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特開2022-158969遮光膜用感光性樹脂組成物並びにそれを用いた遮光膜、カラーフィルター及び表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158969
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】遮光膜用感光性樹脂組成物並びにそれを用いた遮光膜、カラーフィルター及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20221006BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221006BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G02F1/1335 505
G02F1/1335 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032272
(22)【出願日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2021060217
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】原口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠樹
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
2H291
【Fターム(参考)】
2H148BE36
2H148BF11
2H148BF16
2H148BG01
2H148BH04
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC58
2H225AD06
2H225AE12P
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225AN72P
2H225AP03P
2H225AP10P
2H225BA02P
2H225BA05P
2H225BA16P
2H225BA17P
2H225BA22P
2H225BA33P
2H225BA35P
2H225CA18
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
2H291FA02
2H291FA16
2H291FB04
2H291FC10
2H291FC33
2H291LA21
2H291LA40
2H291MA11
(57)【要約】
【課題】高遮光及び高抵抗との両立を達成できると共に、細線を形成した場合にも現像密着性に優れるような遮光膜が得られる遮光膜用感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ化合物、(B)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(D)カーボンブラックを遮光材として含む遮光成分、(E)光重合開始剤、及び(F)溶剤を必須成分として含む遮光膜用感光性樹脂組成物において、前記(A)成分は、主鎖に芳香環を有し、また、(A)成分に占めるグリシジル基数に対する芳香環数が0.5~10であり、さらにエポキシ当量が100~400g/eqであることを特徴とする遮光膜用感光性樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(F)成分、
(A)エポキシ化合物、
(B)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(D)カーボンブラックを遮光材として含む遮光成分、
(E)光重合開始剤、及び
(F)溶剤
を必須成分として含む遮光膜用感光性樹脂組成物において、
前記(A)成分は、主鎖に芳香環を有し、また、(A)成分に占めるグリシジル基数に対する芳香環数が0.5~10であり、さらにエポキシ当量が100~400g/eqであることを特徴とする遮光膜用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分と(C)成分との質量割合(B)/(C)が50/50~90/10であり、(D)成分100質量部に対して(A)成分を0.5~15質量部含有し、且つ、(D)成分が遮光膜用感光性樹脂組成物の固形分中に40~70質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の遮光膜用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遮光膜用感光性樹脂組成物を硬化させて形成したことを特徴とする遮光膜。
【請求項4】
請求項3に記載の遮光膜を備えたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項5】
請求項4に記載のカラーフィルターを有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高遮光かつ高抵抗な細線パターンのブラックマトリックスを形成するのに好適な遮光膜用感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは液晶表示装置の視認性を左右する重要な部材の一つであり、視認性の向上、すなわち、鮮明な画像を得るためには、カラーフィルターを構成する赤(R)、緑(G)、青(B)などの画素を今まで以上に高色純度化すると共に、ブラックマトリクスでは高遮光化を達成する必要があり、そのためには、従来よりも感光性樹脂組成物に対して着色剤を多量に添加しなければならない。
【0003】
樹脂ブラックマトリクス用遮光材としては一般にカーボンブラックが知られているが、カーボンブラックは遮光性に優れる一方、電気抵抗が低いため、表示装置の誤作動を引き起こす原因となる場合がある。そこで、カーボンブラックを用いてブラックマトリクスの電気抵抗を大きくする方法として、導電性であるカーボンブラックの比率を下げることや、カーボンブラック表面に樹脂をあらかじめ被覆した材料を適用する方法が提案されてきたが、パターニング性を十分に保持した上で実現できる遮光度に限界があり、要求される高遮光性を実現することが困難であった。
【0004】
また、上記のような従来技術を受けて本願の出願人は、光学濃度ODと体積抵抗率とを保持しつつ、10μm以下といった細線を形成した場合にも現像密着性に優れガラス基板との密着性も十分に確保できるような遮光膜用感光性樹脂組成物として、特定の構造および酸価を有する重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を配合する方法を提案している(特許文献1を参照)。しかしながら、この方法でも、表示装置の高性能化に伴ってブラックマトリックスに要求される特性もますます高くなっていることから、高遮光と高抵抗との両立において更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-200881号公報
【特許文献2】特開2014-145821号公報
【特許文献3】特開2019-070720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願の発明者らは、上記のような従来の試みを受けて、高遮光と高抵抗との両立ができる遮光膜用の感光性樹脂組成物についてさらに検討を進めると、次のような考えにたどり着いた。
すなわち、高遮光を達成できるように遮光材であるカーボンブラックを量多く配合しながらも、その量を減らすことなく高抵抗化を実現できる手段としてカーボンブラックどうしの接触確率を減らすこと、つまり、遮光膜の熱硬化時における熱収縮を抑制するようにすることでカーボンブラックどうしの接触が避けられるであろうといった考えと、また、未処理または酸化処理が施された通常のカーボンブラックはその表面に酸性官能基を多く有していることがわかっており、遮光膜の熱硬化過程においてそれと優先的に反応できる官能基を持つ他の化合物等を配合することにより、カーボンブラックの表面近傍にそのような他の樹脂などを存在させることが有意義であろうといった考えにたどり着いた。
【0007】
そして、このような考えについて、熱硬化時の熱収縮を抑えることができるような高耐熱性を有し、尚且つ、熱硬化時にカーボンブラックの酸性官能基と優先的に反応できるような官能基を有する化合物について鋭意検討した結果、主鎖に芳香環を有して剛直な骨格を有するとともに、熱硬化時にカーボンブラックと反応できるグリシジル基を有する所定のエポキシ化合物を感光性樹脂組成物中に所定量配合することで、高遮光及び高抵抗との両立を達成できると共に、例えば、3~8μmまでの細線を形成した場合にも現像密着性に優れるような硬化物(遮光膜)が得られることを新たに見出した。
【0008】
なお、感光性樹脂組成物中にエポキシ化合物を配合する技術については、本願の出願人らも既に提案しているが(特許文献2、特許文献3を参照)、特許文献2に記載の技術はタッチパネル用途の黒色感光性樹脂組成物に関するものであり、特に加工プロセスに使用する薬品に対する高い耐薬品性への要求のために、比較的多くの量のエポキシ化合物を含有させることを開示するものである。また、特許文献3は、耐熱性が高々140℃であるプラスチック基板などに樹脂膜パターンを形成するために、感光性樹脂組成物中に硬化剤及び/又は硬化促進剤を必須として配合し、尚且つこれらとエポキシ化合物との合計量を特定の範囲とすることが特徴であり、とくに低温硬化を目的とした際に必須となる成分を開示するに過ぎないものである。
つまり、特許文献2および3に記載される組成物では上記のような配合を必須とするものであり、高遮光と高抵抗、および細線化の全てを満足する上では難しかった。
【0009】
したがって、本発明は上述した知見に基づいて発明されたものであり、その目的とするところは、高遮光及び高抵抗とを両立し、しかも、細線を形成した場合にも現像密着性に優れるような硬化物(遮光膜)を与えるような遮光膜用の感光性樹脂組成物を提供することである。
【0010】
また、本願の他の目的は、そのような遮光膜用感光性樹脂組成物を硬化させて形成させた遮光膜を提供することであり、さらには、該遮光膜を備えたカラーフィルター及び該カラーフィルターを備えた表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕下記(A)~(F)成分、
(A)エポキシ化合物、
(B)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(D)カーボンブラックを遮光材として含む遮光成分、
(E)光重合開始剤、及び
(F)溶剤
を必須成分として含む遮光膜用感光性樹脂組成物において、
前記(A)成分は、主鎖に芳香環を有し、また、(A)成分に占めるグリシジル基数に対する芳香環数が0.5~10であり、さらにエポキシ当量が100~400g/eqであることを特徴とする遮光膜用感光性樹脂組成物。
〔2〕(B)成分と(C)成分との質量割合(B)/(C)が50/50~90/10であり、(D)成分100質量部に対して(A)成分を0.5~15質量部含有し、且つ、(D)成分が遮光膜用感光性樹脂組成物の固形分中に40~70質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の遮光膜用感光性樹脂組成物。
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載の遮光膜用感光性樹脂組成物を硬化させて形成したことを特徴とする遮光膜。
〔4〕〔3〕に記載の遮光膜を備えたことを特徴とするカラーフィルター。
〔5〕〔4〕に記載のカラーフィルターを有する表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高遮光及び高抵抗との両立を達成できると共に、例えば、3~8μmまでの細線を形成した場合にも現像密着性に優れるような硬化物(遮光膜)が得られる遮光膜用感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述のとおり、本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物は、少なくとも、(A)エポキシ化合物、(B)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(D)カーボンブラックを遮光材とする遮光成分、(E)光重合開始剤、及び(F)溶剤を必須の成分として有する。以下、これらの成分を中心に詳しく説明する。
【0014】
<(A)エポキシ化合物>
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物における(A)エポキシ化合物は、主鎖に芳香環を有するものであることが必要である。主鎖に芳香環を有することにより、優れた耐熱性と機械的特性を備えるようになり、これを用いた本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物を加熱硬化して遮光膜を形成する際に発生する熱収縮を抑制できる点で好ましい。ここで、主鎖に有するとは、当業界で通常用いられるように、炭素数が最大となる分子の骨格となる構造中に少なくとも1つの芳香環を有することを意味するものである。また、芳香環とは、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、ビスフェノール環等を挙げることができ、それらの構造は未置換でもよく、或いは、それぞれ独立に、1以上の置換基を有したものでもよい。置換基としては、炭素数1~10のアルキル基又はアリール基であってもよく、本発明の目的の範囲内であれば特に限定されない。
【0015】
ここで、前記(A)成分としては、エポキシ当量が100~400g/eqであり、好ましくは、120~380g/eq、より好ましくは150~360g/eqであるものを用いることがよい。エポキシ当量が100g/eq未満の場合、(B)成分中に含む現像溶解性を担う酸性官能基との反応が進行し、現像性が低下するおそれがあり、反対に、400g/eqを超える場合にはカーボンブラック間距離の制御に乏しくなり、抵抗の向上が見込めないおそれがある。
【0016】
また、当該(A)成分については、前記芳香環の数が、グリシジル基に対する数として、芳香環数/グリシジル基数が0.5~10であり、好ましくは1.1~4であり、さらに好ましくは1.3~4、特に好ましくは2~4である。ここでいう芳香環数とは、ベンゼン環の数であり、例えばナフタレン環であれば2、ビフェニルであれば2、アントラセンであれば3、ビスフェノールフルオレン環であれば4となる。芳香環としては、かさ高い(芳香環数が多い)ものが好ましく、ビスフェノールフルオレン環やナフタレンなどの縮環構造を持つものがより好ましい。芳香環数/グリシジル基数が0.5未満の場合、芳香環数の少なさからくる耐熱性低下による抵抗低下、もしくはグリシジル基数の多さにより(B)成分中に含む現像溶解性を担う酸性官能基との反応が進行し、現像性が低下するおそれがある。反対に、芳香環数/グリシジル基数が10超過の場合、グリシジル基数の少なさからカーボンブラック間距離の制御に乏しくなり、抵抗の向上が見込めなくなるおそれがある。
【0017】
ここで、前記の芳香環数/グリシジル基数については下記に示すとおり、エポキシ化合物の繰り返し単位を考慮した際の芳香環数/グルシジル基数とエポキシ当量との比例関係に基づいて、エポキシ当量から算出することが可能であることが分かる。すなわち、エポキシ化合物の各々の化学構造や繰り返し単位によって芳香環数やグリシジル基数は変化するものの、このように、繰り返し単位のいくつかを具体的に当て嵌めたうえでそのエポキシ当量との関係式を事前に把握することで、エポキシ当量の測定値に応じて芳香環数/グリシジル基数を算出することが可能となる。ここでは、その具体的な一例として、下記化学式(1)~(4)に挙げる化合物を例にとって示すが、これら以外のエポキシ化合物についても同じようにして求めることが可能である。
・ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物
【化1】
上記式(1)の場合、芳香環数/グリシジル基数=(4m+4)/2であり、例えば、m=1の場合は4である。この時、エポキシ当量は435である。同様に、m=2の時の芳香環数/グリシジル基数は6、エポキシ当量は638である。この関係から、(エポキシ当量)=102×(芳香環数/グリシジル基数)+28となるため、エポキシ当量から芳香環数/グリシジル基数を算出することが可能である。
【0018】
・1,6-ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ化合物
【化2】
上記式(2)の場合、芳香環数/グリシジル基数=(3m+2)/(2m+2)であり、例えば、m=1の場合は1.25である。この時、エポキシ当量は162である。同様に、m=2の時の芳香環数/グリシジル基数は1.33、エポキシ当量は170である。この関係から、(エポキシ当量)=102×(芳香環数/グリシジル基数)+34となる。
【0019】
・1-ナフトールアラルキル型エポキシ化合物
【化3】
上記式(3)の場合、芳香環数/グリシジル基数=(3m+2)/(m+1)であり、例えば、m=1の場合は2.5である。この時、エポキシ当量は252である。同様に、m=2の時の芳香環数/グリシジル基数は2.67、エポキシ当量は269である。この関係から、(エポキシ当量)=102×(芳香環数/グリシジル基数)-3となる。
【0020】
・フェノールノボラック型エポキシ化合物
【化4】
上記式(4)の場合、芳香環数/グリシジル基数=(m+2)/(m+2)であり、エポキシ当量にかかわらず(芳香環数/グリシジル基数)=1となる。
【0021】
当該(A)成分については、重量平均分子量が300~10000であるものを用いることがよい。
【0022】
このような(A)エポキシ化合物としては、主鎖に芳香環を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば日本化薬社製NC-7000L)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等を挙げることができる。このうち、カーボンブラックとの良好な親和性の観点から、多環芳香族エポキシ化合物を用いることが好ましい。
なお、当該(A)成分は、1種類の化合物のみを用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
そして、当該(A)成分の配合量については、後述する(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対して1~25質量部であることが好ましく、より好ましくは1~18質量部、さらに好ましくは1.5~16質量部であることがよい。(B)成分と(C)成分とに対して上記の配合量とすることにより、良好なパターニング特性を得られるようになるため好ましい。
さらに、当該(A)成分については、後述する(D)成分100質量部に対して、0.5~15質量部となるように配合することが好ましく、より好ましくは1~13質量部、さらに好ましくは1.0~9.0質量部とすることがよい。このようにカーボンブラックに対する量を適正化することにより、カーボンブラックとの良好な親和性を保ちつつ、十分な遮光性と抵抗の両立を達成出来るため好ましい。
【0024】
<(B)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂>
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物における(B)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、分子内に重合性不飽和基と酸性基を有する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、好ましく適用できる第一の例としては、エポキシ基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸(これは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である)とを反応させ、得られたヒドロキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物に、(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸又はその酸一無水物及び/又は(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物へと誘導されるエポキシ基を2個以上有する化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物を例示することができる。具体的には、下記一般式(I)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物を好適に挙げることができる。
【化5】
【0025】
一般式(I)の式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Aは、-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基又は直結合を表す。lは0~10の整数である。好ましいR、R、R、Rは水素原子であり、好ましいAはフルオレン-9,9-ジイル基である。また、lは通常複数の値が混在するため平均値0~10(整数とは限らない)となるが、好ましいlの平均値は0~3である。
【0026】
ビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物であり、この反応の際には一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。この反応に用いられるビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3- クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9, 9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、4,4'-ビフェノール、3,3'-ビフェノール等を挙げられる。この中でも、フルオレン-9,9-ジイル基を有するビスフェノール類を特に好ましく用いることができる。
【0027】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物や脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。また、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。更に、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。
【0028】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(b)テトラカルボン酸の酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物、又は、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物があり、更には任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物があり、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。更に、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸等の酸二無水物が挙げられ、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。
【0029】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸無水物と(b)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01~10.0であることがよく、より好ましくは0.02以上3.0未満であるのがよい。モル比(a)/(b)が上記範囲であれば、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られやすく、また、アルカリ溶解性が損なわれないため好ましい。
【0030】
エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、既知の方法、例えば特開平8-278629号公報や特開2008-9401号公報等に記載の方法により製造することができる。先ず、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と等モルの(メタ)アクリル酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90~120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法としては、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90~130℃で加熱・攪拌して反応させるという方法がある。この方法で得られたエポキシアクリレート酸付加物は一般式(II)の骨格を有する。
【化6】
〔式(II)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Aは、-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基又は直結合を表し、Xは4価のカルボン酸残基を表し、Y及びYは、それぞれ独立して水素原子又は-OC-Z-(COOH)m(但し、Zは2価又は3価カルボン酸残基を表し、mは1~2の数を表す)を表し、nは1~20の整数を表す。〕
【0031】
(B)成分の別の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体で(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂を挙げることができる。例えば、第一ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得た共重合体に、第二ステップとして(メタ)アクリル酸を反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。
【0032】
(B)成分のもう1つの別の例としては、第一成分として分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物、第二成分として分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物、第三成分としてジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン化合物を挙げることができる。この系統の樹脂としては特開2017-76071号公報に示されているものを参考にすることができる。
【0033】
(B)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物の固形分中に10~40質量%配合されることが好ましく、より好ましくは20~40質量%であることがよい。また、その重量平均分子量(Mw)については、通常2000~10000の間であることが好ましく、3000~7000の間であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が2000に満たないと現像時のパターンの密着性が維持できず、パターン剥がれが生じ、また、重量平均分子量(Mw)が10000を超えると現像残渣や未露光部の残膜が残り易くなる。更に、(B)成分は、その酸価が30~200KOHmg/gの範囲にあることが好ましい。この値が30KOHmg/gより小さいとアルカリ現像がうまくできないか、強アルカリ等の特殊な現像条件が必要となる場合があり、また、200KOHmg/gを超えるとアルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎ、剥離現像が起きやすくなるからである。
なお、(A)の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂については、その1種のみを使用しても、2種以上の混合物を使用することもできる。
【0034】
<(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー>
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物における(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクロイル基を有する樹枝状ポリマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。(メタ)アクロイル基を有する樹枝状ポリマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクロイル基の中の炭素-炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物中のチオール基を付加して得られる公知の樹枝状ポリマーを例示することができる。
【0035】
当該(C)成分はアルカリ可溶性樹脂の分子どうしを架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためにはエチレン性不飽和結合を2個以上有するものを用いることが好ましい。また、モノマーの分子量を1分子中の(メタ)アクロイル基の数で除したアクリル当量が50~300であればよい。
【0036】
(C)成分の配合量については、前記(B)成分との配合割合として、質量割合(B)/(C)で50/50~90/10であり、好ましくは60/40~80/20である。(B)成分の配合割合が50/50より少ないと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジがぎざつきシャープにならないおそれがある。また、(B)成分の配合割合が90/10よりも多いと、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、更に、樹脂成分における酸価度が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなるおそれがあることから、形成されたパターンが目標とする線幅より細ったり、パターンの欠落が生じ易くなったりするといった問題が生じるおそれがある。
【0037】
<(D)カーボンブラックを遮光材として含む遮光成分>
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物における(D)遮光成分は、未処理又は酸化処理されたカーボンブラックを必須として含有する。ここで、未処理とは、酸化処理や樹脂被覆処理といった特別な表面処理を施さないことであり、酸化処理とは、分散工程前にカーボンブラックの表面を何らかの酸化剤で処理することである。このような未処理又は酸化処理されたカーボンブラックは、表面に酸性官能基を多く有していることから、遮光膜を得る際の熱硬化時において、前記の(A)成分のグリシジル基と反応することで、カーボンブラック近傍に(A)成分を多く存在させることが重要である。さらに、カーボンブラックを用いて遮光膜の抵抗値をより高めたい場合には、カーボンブラック表面を染料、顔料、樹脂等で被覆した表面被覆カーボンブラックを用いるようにしてもよい。ただし、カーボンブラックを(D)成分中に80質量%以上配合することが好ましい。カーボンブラック以外の遮光成分としては、黒色有機顔料、混色有機顔料又は遮光材から選ばれる遮光成分を用いることができ、耐熱性、耐光性及び耐溶剤性等に優れたものであるのがよい。ここで、黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、ラクタムブラック等が挙げられる。混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。遮光材としては、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック等を挙げることができる。これらの他の遮光成分は、2種以上を適宜選択して用いることもできる。
【0038】
また、遮光成分は、好ましくは、予め(F)溶剤に分散剤とともに分散させて遮光性分散液としたうえで、遮光膜用感光性樹脂組成物として配合するのがよい。ここで、分散させる溶剤は、後述の(F)成分の一部になるため、上記の(F)成分に挙げるものであれば使用することができるが、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等が好適に用いられる。遮光性分散液を形成する(D)成分の配合割合については、本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物の全固形分に対して40~70質量%の範囲で用いられるのがよく、40~60質量%の範囲が特に好ましい。
【0039】
また、前記分散剤としては、各種高分子分散剤等の公知の分散剤を使用することができる。分散剤の例としては、従来顔料分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)を特に制限なく使用することができるが、例えば、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)等を挙げることができる。特に、顔料への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級又は三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1~100mgKOH/g、数平均分子量が1千~10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤は好適である。この分散剤の配合量については、(D)遮光成分に対して1~30質量%が好ましい。
【0040】
<(E)光重合開始剤>
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物における(E)光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリアリールビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルジアゾール化合物類;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-s-トリアジン系化合物類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-O-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-O-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のO-アシルオキシム系化合物類;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のイオウ化合物;2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、β-メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、3,3’-チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸、ラウリルチオプロピオン酸等のチオール化合物などが挙げられる。この中でも、高感度の遮光膜用感光性樹脂組成物を得られやすい観点から、O-アシルオキシム系化合物類を用いることが好ましい。また、これら光重合開始剤を2種類以上使用することもできる。なお、本発明でいう光重合開始剤とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0041】
また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上述の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加してもよい。そのような化合物の例には、ベンゾフェノンと組みわせて使用すると効果のあるアミン系化合物が含まれる。上記アミン系化合物の例には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0042】
(E)成分の配合量については、前記(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対して2~40質量部が好ましく、より好ましくは3~30質量部である。
【0043】
<(F)溶剤>
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物における(F)溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、ジアセトンアルコール等のアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類等;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0044】
<その他の成分>
また、本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物には、必要に応じて、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤、粘度調整剤等の添加剤を配合することができる。熱重合禁止剤および酸化防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、消泡剤やレベリング剤としては、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。また、界面活性剤としてはラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレート等の非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサン等を主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を挙げることができる。カップリング剤としては3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤を挙げることができる。
【0045】
<固形分>
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物は、上記(A)~(F)成分を主成分として含有する。溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(A)~(E)成分が合計で70質量%が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むことがよい。(F)溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物中に60~90質量%の範囲で含まれるようにするのがよい。
【0046】
<遮光膜の形成方法>
本発明における遮光膜用感光性樹脂組成物は、例えばカラーフィルター遮光膜形成用の感光性樹脂組成物として優れるものであり、遮光膜の形成方法としては、以下のようなフォトリソグラフィー法がある。先ず、感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布し、次いで溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、このようにして得られた被膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、更に後乾燥としてポストベーク(熱焼成)を行う方法が挙げられる。
【0047】
感光性樹脂組成物を塗布する透明基板としては、ガラス基板のほか、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)上にITOや金などの透明電極が蒸着あるいはパターニングされたものなどが例示できる。透明基板上に感光性樹脂組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60~110℃の温度で1~3分間行われる。
【0048】
プリベーク後に行われる露光は、紫外線露光装置によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光装置及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中の感光性樹脂組成物を光硬化させる。
【0049】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05~3質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23~28℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0050】
現像後、好ましくは180~250℃の温度及び20~60分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた遮光膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた遮光膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0051】
本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物は、前記のように、露光、アルカリ現像等の操作によって微細なパターンを形成するのに適している。また、本発明の遮光膜用感光性樹脂組成物は、コーティング材として好適に用いることができ、特に液晶の表示装置あるいは撮影素子に使われるカラーフィルター用インキとして好適であり、これにより形成された遮光膜はカラーフィルター、液晶プロジェクション用のブラックマトリックス、遮光膜、タッチパネル用遮光膜等として有用である。
【0052】
本発明で得られた高遮光、高抵抗の遮光膜は、OD3.9/μm以上のときに10V印加電圧で1×10Ω・cm以上の体積抵抗率を確保できるものである。更に、本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、3~8μmまでの細線を形成した場合にも現像密着性に優れるような遮光膜パターンを形成するのに適している。
【実施例0053】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
先ず、本発明の(B)成分に相当する、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例を示す。合成例における樹脂の評価は、以下のとおりに行った。
【0055】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔質量:W(g)〕に含浸させて秤量し〔W(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の質量〔W(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(質量%)=100×(W-W)/(W-W)
【0056】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼製作所(株)製 商品名COM-1600〕を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0057】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)[東ソー(株)製商品名HLC-8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)〔東ソー(株)製〕、温度:40℃、速度:0.6ml/min]にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製PS-オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0058】
[エポキシ当量]
測定対象となるエポキシ化合物をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0059】
また、合成例で使用する略号は次のとおりである。
AA:アクリル酸
BPFE:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。一般式(I)の化合物において、Aがフルオレン-9,9-ジイル基、R~Rが水素原子の化合物。
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
【0060】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE 114.4g(0.23モル)、AA 33.2g(0.46モル)、PGMEA 157g及びTEAB 0.48gを仕込み、100~105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA 35.3g(0.12モル)、THPA 18.3g(0.12モル)を仕込み、120~125℃で加熱下に6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.5質量%、酸価(固形分換算)は103mgKOH/g、GPC分析によるMwは3600であった。
【0061】
[遮光膜用感光性樹脂組成物の調製]
表1から表4に示す組成によって配合を行い、実施例1~34、比較例1~9、および基準比較例1~5の感光性樹脂組成物を調製した。配合に使用した各成分は、以下のとおりで、表中の数値はすべて質量部である。
【0062】
(A)エポキシ化合物:
(A)-1:ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物〔日鉄ケミカル&マテリアル(株)製 ESF-300C、エポキシ当量240、グリシジル基数に対する芳香環数:2.09〕
(A)-2:1,6-ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ化合物〔前記式(2)で表される化合物、エポキシ当量167、グリシジル基数に対する芳香環数:1.30〕
(A)-3:1-ナフトールアラルキル型エポキシ化合物〔前記式(3)で表される化合物、エポキシ当量317、グリシジル基数に対する芳香環数:3.13〕
(A)-4:フェノールノボラック型エポキシ化合物〔日鉄ケミカル&マテリアル(株)製 YDPN-6300、エポキシ当量175、グリシジル基数に対する芳香環数:1〕
(A)-5:脂環型エポキシ化合物〔日鉄ケミカル&マテリアル(株)製 ZX-1658GS、エポキシ当量132、グリシジル基数に対する芳香環数:0〕
【0063】
(B)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂:
前記合成例1で得られた重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液
【0064】
(C)光重合性モノマー:
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物〔日本化薬(株)製 DPHA、アクリル当量96~115〕
【0065】
(D)遮光成分を含む顔料分散体:
(D)-1:カーボンブラック25.0質量%、分散樹脂5.0質量%、高分子分散剤3.5質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤の顔料分散体
(D)-2:カーボンブラック25.0質量%、高分子分散剤6.3質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤の顔料分散体
(D)-3:有機黒色顔料16.0質量%、高分子分散剤4.8質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤の顔料分散体
(D)-4:チタンブラック15.0質量%、高分子分散剤4.0質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤の顔料分散体
(D)-5:染料被覆カーボンブラック25.0質量%、分散樹脂(アルカリ可溶性樹脂(前記(B)成分を使用))8.1質量%、高分子分散剤2.0%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤の顔料分散体
【0066】
(E)光重合開始剤:
オキシムエステル系光重合開始剤〔(株)ADEKA製 NCI-831〕
【0067】
(F)溶剤:
(F)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(F)-2:ジエチレングリコールジメチルエーテル
(F)-3:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
(F)-4:ジエチレングリコールジブチルエーテル
【0068】
(G)シランカップリング剤:信越化学(株)製 KBM-803
【0069】
(H)界面活性剤:ビックケミー・ジャパン(株)製 BYK-330
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
[評価]
実施例1~34、比較例1~9、および基準比較例1~5の感光性樹脂組成物を用いて、以下に記す評価を行った。これらの評価結果を表5~8に示す。
【0075】
<OD/μmの評価>
上記で得られた各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が1.0μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、ネガ型フォトマスクを被せず、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで40mJ/cmの紫外線を照射し、光硬化反応を行った。
【0076】
次に、この露光済み塗板を23℃、0.04%水酸化カリウム水溶液を用い1kgf/cmのシャワー圧にて80秒の現像後、5kgf/cm圧のスプレー水洗を行い、その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間熱ポストベークした。この塗板のOD値を透過濃度計を用いて評価した。また、塗板に形成した遮光膜の膜厚を測定し、OD値を膜厚で割った値をOD/μmとした。
【0077】
<熱硬化後残膜率の評価>
前記で得られた各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が3.0μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした後に、塗板に形成した遮光膜の膜厚を測定した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、180分間熱ポストベークした後、再度塗板に形成した遮光膜の膜厚を測定し、ポストベーク前後の膜厚から以下計算式に基づいて算出した。
残膜率(%)=100×ポストベーク後膜厚(μm)/ポストベーク前膜厚(μm)
【0078】
<体積抵抗率上昇度の評価>
前記で得られた各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて100mm×100mmのクロム蒸着ガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が3.0μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、180分間熱ポストベークした後、エレクトロメーター(ケースレー社製、「6517A型」)を用い、1Vステップで各印加電圧において60秒ずつ電圧保持する条件で、印加電圧1Vから10Vにおける体積抵抗率を測定した。10V印加時の体積抵抗率に対して、(A)成分を用いない基準比較例1を基準とした時の実施例1~11および比較例1~3の上昇度と、(A)成分を用いない基準比較例2を基準とした時の実施例12~24の上昇度と、(A)成分を用いない基準比較例3を基準とした時の比較例4~6の上昇度と、(A)成分を用いない基準比較例4を基準とした時の比較例7~9の上昇度と、(A)成分を用いない基準比較例5を基準とした時の実施例25~33の上昇度とを、それぞれ以下計算式に基づいて算出した。なお、基準としたものは、あとの表中において「Ref.」と表記している。
上昇度=実施例または比較例の各体積抵抗率(Ω・cm)/基準比較例の各体積抵抗率(Ω・cm)
算出された体積抵抗上昇度に対して、下記の判定基準に基づいて体積抵抗上昇度を判定した。
〇:100≦体積抵抗率上昇度
△:10≦体積抵抗上昇度<100
×:体積抵抗上昇度<10
【0079】
<現像特性(最小解像線幅)の評価>
上記で得られた各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が1.2μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、乾燥塗膜の上に1~20μm開口幅のラインパターンが存在するネガ型フォトマスクを密着させ、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで40mJ/cmの紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。
【0080】
次に、この露光済み塗板を23℃、0.04%水酸化カリウム水溶液中、1kgf/cmのシャワー現像圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から、+60秒の現像後、5kgf/cm圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去してガラス基板上にラインパターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間熱ポストベークした後に得られたラインパターンにおいてパターン剥離が発生していない最小開口ラインを最小解像線幅とした。
◎:2μm以上5μm未満
〇:5μm以上9μm未満
△:9μm以上11μm未満
×:11μ以上
【0081】
<体積抵抗率低下率の評価(耐熱性)>
前記の実施例15~17及び34並びに基準比較例2で得られた各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて100mm×100mmのクロム蒸着ガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が3.0μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、180分間熱ポストベークした後、エレクトロメーター(ケースレー社製、「6517A型」)を用い、1Vステップで各印加電圧において60秒ずつ電圧保持する条件で、印加電圧1Vから10Vにおける体積抵抗率を測定した。また、これらとは別に、熱ポストベークの温度を270℃に変更して、同じように実施例15~17及び34並びに基準比較例2の各感光性樹脂組成物に対して、同じ手順を実施して、体積抵抗率を測定した。
10V印加時の体積抵抗率について、熱ポストベークの温度が230℃から270℃への体積抵抗率の低下率(絶対値)を、下記の計算式に基づいて算出した。また、基準比較例2の場合の低下率を1と見做した際に、基準比較例2に対する実施例15~17及び34の各相対値〔低下率の相対値(x)〕を下記の計算式に基づいて算出した。なお、基準比較例2については、あとの表中において「Ref.」と表記している。
低下率(絶対値)=100×(logA-logB)/logB
(ここで、Aは熱ポストベークが270℃の場合の体積抵抗率の測定値(Ω・cm)であり、Bは熱ポストベークが230℃の場合の体積抵抗率の測定値(Ω・cm)である)
低下率の相対値(x)=実施例15、16、17または34の各低下率/基準比較例2の低下率
算出された低下率の相対値について、これを耐熱性として、下記の判定基準に基づいて判定した。
◎:0≦x<0.5
〇:0.5≦x<0.8
△:0.8≦x<1.0
×:1.0≦x
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
実施例1~34、比較例1~9および基準比較例1~5の結果から、カーボンブラックを遮光材とする遮光成分を含有する感光性樹脂組成物に(A)成分であるエポキシ化合物を添加することにより、体積抵抗率が向上する事が明らかである。その中でも特に実施例15~17、実施例21~24、実施例28~30は体積抵抗率の上昇度が非常に高く、尚且つ、最小解像線幅が細いことから現像密着性にも優れており、高遮光・高抵抗化と高精細化を両立した遮光膜用感光性樹脂組成物である。また、(A)成分のうち、(A)-1~(A)-3のエポキシ化合物を用いた実施例15~17の場合は前記の耐熱性に優れることが分かったが、特に、(A)-1及び(A)-2の場合がより耐熱性に優れることが分かった。