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特開2022-159079コンクリートの製造方法、及び、コンクリート組成物の養生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159079
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】コンクリートの製造方法、及び、コンクリート組成物の養生方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/24 20060101AFI20221006BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20221006BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20221006BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20221006BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B28B11/24
C04B18/14 Z
C04B28/02
C04B40/02
E04G21/02 101
E04G21/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050363
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021060564
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮薗 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中上 明久
【テーマコード(参考)】
2E172
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172BA25
2E172EA05
2E172EA13
4G055AA01
4G055BA04
4G112PA27
4G112PB04
4G112RA03
4G112RA05
4G112RB03
(57)【要約】
【課題】圧縮強度の低下を抑制すると共に、凍結融解抵抗性を向上させるコンクリートの製造方法、及び、コンクリート組成物の養生方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るコンクリートの製造方法は、セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を練り混ぜてコンクリート組成物を得る混練工程と、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で養生する蒸気養生工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を練り混ぜてコンクリート組成物を得る混練工程と、
前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で養生する蒸気養生工程と、
を含む、コンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記蒸気養生工程において、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で6時間以上36時間以下保持する、請求項1に記載のコンクリートの製造方法。
【請求項3】
さらに、前記蒸気養生工程の前に、前記コンクリート組成物を5℃以上35℃以下の温度で6時間以上36時間以下保持する、前置養生工程を含む、請求項1又は2に記載のコンクリートの製造方法。
【請求項4】
前記顆粒状シリカフュームのかさ密度が、0.55g/cm以上0.70g/cm以下である、請求項1~3のいずれか一つに記載のコンクリートの製造方法。
【請求項5】
水結合材比(W/B)が、16質量%以上24質量%以下である、請求項1~4のいずれか一つに記載のコンクリートの製造方法。
【請求項6】
セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を含むコンクリート組成物を60℃以上の温度で蒸気養生する、コンクリート組成物の養生方法。
【請求項7】
前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で6時間以上36時間以下保持する、請求項6に記載のコンクリート組成物の養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの製造方法、及び、コンクリート組成物の養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの高強度化、粘性低減を図るために、コンクリート材料としてシリカフュームが用いられることがある。コンクリート用シリカフュームは、製品形態によって、粉体シリカフューム、粒体シリカフューム、シリカフュームスラリーの3種類に分類される(JIS A 6207:2016)。
【0003】
粒体シリカフュームに属する顆粒状のシリカフュームは、粉体シリカフュームと比較して粒径が大きいことから、コンクリートの流動性や強度特性の観点で粉体シリカフュームに劣ると考えられていた。そのため、高強度コンクリートを製造する場合には、粉体シリカフュームが用いられることが多く、例えば、特許文献1には、粉体シリカフューム、石灰石粉末、及び石膏類を含むセメント組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-211956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、気温が氷点下になるような地域では、凍結融解作用によるコンクリートの損傷が問題になっている。凍結融解作用は、コンクリート中の水分が凍結し体積が膨張することによって引き起こされる。特許文献1のように、粉体シリカフュームを含み、かつ、蒸気養生を施されたコンクリートは、凍結融解抵抗性が低下する虞がある。そのため、高い圧縮強度を維持しつつ、凍結融解抵抗性を向上させる方法が望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、圧縮強度の低下を抑制すると共に、凍結融解抵抗性を向上させるコンクリートの製造方法、及び、コンクリート組成物の養生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリートの製造方法は、セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を練り混ぜてコンクリート組成物を得る混練工程と、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で養生する蒸気養生工程と、を含む。
【0008】
前記コンクリートの製造方法は、斯かる構成により、コンクリートの圧縮強度の低下を抑制すると共に、凍結融解抵抗性を向上させることができる。
【0009】
本発明に係るコンクリートの製造方法は、前記蒸気養生工程において、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で6時間以上36時間以下保持してもよい。
【0010】
前記コンクリートの製造方法は、斯かる構成により、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0011】
本発明に係るコンクリートの製造方法は、さらに、前記蒸気養生工程の前に、前記コンクリート組成物を5℃以上35℃以下の温度で6時間以上36時間以下保持する、前置養生工程を含んでいてもよい。
【0012】
前記コンクリートの製造方法は、斯かる構成により、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0013】
本発明に係るコンクリートの製造方法は、前記顆粒状シリカフュームのかさ密度が、0.55g/cm以上0.70g/cm以下であってもよい。
【0014】
前記コンクリートの製造方法は、斯かる構成により、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0015】
本発明に係るコンクリートの製造方法は、水結合材比(W/B)が、16質量%以上24質量%以下であってもよい。
【0016】
前記コンクリートの製造方法は、斯かる構成により、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0017】
本発明に係るコンクリート組成物の養生方法は、セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を含むコンクリート組成物を60℃以上の温度で蒸気養生する。
【0018】
前記コンクリート組成物の養生方法は、斯かる構成により、コンクリートの圧縮強度の低下を抑制すると共に、凍結融解抵抗性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係るコンクリート組成物の養生方法は、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で6時間以上36時間以下保持してもよい。
【0020】
前記コンクリート組成物の養生方法は、斯かる構成により、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧縮強度の低下を抑制すると共に、凍結融解抵抗性を向上させるコンクリートの製造方法、及び、コンクリート組成物の養生方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係るコンクリートの製造方法、及び、コンクリート組成物の養生方法について説明する。
【0023】
<コンクリートの製造方法>
本実施形態に係るコンクリートの製造方法は、セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を練り混ぜてコンクリート組成物を得る混練工程と、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で養生する蒸気養生工程と、を含む。
【0024】
以下、本実施形態に係るコンクリートの製造方法に用いられる各材料について説明した後、コンクリートの製造方法について説明する。
【0025】
セメント(C)としては、例えば、JIS R 5210で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられる。また、前記ポルトランドセメントにフライアッシュ、高炉スラグ等を混合した各種混合セメントも使用することができる。これらの中でも、セメントは、圧縮強度を高める観点から、中庸熱ポルトランドセメント、又は低熱ポルトランドセメントであることが好ましい。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記セメントの配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、コンクリート組成物の単位体積に対する質量割合が500kg/m以上1100kg/m以下とすることができる。セメントが2種以上含まれる場合、前記配合量は、セメントの合計配合量である。
【0027】
シリカフューム(SF)は、二酸化けい素を主成分とする微粒子(具体的には、非晶質の球状微粒子)である。シリカフュームは、金属シリコン又はフェロシリコンをアーク電気炉で製造する時に発生する排ガス等から捕集することができる。本実施形態に係るシリカフュームは、顆粒状のシリカフュームである。
【0028】
前記顆粒状シリカフュームは、BET比表面積が1m/g以上のシリカフューム超微粒子を凝集させることで得ることができる。本実施形態に係る顆粒状シリカフュームは、かさ密度が0.50g/cm以上0.80g/cm以下のシリカフュームを意味する。なお、粉体シリカフュームとは、JIS A 6207:2016に規定される粉体シリカフュームを指す。粉体シリカフュームのかさ密度は、例えば、0.25g/cm以上0.40g/cm以下である。かさ密度とは、一定容積の容器に粉体を充填し、その内容積を体積としたときの密度であり、日本粉体工業技術協会規格SAP01-79に従い測定される。
【0029】
前記顆粒状シリカフュームのかさ密度は、例えば、0.55g/cm以上0.70g/cm以下が好ましく、0.57g/cm以上0.70g/cm以下がより好ましい。また、前記顆粒状シリカフュームは、例えば、85質量%以上98質量%以下の二酸化けい素、0.6質量%以上2.0質量%以下の酸化マグネシウムを含有するものであってもよい。
【0030】
前記顆粒状シリカフュームの配合量は、例えば、コンクリート組成物の流動性を改善し、練混ぜ時間を短縮させる観点から、セメント及び顆粒状シリカフュームの合計配合量に対して5質量%以上20質量%以下が好ましく、8質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0031】
細骨材(S)としては、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される山砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂、再生骨材、人工軽量骨材、回収骨材等が挙げられる。なお、これらの細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記細骨材の配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、コンクリート組成物の単位体積に対する質量割合が350kg/m以上900kg/m以下とすることができる。細骨材が2種以上含まれる場合、前記配合量は、細骨材の合計配合量である。
【0033】
粗骨材(G)としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等が挙げられる。粗骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記粗骨材の配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、コンクリート組成物の単位体積に対する質量割合が650kg/m以上1000kg/m以下とすることができる。粗骨材が2種以上含まれる場合、前記配合量は、粗骨材の合計配合量である。
【0035】
水(W)としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。水の配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、コンクリート組成物の単位体積に対する質量割合が150kg/m以上180kg/m以下とすることができる。
【0036】
水結合材比(W/B)は、コンクリートの圧縮強度を高める観点から、16質量%以上24質量%以下であることが好ましく、16質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において結合材(B)は、セメント及びシリカフュームである。
【0037】
本実施形態に係るコンクリート組成物は、さらに、混和剤を含んでいてもよい。混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、消泡剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本実施形態に係るコンクリート組成物は、さらに、混和材を含んでいてもよい。混和材としては、例えば、フライアッシュ、セメントキルンダスト、高炉フューム、高炉水砕スラグ微粉末、高炉除冷スラグ微粉末、転炉スラグ微粉末、半水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
混練工程は、セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を練り混ぜてコンクリート組成物を得る。各材料を混練する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、二軸強制練混ぜミキサ等の練混ぜ機を用いて、従来公知の方法により混練することができる。
【0040】
蒸気養生工程は、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で養生する。養生方法は、JIS A 0203:2014に規定される常圧蒸気養生であってもよいし、常圧よりも高い高圧蒸気養生であってもよい。蒸気養生工程における養生温度は、60℃以上であり、70℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、蒸気養生工程における養生温度は、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。
【0041】
前記蒸気養生工程は、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で、6時間以上36時間以下保持することが好ましく、12時間以上24時間以下保持することがより好ましい。
【0042】
前記蒸気養生工程における養生手段としては、特に限定されるものではなく、コンクリート組成物の施工状態に応じて適宜選択することができる。例えば、コンクリート組成物を成形型に収容した状態で養生してもよいし、成形型から取り出して養生してもよい。成形型に収容した状態で養生する場合には、例えば、成形型にヒーター等の加熱機器を取り付けて成形型を加熱し、成形型の熱によって成形型内でコンクリート組成物を養生してもよいし、温風や高温の水蒸気等を成形型自体の内部に供給して成形型自体を加熱し、成形型の熱によって成形型内でコンクリート組成物を養生してもよい。
【0043】
本実施形態に係るコンクリートの製造方法は、前記蒸気養生工程の前に、前置養生工程を含んでいてもよい。前置養生工程は、前記コンクリート組成物を5℃以上35℃以下の温度で保持することが好ましく、15℃以上25℃以下の温度で保持することがより好ましい。また、前置養生工程は、6時間以上36時間以下保持することが好ましく、12時間以上24時間以下保持することがより好ましい。なお、前置養生工程とは、コンクリート組成物の練上りから蒸気養生工程における養生温度の昇温開始までをいう。
【0044】
前記前置養生工程は、前記コンクリート組成物を5℃以上35℃以下の温度で6時間以上36時間以下保持することが好ましく、15℃以上25℃以下の温度で12時間以上24時間以下保持することがより好ましい。
【0045】
本実施形態に係るコンクリートの製造方法は、セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を練り混ぜてコンクリート組成物を得る混練工程と、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で養生する蒸気養生工程と、を含むことにより、コンクリートの圧縮強度の低下を抑制すると共に、凍結融解抵抗性を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係るコンクリートの製造方法は、前記蒸気養生工程において、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で6時間以上36時間以下保持することにより、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0047】
本実施形態に係るコンクリートの製造方法は、前記蒸気養生工程の前に、前記コンクリート組成物を5℃以上35℃以下の温度で6時間以上36時間以下保持する、前置養生工程を含むことにより、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0048】
本実施形態に係るコンクリートの製造方法は、前記顆粒状シリカフュームのかさ密度が、0.55g/cm以上0.70g/cm以下であることにより、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0049】
本実施形態に係るコンクリートの製造方法は、水結合材比(W/B)が、16質量%以上24質量%以下であることにより、コンクリートの圧縮強度の低下をより抑制すると共に、凍結融解抵抗性をより向上させることができる。
【0050】
<コンクリート組成物の養生方法>
本実施形態に係るコンクリート組成物の養生方法は、セメントと、顆粒状シリカフュームと、細骨材と、粗骨材と、水と、を含むコンクリート組成物を60℃以上の温度で蒸気養生する。養生温度は、60℃以上であり、70℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、養生温度は、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態に係るコンクリート組成物の養生方法は、前記コンクリート組成物を60℃以上の温度で6時間以上36時間以下保持することが好ましく、12時間以上24時間以下保持することがより好ましい。
【実施例0052】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
<コンクリート組成物の材料>
水(W):上水道水
セメント(C):普通ポルトランドセメント(NC、住友大阪セメント社製)
早強ポルトランドセメント(HC、住友大阪セメント社製)
中庸熱ポルトランドセメント(MC、住友大阪セメント社製)
低熱ポルトランドセメント(LC、住友大阪セメント社製)
シリカフューム(SF):顆粒状シリカフューム、SF-RD(かさ密度:0.70g
/cm、巴工業社製)
粉体シリカフューム、940U(かさ密度:0.35g/c
、エルケムジャパン社製)
細骨材(S):山砂
粗骨材(G):硬質砂岩
混和剤(高性能減水剤):SSP-104H(竹本油脂社製)
混和剤(消泡剤):AFK-2(竹本油脂社製)
【0054】
【表1】
【0055】
<コンクリートの作製>
上記の各材料を、表1に示す配合で混合し、二軸強制練りミキサにて混練して、各コンクリート組成物を作製した。具体的には、まず、セメント、シリカフューム、細骨材、及び粗骨材を前記ミキサにて15秒間空練りした後、水を添加して10分間混練し、各実施例、各比較例、及び各参考例のコンクリート組成物を得た。続いて、各コンクリート組成物を20℃の養生槽内に所定時間(0時間~72時間)配置し、前置養生を行った。なお、シリカフュームは、各実施例及び各比較例においては、顆粒状シリカフュームを用い、各参考例においては、粉体シリカフュームを用いた。
【0056】
各実施例のコンクリート組成物については、前置養生を行った後、蒸気養生槽(日向社製)を用いて常圧で蒸気養生を行った。具体的には、表2~5に示す前置時間の経過後に、養生槽内の温度を表2~5に示す養生温度(最高温度)まで上昇させて、所定時間(6時間~36時間)保持した。その後、養生槽内の温度を20℃に降下させて、各実施例のコンクリートを得た。なお、比較例2,4,6,9、及び、参考例2~9,11~18,20~27,30~37の各コンクリート組成物についても、各実施例と同様の方法により蒸気養生を行い、各コンクリートを得た。
【0057】
比較例1,3,5,7,8、及び、参考例1,10,19,28,29の各コンクリート組成物については、20℃の養生槽内に72時間配置した。その後、比較例1,3,5,8、及び、参考例1,10,19,29については、材齢28日まで水中養生(20℃)を行い、各コンクリートを得た。比較例7及び参考例28については、水中養生を行うことなく各コンクリートを得た。
【0058】
<圧縮強度の評価>
作製した各コンクリートについて、JIS A 1108:2018に基づいて圧縮強度を測定した。また、圧縮強度は、粉体シリカフュームを含む各参考例の測定値(基準となる測定値)と、各参考例と同一の養生方法の顆粒状シリカフュームを含む各実施例及び各比較例の測定値とをそれぞれ比較した。各実施例及び各比較例の測定値から、各参考例の測定値を引いた値が、0以上であったものを「〇(粉体シリカフュームを含むコンクリートと同等か同等以上の圧縮強度を有する)」と評価し、0未満であったものを「×(粉体シリカフュームを含むコンクリートより圧縮強度が低い)」と評価した。圧縮強度の測定値と評価結果については、表2~5に示す。
【0059】
また、圧縮強度の上昇量は、前置養生のみを行った比較例1,3,5,8、及び参考例1,10,19,29の測定値を基準として、該基準となる測定値と、蒸気養生を行った各実施例、各比較例、及び各参考例の測定値とをそれぞれ比較した。蒸気養生を行った各実施例、各比較例、及び各参考例の測定値から、前置養生のみを行った各比較例及び各参考例の測定値を引いた値が、10以上であったものを「◎」と評価し、0以上10未満であったものを「〇」と評価し、0未満であったものを「×」と評価した。評価結果については、表2~5に示す。
【0060】
<凍結融解抵抗性の評価>
作製した各コンクリートについて、JIS A 1148:2010に基づいて凍結融解試験を行い、相対動弾性係数を求めた。凍結融解抵抗性は、土木学会コンクリート標準示方書に基づいて、凍結融解600サイクルにおける相対動弾性係数が、85%以上であったものを「〇」と評価し、85%未満であったものを「×」と評価した。相対動弾性係数の測定値と評価結果については、表2~5に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
表2~5の結果から分かるように、60℃以上の温度で養生する各実施例のコンクリートは、60℃未満の温度で養生する各比較例のコンクリートと比較して圧縮強度が高く、養生方法が同一である各参考例のコンクリートと同等か同等以上の圧縮強度が認められる。また、顆粒状シリカフュームを含む各実施例のコンクリートは、粉体シリカフュームを含む各参考例のコンクリートと比較して、凍結融解抵抗性に優れる。つまり、本発明の構成要件をすべて満たすコンクリートの製造方法は、コンクリートの圧縮強度の低下を抑制すると共に、凍結融解抵抗性を向上させることができる。