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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158990
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ロート、ろ過用器具およびろ過方法
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B01L3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037321
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2021059259
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】菅 寿夫
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AB00
4G057AB37
(57)【要約】
【課題】ろ過効率を向上させる。
【解決手段】ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有する樹脂製のロート状部と、流出口に接続され、液体を吐出する吐出口を先端に有する樹脂製の管状部と、を備え、管状部は、ロート状部にろ紙を取り付けてろ液を注入したときに、ろ紙とロート状部との隙間および管状部の内部に液体を満たした状態を維持しつつ吐出口から液体を吐出できるような内径を有する、ロートである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有するロート状部と、
前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する管状部と、
を備え、
前記管状部は、前記ロート状部にろ紙を取り付けて前記ろ液を注入したときに、前記ろ紙と前記ロート状部との隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ前記吐出口から前記液体を吐出できるような内径を有する、
ロート。
【請求項2】
前記管状部は、前記吐出口に向かって内径が小さくなり、前記吐出口の内径が前記流出口よりも小さくなるように構成される、
請求項1に記載のロート。
【請求項3】
前記管状部は、前記流出口と前記吐出口との間に前記管状部の内径を調整する弁を備える、
請求項1に記載のロート。
【請求項4】
前記管状部における前記吐出口の角度が前記管状部に対して垂直である、
請求項1に記載のロート。
【請求項5】
前記管状部の長さが65mm以上200mm以下である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のロート。
【請求項6】
前記管状部の内径が1mm以上8mm以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のロート。
【請求項7】
前記ロート状部および前記管状部は樹脂製であって、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびフッ素樹脂の少なくとも1つから形成される、
請求項1~6のいずれか1項に記載のロート。
【請求項8】
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有するロート状部と、
前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する管状部と、
を備え、
前記管状部は、前記ロート状部にろ紙を取り付けて前記ろ液を注入したときに、前記吐出口での前記液体の吐出流量が前記ろ紙でのろ過流量以下となるような内径を有する、
ロート。
【請求項9】
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有するロート状部と、前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する管状部と、を備えるロートと、前記ロート状部に取り付けられるろ紙と、を備えるろ過用器具であって、
前記ろ紙は、円錐形状を有し、前記ロート状部に取り付けたときに、円錐の先端が前記ロート状部から浮くとともに前記ロート状部との間に隙間が形成されるように構成され、
前記管状部は、前記ろ紙に前記ろ液を注入したときに、前記ろ紙と前記ロート状部との隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ前記吐出口から前記液体を吐出できるような内径を有する、
ろ過用器具。
【請求項10】
前記ろ紙の円錐形状の開き角度が、前記ロート状部の開き角度よりも大きい、
請求項9に記載のろ過用器具。
【請求項11】
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有するロート状部と、前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する管状部と、を備えるロートを準備する工程と、
ろ紙を、円錐形状であって、前記ロート状部に取り付けたときに、円錐の先端が前記ロート状部から浮くとともに前記ロート状部との間に隙間が形成されるような形状に成形する工程と、
前記成形したろ紙を前記ロート状部に取り付ける工程と、
前記ろ紙にろ液を注入する工程と、を有し、
前記管状部は、前記ろ紙に前記ろ液を注入したときに、前記ろ紙と前記ロート状部との隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ前記吐出口から前記液体を吐出できるような内径を有し、
前記ろ液を注入する工程では、前記隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ、前記液体を吐出させる、
ろ過方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロート、ろ過用器具およびろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学分析操作において、試料液に含まれる固形分を取り除くために、ろ過操作を行うことがある(例えば特許文献1を参照)。例えば実験室などでは、ロートおよびろ紙を用いてろ過操作が行われる。
【0003】
ろ過操作の効率性を高める観点からは、ろ過速度を速めることが重要であり、使用するろ紙の孔径でろ過速度が最大となることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-282079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ろ過操作の際にロート内に空気が入り込むことでロートからの液体の吐出が阻害され、十分なろ過速度を得られないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ロートにおいてろ過速度を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有する樹脂製のロート状部と、
前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する樹脂製の管状部と、を備え、
前記管状部は、前記ロート状部にろ紙を取り付けて前記ろ液を注入したときに、前記ろ紙と前記ロート状部との隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ前記吐出口から前記液体を吐出できるような内径を有する、
ロートが提供される。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、
前記管状部は、前記吐出口に向かって内径が小さくなり、前記吐出口の内径が前記流出口よりも小さくなるように構成される。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、
前記管状部は、前記流出口と前記吐出口との間に前記管状部の内径を調整する弁を備える。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1の態様において、
前記管状部における前記吐出口の角度が前記管状部に対して垂直である。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれかにおいて、
前記管状部の長さが65mm以上200mm以下である。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれかにおいて、
前記管状部の内径が1mm以上8mm以下である。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれかにおいて、
前記ロート状部および前記管状部は樹脂製であって、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびフッ素樹脂の少なくとも1つから形成される。
【0014】
本発明の第8の態様は、
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有するロート状部と、
前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する管状部と、
を備え、
前記管状部は、前記ロート状部にろ紙を取り付けて前記ろ液を注入したときに、前記吐出口での前記液体の吐出流量が前記ろ紙でのろ過流量以下となるような内径を有する、
ロートである。
【0015】
本発明の第9の態様は、
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有するロート状部と、前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する管状部と、を備えるロートと、前記ロート状部に取り付けられるろ紙と、を備えるろ過用器具であって、
前記ろ紙は、円錐形状を有し、前記ロート状部に取り付けたときに、円錐の先端が前記ロート状部から浮くとともに前記ロート状部との間に隙間が形成されるように構成され、
前記管状部は、前記ろ紙に前記ろ液を注入したときに、前記ろ紙と前記ロート状部との隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ前記吐出口から前記液体を吐出できるような内径を有する、
ろ過用器具である。
【0016】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、
前記ろ紙の円錐形状の開き角度が、前記ロート状部の開き角度よりも大きい。
【0017】
本発明の第11の態様は、
ろ液を注入するための注入口、および、ろ過された液体を流出させる流出口を有するロート状部と、前記流出口に接続され、前記液体を吐出する吐出口を先端に有する管状部と、を備えるロートを準備する工程と、
ろ紙を、円錐形状であって、前記ロート状部に取り付けたときに、円錐の先端が前記ロート状部から浮くとともに前記ロート状部との間に隙間が形成されるような形状に成形する工程と、
前記成形したろ紙を前記ロート状部に取り付ける工程と、
前記ろ紙にろ液を注入する工程と、を有し、
前記管状部は、前記ろ紙に前記ろ液を注入したときに、前記ろ紙と前記ロート状部との隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ前記吐出口から前記液体を吐出できるような内径を有し、
前記ろ液を注入する工程では、前記隙間および前記管状部の内部に前記液体を満たした状態を維持しつつ、前記液体を吐出させる、
ろ過方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂製ロートにおいてろ過速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るロートの構成概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るロートにおいてろ過操作を説明するための図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態に係るロートの構成概略図である。
図4図4は、本発明の他の実施形態に係るロートの構成概略図である。
図5図5は、従来のロートの概略構成図である。
図6図6は、従来のロートにおいてろ過操作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、ロートにてろ過速度を最大化できない点について検討を行ったところ、ろ液をろ過したときに、ロート内に空気が取り込まれるために、ろ過された液体が効率よくロート内から吐出されないことを見出した。以下、この点について、図を用いて具体的に説明する。図5は、従来のロートの概略構成図である。図6は、従来のロートにおいてろ過操作を説明するための図であり、その断面視図である。
【0021】
図5に示すように、従来のロート100は、ロート状部111および管状部112を備える。管状部112の吐出口112aは管状部112に対して傾斜している。ろ過操作においては、図6に示すように、まず、円錐状に成形したろ紙20を、ロート状部111の内周面に隙間なく接するように、ロート100に配置する。このとき、円錐状のろ紙20の先端は管状部112へ突出した状態となる。続いて、注入口111aからろ紙20上にろ液21を注ぎ、ろ紙20にて液体22が分離され、管状部112の吐出口112aから吐出される。このとき、ロート100では、撥水性がよく液体が弾かれたりするため、液体22とともに空気が取り込まれてしまう。この結果、液体22が管状部112の内部を通って吐出口112aから滴下する形となり、液体22をロート100内からスムーズに吐出させることができない。
【0022】
このように、ロート100では、空気の取り込みにより、ろ紙20の孔径に応じたろ過速度を得られず、ろ過効率が悪くなってしまう。特に、ロート100が樹脂製の場合では、ガラス製の場合と比較して撥水性がよく、液体が弾かれやすくなるため、空気の取り込みがより顕著となり、ろ過速度を十分に得られないことがある。
【0023】
このことから、本発明者は、ろ過操作の際にロート内の液体への空気の取り込みを抑制する方法について検討を行い、管状部の内径に着目した。これまで、ろ過速度を最大化する観点からは管状部の内径を大きくすることがよいと考えられていた。そのため、従来のロートは、例えば管状部の内径が比較的大きくなるように、もしくは管状部の吐出口の角度を管状部に対して斜めに切ることで吐出口の内径が大きくなるように構成されていた。しかし、本発明者の検討によると、ロートでは、内径を大きくするほど、空気を取り込みやすくなり、かえって、ろ過速度が低下することが見出された。
【0024】
そこで、本発明者は、管状部の内径を適宜変更してさらに検討を行った。その結果、管状部の内径を小さくし、ろ紙にろ液を注いだときに、ろ紙とロート状部との隙間および管状部の内部に、ろ過された液体が満たされた状態を維持しつつ、液体を吐出することにより、ろ過速度を最大化できることを見出した。
【0025】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
【0026】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態にかかるロートについて樹脂製の場合を一例として図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるロートを説明する断面概略図である。
【0027】
(ロート)
本実施形態のロート1は、図1に示すように、ロート状部11と管状部12とを備える。
【0028】
ロート状部11は、ろ液を注入するための注入口11aと、ろ過された液体を流出させる流出口11bと、を有し、ろ紙を取り付けてろ液を注入したときに、ろ液を保持するものである。ロート状部11は、例えば円錐形状を有し、注入口11aから流出口11bに向かって縮径して構成される。ロート状部11は、ろ紙を配置できるように円錐形状を有する。ロート状部11の大きさは、ろ紙を配置できれば特に限定されず、適宜変更することができる。
【0029】
なお、ロート状部11の広がる角度は、特に限定されないが、例えば75°以上105°以下であることが好ましい。
【0030】
管状部12は、液体が自重落下できるようにロート状部11の流出口11bに垂直に接続される。管状部12は、ロート状部11から流入する液体を外部に吐出するための吐出口12aを先端に有する。本実施形態では、管状部12は、吐出口12aに向かって内径が小さくなり、吐出口12aの内径が流出口11bよりも小さくなるように構成されている。具体的には、管状部12は、流出口11bに接続される直管13と、直管13に接続され、先端に吐出口12aを有し、内径が吐出口12aに向かって縮径するノズル部14と、を備える。
【0031】
本実施形態の管状部12は、ロート状部11にろ紙20を取り付けてろ液21を注入したときに、ろ紙20とロート状部11との隙間および管状部12の内部に液体22を満たした状態を維持しつつ吐出口12aから液体22を吐出できるような内径を有する。具体的には、管状部12の吐出口12aの内径が流出口11bよりも小さく構成されることで、液体22を表面張力により吐出口12aで保持させやすくできる。液体が表面張力を保持することにより、液体が吐出口12aで留まりやすくなり、吐出口12aからの液体の滴下を抑制することができる。これにより、吐出口12aからの液体22の吐出流量を、ろ液21がろ紙20でろ過されるろ過流量と同等もしくはそれ以下、好ましくはろ過流量よりも少なく調整することができる。つまり、管状部12の内径は、ロート状部11にろ紙20を取り付けてろ液21を注入したときに、吐出口12aでの液体22の吐出流量がろ紙20でのろ過流量以下となるような内径となる。この結果、管状部12などに液体を留めやすくすることができ、吐出口12aから液体22を吐出させながらも、ロート1内を液体22で満たした状態を維持することができる。
【0032】
なお、ろ過流量とは、ろ液21がろ紙20でろ過され、ろ紙20を透過する液体22の流量を示す。ろ過流量は、ろ紙20の孔径やろ紙20上に注入するろ液21の注入量によって変動し得る。
【0033】
ここで、ロート1内を液体で満たした状態を維持しつつ液体を吐出させることによる効果について図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るロートにおいてろ過操作を説明するための図であり、その断面視図である。
【0034】
図2は、ロート1のロート状部11の中にろ紙20を配置した後、ろ液21をろ紙20上に注入し、ろ紙20で液体22がろ過により分離された図を示す。ロート1において、ロート1とろ紙20との隙間および管状部12の内部が液体22で満たされた状態で液体22が吐出される場合、管状部12などに留まる液体22の重量が増す。そのため、吐出口12aからの液体22の自重落下を促し、液体22の吐出をスムーズに行うことができる。また、ロート1が樹脂製であると、その撥水効果により液体22の表面張力効果を高めて、吐出口12aでの液切れを向上させ、液体22をよりスムーズに吐出させることができる。しかも、ロート1内が液体22で満たされ密閉された状態であるので、液体22の吐出にともない、ろ紙20上にあるろ液21がろ過面全体で吸引されることとなる。これにより、液体22を吐出させる一方で、ろ液21を吸引によりろ過してロート1内を液体22で満たされた状態を維持することが可能となる。なお、ろ過面とは、ろ液21がろ紙20と接触する面を示す。
【0035】
これに対して、図6に示すように、ろ紙20にろ液21を注入したときに、ロート1内に液体22とともに空気が取り込まれ、ロート1内を液体22で満たされた状態を維持できない場合、ロート1内に留まる液体22の重量が少なく、吐出口112aから液体22が滴下してしまう。そのため、液体22をスムーズに吐出することができなくなる。しかも、ろ過面での吸引効果を得られず、ろ過効率も悪くなる。この結果、十分なろ過速度を得られなくなる。
【0036】
このように、ロート1内を液体22で満たされた状態を維持しつつ液体22を吐出させることにより、吐出口12aから液体22を自重落下によりスムーズに吐出させつつ、液体22の自重落下にともなう、ろ過面での吸引効果によりろ過を促進させることができる。
【0037】
管状部12において吐出口12aの内径は、ロート1内を液体22で満たした状態を維持しつつ液体22を吐出できるような大きさであれば特に限定されない。もしくは、吐出口12aの内径は、管状部12の吐出口12aからの液体22の吐出流量がろ紙20でのろ過流量以下となるような大きさであれば特に限定されない。吐出口12aの内径は、ろ紙20の孔径やそのろ過流量、または液体22の種類に応じて適宜変更することができるが、吐出口12aでの液体22の表面張力を保持する観点からは、1mm以上8mm以下であることが好ましい。
【0038】
また、管状部12を構成する直管13の内径は特に限定されず、例えば5mm以上10mm以下とするとよい。
【0039】
また、吐出口12aからの吐出をよりスムーズにする観点からは、管状部12を長くすることが好ましい。管状部12を長くすることにより、ロート1内に溜まる液体22の重量を増やすことができる。これにより、液体22の吐出口12aからの自重落下をより促すとともに、ろ過面での吸引効果をより増大させて、液体22の吐出をよりスムーズにすることができる。具体的には、管状部12の長さは65mm以上200mm以下とすることが好ましい。管状部12の長さの調整は、直管13もしくはノズル部14の長さを適宜変更するとよい。
【0040】
ロート状部11および管状部12を形成する材料は、樹脂であれば特に限定されないが、液体22による腐食を抑制する観点からはポリエチレン、ポリプロピレンおよびフッ素樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。また、このような樹脂によれば、ノズル部14を切断しやすく、切断によりノズル部14の吐出口12aの内径を容易に変更することができる。
【0041】
(ろ過方法)
続いて、上述したロート1を用いたろ過方法について説明する。
【0042】
まず、ロート1を準備する。ここでは、例えばロート状部11に直管13が接続された従来公知の樹脂製ロートに、吐出口12aに向かって縮径する樹脂製のノズル部14を取り付けることにより、ロート1を準備する。
【0043】
続いて、ロート1のロート状部11内にろ紙20を配置する。具体的には、ろ紙20を円錐形状に成形し、ロート状部11内に配置する。これにより、ろ過用器具を準備する。
【0044】
ろ紙20を円錐形状に成形する際、ろ紙20の円錐形状の開き角度(先端のなす角度)がロート状部11の開き角度よりも大きくなるように成形することが好ましい。このように成形することにより、円錐形状のろ紙20をロート状部11に取り付けたときに、ろ紙20を、その円錐形状の先端がロート状部11に接触せずに浮いた状態で配置でき、ろ紙20とロート状部11との内周面との間に隙間を形成することができる。隙間の形成によりろ紙20とロート状部11との接触面を減らすことができる。ろ紙20とロート状部11との接触面が広いと、ろ紙20からのろ過が阻害されることがあるが、隙間を設けることでろ過効率を向上させることができる。
【0045】
ろ紙20の開き角度は、ロート状部11の開き角度よりも大きいことが好ましく、例えば60°以上90°以下とするとよい。このような角度となるように成形することで、ろ紙20の型崩れを抑制することができる。
【0046】
続いて、ろ紙20上にろ液21を注入し、ろ過操作を行う。このとき、ロート1では、ノズル部14の吐出口12aの内径が小さく設定されているので、ろ過された液体22がロート状部11とろ紙20との隙間や管状部12の内部に溜まり、ロート1内が液体22で満たされた後、吐出口12aから液体22が吐出されることになる。そして、ろ液21を注入してろ過操作を行っている間、ロート1内を液体22で満たした状態を維持しつつ、液体22を吐出させることができる。
【0047】
ろ過操作においては、使用するろ紙20の孔径やろ液21の種類によってろ過流量が変動するため、ろ過流量に応じてノズル部14の吐出口12a内径を適宜変更するとよい。例えば、樹脂製のノズル部14の吐出口12a側を切断し、その内径を大きくしてもよい。また例えば、吐出口12aの内径が異なる複数のノズル部14を予め用意し、ろ過流量に応じて、ノズル部14を適宜変更するとよい。
【0048】
また、ろ過対象であるろ液21の粘度は特に限定されず、ろ液21をろ紙20に注入したときに、管状部12内に液体22を満たした状態を維持しつつ吐出口12aから液体22を吐出できるような粘度であればよい。
【0049】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0050】
本実施形態のロート1によれば、管状部12におけるノズル部14の吐出口12aの内径が、ろ紙20にろ液21を注入したときに、ロート1内を液体22で満たした状態を維持しつつ、吐出口12aから液体22を吐出させるような大きさとなっている。もしくは、吐出口12aの内径が、ロート状部11にろ紙20を取り付けてろ液21を注入したときに、吐出口12aでの液体22の吐出流量がろ紙20でのろ過流量以下となるような大きさとなっている。これにより、ろ紙20上にろ液21を注入したときに、ロート1内を液体22で満たした状態を維持しつつ、液体22を吐出させることができる。そのため、ロート1内に溜まった液体22の重量を増やして、液体22の自重落下による吐出速度を向上させることができる。しかも、液体22の吐出にともない、ろ過面全体で吸引効果が働くため、ろ液21のろ過を促進させて、ロート1内を液体22で満たした状態を維持することができる。また、ロート1が撥水性を有する樹脂で形成されているので、液体22の表面張力を高め、吐出口12aでの液切れを向上させることができる。さらに、吐出口12aにおいて、液体22の表面張力により、液体22の落下方向を安定させることができる。これらの作用により、ろ紙20の孔径に応じて、ろ過速度を高めることができ、ろ過効率を向上させることができる。そして、ろ過時間を短縮するとともに一定化することにより、空試験や複数のサンプルを分析するときの結果のばらつきを低減し、測定結果の精度を高く維持することが可能となる。
【0051】
管状部12の長さは65mm以上200mm以下であることが好ましい。このような長さとすることにより、ロート1内に溜まる液体22の重量を増やし、液体22の自重落下による吐出速度をより向上させるとともに、ろ過面での吸引効果を高め、ろ過速度を向上させることができる。
【0052】
管状部12の吐出口12aの内径は1mm以上8mm以下であることが好ましい。このような内径とすることにより、吐出口12aでの液体22の表面張力を保持させやすくなるので、吐出口12aから液体22を吐出させながらもロート1内を液体22で満たした状態を維持しやすくすることができる。
【0053】
また、ロート1はポリエチレン、ポリプロピレンおよびフッ素樹脂の少なくとも1つから形成されることが好ましい。これらの樹脂によれば、液体22による腐食を抑制できる。また、ロート1のノズル部14を切断できるため、吐出口12aの内径を適宜変更することができ、ろ紙20の孔径に応じてろ過速度を変更することができる。
【0054】
また、ろ紙20を、その円錐形状の先端がロート状部11から浮いた状態となり、かつロート状部11との間で隙間ができるように配置することで、ろ紙20をロート状部11に隙間なく密着した状態で配置する場合と比較して、ろ紙20でのろ過効率をより向上させることができる。
【0055】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0056】
上述した実施形態では、ロート状部11および管状部12を形成する材料が樹脂である場合について説明したが、本発明では、これらの部材はともにガラス製であってもよく、いずれか一方が樹脂製、他方がガラス製というように異なる材料で形成されていてもよい。ガラス製の場合であっても、管状部12内への空気の取り込みが生じることがあり、上述した構成により空気の取り込みを抑制し、ろ過速度を向上させることができる。
【0057】
上述した実施形態では、直管13にノズル部14を取り付けることでロート1を構成する場合を説明したが、直管13とノズル部14とを一体的に構成してもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、直管13にノズル部14を取り付けることで、管状部12を吐出口12aに向かって内径が小さくなるように構成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0059】
例えば、管状部12に、内径を調整するための弁を設け、その内径を、ロート1にろ液21を注入したときにロート1内を液体22で満たした状態を維持しつつ液体22を吐出できるような大きさに調整してもよい。具体的には、図3に示すように、ノズル部14に弁15を設け、ノズル部14の内径を弁15により調整できるように、管状部12を構成してもよい。図3では、ノズル部14に弁15を取り付ける場合を示すが、弁15は直管13に設けてもよく、直管13に弁15を取り付ける場合はノズル部14は省略してもよい。弁15によれば、直管13やノズル部14を備える管状部12の内径を調整して、ロート1内を液体22で満たした状態を維持しつつ吐出口12aから液体22を吐出させることができる。これにより、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また例えば、管状部12において、吐出口12aの角度を管状部12に対して垂直、つまり、液体22の自重落下の方向に対して垂直となるように構成してもよい。具体的には、図4に示すように、管状部12を直管13で構成するとともに、直管13の先端にある吐出口12aの角度を直管13に対して垂直とするとよい。吐出口12aが水平から傾斜していると、吐出口12aの角度が水平である場合と比べて、吐出口12aの内径が大きくなる。そのため、吐出口12aにおいて液体22が表面張力を最大限に保持しにくくなる。また、吐出口12aが水平から傾斜していると、液体22が吐出口12aのうち突き出た側から流れ落ちやすくなるため、突き出ていない側から管状部12内に空気が取り込まれやすくなる。これらの結果、吐出口12aから液体22を吐出させる際に、ロート1内を液体22で満たした状態を維持しにくくなる。この点、吐出口12aの角度を垂直とすることにより、吐出口12aで液体22を保持し、また吐出口12aからの空気の取り込みを抑制することができる。これにより、液体22の吐出させる際に管状部12内を液体22で満たした状態を維持しやすくできる。
【0061】
図4のように、管状部12を、吐出口12aの角度が垂直な直管13で構成する場合、直管13の内径は5mm以上8mm以下とすることが好ましい。
【実施例0062】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0063】
(実施例1)
実施例1では、従来公知のポリプロピレン樹脂からなるロートをロート本体部として準備し、その直管の先端にポリプロピレン樹脂からなるノズル部を取り付け、実施例1のロートを構成した。ロート本体部の直管は、長さが75mm、内径が8mmであった。直管の先端は、図6に示すように、直管に対して傾斜していた。また、ノズル部は、長さが147mm、直管に取り付ける側の内径が10mm、吐出口の内径が1.5mmであり、内径が吐出口に向かって縮径している。ノズル部の吐出口は、直管に対して直角となるように形成され、フラット形状であった。また、ロート本体部にノズル部を取り付けたときの管状部の長さは200mmであった。また、ロート本体部におけるロート状部の開き角度は90°であった。なお、ロートの構成について下記表1に示す。
【0064】
続いて、ろ紙を円錐状に成形した。このときの円錐状の先端のなす角度がおおよそ100°となるように成形した。続いて、円錐状のろ紙を、ロートの内周面との間に隙間ができるように、実施例1のロートに取り付け、ろ過操作を行った。本実施例では、液体として純水を用いて、50mlの純水をろ紙に注入したときに、純水が吐出されるまでの時間(ろ過時間)を測定した。ろ紙としては、ろ水時間の異なる、定量ろ紙5A、5Bおよび5C(ともに直径125mm)の3種類を準備した。ろ水時間とは、JIS P3801に準拠して、10cmのろ紙面において、20℃、100mlの蒸留水を0.98kPaの圧力によりろ過する時間を示し、各ろ紙のろ水時間は、5Aが60秒、5Bが195秒、5Cが570秒であった。そして、各ろ紙を用いたときのろ過時間を測定した。測定された時間を表1に示す。
【0065】
(実施例2~10)
実施例2~10では、ロート本体部に取り付けるノズル部の長さや内径を下記表1に示すように適宜変更した以外は、実施例1と同様に操作を行い、ろ過時間を測定した。
【0066】
(実施例11)
実施例11では、ロート本体部における直管の先端を切断して、吐出口が直管に対して傾斜した状態から垂直となるように吐出口の角度を調整して、管状部を構成した。管状部は、長さが65mm、内径が5mmであった。そして、ノズル部を取り付けずに、実施例1と同様にろ過操作を行い、ろ過時間を測定した。
【0067】
(比較例1)
比較例1では、ロート本体部にノズル部を取り付けたり先端を切断したりすることなく、そのまま使用した以外は、実施例1と同様にろ過操作を行い、ろ過時間を測定した。
【0068】
【表1】
【0069】
比較例1では、ろ紙上に純水を注入したときに、ロート内に純水とともに空気が取り込まることにより、純水を注入している間、ろ紙とロート状部との隙間や直管の内部を純水で満たした状態(いわゆる足水のある状態)を維持できず、純水が吐出口から滴下することが確認された。また、純水が滴下することでスムーズに吐出されなかったため、50mlの純水を吐出させるまでの時間が長くなることが確認された。
【0070】
これに対して、実施例1~11では、ロートにおける管状部の内径を小さくし、ロートの吐出口からの吐出流量をろ紙でのろ過流量以下とすることにより、ロート内に純水を注入したときに、純水を吐出しながらも、ロート内を純水で満たした状態を維持できることが確認された。また、吐出口から純水が滴下することなく、純水がスムーズに吐出されるため、ろ過時間を比較例1と比べて短縮できることが確認された。
【0071】
また、例えば実施例1と実施例6によると、吐出口の内径を同一としたときに、管状部を長くするほど、ろ過時間を短縮できることが確認された。これは、管状部を長くすることにより、ロート内に溜まる純水の重量を増やして、純水の自重落下による吐出を促進させるとともに、自重落下による吸引効果をより向上できたためと考えられる。
【0072】
また、実施例11と比較例1によれば、実施例11では、管状部の切り口を管状部に対して垂直にすることで吐出口の内径を比較例1に比べて小さくできることで、足水のある状態を維持しつつ純水を吐出できることが確認された。
【0073】
以上説明したように、ロートにおける管状部の内径を、ろ紙上に液体を注入したときに、ロート内を液体で満たした状態を維持しつつ液体を吐出できるような大きさとすることにより、液体の吐出をスムーズにして、ろ過時間を短縮できることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ロート
11 ロート状部
11a 注入口
11b 流出口
12 管状部
12a 吐出口
13 直管
14 ノズル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6