)RXD、日本光研工業株式会社製)
パール顔料(B-3):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:TWINCLEPEARL(登録商標)VXD、日本光研工業株式会社製)
パール顔料(B-4):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:TWINCLEPEARL(登録商標)RXB、日本光研工業株式会社製)
パール顔料(B-5):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:TWINCLEPEARL(登録商標)RXC-S0、日本光研工業株式会社製)
パール顔料(B-6):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:Iriodin(登録商標)223WNT、Merck社製)
パール顔料(B-7):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:Iriodin(登録商標)121WNT、Merck社製)
パール顔料(B-8):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:Iriodin(登録商標)2123SW、Merck社製)
パール顔料(B-9):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:TWINCLEPEARL(登録商標)RXE、日本光研工業株式会社製)
パール顔料(B-10):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:Iriotec(登録商標)9770、Merck社製)
パール顔料(B-11):酸化チタンで被覆された雲母(商品名:Iriotec(登録商標)9870、Merck社製)
【0055】
<評価方法>
【0056】
(1)パール顔料(B)の粒子径(D90、D50、D10)
ナノ粒子径分布測定装置(島津製作所社製、機種名:SALD-7100)を用い、JIS Z 8825-1に準じて、パール顔料(B)を脱イオン水中に分散した水分散液について、測定波長10nm~300μmの範囲のパール顔料(B)の体積平均粒子径を測定した。なお、パール顔料(B)の屈折率を2.35として体積平均粒子径を算出した。なお、水分散液のパール顔料(B)の濃度は1000ppmとした。
次いで、測定範囲10nm~300μmを50区分に分け、各区分の頻度割合(単位:%)を算出して、体積平均粒子径の頻度分布曲線を作成した。次いで、前記頻度分布曲線から、累積頻度分布曲線を作成し、累積頻度が90%となる粒子径をD90、累積頻度が50%となる粒子径をD50、累積頻度が10%となる粒子径をD10とした。D90とD10の比率(D90/D10)を算出した。
【0057】
(2)全光線透過率
透明性の指標として、JIS K7375に準拠して、樹脂成形体の試験片(厚さ3mm)の全光線透過率を測定した。
さらに、以下の基準を用いて判定した。
A :全光線透過率が55%以上
B :全光線透過率が40%以上55%未満
C :全光線透過率が40%未満
【0058】
(3)拡散率
拡散性の指標として、変角光度計(村上色彩技術研究所社製、機種名:GP-200)を用い、樹脂成形体の試験片(厚さ3mm)に0°で光を入射したときの、試料に対して5°、20°、70°の角度における透過光の輝度値を測定し、拡散率を算出した。
さらに、以下の基準を用いて判定した。
A :拡散率が12%以上
B :拡散率が3.0%以上12%未満
C :拡散率が3.0%未満
【0059】
(4)日射反射率、日射吸収率、日射遮蔽係数
熱線遮蔽性の指標として、分光光度計(日立製作所社製、機種名:U-4100)を用い、ISO9050に準拠して、樹脂成形体の試験片(厚さ3mm)の測定波長300nm~2500nmにおける日射反射率(単位:%)、日射吸収率(単位:%)、日射透過率(単位:%)、及び日射熱取得率(Solar Heat Gain Coefficient、単位:W/(m2・K))を測定した。
【0060】
なお、日射反射率、日射透過率は、測定光を、樹脂成形体の試験片の法線に対して10°傾斜した角度で照射し、この際に生じる拡散反射を、直径60mmφの積分球で検出し、ISO9050で規定される測定波長300nm~2500nmにおける重価係数を用いて該規格に記載される計算方法に従い算出した。測定光として、日射波長域の光を使用した。
【0061】
また、日射吸収率は、得られた日射反射率、日射透過率から、
日射吸収率(%)=100-日射反射率(%)-日射透過率(%)
により算出した。
さらに、以下の基準を用いて判定した。
A :日射吸収率と日射反射率の合計が70%以上
B :日射吸収率と日射反射率の合計が63%以上70%未満
C :日射吸収率と日射反射率の合計が63%未満
【0062】
また、日射熱取得率は、得られた日射吸収率、日射透過率から、熱伝達抵抗を0.276122921として、
日射熱取得率(W/(m2・K))=(日射透過率(%)+日射吸収率(%)×熱伝達抵抗)/100
により算出した。
【0063】
また、日射遮蔽係数は、得られた日射熱取得率から、
日射遮蔽係数=日射熱取得率/0.88
により算出した。
さらに、以下の基準を用いて判定した。
A :日射遮蔽係数が0.40以上
B :日射遮蔽係数が0.35以上0.40未満
C :日射遮蔽係数が0.35未満
【0064】
(5)拡散率
光拡散性の指標として、変角光度計(村上色彩技術研究所社製、機種名:GP-200)を用い、DIN 5036に準拠して、樹脂成形体の試験片(厚さ3mm)に0°で光を入射したときの、試料に対して5°、20°、70°の角度における透過光の輝度値を測定し、拡散率を算出した。
さらに、以下の基準を用いて判定した。
A :拡散率が3.0以上10以下
B :拡散率が10を超えて60以下
C :拡散率が3.0未満又は60を超える
【0065】
[実施例1]
(1)シラップの製造
冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)にMMA100質量部を供給し、窒素ガスでバブリングしながら、15分間撹拌した後、温度60℃まで攪拌しながら昇温した。次いで、ラジカル重合開始剤としてAVN0.1質量部を添加し、更に前記単量体組成物を100℃になるまで攪拌しながら昇温した後、13分間保持した。次いで、反応器の内温が室温になるまで冷却してシラップを得た。シラップ中の重合体の含有率は20質量%であった。
(2)注型重合
上記のシラップ92質量部に、MMA8質量部、パール顔料(B)としてパール顔料(B-1)を0.25質量部及び重合開始剤としてHPP0.4質量部を撹拌しながら添加して、溶解したものを重合性組成物とした。
対向して配置した2枚のSUS板の端部に、2枚のSUS板の空隙間隔が4.1mmとなるように軟質樹脂製ガスケットを設置して、鋳型を作製した。次いで、上記の鋳型の中に、前記重合性組成物を流し込んだ後、軟質樹脂製ガスケットで封止し、80℃まで昇温して40分間保持した後、次いで130℃まで昇温して30分間保持して、重合性組成物を重合させた。その後、室温まで冷却し、SUS板を取り除いて厚さ3.0mmの板状の樹脂成形体を得た。樹脂成形体の単位面積当たりのパール顔料(B)の含有量が6.25(g/m2)であった。樹脂成形体の評価結果を表2に示す。
【0066】
[実施例2~6、比較例1~8]
パール顔料(B)の種類又は単位面積当たりの含有量を、表2記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。樹脂成形体の評価結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
実施例1~6の樹脂成形体は、熱線遮蔽性に優れ、適度な透明性及び適度な隠蔽性を有していた。
【0070】
比較例1~4の樹脂成形体は、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)及び累積頻度が50%となる粒径(D50)が小さいため、熱線遮蔽性と透明性が不十分であった。
【0071】
比較例5~8の樹脂成形体は、粒子径の累積頻度分布曲線において累積頻度が90%となる粒径(D90)及び累積頻度が50%となる粒径(D50)が大きいため、熱線遮蔽性と隠蔽性が不十分であった。
本発明の樹脂成形体は、熱線遮蔽性に優れ、適度な透明性及び適度な隠蔽性を有するので、建造物、自動車、列車又はバスに使用される熱線遮蔽板、屋根材、窓材、照明、看板に使用される保護材に好適に用いることができる。