(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159731
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】磁気マーカ、磁気マーカの埋設治具、及び磁気マーカの埋設方法
(51)【国際特許分類】
E01F 11/00 20060101AFI20221011BHJP
G08G 1/095 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
E01F11/00
G08G1/095 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064108
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田坂 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭三
(72)【発明者】
【氏名】高桑 俊康
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【テーマコード(参考)】
2D064
5H181
【Fターム(参考)】
2D064AA01
2D064AA22
2D064EA15
2D064EA17
2D064JA02
5H181AA01
5H181CC17
5H181HH19
(57)【要約】
【課題】磁気マーカを埋設する作業時間を短縮することができる磁気マーカを提供する。
【解決手段】磁気マーカ20は、道路13に埋設され、車両11に設けられる磁気センサーによって検知される。磁気マーカ20は、磁石21と、磁石21を覆う保護材22と、を収納するケース23と、ケース23から下方に突出して設けられ、道路13に埋設される状態で拡径されるアンカー24とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に埋設され、車両に設けられた磁気センサーによって検知される磁気マーカであって、
磁石と、前記磁石を覆う保護材と、を収納するケースと、
前記ケースから下方に突出して設けられ、前記道路に埋設された状態で拡径されるアンカーと、
を備える、
磁気マーカ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気マーカであって、
前記アンカーは、上端部が前記ケースに固定されたスリーブと、前記スリーブに軸方向に移動可能に遊嵌する拡径子とを有し、
前記スリーブの下部には、軸方向に沿った切り込みが形成され、
前記拡径子の下部は、前記スリーブから突出すると共に下方に向かうに従って拡径して形成される拡径部を有し、
前記拡径子が埋設されることによって上方に押され、前記スリーブの下部が拡径される、
磁気マーカ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気マーカであって、
前記ケースの径と前記アンカーの径とは略同一である、
磁気マーカ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項の磁気マーカを前記道路に埋設する治具であって、
前記道路の路面に設けられた孔に差し込まれた前記磁気マーカの周囲に設置され、前記磁気マーカを内径に受け入れるベースと、
前記ケースの外径よりも大きい径を有し、前記ベースの内径に差し込まれる押し込み具と
を備える、
磁気マーカの埋設治具。
【請求項5】
請求項2に記載の磁気マーカを前記道路に埋設する埋設方法であって、
前記道路に孔を穿ち、
前記磁気マーカを前記孔に打ち込み、
前記スリーブに対する前記拡径子の上方移動によって前記アンカーを拡径させる、
磁気マーカの埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に埋設されて車両の磁気誘導に用いられる磁気マーカに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気マーカは、磁気式車両位置検知システム(以下、GMPS(Global Magnetic Positioning System))の一部を構成する部品である。GMPSは、車両に設けられた磁気センサーによって道路に設けられた磁気マーカを検知することによって車両位置を推定し、自動運転等の高度な車両制御を支援するシステムである。
【0003】
特許文献1には、道路に埋設される磁気マーカが開示されている。一般的に、磁気マーカを道路に埋設する際には、道路に孔を穿ち、当該孔に磁気マーカを埋設し、埋設された磁気マーカを覆うように液状の保護材を流し込んで固める作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した磁気マーカを道路に埋設する作業では、液状の保護材が乾燥して固まるまでに時間を要するため、必要以上に作業時間を要していた。
【0006】
そこで、本発明は、磁気マーカを埋設する作業時間を短縮することができる磁気マーカ、磁気マーカの埋設治具及び磁気マーカの埋設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る磁気マーカは、道路に埋設され、車両に設けられた磁気センサーによって検知される磁気マーカであって、磁石と、磁石を覆う保護材と、を収納するケースと、収納部から下方に突出して設けられ、道路に埋設された状態で拡径されるアンカーとを備える。
【0008】
本発明に係る磁気マーカにおいて、アンカーは、上端部がケースに固定されたスリーブと、スリーブに軸方向に移動可能に遊嵌する拡径子とを有し、スリーブの下部には、軸方向に沿った切り込みが形成され、拡径子の下部は、前記スリーブから突出すると共に下方に向かうに従って拡径して形成される拡径部を有し、拡径子が埋設されることによって上方に押され、スリーブの下部が拡径されることが好ましい。
【0009】
本発明に係る磁気マーカにおいて、ケースの径とアンカーの径とは略同一であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る磁気マーカを道路に埋設する磁気マーカの埋設治具において、道路の路面に設けられた孔に差し込まれた磁気マーカの周囲に設置され、磁気マーカを内径に受け入れるベースと、ケースの外径よりも大きい径を有し、ベースの内径に差し込まれる押し込み具と、を備えることが好ましい。
【0011】
本発明に係る磁気マーカを道路に埋設する埋設方法であって、道路に孔を穿ち、磁気マーカを孔に打ち込み、スリーブに対する拡径子の上方移動によってアンカーを拡径させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の磁気マーカ、磁気マーカの埋設治具、及び磁気マーカの埋設方法によれば、磁気マーカを埋設する作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係わる磁気式車両位置検知システムを示す模式図である。
【
図2】実施形態の一例である磁気マーカを示す模式図である。
【
図3】実施形態の他の一例である磁気マーカを示す模式図である。
【
図4】実施形態の一例である磁気マーカの埋設治具を示す模式図である。
【
図5】実施形態の一例である磁気マーカの埋設工程の流れを示すフローである。
【
図6】実施形態の一例である磁気マーカの埋設工程の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0015】
図1を用いて、実施形態に係る磁気式車両位置検知システム10について説明する。
図1は、磁気式車両位置検知システム10を示す模式図である。
【0016】
図1に示すように、本発明に係る磁気マーカ20は、磁気式車両位置検知システム10(以下、GMPS(Global Magnetic Positioning System))の一部を構成する部品である。GMPS10は、車両11に設けられた磁気センサーによって道路13に設けられた磁気マーカ20を検知することによって車両11の位置を推定し、自動運転等の高度な車両制御を支援するシステムである。
【0017】
図2を用いて、実施形態の一例である磁気マーカ20について説明する。
図2は、磁気マーカ20を示す模式図である。
【0018】
磁気マーカ20は、上述したGMPS10の一部を構成する部品であって、道路13の路面に埋設され、車両11に設けられる磁気センサーによって検知される。
【0019】
図2に示すように、磁気マーカ20は、磁石21と、磁石21を覆う保護材22とを収納するケース23と、ケース23から下方に突出して設けられ、道路13に埋設された状態で拡径されるアンカー24とを備える。
【0020】
磁気マーカ20は、道路13の路面に形成されたザグリ孔14に埋設される。ザグリ孔14は、ケース23が埋設される大径孔14Aと、大径孔14Aの下方に形成されアンカー24が差し込まれる小径孔14Bとからなる。ザグリ孔14は、ザグリドリルによって掘削される。
【0021】
磁石21は、車両11に設けられた磁気センサーが検知可能な磁力を発生させる。磁石21は、円柱形状に形成され、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料(非導電性材料)中に分散させた等方性フェライトプラスチックマグネット又はフェライトラバーマグネットが好適に用いられる。
【0022】
保護材22は、磁石21を覆い、道路13の路面における直射日光、雨水、車両の通過による圧重及び振動、ブレーキ作動時の摩擦、冬季の融雪剤の散布又はタイヤチェーンによる磨耗等から磁石21を保護する。本例では、保護材22は、磁石21の径と略同一の径を有する円柱形状の樹脂が好適に用いられる。保護材22は、固体状であって磁石21及びケース23に接着剤によって接着して固定してもよい。また、保護材22は、液体状であって磁石21が収納されたケース23に流し込んで磁石21を固めて固体状になってもよい。
【0023】
ケース23は、磁石21と保護材22とを収納する。ケース23によれば、道路13に磁石21を埋設する前に保護材22によって磁石21を覆うことができる。これにより、液体状の保護材22を固めて用いる場合には、ケース23において保護材22を固めてからケース23を道路13に埋設することができる。この結果、磁気マーカ20を道路13に埋設する時間を短縮することができる。
【0024】
また、工場等においてケース23に保護材22を充填することができるため、保護材22の充填量、保護材22の上面を平坦に形成すること等を一括に管理することができる。これにより、保護材22の品質を向上することができる。
【0025】
さらに、固体状の保護材22を用いる場合には、工場等においてケース23に保護材22を固定することができるため、保護材22とケース23との隙間、保護材22とケース23との接着力、保護材22の上面を平坦に形成すること等を一括に管理することができる。これにより、保護材22の品質を向上することができる。
【0026】
ケース23は、底面が塞がれると共に天面が開口された円筒形状に構成される。ケース23は、非磁性体で構成されることが好ましい。ケース23の底面には、下方に向けて突出するアンカー24が固定される。ケース23の底面部には、下方が開口された凹部23Aが設けられ、拡径子26の上端がスリーブ25内で上昇するときに拡径子26の上端を受け入れることができる。凹部23Aは、磁気マーカ20をザグリ孔14に埋設する状態で、後述するスリーブ25を拡径させる際に後述する拡径子26が退避する部分である。ケース23の長さは、ザグリ孔14の大径孔14Aの長さと同じである。ケース23の外径は、ザグリ孔14の大径孔14Aの径と同じ大きさである。
【0027】
アンカー24は、磁気マーカ20がザグリ孔14に埋設される状態で拡径される。より詳細には、磁気マーカ20がザグリ孔14に差し込まれ、拡径子26がザグリ孔14の小径孔14Bの底部に到達し、さらに磁気マーカ20が打ち込まれることによって拡径子26がスリーブ25に対し上方へ移動してスリーブ25の下部が拡径されて、アンカー24がザグリ孔14に抜け止めされる。
【0028】
アンカー24によれば、詳細は後述するが、道路13に穿ったザグリ孔14に磁気マーカ20を打ち込むことによって磁気マーカ20を強固に固定することができる。これにより、通常のアンカーを打ち込む技術を有する作業者であれば、容易に磁気マーカ20を道路13に埋設することができる。
【0029】
アンカー24は、ケース23の径よりも小さい径を有する略円柱形状に構成される。アンカー24は、円筒状のスリーブ25と、スリーブ25に軸方向に移動可能に遊嵌する長尺状の拡径子26とを有する。
【0030】
スリーブ25は、上端部がケース23の底面に固定される。スリーブ25の下部には、軸方向に沿った切り込み25Aが形成される。スリーブ25の長さは、ザグリ孔14の小径孔14Bの長さと同じである。また、スリーブ25の外径は、小径孔14Bの径と同じ大きさである。
【0031】
拡径子26の下部には、下方に向かうに従って拡径する拡径部26Aが設けられている。拡径子26の拡径部26Aは、
図2(A)の埋設前の状態でスリーブ25から突出している。拡径部26Aの最大径は、スリーブ25の外径、及び小径孔14Bの径と同じ大きさである。これにより、スリーブ25を小径孔16Bに挿入するときに拡径部26Aはこの挿入の妨げになることがない。拡径子26は、スリーブ25に対し上方へ移動することによってケース23の凹部23Aに退避し、スリーブ25をスリーブ25の円筒厚分だけ拡径させる。
【0032】
図3を用いて、実施形態の他の一例である磁気マーカ30について説明する。
図3は、磁気マーカ30を示す模式図である。
【0033】
磁気マーカ30は、円柱形状のケース33の径と円柱形状のアンカー34の径とが略同一に構成される。本例では、磁気マーカ30の磁石31、保護材32及びケース33の径が上述した磁気マーカ20の径と比較して小さい。
【0034】
磁気マーカ30によれば、後述する磁気マーカ30の埋設方法において、ザグリドリルを用いて道路13の路面にザグリ孔14を穿つ必要がなく、通常のドリルで孔を穿つのみで磁気マーカ30を埋設することができる。これにより、磁気マーカ30を埋設する作業効率を向上させることができる。
【0035】
図4を用いて、実施形態の一例である磁気マーカ20の埋設治具40について説明する。
図4は、埋設治具40を示す模式図である。
【0036】
埋設治具40は、詳細は後述する磁気マーカ20の埋設工程において、道路13に穿ったザグリ孔14に磁気マーカ20を打ち込む際に用いられる。埋設治具40によれば、詳細は後述するが、磁気マーカ20の上面(保護材22の上面)と道路13の路面を均一にすることができる。
【0037】
埋設治具40は、磁気マーカ20のケース23の内径よりも大きい径を有する押し込み具41と、押し込み具41が貫通するベース42とを備える。
【0038】
押し込み具41は、磁気マーカ20のケース23の外径よりも僅かに大きい径を有する金属製の円柱状の本体41Aと、本体41Aの外径よりも大きい径を有する金属製の円盤状の鍔部41Bとを有する。本体41Aは、磁気マーカ20のケース23の厚みよりも大きい厚みを有する円筒状であってもよい。
【0039】
押し込み具41によれば、例えばハンマー等で磁気マーカ20をザグリ孔14に打ち込む際に、ハンマーと磁気マーカ20との間の緩衝材となり、磁気マーカ20の保護材22が損傷することがない。
【0040】
ベース42は、押し込み具41の本体41Aの径よりも若干大きい内径を有する金属製のドーナツ状に構成される。ベース42の高さは、押し込み具41の本体41Aの高さと略同一であることが好ましい。
【0041】
ベース42によれば、押し込み具41の鍔部41Bがベース42の上面に当接するまで押し込み具41を打ち込むことによって、磁気マーカ20の上面(保護材22の上面)と道路13の路面を均一にすることができる。また、ベース42によれば、押し込み具41を鉛直方向に案内するため、磁気マーカ20をザグリ孔14に鉛直方向に打ち込むことができる。
【0042】
図5及び
図6を用いて、実施形態の一例である磁気マーカ20の埋設工程について説明する。
【0043】
磁気マーカ20の埋設方法としての磁気マーカ20の埋設工程は、上述した埋設治具40を用いて、上述した磁気マーカ20を埋設する。
【0044】
ステップS11において、道路13において磁気マーカ20を埋設する箇所にザグリドリルによって上述したように大径孔14Aと小径孔14Bとからなるザグリ孔14を穿つ(
図6(A)参照)。なお、上述したように、ケース33の径とアンカー34の径とが略同一に構成される磁気マーカ30であれば、通常のドリルによって孔を穿つのみの作業でよい。
【0045】
ステップS12において、吸塵機又はダストポンプを用いてザグリ孔14の粉塵を除去する。ステップS13において、ザグリ孔14に磁気マーカ20を差し込む。ステップS14において、ザグリ孔14及び磁気マーカ20の周囲に埋設治具40のベース42を設置して、ベース42に埋設治具40の押し込み具41を差し込む。
【0046】
ステップS15において、磁気マーカ20のアンカー24の拡径子26の下端部が小径孔14Bの底部に到達するまで埋設治具40の押し込み具41をハンマー等で打撃する(
図6(B)参照)。
【0047】
ステップS16において、押し込み具41をハンマー等でさらに打撃し、アンカー24の拡径子26の上端部をケース23の凹部23Aに退避させ、アンカー24のスリーブ25の下部が拡径子26の拡径部26Aによって拡径されて、アンカー24が小径孔14Bに強固に固定される(
図6(C)参照)。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 磁気式車両位置検知システム、11 車両、13 道路、14 孔、20 磁気マーカ、21 磁石、22 保護材、23 ケース、23A 凹部、24 アンカー、25 スリーブ、25A 切り込み、26 拡径子、26A 拡径部、30 磁気マーカ、31 磁石、32 保護材、33 ケース、34 アンカー、40 埋設治具、41 押し込み具、41A 本体、41B 鍔部、42 ベース