(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159133
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221006BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20221006BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/22
C11D7/32
H01L21/304 622Q
H01L21/304 622C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053972
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021059480
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉野 努
(72)【発明者】
【氏名】井澤 由裕
(72)【発明者】
【氏名】石田 康登
【テーマコード(参考)】
4H003
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
4H003AB27
4H003DA09
4H003DA12
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB06
4H003EB28
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5F157DB51
(57)【要約】
【課題】研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去しうる手段を提供する。
【解決手段】研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減するために用いられる表面処理組成物であって、溶媒と、水溶性高分子と、を含有し、水晶振動子マイクロバランス電極への前記水溶性高分子の吸着量が、前記水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下である、表面処理組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減するために用いられる表面処理組成物であって、
溶媒と、水溶性高分子と、を含有し、
水晶振動子マイクロバランス電極への前記水溶性高分子の吸着量が、前記水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下である、表面処理組成物。
【請求項2】
前記水溶性高分子は、ノニオン性水溶性高分子である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子の溶解度パラメータが11以上15以下である、請求項1または2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記水溶性高分子は、ポリN-ビニルアセトアミドである、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
pHが2.0以上3.5未満であるかまたは7.0以上12.0以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
砥粒を実質的に含有しない、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
前記研磨済研磨対象物は、水との接触角が50°未満である親水性材料と、水との接触角が50°以上である疎水性材料と、を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
前記親水性材料が酸化ケイ素であり、前記疎水性材料が多結晶シリコンである、請求項7に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
前記水晶振動子マイクロバランス電極が、SiO2電極およびAu電極であり、
前記SiO2電極への前記水溶性高分子の吸着量が、前記SiO2電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下であり、
前記Au電極への前記水溶性高分子の吸着量が、前記Au電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理して、研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する、表面処理方法。
【請求項11】
前記表面処理は、リンス研磨処理または洗浄処理によって行われる、請求項10に記載の表面処理方法。
【請求項12】
前記研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、
請求項10または11に記載の表面処理方法によって、前記研磨済半導体基板の表面における残渣を低減することを含む、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、物理的に半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカ、アルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、酸化珪素、窒化珪素や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
CMP工程後の半導体基板表面には、不純物(異物または残渣とも称する)が多量に残留している。不純物には、CMPで使用された研磨用組成物由来の砥粒、金属、防食剤、界面活性剤等の有機物、研磨対象物であるシリコン含有材料、金属配線やプラグ等を研磨することによって生じたシリコン含有材料や金属、さらには各種パッド等から生じるパッド屑等の有機物などが含まれる。
【0004】
半導体基板表面がこれらの不純物により汚染されると、半導体の電気特性に悪影響を与え、デバイスの信頼性が低下する可能性がある。したがって、CMP工程後に洗浄工程を導入し、半導体基板表面からこれらの不純物を除去することが望ましい。
【0005】
かような洗浄用組成物として、例えば、特許文献1には、ポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸と、スルホン酸型アニオン性界面活性剤と、カルボン酸型アニオン性界面活性剤と、水とを含有する、半導体基板用の洗浄用組成物が開示されており、これによって、基板表面を腐食することなく、異物を除去しうることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、研磨済研磨対象物の洗浄において、異物(残渣)を十分に除去できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、水晶振動子マイクロバランス電極に対して、水溶性高分子が特定量の範囲で吸着しうる表面処理組成物により上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減するために用いられる表面処理組成物であって、溶媒と、水溶性高分子と、を含有し、水晶振動子マイクロバランス電極への前記水溶性高分子の吸着量が、前記水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下である、表面処理組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去しうる手段が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減するために用いられる表面処理組成物であって、溶媒と、水溶性高分子とを含有し、水晶振動子マイクロバランス電極への前記水溶性高分子の吸着量が、前記水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下である、表面処理組成物である。かような本発明の表面処理組成物によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去することができる。
【0013】
本発明者らは、かような構成によって、研磨済研磨対象物の表面における残渣が除去されうるメカニズムを以下のように推測している。
【0014】
すなわち、表面処理組成物に含まれる水溶性高分子の水晶振動子マイクロバランス電極への吸着量が、水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下であることは、研磨済研磨対象物の表面に適度な量で水溶性高分子が吸着することを意味する。これにより、研磨済研磨対象物表面への残渣(汚染物質)の再付着を防止することができる。さらに、当該水溶性高分子の吸着量が上記範囲であれば、水溶性高分子自体が残渣となることがほとんど無いかまたは無く、研磨済研磨対象物表面からの水溶性高分子の脱離も容易になり、残渣を十分に除去することができると考えられる。
【0015】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0017】
<残渣>
本明細書において、残渣とは、研磨済研磨対象物の表面に付着した異物を表す。残渣の例は、特に制限されないが、例えば、後述する有機物残渣、研磨用組成物に含まれる砥粒由来のパーティクル残渣、パーティクル残渣および有機物残渣以外の成分からなる残渣、パーティクル残渣および有機物残渣の混合物等のその他の残渣等が挙げられる。
【0018】
総残渣数とは、種類によらず、全ての残渣の総数を表す。総残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置を用いて測定することができる。残渣数の測定方法の詳細は、後述の実施例に記載する。
【0019】
本明細書において、有機物残渣とは、研磨済研磨対象物(表面処理対象物)表面に付着した異物のうち、有機低分子化合物や高分子化合物等の有機物や有機塩等からなる成分を表す。
【0020】
研磨済研磨対象物に付着する有機物残渣は、例えば、後述の研磨工程もしくはリンス研磨工程において使用したパットから発生するパッド屑、または研磨工程において用いられる研磨用組成物もしくはリンス研磨工程において用いられる表面処理組成物に含まれる添加剤に由来する成分等が挙げられる。
【0021】
なお、有機物残渣とその他の異物とは色および形状が大きく異なることから、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、SEM観察によって目視にて行うことができる。また、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、必要に応じて、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析にて判断してもよい。有機物残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置、およびSEMまたはEDX元素分析を用いて測定することができる。
【0022】
<研磨済研磨対象物>
本明細書において、研磨済研磨対象物とは、研磨工程において研磨された後の研磨対象物を意味する。研磨工程としては、特に制限されないが、CMP工程であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る研磨対象物に含まれる材料としては特に制限されず、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素(SiCN)、多結晶シリコン(ポリシリコン)、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)、金属、SiGe等が挙げられる。
【0024】
酸化ケイ素を含む膜の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)タイプ酸化ケイ素膜(以下、単に「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation)膜等が挙げられる。研磨対象物に含まれる材料は、1種単独でも、または2種以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
研磨済研磨対象物は、研磨済半導体基板であることが好ましく、CMP工程後の半導体基板であることがより好ましい。かかる理由は、残渣は半導体デバイスの破壊の原因となりうるため、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板である場合は、半導体基板の洗浄工程としては、残渣をできる限り除去しうるものであることが必要とされるからである。
【0026】
また、本発明の一形態に係る表面処理組成物は、親水性材料と、疎水性材料とを、共に含む研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減することに好適に用いられる。ここで、親水性材料とは、水との接触角が50°未満である材料をいい、疎水性材料とは、水との接触角が50°以上である材料をいう。なお、当該水との接触角は、協和界面科学株式会社製の接触角計DropMaster(DMo-501)により測定された値である。
【0027】
親水性材料の具体的な例としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化シリコン、タングステン、窒化チタン、窒化タンタル、ホウ素含有シリコン等が挙げられる。これら親水性材料は1種単独でも、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、疎水性材料の具体的な例としては、例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、非晶質シリコン、炭素含有シリコン等が挙げられる。これら疎水性材料は1種単独でも、または2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が酸化ケイ素であり、上記疎水性材料が多結晶シリコンである。
【0028】
<表面処理組成物>
本発明に係る表面処理組成物は、水溶性高分子を含む。ここでいう水溶性高分子とは、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する水溶性の高分子をいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が1000以上の化合物であり得る。水溶性高分子として用いられるポリマーの種類は、特に制限はなく、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のいずれも使用可能である。また、水溶性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0029】
アニオン性水溶性高分子の例としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が挙げられる。
【0030】
カチオン性水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等を用いることができる。
【0031】
ノニオン性水溶性高分子の例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリアミン類、ポリビニルエーテル類(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなど)、ポリアルキレンオキサイド類(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなど)、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性の多糖類、アルギン酸多価アルコールエステル、水溶性尿素樹脂、デキストリン誘導体、カゼイン等が挙げられる。また、このような主鎖構造を有するもののみならず、ノニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。
【0032】
両性水溶性高分子の例としては、例えば、アニオン性基を有するビニル単量体とカチオン性基を有するビニル単量体との共重合体、カルボキシベタイン基またはスルホベタイン基を有するビニル系の両性高分子等が挙げられ、具体的には、アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体、アクリル酸/ジエチルアミノエチルメタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0033】
さらには、上記で例示した水溶性高分子の共重合体も用いることができる。
【0034】
水溶性高分子は、1種単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。また、水溶性高分子は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0035】
これら水溶性高分子の中でも、水素結合により水分子を保持すること、疎水性相互作用によって基板により吸着しやすいこと等の観点から、ノニオン性水溶性高分子が好ましい。さらに、ノニオン性水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリN-ビニルアセトアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールがより好ましく、ポリN-ビニルアセトアミドがさらに好ましい。
【0036】
該水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)の下限は、1,000以上であることが好ましく、1,500以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。また、該水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)の上限は、1,500,000以下であることが好ましく、1,300,000以下であることがより好ましく、1,000,000以下であることがさらに好ましい。なお、水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリエチレングリコール換算の値として測定することができる。
【0037】
<水溶性高分子の溶解度パラメータ>
該水溶性高分子の溶解度パラメータ(SP値)は、10を超えて19未満であることが好ましく、11以上15以下がより好ましい。当該SP値が10を超えれば、溶媒として主に用いられる水への溶解性が高まり、水溶性高分子が研磨済研磨対象物の表面に残渣として残りにくくなる。水溶性高分子のSP値が高くなるにつれ、水晶振動子マイクロバランス電極への水溶性高分子の吸着量は低下する傾向にある。また、当該SP値が19未満であれば、溶媒として主に用いられる水への溶解性が低くなる傾向にあり、水溶性高分子が研磨済研磨対象物の表面に吸着しやすくなり、研磨済研磨対象物表面への残渣の再付着防止の効果がより高まる。水溶性高分子のSP値が低くなるにつれ、水晶振動子マイクロバランス電極への水溶性高分子の吸着量は増加する傾向にある。
【0038】
なお、本明細書における水溶性高分子のSP値は、Fedors法(文献:R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14[2]147(1974))により算出される値である。
【0039】
表面処理組成物中の水溶性高分子の含有量は、使用する水溶性高分子の種類に応じて適宜設定されるが、含有量の下限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、表面処理組成物中の水溶性高分子の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。
【0040】
なお、表面処理組成物が2種以上の水溶性高分子を含む場合、水溶性高分子の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0041】
<水溶性高分子の吸着量>
本発明に係る表面処理組成物は、表面処理組成物に含まれる水溶性高分子の水晶振動子マイクロバランス電極への吸着量が、水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下である。水晶振動子マイクロバランス電極への水溶性高分子の吸着量は、研磨済研磨対象物表面への水溶性高分子の吸着量の良好な指標になり、水晶振動子マイクロバランス電極への吸着量が上記範囲であれば、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去することができる。
【0042】
水晶振動子は、ナノグラムのオーダーの質量を測定することができる感度を有する。水晶振動子は、水晶の結晶をごく薄い板状に切り出した切片の両側表面を金属電極で挟んだ構造を有し、両側の金属電極に交流電場を印加すると水晶の逆電圧降下により一定の周波数(共振周波数)で振動する。そして、金属電極上に微量の物質が吸着すると、その吸着量に比例して共振周波数が減少する。この現象を利用することで、水晶振動子を微量天秤として利用することができる。
【0043】
水晶振動子の周波数の変化量と金属電極上の吸着物質の質量は、下記のSauerbreyの式(式a)に従って算出される。
【0044】
【0045】
上記式a中、ΔFは周波数変化量を、Δmは質量変化量を、F0は基本周波数を、ρQは水晶の密度を、μQは水晶のせん断応力を、Aは電極面積を、それぞれ表す。この測定方法は、水晶振動子マイクロバランス(Quartz Crystal Microbalance:QCM)法とも称される。
【0046】
水晶振動子マイクロバランス電極の種類は様々あるが、本発明においては、研磨済研磨対象物に含まれる親水性材料への水溶性高分子の吸着量の指標として、SiO2(酸化ケイ素)電極を用いて水溶性高分子の吸着量を測定することが好ましい。また、研磨済研磨対象物に含まれる疎水性材料への水溶性高分子の吸着量の指標として、Au(金)電極を用いて水溶性高分子の吸着量を測定することが好ましい。かような電極を選択することにより、水晶振動子マイクロバランス電極への吸着量は、親水性材料および疎水性材料を含む研磨済研磨対象物表面への水溶性高分子の吸着量のさらに良好な指標となり得る。
【0047】
上記したように、本発明においては、水晶振動子マイクロバランス電極への水溶性高分子の吸着量が、水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たり100ng/cm2以上600ng/cm2以下である。該吸着量が100ng/cm2未満の場合、研磨済研磨対象物表面への水溶性高分子の吸着量が少なくなり、研磨済研磨対象物表面への残渣の再付着防止の効果が低下する。一方、該吸着量が600ng/cm2を超えると、研磨済研磨対象物表面への水溶性高分子の吸着量が多くなり、水溶性高分子自体が残渣として研磨済研磨対象物の表面に残りやすくなる。
【0048】
本発明に係る表面処理組成物は、SiO2電極およびAu電極の両方に対して、上記のような水溶性高分子の吸着量を示す。すなわち、本発明に係る表面処理組成物は、親水性材料および疎水性材料の両方に対して、残渣の除去に好適な水溶性高分子の吸着量を示すものである。
【0049】
水晶振動子マイクロバランス電極がSiO2電極である場合、水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たりの水溶性高分子の吸着量の下限は、150ng/cm2以上であることが好ましく、200ng/cm2以上であることがより好ましい。また、水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たりの水溶性高分子の吸着量の上限は、500ng/cm2以下であることが好ましく、450ng/cm2以下であることがより好ましい。
【0050】
水晶振動子マイクロバランス電極がAu電極である場合、水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たりの水溶性高分子の吸着量の下限は、150ng/cm2以上であることが好ましく、200ng/cm2以上であることがより好ましい。また、水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たりの水溶性高分子の吸着量の上限は、500ng/cm2以下であることが好ましく、400ng/cm2以下であることがより好ましい。
【0051】
水晶振動子マイクロバランス電極の単位面積当たりの水溶性高分子の吸着量は、水溶性高分子の種類、表面処理組成物中の水溶性高分子の含有量、水溶性高分子のSP値、表面処理組成物のpH等を適宜選択することにより設定することができる。例えば、水溶性高分子のSP値を低くすると、当該吸着量は多くなる傾向にある。例えば、表面処理組成物中の水溶性高分子の含有量を多くすると、当該吸着量は多くなる傾向にある。
【0052】
なお、水溶性高分子の吸着量の詳細な測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0053】
<界面活性剤>
本発明に係る表面処理組成物は、本発明の効果をより向上させるという観点から、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤の種類は、特に制限はなく、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、および両性の界面活性剤のいずれであってもよい。
【0054】
ノニオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型等が挙げられる。その他、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、モノエタノールアミン、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、3級アセチレングリコール、アルカノールアミド等も、ノニオン性界面活性剤として用いることができる。
【0055】
アニオン性界面活性剤の例としては、例えば、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルスルホン酸ナトリウム等の硫酸エステル型;ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル型;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型等が挙げられる。
【0056】
カチオン性界面活性剤の例としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩等のアミン類;ポリエトキシアミン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;ラウリルビリジニウムクロライド等のピリジウム塩等が挙げられる。
【0057】
両性界面活性剤の例としては、例えば、レシチン、アルキルアミンオキシド、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のアルキルベタインやスルホベタイン等が挙げられる。
【0058】
界面活性剤は、1種単独でも、または2種以上を組み合わせても用いることができる。また、界面活性剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0059】
表面処理組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量の下限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、表面処理組成物中の水溶性高分子の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0060】
なお、表面処理組成物が2種以上の界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0061】
<溶媒>
本発明に係る表面処理組成物は、溶媒を含む。溶媒は、各成分を分散または溶解させる機能を有する。溶媒は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。また、溶媒は、各成分の分散または溶解のために、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。この場合、用いられる有機溶媒としては、例えば、水と混和する有機溶媒であるアセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、これらの有機溶媒を水と混合せずに用いて、各成分を分散または溶解した後に、水と混合してもよい。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0062】
水は、研磨済研磨対象物の汚染や他の成分の作用を阻害することを防ぐという観点から、残渣をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる残渣イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0063】
<他の添加剤>
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、他の添加剤を任意の割合で含有していてもよい。ただし、本発明の一形態に係る表面処理組成物の必須成分以外の成分は、異物(残渣)の原因となりうるためできる限り添加しないことが望ましいため、その添加量はできる限り少ないことが好ましい。他の添加剤としては、例えば、防腐剤、溶存ガス、還元剤、酸化剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0064】
異物除去効果のさらなる向上のため、本発明の表面処理組成物は、砥粒を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「砥粒を実質的に含有しない」とは、表面処理組成物全体に対する砥粒の含有量が0.01質量%以下である場合をいう。より好ましくは、本発明の表面処理組成物は、砥粒を含有しない(表面処理組成物全体に対する砥粒の含有量が0質量%である)。
【0065】
<表面処理組成物のpH>
本発明に係る表面処理組成物のpHは、特に制限されないが、2.0以上12.0以下であることが好ましい。
【0066】
さらに、表面処理組成物のpHは、2.0以上3.5未満であるかまたは7.0以上12.0以下であることがより好ましく、2.0以上3.5未満であるかまたは7.0を超え9.0以下であることがさらに好ましい。このpHの範囲は、酸化ケイ素を含む研磨対象物に対して、砥粒として酸化セリウムを含む研磨用組成物を用いてCMP工程を行った後に表面処理を行う場合に、特に好適である。
【0067】
表面処理組成物のpHが3.5以上7.0以下の場合、三価の酸化セリウムの割合が増え、研磨済研磨対象物に含まれる酸化ケイ素表面上に酸化セリウムが結合しやすい状態となる。すなわち、表面処理組成物のpHが3.5以上7.0以下の場合、研磨済研磨対象物表面の残渣が増加する傾向となるため、表面処理組成物のpHが、2.0以上3.5未満であるかまたは7.0を超え9.0以下である実施形態がさらに好ましい実施形態となる。
【0068】
表面処理組成物のpH値は、pH調整剤により調整することができる。
【0069】
pH調整剤は、特に制限されず、表面処理組成物の分野で用いられる公知のpH調整剤を用いることができ、公知の酸、塩基、またはこれらの塩等を用いることができる。pH調整剤の例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、アントラニル酸等のカルボン酸や、スルホン酸、有機ホスホン酸等の有機酸;硝酸、炭酸、塩酸、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸などの無機酸;水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属の水酸化物;第2族元素の水酸化物;アンモニア(水酸化アンモニウム);水酸化第四級アンモニウム化合物等の有機塩基等が挙げられる。
【0070】
pH調整剤は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。また、これらpH調整剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0071】
表面処理組成物中のpH調整剤の含有量は、所望の表面処理組成物のpH値となるような量を適宜選択すればよい。
【0072】
なお、表面処理組成物のpHは、実施例に記載の方法により測定した値を採用する。
【0073】
<表面処理組成物の製造方法>
本発明の表面処理組成物の製造方法は、例えば、水と、水溶性高分子と、必要に応じて他の成分とを、攪拌混合することにより得ることができる。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0074】
<表面処理方法>
本発明の他の一形態は、上記表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理することを含む、表面処理方法である。本明細書において、表面処理方法とは、研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する方法をいい、広義の洗浄を行う方法である。
【0075】
本発明の一形態に係る表面処理方法によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去することができる。すなわち、本発明の他の一形態によれば、上記表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理する、研磨済研磨対象物の表面における残渣低減方法が提供される。
【0076】
本発明の一形態に係る表面処理方法は、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させる方法により行われる。
【0077】
表面処理方法としては、主として、(I)リンス研磨処理による方法、(II)洗浄処理による方法が挙げられる。すなわち、本発明の一形態によれば、上記表面処理は、リンス研磨処理または洗浄処理によって行われることが好ましい。リンス研磨処理および洗浄処理は、研磨済研磨対象物の表面上の異物(パーティクル、金属汚染、有機物残渣、パッド屑など)を除去し、清浄な表面を得るために実施される。以下、上記(I)および(II)について説明する。
【0078】
(I)リンス研磨処理
本発明に係る表面処理組成物は、リンス研磨処理において好適に用いられる。すなわち、本発明の一形態に係る表面処理組成物は、リンス研磨用組成物として好ましく用いることができる。リンス研磨処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、研磨対象物の表面上の異物の除去を目的として、研磨パッドが取り付けられた研磨定盤(プラテン)上で行われる。このとき、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させることにより、リンス研磨処理が行われる。その結果、研磨済研磨対象物表面の異物は、研磨パッドによる摩擦力(物理的作用)および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。異物のなかでも、特にパーティクルや有機物残渣は、物理的な作用により除去されやすい。したがって、リンス研磨処理では、研磨定盤(プラテン)上で研磨パッドとの摩擦を利用することで、パーティクルや有機物残渣を効果的に除去することができる。
【0079】
すなわち、本明細書において、リンス研磨処理、リンス研磨方法およびリンス研磨工程とは、それぞれ、研磨パッドを用いて表面処理対象物の表面における残渣を低減する処理、方法および工程をいう。
【0080】
具体的には、リンス研磨処理は、研磨工程後の研磨済研磨対象物表面を研磨装置の研磨定盤(プラテン)に設置し、研磨パッドと研磨済半導体基板とを接触させてその接触部分に表面処理組成物を供給しながら、研磨済研磨対象物と研磨パッドとを相対摺動させることにより行うことができる。
【0081】
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0082】
リンス研磨処理は、片面研磨装置、両面研磨装置のいずれを用いても行うことができる。また、上記研磨装置は、研磨用組成物の吐出ノズルに加え、表面処理組成物の吐出ノズルを備えていることが好ましい。研磨装置のリンス研磨処理時の稼働条件は特に制限されず、当業者であれば適宜設定可能である。
【0083】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、表面処理組成物が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0084】
リンス研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転数、ヘッド(キャリア)回転数は、10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが好ましく、研磨済研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下であることが好ましい。研磨パッドに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。リンス研磨時間も特に制限されないが、5秒以上180秒以下であることが好ましい。
【0085】
本発明の一形態に係る表面処理組成物によるリンス研磨処理の後、研磨済研磨対象物(表面処理対象物)は、本発明の一形態に係る表面処理組成物をかけながら引き上げられ、取り出されることが好ましい。
【0086】
(II)洗浄処理
本発明に係る表面処理組成物は、洗浄処理において用いられてもよい。すなわち、本発明の一形態に係る表面処理組成物は、洗浄用組成物として好ましく用いることができる。洗浄処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、上記リンス研磨処理を行った後、または本発明の表面処理組成物以外のリンス研磨用組成物を用いた他のリンス研磨処理を行った後、研磨済研磨対象物(洗浄対象物)の表面上の異物の除去を目的として行われることが好ましい。なお、洗浄処理と、上記リンス研磨処理とは、これらの処理を行う場所によって分類され、洗浄処理は、洗浄処理は、研磨定盤(プラテン)上ではない場所で行われる表面処理であり、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した後に行われる表面処理であることが好ましい。洗浄処理においても、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させて、当該対象物の表面上の異物を除去することができる。
【0087】
洗浄処理を行う方法の一例として、(i)研磨済研磨対象物を保持した状態で、洗浄ブラシを研磨済研磨対象物の片面または両面と接触させて、その接触部分に表面処理組成物を供給しながら洗浄対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法、(ii)研磨済研磨対象物を表面処理組成物中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。かかる方法において、研磨済研磨対象物表面の異物は、洗浄ブラシによる摩擦力または超音波処理や攪拌によって発生する機械的力、および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。
【0088】
上記(i)の方法において、表面処理組成物の研磨済研磨対象物への接触方法としては、特に限定されないが、ノズルから研磨済研磨対象物上に表面処理組成物を流しながら研磨済研磨対象物を高速回転させるスピン式、研磨済研磨対象物に表面処理組成物を噴霧して洗浄するスプレー式などが挙げられる。
【0089】
短時間でより効率的な汚染除去ができる点からは、洗浄処理は、スピン式やスプレー式を採用することが好ましく、スピン式であることがさらに好ましい。
【0090】
このような洗浄処理を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の研磨済研磨対象物を同時に表面処理するバッチ式洗浄装置、1枚の研磨済研磨対象物をホルダーに装着して表面処理する枚葉式洗浄装置などがある。洗浄時間の短縮等の観点からは、枚葉式洗浄装置を用いる方法が好ましい。
【0091】
さらに、洗浄処理を行うための装置として、研磨定盤(プラテン)から研磨済研磨対象物を取り外した後、当該対象物を洗浄ブラシで擦る洗浄用設備を備えている研磨装置が挙げられる。このような研磨装置を用いることにより、研磨済研磨対象物の洗浄処理を、より効率よく行うことができる。
【0092】
かような研磨装置としては、研磨済研磨対象物を保持するホルダー、回転数を変更可能なモーター、洗浄ブラシ等を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。なお、CMP工程の後、リンス研磨工程を行う場合、当該洗浄処理は、リンス研磨工程にて用いた研磨装置と同様の装置を用いて行うことが、より効率的であり好ましい。
【0093】
洗浄ブラシは、特に制限されないが、好ましくは、樹脂製ブラシである。樹脂製ブラシの材質は、特に制限されないが、PVA(ポリビニルアルコール)が好ましい。洗浄ブラシは、PVA製スポンジであることがより好ましい。
【0094】
洗浄条件にも特に制限はなく、研磨済研磨対象物(洗浄対象物)の種類、ならびに除去対象とする残渣の種類および量に応じて、適宜設定することができる。例えば、洗浄ブラシの回転数は10rpm(0.17s-1)以上200rpm(3.33s-1)以下であることが、洗浄対象物の回転数は10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが、それぞれ好ましい。研磨パッドに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、洗浄ブラシおよび洗浄対象物の表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。洗浄時間も特に制限されないが、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いる工程については5秒以上180秒以下であることが好ましい。このような範囲であれば、異物をより効果的に除去することが可能である。
【0095】
洗浄の際の表面処理組成物の温度は、特に制限されず、通常は室温でよいが、性能を損なわない範囲で、40℃以上70℃以下程度に加温してもよい。
【0096】
上記(ii)の方法において、浸漬による洗浄方法の条件については、特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
【0097】
上記(I)または(II)の方法による表面処理を行う前に水による洗浄を行ってもよい。
【0098】
(後洗浄処理)
また、表面処理方法としては、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いた前記(I)または(II)の表面処理の後、研磨済研磨対象物をさらに洗浄処理することが好ましい。本明細書では、この洗浄処理を後洗浄処理と称する。後洗浄処理としては、特に制限されないが、例えば、単に表面処理対象物に水を掛け流す方法、単に表面処理対象物を水に浸漬する方法等が挙げられる。また、上記説明した(II)の方法による表面処理と同様に、表面処理対象物を保持した状態で、洗浄ブラシと表面処理対象物の片面または両面とを接触させて、その接触部分に水を供給しながら表面処理対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法、表面処理対象物を水中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。これらの中でも、表面処理対象物を保持した状態で、洗浄ブラシと、表面処理対象物の片面または両面と、を接触させてその接触部分に水を供給しながら表面処理対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法であることが好ましい。なお、後洗浄処理の装置および条件としては、前述の(II)の表面処理の説明を参照することができる。ここで、後洗浄処理に用いる水としては、特に脱イオン水を用いることが好ましい。
【0099】
本発明の一形態に係る表面処理組成物で表面処理を行うことによって、残渣が極めて除去されやすい状態となる。このため、本発明の一形態の表面処理に係る表面処理組成物で表面処理を行った後、水を用いてさらなる洗浄処理を行うことで、残渣が極めて良好に除去されることとなる。
【0100】
また、表面処理後または後洗浄後の研磨済研磨対象物(表面処理対象物)は、スピンドライヤー等により表面に付着した水滴を払い落として乾燥させることが好ましい。また、エアブロー乾燥により、表面処理対象物の表面を乾燥させてもよい。
【0101】
<半導体基板の製造方法>
本発明の一形態に係る表面処理方法は、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板である場合に、好適に適用される。すなわち、本発明の他の一形態によれば、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、当該研磨済半導体基板を、上記表面処理方法によって研磨済半導体基板の表面における残渣を低減することを含む、半導体基板の製造方法もまた提供される。
【0102】
かかる製造方法が適用される半導体基板の詳細については、上記表面処理組成物によって表面処理される研磨済研磨対象物の説明の通りである。
【0103】
また、半導体基板の製造方法は、研磨済半導体基板の表面を、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いて表面処理する工程(表面処理工程)を含むものであれば、特に制限されない。かかる製造方法として、例えば、研磨済半導体基板を形成するための研磨工程および洗浄工程を有する方法が挙げられる。また、他の一例としては、研磨工程および洗浄工程に加え、研磨工程および洗浄工程の間に、リンス研磨工程を有する方法が挙げられる。以下、これらの各工程について説明する。
【0104】
[研磨工程]
半導体基板の製造方法に含まれうる研磨工程は、半導体基板を研磨して、研磨済半導体基板を形成する工程である。
【0105】
研磨工程は、半導体基板を研磨する工程であれば特に制限されないが、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)工程であることが好ましい。また、研磨工程は、単一の工程からなる研磨工程であっても複数の工程からなる研磨工程であってもよい。複数の工程からなる研磨工程としては、例えば、予備研磨工程(粗研磨工程)の後に仕上げ研磨工程を行う工程や、1次研磨工程の後に1回または2回以上の2次研磨工程を行い、その後に仕上げ研磨工程を行う工程等が挙げられる。本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理工程は、上記仕上げ研磨工程後に行われると好ましい。
【0106】
研磨用組成物としては、半導体基板の特性に応じて、公知の研磨用組成物を適宜使用することができる。研磨用組成物としては、特に制限されないが、例えば、砥粒、分散媒、および酸を含むもの等を好ましく用いることができる。かかる研磨用組成物の具体例としては、酸化セリウム、マレイン酸、ポリアクリル酸、および水を含む研磨用組成物等が挙げられる。
【0107】
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。
【0108】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0109】
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転数、ヘッド(キャリア)回転数は、10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが好ましく、研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下であることが好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨用組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。研磨時間も特に制限されないが、研磨用組成物を用いる工程については5秒以上180秒以下であることが好ましい。
【0110】
[表面処理工程]
表面処理工程とは、本発明に係る表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する工程をいう。半導体基板の製造方法において、リンス研磨工程の後、表面処理工程としての洗浄工程が行われてもよいし、リンス研磨工程のみ、または洗浄工程のみが行われてもよい。
【0111】
(リンス研磨工程)
リンス研磨工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程および洗浄工程の間に設けられてもよい。リンス研磨工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(リンス研磨処理方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0112】
リンス研磨工程で用いられるリンス研磨方法の詳細は、上記リンス研磨処理に係る説明に記載の通りである。
【0113】
(洗浄工程)
洗浄工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程の後に設けられてもよいし、リンス研磨工程の後に設けられてもよい。洗浄工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(洗浄方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0114】
洗浄工程で用いられる洗浄方法の詳細は、上記洗浄方法に係る説明に記載の通りである。
【実施例0115】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件下で行った。
【0116】
[水溶性高分子および界面活性剤の準備]
下記の水溶性高分子および界面活性剤を準備した。なお、水溶性高分子のSP値は、Fedors法(文献:R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14[2]147(1974))により算出した:
ポリN-ビニルアセトアミド(PNVA)、Mw=50,000:昭和電工株式会社製、品番:PNVA GE101-107、SP値13.9
ポリN-ビニルアセトアミド、Mw=300,000:昭和電工株式会社製、品番:PNVA GE191-104、SP値12.6
ポリN-ビニルアセトアミド、Mw=900,000:昭和電工株式会社製、品番:PNVA GE191-107、SP値11.0
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、Mw=1,200,000:住友精化株式会社製、品番:HEC、SP値14.8
ポリビニルアルコール(PVA)、Mw=10,000:日本酢ビ・ポバール株式会社製、品番:JMR-10HH、SP値17.3
ポリグリセリンアルキルエーテル(PGLE)、Mw=2,000:株式会社ダイセル製、品番:セルモリス(登録商標)B044、SP値19.0
ポリメタクリル酸メチル(PMMA):SP値9.1
ポリウレタン(PU):SP値10.0
アクリル酸/スルホン酸共重合体、Mw=12,000、SP値15.3
ラウリル硫酸アンモニウム、Mw=283.4:花王株式会社製、品番:エマール(登録商標)AD-25R、SP値9.6。
【0117】
上記の水溶性高分子の重量平均分子量は、下記の方法により測定した。
【0118】
[水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)の測定]
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用いた。重量平均分子量は、下記の装置および条件によって測定した:
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:MeOH
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、N2GAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL。
【0119】
[表面処理組成物のpHの測定]
表面処理組成物(液温:25℃)のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))によって確認した。
【0120】
[表面処理組成物の調製]
(実施例1)
水溶性高分子であるポリN-ビニルアセトアミド(Mw=50,000)と、溶媒である水(脱イオン水)と、pH調整剤である硝酸とを、25℃で5分間攪拌混合することにより、表面処理組成物1を調製した。
【0121】
ここで、水溶性高分子の含有量は、表面処理組成物1の総量に対して0.075質量%とし、pH調整剤の含有量は、表面処理組成物1のpHが2.0となる量とした。
【0122】
(実施例2~7、比較例1~2)
水溶性高分子の含有量を下記表1に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理組成物2~7、19~20を調製した。
【0123】
(実施例8~13)
pHを下記表1に記載のように変更したこと以外は、実施例7と同様にして、表面処理組成物8~13を調製した。なお、pH調整剤は、実施例13においてはアンモニアを用い、それ以外においては硝酸を用いた。
【0124】
(実施例14~15)
水溶性高分子を下記表1に記載のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、表面処理組成物14~15を調製した。
【0125】
(実施例16)
水溶性高分子であるヒドロキシエチルセルロース(Mw=1,200,000)と、溶媒である水(脱イオン水)と、pH調整剤であるアンモニアとを混合することにより、表面処理組成物16を調製した。
【0126】
ここで、水溶性高分子の含有量は、表面処理組成物16の総量に対して0.016質量%とし、pH調整剤の含有量は、表面処理組成物16のpHが8.5となる量とした。
【0127】
(実施例17)
水溶性高分子であるポリビニルアルコール(Mw=10,000)と、溶媒である水(脱イオン水)と、pH調整剤である硝酸とを混合することにより、表面処理組成物17を調製した。
【0128】
ここで、水溶性高分子の含有量は、表面処理組成物17の総量に対して0.1質量%とし、pH調整剤の含有量は、表面処理組成物17のpHが3.0となる量とした。
【0129】
(実施例18)
pH調整剤であるアンモニアを用いてpHを9.0としたこと以外は、実施例17と同様にして、表面処理組成物18を調製した。
【0130】
(比較例3~5)
水溶性高分子の種類および濃度を下記表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理組成物21~23を調製した。
【0131】
(比較例6)
水溶性高分子であるアクリル酸/スルホン酸共重合体(Mw=12,000)と、溶媒である水(脱イオン水)と、pH調整剤である硝酸とを混合することにより、表面処理組成物24を調製した。
【0132】
ここで、水溶性高分子の含有量は、表面処理組成物24の総量に対して、0.01質量%とし、pH調整剤の含有量は、表面処理組成物24のpHが2.0となる量とした。
【0133】
(比較例7)
界面活性剤であるラウリル硫酸アンモニウム(Mw=283.4)と、溶媒である水(脱イオン水)と、pH調整剤である硝酸とを混合することにより、表面処理組成物25を調製した。
【0134】
ここで、界面活性剤の含有量は、表面処理組成物25の総量に対して、0.06質量%とし、pH調整剤の含有量は、表面処理組成物25のpHが2.0となる量とした。
【0135】
[水溶性高分子の吸着量]
各表面処理組成物に含まれる水溶性高分子の水晶振動子マイクロバランス電極への吸着量を測定した。
【0136】
より具体的には、測定装置として、QCM-D測定装置 Q-Sense Pro(Biolin Scientic社製)を用いた。180μLの純水を装置にセットし、25℃で安定させた。その後、表面処理組成物を20μL/分の流量で5分間流し、電極の単位面積当たりの水溶性高分子の吸着量(単位:ng/cm2)を測定した。
【0137】
電極は、SiO2電極およびAu電極を使用した。SiO2電極への水溶性高分子の吸着量は、研磨済研磨対象物に含まれる親水性材料への水溶性高分子の吸着量の指標となり、Au電極への水溶性高分子の吸着量は、研磨済研磨対象物に含まれる疎水性材料への水溶性高分子の吸着量の指標となる。
【0138】
[研磨済研磨対象物の準備]
下記の化学的機械的研磨(CMP)工程によって研磨された後の研磨済研磨対象物を準備した。
【0139】
(CMP工程)
研磨対象物として、表面に厚さ10000ÅのTEOS膜を形成したシリコンウェーハ(TEOS基板)(300mm、ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)、および多結晶シリコンウェーハ(300mm、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)を準備した。
【0140】
上記で準備したTEOS基板および多結晶シリコンウェーハについて、研磨用組成物(組成;酸化セリウム(平均一次粒子径30nm、平均二次粒子径60nm)1質量%、マレイン酸0.3質量%、ポリアクリル酸1質量%、溶媒:水)を使用し、下記の条件にて研磨を行った:
<研磨装置および研磨条件>
研磨装置:株式会社荏原製作所製 FREX300E
研磨パッド:富士紡ホールディングス株式会社製 発泡ポリウレタンパッド H800
コンディショナー(ドレッサー):ナイロンブラシ(A165、3M社製)
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同じ)
研磨定盤回転数:80rpm
ヘッド回転数:80rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:200mL/分
研磨時間:30秒間。
【0141】
(リンス研磨)
上記CMP工程にて研磨対象物表面を研磨した後、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した。続いて、同じ研磨装置内で、研磨済研磨対象物を別の研磨定盤(プラテン)上に取り付け、下記の条件にて、上記実施例1~18および比較例1~7で調製した表面処理組成物を用いて、研磨済研磨対象物表面に対してリンス研磨処理を行った:
<リンス研磨装置およびリンス研磨条件>
研磨圧力:1.0psi
定盤回転数:60rpm
ヘッド回転数:60rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
表面処理組成物供給量:300mL/分
研磨時間:60秒間。
【0142】
リンス研磨処理後、脱イオン水を用いて60秒間、基板表面のブラシ洗浄を行い、リンス研磨済の研磨済研磨対象物を得た。
【0143】
[評価]
(残渣数測定)
ケーエルエー・テンコール株式会社製、光学検査機Surfscan(登録商標)SP5を用いて、リンス研磨処理後の研磨済研磨対象物表面上の残渣数を評価した。TEOS基板では直径37μmを超える残渣の数をカウントし、多結晶シリコンウェーハでは直径57μmを超える残渣の数をカウントした。
【0144】
評価結果を下記表1に示す。
【0145】
【0146】
上記表1から明らかなように、実施例の表面処理組成物によれば、比較例の表面処理組成物と比べて、TEOS基板上および多結晶シリコンウェーハ上の残渣を十分に除去できることが分かった。
【0147】
本出願は、2021年3月31日に出願された日本国特許出願番号第2021-059480号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。