(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159435
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】潤滑油用添加剤組成物及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20221006BHJP
C10M 149/02 20060101ALI20221006BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20221006BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20221006BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M149/02
C10N20:04
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:00 A
C10N40:25
C10N40:30
C10N40:00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129588
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2022525380の分割
【原出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021062411
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸生
(57)【要約】
【課題】鉱物油への溶解性及び耐摩耗性に優れ、摩擦調整剤として好適な、高分子系化合物を含む潤滑油用添加剤組成物、及び当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】下記構成単位(a)~(c)を含む共重合体(X)を含有し、
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・構成単位(c):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位
前記構成単位(a)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、43モル%以上であり、
前記共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)が、5,000以上90,000以下である、潤滑油用添加剤組成物とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構成単位(a)~(c)を含む共重合体(X)を含有し、
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・構成単位(c):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位
前記構成単位(a)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、43モル%以上であり、
前記共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)が、5,000以上90,000以下である、潤滑油用添加剤組成物。
【請求項2】
前記構成単位(a)が、下記一般式(a-1)で表されるモノマー(A1)に由来する構成単位(a1)を含む、請求項1に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【化1】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基を示す。R
a2は、炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。]
【請求項3】
前記構成単位(b)が、前記極性基として窒素原子含有基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基からなる群から選択される1種以上の基を有するモノマー(B1)に由来する構成単位(b1)を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項4】
前記構成単位(b)の全構成単位基準で、前記極性基としてポリオキシアルキレン基を有するモノマー(B2)に由来する構成単位(b2)の含有量が5モル%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項5】
前記モノマー(C)が有する重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基又はビニル基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項6】
前記構成単位(c)が、前記環状構造基中の環状構造として、下記(I)~(III)からなる群から選択される1種以上の環状構造を有するモノマー(C1)に由来する構成単位(c1)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
(I)環形成炭素数6以上14以下の芳香環
(II)環形成炭素数3以上14以下の脂環式環
(III)窒素原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む環形成原子数3以上14以下の複素環
【請求項7】
前記モノマー(B)に由来する前記構成単位(b)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、9モル%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項8】
前記モノマー(C)に由来する前記構成単位(c)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、7モル%以上30モル%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項9】
摩擦調整剤として用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物を、摩擦調整剤として使用する、使用方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の潤滑油用添加剤組成物を製造する方法であって、
下記モノマー(A)~(C)を重合させて、共重合体(X)を製造する工程(S)を含む、製造方法。
・モノマー(A):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー
・モノマー(B):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー
・モノマー(C):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油用添加剤組成物及び当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な潤滑油用添加剤の一つとして、摩擦調整剤が挙げられる。摩擦調整剤としては、例えば、リン酸エステル類等のリン系化合物、硫化オレフィン等の硫黄系化合物、チオリン酸エステル類等の硫黄-リン系化合物が汎用されている。
【0003】
しかし、リンや硫黄は、腐食性の高い元素である。そこで、リン元素や硫黄元素を含まない、新たな耐荷重添加剤の創出が求められている。このような新たな摩擦調整剤として、近年、高分子系化合物に関する検討が進められている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されるような、アルキルアクリレート由来の構成単位及びヒドロキシアルキルアクリレート由来の構成単位のみを構成単位として含む高分子系化合物は、耐摩耗性が不十分である。
また、高分子系化合物は、潤滑油基油として一般的に用いられる鉱物油に溶解したときに白濁することがある。白濁が生じている場合、高分子系化合物の溶解性が不十分であるため、高分子系化合物が有する機能を十分に発揮できないことがある。また、低温環境下で析出してしまうこともある。したがって、摩擦調整剤として用いられる高分子系化合物には、鉱物油への溶解性に優れることも求められる。
【0006】
そこで、本発明は、鉱物油への溶解性及び耐摩耗性に優れ、摩擦調整剤として好適な、高分子系化合物を含む潤滑油用添加剤組成物、及び当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、特定のモノマー由来の構成単位を含む共重合体が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[3]に関する。
[1] 下記構成単位(a)~(c)を含む共重合体(X)を含有し、
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・構成単位(c):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位
前記構成単位(a)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、43モル%以上であり、
前記共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)が、5,000以上90,000以下である、潤滑油用添加剤組成物。
[2] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[3] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物を製造する方法であって、
下記モノマー(A)~(C)を重合させて、共重合体(X)を製造する工程(S)を含む、製造方法。
・モノマー(A):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー
・モノマー(B):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー
・モノマー(C):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鉱物油への溶解性及び耐摩耗性に優れ、摩擦調整剤として好適な、高分子系化合物を含む潤滑油用添加剤組成物、及び当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他の類似の用語についても同様の意味である。
【0012】
本明細書において、「環形成炭素数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6である。また、ベンゼン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ベンゼン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているベンゼン環の環形成炭素数は、6である。
【0013】
本明細書において、「環形成原子数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6である。また、ピリジン環に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子の数は、ピリジン環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているピリジン環の環形成原子数は、6である。
【0014】
[潤滑油用添加剤組成物の態様]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、共重合体(X)を含有する。
共重合体(X)は、下記構成単位(a)~(c)を含む。
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・構成単位(c):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位
そして、共重合体(X)は、構成単位(a)の含有量が、共重合体(X)の全構成単位基準で、43モル%以上であり、質量平均分子量(Mw)が、5,000以上90,000以下である。
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位(a)と、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位(b)と、重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位(c)とを含み、構成単位(a)の含有量を上記範囲に調整し、質量平均分子量(Mw)を上記範囲に調整した共重合体(X)が、潤滑油基油への溶解性及び耐摩耗性に優れることを見出した。
共重合体(X)が、潤滑油基油への溶解性及び耐摩耗性に優れる理由は以下のように推察される。
(1)上記構成単位(a)を一定量以上含むことによって適切な油溶性(鉱油への溶解性)が確保される。
(2)上記構成単位(b)を含むことによって多点吸着型の共重合体になる。
(3)上記構成単位(c)を含むことによって環状構造基による分子間相互作用が生じる。その結果、共重合体(X)が相対する二部材の表面に吸着したときに、部材間で適度な斥力が生じ、摩擦低減効果が発揮される。
(4)共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)を一定範囲に調整することで、共重合体(X)が相対する二部材間に入り込みやすくなって、共重合体(X)による摩擦低減効果が十分に発揮される。
【0016】
本実施形態において、共重合体(X)は、モノマー(A)由来の構成単位(a)、モノマー(B)由来の構成単位(b)、及びモノマー(C)由来の構成単位(c)のみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a)、(b)、及び(c)以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
本実施形態において、共重合体(X)における、構成単位(a)、(b)、及び(c)の合計含有量は、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは70モル%~100モル%、より好ましくは80モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%である。
【0017】
以下、モノマー(A)~(C)について、詳細に説明する。
【0018】
<モノマー(A)、構成単位(a)>
本実施形態において使用されるモノマー(A)は、(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有する。
モノマー(A)に由来する構成単位(a)は、共重合体(X)において、主に油溶性(鉱油への溶解性)を発揮させる機能を担う。
なお、モノマー(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(A)に由来する構成単位(a)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
なお、本明細書において、モノマー(A)は、モノマー(B)及びモノマー(C)には含まれない。したがって、モノマー(A)由来の構成単位(a)もまた、モノマー(B)由来の構成単位(b)及びモノマー(C)由来の構成単位(c)には含まれない。
【0019】
(モノマー(A1)、構成単位(a1))
本実施形態では、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モノマー(A)は、下記一般式(a-1)で表されるモノマー(A1)を含むことが好ましい。すなわち、構成単位(a)は、モノマー(A1)由来の構成単位(a1)を含むことが好ましい。
【化1】
【0020】
上記一般式(a-1)中、Ra1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、モノマー(A1)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Ra1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
なお、耐摩耗性をより向上させやすくする観点から、Ra1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、モノマー(A1)が有する重合性官能基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0021】
上記一般式(a-1)中、Ra2は、炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。
当該アルキル基の炭素数が6未満である場合、当該アルキル基の炭素数が24超である場合、いずれも共重合体(X)の油溶性(鉱油への溶解性)を確保し難くなる。
【0022】
Ra2として選択し得る、炭素数6以上24以下の直鎖のアルキル基としては、例えば、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基、n-ドコシル基、及びn-テトラコシル基が挙げられる。
炭素数6以上24以下の分岐のアルキル基としては、例えば、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、及びイソオクタデシル基等が挙げられる。
【0023】
ここで、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の油溶性をより確保しやすくする観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上である。また、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
【0024】
モノマー(A1)に由来する構成単位(a1)は、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、モノマー(A1)は、モノマー(B)及びモノマー(C)には含まれない。したがって、モノマー(A1)由来の構成単位(a1)もまた、モノマー(B)由来の構成単位(b)及びモノマー(C)由来の構成単位(c)には含まれない。
【0025】
(構成単位(a1)の含有量)
本実施形態において、構成単位(a1)の含有量は、構成単位(a)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは60モル%~100モル%、更に好ましくは70モル%~100モル%、より更に好ましくは80モル%~100モル%、更になお好ましくは90モル%~100モル%である。
【0026】
<モノマー(B)、構成単位(b)>
本実施形態において使用されるモノマー(B)は、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有する。
モノマー(B)に由来する構成単位(b)は、共重合体(X)を多点吸着型の共重合体にする機能を担っており、耐摩耗性の向上に資すると推察される。
なお、モノマー(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(B)に由来する構成単位(b)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
なお、本明細書において、モノマー(B)は、モノマー(A)及びモノマー(C)には含まれない。したがって、モノマー(B)由来の構成単位(b)もまた、モノマー(A)由来の構成単位(a)及びモノマー(C)由来の構成単位(c)には含まれない。
【0027】
(モノマー(B1)、構成単位(b1))
本実施形態では、本発明の効果をより発揮させやすくする観点(特に、共重合体(X)の鉱物油への溶解性を向上させやすくする観点)から、モノマー(B)は、極性基として、窒素原子含有基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基からなる群から選択される1種以上の基を有するモノマー(B1)を含むことが好ましい。すなわち、構成単位(b)は、(メタ)アクリロイル基とこれら極性基を有するモノマー(B1)由来の構成単位(b1)を含むことが好ましい。
【0028】
・(メタ)アクリロイル基と窒素原子含有基とを有するモノマー
(メタ)アクリロイル基と窒素原子含有基とを有するモノマーとしては、例えば、アミド基含有アクリル系モノマー、1級アミノ基含有アクリル系モノマー、2級アミノ基含有アクリル系モノマー、3級アミノ基含有アクリル系モノマー、ニトリル基含有アクリル系モノマー、ウレア基含有アクリル系モノマー、ウレタン基含有アクリル系モノマー等が挙げられる。
【0029】
アミド基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN-イソブチル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド;N-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN-イソブチルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ-n-ブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。
【0030】
1級アミノ基含有アクリル系モノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート等の炭素数2~6のアルキル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
2級アミノ基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
3級アミノ基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
ニトリル基含有アクリル系モノマーしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
ウレア基含有アクリル系モノマーとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アククリレート等が挙げられる。
ウレタン基含有アクリル系モノマーとしては、単官能ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0034】
・(メタ)アクリロイル基とヒドロキシル基とを有するモノマー
(メタ)アクリロイル基とヒドロキシル基とを有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル系モノマー等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のモノ-又はジ-ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
・(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有するモノマー
(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有アクリル系モノマー等が挙げられる。
カルボキシル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸カルボキシエチル等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルが挙げられる。
【0036】
・好ましいアクリル系モノマー
上記のアクリル系モノマーの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルから選択される1種以上が好ましい。
なお、これらのモノマーが有するアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。
【0037】
モノマー(B1)に由来する構成単位(b1)は、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、モノマー(B1)は、モノマー(A)及びモノマー(C)には含まれない。したがって、モノマー(B1)由来の構成単位(b1)もまた、モノマー(A)由来の構成単位(a)及びモノマー(C)由来の構成単位(c)には含まれない。
【0038】
(構成単位(b1)の含有量)
本実施形態において、構成単位(b1)の含有量は、構成単位(b)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは60モル%~100モル%、更に好ましくは70モル%~100モル%、より更に好ましくは80モル%~100モル%、更になお好ましくは90モル%~100モル%である。
【0039】
(モノマー(B2)、構成単位(b2))
本実施形態では、共重合体(X)の油溶性(鉱油への溶解性)を向上させる観点から、極性基としてポリオキシアルキレン基を有するモノマー(B2)に由来する構成単位(b2)の含有量は少ないことが好ましい。
具体的には、(メタ)アクリロイル基とポリオキシアルキレン基を有するモノマー(B2)に由来する構成単位(b2)の含有量が、構成単位(b)の全構成単位基準で、好ましくは5モル%未満、より好ましくは1モル%未満、更に好ましくは0.1モル%未満、最も好ましくは構成単位(b2)を含有しないことである。
【0040】
(メタ)アクリロイル基とポリオキシアルキレン基を有するモノマー(B2)としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリラート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、ポリオキシアルキレン基は、アルキレン鎖の炭素数が例えば2以上4以下であり、重合度は2以上(例えば2~50)である。
【0041】
<重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)>
本発明において使用されるモノマー(C)は、重合性官能基と環状構造基とを有する。
モノマー(C)に由来する構成単位(c)は、共重合体(X)において、摩擦低減効果を発揮する機能を担っていると推察される。具体的には、構成単位(c)が有する環状構造基による分子間相互作用によって、共重合体(X)が相対する二部材の表面に吸着したときに、部材間で適度な斥力が生じ、摩擦低減効果が発揮されるものと推察される。
なお、モノマー(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(C)に由来する構成単位(c)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
なお、本明細書において、モノマー(C)は、モノマー(A)及びモノマー(B)には含まれない。したがって、モノマー(C)由来の構成単位(c)もまた、モノマー(A)由来の構成単位(a)及びモノマー(B)由来の構成単位(b)には含まれない。
【0042】
モノマー(C)が有する重合性官能基としては、モノマー(A)及びモノマー(B)と共重合体(X)を形成し得る限り、特に制限されないが、好ましくは、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はビニル基が挙げられる。
なお、耐摩耗性をより向上させやすくする観点から、重合性官能基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることが好ましく、アクリロイル基であることがより好ましい。
【0043】
(モノマー(C1)、構成単位(c1))
本実施形態では、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モノマー(C)は、環状構造基中の環状構造として、下記(I)~(III)からなる群から選択される1種以上の環状構造を有するモノマー(C1)を含むことが好ましい。
(I)環形成炭素数6以上14以下の芳香環
(II)環形成炭素数3以上14以下の脂環式環
(III)窒素原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む環形成原子数3以上14以下の複素環
すなわち、構成単位(c)は、重合性官能基と下記(I)~(III)からなる群から選択される1種以上の環状構造を有するモノマー(C1)由来の構成単位(c1)を含むことが好ましい。
【0044】
・(I)環形成炭素数6以上14以下の芳香環
環形成炭素数6以上14以下の芳香環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。
なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、芳香環の環形成炭素数は、好ましくは6以上10以下である。具体的には、芳香環はベンゼンであることが好ましい。
【0045】
・(II)環形成炭素数3以上14以下の脂環式環
環形成炭素数3以上14以下の脂環式環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン等の単環構造の飽和脂環式環;シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン等の単環構造の不飽和脂環式環;ノルボルナン、アダマンタン等の多環構造の飽和脂環式環;ノルボルネン、アダマンテン等の多環構造の飽和脂環式環等が挙げられる。
なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、脂環式環の環形成炭素数は、好ましくは5以上14以下、より好ましくは5以上10以下である。
また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、脂環式環は、単環構造の飽和脂環式環又は単環構造の不飽和脂環式環であることが好ましく、単環構造の飽和脂環式環であることがより好ましい。
具体的には、脂環式環は、シクロヘキサン又はシクロヘキセンであることが好ましく、シクロヘキサンであることがより好ましい。
【0046】
・(III)窒素原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む環形成原子数3以上14以下の複素環
窒素原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む環形成炭素数3以上14以下の複素環としては、単環構造の複素環としては、アジリジン、オキシラン、ジアジリジン、オキサジリジン、ジオキシラン等の飽和3員環複素環;アジリン、オキシレン、ジアジリン等の不飽和3員環複素環;アゼチジン、オキセタン、ジアゼチジン、ジオキセタン等の飽和4員環複素環;アゼト、オキセト、ジアゼト、ジオキセト等の不飽和4員環複素環、ピロリジン、テトラヒドロフラン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、ジオキソラン等の飽和5員環複素環;ピロール、フラン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、トリアゾール、フラザン、オキサジアゾール、ジオキサゾール、テトラゾール、オキサテトラゾール、ペンタゾール等の不飽和5員環複素環;ピペリジン、テトラヒドロピラン、ピペラジン、モルホリン、ジオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリオキサン等の飽和6員環複素環;ピリジン、ピラン、ジアジン、オキサジン、ジオキシン、トリアジン、テトラジン、ペンタジン等の不飽和6員環複素環;アゼパン、オキセパン、ジアゼパン等の飽和7員環複素環;アゼピン、オキセピン、ジアゼピン等の不飽和7員環複素環等が挙げられる。
多環構造の複素環としては、1H-ピロリジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H-キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β-カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノキサジン等が挙げられる。
なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、複素環の環形成原子数は、好ましくは5以上14以下、より好ましくは5以上10以下である。
【0047】
・置換基
上記(I)~(III)の環状構造は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
置換基としては、本発明の効果が奏される範囲であれば、特に制限されないが、例えば、炭素数1~30の有機基が挙げられ、当該有機基は、窒素原子及び酸素原子の少なくともいずれかの原子を有していてもよい。
具体的には、例えば、炭素数1~30(好ましくは1~16、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4)のアルキル基、炭素数1~30(好ましくは1~16、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4)のアルキル基を有するアルコキシ基、アミノ基;シアノ基;ニトロ基;炭素数1~30(好ましくは1~16、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4)のアルキル基を有するアルキルカルボニルオキシ基;ヒドロキシ基;アルキル置換カルボニル基;カルボキシル基からなる群より選ばれる基が挙げられる。
置換基は、更に上述の任意の置換基により置換されていてもよい。
なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、上記(I)~(III)の環状構造は、無置換であることが好ましい。
【0048】
・モノマー(C1)の好ましい態様
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モノマー(C1)は、下記一般式(c-1)で表されるモノマーであることが好ましい。
Y-L-Z (c-1)
上記一般式(c-1)中、Yは重合性官能基を示し、Lは直接結合又はリンカーを示し、Zは上記(I)~(III)の環状構造を有する環状構造基を示す。
【0049】
Yとして選択され得る重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はビニル基が挙げられる。なお、耐摩耗性をより向上させやすくする観点から、重合性官能基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0050】
Lとして選択され得るリンカーとしては、例えばメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、及びn-ブチレン基等の炭素数1~4の二価の脂肪族炭化水素基;フェニルエチレン基及びフェニレン基等の環状構造を有する炭素数6~10の二価基;-O-;オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は好ましくは1~4);ポリオキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は好ましくは1~4)等が挙げられる。
【0051】
Zとして選択され得る環状構造基としては、例えば、上記(I)~(III)のいずれかの環状構造から水素原子を1つ取り除いた1価の環状構造基が挙げられる。なお、耐摩耗性をより向上させやすくする観点から、環状構造基は、上記(I)又は(II)の環状構造から水素原子を1つ取り除いた1価の環状構造基であることが好ましい。
上記(I)の中では、環形成炭素数6以上10以下の芳香環が好ましい。
上記(II)の中では、単環構造の飽和脂環式環又は単環構造の不飽和脂環式環であることが好ましく、単環構造の飽和脂環式環であることがより好ましい。環形成炭素数は6以上10以下であることが好ましい。
【0052】
モノマー(C1)として好ましい化合物を例示すると、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0053】
モノマー(C1)に由来する構成単位(c1)は、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
例えば、モノマー(C1)に由来する構成単位(c1)は、環状構造基が異なる2種以上のモノマーに由来する2種以上の構成単位を含んでいてもよい。具体的には、上記(I)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位と上記(II)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位とを含んでいてもよく、上記(I)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位と上記(III)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位とを含んでいてもよく、上記(II)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位と上記(III)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位とを含んでいてもよく、上記(I)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位と上記(II)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位と上記(III)の環状構造基を有するモノマーに由来する構成単位とを含んでいてもよい。
なお、本明細書において、モノマー(C1)は、モノマー(A)及びモノマー(B)には含まれない。したがって、モノマー(C1)由来の構成単位(c1)もまた、モノマー(A)由来の構成単位(a)及びモノマー(B)由来の構成単位(b)には含まれない。
【0054】
(構成単位(c1)の含有量)
本実施形態において、構成単位(c1)の含有量は、構成単位(c)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは60モル%~100モル%、更に好ましくは70モル%~100モル%、より更に好ましくは80モル%~100モル%、更になお好ましくは90モル%~100モル%である。
【0055】
<構成単位(a)の含有量>
本実施形態において、モノマー(A)に由来する構成単位(a)の含有量は、共重合体(X)の全構成単位基準で、43モル%以上であることを要する。
構成単位(a)の含有量が43モル%未満であると、共重合体(X)の鉱物油への溶解性を十分なものとできないことがある。
なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モノマー(A)に由来する構成単位(a)の含有量は、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%以上、より好ましくは55モル%以上である。
また、モノマー(B)に由来する構成単位(b)とモノマー(C)に由来する構成単位(c)との含有量を確保して、各構成単位の含有量のバランスをとることで、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モノマー(A)に由来する構成単位(a)の含有量は、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは84モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは76モル%以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは50モル%~84モル%、より好ましくは50モル%~80モル%、更に好ましくは55モル%~76モル%である。
【0056】
なお、本明細書において、共重合体(X)における各構成単位の含有割合は、通常、共重合体(X)を構成する各モノマーの比率(仕込み比)に一致する。
【0057】
<構成単位(b)の含有量>
本実施形態において、モノマー(B)に由来する構成単位(b)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは9モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは12モル%以上である。
また、モノマー(A)に由来する構成単位(a)とモノマー(C)に由来する構成単位(c)との含有量を確保して、各構成単位の含有量のバランスをとることで、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モノマー(B)に由来する構成単位(b)の含有量は、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、より更に好ましくは25モル%以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは9モル%~50モル%、より好ましくは10モル%~40モル%、更に好ましくは12モル%~30モル%である。
【0058】
<構成単位(c)の含有量>
本実施形態において、モノマー(C)に由来する構成単位(c)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは7モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは10モル%以上である。
また、モノマー(A)に由来する構成単位(a)とモノマー(B)に由来する構成単位(b)との含有量を確保して、各構成単位の含有量のバランスをとることで、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モノマー(C)に由来する構成単位(c)の含有量は、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは26モル%以下、より更に好ましくは25モル%以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは7モル%~30モル%、より好ましくは8モル%~28モル%、更に好ましくは10モル%~26モル%、より更に好ましくは10モル%~25モル%である。
【0059】
<各構成単位の含有比率>
(構成単位(b)と構成単位(a)との含有比率)
本実施形態の共重合体(X)において、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、構成単位(b)と構成単位(a)との含有比率[(b)/(a)]は、モル比で、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上、より更に好ましくは0.30以上である。また、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.45以下、更に好ましくは0.40以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.15~0.50、より好ましくは0.20~0.45、更に好ましくは0.25~0.40、より更に好ましくは0.30~0.40である。
【0060】
(構成単位(c)と構成単位(a)との含有比率)
本実施形態の共重合体(X)において、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、構成単位(c)と構成単位(a)との含有比率[(c)/(a)]は、モル比で、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.30以上、より更に好ましくは0.40以上である。また、好ましくは0.48以下、より好ましくは0.46以下、更に好ましくは0.45以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.10~0.48、より好ましくは0.20~0.46、更に好ましくは0.30~0.45、より更に好ましくは0.40~0.45である。
【0061】
<他のモノマー>
共重合体(X)は、上記構成単位(a)、(b)、及び(c)以外に、本発明の効果を阻害することのない範囲で、他のモノマー由来の構成単位を含有していてもよい。当該他のモノマーとしては、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有モノマーが挙げられる。当該他の官能基含有モノマーとしては、例えば、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
但し、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、共重合体(X)は、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が、全構成単位基準で、好ましくは30モル%未満、より好ましくは20モル%未満、更に好ましくは10モル%未満、より更に好ましくは1モル%未満、更になお好ましくは0.1モル%未満である。
【0062】
<共重合体(X)の性状及び重合態様>
(質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
本実施形態の共重合体(X)は、質量平均分子量(Mw)が、5,000以上90,000以下であることを要する。
共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)が5.000未満であると、耐摩耗性を向上させ難くなる。
また、共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)が90.000超であると、鉱物油への溶解性が劣ることがある。また、共重合体(X)の二部材間の隙間への侵入が困難となり、耐摩耗性向上効果を発揮させ難くなる。
ここで、本発明の効果をより発揮させやすくする観点及び潤滑油基油への溶解性をより向上させやすくする観点から、好ましくは5,500以上、より好ましくは6,000以上、更に好ましくは7,000以上である。また、好ましくは80,000以下、より好ましくは60,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは5,500~80,000、より好ましくは6,000~60,000、更に好ましくは7,000~50,000である。
【0063】
また、本実施形態の共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、摩擦低減効果をより発揮させやすくする観点から、このましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.8以下である。なお本実施形態の共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.01以上であってもよく、1.3以上であってもよく、1.5以上であってもよい。
質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法にて測定又は算出される値である。
【0064】
(重合態様)
本実施形態の共重合体(X)の重合態様は特に限定されず、ブロック共重合、ランダム共重合、ブロック/ランダム共重合のいずれであってもよい。
【0065】
[潤滑油用添加剤組成物の製造方法]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物の製造方法は、下記モノマー(A)~(C)を重合させて、共重合体(X)を製造する工程(S)を含む。
・モノマー(A):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー
・モノマー(B):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー
・モノマー(C):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー
【0066】
以下、共重合体(X)を製造する工程(S)について、詳細に説明する。
【0067】
<共重合体(X)を製造する工程(S)>
共重合体(X)の製造方法(重合方法)は、特に限定されず、公知の方法のいずれかを適用して製造される。このような方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等が挙げられる。
ここで、本発明における共重合体(X)の用途、すなわち、潤滑油用添加剤組成物としての用途の観点から、共重合体(X)の製造方法(重合方法)としては、潤滑油基油に溶解する溶剤を溶媒として使用する溶液重合法を採用することが好ましい。
【0068】
(溶液重合法)
溶液重合法は、例えば、モノマー(A)、(B)、及び(C)、並びに溶媒及び開始剤を反応器に仕込み、反応器内を窒素置換した後、60℃~100℃で、2時間~10時間、撹拌して反応させることにより行われる。反応器には、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の他のモノマーも任意に仕込まれる。
【0069】
溶液重合法において使用される溶媒としては、特に制限されないが、例えば、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ヒンダードエステル、モノエステル等のエステル類を用いることが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
溶液重合法において使用される開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス-(N,N-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、1,1’-アゾビス(シクロヘキシル-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤;過酸化水素;過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、過安息香酸等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素-Fe2+のレドックス開始剤;その他既存のラジカル開始剤が挙げられる。
溶液重合法において使用される連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン類、チオカルボン酸類、イソプロパノール等の2級アルコール類、ジブチルアミン等のアミン類、次亜燐酸ナトリウム等の次亜燐酸塩類、塩素含有化合物、アルキルベンゼン化合物等が挙げられる。
【0071】
なお、共重合体(X)の分子量は、公知の方法で制御される。例えば、反応温度、反応時間、開始剤の量、各モノマーの仕込み量、溶媒の種類、連鎖移動剤の使用等により、共重合体(X)の分子量を制御することができる。
【0072】
(モノマー(A)の投入量)
本実施形態の製造方法において、モノマー(A)の投入量は、上述した構成単位(a)の含有量に調整しやすくする観点から、投入される全モノマー基準で、好ましくは57質量%以上、65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは87質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは57質量%~90質量%、65質量%~87質量%、更に好ましくは70質量%~85質量%である。
なお、モノマー(A)として好ましい化合物は、上述のとおりである。
【0073】
(モノマー(B)の投入量)
本実施形態の製造方法において、モノマー(B)の投入量は、上述した構成単位(b)の含有量に調整しやすくする観点から、投入される全モノマー基準で、好ましくは5質量%%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。
また、好ましくは38質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは5質量%%~38質量%、より好ましくは6質量%~20質量%、更に好ましくは7質量%~15質量%である。
なお、モノマー(B)として好ましい化合物は、上述のとおりである。
【0074】
(モノマー(C)の投入量)
本実施形態の製造方法において、モノマー(C)の投入量は、上述した構成単位(c)の含有量に調整しやすくする観点から、投入される全モノマー基準で、好ましくは5質量%%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。
また、好ましくは27質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは5質量%%~27質量%、より好ましくは6質量%~23質量%、更に好ましくは7質量%~20質量%である。
なお、モノマー(C)として好ましい化合物は、上述のとおりである。
【0075】
<潤滑油用添加剤組成物中の共重合体(X)の含有量>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油に添加した際に本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、共重合体(X)の含有量が、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上である。また、共重合体(X)の純度を考慮すると、共重合体(X)の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、通常99質量%未満である。
なお、本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、取扱性の観点から、希釈溶剤により希釈されていてもよい。なお、潤滑油用添加剤組成物中の共重合体(X)の含有量は、希釈溶剤を除いた、潤滑油用添加剤組成物中の有効成分の全量基準に対する含有量を意味する。
希釈溶剤としては、上記重合溶媒と同様のものを用いることが好ましい。
【0076】
<潤滑油用添加剤組成物の用途>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油への溶解性に優れ、且つ耐摩耗性に優れる。したがって、摩擦調整剤として有用である。
したがって、本実施形態では、当該潤滑油用添加剤組成物を、摩擦調整剤として使用する使用方法が提供される。
【0077】
[潤滑油組成物]
本実施形態の潤滑油組成物は、共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油とを含有する。
潤滑油用添加剤組成物の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の添加効果を良好に発揮させる観点から、共重合体(X)の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上になるように調整される。また、共重合体(X)の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下になるように調整される。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.2質量%~5質量%、更に好ましくは0.3質量%~3質量%である。
【0078】
<潤滑油基油>
潤滑油基油は、潤滑油組成物に用いられる一般的な基油を、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、鉱油及び合成油からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
潤滑油基油の100℃における動粘度は1mm2/s~50mm2/sの範囲にあることが好ましく、2mm2/s~30mm2/sの範囲にあることがより好ましく、3mm2/s~20mm2/sの範囲にあることが更に好ましい。また、潤滑油基油の粘度指数は80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、100以上であることがより更に好ましい。
潤滑油基油の動粘度及び粘度指数はJIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0079】
潤滑油基油の具体例を以下に挙げる。
鉱油としては、例えば、パラフィン基原油、中間基原油、又はナフテン基原油を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油;等が挙げられる。精製油を得るための精製方法としては、例えば、溶剤脱ろう処理、水素化異性化処理、水素化仕上げ処理、白土処理等が挙げられる。
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。また、合成油としては、天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス,Gas To Liquids WAX)を異性化することで得られるGTL(Gas To Liquids)を用いてもよい。
【0080】
<他の添加剤>
本実施形態の潤滑油組成物は、上記潤滑油用添加剤組成物の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等の他の添加剤を含有してもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態では、共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物とともに、共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物以外の他の添加剤として、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等から選択される1種以上の添加剤を含有する潤滑油組成物用の添加剤パッケージも提供される。
【0081】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、従来の潤滑油組成物に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等を使用することができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン及びモノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、及び4,4’-ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系化合物;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、及びテトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系化合物;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、ブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、及びノニルフェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系化合物が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等のモノフェノール系化合物;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)及び2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物が挙げられる
酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物の酸化安定性を保つのに必要な最低量を加えれば良い。具体的には、例えば、潤滑油組成物の全量基準で、0.01~1質量%が好ましい。
【0082】
(油性剤)
油性剤としては、脂肪族アルコール;脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の脂肪酸化合物;ポリオールエステル、ソルビタンエステル、及びグリセライド等のエステル化合物;脂肪族アミン等のアミン化合物等を挙げることができる。
油性剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%である。
【0083】
(清浄分散剤)
清浄分散剤としては、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フェネート、及びコハク酸イミド等が挙げられる。
清浄分散剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。
【0084】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン水素化共重合体等)等が挙げられる。
粘度指数向上剤の含有量は、好ましくは、潤滑油組成物の全量基準で、0.3~5質量%である。
【0085】
(防錆剤)
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステル、並びにアルキルアミン及びモノイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン等を挙げることができる。
防錆剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.03~3質量%である。
【0086】
(金属不活性剤)
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール及びチアジアゾール等を挙げることができる。
金属不活性剤の好ましい含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.01~1質量%である。
【0087】
(消泡剤)
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、及びポリアクリレート等を挙げることができる。
消泡剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.0005~0.01質量%である。
【0088】
<グリース組成物>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、グリース組成物に配合して用いることもできる。
すなわち、本実施形態では、上記潤滑油用添加剤組成物と、増ちょう剤と、潤滑油基油とを含有するグリース組成物を提供することもできる。
【0089】
<潤滑油組成物の物性等>
(動粘度、粘度指数)
本実施形態の潤滑油組成物の100℃動粘度は、好ましくは1.0mm2/s~50mm2/s、より好ましくは2.0mm2/s~30mm2/s、更に好ましくは3.0mm2/s~20mm2/sである。
本実施形態の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上である。
潤滑油組成物の動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0090】
(耐摩耗性)
本実施形態の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載のボールオンディスク試験による摩耗痕径が、好ましくは520μm未満、より好ましくは500μm未満、更に好ましくは480μm以下、より更に好ましくは460μm以下、更になお好ましくは440μm以下である。
【0091】
[潤滑油組成物の用途]
本実施形態の潤滑油組成物は、共重合体(X)を含有するため、耐摩耗性に優れる。
そのため、本実施形態の潤滑油組成物は、例えば、ギア油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャル油等)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油等)、無段変速機油(ベルトCVT油、トロイダルCVT油等)、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、及び電動モーター油等の駆動系油;ガソリンエンジン用、ディーゼルエンジン用、及びガスエンジン用等の内燃機関(エンジン)用油;油圧作動油;タービン油;圧縮機油;流体軸受け油;転がり軸受油;冷凍機油等をはじめ各種の用途に好適に使用でき、これら各用途で使用される装置に充填し、当該装置に係る各部品間を潤滑する潤滑油組成物として好適に使用することができる。
【0092】
[潤滑油組成物を用いる潤滑方法]
本実施形態の潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、好ましくは、前記潤滑油組成物を、前述した各用途で使用される装置に充填し、当該各装置に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
【0093】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様によれば、下記[1]~[12]が提供される。
[1] 下記構成単位(a)~(c)を含む共重合体(X)を含有し、
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・構成単位(c):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位
前記構成単位(a)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、43モル%以上であり、
前記共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)が、5,000以上90,000以下である、潤滑油用添加剤組成物。
[2] 前記構成単位(a)が、下記一般式(a-1)で表されるモノマー(A1)に由来する構成単位(a1)を含む、上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【化2】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基を示す。R
a2は、炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。]
[3] 前記構成単位(b)が、前記極性基として窒素原子含有基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基からなる群から選択される1種以上の基を有するモノマー(B1)に由来する構成単位(b1)を含む、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
[4] 前記構成単位(b)の全構成単位基準で、前記極性基としてポリオキシアルキレン基を有するモノマー(B2)に由来する構成単位(b2)の含有量が5モル%未満である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[5] 前記モノマー(C)が有する重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基又はビニル基である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[6] 前記構成単位(c)が、前記環状構造基中の環状構造として、下記(I)~(III)からなる群から選択される1種以上の環状構造を有するモノマー(C1)に由来する構成単位(c1)を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
(I)環形成炭素数6以上14以下の芳香環
(II)環形成炭素数3以上14以下の脂環式環
(III)窒素原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む環形成原子数3以上14以下の複素環
[7] 前記モノマー(B)に由来する前記構成単位(b)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、9モル%以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[8] 前記モノマー(C)に由来する前記構成単位(c)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、7モル%以上30モル%以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[9] 摩擦調整剤として用いられる、上記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[10] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物を、摩擦調整剤として使用する、使用方法。
[11] 上記[1]~[9]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[12] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物を製造する方法であって、
下記モノマー(A)~(C)を重合させて、共重合体(X)を製造する工程(S)を含む、製造方法。
・モノマー(A):(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー
・モノマー(B):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー
・モノマー(C):重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー
【実施例0094】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[各種物性値の測定方法]
各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
【0096】
(1)動粘度、粘度指数
基油及び潤滑油組成物の100℃動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した。
【0097】
(2)質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
Waters社製の「1515アイソクラティックHPLCポンプ」、「2414示差屈折率(RI)検出器」に、東ソー社製のカラム「TSKguardcolumn SuperHZ-L」を1本、及び「TSKSuperMultipore HZ-M」を2本、上流側からこの順で取り付け、測定温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン、流速:0.35mL/分、試料濃度1.0mg/mLの条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた。
【0098】
[製造例1~11、比較製造例1~5]
以下に説明する製造例1~11、比較製造例1~5により、各種共重合体を製造した。
【0099】
<使用したモノマー>
(モノマー(A))
・「ドデシルアクリレート」:上記一般式(a-1)中、Ra1が水素原子であり、Ra2がn-ドデシル基(炭素数12の直鎖のアルキル基)である化合物である。
・「ドデシルメタクリレート」:上記一般式(a-1)中、Ra1がメチル基であり、Ra2がn-ドデシル基(炭素数12の直鎖のアルキル基)である化合物である。
・「2-エチルヘキシルアクリレート」:上記一般式(a-1)中、Ra1が水素原子であり、Ra2が2-エチルヘキシル基(炭素数8の分岐のアルキル基)である化合物である。
・「ステアリルアクリレート」:上記一般式(a-1)中、Ra1が水素原子であり、Ra2がステアリル基(炭素数18の直鎖のアルキル基)である化合物である。
【0100】
(モノマー(B))
・「2-ヒドロキシエチルアクリレート」:アクリロイル基と、極性基として水酸基とを有するモノマーである。構造式を以下に示す。
【化3】
・「2-ヒドロキシエチルメタクリレート」:メタクリロイル基と、極性基として水酸基とを有するモノマーである。構造式を以下に示す。
【化4】
・「アクリル酸カルボキシエチル」:アクリロイル基と、極性基としてカルボキシル基とを有するモノマーである。構造式を以下に示す。
【化5】
・「N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(別名:N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド)」:アクリロイル基と、極性基として窒素原子含有基とを有するモノマーである。構造式を以下に示す。
【化6】
【0101】
(モノマー(C))
・「ベンジルアクリレート」:重合性官能基がアクリロイル基であり、環状構造がベンゼンであるモノマーである。詳細には、上記一般式(c-1)中、Yはアクリロイル基であり、Lはオキシメチレン基であり、Zはフェニル基であるモノマーである。
・「ベンジルメタクリレート」:重合性官能基がメタクリロイル基であり、環状構造がベンゼンであるモノマーである。詳細には、上記一般式(c-1)中、Yはメタクリロイル基であり、Lはオキシメチレン基であり、Zはフェニル基であるモノマーである。
・「シクロヘキシルアクリレート」:重合性官能基がアクリロイル基であり、環状構造がシクロヘキサンであるモノマーである。詳細には、上記一般式(c-1)中、Yはアクリロイル基であり、Lは-О-であり、Zはシクロヘキシル基であるモノマーである。
・「フルフリルアクリレート」:重合性官能基がアクリロイル基であり、環状構造がフランであるモノマーである。詳細には、上記一般式(c-1)中、Yはアクリロイル基であり、Lはオキシメチレン基であり、Zはフリル基であるモノマーである。
・「テトラヒドロフルフリルアクリレート」:重合性官能基がアクリロイル基であり、環状構造がテトラヒドロフランであるモノマーである。詳細には、上記一般式(c-1)中、Yはアクリロイル基であり、Lはオキシメチレン基であり、Zはテトラヒドロフリル基であるモノマーである。
【0102】
<製造例1:共重合体(X)-1の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、及び窒素吹き込み管を備えた反応容器内に、モノマー(A)としてドデシルアクリレートを20g(83mmоl)、モノマー(B)として2-ヒドロキシエチルアクリレートを3g(26mmоl)、モノマー(C)としてベンジルアクリレートを5g(31mmоl)、溶媒としてセバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)を28g仕込んだ。
次いで、反応容器内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.1g(0.4mmоl)とドデシルメルカプタンを0.08g(0.4mmоl)添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で6時間反応させた。反応終了後、未反応の単量体を減圧留去することにより、共重合体(X)-1を得た。
【0103】
<製造例2:共重合体(X)-2の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、及び窒素吹き込み管を備えた反応容器内に、モノマー(A)としてドデシルアクリレートを20g(83mmоl)、溶媒としてセバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)を28g仕込んだ。
次いで、反応容器内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.1g(0.4mmоl)とトリチオ炭酸ドデシルシアノメチルを0.13g(0.4mmоl)添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で6時間反応させた。ドデシルアクリレートが96%以上ポリマーに転化したのを確認後、モノマー(C)としてベンジルアクリレートを5g(31mmоl)と2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.05g(0.2mmоl)添加し、75~85℃の温度でさらに6時間反応させた。ベンジルアクリレートが96%以上ポリマーに転化したのを確認後、モノマー(B)として2-ヒドロキシエチルアクリレートを3g(26mmоl)と2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.05g(0.2mmоl)添加し、75~85℃の温度でさらに6時間反応させた。反応終了後、未反応の単量体を減圧留去することにより、共重合体(X)-2を得た。
【0104】
<製造例3:共重合体(X)-3の製造>
モノマー(B)をアクリル酸カルボキシエチルに変更し、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-3を製造した。
【0105】
<製造例4:共重合体(X)-4の製造>
モノマー(B)をN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドに変更し、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-4を製造した。
【0106】
<製造例5:共重合体(X)-5の製造>
モノマー(A)としてドデシルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートを併用し、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-5を製造した。
【0107】
<製造例6:共重合体(X)-6の製造>
モノマー(A)としてドデシルアクリレートとステアリルアクリレートを併用し、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-6を製造した。
【0108】
<製造例7:共重合体(X)-7の製造>
表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-7を製造した。
【0109】
<製造例8:共重合体(X)-8の製造>
モノマー(C)をシクロヘキシルアクリレートに変更し、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-8を製造した。
【0110】
<製造例9:共重合体(X)-9の製造>
モノマー(A)をドデシルメタクリレートに変更し、モノマー(B)を2-ヒドロキシエチルメタクリレートに変更し、モノマー(C)をベンジルメタクリレートに変更し、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-9を製造した。
【0111】
<製造例10:共重合体(X)-10の製造>
モノマー(C)としてベンジルアクリレートとともにフルフリルアクリレートを加え、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-10を製造した。
【0112】
<製造例11:共重合体(X)-11の製造>
モノマー(C)としてベンジルアクリレートとともにテトラヒドロフルフリルアクリレートを加え、表1に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X)-11を製造した。
【0113】
<比較製造例1:共重合体(X’)-1の製造>
モノマー(C)を添加せず、モノマー(B)をN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドに変更し、表2に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)及び(B)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X’)-1を製造した。
【0114】
<比較製造例2:重合体(X’)-2の製造>
モノマー(B)及びモノマー(C)を添加せず、製造例1と同様の方法により、重合体(X’)-2を製造した。
なお、比較製造例2で得られた合成物は厳密には共重合体ではなく重合体であるが、説明の簡略化のため、以降の説明では当該重合体もまとめて共重合体と呼ぶこととする。
【0115】
<比較製造例3:共重合体(X’)-3の製造>
モノマー(B)を添加せず、表2に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)及び(C)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X’)-3を製造した。
【0116】
<比較製造例4:共重合体(X’)-4の製造>
モノマー(C)を添加せず、表2に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)及び(B)の添加量を調整して、製造例1と同様の方法により、共重合体(X’)-4を製造した。
【0117】
<比較製造例5:共重合体(X’)-5の製造>
表2に示す質量比及びモル比となるようにモノマー(A)~(C)の添加量を調整し、製造例1と同様の方法により、共重合体(X’)-5を製造した。
【0118】
[実施例1~11、比較例1~5]
潤滑油基油と、製造例1~11及び比較製造例1~5にて製造した各共重合体とを、十分に混合し、実施例1~11、比較例1~5の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
【0119】
潤滑油基油は、鉱物油(100℃動粘度:5.3mm2/s、粘度指数:104、API分類:グループII)とした。
潤滑油組成物中の潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、99質量%とした。
【0120】
製造例1~11及び比較製造例1~5にて製造した各共重合体は、重合溶媒(以下、「溶剤」ともいう)であるセバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)に溶解した状態で潤滑油基油に配合した。共重合体とセバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)との混合比率は、1:1(質量比)とした。
潤滑油組成物中の共重合体(溶剤込み)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、1質量%とした。したがって、潤滑油組成物中の共重合体の含有量(溶剤を含まない共重合体の含有量)は、潤滑油組成物の全量基準で、0.5質量%である。
【0121】
[評価方法]
以下に説明する試験を実施し、鉱物油への溶解性及び耐摩耗性について評価を行った。
【0122】
<潤滑油基油(鉱油)への溶解性の評価>
上記鉱物油(100℃動粘度:5.3mm2/s、粘度指数:104、API分類:グループII)に、製造例1~11及び比較製造例1~5にて製造した各共重合体(溶剤を含まない共重合体)を1質量%添加した。次いで、鉱物油を80℃に加熱し、30分間撹拌してから、室温(25℃)になるまで静置した。そして、室温になったときの油の状態を目視で評価した。評価基準は以下のとおりとした。
・評価「A」:透明である。
・評価「B」:沈殿や白濁がみられる。
【0123】
<耐摩耗性の評価(ボールオンディスク試験)>
高速往復動摩擦試験機TE77(Phoenix Tribology社製)を用いて、試験プレートと試験球との間に潤滑油組成物を導入し、下記の条件にて、試験球を動かして試験を行い、試験後の試験球の摩耗痕径を測定した。
・試験プレート 材質:SUJ2、形状:長さ58mm×幅38mm×厚さ3.9mm
・試験球 材質:SUJ2、直径10mm
・給油条件:油浴、油量3mL
・荷重:50N(5分間)→100N(5分間)→150N(5分間)→200N(5分間)
・温度:100℃
・振幅:10mm
・振動数:10Hz
当該摩耗痕径の値が小さい程、耐摩耗性に優れた潤滑油組成物であるといえる。
本実施例では、摩耗痕径が520μm未満である潤滑油組成物を合格と判断した。
【0124】
結果を表1及び表2に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
表1より、以下のことがわかる。
実施例1~11に示す結果から、(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位(a)と、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位(b)と、重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位(c)とを含み、構成単位(a)の含有量が、共重合体(X)の全構成単位基準で、43モル%以上であり、質量平均分子量(Mw)が、5,000以上90,000以下である共重合体は、潤滑油基油(鉱油)への溶解性に優れるとともに、潤滑油組成物に十分な耐摩耗性を付与できることがわかる。
【0128】
表2より、以下のことがわかる。
比較例2に示す結果から、(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位(a)を含み、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位(b)と、重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位(c)とを含まない共重合体は、潤滑油基油への溶解性には優れるものの、潤滑油組成物に十分な耐摩耗性を付与できないことがわかる。
比較例1及び4に示す結果から、(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位(a)と、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位(b)とを含み、重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位(c)を含まない共重合体も、潤滑油基油への溶解性には優れるものの、潤滑油組成物に十分な耐摩耗性を付与できないことがわかる。
比較例3に示す結果から、(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位(a)と、重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位(c)とを含み、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位(b)を含まない共重合体も、潤滑油基油への溶解性には優れるものの、潤滑油組成物に十分な耐摩耗性を付与できないことがわかる。
比較例5に示す結果から、(メタ)アクリロイル基と炭素数6以上24以下の直鎖又は分岐のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位(a)と、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位(b)と、重合性官能基と環状構造基とを有するモノマー(C)に由来する構成単位(c)とを含む共重合体であっても、構成単位(a)の含有量が、共重合体の全構成単位基準で、43モル%未満であると、潤滑油基油への溶解性が劣ることがわかる。