(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158595
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】吸着剤及び不純物の除去方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20221006BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221006BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20221006BHJP
A23D 9/04 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
B01J20/22 C
B01J20/28 Z
B01D15/00 K
A23D9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063608
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】足立 正
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 智一
【テーマコード(参考)】
4B026
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4B026DG01
4B026DG20
4B026DP10
4B026DX01
4D017AA03
4D017CA14
4D017CB01
4D017DA01
4D017DA07
4G066AA22D
4G066AA71D
4G066AB13B
4G066AC01C
4G066AC02C
4G066AC12C
4G066AC12D
4G066AC14C
4G066AC17C
4G066AC27C
4G066AC27D
4G066AC33C
4G066AC33D
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA52
4G066CA56
4G066DA07
4G066DA10
(57)【要約】
【課題】油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を、効率よく除去する吸着剤を提供する。また、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を、効率よく除去する方法を提供する。
【解決手段】非水溶性有機化合物中の不純物を除去するための吸着剤であって、一級アミノ基を有する、吸着剤。前記吸着剤を用いて、非水溶性有機化合物中の不純物を除去する、不純物の除去方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性有機化合物中の不純物を除去するための吸着剤であって、一級アミノ基を有する、吸着剤。
【請求項2】
前記不純物が、アルデヒド類を含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記不純物が、更に、有機酸類を含む、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記非水溶性有機化合物が、油脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項5】
樹脂、多糖類、シリカ及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項6】
樹脂を含む、請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、イソシアヌル酸トリアリル系樹脂及びビニルエーテル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項8】
前記樹脂が、架橋構造を有する、請求項6又は7に記載の吸着剤。
【請求項9】
前記アクリル系樹脂が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート単位及び架橋性(メタ)アクリレート単位を含む、請求項7又は8に記載の吸着剤。
【請求項10】
前記スチレン系樹脂が、芳香族モノビニル単量体単位及び架橋性芳香族ビニル単量体単位を含む、請求項7又は8に記載の吸着剤。
【請求項11】
前記ポリビニルアミン系樹脂が、N-ビニルカルボン酸アミド単位を含む、請求項7又は8に記載の吸着剤。
【請求項12】
前記一級アミノ基が、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン及びポリアリルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種により導入されたものである、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項13】
多孔性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項14】
細孔直径が、1nm~1000nmである、請求項13に記載の吸着剤。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の吸着剤を用いて、非水溶性有機化合物中の不純物を除去する、不純物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤及びこの吸着剤を用いた不純物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブ油、大豆油、パーム油等に代表される植物油脂は、食用として広く用いられている。とりわけ、オリーブ油は、成分にLDLを減らし、HDLを維持する効果を有する一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を多く含み、また、人間の体内では生成できない必須脂肪酸である多価不飽和脂肪酸のリノール酸とα-リノレン酸も適度に含むため、「地中海式ダイエット」の構成要素に挙げられており、需要増大が見込まれている。
【0003】
一方、需要増大への対応として、オリーブ油の増産のみならず、オリーブ搾油残渣から抽出されるオリーブポマス油の活用も重要である。オリーブポマス油は、オリーブ搾油残渣からの溶媒抽出後に、中和工程、脱ろう工程、脱色工程、脱臭工程等を経て製造されるが、その品質は、バージンオリーブ油、精製オリーブ油、オリーブ油に比べて劣るものと見なされている。このため、その用途は、揚げ物、煮物、ソース、製菓等の食品工業的使用が主となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Agric.Food Chem.,Vol.68,p5927(2020).
【非特許文献2】食品総合研究所研究報告,No.76,p51(2012).
【非特許文献3】油化学,Vol.26,p150(1977).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オリーブ油の品質に影響する因子として、非特許文献1に開示されているように、アルデヒド類や有機酸類の存在があり、オリーブポマス油の製造工程において、アルデヒド類や有機酸類を充分に除去できれば、オリーブポマス油の品質が向上し利用範囲を広げられる等、オリーブポマス油の付加価値を高めることが可能となる。
【0007】
また、油脂を揚げ物に用いる場合、非特許文献2及び非特許文献3に開示されているように、継続使用に伴う劣化によりアルデヒド類や有機酸類が生成し、品質が低下する。このため、アルデヒド類や有機酸類の生成を抑制するだけでなく、生成した場合に効率よく除去できる方法があれば、継続使用期間を延ばすことが可能となり、経済的に有益である。
【0008】
アルデヒド類の除去方法として、特許文献1に開示されているアニオン交換樹脂を用いる方法が考えられるが、特許文献1に開示されているアルデヒド類の除去方法は、水溶液中のアルデヒド類の除去方法であるため、油脂中のアルデヒド類の除去に適用できるかは不明であった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を、効率よく除去する吸着剤を提供することにある。また、本発明のもう1つの目的は、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を、効率よく除去する不純物の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、一級アミノ基を有する吸着剤が、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物に対して、優れた吸着性を示すことを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]非水溶性有機化合物中の不純物を除去するための吸着剤であって、一級アミノ基を有する、吸着剤。
[2]前記不純物が、アルデヒド類を含む、[1]に記載の吸着剤。
[3]前記不純物が、更に、有機酸類を含む、[2]に記載の吸着剤。
[4]前記非水溶性有機化合物が、油脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の吸着剤。
[5]樹脂、多糖類、シリカ及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の吸着剤。
[6]樹脂を含む、[5]に記載の吸着剤。
[7]前記樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、イソシアヌル酸トリアリル系樹脂及びビニルエーテル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[6]に記載の吸着剤。
[8]前記樹脂が、架橋構造を有する、[6]又は[7]に記載の吸着剤。
[9]前記アクリル系樹脂が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート単位及び架橋性(メタ)アクリレート単位を含む、[7]又は[8]に記載の吸着剤。
[10]前記スチレン系樹脂が、芳香族モノビニル単量体単位及び架橋性芳香族ビニル単量体単位を含む、[7]又は[8]に記載の吸着剤。
[11]前記ポリビニルアミン系樹脂が、N-ビニルカルボン酸アミド単位を含む、[7]又は[8]に記載の吸着剤。
[12]前記一級アミノ基が、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン及びポリアリルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種により導入されたものである、[1]~[11]のいずれかに記載の吸着剤。
[13]多孔性を有する、[1]~[12]のいずれかに記載の吸着剤。
[14]細孔直径が、1nm~1000nmである、[13]に記載の吸着剤。
[15][1]~[14]のいずれかに記載の吸着剤を用いて、非水溶性有機化合物中の不純物を除去する、不純物の除去方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸着剤は、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を、効率よく除去することができる。
また、本発明の不純物の除去方法は、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を、効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で得られた吸着剤による処理後のアルデヒド含有油脂の高速液体クロマトグラムを示す図である。
【
図2】実施例2で得られた吸着剤による処理後のアルデヒド含有油脂の高速液体クロマトグラムを示す図である。
【
図3】アルデヒド含有油脂の高速液体クロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」、「メタクリル」又はその両者をいい、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」、「メタクリレート」又はその両者をいう。
【0015】
(吸着剤)
本発明の吸着剤は、非水溶性有機化合物中の不純物を除去するためのものである。
【0016】
本明細書において、非水溶性有機化合物は、液体状態で水と自由に混和しない化合物をいい、例えば、消防法第四類において非水溶性液体に分類される化合物;油脂等が挙げられる。これらの非水溶性有機化合物の中でも、高純度が求められる電子工業用途や高付加価値化が求められる食品工業用途であることから、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルカルビノール、シクロヘキサノン、油脂が好ましく、油脂がより好ましい。
【0017】
本発明の吸着剤による除去対象の不純物は、本発明の吸着剤の吸着性に優れることから、アルデヒド類を含むことが好ましく、アルデヒド類及び有機酸類を含むことがより好ましい。
【0018】
本発明の吸着剤は、一級アミノ基を有する。
【0019】
吸着剤を構成する材料としては、例えば、樹脂、多糖類、シリカ、ガラス等が挙げられる。これらの吸着剤を構成する材料の中でも、機械的強度や化学的耐久性に優れることから、樹脂、多糖類、シリカ、ガラスが好ましく、樹脂がより好ましい。
【0020】
吸着剤を構成する樹脂の種類としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、イソシアヌル酸トリアリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の種類の中でも、機械的強度や化学的耐久性に優れることから、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、イソシアヌル酸トリアリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂が好ましく、吸着剤に多孔性を容易に付与することができ、酸やアルカリに対する化学的耐久性に優れることから、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂がより好ましく、アクリル系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂が更に好ましい。
【0021】
本明細書において、アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂を構成する全単量体単位100質量%中、(メタ)アクリレート由来の構成単位が50質量%以上である樹脂をいい、この割合は80質量%以上であることが好ましい。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリレート由来以外の構成単位を含んでもよい。
【0022】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシブチル(メタ)アクリレート、9,10-エポキシステアリル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレンジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;N,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の架橋性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの(メタ)アクリレートの中でも、一級アミノ基の導入が容易で、油脂に代表される非水溶性有機化合物に対する耐溶解性に優れることから、エポキシ基含有(メタ)アクリレート及び架橋性(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート及びアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むことが更に好ましい。
【0023】
アクリル系樹脂がエポキシ基含有(メタ)アクリレート単位及び架橋性(メタ)アクリレート単位を含む場合、アクリル系樹脂中のエポキシ基含有(メタ)アクリレート単位の含有率は、アクリル系樹脂100質量%中、5質量%~95質量%が好ましく、10質量%~90質量%がより好ましい。エポキシ基含有(メタ)アクリレート単位の含有率が5質量%以上であると、一級アミノ基の導入性に優れる。また、エポキシ基含有(メタ)アクリレート単位の含有率が95質量%以下であると、機械的強度に優れる。
【0024】
アクリル系樹脂がエポキシ基含有(メタ)アクリレート単位及び架橋性(メタ)アクリレート単位を含む場合、アクリル系樹脂中の架橋性(メタ)アクリレート単位の含有率は、アクリル系樹脂100質量%中、5質量%~95質量%が好ましく、10質量%~90質量%がより好ましい。架橋性(メタ)アクリレート単位の含有率が5質量%以上であると、機械的強度に優れる。また、架橋性(メタ)アクリレート単位の含有率が95質量%以下であると、一級アミノ基の導入性に優れる。
【0025】
本明細書において、スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂を構成する全単量体単位100質量%中、芳香族ビニル単量体由来の構成単位が50質量%以上である樹脂をいい、この割合は80質量%以上であることが好ましい。スチレン系樹脂は、芳香族ビニル単量体由来以外の構成単位を含んでもよい。
【0026】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ブロモブチルスチレン等の芳香族モノビニル単量体;ジビニルベンゼン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ジビニルナフタレン、2,4,6-トリビニルエチルベンゼン等の架橋性芳香族ビニル単量体等が挙げられる。これらの芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの芳香族ビニル単量体の中でも、油脂に代表される非水溶性有機化合物に対する耐溶解性に優れることから、芳香族モノビニル単量体及び架橋性芳香族ビニル単量体を含むことが好ましく、スチレン及びジビニルベンゼンを含むことがより好ましい。
【0027】
スチレン系樹脂が芳香族モノビニル単量体単位及び架橋性芳香族ビニル単量体単位を含む場合、スチレン系樹脂中の芳香族モノビニル単量体単位の含有率は、スチレン系樹脂100質量%中、5質量%~98質量%が好ましく、10質量%~96質量%がより好ましい。芳香族モノビニル単量体単位の含有率が2質量%以上であると、一級アミノ基の導入性に優れる。また、芳香族モノビニル単量体単位の含有率が98質量%以下であると、機械的強度に優れる。
【0028】
スチレン系樹脂が芳香族モノビニル単量体単位及び架橋性芳香族ビニル単量体単位を含む場合、スチレン系樹脂中の架橋性芳香族ビニル単量体単位の含有率は、スチレン系樹脂100質量%中、2質量%~95質量%が好ましく、4質量%~90質量%がより好ましい。架橋性芳香族ビニル単量体単位の含有率が2質量%以上であると、機械的強度に優れる。また、架橋性芳香族ビニル単量体単位の含有率が95質量%以下であると、一級アミノ基の導入性に優れる。
【0029】
本明細書において、ポリビニルアミン系樹脂は、ポリビニルアミン系樹脂を構成する全単量体単位100質量%中、N-ビニルカルボン酸アミド由来の構成単位が50質量%以上である樹脂をいい、この割合は80質量%以上であることが好ましい。ポリビニルアミン系樹脂は、N-ビニルカルボン酸アミド由来以外の構成単位を含んでもよい。
【0030】
N-ビニルカルボン酸アミドとしては、例えば、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド、N-メチル-N-ビニルプロピオンアミド、N-ビニルブチルアミド、N-ビニルイソブチルアミド等が挙げられる。これらのN-ビニルカルボン酸アミドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのN-ビニルカルボン酸アミドの中でも、原子効率に優れ、入手や合成が容易であることから、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドが好ましく、N-ビニルホルムアミドがより好ましい。
【0031】
本明細書において、イソシアヌル酸トリアリル系樹脂は、イソシアヌル酸トリアリルを架橋剤として用いて合成した樹脂であり、イソシアヌル酸トリアリル系樹脂を構成する全単量体単位100質量%中、イソシアヌル酸トリアリル由来の構成単位が10質量%以上である樹脂をいい、この割合は20質量%以上であることが好ましい。イソシアヌル酸トリアリル系樹脂は、イソシアヌル酸トリアリル由来以外の構成単位を含んでもよい。
【0032】
本明細書において、ビニルエーテル系樹脂は、ビニルエーテル系樹脂を構成する全単量体単位100質量%中、ビニルエーテル由来の構成単位が50質量%以上である樹脂をいい、この割合は80質量%以上であることが好ましい。ビニルエーテル系樹脂は、ビニルエーテル由来以外の構成単位を含んでもよい。
【0033】
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル等のモノビニルエーテル類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のジビニルエーテル類等が挙げられる。これらのビニルエーテルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのビニルエーテルの中でも、油脂に代表される非水溶性有機化合物に対する耐溶解性に優れることから、モノビニルエーテル類及びジビニルエーテル類を含むことが好ましい。
【0034】
吸着剤を構成する樹脂は、油脂に代表される非水溶性有機化合物に対する耐溶解性に優れることから、架橋構造を有することが好ましい。
【0035】
架橋構造の導入方法としては、例えば、架橋性単量体を含む単量体を重合する方法、重合体を得た後に架橋剤を反応させる方法等が挙げられる。これらの架橋構造の導入方法の中でも、製造安定性に優れることから、架橋性単量体を含む単量体を重合する方法が挙げられる。
【0036】
架橋性単量体の含有率は、樹脂の製造に用いる全単量体100質量%中、2質量%~95質量%が好ましく、3質量%~90質量%がより好ましい。架橋性単量体の含有率が2質量%以上であると、樹脂の機械的強度に優れると共に、多孔性の導入が容易となる。また、架橋性単量体の含有率が95質量%以下であると、一級アミノ基の導入反応が進行しやすい。
【0037】
吸着剤を構成する多糖類としては、例えば、アガロース、セルロース、デキストラン、キチン、キトサン等が挙げられる。これらの多糖類の中でも、一級アミノ基を導入する起点を有するキチンや一級アミノ基を有するキトサンが好ましい。
【0038】
シリカ及びガラスは、吸着剤に後述する反応性官能基を導入することができることから、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性官能基を有する有機ケイ素化合物を原料として含むことが好ましい。
【0039】
(一級アミノ基)
本発明の吸着剤は、一級アミノ基を有する。
本発明の吸着剤は、一級アミノ基以外の官能基を有してもよい。一級アミノ基以外の官能基としては、例えば、二級アミノ基、三級アミノ基、四級アンモニウム基等が挙げられる。
【0040】
一級アミノ基は、吸着剤の耐久性に優れることから、共有結合で固定化されたものが好ましい。
一級アミノ基を共有結合で固定化する方法としては、例えば、後反応で一級アミノ基が生成する単量体を含む単量体を重合した後に後反応で一級アミノ基を生成させる方法、反応性官能基を有する単量体を含む単量体を重合した後に一級アミノ基を有する化合物と反応させる方法等が挙げられる。これらの一級アミノ基を共有結合で固定化する方法の中でも、工業的製造性に優れることから、
(1)反応性官能基を有する単量体を含む単量体を重合した後に一級アミノ基を有する化合物と反応させる方法(以下、「方法(1)」と称す場合がある。)
(2)後反応で一級アミノ基が生成する単量体を含む単量体を重合した後に後反応で一級アミノ基を生成させる方法(以下、「方法(2)」と称す場合がある。)
が好ましい。
【0041】
<方法(1)>
方法(1)で用いる反応性官能基を有する単量体の反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン基、エポキシ基等が挙げられる。これらの反応性官能基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの反応性官能基の中でも、反応性官能基を導入しやすく、一級アミノ基を有する化合物との反応性に優れることから、ハロゲン基、エポキシ基が好ましい。
【0042】
反応性官能基は、反応性官能基を有する単量体を含む単量体を重合して導入してもよく、重合体を構築した後に反応性官能基を導入してもよい。
重合体を構築した後に反応性官能基を導入する方法としては、例えば、反応性官能基を有する化合物(スペーサー)と反応可能な官能基を有する単量体を含む単量体を重合して重合体を構築し、重合体と反応性官能基を有する化合物(スペーサー)とを反応させる方法等が挙げられる。
【0043】
反応性官能基を有する単量体としては、例えば、クロロメチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のハロゲン基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、4-エポキシ-1-ブテン等のエポキシ基含有単量体等が挙げられる。これらの反応性官能基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの反応性官能基を有する単量体の中でも、一級アミノ基を有する化合物の導入が容易となることから、ハロゲン基含有単量体、エポキシ基含有単量体が好ましく、クロロメチルスチレン、ブロモブチルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレートがより好ましく、クロロメチルスチレン、グリシジルメタクリレートが更に好ましい。
【0044】
反応性官能基を有する単量体を含む単量体を重合した後に一級アミノ基を有する化合物と反応させる方法は、反応性に優れることから、一級アミノ基を有する化合物をそのまま又は一級アミノ基を有する化合物を有機溶媒若しくは水に溶解させた溶液を、反応性官能基を有する重合体に供給し、共有結合反応させる方法が好ましい。
【0045】
一級アミノ基を導入するための一級アミノ基を有する化合物としては、例えば、アルキルアミン;アニリン;ベンジルアミン;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリビニルアミン;ポリアリルアミン等が挙げられる。これらの一級アミノ基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの一級アミノ基を有する化合物の中でも、一級アミノ基を効率よく導入できることから、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンが好ましく、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンがより好ましい。
【0046】
有機溶媒は、一級アミノ基を有する化合物を溶解することができれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒の中でも、吸着剤が樹脂の場合、樹脂を膨潤させ、反応性官能基と一級アミノ基を有する化合物との反応性が向上することから、エーテル類が好ましく、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサンがより好ましい。
【0047】
反応性官能基を有する重合体と一級アミノ基を有する化合物との共有結合反応の反応温度は、10℃~120℃が好ましく、20℃~100℃がより好ましい。反応温度が10℃以上であると、共有結合反応を短時間とすることができる。また、反応温度が120℃以下であると、吸着剤が樹脂の場合、分解を抑制することができる。
【0048】
共有結合反応の後、重合体に残存する反応性官能基を不活性化することが好ましい。
不活性化せずに反応性官能基を残存させた場合、吸着時に非水溶性有機化合物中に存在する活性基と反応し、非水溶性有機化合物以外の不純物を生成したり、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着量を低下させたりする場合がある。
【0049】
反応性官能基、例えば、エポキシ基を不活性化する場合、安全性、経済性に優れることから、触媒の存在下に水と反応させて不活性化する方法が好ましい。
【0050】
エポキシ基を水と反応させて不活性化する際の触媒としては、例えば、リン酸、硫酸等の無機酸水溶液;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類水溶液、ギ酸等の有機酸水溶液等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの触媒の中でも、反応性に優れることから、硫酸が好ましい。
【0051】
エポキシ基を水と反応させて不活性化する際の触媒の濃度は、副反応を抑制することができることから、水溶液100質量%中、1質量%~50質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。
【0052】
エポキシ基を水と反応させて不活性化する際の反応温度は、反応性に優れることから、10℃~90℃が好ましく、20℃~80℃がより好ましい。
【0053】
エポキシ基を水と反応させて不活性化する際の反応時間は、副反応を抑制することができることから、0.1時間~24時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましい。
【0054】
反応性官能基の不活性化に際して、酸を用いた場合は、アルカリを用いて一級アミノ基の再生を行う。この一級アミノ基の再生は、0.01mol/L~5mol/Lのアルカリ水溶液を不活性化後の吸着剤に接触させることで行うことができる。
【0055】
<方法(2)>
後反応で一級アミノ基が生成する単量体を含む単量体を重合した後に後反応で一級アミノ基を生成させる方法は、工業的製造性に優れることから、N-ビニルカルボン酸アミドを含む単量体を重合した後に加水分解する方法が好ましい。
【0056】
後反応で一級アミノ基が生成する単量体としては、例えば、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド、N-メチル-N-ビニルプロピオンアミド、N-ビニルブチルアミド、N-ビニルイソブチルアミド等が挙げられる。これらのN-ビニルカルボン酸アミドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのN-ビニルカルボン酸アミドの中でも、原子効率に優れ、入手や合成が容易であることから、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドが好ましく、N-ビニルホルムアミドがより好ましい。
【0057】
加水分解の方法としては、N-ビニルカルボン酸アミドを含む単量体の重合体にアルカリ水溶液を加えて撹拌しながら加熱する方法が好ましい。
【0058】
アルカリ水溶液のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を用いることができる。これらのアルカリは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリの中でも入手性、経済性、後処理の容易さに優れることから水酸化ナトリウムが好ましい。
【0059】
アルカリ水溶液のアルカリの濃度は、副反応を抑制することができることから、水溶液100質量%中、1質量%~50質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。
【0060】
加水分解反応の際の反応温度は、反応性に優れることから、50℃~100℃が好ましく、80℃~95℃がより好ましい。
【0061】
加水分解の際の反応時間は、副反応を抑制することができることから、0.1時間~24時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましい。
【0062】
吸着剤の形状は、球状であっても不定形であってもよいが、吸着剤をカラムに充填して通液したときの圧力損失を抑制し、通液速度を高めることができ、吸着処理の生産性に優れることから、球状が好ましい。
【0063】
(吸着剤の物性)
本発明の吸着剤の体積平均粒子径は、1μm~1000μmが好ましく、4μm~700μmがより好ましく、10μm~500μmが更に好ましい。吸着剤の体積平均粒子径が1μm以上であると、吸着剤をカラムに充填して通液したときの圧力損失を抑制し、通液速度を高めることができ、吸着処理の生産性に優れる。また、吸着剤の体積平均粒子径が1000μm以下であると、カラム効率に優れ、吸着量や分離性能に優れる。
本明細書において、吸着剤の体積平均粒子径は、光学顕微鏡を用いて任意の100個の吸着剤の粒子径を測定し、その分布から体積メジアン径を算出するものとする。
【0064】
吸着剤の体積平均粒子径は、吸着剤が樹脂の場合、懸濁重合や乳化重合の重合条件、具体的には、単量体の種類や量、分散安定剤や乳化剤の種類や量、撹拌回転数等の設定により、調整することができる。また、重合終了後に、篩網、水篩、風篩等の方法により分級して、吸着剤の体積平均粒子径を揃えてもよい。
【0065】
吸着剤の均一係数は、吸着剤をカラムに充填して通液したときの圧力損失を抑制することができることから、2.0以下が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.0~1.6が更に好ましい。
本明細書において、吸着剤の均一係数は、粒子径分布幅の指標であり、吸着剤の体積分布において、粒子径の大きい方から40%となる粒子径を、粒子系の大きい方から90%となる粒子径で除した値とする。
【0066】
吸着剤は、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を、効率よく除去することができることから、多孔性を有することが好ましい。
【0067】
吸着剤の比表面積は、1m2/g~1000m2/gが好ましく、10m2/g~500m2/gがより好ましい。吸着剤の比表面積が1m2/g以上であると、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着剤表面への接触頻度に優れる。また、吸着剤の比表面積が1000m2/g以下であると、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着剤細孔内への拡散浸透が妨げられにくく吸着性に優れる。
本明細書において、吸着剤の比表面積は、窒素ガス吸着法(BET法)により測定するものとする。具体的には、窒素ガスの吸着前後の圧力変化から、BETの式により単分子層吸着量を算出し、窒素ガス1分子の断面積から吸着剤の比表面積を算出するものとし、ISO 9277を準用する。
【0068】
吸着剤の比表面積は、吸着剤が樹脂の場合、重合の反応条件や架橋構造の導入条件等の設定により、調整することができる。
【0069】
吸着剤の細孔直径は、1nm~1000nmが好ましく、2nm~500nmがより好ましく、3nm~200nmが更に好ましい。吸着剤の細孔直径が1nm以上であると、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着剤表面への接触頻度に優れる。吸着剤の細孔直径が1000nm以下であると、吸着剤の機械的強度に優れ、細孔内部に吸着に寄与しない空間の発生を抑制することができ、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着性に優れる。
本明細書において、吸着剤の細孔直径は、最頻度直径が100nm以上の場合は水銀圧入法により、最頻度直径が100nm未満の場合は窒素ガス吸着法により測定した最頻度直径とする。具体的には、水銀圧入法の場合には、吸着剤に圧力をかけて水銀を開孔部に侵入させ、圧力値と対応する侵入水銀体積とを用いて、細孔の形状を円柱状と仮定し、Washburnの式から算出する方法であり、ISO 15901-1を準用する。窒素ガス吸着法の場合には、ISO 15901-2を準用する。
【0070】
吸着剤の細孔直径は、吸着剤が樹脂の場合、懸濁重合や乳化重合の重合条件、具体的には、単量体の種類や量、多孔質化剤の種類や量、重合開始剤の種類や量等の設定により、調整することができる。
【0071】
吸着剤の細孔容積は、0.01mL/g~3.0mL/gが好ましく、0.1mL/g~2.5mL/gがより好ましく、0.2mL/g~2.0mL/gが更に好ましい。吸着剤の細孔容積が0.01mL/g以上であると、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着性に優れる。吸着剤の細孔容積が3.0mL/g以下であると、吸着剤の機械的強度に優れる。
本明細書において、吸着剤の細孔容積は、最頻度直径が100nm以上の場合は水銀圧入法により、最頻度直径が100nm未満の場合は窒素ガス吸着法により測定した最頻度容積とする。具体的には、水銀圧入法の場合には、吸着剤に圧力をかけて水銀を開孔部に侵入させ、圧力値と対応する侵入水銀体積とを用いて、細孔の形状を円柱状と仮定し、Washburnの式から算出する方法であり、ISO 15901-1を準用する。窒素ガス吸着法の場合には、ISO 15901-2を準用する。
【0072】
吸着剤の細孔容積は、吸着剤が樹脂の場合、重合の反応条件や架橋構造の導入条件等の設定により、調整することができる。
【0073】
吸着剤中の一級アミノ基を有する化合物は、窒素含有率や総交換容量により定量することができる。
【0074】
吸着剤の窒素含有率は、吸着剤100質量%中、0.3質量%~30質量%が好ましく、0.5質量%~25質量%がより好ましい。吸着剤の窒素含有率が0.3質量%以上であると、十分に一級アミノ基を有するため、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着性に優れる。また、吸着剤の窒素含有率が30質量%以下であると、機械的強度に優れ、また、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物が十分に拡散浸透できるほどの細孔容積を有するため、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着性に優れる。
本明細書において、吸着剤の窒素含有率は、後述する吸着剤の総交換容量から算出するものとする。
【0075】
吸着剤の総交換容量は、0.1ミリ等量/g~20ミリ等量/gが好ましく、0.2ミリ等量/g~10ミリ等量/gがより好ましい。吸着剤の総交換容量が0.1ミリ等量/g以上であると、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着性に優れる。また、吸着剤の総交換容量が20ミリ等量/g以下であると、機械的強度に優れ、また、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物が十分に拡散浸透できるほどの細孔容積を有するため、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物の吸着性に優れる。
本明細書において、吸着剤の総交換容量は、乾燥させた吸着剤0.5g~1.5gに相当する量を精秤し、0.2mol/Lの塩酸250mLに入れ、30℃で8時間振盪させた後、上澄みの塩酸濃度を滴定により測定し、その測定結果から算出するものとする。
【0076】
(不純物の除去方法)
本発明の不純物の除去方法は、本発明の吸着剤を用いて、非水溶性有機化合物中の不純物を除去する方法である。
本発明の吸着剤や非水溶性化合物中の不純物については、前述した通りである。
【0077】
不純物の除去方法としては、例えば、非水溶性有機化合物を含む液体と吸着剤とを容器中で混合接触させるバッチ処理法、吸着剤をカラムに充填して非水溶性有機化合物を含む液体を通液するカラム処理法等が挙げられる。これらの不純物の除去方法の中でも、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物を効率よく吸着剤に吸着することができることから、カラム処理法が好ましい。
【0078】
本発明の方法において、油脂に代表される非水溶性有機化合物は、溶媒に溶解させて本発明の吸着剤に吸着させてもよく、そのまま本発明の吸着剤に吸着させてもよいが、吸着後に溶媒を除去する工程を省略できることから、そのまま本発明の吸着剤に吸着させることが好ましい。
【0079】
(用途)
本発明の吸着剤は、特に、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物に対し、優れた吸着性を示し、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物が高度に除去された、油脂に代表される非水溶性有機化合物を、工業スケールで効率よく得ることができることから、食用油脂工業分野における実用上の価値が極めて高い。
【実施例0080】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0081】
(体積平均粒子径)
実施例で得られた吸着剤の体積平均粒子径について、光学顕微鏡(機種名「SMZ1500」、株式会社ニコン製)を用い、任意の100個の吸着剤の粒子径を測定し、その分布から体積メジアン径を算出した。
【0082】
(均一係数)
実施例で得られた吸着剤の均一係数について、光学顕微鏡(機種名「SMZ1500」、株式会社ニコン製)を用い、任意の100個の吸着剤の粒子径を測定し、粒子径の大きい方から40%となる粒子径を、粒子系の大きい方から90%となる粒子径で除した値とした。
【0083】
(比表面積)
実施例で用いた重合体・実施例で得られた吸着剤の比表面積について、乾燥させた吸着剤を秤量し、比表面積測定装置(機種名「フローソーブIII」、マイクロメリティックス社製)を用い、窒素ガス吸着法(BET法)により測定した。
【0084】
(細孔直径・細孔容積)
実施例で用いた重合体・実施例で得られた吸着剤の細孔直径・細孔容積について、自動ポロシメータ(機種名「オートポア9520」、マイクロメリティックス社製)を用い、水銀圧入法により測定、又は、細孔分布測定装置(機種名「ASAP2400」、マイクロメリティックス社製)を用い、窒素ガス吸着法により測定した。
【0085】
(窒素含有率・総交換容量)
実施例で得られた吸着剤の窒素含有率・総交換容量について、乾燥させた吸着剤0.5g~1.5gに相当する量を精秤し、0.2mol/Lの塩酸250mLに入れ、30℃で8時間振盪させた後、上澄みの塩酸濃度を滴定により測定し、その測定結果から算出した。
【0086】
[実施例1]
<吸着剤の製造>
グリシジルメタクリレート由来の構成単位20質量%及びエチレングリコールジメタクリレート由来の構成単位80質量%からなり、比表面積305m2/g、細孔直径120.4nm、細孔容積1.06mL/gの重合体40質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル140質量部及びポリエチレンイミン(富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量600)60質量部を添加し、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、得られた粒子を水洗した。この粒子に10質量%の濃度の硫酸200質量部を添加し、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を50℃に昇温し、5時間保持し、未反応のエポキシ基への水付加による不活性化を行った。冷却後、得られた粒子を水洗し、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液によりイオン交換基の再生を行い、篩網を用いて粒子径75μm~220μmの粒子を選別し、一級アミノ基を有する吸着剤(1)を得た。
得られた吸着剤(1)は、比表面積113m2/g、細孔直径38.2nm、細孔容積0.76mL/g、窒素含有率4.3質量%、総交換容量3.09ミリ等量/gであった。
【0087】
<吸着処理>
トリオレイン(ナカライテスク株式会社製)1.8143質量部及び(E,E)-2,4-デカジエナール(東京化成工業株式会社製)0.0035質量部(添加量1920ppm)を含む油脂に、吸着剤(1)を0.0999質量部添加して、25℃で18時間静置し、吸着処理を実施した。
吸着処理後の油脂中の(E,E)-2,4-デカジエナールを、以下の条件にて高速液体クロマトグラフィー分析した。
カラム:Cadenza CD-C18(商品名、インタクト社製、内径4.6mm、長さ75mm)
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/水=70/30
流速:1.00mL/分
注入量:2μL
検出:紫外吸光検出器(波長210nm)
得られたクロマトグラムを、
図1に示す。高速液体クロマトグラフィー分析により求められた吸着処理前後の油脂中の(E,E)-2,4-デカジエナール量は、1.92mg/gから0.67mg/gに減少した(減少率:65.2%)。
【0088】
[実施例2]
<吸着剤の製造>
脱塩水362質量部、硫酸アンモニウム241質量部及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液(ポリマー濃度18質量%、重量平均分子量50万)6.20質量部を混合し、重合浴とした。N-ビニルホルムアミド100質量部、ジビニルベンゼン11.1質量部、酢酸エチル23.8質量部、アクリロニトリル47.6質量部及び2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)(商品名「V-65」、富士フイルム和光純薬工業株式会社製)0.79質量部を混合し、単量体溶液とした。単量体溶液と重合浴を混合し、窒素で置換しながら100rpmで撹拌した。30分後昇温し、40℃で100分間、次いで50℃で60分間、次いで60℃で30分間重合した。重合後、濾過、水洗、濾過を順次行い、含水状態の重合体球状粒子を得た。得られた重合体球状粒子100質量部に、24質量%水酸化ナトリウム水溶液150質量部を加え、撹拌しながら90℃で8時間加水分解した。水洗、濾過し、一級アミノ基を有する吸着剤(2)を得た。
得られた吸着剤(2)は、体積平均粒子径685μm、均一係数1.54、比表面積4m2/g、細孔直径41.8nm、細孔容積0.01mL/g、窒素含有率9.6質量%、総交換容量6.87ミリ等量/gであった。
【0089】
<吸着処理>
トリオレイン(ナカライテスク株式会社製)1.8143質量部及び(E,E)-2,4-デカジエナール(東京化成工業株式会社製)0.0035質量部(添加量2010ppm)を含む油脂に、吸着剤(2)を0.1020質量部添加して、25℃で18時間静置し、吸着処理を実施した。
吸着処理後の油脂中の(E,E)-2,4-デカジエナールを、実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィー分析した。
得られたクロマトグラムを、
図2に示す。高速液体クロマトグラフィー分析により求められた吸着処理前後の油脂中の(E,E)-2,4-デカジエナール量は、2.01mg/gから1.87mg/gに減少した(減少率:6.7%)。
【0090】
[参考例]
トリオレイン(ナカライテスク株式会社製)0.7651質量部及び(E,E)-2,4-デカジエナール(東京化成工業株式会社製)0.0017質量部(添加量2270ppm)を含む油脂について、実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィー分析した。得られたクロマトグラムを、
図3に示す。
【0091】
以上の結果から明らかなように、本発明の吸着剤により、簡便な処理方法で、油脂中のアルデヒド類を、高い効率で吸着除去することができた。
本発明の吸着剤は、油脂に代表される非水溶性有機化合物中の、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物に対し、優れた吸着性を示し、アルデヒド類や有機酸類に代表される不純物が高度に除去された、油脂に代表される非水溶性有機化合物を、工業スケールで効率よく得ることができることから、食用油脂工業分野における実用上の価値が極めて高い。