(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159577
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】フラノン誘導体およびその製造法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/81 20060101AFI20221011BHJP
C07D 409/14 20060101ALI20221011BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20221011BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C07D307/81 CSP
C07D409/14
C07D405/14
C07F7/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063843
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】山縣 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青柳 圭哉
(72)【発明者】
【氏名】浅野 祥生
(72)【発明者】
【氏名】岩永 宏平
(72)【発明者】
【氏名】金子 岳史
(72)【発明者】
【氏名】平高 遥
【テーマコード(参考)】
4C037
4C063
4H049
【Fターム(参考)】
4C037PA06
4C063AA05
4C063BB01
4C063CC06
4C063CC94
4C063DD75
4H049VN01
4H049VP02
4H049VR24
4H049VU24
4H049VW02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】赤色光用光電変換材料として適した吸収特性を示す、すなわち600nm近傍において極大吸収を示す新規なフラノン誘導体と、該フラノン誘導体の製造法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるフラノン誘導体及びその製造方法。
{式中、Arは縮合複素環基、又はピロール-2-イル基を表す。}
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるフラノン誘導体。
【化1】
{式中、Arは一般式(2)
【化2】
(式中、R
1は炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表す。当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。R
2、R
3、R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数3~18の複素芳香族基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数6~14のアリールオキシ基、炭素数3~6のトリアルキルシリル基、炭素数2~5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~14のアリールオキシカルボニル基、炭素数2~14のアシルオキシ基、カルボニル基又はシアノ基を表す。当該アリール基、複素芳香族基及びアリールオキシ基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。Xは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表す。当該窒素原子は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~4のハロアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数3~18の複素芳香族基又は炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基で置換されていてもよく、当該アリール基及び複素芳香族基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。)で表される縮合複素環基、又は
一般式(3)
【化3】
(式中、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R
9は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表し、当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい。)で表されるピロール-2-イル基を表す。}
【請求項2】
R1が、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基であり、当該フェニル基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい、請求項1に記載のフラノン誘導体。
【請求項3】
R2、R3、R4及びR5が、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリールオキシ基又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基である、請求項1又は2に記載のフラノン誘導体。
【請求項4】
Xが、エチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、シクロペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基又はフェニルメチル基で置換されていてもよい窒素原子である、請求項1から3のいずれか1項に記載のフラノン誘導体。
【請求項5】
R6、R7及びR8が、各々独立に、水素原子又はメチル基である、請求項1に記載のフラノン誘導体。
【請求項6】
R9が、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基である、請求項1又は5に記載のフラノン誘導体。
【請求項7】
一般式(4)
【化4】
{式中、Arは一般式(2)
【化5】
(式中、R
1は炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表す。当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。R
2、R
3、R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数3~18の複素芳香族基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数6~14のアリールオキシ基、炭素数3~6のトリアルキルシリル基、炭素数2~5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~14のアリールオキシカルボニル基、炭素数2~14のアシルオキシ基、カルボニル基又はシアノ基を表す。当該アリール基、複素芳香族基及びアリールオキシ基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。Xは酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。当該窒素原子は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~4のハロアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数3~18の複素芳香族基又は炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基で置換されていてもよく、当該アリール基及び複素芳香族基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。)で表される縮合複素環基、又は
一般式(3)
【化6】
(式中、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R
9は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表し、当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい。)で表されるピロール-2-イル基を表す。}で示されるフランジオンと硫化剤とを反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化7】
(式中、Arは、前記と同じ意味を表す。)で示されるフラノン誘導体の製造方法。
【請求項8】
R1が、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基であり、当該フェニル基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい、請求項7に記載のフラノン誘導体の製造方法。
【請求項9】
R2、R3、R4及びR5が、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリールオキシ基又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基である、請求項7又は8に記載のフラノン誘導体の製造方法。
【請求項10】
Xが、エチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、シクロペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基又はフェニルメチル基で置換されていてもよい窒素原子である、請求項7から9のいずれか1項に記載のフラノン誘導体の製造方法。
【請求項11】
R6、R7及びR8が、各々独立に、水素原子又はメチル基である、請求項7に記載のフラノン誘導体の製造方法。
【請求項12】
R9が、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基である、請求項7又は11に記載のフラノン誘導体の製造方法。
【請求項13】
硫化剤が、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(4-フェノキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(フェニルチオ)-2,4-ジチオキソ-1,3,2,4-ジチアジフォスフェタンである、請求項7から12のいずれか1項に記載のフラノン誘導体の製造方法。
【請求項14】
硫化剤が、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィドである、請求項7から13のいずれか1項に記載のフラノン誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラノン誘導体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、光センサーなどの撮像素子や太陽電池などの光発電装置に使用されている。有機光電変換材料を用いる光電変換素子が特許文献1などに開示されている。
【0003】
光電変換素子としては、シリコン半導体を用いた素子が広く用いられており、特に撮像素子としてはシリコンフォトダイオードが主に使用されている。このようなシリコンフォトダイオードは可視光領域全域に感度を有しているため、この上部にRGBがモザイク状に配置されたカラーフィルターを用いて各画素をRGBそれぞれの受光部として振り分けることでカラー撮像を行っている。本方式ではカラーフィルターでの入射光の損失により光の利用効率が低いため、撮像素子の高感度化の障壁となることが懸念される。そこで、RGB各色の有機光電変換層を積層した撮像素子(以下積層型有機撮像素子)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。本方式はカラーフィルターを用いた場合と比べてカラーフィルターによる光の損失がないため、光の利用効率が数倍となるため、カメラなどのデバイスの高画素化に伴う画素の微細化に優位性を持つ高感度のデバイスへの利用が期待されている。
【0004】
積層型有機撮像素子の光電変換層としては、高い光吸収能及びRGB各層の色に適した波長選択性を有することが求められる。特に、表色系の等色関数と同様の吸収特性を示すことが望ましく、例えば赤色の等色関数の極大点の波長は600nmであることから、赤色用光電変換材料としては600nm近傍において極大吸収を示すことが好ましい。特許文献2及び非特許文献2には、R層(赤色用光電変換層)としてホウ素サブナフタロシアニンクロリド(以下、SubNc)を光電変換材料として用いた赤色用光電変換素子について記載されており、単層膜で波長約680nmの極大吸収を示し、光電変換素子の外部量子効率についても光電変換層の膜厚50nmの素子において波長約680nmにて極大値を示すことが報告されているが、赤色用光電変換材料としては、より600nm近傍に極大吸収を示す材料が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4148374号公報
【特許文献2】特開2017-73426号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics,2011年、50巻、024103頁
【非特許文献2】電子情報通信学会論文誌C Vol. J101-C No.9 pp.352-361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、既存材よりも赤色用光電変換材料として適した吸収特性を示す、すなわち600nm近傍において極大吸収を示すフラノン誘導体を提供すること、及び該フラノン誘導体を簡便に合成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、新規なフラノン誘導体が600nm近傍に極大吸収を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、
[1]
一般式(1)で示されるフラノン誘導体。
【0010】
【0011】
{式中、Arは一般式(2)
【0012】
【0013】
(式中、R1は炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表す。当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。R2、R3、R4及びR5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数3~18の複素芳香族基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数6~14のアリールオキシ基、炭素数3~6のトリアルキルシリル基、炭素数2~5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~14のアリールオキシカルボニル基、炭素数2~14のアシルオキシ基、カルボニル基又はシアノ基を表す。当該アリール基、複素芳香族基及びアリールオキシ基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。Xは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表す。当該窒素原子は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~4のハロアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数3~18の複素芳香族基又は炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基で置換されていてもよく、当該アリール基及び複素芳香族基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。)で表される縮合複素環基、又は
一般式(3)
【0014】
【0015】
(式中、R6、R7及びR8は、各々独立に、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R9は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表し、当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい。)で表されるピロール-2-イル基を表す。};
[2]
R1が、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基であり、当該フェニル基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい、前記[1]に記載のフラノン誘導体;
[3]
R2、R3、R4及びR5が、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリールオキシ基又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基である前記[1]又は[2]に記載のフラノン誘導体;
[4]
Xが、エチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、シクロペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基又はフェニルメチル基で置換されていてもよい窒素原子である、前記[1]から[3]のいずれか1項に記載のフラノン誘導体;
[5]
R6、R7及びR8が、各々独立に、水素原子又はメチル基である[1]に記載のフラノン誘導体;
[6]
R9が、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基である、前記[1]又は[5]に記載のフラノン誘導体に関する。
[7]
一般式(4)
【0016】
【0017】
{式中、Arは一般式(2)
【0018】
【0019】
(式中、R1は炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表す。当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。R2、R3、R4及びR5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数3~18の複素芳香族基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数6~14のアリールオキシ基、炭素数3~6のトリアルキルシリル基、炭素数2~5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~14のアリールオキシカルボニル基、炭素数2~14のアシルオキシ基、カルボニル基又はシアノ基を表す。当該アリール基、複素芳香族基及びアリールオキシ基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。Xは酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。当該窒素原子は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~4のハロアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数3~18の複素芳香族基又は炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基で置換されていてもよく、当該アリール基及び複素芳香族基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。)で表される縮合複素環基、又は
一般式(3)
【0020】
【0021】
(式中、R6、R7及びR8は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R9は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表し、当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい)で表されるピロール-2-イル基を表す。}で示されるフランジオンと硫化剤とを反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0022】
【0023】
(式中、Arは、前記と同じ意味を表す。)で示されるフラノン誘導体の製造方法;
[8]
R1が、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基であり、当該フェニル基は、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい、前記[7]に記載のフラノン誘導体の製造方法;
[9]
R2、R3、R4及びR5が、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリールオキシ基、又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基である前記[7]又は[8]に記載のフラノン誘導体の製造方法;
[10]
Xが、エチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、シクロペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基又はフェニルメチル基で置換されていてもよい窒素原子である、前記[7]から[9]のいずれか1項に記載のフラノン誘導体の製造方法;
[11]
R6、R7及びR8が、各々独立に、水素原子又はメチル基である前記[7]に記載のフラノン誘導体の製造方法;
[12]
R9が、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基である、前記[7]又は[11]に記載のフラノン誘導体の製造方法;
[13]
硫化剤が、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(4-フェノキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(フェニルチオ)-2,4-ジチオキソ-1,3,2,4-ジチアジフォスフェタンである、前記[7]から[12]のいずれか1項に記載のフラノン誘導体の製造方法;
[14]
硫化剤が、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィドである、前記[7]から[13]のいずれか1項に記載のフラノン誘導体の製造方法に関する。
【0024】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明のフラノン誘導体(1)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びXの定義について説明する。
【0026】
R1で表される1~8のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、シクロヘキシルメチル基、エチル基、2-シクロペンチルエチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2-ブチル基、3-メチルブタン-2-イル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2-ペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、4,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-ペンチル基、3-エチルペンタン-3-イル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-ヘキシル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、5,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、3-ヘキシル基、2,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、シクロオクチル基又はビシクロ[2.2.2]オクチル基などを例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、メチル基又はエチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0027】
R1で表される炭素数1~8のハロアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状ハロアルキル基のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブチル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキシル基、5,5,6,6,6-ペンプタフルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、2-クロロエチル基又は3-ブロモプロピル基などを例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でトリフルオロメチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基が好ましい。
【0028】
R1で表される炭素数6~14のアリール基としては、特に限定するものではなく、具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、4-ビフェニル基、9-アントリル基、2-フェナントレニル基、3-フェナントレニル基、9-フェナントレニル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフェニル基が好ましい。
【0029】
R1で表される炭素数6~14のアリール基は、炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。当該炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基などを例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でメチル基が好ましい。また当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができる。R1で表される炭素数6~14のアリール基は、フラノン誘導体(1)の合成が容易な点で2,6-ジメチルフェニル基、又は2,4,6-トリメチルフェニル基が好ましい。
【0030】
これらの中でも、R1としては、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基が、特に好ましい。
【0031】
R2、R3、R4及びR5で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフッ素原子が好ましい。
【0032】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数1~8のアルキル基は、R1で例示した炭素数1~8のアルキル基と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、メチル基が好ましい。
【0033】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数1~8のハロアルキル基は、R1で例示した炭素数1~8のハロアルキル基と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でトリフルオロメチル基が好ましい。
【0034】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数6~14のアリール基は、R1で例示した炭素数6~14のアリール基と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフェニル基が好ましい。
【0035】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数6~14のアリール基は、炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。当該炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でメチル基が好ましい。また当該ハロゲン原子としては、R1で例示したハロゲン原子と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフッ素原子が好ましい。
【0036】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数3~18の複素芳香族基としては、特に限定するものではなく、具体的には、2-フラニル基、3-フラニル基、2-チエニル基、3-チエニル基、1-ピロリル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ベンゾフラニル基、3-ベンソフラニル基、2-ベンゾチエニル基、3-ベンソチエニル基、1-インドリル基、2-インドリル基、3-インドリル基、9-カルバゾイル基、ジベンゾフラン-2-イル基、ジベンゾフラン-3-イル基、ジベンゾフラン-4-イル基、ジベンゾチオフェン-2-イル基、ジベンゾチオフェン-3-イル基、ジベンゾチオフェン-4-イル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で2-フラニル基又は2-チエニル基が好ましい。
【0037】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数3~18の複素芳香族基は、炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。当該炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でメチル基が好ましい。また当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフッ素原子が好ましい。
【0038】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数1~6のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキルオキシ基のいずれでも良く、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、2-メチルプロピルオキシ基、2,2-ジメチルプロピルオキシ基、3-シクロプロピルプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、2-メチルブチルオキシ基、3-メチルブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、1-メチルブチルオキシ基、1,2-ジメチルブチルオキシ基、1-エチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でメチルオキシ基が好ましい。
【0039】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数6~14のアリールオキシ基は、特に限定するものではなく、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントレニルオキシ基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフェニルオキシ基が好ましい。
【0040】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数6~14のアリールオキシ基は、炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。当該炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でメチル基が好ましい。また当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフッ素原子が好ましい。
【0041】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数3~6のトリアルキルシリル基は、特に限定するものではなく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でトリメチルシリル基が好ましい。
【0042】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数2~5のアルキルオキシカルボニル基は、特に限定するものではなく、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でイソプロポキシカルボニル基又はtert-ブチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0043】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数7~14のアリールオキシカルボニル基は、特に限定するものではなく、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、ビフェニルオキシカルボニル基等を例示することができる。
【0044】
R2、R3、R4及びR5で表される炭素数2~14のアシルオキシ基は、特に限定するものではなく、アセチルオキシ基等を例示することができる。
【0045】
これらの中でも、R2、R3、R4及びR5としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリールオキシ基又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基が特に好ましい。
【0046】
Xは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表す。当該窒素原子は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~4のハロアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数3~18の複素芳香族基又は炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基で置換されていてもよく、当該アリール基及び複素芳香族基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。
【0047】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数1~8のアルキル基で置換されていてもよい。当該炭素数1~8のアルキル基は、R1で例示した炭素数1~8のアルキル基と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、エチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基又はシクロペンチル基が好ましい。
【0048】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数1~4のハロアルキル基で置換されていてもよい。当該炭素数1~4のハロアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状ハロアルキル基のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、2,2,2-トリフルオロエチル基が好ましい。
【0049】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数2~8のアルケニル基で置換されていてもよい。当該炭素数2~8のアルケニル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルケニル基のいずれでもよく、具体的にはエテニル基、1-プロぺニル基、2-メチル-1-プロぺニル基、アリル基、2-メチル-2-プロぺニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-ペンテニル基、1-シクロペンテニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、1-シクロヘキセニル基、2-ヘプテニル基、1-シクロオクテニル基などを例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でアリル基又は3-メチル-2-ブテニル基が好ましい。
【0050】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数6~14のアリール基で置換されていてもよい。当該炭素数6~14のアリール基は、R1で例示した炭素数6~14のアリール基と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフェニル基が好ましい。
【0051】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数6~14のアリール基で置換されていてもよい。当該炭素数6~14のアリール基は、炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。当該炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でメチル基が好ましい。また当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフッ素原子が好ましい。
【0052】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数6~14のアリール基で置換されていてもよい。当該炭素数6~14のアリール基は、フラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、又は2,4,6-トリメチルフェニル基が好ましい。
【0053】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数7~12のアラルキル基で置換されていてもよい。当該炭素数7~12のアラルキル基は、具体的にはフェニルメチル基、フェニルエチル基などを例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフェニルメチル基が好ましい。
【0054】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数3~18の複素芳香族基で置換されていてもよい。当該炭素数3~18の複素芳香族基は、R2、R3、R4及びR5で例示した炭素数3~18の複素芳香族基と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で2-フラニル基又は2-チエニル基が好ましい。
【0055】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数3~18の複素芳香族基で置換されていてもよい。炭素数3~18の複素芳香族基は、炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。当該炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でメチル基が好ましい。また当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフッ素原子が好ましい。
【0056】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数3~18の複素芳香族基で置換されていてもよい。当該炭素数3~18の複素芳香族基は、フラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、2-メチルフラニル基又は2-メチルチエニル基が好ましい。
【0057】
Xが、窒素原子で表される場合、当該窒素原子は、炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基で置換されていてもよい。当該炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基は、特に限定するものではなく、具体的には、トリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基、ジメチル-tert-ブチルシリルメチル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、トリメチルシリルメチル基が好ましい。
【0058】
これらの中でも、Xとしては、酸素原子、硫黄原子、又はエチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、シクロペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基又はフェニルメチル基で置換されていてもよい窒素原子が特に好ましい。
【0059】
R6、R7及びR8で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等を例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、メチル基が好ましい。
【0060】
R6、R7及びR8としては、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0061】
R9で表される炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2-ブチル基、3-メチルブタン-2-イル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-ペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、3-ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基などを例示することができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、メチル基が好ましい。
【0062】
R9で表される炭素数6~14のアリール基は、R1で例示した炭素数6~14のアリール基と同様のものを挙げることができ、その中でもフラノン誘導体(1)の合成が容易な点で、フェニル基が好ましい。
【0063】
R9で表される炭素数6~14のアリール基は、炭素数6~14のアリール基を表し、当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい。当該炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等を例示することができる。R9で表される炭素数6~14のアリール基は、フラノン誘導体(1)の合成が容易な点でフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、又は2,4,6-トリメチルフェニル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0064】
R9としては、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基が好ましく、特にフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、又は2,4,6-トリメチルフェニル基が好ましい。
【0065】
本発明のフラノン誘導体(1)としては、特に限定するものではなく、例えば、下記の1-1から1-81に示す構造の化合物を具体的に例示することができる。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
なお本明細書中、Meはメチル基を表す。
【0071】
1-1から1-81で示される化合物のうち、本発明のフラノン誘導体(1)としては、合成が容易な点で1-1、1-2、1-6、1-11、1-12、1-14、1-17、1-18、1-27、1-29、1-30、1-32、1-34、1-35、1-36、1-37、1-38、1-39、1-45、1-47、1-51,1-52、1-59、1-60、1-62、1-69、1-70、1-71、1-75、1-77、1-78、1-79、1-80又は1-81で示される化合物が好ましく、特に1-1、1-2、1-6、1-11、1-17、1-18、1-27、1-32、1-35、1-36、1-39、1-45、1-52、1-59、1-60、1-62、1-69又は1-79で示される化合物が好ましい。
【0072】
次に、本発明のフラノン誘導体(1)の製造方法(以下、本発明の製造方法と称する。)について説明する。
【0073】
本発明のフラノン誘導体(1)は、次の反応式に示される工程1により製造することができる。
【0074】
【0075】
{式中、Arは一般式(2)
【0076】
【0077】
(式中、R1は炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表す。当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。R2、R3、R4及びR5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数3~18の複素芳香族基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数6~14のアリールオキシ基、炭素数3~6のトリアルキルシリル基、炭素数2~5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~14のアリールオキシカルボニル基、炭素数2~14のアシルオキシ基、カルボニル基又はシアノ基を表す。当該アリール基、複素芳香族基及びアリールオキシ基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。Xは酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。当該窒素原子は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~4のハロアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数3~18の複素芳香族基又は炭素数4~7のトリアルキルシリルアルキル基で置換されていてもよく、当該アリール基及び複素芳香族基は炭素数1~4のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよい。)で表される縮合複素環基、又は
一般式(3)
【0078】
【0079】
(式中、R6、R7及びR8は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R9は水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表し、当該アリール基は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい。)で表されるピロール-2-イル基を表す。}
工程1はフランジオン誘導体(4)を硫化剤と反応させ、本発明のフラノン誘導体(1)を製造する工程である。
【0080】
工程1に用いるフランジオン誘導体(4)における置換基としては、一般式(1)で示されるフラノン誘導体の置換基と同様のものを挙げることができ、その中でも、R1,R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びXとしては、R1は、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよいフェニル基が好ましく、R2、R3、R4及びR5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリールオキシ基又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基が好ましく、R6、R7及びR8は、水素原子又はメチル基が好ましく、R9は、炭素数1~4のアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基が好ましく、Xは、酸素原子、硫黄原子、又はエチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、シクロペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基又はフェニルメチル基で置換されていてもよい窒素原子が好ましい。
【0081】
工程1に用いるフランジオン誘導体(4)としては、例えば、下記の4-1から4-81に示す構造の化合物を具体的に例示することができる。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
4-1から4-81で示される化合物のうち、合成が容易な点で4-1、4-2、4-6、4-11、4-12、4-14、4-17、4-18、4-27、4-29、4-30、4-32、4-34、4-35、4-36、4-37、4-38、4-39、4-45、4-47、4-51,4-52、4-59、4-60、4-62、4-69、4-70、4-71、4-75、4-77、4-78、4-79、4-80又は4-81で示される化合物が好ましく、特に4-1、4-2、4-6、4-11、4-17、4-18、4-27、4-32、4-35、4-36、4-39、4-45、4-52、4-59、4-60、4-62、4-69又は4-79で示される化合物が好ましい。フランジオン誘導体(4)は、当業者の良く知る汎用的な方法で製造することができ、例えば、Chemical Pharmaceutical Bulletin,1996年,44巻,956-966頁に開示されている方法等に従えば、収率よくフランジオン化合物(4)を得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
【0086】
工程に用いる硫化剤としては、具体的には、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(4-エトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(4-プロピルオキシシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(4-ブトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(4-フェノキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(フェニルチオ)-2,4-ジチオキソ-1,3,2,4-ジチアジフォスフェタン、三硫化リン、五硫化リン、七硫化リン、五硫化ニリンなどを例示することができる。その中でもフラノン誘導体(1)の合成の収率がいい点で、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド、2,4-ビス(4-フェノキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド又は2,4-ビス(フェニルチオ)-2,4-ジチオキソ-1,3,2,4-ジチアジフォスフェタンが好ましく、特に、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィドが好ましい。
【0087】
工程1で用いるフランジオン誘導体(4)と硫化剤とのモル比に特に制限はなく、収率がよい点でフランジオン誘導体(4):硫化剤のモル比が10:1から1:1の範囲にあることが好ましく、反応収率が良い点で3:1から2:1の範囲にあることがさらに好ましい。
【0088】
工程1は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール、テトラリン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテルを例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、本発明のフラノン誘導体(1)の反応収率がよい点でトルエン、キシレンが好ましい。
【0089】
工程1を実施する際の反応温度には特に制限はなく、通常は-80から140℃から適宜選択された温度にて実施することができ、本発明のフラノン誘導体(1)の反応収率が良い点で20℃から80℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましく、40℃から70℃から適宜選択された温度にて実施することがさらに好ましい。
【0090】
本発明のフラノン誘導体(1)は、工程1の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華、又は分取HPLC等で精製してもよい。
【発明の効果】
【0091】
本発明のフラノン誘導体(1)は、赤色光領域に極大吸収を有し、かつ光電変換能を有することから、赤色光用有機光電変換素子に代表される有機電子材料としての適用が期待できる。
【実施例0092】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
[1H-NMR測定]
1H-NMRの測定には、Bruker ASCEND 400(400MHz;BRUKER社製)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した
[薄膜作製及び膜厚測定]
薄膜作製は真空蒸着法により行い、EROLA-500(アルバック機工(株)製)を用いた。基板は、予めイソプロピルアルコールにより洗浄した後、酸素プラズマ洗浄を行ったものを用いた。膜厚測定には触針式膜厚測定計DektakXT(BRUKER社製)を用いた。
[吸収スペクトル測定]
吸収スペクトル測定には分光光度計V-750(日本分光製)を用いた。スキャンスピード400nm/分で測定を行った。測定試料には真空蒸着法により石英基板上に作製した薄膜を用いた。
[外部量子効率測定]
外部量子効率の測定には太陽電池分光感度測定装置(相馬光学社製)を用いた。照射光強度50μW/cm2で測定を行った。
【0093】
試薬類は市販品を用いた。
【0094】
実施例-1
【0095】
【0096】
アルゴン雰囲気下、5-(3-メチルベンゾフラン-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-1)(5.2g,23mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(5.1g,13mmol)をトルエン(100mL)に懸濁させ、70℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン、メタノール及びテトラヒドロフランで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビスフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-1)を得た(3.0g,62%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.61(d,J=7.5Hz,2H),7.60(s,2H),7.50(d,J=8.2Hz,2H),7.44(dd,J=8.2,7.3Hz,2H),7.31(dd,J=7.5,7,3Hz,2H),2.63(s,6H)。
【0097】
実施例-2
【0098】
【0099】
アルゴン雰囲気下、5-{3-メチル-5-(トリメチルシリル)ベンゾフラン-2-イル}フラン-2,3-ジオン(4-59)(0.60g,2.0mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(0.41g,1.0mmol)をトルエン(20mL)に懸濁させ、50℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス{3-メチル-5-(トリメチルシリル)ベンゾフラン-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビスフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-59)を得た(0.15g,28%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.73(brs,2H),7.60(s,2H),7.58(dd,J=8.2,1.0Hz,2H),7.48(d,J=8.2Hz,2H),2.65(s,6H),0.33(s,18H)。
【0100】
実施例-3
【0101】
【0102】
アルゴン雰囲気下、5-(3-メチル-5-フェニルベンゾフラン-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4.0g,13mmol)(4-52)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(2.6g,6.5mmol)をトルエン(100mL)に懸濁させ、70℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン、メタノール及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(3-メチル-5-フェニルベンゾフラン-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビスフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-52)を得た(1.5g,40%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.76(d,J=1.7Hz,2H),7.67(dd,J=8.6,1.7Hz,2H),7.65-7.61(m,6H),7.55(d,J=8.6Hz,2H),7.47(dd,J=7.7,7.5Hz,4H),7.38(brt,J=7.5Hz,2H),2.67(s,6H)。
【0103】
実施例-4
【0104】
【0105】
アルゴン雰囲気下、5-(3-エチルベンゾフラン-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-2)(3.1g,13mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(2.6g,6.5mmol)をトルエン(100mL)に懸濁させ、70℃で4時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(3-エチルベンゾフラン-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビスフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-2)を得た(1.5g,53%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.65(d,J=7.6Hz,2H),7.62(s,2H),7.51(d,J=8.2Hz,2H),7.44(m,2H),7.30(m,2H),3.11(m,2H), 1.39(dt,J=21.6,7.2Hz,6H)。
【0106】
実施例-5
【0107】
【0108】
アルゴン雰囲気下、5-(3-フェニルベンゾフラン-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-6)(4.4g,15mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(3.0g,7.5mmol)をトルエン(100mL)に懸濁させ、70℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン、メタノール及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(3-フェニルベンゾフラン-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビスフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-6)を得た(2.0g,48%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.61-7.45(m,18H),7.31(brt,J=7.6Hz,2H)。
【0109】
実施例-6
【0110】
【0111】
アルゴン雰囲気下、5-(3-エチル-6-メトキシベンゾフラン-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-60)(3.4g,12mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(2.4g,6mmol)をトルエン(100mL)に懸濁させ、70℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(3-エチル-6-メトキシベンゾフラン-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビスフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-60)を得た(1.8g,58%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.53(s,2H),7.50(d,J=8.8Hz,2H),7.00(d,J=2.0Hz,2H),6.92(dd,J=8.8,2.0Hz,2H),3.90(s,6H),3.08(m,4H), 1.35(t,J=7.6Hz,6H)。
【0112】
実施例-7
【0113】
【0114】
アルゴン雰囲気下、5-(3-メチルベンゾ[b]チオフェン-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-27)(1.7g,7.0mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(1.4g,3.5mmol)をトルエン(30mL)に懸濁させ、70℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン、メタノール及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(3-メチルベンゾチオフェン-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビスフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-27)を得た(1.1g,71%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.60(d,J=7.8Hz,2H),7.60(s,2H),7.50(d,J=8.3Hz,2H),7.43(d,J=8.3,7.4Hz,2H),7.31(dd,J=7.8,7.4Hz,2H),2.63(s,6H)。
【0115】
実施例-8
【0116】
【0117】
アルゴン雰囲気下、5-(1-イソブチル-3-メチル-1H-インドール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-36)(0.26g,0.92mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(0.20mg,0.50mmol)をトルエン(10mL)に懸濁させ、70℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、反応混合物にヘキサンを加えて生じた沈殿をろ取し、メタノールとヘキサンにて洗浄することで得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を用いて精製することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス[1-イソブチル-3-メチル-1H-インドール-2-イル]-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-36)を得た(0.13g,収率42%)。
1H-NMR(CDCl3):7.64(brd,J=8.1Hz,2H),7.41(s,2H),7.37-7.30(m,4H),7.15(ddd,J=8.1,5.5Hz,J=2.3Hz,2H),4.24(d,J=7.8Hz,4H),2.62(s,6H),2.16(m,2H),0.91(d,J=6.7Hz,12H)。
【0118】
実施例-9
【0119】
【0120】
アルゴン雰囲気下、5-[1-イソプロピル-3-メチル-1H-インドール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-35)(0.40g,1.5mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(0.30g,0.75mmol)をトルエン(15mL)に懸濁させ、50℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(1-イソプロピル-3-メチル-1H-インドール-2-イル]-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-35)を得た(0.18g,収率42%)。
1H-NMR(CDCl3):7.65(brd,J=8.0Hz,2H),7.56(brd,J=8.4Hz,2H),7.30(s,2H),7.30(brdd,J=8.4,7.2Hz,2H),7.15(brdd,J=8.0,7.2Hz,J=2.3Hz,2H),4.99(sep,J=6.7Hz,2H),2.54(s,6H),1.68(d,J=6.7Hz,12H)。
【0121】
実施例-10
【0122】
【0123】
アルゴン雰囲気下、5-(3-メチル-1-フェニル-1H-インドール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-39)(3.0g,9.9mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(2.0g,4.9mmol)をトルエン(100mL)に懸濁させ、50℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで緑色固体の(E)-5,5’-ビス[3-メチル-1-フェニル-1H-インドール-2-イル]-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-39)を得た(2.3g,収率81%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.70(brd,J=7.9Hz,2H),7.60-7.53(m,6H),7.36-7.30(m,4H),7.25(brdd,J=8.2,7.0Hz,2H),7.18(brdd,J=7.9,7.0Hz,2H),7.01(brd,J=8.2Hz,2H),6.23(s,2H),2.70(s,6H)。
【0124】
実施例-11
【0125】
【0126】
アルゴン雰囲気下、5-(1-エチル-3-メチル-1H-インドール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-69)(2.1g,7.7mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(1.6g,3.9mmol)をトルエン(80mL)に懸濁させ、40℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで緑色固体の(E)-5,5’-ビス[1-エチル-3-メチル-1H-インドール-2-イル]-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-69)を得た(1.7g,収率86%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.58(dd,J=9.0,5.4Hz,2H),7.37(s,2H),7.00(dd,J=9.7,2.2Hz,4H),6.93(ddd,J=9.0,2.2Hz,4H),4.39(q,J=7.2Hz,4H),2.59(s,6H),1.43(t,J=7.2Hz,2H)。
【0127】
実施例-12
【0128】
【0129】
アルゴン雰囲気下、5-(6-フルオロ-3-メチル-1-フェニル-1H-インドール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-45)(2.5g,7.8mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(1.6g,3.9mmol)をトルエン(80mL)に懸濁させ、50℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで緑色固体の(E)-5,5’-ビス(6-フルオロ-3-メチル-1-フェニル-1H-インドール-2-イル]-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-45)を得た(2.0g,収率84%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.62-7.55(m,8H),7.34-7.29(m,4H),6.93(ddd,J=9.0,9.0,2.2Hz,2H),6.66(dd,J=9.6,2.2Hz,2H),6.19(s,2H),2.67(s,6H)。
【0130】
実施例13
【0131】
【0132】
アルゴン雰囲気下、5-(3,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-62)(1.9g,7.1mmol)と2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(1.6g,39mmol)をトルエン(35mL)に溶解させ70℃にて3時間撹拌した。反応溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:ヘキサン=1:1)にて精製することで(E)-5,5’-ビス(3,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-2-イル)-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-62)を得た(0.15g,8%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.47-7.43(m,6H),7.42(s,2H),7.22-7.18(m,4H),6.04(s,2H),2.36(s,6H),2.02(s,6H)。
【0133】
実施例14
【0134】
【0135】
アルゴン雰囲気下、5-[1-シクロペンチル-3-メチル-1H-インドール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-11)(2.2g,7.4mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(1.5g,3.7mmol)をトルエン(75mL)に懸濁させ、50℃で3時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで、赤色固体の(E)-5,5’-ビス(1-シクロペンチル-3-メチル-1H-インドール-2-イル]-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-11)を得た(1.6g,収率77%)。
1H-NMR(CDCl3):7.66(brd,J=8.0Hz,2H),7.44(brd,J=8.4Hz,2H),7.31(s,2H),7.29(brdd,J=8.4,7.2Hz,2H),7.15(brdd,J=8.0,7.2Hz,J=2.3Hz,2H),5.12(sep,J=6.7Hz,2H),2.39-2.24(m,4H),2.24-2.11(m,4H),2.11-1.99(m,4H),1.88-1.73(m,4H)。
【0136】
実施例-15
【0137】
【0138】
アルゴン雰囲気下、5-[3-メチル-1-フェニルメチル-1H-インドール-2-イル)フラン-2,3-ジオン(4-79)(1.7g,5.4mmol)及び2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン 2,4-ジスルフィド(1.1g,2.7mmol)をトルエン(50mL)に懸濁させ、50℃で4時間撹拌した。室温まで放冷後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン及びヘキサンで洗浄することで、緑色固体の(E)-5,5’-ビス(3-メチル-1-フェニルメチル-1H-インドール-2-イル]-2H,2’H-[3,3’-ビフラニリデン]-2,2’-ジオン(1-11)を得た(1.4g,87%)。
1H-NMR(CDCl3):δ7.68(d,J=8.0Hz,2H),7.35-7.15(m,12H),7.03(d,J=7.2Hz,4H),5.61(s,4H),2.63(s,6H)。
【0139】
評価例-1~8
真空蒸着法により、石英基板上に本発明のフラノン誘導体の薄膜を作製し、該薄膜の吸収スペクトルを測定した。極大吸収波長、および波長600nmにおける吸収係数の相対値を表1に示した。ただし、該相対値は比較例-1のSubNcの薄膜の波長600nmにおける吸収係数を1とした値である。
【0140】
比較例-1
真空蒸着法により、石英基板上にSubNcの薄膜を作製し、該薄膜の吸収スペクトルを測定した。極大吸収波長、および波長600nmにおける吸収係数の相対値を表1に示した。ただし、該相対値は本比較例の値を1とする。
【0141】
【0142】
評価例-9~14
本発明のフラノン誘導体を構成成分とする光電変換素子を作製し、その性能評価を行った。
【0143】
基板には、2mm幅のITO膜がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用いた。この基板をイソプロピルアルコールにより洗浄した後、酸素プラズマ洗浄した。洗浄後の基板に、正孔輸送層として2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-スピロビフルオレン(Spiro-2CBP、膜厚30nm)、光電変換層として本発明のフラノン誘導体とフラーレン(C60)の共蒸着膜、電子輸送層としてフラーレン(C60、膜厚30nm)を順に真空蒸着法により製膜した。続いて該製膜基板にITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、正極層としてアルミニウムを0.3nm/秒の製膜速度で真空蒸着した。製膜後、この多層膜を酸素及び水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止し、受光面積4mm2の光電変換素子を作製した。封止は、ガラス製の封止キャップとエポキシ型紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いた。
【0144】
該光電変換素子へ波長600nmの光を照射した際の外部量子効率の測定結果を表2に示した。これより、本発明の光電変換素子は、赤色光領域に感度を有する光電変換素子として駆動することが分かった。
【0145】
【0146】
評価例-1~8より、本発明のフラノン誘導体は比較例-1で示されたSubNcより極大吸収波長が600nmに近いことがわかる。また、評価例-9~14より、本発明のフラノン誘導体は光電変換能を有することが示され、赤色用光電変換材料として有用であることが分かった。
本発明のフラノン誘導体(1)は、有機フォトダイオード材料、有機薄膜太陽電池材料、有機半導体レーザー材料、有機ELディスプレイ材料、フォトニック結晶材料等の電子材料等に利用することができる。