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特開2022-159092荷電粒子顕微鏡で使用するためのサンプル担体、およびそのようなサンプル担体を荷電粒子顕微鏡で使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159092
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】荷電粒子顕微鏡で使用するためのサンプル担体、およびそのようなサンプル担体を荷電粒子顕微鏡で使用する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20221006BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20221006BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20221006BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20221006BHJP
   G01N 23/2255 20180101ALI20221006BHJP
【FI】
G01N1/28 F
G01N1/28 W
G01N1/00 101B
H01J37/20 A
H01J37/20 C
H01J37/20 D
H01J37/20 E
H01J37/26
G01N23/2255
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022051328
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】21166433.9
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】フランティセク ヴァスケ
(72)【発明者】
【氏名】ヤークブ クバ
【テーマコード(参考)】
2G001
2G052
5C101
【Fターム(参考)】
2G001AA05
2G001BA06
2G001CA05
2G001RA04
2G052AD32
2G052AD52
2G052CA46
2G052DA33
2G052EC18
2G052GA34
2G052JA04
2G052JA08
5C101AA07
5C101FF16
5C101FF31
5C101FF47
(57)【要約】      (修正有)
【課題】荷電粒子顕微鏡において、バルクサンプルとサンプル担体との間のサンプルの容易で信頼性の高い移送を可能にする方法を提供する。
【解決手段】機械的サポート輪郭およびそれに接続されたグリッド部材を有するサンプル担体を提供するステップ、サンプル担体を荷電粒子顕微鏡の機械的ステージデバイスに接続するステップを含む。さらに、この方法は、サンプル、例えば、チャンク形状またはラメラ形状のサンプルを提供し、サンプルをサンプル担体のグリッド部材に接続するステップを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子顕微鏡でサンプルを調製する方法であって、当該方法は、
- 機械的サポート輪郭およびそれに接続されたグリッド部材を有するサンプル担体を提供するステップと、
- 前記サンプル担体を前記荷電粒子顕微鏡の機械的ステージデバイスに接続するステップと、
- サンプルを提供するステップと、
- 前記機械的サポート輪郭と前記グリッド部材が互いに事前接続されている状態で、前記サンプルを前記サンプル担体の前記グリッド部材に接続するステップと、を含む、荷電粒子顕微鏡でサンプルを調製する方法。
【請求項2】
前記サンプル担体が前記機械的ステージデバイスに接続されている状態で、前記サンプルを前記サンプル担体の前記グリッド部材に接続するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グリッド部材および前記機械的サポート輪郭は一体的に形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記荷電粒子顕微鏡は集束イオンビーム顕微鏡を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルを提供するステップは、
- バルクサンプルを提供するステップと、
- 集束イオンビームを使用して、前記バルクサンプル中に前記サンプルを作成するステップと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バルクサンプルから前記サンプルを解放し、前記サンプルを前記サンプル担体に移すステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルを移送するために細長い輸送部材が使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細長い輸送部材は、前記サンプル担体によって定義される平面との角度を画定し、前記角度は、前記サンプルの前記サンプル担体への移送の少なくとも実質的な部分の間、実質的に一定に保たれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルを移すために並進運動が使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記並進運動は、細長いマニピュレータと前記荷電粒子顕微鏡の機械的ステージとの間の相対移動によって提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細長い輸送部材は針を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は極低温環境下で実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法で使用するためのサンプル担体であって、当該サンプル担体は、
- 前記荷電粒子顕微鏡の機械的ステージデバイスに接続可能であるように構成された機械的サポート輪郭と、
- 前記機械的サポート輪郭に事前接続され、サンプルを保持するように構成されたグリッド部材であって、前記グリッド部材は、前記事前接続された状態でいかなるサンプルも含まず、前記グリッド部材は、前記サンプル担体の組み立てられた状態で前記サンプルを受け取るために構成される、グリッド部材を含む、サンプル担体。
【請求項14】
前記グリッド部材は半月形グリッドを含む、請求項13に記載のサンプル担体。
【請求項15】
ラメラ形状またはチャンク形状のサンプルを含む前記サンプルを含む、請求項13または14に記載のサンプル担体。
【請求項16】
前記グリッド部材および前記機械的サポート輪郭は一体的に形成される、請求項13~15のいずれか一項に記載のサンプル担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、荷電粒子顕微鏡で使用するためのサンプル担体(sample carrier)、およびそのようなサンプル担体を荷電粒子顕微鏡で使用する方法に関する。本実施形態はさらに、画像化システムのためのサンプル調製のデバイスおよびその方法に関する。より具体的には、本実施形態は、その場でのサンプル調製および画像化(imaging)を可能にする複数の自由度を有するサンプル調製ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡法の形態で、顕微鏡対象物を画像化するためのよく知られた、ますます重要な技術である。歴史的に、電子顕微鏡の基本的な種数は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、および走査型透過電子顕微鏡(STEM)などの多くの周知の装置種に、ならびに、例えば、イオンビームミリングまたはイオンビーム誘起蒸着(IBID)などの支援活動を可能にする、「機械加工」集束イオンビーム(FIB)をさらに使用するいわゆる「二重ビーム」装置(例えば、FIB-SEM)などの様々な副種に進化している。
【0003】
電子顕微鏡の画像化用のサンプルは、透過光または電子放射下で観察するための特定の調製が必要である。例えば、サンプルの薄いスライス(またはセクション)は、通常、グリッドまたはチューブ内のバルクサンプルからカットまたはミリングされる。カットまたはミリングは、集束イオンビーム(FIB)システムによって、またはFIBと電子顕微鏡の両方を含む二重ビームシステム内で実行できる。このような二重ビームシステムの例には、FEI社(米国オレゴン州ヒルズボロ)のQuanta 3D DualBeamシステムが含まれる。ただし、FIBを使用して薄いスライスを調製した後、サンプルを画像化に適したプラットフォームに移送する必要がある。走査型透過電子顕微鏡(STEM)などの顕微鏡による画像化では、適切な画像をキャプチャするために、複数の自由度に沿った位置決めが必要になる場合がある。
【0004】
その他は、複数の自由度を持つSTEM画像化のステージを調製している。例えば、米国特許第7,474,419号は、基準点の近くにサンプルを配置するためのステージアセンブリを記載している。ステージアセンブリは、サンプルを取り付けることができるサンプルテーブルと、基準面に垂直なX軸、基準面に平行なY軸、および基準面に平行なZ軸に実質的に平行な方向に沿ってサンプルテーブルの並進をもたらすように配置された一組のアクチュエータを含む。X軸、Y軸、Z軸は相互に直交しており、基準点を通過する。さらに、米国特許第6,963,068号は、3つの垂直方向の並進と2つの回転で5つの自由度で移動できるテーブルを備えたマニピュレータについて説明する。
【0005】
ただし、STEMまたはTEM分析用のサンプルを操作する手法はより複雑である。これらの手法では、FIBのミリングとカービングの両方でサンプルを操作し、その後のSTEM分析を特定の臨界温度で実行して、サンプル内の氷晶の形成を防止したり、操作間のサンプルの望ましくない解凍を防止したりする必要がある。さらに、ラメラサポートで必要な配向にラメラを配置することは非常に困難である。特に、薄いラメラは、さらなる検査のためにラメラを(S)TEMに正しく配置できることを確認するため、ラメラサポートと(ほぼ)同じ平面にある必要がある。さらに、サンプルから前記サポートへのラメラの移送は、溶接(welding:溶着)および非溶接操作を伴い得、これは、サンプル部分を損傷する可能性があり、その損失にさえつながる可能性がある。例えば、ラメラが針から落ちたり、サポートから落ちたりする可能性がある。
【0006】
従って、必要なのは、サンプルが破壊されるほど多くのサンプル処理を必要とせずに、STEMまたはTEM画像化用のサンプルの複雑な操作を可能にするシステムおよび方法である。
【0007】
米国特許出願公開第2008/173813 A1号では、サンプルホルダーを回転および移動させるためのマニピュレータが開示されている。ここで、サンプルが配置されるグリッドを有するサンプルホルダーは、2つの先細りシリンダーの形態の2つの部材を含むマニピュレータによって保持される。
【0008】
米国特許出願公開第2020/273659 A1号は、荷電粒子顕微鏡用のサンプルホルダーを説明しており、サンプルを含むサンプル担体を解放可能に受け入れるためのくぼみのあるホルダー本体を備える。
【発明の概要】
【0009】
一態様によれば、請求項1に定義されるように、荷電粒子顕微鏡においてサンプルを調製する方法が提供される。この方法は、機械的サポート輪郭およびそれに接続されたグリッド部材を有するサンプル担体を提供し、前記サンプル担体を前記荷電粒子顕微鏡の機械的ステージデバイスに接続するステップを含む。本明細書で定義されるように、この方法は、ラメラ形状またはチャンク形状のサンプルなどのサンプルを提供し、前記サンプルをサンプル担体のグリッド部材に接続するステップをさらに含む。前記サンプルをサンプル担体のグリッド部材に接続するステップは、機械的サポート輪郭とグリッド部材がすでに互いに接続されている状態で実行される。換言すれば、前記サンプルをサンプル担体のグリッド部材に接続するステップは、機械的サポート輪郭を有するサンプル担体と、それに接続されたグリッド部材を提供するステップの後に実行される。
【0010】
従来技術の方法とは対照的に、サンプルは、グリッド部材および機械的サポート輪郭の事前接続状態でグリッド部材に接続されている。ラメラまたはチャンクをグリッド部材に配置し、グリッド部材をラメラで機械的サポートに接続するという間接的な移送の代わりに、直接的な移送が可能である。これは時間を節約し、例えばグリッド部材を機械的サポートに配置する際に、ラメラまたはチャンクを損傷するリスクを低減する。これは、サンプルが最初にグリッド部材に接続され、次にグリッド部材とサンプルの組み合わせが機械的サポート輪郭に接続される従来技術の方法とは対照的である。
【0011】
この方法は、サンプル担体が前記機械的ステージデバイスに接続されている状態で、前記サンプルをサンプル担体のグリッド部材に接続するステップを含み得る。
【0012】
前に示したように、前記グリッド部材は、半月形グリッドを含み得、および/または前記機械的サポート輪郭は、上記のように、リング状、環状、または実質的に閉じた輪郭を有し得る。
【0013】
前に示したように、グリッド部材は、前記機械的サポート輪郭に一体的に接続し得る。
【0014】
この方法は、一実施形態では、集束イオンビーム顕微鏡を含む荷電粒子顕微鏡で実施し得る。
【0015】
前記サンプルを提供するステップは、一実施形態では、バルクサンプルを提供し、前記集束イオンビームを使用して、前記バルクサンプル中にラメラ形状のサンプルまたはチャンク形状のサンプルなどの前記サンプルを作成するステップを含む。
【0016】
この方法は、前記バルクサンプルから前記サンプルを解放し、前記サンプルを前記サンプル担体に移すステップを含み得る。
【0017】
前記サンプルを移送するために、細長い輸送部材を使用し得る。
【0018】
一実施形態では、前記細長い輸送部材は、前記サンプル担体によって定義される平面との角度を画定し、前記角度は、前記サンプルの前記サンプル担体への移送の少なくとも実質的な部分の間、実質的に一定に保たれる。前記バルクサンプルから前記サンプル担体に移動する間、角度は特に一定に保たれる。前記バルクサンプルから前記サンプルを解放すること、および/または前記サンプルを前記サンプル担体に取り付けることは、前記角度の変化を含み得ることに留意されたい。実質的な部分は、バルクサンプルホルダーとグリッドサンプルホルダーとの間を移動する距離の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、またはより好ましくは少なくとも95%と見なされる。
【0019】
一実施形態では、並進運動は、前記サンプルを移送するために実質的に使用される。
【0020】
前記並進運動は、細長いマニピュレータと前記荷電粒子顕微鏡の機械的ステージとの間の相対移動によって提供され得る。特に、細長いマニピュレータは、前記機械的ステージに対して移動し得る。移送中に、いくつかの機械的ステージの移動も実行され得ると想定できる。
【0021】
一実施形態では、前記細長い輸送部材は針を含む。針は簡単かつ迅速な移送を提供する。他の形状も使用できると想定できる。
【0022】
本明細書で定義される方法は、極低温環境下で実施し得る。
【0023】
この方法は、バルクサンプルホルダーの方向に平行な第1のバルク軸の周りでサンプル位置を回転させ、バルクサンプルホルダーの方向に垂直なバルクフリップ軸を中心にサンプル位置を回転させるように構成されたバルクサンプルホルダーと、バルクサンプルホルダーに隣接したサンプルグリッドを保持するためのグリッドサンプルホルダーであって、グリッドサンプルホルダーの方向に平行な第1のグリッド軸およびグリッドサンプルホルダーの方向に垂直なグリッドフリップ軸の周りでサンプルグリッドを回転させるように構成されたグリッドサンプルホルダーを含む、多軸サンプル調製ステージ上で実施し得る。
【0024】
この方法はまた、バルクサンプルホルダーおよびグリッドサンプルホルダーを含むサンプル調製ステージで実施し得、サンプル調製ステージは、バルクサンプルホルダーの方向に垂直なバルクフリップ軸の周りで回転可能である。バルクサンプルホルダーとグリッドサンプルホルダーの両方が相互に固定されていると想定でき、つまり、調製ステージを回転させると、バルクサンプルホルダーとグリッドサンプルホルダーの両方が同様に動く。回転軸(バルクフリップ軸)はXZ平面内にあり得、細長いマニピュレータは、実質的に前記XZ平面内にも延在し得る。バルクサンプルホルダーおよびグリッドサンプルホルダーは、調製ステージのベースプレートに対して角度を付け得、すなわち、XY平面に対する角度で配置し得ることに留意されたい。この角度は、例えば、約45度であり得る。
【0025】
この方法はまた、集束イオンビームおよび走査型電子顕微鏡を有する二重ビームシステムにおいて実施され得る。このシステムは、上記のような多軸サンプル調製ステージを含み得る。
【0026】
本明細書で定義される方法は、上記のように多軸サンプル調製ステージを提供し、バルクサンプルホルダーに保存されたバルクサンプルからラメラまたはチャンクをカットすることによってサンプルを調製し、そして、ラメラをバルクサンプルホルダーからグリッドサンプルホルダーに提供されているサンプル担体のグリッド部材に移すことによって、その場で実行され得る。
【0027】
一態様によれば、本発明は、本明細書で定義され、請求項13に記載される方法で使用するためのサンプル担体を提供する。サンプル担体は、荷電粒子顕微鏡の機械的ステージデバイスに接続可能であるように配置された機械的サポート輪郭を備える。サンプル担体は、前記機械的サポート輪郭に接続され、サンプル、特にバルクサンプルから発する(emanate)サンプルを保持するために配置されたグリッド部材をさらに備える。前記サンプルは、他の形状および形態も想定できるが、例えば、いわゆるチャンクまたはラメラであり得る。より一般的には、実施形態は、比較的大きなバルクサンプルから収集される任意の比較的小さなサンプル片を含む。本明細書で定義されるように、前記グリッド部材は、前記サンプル担体の組み立てられた状態で前記サンプルを受け取るために配置される。
【0028】
前記グリッド部材は、例えば、いわゆる半月形グリッドであり得、これは、例えば、米国特許第9,159,531B2号で説明されているような、FIB用途のための半月形グリッドリフトアウトTEMサンプルホルダー(FIBリフトアウトグリッド)とも呼ばれる。
【0029】
前記機械的サポート輪郭は、例えば、リング状、環状、または実質的に閉じた輪郭を有し得る。機械的サポートは、例えば、米国オレゴン州ヒルズボロのFEI社のThermo Fisher Scientificから入手可能な、いわゆる低温FIB AutoGridであり得る。
【0030】
本明細書で定義されるように、前記グリッド部材は、前記機械的サポート輪郭に事前接続されており、前記グリッド部材は、前記事前接続された状態でいかなるサンプルも含まない。本発明によるサンプル担体の優位性の1つは、このグリッド部材がすでに前記機械的サポートの内側に配置されている、または少なくともそれに事前接続されている間、または少なくともラメラまたはチャンクを前記グリッド部材(ラメラサポートとも呼ばれる)上に配置できることである。ラメラまたはチャンクをグリッド部材に配置し、グリッド部材をラメラで機械的サポートに接続するという間接的な移送の代わりに、直接的な移送が可能である。これは時間を節約し、例えばグリッド部材を機械的サポートに配置する際に、ラメラまたはチャンクを損傷するリスクを低減する。
【0031】
前に述べたように、本発明は、より大きなバルクサンプルから発するラメラまたはチャンクを移すのに有益である。しかしながら、本発明は、事前接続されたサンプル担体に移送されるラメラまたはチャンクの特定の形状または形状に限定されない。
【0032】
サンプル担体は、前記ラメラ形状またはチャンク形状のサンプルを含み得る。前記ラメラ形状のサンプルまたはチャンク形状のサンプルは、前記機械的サポート輪郭に事前接続されている前記グリッド部材を含む前記サンプル担体が前記荷電粒子顕微鏡の前記機械的ステージデバイスに取り付けられている場合にのみ、前記サンプル担体に接続され得る。
【0033】
一実施形態では、前記グリッド部材および前記機械的サポート輪郭は一体的に形成される。これは、グリッド部材と機械的サポートを一体的に接続できる、すなわち互いに固定的に接続できることを意味する。例えば、グリッド部材と機械的サポートは、製造プロセス中に互いに固定的に接続でき、これには、例えば、成形技術またはMEMS製造に基づく技術を含むことができる。このようにして、グリッド部材と機械的サポート輪郭はすでに互いに固定的に接続されており、事前のクリッピング手順を実行する必要はない。一体的に形成されたサンプル担体は、次に説明する本明細書に開示される方法で有利に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】バルクステージとグリッドステージを有するベースステージの一実施形態の斜視図である。
図2図1Aのバルクステージとグリッドステージの拡大図である。
図3図3の調製されたサンプルの拡大図である。
図4】画像化のためのサンプルのその場での調製のための方法の一実施形態のフロー図である。
図5】本明細書に開示されるようなサンプルを調製するためのセットアップの拡大図である。
図6】ベアリングを介した加熱/冷却要素の一実施形態の斜視図である。
図7a】熱制御システムに接続されたステージの異なる図である。
図7b】熱制御システムに接続されたステージの異なる図である。
図8】バルクサンプル調製およびその後のバルクサンプルから本明細書で定義されるサンプル担体への移送のための、シンプルであるが効果的な構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態は、サンプル担体、サンプル処理システム、および電子顕微鏡などの荷電粒子顕微鏡で画像化するためのサンプルを調製するための方法に関する。サンプル担体は、複数のサンプル位置を持ち、各サンプル位置を複数の軸を中心に傾ける機能を備えた二重ビーム電子顕微鏡のサンプル調製および画像化ステージで使用され得る。多軸ステージの一実施形態は、例えば、バルクサンプルの集束イオンビーム処理を実行して、さらなる画像化のためにバルクサンプルのラメラ形状のサンプルをミリングまたはスライスすることによって、バルクサンプルを操作するためのバルク調製ステージを有する。多軸ステージには、様々なサンプルタイプを処理するために、グリッド、チューブ、プランシェ、またはTEMリフトアウトグリッド用のホルダーを含めることができる。特に、ホルダーは、本明細書で定義されるようにサンプル担体に接続するように配置された荷電粒子顕微鏡の機械的ステージデバイスの一部であり得る。さらに、多軸ステージは、バルクサンプルをFIBの下に配置してバルクサンプルを適切にミリングまたはスライスできるように、複数の自由度で複数の方向に移動するように構成し得る。
【0036】
バルク調製ステージに加えて、多軸ステージの実施形態はまた、画像化のためにグリッド上に取り付けられたバルクサンプルの薄い構造(例えば、ラメラ)を保持するように構成されるグリッドステージを含む。従って、一旦カットされると、バルクサンプルからのラメラは、例えばマニピュレータ針の形態の細長い輸送部材を使用することによって、バルクステージからグリッドステージに移すことができる。いくつかの実施形態では、グリッドステージは多次元で移動できるため、複数の角度を見ることができる二軸断層撮影を実行可能である。バルクステージとグリッドステージは同じ多軸ステージ上にあるため、単一の多軸ステージを使用してラメラをカットでき、ラメラをグリッドステージに移送するために使用されるチャンバーをベントせずに、カットされたラメラセクションでTEMスキャンを実行する。従って、多軸ステージは、複数の自由度を備えたバルクステージと、システムのコンポーネントが互いに対して複数の次元で移動できるようにする様々な軸に沿った複数の自由度を備えたグリッドステージを含むことができる。
【0037】
多軸ステージは、本明細書で定義される方法の実施形態を実行可能に配置できる。これは、本明細書で定義されるサンプル担体を提供するステップを含み、ここで、前記サンプル担体は、それに接続された機械的サポート輪郭およびグリッド部材を有し、特に、前記サンプル担体を多軸ステージのグリッドステージに接続することによって、前記サンプル担体を前記荷電粒子顕微鏡の機械的ステージデバイスに接続するステップを含む。これには、バルクステージで提供されるバルクサンプルから採取されたラメラ形状のサンプルまたはチャンク形状のサンプルなどのサンプルを提供すること、および前記サンプルをサンプル担体のグリッド部材に接続することも含まれる。特に、マニピュレータ針などの細長い輸送部材が、前記ラメラ形状のサンプルを移送するために使用される場合、多軸ステージはまた、前記ラメラ形状のサンプルまたはチャンク形状のサンプルを前記バルクサンプルから解放し、前記ラメラ形状のサンプルを前記サンプル担体に移すステップを可能にする。多軸ステージはさらに、例えば、前記ラメラ形状のサンプルを前記サンプル担体に移送している間、前記細長い輸送部材は、前記サンプル担体によって定義される平面との角度を画定し、前記角度は、並進運動によって実質的に一定に保たれるため、ラメラ形状のサンプルをサンプル担体に容易に移送可能にする。従って、前記荷電粒子顕微鏡の機械的ステージ、特に多軸ステージは、並進運動を提供可能にする。
【0038】
以下で説明するように、多くの異なるタイプの処理をサンプルに適用できることを理解されたい。本発明の実施形態は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型透過電子顕微鏡(STEM)分析のためのサンプルを調製するために使用され得る任意のタイプの処理を含む。例えば、ラメラまたはチャンクは、バルクサンプルにあるサイトから作成し得る。このシステムでは、バルクステージはラメラサイトまたはチャンクサイトが配置されるバルクサンプルを保持する。次に、ラメラまたはチャンクがバルクステージで調製される。
【0039】
さらに、本実施形態は、顕微鏡の特定の構成に限定されないことを理解されたい。例えば、サンプルの画像をキャプチャするために使用される任意のタイプの顕微鏡は、本実施形態の範囲内にある。そのような顕微鏡には、例えば、可視光顕微鏡、共焦点顕微鏡、ならびに赤外および近赤外顕微鏡が含まれる。当業者は、電子顕微鏡に関して本明細書で例示される実施形態が他のタイプの顕微鏡に容易に適合させることができることを認識するであろう。
【0040】
別の実施形態では、リフトアウト(lift out)手順が実行され得る。このシステムでは、マニピュレータは、バルクステージ上にあるラメラまたはチャンクを、グリッドステージ上に提供されるサンプル担体のグリッドに移送し得る。いくつかの実施形態では、ラメラは、マニピュレータが取り外された後にさらに処理され得る。例えば、ラメラは、集束イオンビームを使用して、厚いラメラから薄いラメラにミリングされ得る。
【0041】
ラメラの調製には、ラメラサイトの特定(サンプルの複数の断面を含む)、保護堆積(例えば、ラメラサイトを金属キャップ層でコーティングする)、基準マーカーの追加、ラフミリング(例えば、約2μmのラメラを作成するため)、中程度のミリング(例えば、ラメラを約250~400nmに薄くする)、細かいミリング(例えば、ラメラを最終的な厚さまで薄くする)、サンプルを基板から解放するためのアンダーカット、エンドポイント、ラメラのクリーニング(例えば、低いkVクリーニング)、および/またはサンプルの移送、などのプロセスが含まれる。
【0042】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、極低温で凍結されたサンプルのサンプル調製に使用できる。例えば、これらの方法は、顕微鏡チャンバーを通気することなく実行できる。FIB調製は、生物学的試料、医薬品、フォーム、インク、および食品などの液体または脂肪を含有する試料の断面分析を可能にする、二重ビーム顕微鏡などの適切に装備された機器で極低温凍結試料と共に使用可能である。以下でより詳細に説明するように、システムは、システム内の温度を維持するための温度制御要素をさらに含むことができる。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、室温、高温、および/または極低温で実施できる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、生物からの任意のタイプのサンプルを含むことができるが、典型的には、組織、細胞、ウイルス、細胞構造、または任意の他の目的の生物学的サンプルを含む。
【0044】
サンプルは、半導体材料やポリマーなどの材料科学用途で使用される電子顕微鏡用に調製できる。電子顕微鏡はまた、診断用電子顕微鏡、低温生物学、タンパク質局在化、電子断層撮影、細胞断層撮影、低温電子顕微鏡、毒物学、生物学的生産およびウイルス負荷モニタリング、粒子分析、製剤品質管理、構造生物学、3D組織画像化、ウイルス学、およびガラス化などの用途向けの生物学および生命科学分野で使用され得る。これらの別々のタイプの用途は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、反射型電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡、および低電圧電子顕微鏡を含む様々な異なるタイプの電子顕微鏡によって実行できる。
サンプル調製システムの概要
【0045】
図1は、多軸ステージ100の一実施形態の斜視図である。多軸ステージ100は、長方形のスタンド103を支持する円形のベース101を含む。長方形のスタンド103の左端に取り付けられているのは、バルクステージ110を保持する垂直壁104である。バルクステージ110は、垂直壁104に移動可能に取り付けられ、バルクサンプルを保持するために使用される。
【0046】
バルクステージ110は、図示のように、バルク回転軸112を中心にサンプルホルダー118を円周方向に回転させるように構成されたバルク回転アクチュエータ115を含む。従って、アクチュエータ115の動きは、多軸ステージ100のY軸の周りの360度の動きを伴う、サンプルホルダー118内のバルクサンプルの回転運動をもたらす。これにより、サンプルは、サンプルホルダー118の方向に平行な軸に沿って回転できる。
【0047】
この回転運動に加えて、バルクステージ110はまた、垂直壁104に取り付けられたフリップアクチュエータ119を使用してサンプルホルダー118をX軸の周りで回転させて、サンプルをベースステージ100の前部から多軸ステージ100の後部に「フリップ」させ、そしてその逆にするバルクフリップ軸111の周りに複数の自由度を有する。これにより、バルクサンプルホルダー118は、サンプルホルダーの方向に垂直な線の周りを回転できる。
【0048】
バルク回転軸112の周りのバルクサンプルの回転は、集束イオンビーム処理などのサンプル処理を可能にし、回転軸の周りで回転対称のサンプルをもたらす。これにより、イオンビーム処理後のサンプルの不等方性/不均一性を除去または低減できる。回転軸の周りのこの角度自由度(DOF)と共に、バルクフリップ軸111の周りに提供されるさらなる角度DOFは、サンプル内の広範囲の特定の結晶学的配向が第1および/または第2の照射ビームに沿って配向されることを可能にする。従って、回転軸とフリップ軸の周りの角度DOFを組み合わせると、サンプルのα傾斜とβ傾斜の両方が可能になり得る。
【0049】
特定の実施形態では、バルクフリップ軸の周りのサンプルホルダー118の角度ストロークは、実質的に360度以上である。多軸ステージ100の主軸にフリップ軸が(回転軸の周りのステージアセンブリの適切な角度調整により)平行になるように配置され、集束ビームがイオンビームである場合、そのような角度ストロークにより、ステージアセンブリを一種の「イオン旋盤」として使用可能にする。このようなセットアップでは、フリップ軸の周りに特定の円筒形/円錐形の外形を持つ必要があるチップやプローブなど、様々な精密アイテムを製造できる。同様の方法で、第2の照射ビームとしてレーザービームを使用する「レーザー旋盤」を実現できる。
【0050】
長方形のスタンド103に取り付けられ、バルクステージ110に直接隣接するのは、グリッドステージ150である。バルクステージと同様に、グリッドステージ150は、長方形のスタンド103に取り付けられているので、それはまた、いくつかの軸の周りに複数の自由度を有するサンプルを提供する。図1に示すように、グリッドステージ150は、グリッドフリップ軸151およびグリッド回転軸152を有し、これにより、グリッドホルダー156を複数のXおよびY次元で移動させることができる。グリッド回転軸152に沿った回転運動は、グリッド回転アクチュエータ154によって制御され、多軸ステージ100のY軸の周りでグリッドホルダー156を動かす。これにより、グリッドホルダーは、グリッドホルダー156に平行な方向に回転できる。
【0051】
グリッドフリップ軸151に沿った回転運動は、グリッドホルダーが多軸ステージ100のX軸を中心に回転可能にするフリップアクチュエータ155によって制御される。これにより、グリッドステージは、多軸ステージ100のY軸の周りの方向に回転できる。この多軸回転運動は、サンプルの画像化を提供するためにグリッドホルダー156に配置されたサンプルにいくつかの自由度を提供する。
【0052】
実現できるように、バルクステージとグリッドステージを互いに隣接させて同じベースに取り付けることにより、この単一ステージを使用して、イオンビームを使用してサンプルを調製し、次にそれらのサンプルを電子ビームで画像化できる。特に、単一ステージは、ラメラ形状のサンプルを使用できる。二重ビームデバイスでは、多軸ステージをデバイス内に配置してから、二重ビームデバイスから多軸ステージを取り外すことなく、サンプルの調製と画像化に使用できる。さらに、以下で説明するように、多軸ステージを所望の温度に冷却または加熱し、ステージおよびサンプルを室温条件にさらす必要なく二重ビームシステム内のすべてのサンプル操作を実行することにより、サンプルを所望の温度に保つことができる。
【0053】
多軸ステージ100の後部には、同じ多軸ステージ100を使用してサンプルに対して走査型透過電子顕微鏡法を実行するための検出器ホルダー162の横方向の運動161を可能にするSTEMステージ160がある。いくつかの実施形態では、前述の構成要素は、互いに独立して軸の周りを移動できる。
【0054】
多軸ステージ100の後部において、格納式S/TEM検出器は、開創器160によって格納され得る検出器ホルダー162内に配置され得る。検出器は、例えば放射線による損傷や化学的損傷を避けるために、カバーで保護することもできる。いくつかの実施形態では、S/TEM検出器の格納性の代わりとしてカバーを使用し得る。
【0055】
図2は、バルクステージ110およびグリッドステージ150の一実施形態の拡大図であり、それらの相互関係を示す。バルクステージは、バルクサンプル担体215をバルクサンプル220と共に保持するように構成されたバルクアーム210を含む。バルクアーム210は、バルクサンプル220の配向(orientation:向き)が変化するように、バルクステージの周りを回転できる。例えば、バルクアーム210は、バルク回転軸112を中心に回転して、バルクサンプル220を回転させることができる。バルクアーム210はまた、バルクフリップ軸111を中心に反転して、バルクサンプル220を反転させることができる。
【0056】
バルクステージ110に隣接するのはグリッドステージ150であり、これは、サンプルを保持するように構成されたサンプル担体255を保持するように構成されたグリッドアーム250で示されている。グリッドアーム250は、サンプル担体255の配向が時間と共におよび電子顕微鏡検査中に変化するように、複数の自由度でグリッドステージの周りを移動できる。例えば、グリッドアーム250は、グリッド回転軸152を中心に回転できる。グリッドアーム250はまた、グリッドフリップ軸152を中心に反転して、グリッドプレートを反転させることができる。
【0057】
図2に示すように、マニピュレータ270およびガス供給システム280を使用して、バルクステージ110でサンプル220から採取されたラメラを移送し、当技術分野で知られている方法によってラメラをグリッドステージ150に移動させることができる。図3に示すように、ラメラ410は、さらなる分析のために、機械的サポート輪郭310およびグリッド部材320を含むサンプル担体255に取り付けることができる。
【0058】
本明細書で提案されるように、前記サンプル担体255へのラメラサンプル移送は、前記機械的サポート輪郭310およびそれに接続された前記グリッド部材320を有するサンプル担体255を提供し、前記サンプル担体255を前記グリッドステージに配置することによって起こり得る。本明細書で提案される方法は、一実施形態では、バルクサンプルを提供し、例えば前記FIBによって前記バルクサンプル中にラメラ形状のサンプルを作成するステップをさらに含む。
【0059】
次に、図4に示すように、バルクステージは、バルクサンプルがステージのXY平面に平行に配置されるように配置され得る(XYZ座標については図1を参照)。サンプル担体は、実質的に平面であるグリッド部材がステージのXY平面に実質的に平行に配置されるように配置され得る。次に、ステージは、x軸を中心に、例えば、約10度傾けられ、z軸を中心に、例えば、約10度回転され得る。それにより、機械的サポート輪郭が細長い移送部材をブロックすることなく、ラメラ形状のサンプルは、例えば、移送針などの細長い移送部材によって、ステージの並進運動(すなわち、XY平面での移動)により前記バルクサンプルから前記サンプル担体に移送されることが可能になる。ここで説明する方法により、細長い輸送部材は、前記サンプル担体によって定義される平面との角度を画定し、前記ラメラ形状のサンプルを前記サンプル担体に移送する間、前記角度を実質的に一定に保つことができる。次に、例えば多軸ステージによって提供される純粋な並進運動を使用して、前記ラメラ形状のサンプルを移送できる。
【0060】
図8に示される別の実施形態では、ステージ600は、ZX平面にある回転軸を単に含んでいるに過ぎず、これにより、細長いマニピュレータ270は、前記バルクサンプル担体110および/または前記サンプル担体150によって画定される平面に対する角度で配置できる。これにより、細長いマニピュレータ270は、バルクサンプルからラメラまたはチャンクを拾い上げ、細長いマニピュレータがサンプル担体の機械的サポート輪郭との接触を回避するように、それをサンプル担体150に向かって移動させることができる。図8に示される実施形態では、バルクサンプルホルダー110およびグリッドホルダー150は、互いに固定的に接続されており、これは、2つの間の相対移動が防止されることを意味する。グリッドホルダー150およびバルクサンプルホルダー110は、XY平面に対して45度で提供される。バルクサンプルホルダー110およびグリッドホルダー150は、実質的に同じ平面内にある。図8の実施形態は、バルクサンプル調製およびその後のバルクサンプルから本明細書で定義されるサンプル担体への移送のための、シンプルであるが効果的な構造である。
【0061】
もちろん、本実施形態は、グリッド部材および機械的サポート輪郭を含む限り、バルクサンプル担体215の特定の構成に限定されないことを理解されたい。機械的サポート輪郭は、グリッド部材、特に前記実質的に平面のグリッド部材の円周の周りを実質的に取り囲み、その結果、機械的サポート輪郭は、前記グリッド部材への視線を少なくとも部分的にブロックする。原則として、サンプルを保持し、本明細書に開示されるような調製を可能にするために使用される任意のタイプのサンプル担体は、本実施形態の範囲内にある。同様に、本実施形態は、グリッドプレート310の特定の構成に限定されないことを理解されたい。例えば、サンプルを保持し、本明細書に開示されるようなさらなる処理および/または画像化を可能にするために使用される任意のタイプのプレートは、本実施形態の範囲内である。実施形態は、前述の半月プレートを含むが、他のプレートも同様に想定される。
サンプル調製の例示的な方法
【0062】
図4は、サンプル調製システム100の1つの実装内で実行され得る例示的なプロセス500を示すフローチャートを示す。プロセス500はブロック502から始まり、バルクサンプルがバルクステージにロードされる。バルクサンプルがバルクステージにロードされた後、プロセスはブロック504に移動し、そこでリフトアウトグリッドがグリッドステージにロードされる。次に、プロセス500はブロック506に移動し、そこでバルクサンプルがバルクステージの中心に置かれる。例えば、バルクサンプルは、バルク回転軸を中心にバルクサンプルアームを回転させること、および/またはバルクフリップ軸を中心にバルクサンプルアームを反転させて、所望のラメラを作成するためにバルクサンプルを適切に配置することによって配置できる。
【0063】
バルクサンプルが配置されると、プロセス500はブロック508に移動し、そこで保護金属層がバルクサンプル上に局所的に堆積される。他の実施形態では、ブロック508および510の順序は逆にできることを理解されたい。本明細書で説明するように、保護金属層は、例えば、プラチナまたはタングステンなどの任意の材料を含むことができるが、他の材料も同様に想定される。スパッタコーティングは、当技術分野でそれ自体が知られているブロック508の前に使用され得ることに留意されたい。次に、プロセス500は、ブロック510に移動し、ここで、バルクサンプル上の関心領域がユーザによって決定される。関心領域は、例えば、1つまたは複数の分離した特徴、および/または堆積された保護金属層内の基準マーカーなどの1つまたは複数の参照特徴を含むことができる。あるいは、関心領域は、あらかじめサンプルを光学顕微鏡に置き、レーザーマーカーを使用して関心領域を示すことによってマークできる。
【0064】
関心領域が特定されると、プロセス500はブロック512に移動し、そこでラメラがカットされる。本明細書で説明するように、ラメラは、関心位置の特徴を最適化するように配置され得る。いくつかの実施形態では、厚いラメラがカットされる。一実施形態では、ラメラは、バルクサンプルから所望のラメラをカットすることを目的とした集束イオンビームを使用してカットされる。理解できるように、所望の領域は、上記のように、バルクステージによって提供される複数の自由度を使用することによって適切にカットされる。ラメラがカットされると、作業者によってラメラがバルクステージからグリッドステージに移される。
【0065】
この目的で、図5の設定を使用し得る。ここで、バルクサンプル215がバルクステージ210上に提供され、サンプル担体255がサンプルステージ150に接続されていることが分かる。針の形をした細長いマニピュレータ270が示され、ラメラ形状のサンプルをバルクサンプルからサンプル担体に移すために使用できる。図5に示すように、サンプル担体255は、機械的サポート輪郭310を有し、これにより、サンプル担体255は、グリッドステージ150に接続される。サンプル担体255はまた、前記機械的サポート輪郭310に接続され、前記ラメラ形状のサンプルを受け入れるように配置された、半月形グリッドなどのグリッド部材320を有する。図5に示す実施形態では、サンプル担体255は、サンプル担体255によって画定される平面が、バルクステージ210に接続されるバルクサンプル215によって画定される平面に対して実質的に垂直に配置されるように、グリッドステージ150に接続される。言い換えれば、バルクサンプル215が主にXY平面に配置されている場合、サンプル担体255は、主に、例えば、ZX平面に平行に、前記XY平面に垂直に配置されている。図5に示すように、細長いマニピュレータは、サンプル担体255の機械的サポート輪郭310と衝突することなくグリッド部材330に近づくことができるように、前記サンプル担体によって定義される平面に対する角度で配置される。この設定により、バルクサンプルからサンプル担体へのラメラ形状のサンプルの迅速かつ容易な移送が可能になり、マニピュレータ針に対する多軸ステージ100の純粋な並進運動を使用して移送を行うことができる。これは、図4のブロック514に戻ることによって、より詳細に説明される。
【0066】
一例として、ブロック514で、細長いマニピュレータがバルクサンプルに挿入され、ブロック516で、マニピュレータが、バルクサンプルからカットされたラメラに取り付けられる。マニピュレータは、例えば、ラメラに取り付けるように構成された針または他のデバイスであり得る。例えば、マニピュレータを一時的にラメラに取り付け得、バルクステージと隣接するグリッドステージとの間の移送を可能にすることができる。次に、マニピュレータは、ブロック518でラメラを抽出する。そして、マニピュレータは、ブロック520でバルクサンプルから格納される。
【0067】
次に、プロセス500は、ブロック522に移動し、ここで、サンプル担体を備えたグリッドステージは、多軸ステージの並進運動によって中心に置かれ得る。これでマニピュレータがサンプル担体に近づき、ラメラをサンプル担体のグリッド部材に取り付けることができる。プロセス500は、ブロック528に移動し、マニピュレータがラメラから取り外される。例えば、FIBを使用して、ラメラからマニピュレータの針をカットできる。次に、マニピュレータをブロック530で格納できる。
【0068】
本明細書で説明するように、いくつかの実施形態では、ラメラは、厚いラメラから薄くして、薄いラメラにすることができる。例えば、プロセス500は、ブロック532に移動し、そこで、集束イオンビームによって、厚いラメラを薄くして薄いラメラになる。
【0069】
ラメラがグリッドステージ上のサンプル担体に移され、所望の厚さに薄くされた後、プロセス500は、ラメラが小型二重ビームデバイス(SDB)で検査されるかどうかを決定するために決定ブロック540に移動する。SDBデバイス内に留まらないという決定がなされた場合、多軸ステージ100は、ブロック560でアンロードされ、例えば、ブロック565でTEMシステムに移送され得る。ただし、SDBデバイスに残る決定された場合は、サンプルを直接STEM画像化できる。例えば、サンプルは、ブロック555でアンロードされる前に、ブロック550でSTEM断層撮影を受けることができる。別の例では、サンプルは、ブロック555でアンロードされる前に、ブロック545でSTEM画像化を受けることができる。
【0070】
本発明の実施形態はまた、当業者に明らかであるように、例えば、ステップ502および504が交換される、またはブロック510および508などの方法の変形をカバーすることに留意されたい。
多軸ステージの温度制御
【0071】
いくつかの実施形態では、システムは、多軸ステージ100の温度を制御するように構成された熱制御システムをさらに含むことができる。図6に示すように、熱制御システム600は、多軸ステージ100を加熱または冷却するために使用され得るが、それでも、ステージ100が画像化システム内で円形に移動可能にする。熱制御システム600は、一連のコネクタ604を介してプラットフォーム602を介して取り付けられるベース601を含む。スタンドオフ603のシステムを使用して、プラットフォーム602を画像化システム内の所望のレベルに引き上げ得る。スタンドオフは、一連のピン608を介してプラットフォーム602に取り付けられている。
【0072】
図示のように、ベース601は、金属リング612の中心に嵌合する円筒形スリーブ610内に適合する。スリーブ610の上面614に嵌合するのは、熱伝達媒体を移動させるように構成された熱伝達パイプ616を含む熱伝達本体620である。一実施形態では、熱伝達媒体は、乾燥または液体窒素で冷却され、熱伝達プレート620の温度は、流量計(図示せず)で乾燥窒素の流量を制御するか、または熱抵抗器などの補助熱源を追加することによって制御できる。従って、熱伝達パイプ616を通って循環する熱伝達媒体のタイプおよび量を制御することによって(および/または追加の熱源を制御することによって)、ユーザは、熱伝達プレート620の結果として生じる温度を制御できる。
【0073】
熱伝達プレート620の上部にあり、これと熱接触しているのは、複数のスロット635を有するベアリングリング630である。ベアリングリング630のスロット635のそれぞれは、熱伝導性ローラー640を保持するように構成される。ローラー640の上部には、トッププレート650がある。トッププレート650は、多軸ステージ100と共に取り付けられ、多軸ステージ100に熱加熱または冷却機能を提供するように設計された、取り付けブラケット660およびセンタリングピン665を含む。トッププレート650は、ベース601を介して駆動されるその軸の周りを回転できる。
【0074】
想像できるように、多軸ステージが取り付けブラケット660に取り付けられるとき、ステージは、ローラーベアリング(例えば、ボールベアリングまたはニードルベアリング)の上で360度回転し、パイプ616を流れる熱伝達媒体との熱接続を維持できる。この実施形態では、すべての部品が高い熱伝導率で設計され得る。例えば、ローラーベアリングは、導電率が46W/mKの鋼で作ることができる。冷却ステージ部品は、無酸素銅、または熱伝導率の高い他の材料、例えば金で作ることができる。いくつかの実施形態では、シャトル受信機の温度が、-120℃、-130℃、-140℃、-150℃、-160℃、-170℃、-180℃以下に低下する可能性がある。いくつかの実施形態では、デバイスは、加熱された液体またはガスをパイプ616にポンプ輸送することによって冷却されるのではなく、システムが加熱されるように熱を伝達するために使用できる。
【0075】
ステージは、必要な機械的サポートおよび自由度を提供する1つのローラーベアリングを装備でき、一方、ステージは、ステージを、例えば、液体窒素によって冷却される定置型の冷却体と熱的に接続する第2のローラーベアリングをさらに示すことに留意されたい。
【0076】
図7aおよび7bは、上記のように熱制御システム600に接続されたステージ100の異なる図を示す。ステージ100は、図1を参照して説明したように、多軸ステージであり得る。示される実施形態では、ステージ100は、バルクステージ110およびグリッドステージ150を含む。ステージ100は、ステージ100がトッププレート650上に提供され、取り付けブラケット660およびセンタリングピン665に接続されるという点で、熱制御システム600に接続される(図7bを参照)。
【0077】
図示のように、針270は、ラメラ形状のサンプルをサンプル担体255に配置するために使用でき、前記サンプル担体は、例えば一体的に接続されるなど、機械的サポート輪郭に接続されるグリッド部材を有する。サンプル担体は平面を画定し、前記バルクサンプル担体に実質的に垂直に配置される。バルクサンプル担体215は、トッププレート650の表面に実質的に平行に配置される。図7aおよび7bに示される実施形態では、針270は、バルクサンプル担体215に対する角度(すなわち、xy平面に対する角度)、ならびにサンプル担体255に対する角度(つまり、zx平面に対する角度)で配置される。これにより、例えば、ステージ100の単なる並進運動によって、バルクサンプル担体215からサンプル担体255へのラメラ形状のサンプルの迅速かつ容易な移送が可能になる。
氷の凍結状態の検出
【0078】
別の実施形態は、サンプル中のガラス質の氷の状態の決定に関する。これは通常、凍結サンプルの薄いセクションの関心領域で通常取得されるTEM電子回折像に依存する。ガラス質の氷の状態は、生体細胞膜や分散粒子などの自然の構造形態を保存するのに役立つ。対照的に、結晶氷はそれらの構造や分布を破壊する。リングパターンは氷がアモルファス(ガラス質)であることを示しているが、スポットパターンは六方晶または立方晶の結晶構造の存在を示す。非常に多くの場合、ガラス質である結果、回折リングが鋭すぎるか鈍すぎるため、またはそれが製造されたのがW、LaB6もしくはFEGのいずれのTEM電子銃であるか、議論が尽くされていない可能性がある。
【0079】
TEMセクションを作成するとき、周囲の氷がその時点で結晶性であるかガラス質であるかを知りたいと思う。これは、ユーザが、そのサンプルで続行するのが有用か、新しいサンプルで開始するのが有用かの判断に役立つ。
【0080】
1つの代替の実施形態は、温度をガラス転移温度である136K(-137℃)未満に保つことが重要であるサンプルのための電界放出銃SEMまたはSEMで使用できる方法である。この実施形態では、氷サンプルは、所望の厚さにFIBミリングされ、その結果、水平面に対して回転および傾斜されたときに、所望の電圧の電子ビームを使用して下から分析検出器によって観察できる。氷のサンプルを水平面から正または負の角度に傾けることで、分析検出器は異なる透過された配向のコントラストを観察できる。この異なる配向のコントラストは、結晶形が存在する場合、薄いサンプル内の異なる配向の結晶の格子に由来する。サンプルがガラス質であるために結晶形が存在しない場合、サンプルを傾けてもコントラストは一定に保たれる。
【0081】
これにより、サンプルが結晶氷を形成したかどうかを検出できる。これは、ガラス質の状態がランダムな原子構造の状態であり、配向のコントラストが表示されないためである。これは、六角形の氷の汚染が結果を損なう可能性がある低温TEMシステムにさらに移送することなくFEG SEMですぐに作成された場合、サンプルの氷の状態を決定する非常に直接的で信頼性の高い方法である。サブナノメートルの解像度を解決するためのSEMおよび二重ビーム機器の改善により、直接解像度の画像化または角度断層撮影のためにTEMに移送する必要がほとんどない場合が多くある。従って、この方法は、SEMまたは二重ビーム機器内の分割された氷の状態を確認するのに便利である。
等価物
【0082】
上述の明細書は、当業者が本実施形態を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。上述の説明および実施例は特定の好ましい実施形態を詳述し、本発明者らによって企図される最良の様式を説明する。しかしながら、上述の内容がいかに詳述されていても、本実施形態は多くの方法で実施され得、本実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物に従って解釈されるべきであることが理解されよう。
【0083】
方法とサンプル担体は、多くの場合、ラメラ形状のサンプルを使用して説明される。しかしながら、原則として、本明細書に記載の実施形態は、チャンク形状のサンプル、または他の形状のサンプルにも適用可能である。より一般的には、本明細書に記載の本発明は、より大きなバルクサンプルから発する任意のサンプルに適用可能である。
【0084】
グリッド部材は、一実施形態では、半月形グリッドを含むが、他のグリッド形状およびグリッドタイプも可能であり、本発明は、半月形グリッドの使用に限定されないことに留意されたい。他の形状には、リング状、環状、または実質的に閉じた輪郭形状のグリッドも含んでよい。
【0085】
「備える」という用語は、本明細書では、列挙された要素だけでなく、任意の追加の要素をさらに包含する、オープンエンドであることを意図している。
【0086】
所望の保護は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
【外国語明細書】