(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159055
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】第四級アンモニウム系表面修飾シリカ、その組成物、作製方法、および使用方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20221006BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20221006BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047971
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】63/168,789
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ワイ. キム
(72)【発明者】
【氏名】大西 正悟
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158DA12
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED22
3C158ED26
5F057AA06
5F057AA14
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5F057BA11
5F057CA11
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5F057EA27
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5F057EA31
5F057EB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゼータ電位が高く、かつ粒子径の変化が最小限であるシリカ粒子を提供する。
【解決手段】シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカを提供する。および、別の対象として、シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカを使用して基板を研磨するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカであって、前記第四級アンモニウム系ポリマーが、式(I):
【化1】
式中、
R
1は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換ヘテロアリーレン、および置換シクロアルキレンから選択され、
R
2は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換ヘテロアリーレン、および置換シクロアルキレンから選択され、
R
3は、置換または非置換のオキシアルキレンであり、
R
4は、それぞれ独立して、置換または非置換C1~C8アルキルであり、
Xは、いずれの場合も、対イオンであり、
mは、1~20,000の間の整数であり、
nは、1~10,000の間の整数である
の化合物によって表される、表面修飾シリカ。
【請求項2】
Xが、それぞれ独立して、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、および酢酸イオンからなる群から選択される、請求項1に記載の表面修飾シリカ。
【請求項3】
R1およびR2が、それぞれ独立して、置換または非置換C1~C8アルキレンであり、R4が、それぞれ独立して、置換または非置換C1~C8アルキルである、請求項1または2に記載の表面修飾シリカ。
【請求項4】
R1およびR2が、それぞれ独立して、非置換C1~C4アルキレンであり、R4が、それぞれ独立して、非置換C1~C4アルキルである、請求項3に記載の表面修飾シリカ。
【請求項5】
R3が、非置換オキシアルキレンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ。
【請求項6】
前記第四級アンモニウム系ポリマーが、約2,000g/mol~約15,000g/molの間の分子量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ。
【請求項7】
約60nm~約80nmの間の平均二次粒子径を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ。
【請求項8】
約0.07以下の多分散指数を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ。
【請求項9】
約30mV~約70mVの間のゼータ電位を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の表面修飾シリカおよび分散媒を含む、研磨用組成物。
【請求項11】
前記第四級アンモニウム系ポリマーが、前記組成物の総重量に基づいて、約0.2%~約0.6%の濃度で存在する、請求項10に記載の研磨用組成物。
【請求項12】
約5~約9のpHを有する、請求項10または11に記載の研磨用組成物。
【請求項13】
pH調整剤をさらに含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項14】
基板を研磨するための方法であって、
a)請求項10~13のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用意するステップと、
b)前記基板を前記研磨用組成物で研磨して、研磨された基板を提供するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
表面修飾シリカを調製するための方法であって、
a)シリカおよび分散媒を含む分散液を調製するステップと、
b)第四級アンモニウム系ポリマー水溶液と前記分散液とを混合し、
それによって前記表面修飾シリカを調製するステップと
を含み、
前記第四級アンモニウム系ポリマーが、式(I):
【化2】
式中、
R
1は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換ヘテロアリーレン、および置換シクロアルキレンから選択され、
R
2は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換ヘテロアリーレン、および置換シクロアルキレンから選択され、
R
3は、置換または非置換オキシアルキレンであり、
R
4は、それぞれ独立して、置換または非置換C1~C8アルキルであり、
Xは、いずれの場合も、対イオンであり、
mは、1~20,000の間の整数であり、
nは、1~10,000の間の整数である、
の化合物である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリカが第四級アンモニウム系ポリマーによって修飾されている、表面修飾シリカに関する。さらに、表面修飾シリカを含む研磨用組成物、ならびに表面修飾シリカを作製および使用するための方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(CMP)は、基板(半導体ウェーハなど)の表面から材料を除去するプロセスであり、表面は、磨滅などの物理的プロセスを酸化またはキレート化などの化学プロセスと組み合わせることによって研磨(平坦化)される。その最も基本的な形態において、CMPは、基板表面にまたは基板を研磨する研磨パッドにスラリーを塗布することを伴う。このプロセスによって、不要な材料の除去および基板表面の平坦化の両方が達成される。除去または研磨プロセスは、純粋に物理的または純粋に化学的であることが望ましいわけではなく、むしろ両方の相乗的な組み合わせを含む。
【0003】
CMPプロセスで使用される研磨用組成物は、その研磨速度(すなわち、除去速度)およびその平坦化効率に従って特徴付けることができる。研磨速度は、基板表面からの材料の除去速度を指し、通常、単位時間あたりの長さ(厚さ)の単位(例えば、1分あたりのオングストローム(Å))で表される。平坦化効率は、基板から除去される材料の量に対するステップ高さの縮小に関係する。具体的には、研磨表面は、まず表面の「高い地点」に接触し、それから材料を除去して、平面を形成する必要がある。材料のより少ない除去を伴って平面を達成する結果をもたらすプロセスは、平面性を達成するためにより多くの材料の除去を必要とするプロセスよりも効率的であると考えられている。さらに、CMPによって生じ得る表面のスクラッチは、半導体製造において非常に有害な欠陥である。したがって、上記の問題を起こすことなく、十分な研磨速度で適切なCMP性能を達成するには、研磨用組成物の開発が非常に重要である。
【0004】
これらの研磨用組成物は、砥粒などのいくつかの成分を含む。砥粒の種類は、全体的な研磨速度および平坦化効率を含め、CMPプロセスに大きな影響を及ぼす。一般的な砥粒としては、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および酸化スズが挙げられる。
【0005】
これらおよび他の課題は、本明細書に開示されている主題によって対処される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によって具体化および広く説明されるように、ここに開示されている主題の目的または本発明によって解決すべき問題に従って、シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカを提供することが本発明の対象である。本発明の別の対象は、シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカを使用して基板を研磨するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、一態様においてここで開示されている主題は、シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカであって、第四級アンモニウム系ポリマーが、式(I):
【0008】
【0009】
[式中、
R1は、置換または非置換C1~C8アルキル、置換または非置換アリール、置換ヘテロアリール、および置換シクロアルキルから選択され、
R2は、置換または非置換C1~C8アルキル、置換または非置換アリール、置換ヘテロアリール、および置換シクロアルキルから選択され、
R3は、置換または非置換アルキルエーテルであり、
R4は、いずれの場合も、置換または非置換C1~C8アルキルであり、
Xは、いずれの場合も、対イオンであり、
mは、1~20,000の間の整数であり、
nは、1~10,000の間の整数である]
の化合物によって表される、表面修飾シリカに関する。
【0010】
別の態様では、本明細書に記載されている主題は、研磨用組成物であって、シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカと分散媒とを含む、研磨用組成物を対象とする。
【0011】
別の態様では、本明細書に記載されている主題は、基板を研磨するための方法であって、a)本発明の態様の研磨用組成物を用意するステップと、b)基板を研磨用組成物で研磨して、研磨された基板を提供するステップとを含む、方法を対象とする。
【0012】
さらなる別の態様では、本明細書に記載されている主題は、表面修飾シリカを調製するための方法であって、a)シリカおよび分散媒を含む分散液を調製するステップと、b)第四級アンモニウム系ポリマーを分散液に添加し、それによって表面修飾シリカを調製するステップとを含む、方法を対象とする。
【0013】
これらおよび他の態様は、以下でさらに詳細に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、本発明の以下の詳細な説明およびこれに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0015】
本化合物、組成物、および/または方法を開示および説明する前に、これらは、特に指定されない限り、特定の合成方法に限定されることも、または特に指定されない限り特定の成分に限定されることもなく、当然のことながら、異なる場合もあると理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。本明細書に記載のものと同様または等価のあらゆる方法および材料を本発明の実施または試験に使用することもできるが、これより、例示的な方法および材料を記載する。
【0016】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。「X~Y」が複数記載されている場合、例えば、「X1~Y1、あるいは、X2~Y2」と記載されている場合、各数値を上限とする開示、各数値を下限とする開示、および、それらの上限・下限の組み合わせは全て開示されている(つまり、補正の適法な根拠)となる。具体的には、X1以上との補正、Y2以下との補正、X1以下との補正、Y2以上との補正、X1~X2との補正、X1~Y2との補正等は全て適法とみなされなければならない。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。なお、本明細書中に記載の濃度は、POU(ポイントオブユース)における濃度であっても、POUの濃度に希釈する前の濃度であってもよい。
【0017】
本明細書において記載するように、実施形態は、シリカが第四級アンモニウム系ポリマーによって修飾されている、表面修飾シリカである。さらに、表面修飾シリカを含む研磨用組成物、ならびに表面修飾シリカを作製および使用するための方法が提供される。表面修飾シリカは、研磨用組成物中での使用を意図しており、研磨用組成物は、基板を研磨する際に使用され得る。表面修飾シリカおよびその調製方法は、以下のような少なくとも1つの利点を呈する:1)広いpH範囲にわたる高い正の表面電荷、2)粒子径がわずかしか変化しないシリカのカチオン化。
【0018】
ゼータ電位、平均粒子径、および多分散指数は、表面修飾シリカの重要な特性である。
【0019】
本明細書に記載されている表面修飾シリカには、半導体ウェーハの化学機械研磨のためのCMPスラリーへの組み込みなどの用途があるが、これに限定されることはない。
【0020】
A.定義
本発明を説明するために使用される様々な用語の定義を以下に記載する。これらの定義は、特定の事例において特に制限されていない限り、個別に、またはより大きな群の一部として、本明細書全体にわたって使用される用語に適用される。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈から明らかに他のことが示されない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「粒子」または「アルキル基」への言及は、2つ以上のそのような粒子またはアルキル基の混合物を含む。
【0022】
本明細書では、範囲は、「約」のある特定の値から、および/または「約」の別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、別の態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、直前に「約」を使用することによって値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様をなすと理解されるであろう。さらに、各範囲の終点は、他の終点との関係でも、また他の終点とは無関係でも、有意であると理解される。また、本明細書には多くの値が開示されており、各値は、本明細書では、この値自体に加えて、「約」のその特定の値としても開示されていると理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されていることになる。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されていると理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示されていることになる。
【0023】
組成物中の特定の元素または成分の重量部に対する明細書および結論の請求項における参照は、この元素または成分と、重量部が表される組成物または物品内の任意の他の元素または成分との間の重量関係を示す。したがって、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含む化合物では、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、さらなる成分が組成物中に含有されるかどうかに関係なく、そのような比で存在する。
【0024】
成分の重量パーセント(重量%)は、特に反対に述べられていない限り、成分が含まれるビヒクル(Vehicle)または組成物の総重量に基づく。
【0025】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」および「任意選択的に」という用語は、その後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、およびこの記載が、該事象または状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含むことを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を指す。アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。さらなる例は、C2、C4、C6、C8、C10、C12、C14、C16、C18、およびC20などのそれらの炭素鎖長によって示される。これらの基は、ハロ(例えば、ハロアルキル)、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ(それによって、ポリエチレングリコールなどのポリアルコキシが生成される)、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ハロアルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、メルカプト、カルボキシ、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ハロアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、二置換アミノ、エステル、アミド、ニトロ、またはシアノから選択される基で置換され得る。
【0027】
「アルキレン」という用語は、「アルキル」から1個の水素原子を除いてできる二価の基である。アルキレンの代表的な例は、アルキルの代表的な例を二価にしたものが挙げられる。
【0028】
「シクロアルキル」という用語は、少なくとも1個の飽和環を有しまたは少なくとも1個の非芳香族環を有する炭化水素3~8員単環式または7~14員二環式の環系を指し、非芳香族環は、いくらかの不飽和度を有し得る。シクロアルキル基は、任意選択的に、1個または複数の置換基で置換され得る。一実施形態では、シクロアルキル基の各環の0、1、2、3、または4個の原子が置換基で置換され得る。シクロアルキル基の代表的な例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニルなどが挙げられる。
【0029】
「シクロアルキレン」という用語は、「シクロアルキル」から1個の水素原子を除いてできる二価の基である。シクロアルキレン基は、任意選択的に、1個または複数の置換基で置換され得る。一実施形態では、シクロアルキレン基の各環の0、1、2、3、または4個の原子が置換基で置換され得る。シクロアルキレン基の代表的な例は、シクロアルキル基の代表的な例を二価にしたものなどが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」という用語は、5員環または6員環の一価芳香族ラジカルを指し、独立的に、窒素、酸素、および硫黄から選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する5~20個の原子の縮合環系(これらのうちの少なくとも1個は芳香族である)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば、2-ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば、4-ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル(例えば、3-アミノ-1,2-4-トリアゾールまたは3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールを含む)、ピラジニル(例えば、アミノピラジンを含む)、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。したがって、ヘテロアリール基は、いくつかの実施形態では、単環式または二環式である。ヘテロアリール基は、任意選択的に、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で独立的に置換される。
【0031】
「ヘテロアリーレン」という用語は、「ヘテロアリール」から1個の水素原子を除いてできる二価の基である。ヘテロアリーレン基の例は、ヘテロアリール基の例を二価にしたものなどが挙げられる。ヘテロアリーレン基は、いくつかの実施形態では、単環式または二環式である。ヘテロアリーレン基は、任意選択的に、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で独立的に置換される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、炭化水素の単環式、二環式、または三環式の芳香族環系を指す。アリール基は、任意選択的に、1個または複数の置換基で置換され得る。一実施形態では、アリール基の各環の0、1、2、3、4、5、または6個の原子が置換基で置換され得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニルなどが挙げられる。
【0033】
「アリーレン」という用語は、炭化水素の単環式、二環式、または三環式の芳香族環系の二価の基を指す。アリーレン基は、任意選択的に、1個または複数の置換基で置換され得る。一実施形態では、アリーレン基の各環の0、1、2、3、4、5、または6個の原子が置換基で置換され得る。アリーレン基の例としては、アリール基の例を二価にしたものなどが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、1個または複数のさらなる有機ラジカルに結合している部分(アルキル基など)を指す。いくつかの実施形態では、置換部分は、1、2、3、4、または5個のさらなる置換基またはラジカルを含む。適切な有機置換基ラジカルとしては、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシル、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、メルカプト、アルキルチオール、アルコキシ、置換アルコキシ、またはハロアルコキシラジカルが挙げられ、これらの用語は、本明細書に定義されている。本明細書で特に記載されていない限り、有機置換基は、1~4個または5~8個の炭素原子を含み得る。置換部分においてこれが1つより多くの置換基ラジカルと結合している場合、置換基ラジカルは、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルコキシ」という用語は、ラジカル-ORを意味し、式中、Rは、本明細書に定義されているようなアルキル基である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ハロ」という用語は、-F、-Cl、-Br、および-Iを含む任意の適切なハロゲンを指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「メルカプト」という用語は、-SH基を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸」という用語は、-C(O)OH基を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ニトロ」という用語は、-NO2基を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「エーテル」および「アルキルエーテル」という用語は、式Ra-O-Rbによって表され、式中、RaおよびRbは、独立的に、本明細書に記載されているような、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用される場合、「ポリエーテル」という用語は、式-(Ra-O-Rb)x-によって表され、式中、RaおよびRbは、独立的に、本明細書に記載されているような、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロアリール基であり得て、「x」は、1~500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「オキシアルキレン」という用語は、-OR-を意味し、式中、Rは、本明細書に定義されているようなアルキレンである。
【0044】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アシル」という用語は、-C(O)Rラジカルを指し、式中、Rは、本明細書に記載されているような、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、または他の適切な置換基などの任意の適切な置換基である。
【0045】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルキルチオ」という用語は、本明細書で定義されているようなチオール部分を通じて親分子部分に付加される、本明細書で定義されているようなアルキル基を指す。アルキルチオの代表的な例としては、メチルチオ、エチルチオ、tert-ブチルチオ、ヘキシルチオなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「アミノ」という用語は、-NH2ラジカルを意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルキルアミノ」または「一置換アミノ」という用語は、-NHRラジカルを意味し、式中、Rは、本明細書に定義されているようなアルキル基である。
【0048】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「二置換アミノ」という用語は、-NRaRbラジカルを意味し、式中、RaおよびRbは、独立的に、本明細書に定義されているような、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、およびヘテロシクロアルキル基から選択される。
【0049】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「エステル」という用語は、-C(O)ORラジカルを指し、式中、Rは、本明細書に定義されているような、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0050】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アミド」という用語は、-C(O)NRaRbラジカルを指し、式中、RaおよびRbは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「非置換」という用語は、上記のような1個または複数のさらなる有機または無機置換基ラジカルに結合されていない部分(アルキル基など)を指し、すなわち、そのような部分は、水素でのみ置換されている。
【0052】
本明細書で使用される場合、「単環式」という用語は、例えばベンゼンまたはシクロプロパンなどの、原子の単環を含む分子構造を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「二環式」という用語は、例えばナフタレンなどの、一緒に縮合した原子の2個の環を含む分子構造を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「対イオン」という用語は、それが関連する物質の電荷と反対の電荷を有するイオンを指す。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であり得る。対イオンは、正または負の電荷を有し得る。対イオンの非限定的な例としては、ハロゲン化物イオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、NO3
-、ClO4
-、OH-、H2PO4
-、HCO3
-、HSO4
-、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、10-カンファースルホン酸イオン、ナフタレン-2-スルホン酸イオン、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホン酸イオン、エタン-1-スルホン酸-2-スルホン酸イオンなど)、カルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン、プロパン酸イオン、安息香酸イオン、グリセリン酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、グリコール酸イオン、グルコン酸イオンなど)、BF4
-、PF4
-、PF6
-、AsF6
-、およびSbF6
-が挙げられる。多価であり得る対イオンの非限定的な例としては、CO3
2-、HPO4
2-、PO4
3-、B4O7
2-、SO4
2-、S2O3
2-、カルボン酸アニオン(例えば、酒石酸アニオン、クエン酸アニオン、フマル酸アニオン、マレイン酸アニオン、リンゴ酸アニオン、マロン酸アニオン、グルコン酸アニオン、コハク酸アニオン、グルタル酸アニオン、アジピン酸アニオン、ピメリン酸アニオン、スベリン酸アニオン、アゼライン酸アニオン、セバシン酸アニオン、サリチル酸アニオン、フタル酸アニオン、アスパラギン酸アニオン、グルタミン酸アニオンなど)、およびカルボランが挙げられる。
【0055】
正の対イオンは、一価(例えば、アルカリ金属またはアンモニウム)、二価(例えば、土類アルカリ金属)、または三価(例えば、アルミニウム)であり得る。正の対イオンの非限定的な例は、Li+、Na+、またはK+などのアルカリ金属カチオンである。
【0056】
B.表面修飾シリカ
本開示は、シリカ表面が第四級アンモニウム系ポリマーによって修飾されている、表面修飾シリカに関する。このようにシリカ表面を修飾することによって、ゼータ電位が高く、かつ粒子径の変化が最小限であるシリカ粒子を製造することができる。
【0057】
化学機械研磨(CMP)の基本的なメカニズムは、化学反応によって表面層を軟化させ、次いで、軟化した層を、砥粒を用いて機械的力によって除去することである。しかしながら、CMPの役割は、材料の除去のみならず、平坦化、表面の平滑化、均一性の制御、欠陥の低減などもある。したがって、半導体の歩留まりの向上は、CMP加工によって影響を受ける。CMPによって生じ得る表面のスクラッチは、半導体製造において非常に有害な欠陥である。したがって、表面のスクラッチなしに適切なCMP性能を達成するには、研磨用組成物の開発が非常に重要である。CMPの要件としては、15nm未満の平面度を有する平坦化された表面、1nm未満の表面粗さを有する粗さのない表面、ウェーハ1個あたり0個のスクラッチおよびピット数を有する欠陥のない表面が挙げられてもよく、汚染がなく、生産性が高く、そして除去すべき所望の材料の高い除去速度を伴って平坦化されることが望ましい。
【0058】
表面修飾シリカおよびその調製方法は、以下のような少なくとも1つの利点を呈する:1)広いpH範囲にわたる高い正の表面電荷、2)粒子径がわずかしか変化しないシリカのカチオン化。
【0059】
1.第四級アンモニウム系ポリマー
一態様においてここで開示されている主題は、シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカであって、第四級アンモニウム系ポリマーが、式(I):
【0060】
【0061】
[式中、
R1は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換または非置換ヘテロアリーレン、および置換または非置換シクロアルキレンから選択され、
R2は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換または非置換ヘテロアリーレン、および置換または非置換シクロアルキレンから選択され、
R3は、置換または非置換C1~C8アルキレン、または、置換または非置換オキシアルキレンであり、
R4は、それぞれ独立して、置換または非置換C1~C8アルキルであり、
Xは、いずれの場合も、対イオンであり、
mは、1~20,000の間の整数であり、
nは、1~10,000の間の整数である]
の化合物によって表される、表面修飾シリカに関する。
【0062】
いくつかの実施形態では、R1は、非置換C1~C8アルキレンである。いくつかの実施形態では、R1は、非置換C1~C4アルキレンである。いくつかの実施形態では、R1は、非置換C1~C3アルキレンである。いくつかの実施形態では、R1は、-CH2-または-CH2CH2-である。いくつかの実施形態では、R1は、-CH2CH2-である。
【0063】
いくつかの実施形態では、R2は、非置換C1~C8アルキレンである。いくつかの実施形態では、R2は、非置換C1~C4アルキレンである。いくつかの実施形態では、R2は、非置換C1~C3アルキレンである。いくつかの実施形態では、R2は、-CH2-または-CH2CH2-である。いくつかの実施形態では、R2は、-CH2CH2-である。
【0064】
いくつかの実施形態では、R3は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプロピレン、またはイソブチレンである。いくつかの実施形態では、R4は、メチルである。
【0065】
いくつかの実施形態では、R3は、非置換オキシアルキレンである。いくつかの実施形態では、R3は、-O-(C1~C8アルキレン)-である。いくつかの実施形態では、R3は、-O-(C1~C4アルキレン)-である。いくつかの実施形態では、R3は、-O-(C1~3アルキレン)-である。いくつかの実施形態では、R3は、-O-(C1またはC2アルキレン)-である。いくつかの実施形態では、R3は、-OCH2CH2-である。他の実施形態では、R3は、式-(Ra-O-Rb)x-によって表されるポリエーテルであり、式中、RaおよびRbは、独立的に、C1~C8アルキレンまたはアリーレンであり得て、「x」は、1~500の整数である。いくつかの実施形態では、RaおよびRbはそれぞれ、-CH2-である。
【0066】
いくつかの実施形態では、R4は、それぞれ独立して非置換C1~C4アルキルである。いくつかの実施形態では、R4は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、またはイソブチルである。いくつかの実施形態では、R4は、メチルである。
【0067】
理論に縛られるものではないが、Cの数が多い場合、カチオンポリマーの疎水度が高くなるため、砥粒が凝集しやすくなってしまう。また、シリカ砥粒表面にアクセスするためのN原子の間で立体障害となるため、吸着自体を阻害する虞がある。そのため、R1~R4のCの数は小さい方がよい。よって、R4は、メチルまたはエチルであると好適である。
【0068】
いくつかの実施形態では、R1およびR2は、-CH2CH2-であり、R3は、-OCH2CH2-であり、R4は、メチルである。したがって、いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーは、式(II):
【0069】
【0070】
[式中、X、n、およびmは、上記で定義した通りである]
の化合物によって表される。さらなる実施形態では、Xは、Cl-またはOH-である。
【0071】
いくつかの実施形態では、式(II)の化合物において、Xは、Cl-であり、nおよびmは、全体の分子量が約5,000g/molであるのに十分な整数である。本明細書でさらに説明されるように、この化合物は、POEDMIED2Cとも呼ばれる。この化合物は、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン-(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]、ポリクオタニウムWSCP、またはEBC1としても知られている。
【0072】
いくつかの実施形態では、nは、1~10,000、例えば、1~5,000、1~1,000、1~500、1~250、1~100、または1~50から選択される整数である。いくつかの実施形態では、nは、50~150、25~300、または10~500の範囲にある。
【0073】
いくつかの実施形態では、mは、1~20,000、例えば、1~10,000、1~5,000、1~1,000、1~500、1~250、1~100、1~50、2~40、3~30、または4~20から選択される整数である。いくつかの実施形態では、mは、50~150、25~300、または10~500の範囲にある。いくつかの実施形態では、2~10,000、2~2,000、2~1,000、2~500、2~100、4~80、6~60、8~40または4~20から選択される整数である。
【0074】
いくつかの実施形態では、nおよびmは、m=2nとなるような関係にある。
【0075】
いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーの平均分子量は、約500g/mol~約200,000g/mol、約1,000g/mol~約50,000g/mol、約1,500g/mol~約25,000g/mol、約2,000g/mol~約15,000g/mol、約2,500g/mol~約10,000g/mol、約3,000g/mol~約8,000g/mol、3,500g/mol~約7,000g/mol、または4,000g/mol~約5,000g/molの範囲にある。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーの平均分子量は、約100,000g/mol未満、約50,000g/mol未満、約25,000g/mol未満、または約10,000g/mol未満である。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーの平均分子量は、約2,500g/mol、約5,000g/mol、約10,000g/mol、約25,000g/mol、約50,000g/mol、または約100,000g/molである。いくつかの実施形態では、平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって分子量が既知のポリスチレンを基準物質として測定してもよい。いくつかの実施形態では、平均分子量は、重量平均分子量でありうる。
【0076】
いくつかの実施形態では、Xは、当技術分野で公知の負電荷の対イオンである。例えば、Xは、いずれの場合も、ハロゲン化物イオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、NO3
-、ClO4
-、OH-、H2PO4
-、HCO3
-、HSO4
-、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、10-カンファースルホン酸イオン、ナフタレン-2-スルホン酸イオン、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホン酸イオン、エタン-1-スルホン酸-2-スルホン酸イオンなど)、カルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン、プロパン酸イオン、安息香酸イオン、グリセリン酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、グリコール酸イオン、グルコン酸イオンなど)、BF4
-、PF4
-、PF6
-、AsF6
-、およびSbF6
-からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。多価であり得る対イオンの非限定的な例としては、CO3
2-、HPO4
2-、PO4
3-、B4O7
2-、SO4
2-、S2O3
2-、カルボン酸アニオン(例えば、酒石酸アニオン、クエン酸アニオン、フマル酸アニオン、マレイン酸アニオン、リンゴ酸アニオン、マロン酸アニオン、グルコン酸アニオン、コハク酸アニオン、グルタル酸アニオン、アジピン酸アニオン、ピメリン酸アニオン、スベリン酸アニオン、アゼライン酸アニオン、セバシン酸アニオン、サリチル酸アニオン、フタル酸アニオン、アスパラギン酸アニオン、グルタミン酸アニオンなど)、およびカルボランが挙げられる。いくつかの実施形態では、Xは、いずれの場合も、独立して、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、および酢酸イオンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Xは、水酸化物イオンまたはハロゲン化物イオンである。
【0077】
上記の任意の実施形態のように、第四級アンモニウム系ポリマーが、約2,000g/mol~約15,000g/molの間の分子量を有する、表面修飾シリカが提供される。
【0078】
2.シリカ(シリカ粒子)
表面修飾シリカは、シリカを含む。一実施形態では、シリカは、コロイダルシリカであるとよい。コロイダルシリカを製造するための方法の例としては、ソーダシリケート法(soda silicate method)およびゾルゲル法が挙げられ、これらはどちらも、当技術分野において公知である。これらの方法のうちのいずれかによって製造されたコロイダルシリカを本発明におけるシリカとして適切に使用することができる。しかしながら、金属不純物を低減する観点から、高純度のコロイダルシリカの製造を可能にするゾルゲル法によって製造されたコロイダルシリカが好ましい。いくつかの実施形態では、シリカ(シリカ粒子)は水分散体の形態でありうる。
【0079】
3.表面修飾シリカを作製するための方法
本開示は、シリカ表面が第四級アンモニウム系ポリマーによって修飾されている、表面修飾シリカに関する。このようにシリカ表面を修飾することによって、ゼータ電位が高く、かつ粒子径の変化が最小限であるシリカ粒子を製造することができる。
【0080】
さらに、本明細書に記載されている表面修飾シリカの製造には、表面修飾砥粒を製造するための従来の(例えば、特開2012-040671号公報に開示されている)方法と比較した場合に利点がある。これらの利点としては、例えば、本発明では第4級アンモニウムポリマー混合のみで修飾が完了する観点での、表面修飾シリカの製造におけるステップがより少ないこと等が挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、表面修飾シリカは水分散体の形態でありうる。
【0082】
表面修飾シリカは、迅速かつ経済的に製造することができる。さらに、表面修飾シリカの粒子径は、修飾前のシリカ粒子径から大きく変化しない。
【0083】
表面修飾シリカは、約10nm以上、約25nm以上、約50nm以上、約60nm以上、または約70nm以上の平均二次粒子径を有し得る。あるいは、またはさらに、砥粒は、約500nm以下、約200nm以下、約150nm以下、約100nm以下、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、または約60nm以下の平均二次粒子径を有し得る。例えば、実施形態では、砥粒は、約10nm~約500nm、約25nm~約250nm、約50nm~約100nm、または約60nm~約80nmの範囲の平均二次粒子径を有し得る。いくつかの実施形態では、平均二次粒子径は、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、または約90nmである。
【0084】
二次粒子径範囲の好ましい実施形態としては、約50nm~約100nm、または約60nm~約80nmの範囲が挙げられる。より好ましい範囲は、約60nm~約80nmである。平均二次粒子径がこの好ましい範囲にある場合、基板表面上のスクラッチなどの表面欠陥を抑制することができる。
【0085】
表面修飾シリカの平均二次粒子径は、動的光散乱(DLS)によって測定することができる。本明細書で使用される場合、平均二次粒子径は、「z平均径」とも呼ばれる。
【0086】
動的光散乱法による粒子径分布分析において、多分散指数(PDI)は、広く使用されている別の測定値である。一般的な説明としては、PDIの値が大きいほど、粒子径の径分布が大きくなる。したがって、より低いPDIの値が望ましい。いくつかの実施形態では、表面修飾シリカのPDIは、約0~約0.20、約0~約0.10、または約0~約0.05の範囲にある。あるいは、PDIは、約0.01~約0.20、約0.025~約0.15、または約0.05~約0.10の範囲にある。いくつかの実施形態では、PDIは、約0.15未満、約0.10未満、約0.75未満、約0.70未満、または約0.50未満である。いくつかの実施形態では、多分散指数(PDI)は、マルバーン社製のゼータサイザーで測定された値を採用してもよい。多分散指数(PDI)は、粒子径と同時に自動的に装置によって計算されうる。
【0087】
表面修飾されたシリカ粒子は、永久正電荷を有する。そのような粒子上における電荷は、当技術分野では、一般にゼータ電位(または界面動電位)と呼ばれている。粒子のゼータ電位とは、粒子を取り巻くイオンの電荷と研磨用組成物のバルク溶液の電荷との間の電位差を指す(例えば、液体担体とその中に溶解した任意の他の成分)。
【0088】
したがって、本明細書に記載されている表面修飾シリカは、関連するゼータ電位を有する。一実施形態では、表面修飾シリカは、正のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、表面修飾シリカは、研磨用組成物中にあるとき、正のゼータ電位を有する。正のゼータ電位は、約10mV~約90mV、約20mV~約80mV、約30mV~約70mV、または約40mV~約60mVの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約30mV、約35mV、約40mV、約45mV、約50mV、約55mV、約60mV、約65mV、または約70mVである。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約20mV超、約30mV超、約40mV超、または約50mV超である。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、マルバーン社製のゼータサイザーで測定された値を採用してもよい。
【0089】
表面修飾シリカは、関連する電気伝導度(EC)を有し得る。本明細書に記載されている表面修飾シリカの電気伝導度は、0超~約1.0mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、0超~約0.75mS/cm、0超~約0.50mS/cm、0超~約0.25mS/cm、0超~約0.15mS/cm、0超~約0.10mS/cm、0超~約0.05mS/cm、または0超~約0.03mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、約0.01mS/cm~約1.0mS/cm、約0.02mS/cm~約0.50mS/cm、または約0.03mS/cm~約0.1mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、約0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、または0.15mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度の上限は、約0.25mS/cm、約0.20mS/cm、約0.18mS/cm、約0.16mS/cm、約0.14mS/cm、約0.12mS/cm、約0.10mS/cm、約0.08mS/cm、約0.07mS/cm、約0.06mS/cm、約0.05mS/cm、約0.04mS/cm、または約0.03mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、Thermofisher scientific, Orion Star A212で測定された値を採用してもよい。なお、表面修飾シリカの電気伝導度は、表面修飾シリカの水分散体の電気伝導度でありうる。
【0090】
本明細書に記載されている表面修飾シリカ粒子は、シリカ粒子に対する第四級アンモニウム系ポリマー分子の関係によってさらに特徴付けることができる。この関係は、本明細書では、(N+/N-)として表される。この数値が大きいほど、シリカ粒子のより完全なコーティングが示される。したがって、いくつかの実施形態では、N+/N-値は、約500以上、約500超、約1,000超、約2,000超、約3,000超、約4,000超、約5,000超、約6,000超、または約7,000超である。代替的な実施形態では、N+/N-値は、約500、約1,000、約2,500、約5,000、または約7,000である。
【0091】
本明細書において記載するように、いくつかの実施形態は、シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含む表面修飾シリカであって、第四級アンモニウム系ポリマーが、式(I):
【0092】
【0093】
[式中、R1は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換または非置換ヘテロアリーレン、および置換または非置換シクロアルキレンから選択され、R2は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換または非置換ヘテロアリーレン、および置換または非置換シクロアルキレンから選択され、R3は、置換または非置換オキシアルキレンであり、R4は、それぞれ独立して、置換または非置換C1~C8アルキルであり、Xは、いずれの場合も、対イオンであり、mは、1~20,000の間の整数であり、nは、1~10,000の間の整数である]の化合物によって表される、表面修飾シリカである。
【0094】
上記の任意の実施形態のように、Xが、それぞれ独立して、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、および酢酸イオンからなる群から選択される、表面修飾シリカが提供される。
【0095】
上記の任意の実施形態のように、R1およびR2がそれぞれ独立して置換または非置換C1~C8アルキレンであり、R4が、それぞれ独立して置換または非置換C1~C8アルキルである、表面修飾シリカが提供される。さらなる実施形態では、R1およびR2は、それぞれ独立して非置換C1~C4アルキレンまたは非置換C1~C3アルキレンであり、R4は、それぞれ独立して非置換C1~C4アルキル、非置換C1~C3アルキルまたは非置換C1もしくは非置換C2アルキルである。さらなる別の実施形態では、R1およびR2は、-CH2CH2-である。
【0096】
上記の任意の実施形態のように、R4がメチルである、表面修飾シリカが提供される。
【0097】
上記の任意の実施形態のように、R3が非置換オキシアルキレンである、表面修飾シリカが提供される。
【0098】
上記の任意の実施形態のように、R3が-OCH2CH2-である、表面修飾シリカが提供される。
【0099】
上記の任意の実施形態のように、R3が、式-(Ra-O-Rb)x-によって表されるポリエーテルであり、式中、RaおよびRbが、独立的に、C1~C8アルキレンまたはアリーレンであり得て、「x」が、1~500の整数である、表面修飾シリカが提供される。
【0100】
上記の任意の実施形態のように、R1およびR2が-CH2CH2-であり、R3が-OCH2CH2-であり、R4がメチルであり、Xが水酸化物イオンまたはハロゲン化物イオンである、表面修飾シリカが提供される。
【0101】
上記の任意の実施形態のように、約60nm~約80nmの間の平均二次粒子径を有する、表面修飾シリカが提供される。
【0102】
上記の任意の実施形態のように、約0.07以下の多分散指数を有する、表面修飾シリカが提供される。
【0103】
上記の任意の実施形態のように、約30mV~約70mVの間のゼータ電位を有する、表面修飾シリカが提供される。
【0104】
上記の任意の実施形態のように、0超~約0.25mS/cmの電気伝導度を有する、表面修飾シリカが提供される。
【0105】
上記の任意の実施形態のように、N+/N-が500以上あるいは500超である、表面修飾シリカが提供される。
【0106】
さらに、本明細書において記載するように、いくつかの実施形態は、表面修飾シリカを調製する方法であって、a)シリカおよび分散媒を含む分散液を準備(例えば調製する)ステップと、b)第四級アンモニウム系ポリマーと分散液とを混合し、それによって表面修飾シリカを調製するステップとを含み、第四級アンモニウム系ポリマーが、式(I):
【0107】
【0108】
[式中、R1は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換または非置換ヘテロアリーレン、および置換または非置換シクロアルキレンから選択され、R2は、置換または非置換C1~C8アルキレン、置換または非置換アリーレン、置換または非置換ヘテロアリーレン、および置換または非置換シクロアルキレンから選択され、R3は、置換または非置換オキシアルキレンであり、R4は、それぞれ独立して、置換または非置換C1~C8アルキレンであり、Xは、いずれの場合も、対イオンであり、mは、1~20,000の間の整数であり、nは、1~10,000の間の整数である]
の化合物である、方法である。可変部分群R1、R2、R3、R4、X、n、およびmは、上記で定義されている通りである。第四級アンモニウム系ポリマーは水溶液の形態であってもよい。その際、第四級アンモニウム系ポリマーの濃度は、例えば、0.1~0.5重量%でありうる。
【0109】
シリカと第四級アンモニウム系ポリマーとの混合は、研磨用組成物におけるシリカと第四級アンモニウム系ポリマーの濃度が、下記のC-1.研磨用組成物、C-2.研磨用組成物(その他の形態)に記載の濃度になるように行うことが好ましい。
【0110】
上記の任意の実施形態のように、電解質を分散液に添加することをさらに含む、方法が提供される。電解質を添加することによって、カチオン化中で粒子径を制御するための方法が提供される。電解質の一覧は、本願全体に記載されており、表面修飾シリカの調製に使用され得る。電解質の非限定的な例としては、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、電解質は、硝酸カリウムである。
【0111】
上記の任意の実施形態のように、分散媒が水である、方法が提供される。
【0112】
上記の任意の実施形態のように、シリカ、第四級アンモニウム系ポリマー、および分散媒を含む分散液を約300rpm以上あるいは約500rpm以上の速度で混合する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、混合の速度の下限は、約200rpm以上、約250rpm以上、あるいは、約300rpm以上がよい。その上限は、約600rpm以下、約500rpm以下、約450rpm以下、あるいは約400rpm以下がよい。
【0113】
C-1.研磨用組成物
本開示は、シリカ表面が第四級アンモニウム系ポリマーによって修飾されている、表面修飾シリカに関する。表面修飾シリカは、研磨用組成物の調製に使用され得て、研磨用組成物は、分散媒をさらに含んでもよい。
【0114】
本明細書に開示されている研磨用組成物は、第四級アンモニウム系ポリマーがシリカ表面上に修飾されている(物理吸着している)、表面修飾シリカを含有する。第四級アンモニウム系ポリマーで修飾されたシリカを含む研磨用組成物を使用し、基板を研磨することによって、未修飾シリカを使用する場合に比べて基板をより高速で研磨することができ、欠陥およびスクラッチがより少なくなる効果が期待される。
【0115】
1.研磨用組成物の成分
いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、分散媒を含む。いくつかの実施形態では、分散媒は、水である。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水などが使用され得る。水中に存在する不要な成分の量を減らすために、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる汚染物質の除去、および/または蒸留などの操作によって、水の純度を高めることができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、水は、不純物を比較的含まない。いくつかの実施形態では、水は、水の総重量に基づいて、約10%w/w、約9%w/w、約8%w/w、約7%w/w、約6%w/w、約5%w/w、約4%w/w、約3%w/w、約2%w/w、約1%w/w、約0.9%w/w、約0.8%w/w、約0.7%w/w、約0.6%w/w、約0.5%w/w、約0.4%w/w、約0.3%w/w、または約0.1%w/w未満の不純物を含有する。ここで不純物とは例えば、Na、Ca、Ni、Fe、Al等である。いくつかの実施形態では、分散媒は水以外の溶媒を含んでもよいが、分散媒のうち、好ましくは、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上が水である。
【0117】
pH調整剤
いくつかの実施形態では、本発明による研磨用組成物は、pHを制御するための少なくとも1つのpH調整剤を含有する。一実施形態では、pH調整剤は、塩基性化合物である。塩基性化合物は、化合物が溶解している研磨用組成物のpHを上昇させる機能を有する様々な塩基性化合物から適切に選択され得る。例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、様々な炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基性化合物が使用され得る。そのような塩基性化合物は、単独でまたはそれらの2つ以上の種類の組み合わせで使用され得る。
【0118】
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどが挙げられる。炭酸塩および重炭酸塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0119】
代替的な実施形態では、pH調整剤は、本質的に酸性であり得る。酸の選択は特に限定されることはないが、ただし、酸の強度は、本発明の研磨用組成物のpHを低下させるのに十分である。
【0120】
酸性pH調整剤は、無機酸または有機酸であり得る。例えば、そのような無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、およびリン酸、ならびにそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0121】
例えば、そのような有機酸としては、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、吉草酸、2-メチル酪酸、N-ヘキサン酸、3,3-ジメチルブタン酸、2-エチルブタン酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、イセチオン酸、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、およびフェノキシ酢酸、ならびにそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されることはない。そのような有機酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、およびイセチオン酸などの有機スルホン酸も挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0122】
pH調整剤は、酸性剤と塩基性剤との混合物(緩衝液など)であり得る。
【0123】
一実施形態では、研磨ビヒクルまたは研磨用組成物のpHは、約2.0~約10.0、約4.0~約10.0、約5.0~約9.0、または約6.0~約8.0の範囲に調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約10.0未満、約9.0未満、約8.0未満、約7.0未満、約6.0未満、約5.5未満、約5.0未満、約4.5未満、または約4.0未満である。いくつかの実施形態では、pHは、約3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または約10.0である。いくつかの実施形態では、pHは、約4.0超、約5.0超、約6.0超、約7.0超、約8.0超、または約9.0超である。いくつかの実施形態では、pHは、Thermofisher Orion Star A214で測定された値を採用してもよい。
【0124】
pH調整剤は、pHに関係なく、特定の濃度範囲で存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、pH調整剤の量は、約0.0001重量%~約1重量%、約0.005重量%~約0.5重量%、または約0.001重量%~約0.1重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、pH調整剤の量は、少なくとも約0.0001重量%、少なくとも約0.0005重量%、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.025重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.075重量%、または少なくとも約0.1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.01重量%未満、約0.005重量%未満、約0.001wt%未満、または約0.0005重量%未満の量で存在する。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、約0.0001重量%、約0.00025重量%、約0.0005重量%、約0.0006重量%、約0.0007重量%、約0.0008重量%、約0.0009重量%、約0.001重量%、約0.005重量%、約0.0075重量%、約0.01重量%、約0.025重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、または約1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、組成物(あるいはビヒクル)は、pH調整剤を含まない、あるいは、電気伝導度(EC)が0.15mS/cm未満、0.1mS/cm未満、あるいは、0.05mS/cm未満となるような量で含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、pH調整剤が、電解質としての機能を兼ねてもよい。
【0126】
電解質
いくつかの実施形態では、本発明による研磨用組成物は、電解質を含有する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される電解質を使用して、表面修飾シリカの平均二次粒子径(Z粒子径)を成長させることができる。電解質は、粒子自体のゼータ電位の絶対値を小さくすることができる。そのため、粒子と高分子の静電反発を小さくし、砥粒表面と反応しやすくする利点がある。砥粒自体の反発を維持し、凝集沈殿をさせないように電解質の量を適宜調整することが好ましい。代替的な実施形態では、研磨用組成物は、電解質を含有しない。いくつかの実施形態では、電解質が、pH調整剤としての機能を兼ねてもよい。
【0127】
電解質の一覧は、本願全体に記載されており、研磨用組成物に使用され得る。研磨用組成物に使用するための電解質の非限定的な例としては、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、電解質は、硝酸カリウムである。
【0128】
電解質は、約0.01重量%~約1.5重量%、約0.05重量%~約1.25重量%、または約0.1重量%~約1.0重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、電解質の量は、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.025重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、または少なくとも約0.5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、電解質は、約1.5重量%未満、約1重量%未満、または約0.5重量%未満の量で存在する。いくつかの実施形態では、電解質は、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、または約1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、電解質は、約0.84重量%未満、約0.8重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.01重量%未満、あるいは、約0.005重量%未満である。いくつかの実施形態では、組成物(あるいはビヒクル)は、電解質を含まない、あるいは、電気伝導度(EC)が0.15mS/cm未満、0.1mS/cm未満、あるいは、0.05mS/cm未満となるような量で含む。
【0129】
シリカおよび第四級アンモニウム系ポリマー(第四級アンモニウム系ポリマー分子)
表面修飾シリカを含む研磨用組成物は、研磨用組成物の総重量に基づいて特定の量で存在し得る量のシリカおよび第四級アンモニウム系ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、シリカは、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、約0.3重量%~約10重量%、または約0.5重量%~約7重量%の濃度で存在する。表面修飾シリカの好ましい含有量(最終シリカ濃度)は、約5重量%の最終シリカ濃度である。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーは、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約1.0重量%、約0.02重量%~約0.6重量%、または約0.03重量%~約0.5重量%の濃度で存在する。。いくつかの実施形態では、シリカは、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約15重量%、約2重量%~約10重量%、または約3重量%~約7重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーは、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約0.6重量%、または約0.3重量%~約0.5重量%の濃度で存在する。
【0130】
さらなる成分
一実施形態では、本明細書に開示されている研磨用組成物は、腐食抑制剤、酸化剤、多糖類、キレート剤、殺生物剤、界面活性剤、または共溶媒などのさらなる成分を含み得る。さらに、またはあるいは、本明細書に開示されている組成物は、当業者によって理解されているように、他の添加剤を含み得る。
【0131】
一実施形態では、さらなる成分としては、腐食抑制剤を挙げることができる。腐食抑制剤の非限定的な例としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、8-ヒドロキシキノリン、およびジシアンジアミド、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、ピラゾールおよびその誘導体、イミダゾールおよびその誘導体、ベンゾイミダゾールおよびその誘導体、イソシアヌレートおよびその誘導体、ならびにそれらの混合物を挙げることができる。研磨用組成物中の腐食抑制剤の量は、腐食抑制剤の約0.0005重量%~0.25重量%、好ましくは0.0025重量%~0.15重量%、より好ましくは0.005重量%~0.1重量%の範囲にあり得る。
【0132】
別の実施形態では、さらなる成分としては、酸化剤を挙げることができる。酸化剤の非限定的な例としては、過ヨウ素酸、過酸化水素、ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウムおよび二過硫酸カリウム)、過ヨウ素酸塩(例えば、過ヨウ素酸カリウム)、モリブデン酸アンモニウム、硝酸第二鉄、硝酸、硝酸カリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。酸化剤の量は、約0.1重量%~約10重量%、約0.25重量%~約5重量%、または約0.5重量%~約1.5重量%の範囲にあり得る。
【0133】
別の実施形態では、さらなる成分としては、炭水化物を挙げることができる。炭水化物の非限定的な例としては、修飾セルロースエーテルまたは複合炭水化物が挙げられる。一実施形態では、1つまたは複数の多糖類は、ヒドロキシアルキルセルロース(メチルヒドロキシエチルセルロース(HEMC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)など)、カラギーナン、ガム(キサンタンガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナンガム、またはペクチンなど)、ヒアルロン酸ナトリウム、およびプルランからなる群から選択される。炭水化物の量は、約0.001重量%~約0.2重量%、約0.005重量%~約0.1重量%、または約0.01重量%~約0.05重量%の範囲にあり得る。
【0134】
別の実施形態では、さらなる成分としては、キレート剤を挙げることができる。「キレート剤」という用語は、水溶液の存在下で銅などの金属をキレート化する任意の物質を意味することが意図されている。キレート剤の非限定的な例としては、無機酸、有機酸、アミン、ならびにグリシン、アラニンなどのアミノ酸、クエン酸、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン、CDTA、およびEDTAが挙げられる。
【0135】
一実施形態では、さらなる成分は、殺生物剤であり得る。殺生物剤の非限定的な例としては、過酸化水素、第四級アンモニウム化合物、および塩素化合物が挙げられる。第四級アンモニウム化合物のより具体的な例としては、メチルイソチアゾリノン、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、およびアルキルベンジルジメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられるが、これらに限定されることはなく、アルキル鎖は、炭素原子1~約20個の範囲にある。塩素化合物のより具体的な例としては、亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されることはない。殺生物剤のさらなる例としては、ビグアニド、アルデヒド、エチレンオキシド、イソチアゾリノン、ヨードフォア、Dow chemicalsから市販されているKATHON(商標)およびNEOLENE(商標)製品群、ならびにLanxessからのPreventol(商標)群が挙げられる。研磨用組成物に使用される殺生物剤の量は、約0.0001重量%~0.10重量%、好ましくは0.0001重量%~0.005重量%、より好ましくは0.0002重量%~0.0025重量%の範囲にあり得る。
【0136】
別の実施形態では、さらなる成分としては、界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または双性イオン性であり得て、ビヒクルまたは組成物の潤滑性を増加させ得る。界面活性剤の非限定的な例は、ドデシル硫酸塩、ナトリウム塩またはカリウム塩、ラウリルスルフェート、第二級アルカンスルホネート、アルコールエトキシレート、アセチレンジオール界面活性剤、第四級アンモニウム系界面活性剤、ベタインおよびアミノ酸誘導体系界面活性剤などの両性界面活性剤、ならびにそれらの任意の組み合わせである。適切な市販の界面活性剤の例としては、Dow Chemicals製のTRITON(商標)、Tergitol(商標)、DOWFAX(商標)群の界面活性剤、ならびにAir Products and Chemicals製のSURFYNOL(商標)、DYNOL(商標)、Zetasperse(商標)、Nonidet(商標)、およびTomadol(商標)界面活性剤群の様々な界面活性剤が挙げられる。界面活性剤のうちの適切な界面活性剤としては、エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)基を含むポリマーも挙げることができる。EO-POポリマーの例は、BASF ChemicalsのTetronic(商標)90R4である。アセチレンジオール界面活性剤の例は、Air Products and ChemicalsのDynol(商標)607である。研磨用組成物に使用される界面活性剤の量は、約0.0005重量%~0.15重量%、好ましくは0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは0.0025重量%~0.025重量%の範囲にあり得る。
【0137】
別の実施形態では、さらなる成分としては、共溶媒と呼ばれる溶媒を挙げることができる。この共溶媒は、上記の分散媒に加えて存在する。共溶媒の非限定的な例としては、メタノールまたはエタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、トルエン、アセトンなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。共溶媒の他の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、グリコール、およびそれらの混合物が挙げられる。共溶媒は、様々な量で、好ましくは、約0.0001、0.001、0.01、0.1、0.5、1、5、または10%(重量%)の下限から、約0.001、0.01、0.1、1、5、10、15、20、25、または35%(重量%)の上限まで用いられ得る。
【0138】
本明細書に記載されているように、研磨用組成物は、種類および量の両方において、組成物中の成分によって大きく影響される特定の特性を有する。したがって、特定の材料は、所望の特性を維持するために組成物から除外される必要があり得る。
【0139】
2.研磨用組成物の調製
いくつかの実施形態では、表面修飾シリカおよび分散媒を含む研磨用組成物を調製するための方法が提供される。研磨用組成物を調製するための方法は、表面修飾シリカを分散媒と混合することを含む。
【0140】
混合方法は、特に限定されることはなく、例えば、この方法は、表面修飾シリカおよび分散媒を撹拌および混合することによって行われれば十分である。表面修飾シリカは、水分散体の形態であり得、研磨用組成物に調製される前のその修飾シリカ砥粒液(第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカ砥粒液)を本明細書中ビヒクルとも称する場合がある。いくつかの実施形態では、ビヒクルはpH調整剤を含まない。表面修飾シリカは、研磨用組成物を調製する前に調製される。しかしながら、研磨用組成物中の他の成分に対する表面修飾シリカの添加順序は特に限定されることはない。さらに、表面修飾シリカの凝集が抑制された状態で、研磨用組成物を製造することができる。
【0141】
各成分を混合する際に使用される温度は、特に限定されることはないが、一般に、約5℃~約50℃の範囲にある。いくつかの実施形態では、温度は、約10℃~約40℃または約20℃~約30℃の範囲にある。いくつかの実施形態では、温度は、約5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、または50℃である。加熱を実施して、溶解速度を上昇させてもよい。混合時間も特に制限されてはいない。
【0142】
したがって、本明細書に記載するように、いくつかの実施形態は、本明細書に開示されている表面修飾シリカおよび分散媒を含む研磨用組成物である。
【0143】
研磨用組成物は、いくつかの実施形態では、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、または約1.0重量%~約5重量%の濃度で存在するシリカ(表面修飾シリカ)を含み得る。いくつかの実施形態では、シリカの量は、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%以上、約0.3重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、または約10重量%以上であり得る。他の実施形態では、シリカの量は、組成物の総重量に基づいて、約15重量%未満、約10重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、または約3重量%未満である。なお、これらの実施形態の説明は、C-2 研磨用組成物(その他の形態)においても適用可能である。以下の実施形態も、同様に適用してよい。
【0144】
研磨用組成物は、いくつかの実施形態では、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約1.0重量%、約0.05重量%~約0.8重量%、約0.1重量%~約0.6重量%、または約0.15重量%~約0.40重量%の濃度で存在する第四級アンモニウム系ポリマーを含み得る。
研磨用組成物は、いくつかの実施形態では、組成物の総重量に基づいて、約0.02重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約0.8重量%、約0.25重量%~約0.6重量%、または約0.125重量%~約0.40重量%の濃度で存在する第四級アンモニウム系ポリマーを含み得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーの量は、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、または約0.6重量%以上であり得る。他の実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマーの量は、組成物の総重量に基づいて、約1.0重量%未満、約0.7重量%未満、約0.5重量%未満、約0.4重量%未満、または約0.25重量%未満である。
【0146】
研磨用組成物は、関連する電気伝導度(EC)を有し得る。本明細書に記載されている研磨用組成物の電気伝導度は、0超~約1.0mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、0超~約0.75mS/cm、0超~約0.50mS/cm、0超~約0.25mS/cm、0超~約0.15mS/cm、0超~約0.10mS/cm、0超~約0.05mS/cm、または0超~約0.03mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、約0.01mS/cm~約1.0mS/cm、約0.02mS/cm~約0.50mS/cm、または約0.03mS/cm~約0.1mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、約0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、または0.15mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度の上限は、約0.25mS/cm、約0.20mS/cm、約0.18mS/cm、約0.16mS/cm、約0.14mS/cm、約0.12mS/cm、約0.10mS/cm、約0.08mS/cm、約0.07mS/cm、約0.06mS/cm、約0.05mS/cm、約0.04mS/cm、または約0.03mS/cmである。
【0147】
研磨用組成物は、関連するゼータ電位を有し得る。ゼータ電位は、正または負であり得る。一実施形態では、研磨用組成物は、正のゼータ電位を有する。例えば、いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、3~10のpH範囲の場合、+30mV以上である。さらに、研磨用組成物中に存在する第四級アンモニウム系表面修飾シリカの含有量が多いほど、ゼータ電位が正のままであるpH範囲が高いところまで拡がる。
【0148】
正のゼータ電位は、約10mV~約90mV、約20mV~約80mV、約30mV~約70mV、または約40mV~約60mVの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約30mV、約35mV、約40mV、約45mV、約50mV、約55mV、約60mV、約65mV、または約70mVである。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約20mV超、約30mV超、約40mV超、または約50mV超である。
【0149】
C-2. 研磨用組成物(その他の形態)
その他の実施形態として、シリカ粒子と、第四級アンモニウム系ポリマー分子とを含み、シリカ粒子に対する第四級アンモニウム系ポリマー分子の式(N+/N-)が500以上である、研磨用組成物が挙げられる。
【0150】
組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存する(場合によっては、共存させると読み替えてもよい、本明細書中において同様)シリカ粒子は、約10nm以上、約25nm以上、約50nm以上、約60nm以上、または約70nm以上の平均二次粒子径を有し得る。あるいは、またはさらに、シリカ粒子は、約500nm以下、約200nm以下、約150nm以下、約100nm以下、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、または約60nm以下の平均二次粒子径を有し得る。例えば、実施形態では、シリカ粒子は、約10nm~約500nm、約25nm~約250nm、約50nm~約100nm、または約60nm~約80nmの範囲の平均二次粒子径を有し得る。いくつかの実施形態では、平均二次粒子径は、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、または約90nmである。
【0151】
二次粒子径範囲の好ましい実施形態としては、約50nm~約100nm、または約60nm~約80nmの範囲が挙げられる。より好ましい範囲は、約60nm~約80nmである。平均二次粒子径がこの好ましい範囲にある場合、基板表面上のスクラッチなどの表面欠陥を抑制することができる。
【0152】
組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカ粒子の平均二次粒子径は、動的光散乱(DLS)によって測定することができる。本明細書で使用される場合、平均二次粒子径は、「z平均径」とも呼ばれる。
【0153】
動的光散乱法による粒子径分布分析において、多分散指数(PDI)は、広く使用されている別の測定値である。一般的な説明としては、PDIの値が大きいほど、粒子径の径分布が大きくなる。したがって、より低いPDIの値が望ましい。いくつかの実施形態では、組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカ粒子のPDIは、約0~約0.20、約0~約0.10、または約0~約0.05の範囲にある。あるいは、PDIは、約0.01~約0.20、約0.025~約0.15、または約0.05~約0.10の範囲にある。いくつかの実施形態では、PDIは、約0.15未満、約0.10未満、約0.75未満、約0.70未満、または約0.50未満である。いくつかの実施形態では、多分散指数(PDI)は、マルバーン社製のゼータサイザーで測定された値を採用してもよい。
【0154】
組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカ粒子は、永久正電荷を有する。そのような粒子上における電荷は、当技術分野では、一般にゼータ電位(または界面動電位)と呼ばれている。粒子のゼータ電位とは、粒子を取り巻くイオンの電荷と研磨用組成物のバルク溶液の電荷との間の電位差を指す(例えば、液体担体とその中に溶解した任意の他の成分)。
【0155】
なお、第四級アンモニウム系ポリマー(第四級アンモニウム系ポリマー分子)の具体的な説明は、上述した説明を同様に適用することができる。
【0156】
したがって、組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカは、関連するゼータ電位を有する。一実施形態では、組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカは、正のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカは、研磨用組成物中にあるとき、正のゼータ電位を有する。正のゼータ電位は、約10mV~約90mV、約20mV~約80mV、約30mV~約70mV、または約40mV~約60mVの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約30mV、約35mV、約40mV、約45mV、約50mV、約55mV、約60mV、約65mV、または約70mVである。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約20mV超、約30mV超、約40mV超、または約50mV超である。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、マルバーン社製のゼータサイザーで測定された値を採用してもよい。
【0157】
組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカは、関連する電気伝導度(EC)を有し得る。組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカの電気伝導度は、0超~約1.0mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、0超~約0.75mS/cm、0超~約0.50mS/cm、0超~約0.25mS/cm、0超~約0.15mS/cm、0超~約0.10mS/cm、0超~約0.05mS/cm、または0超~約0.03mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、約0.01mS/cm~約1.0mS/cm、約0.02mS/cm~約0.50mS/cm、または約0.03mS/cm~約0.1mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、約0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、または0.15mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度の上限は、約0.25mS/cm、約0.20mS/cm、約0.18mS/cm、約0.16mS/cm、約0.14mS/cm、約0.12mS/cm、約0.10mS/cm、約0.08mS/cm、約0.07mS/cm、約0.06mS/cm、約0.05mS/cm、約0.04mS/cm、または約0.03mS/cmである。いくつかの実施形態では、電気伝導度は、Thermofisher scientific, Orion Star A212で測定された値を採用してもよい。
【0158】
いくつかの実施形態では、組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカは、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約15重量%、約2重量%~約10重量%、または約3重量%~約7重量%の濃度で存在する。組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカの好ましい含有量(最終シリカ濃度)は、約5重量%の最終シリカ濃度である。
【0159】
組成物中で第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカ粒子は、シリカ粒子に対する第四級アンモニウム系ポリマー分子の関係によってさらに特徴付けることができる。この関係は、本明細書では、(N+/N-)として表される。この数値が大きいほど、シリカ粒子のより完全なコーティングが示される。したがって、いくつかの実施形態では、N+/N-値は、約500以上、約500超、約1,000超、約2,000超、約3,000超、約4,000超、約5,000超、約6,000超、または約7,000超である。代替的な実施形態では、N+/N-値は、約500、約1,000、約2,500、約5,000、または約7,000である。
【0160】
その他の実施形態における研磨用組成物を調製するための方法は、シリカおよび分散媒を含む分散液と、第四級アンモニウム系ポリマー水溶液とを混合するステップを含む。このステップは、さらにpH調整剤等の他の成分を含有させることによって研磨用組成物として調製する前に予め行っておくとよい。当該ステップでは、シリカ、第四級アンモニウム系ポリマー、および分散媒を含む分散液を約300rpm以上あるいは約500rpm以上の速度で混合したり、例えばN+/N-値を約500以上となるように適宜設定したり、表面修飾シリカを作製するための方法に記載の同様のステップを施してもよい。いくつかの実施形態では、混合の速度の下限は、約200rpm以上、約250rpm以上、あるいは、約300rpm以上がよい。その上限は、約500rpm以下、約450rpm以下、あるいは約400rpm以下がよい。いくつかの実施形態では、N+/N-値は、約500以上、約500超、約1,000超、約2,000超、約3,000超、約4,000超、約5,000超、約6,000超、または約7,000超である。代替的な実施形態では、N+/N-値は、約500、約1,000、約2,500、約5,000、または約7,000である。
【0161】
C-2における研磨用組成物についてのその他の説明についてはC-1.研磨用組成物に記載の説明を、必要に応じて表面修飾シリカをシリカに適切に読み替える等、当業者に通常に理解されるように適用することができる。
【0162】
D.研磨方法
一実施形態では、本明細書に記載されている研磨用組成物は、任意の適切な基板を研磨するのに有用である。適切な基板としては、フラットパネルディスプレイ、集積回路、メモリまたはリジッドディスク、金属、層間誘電体(ILD)デバイス、半導体、微小電気機械システム、強誘電体、および磁気ヘッドが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0163】
研磨方法は、研磨装置を使用することを含むであろう。研磨装置は、特に限定されることはない。一般に、研磨装置は、基板または研磨対象物を保持するためのホルダと、可動研磨ヘッドと、回転速度が変更可能なモータと、研磨パッド(または研磨布)を取り付けることが可能な研磨板とを有する。
【0164】
研磨条件は、特に限定されることはない。例えば、研磨板およびヘッドの回転速度はそれぞれ、独立的に、10~500rpmである。研磨パッドおよび/または研磨ヘッドは、好ましくは0.5~10psiである特定の圧力で基板に適用されるであろう。研磨用組成物を研磨パッドに供給する方法は、特に限定されることはない。例えば、研磨用組成物は、ポンプなどを使用して連続的に供給され得る。供給量は限定されないが、研磨パッドの表面を研磨用組成物で切れ目なく覆うことが好ましい。
【0165】
基板を研磨する方法では、本明細書に開示されている研磨用組成物は、少なくとも約100Å/分、少なくとも約150Å/分、少なくとも約180Å/分、少なくとも約200Å/分、少なくとも約250Å/分、少なくとも約300Å/分、または少なくとも約500Å/分の材料除去速度を有する。いくつかの実施形態では、材料除去速度は、約100Å/分~約500Å/分、約150Å/分~約300Å/分、または約180Å/分~約250Å/分の範囲にある。いくつかの実施形態では、材料除去速度は、約100Å/分、約150Å/分、約180Å/分、約200Å/分、約250Å/分、または約300Å/分である。
【0166】
したがって、本明細書において、いくつかの実施形態では、基板を研磨する方法であって、a)表面修飾シリカを含有する研磨用組成物を用意するステップと、b)基板を研磨用組成物で研磨して、研磨された基板を提供するステップとを含む、方法が記載されている。
【0167】
上記の任意の実施形態のように、基板が半導体である、方法が提供される。
【0168】
上記の任意の実施形態のように、少なくとも約500Å/分の酸化物除去速度をもたらす、方法が提供される。
【0169】
第四級アンモニウム系ポリマーによって表面修飾された表面修飾シリカの使用を含む、本明細書に開示されている研磨方法を実施する際に、公知の方法と比較して改善が観察される。例えば、一実施形態では、負のゼータ電位を有する材料(すなわち、基板)について、より高い除去速度が観察された。例えば、SiO2は、pH=7で-30mVのゼータ電位を有する。この場合、砥材(すなわち、表面修飾シリカ)とウェーハとの間に引力がある。具体的には、この効果は、多くのCMP材料(SiN、SoC、W、Cu、Ta、Coなど)にも適用可能である。
【0170】
E.実施例
以下の調製および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、これを実践することを可能にするために与えられる。これらは、本発明の範囲を限定するものとしてではなく、単に例示的かつ代表的なものとして見なされるべきである。
【0171】
一態様では、表面修飾シリカを製造する方法が開示されている。別の態様では、表面修飾シリカを含む研磨用組成物を使用して材料を研磨する方法が開示されている。
【0172】
実施例1:表面修飾シリカの実施例
平均二次粒子径の変化を最小限に抑えて高いゼータ電位を可能にする表面修飾シリカを特定した。より具体的には、いくつかの実施形態では、2~5重量%のSiO2材料は、平均二次粒子径の変化を最小限に抑えて、約+50mVのゼータ電位で作製され得る。さらなる実施形態では、少量の電解質を使用して、粒子径を成長させることができる。
【0173】
よりさらに具体的には、シリカ(シリカ粒子)および分散媒を含む分散液(シリカのz平均径(nm):70nm)を準備し、これと表1に示される第四級アンモニウム系ポリマーの水溶液とをUltra Turraxの18Gロータ/ステータを用いて300rpmで混合し、修飾シリカ砥粒液(第四級アンモニウム系ポリマー分子と共存するシリカ砥粒液)(ビヒクル)を作製した。その後、任意に、分散媒(水)と表1の硝酸カリウムとを加え、Ultra Turraxの18Gロータ/ステータを用いて300rpmで混合し、表1の組成の組成物を作製した。明細書で特定されている測定方法で、各組成物中のシリカ(修飾シリカ)のz平均径、PDIおよびゼータ電位(mV)ならびに組成物のEC(mS/cm)を測定し、それらを表2に示した。
【0174】
【0175】
【0176】
POEDMIED2Cは、本明細書で定義されている。PDADMACは、以下の化学構造を有する:
【0177】
【0178】
なお、N+/N-の値は、下記の式で求められる。
【0179】
【0180】
index=4.4x 108g/mol。
【0181】
実施例2:表面修飾シリカを調製するための手順
シリカの表面修飾は、ポリマー含有溶液と、シリカを含む懸濁液とを混合することによって実施することができる。溶液をポンプ輸送しながらの添加剤などの混合(インサイチュ混合)は、大量処理に好ましい方法であるが、混合は、ロータ/ステータ法、ブレード撹拌によって、または一方の液体をもう一方の液体に注ぎ、続いてこの混合物を2つの容器間で繰り返し注ぐことによっても達成することができる。ポリマー含有溶液はポリマー水溶液でありうる。
【0182】
粒子を第四級アンモニウム系ポリマーで処理するために、粒子の懸濁液をポリマーの溶液と混合する。粒子はシリカ粒子である。ポリマーの溶液は、ポリマー水溶液でありうる。粒子の懸濁液とポリマー(ポリマー溶液)とを含む液の混合の速度の下限は、約200rpm以上、約250rpm以上、あるいは、約300rpm以上がよい。その上限は、約500rpm以下、約450rpm以下、あるいは約400rpm以下がよい。混合は、Ultra Turraxの18Gロータ/ステータを約250rpm以上で使用するなど、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。 いくつかの実施形態では、粒子の懸濁液とポリマー(ポリマー溶液)とを含む液の混合の速度は、250~500rpmでありうる。
【0183】
本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく本発明において様々な修正および変更を加えることができることは、当業者に明らかであろう。本発明の他の態様は、本明細書に開示されている本発明の明細書および実施を考慮することから当業者に明らかであろう。本明細書および実施例は、単に例示として考慮され、本発明の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0184】
2021年3月31日に出願された米国仮出願第63/168789の全体的な開示は引用によってその全体が組み込まれる。