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特開2022-159906双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159906
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20221011BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20221011BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20221011BHJP
   H01M 4/68 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/522
H01M4/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064373
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H028
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA17
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD13
5H011EE06
5H011FF04
5H011GG09
5H011HH02
5H017AA01
5H017AS03
5H017CC03
5H017EE02
5H028AA08
5H028BB01
5H028CC19
5H028CC24
5H028EE06
5H043BA12
5H043CA13
5H043FA05
5H043FA10
5H043FA22
5H043HA11F
5H043HA23F
5H043JA01F
5H043JA02F
5H043KA02F
5H043KA05F
5H043KA07F
5H043LA41F
(57)【要約】
【課題】正極と負極との間の導通を確保しつつ、基板を貫通して設けられる貫通穴を介して正極側から負極側へと電解液が移動することで生ずる液洛を確実に防止して蓄電池の性能維持、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供する。
【解決手段】正極111、負極112、及び正極111と負極112との間に介在するセパレータ113を備え、間隔を開けて積層配置されたセル部材110と、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間を形成するセル部材110の正極111の側および負極112の側の少なくとも一方を覆う基板121を含む空間形成部材120と、基板121を貫通して設けられる貫通穴121aと、貫通穴121aに挿入され、正極側と負極側との導通を図る導通体180と、を備え、貫通穴112aの内面及び導通体180が貫通穴112aに挿入された際に導通体180における少なくとも内面に対向する面は金属層150を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記基板を貫通して設けられる貫通穴と、
前記貫通穴に挿入され、正極側と負極側との導通を図る導通体と、を備え、
前記貫通穴の内面、及び、前記導通体が前記貫通穴に挿入された際に前記導通体における少なくとも前記内面に対向する面は金属層を備えていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記金属層は、前記正極用集電体及び前記負極用集電体を構成する金属又は合金の融点よりも低い融点を備える金属又は合金から構成されることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記貫通穴及び前記導通体に設けられる金属層であって、互いに対向する金属層は同じ材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記貫通穴に設けられる前記金属層は、前記基板に接する第1の金属層と、前記第1の金属層を覆うように設けられる第2の金属層とからなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記第1の金属層として設けられる金属又は合金の融点は、前記第2の金属層、前記正極用集電体及び前記負極用集電体のいずれよりも高い融点を備え、前記第2の金属層として設けられる金属又は合金の融点は、前記第1の金属層、前記正極用集電体及び前記負極用集電体のいずれよりも低い融点を備えることを特徴とする請求項4に記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記金属層は、メッキ処理によって設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項7】
前記貫通穴の内面には、周方向に凸部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項8】
前記正極用集電体および前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項9】
空間形成部材の基板の一方の面と他方の面及び前記一方の面と前記他方の面との間を貫通する貫通穴に、正極用集電体及び負極用集電体を構成する金属又は合金の融点よりも低い融点を備える金属又は合金から構成されている金属層を設ける工程と、
前記貫通穴に挿入され正極側と負極側との導通を図る導通体であって少なくとも前記貫通穴に対向する面に前記金属層を設ける工程と、
前記導通体を前記貫通穴に挿入し、前記正極側と前記負極側から前記導通体を加熱して前記貫通穴において前記導通体を接合する工程と、
前記一方の面に前記正極用集電体を配置する工程と、
前記他方の面に前記負極用集電体を配置する工程と、
配置された前記正極用集電体側から前記基板方向に加熱し前記基板の前記一方の面に前記金属層を介して前記正極用集電体を接合する工程と、
配置された前記負極用集電体側から前記基板方向に加熱し前記基板の前記他方の面に前記金属層を介して前記負極用集電体を接合する工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
【請求項10】
前記基板に前記金属層を設ける工程は、
前記一方の面と、前記他方の面と、前記貫通穴と、に第1の金属層を設ける工程と、
前記第1の金属層を覆うように第2の金属層を設ける工程と、
を備えていることを特徴とする請求項9に記載の双極型蓄電池の製造方法。
【請求項11】
前記第2の金属層の融点は、前記第1の金属層の融点よりも低く、かつ、前記正極用集電体及び前記負極用集電体を構成する金属又は合金の融点よりも低いことを特徴とする請求項10に記載の双極型蓄電池の製造方法。
【請求項12】
前記導通体に設けられる前記金属層は、前記第2の金属層であることを特徴とする請求項11に記載の双極型蓄電池の製造方法。
【請求項13】
前記金属層は、メッキ処理によって設けられることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の双極型蓄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された鉛蓄電池では、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板(バイポーラプレート)が取り付けられている。基板の一方面及び他方面には、正極用鉛層及び負極用鉛層が設けられている。正極用鉛層には、正極用活物質層が隣接している。負極用鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
さらに正極用鉛層と負極用鉛層とは、基板に複数形成された穿孔の内部で直接的に接合されている。すなわち、特許文献1に記載の鉛蓄電池は、一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池である。セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有し、一方のセル部材の正極用鉛層と他方のセル部材の負極用鉛層とが基板の穿孔の内部に没入して接合されることにより、セル部材同士が直列に接続されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6124894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1における鉛蓄電池のような構造を採用した場合、次のような現象が生ずる可能性が考えられる。すなわち、そもそも特許文献1に記載の鉛電池の場合、図15の(a)に示すように、このバイポーラ電極の正極は、樹脂製の基板210の一方の面の上に接着層240を介して正極用鉛箔220が配され、当該正極用鉛箔220の上に正極用活物質層(図示せず)が配されることによって構成されている。
【0007】
なお、接着剤を用いて基板と接着される鉛箔は正極用鉛箔と負極用鉛箔とがあるが、図15では正極用鉛箔を例に挙げて説明している。
【0008】
上記のような双極型鉛蓄電池においては、電解液に含有される硫酸によって正極用鉛箔220が腐食して正極用鉛箔220の表面に腐食生成物(酸化鉛)の被膜260が生成されることがある(図15の(b)を参照)。そして、この腐食生成物の被膜260の成長によって正極用鉛箔220に伸び(グロース)が生じるおそれがあった。
【0009】
また、このグロースによって正極用鉛箔220と接着層240とが剥離し、正極用鉛箔220と接着層240との界面に電解液が浸入して、硫酸による正極用鉛箔220の腐食がさらに進行するおそれがあった(図15の(c)を参照)。その結果、腐食が例えば正極用鉛箔220の裏面(基板210に対向する面)にまで達すると、短絡が生じるなどして電池の性能が低下する場合があった。
【0010】
さらには、正極と負極との導通を図るために設けられる、上述した一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を介して電解液が正極側から負極側に到達すると、いわゆる液洛が生じ、電池性能の低下を招来する。
【0011】
そのため、このような液洛が生じないように様々な方策が行われてきた。例えばその1つが、穿孔が設けられた基板において、金型の穿孔の部分に金属を配置してその周囲を樹脂で覆って基板を成型する、いわゆるインサート成型を用いて基板を製造する方法である。但し、基板の厚みが薄いことから金属を保持しつつインサート成型を行うことは困難である。
【0012】
また、穿孔の部分に導通体を挿入し、基板の厚み方向に当該導通体を挟んでかしめる方法や穿孔の内周部に接着剤を塗布して圧力を掛けて穿孔内に導通体を挿入する方法、或いは、この方法に追加してかしめる方法も考えられる。
【0013】
しかしながら、前者の場合、このように厚み方向にかしめても穿孔内において導通体を基板に食い込ませることができず、後者の場合も、結局液洛が生じてしまい、いずれの場合も穿孔内における機密性を保持することができなかった。
【0014】
本発明は、正極と負極との間の導通を確保しつつ、基板を貫通して設けられる貫通穴を介して正極側から負極側へと電解液が移動することで生ずる液洛を確実に防止して蓄電池の性能維持、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、基板を貫通して設けられる貫通穴と、貫通穴に挿入され、正極側と負極側との導通を図る導通体と、を備え、貫通穴の内面、及び、導通体が貫通穴に挿入された際に導通体における少なくとも内面に対向する面は金属層を備えている。
【0016】
また本発明の一態様に係る双極型蓄電池の製造方法は、空間形成部材の基板の一方の面と他方の面及び一方の面と他方の面との間を貫通する貫通穴に、正極用集電体及び負極用集電体を構成する金属又は合金の融点よりも低い融点を備える金属又は合金から構成されている金属層を設ける工程と、貫通穴に挿入され正極側と負極側との導通を図る導通体であって少なくとも貫通穴に対向する面に金属層を設ける工程と、導通体を貫通穴に挿入し、正極側と負極側から導通体を加熱して貫通穴において導通体を接合する工程と、一方の面に正極用集電体を配置する工程と、他方の面に負極用集電体を配置する工程と、配置された正極用集電体側から基板方向に加熱し基板の一方の面に金属層を介して正極用集電体を接合するとともに、配置された負極用集電体側から基板方向に加熱し基板の他方の面に金属層を介して負極用集電体を接合する工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、基板を貫通して設けられる貫通穴と、貫通穴に挿入され、正極側と負極側との導通を図る導通体と、を備え、貫通穴の内面、及び、導通体が貫通穴に挿入された際に導通体における少なくとも内面に対向する面は金属層を備えている。このような構成を採用することによって、正極と負極との間の導通を確保しつつ、基板を貫通して設けられる貫通穴を介して正極側から負極側へと電解液が移動することで生ずる液洛を確実に防止して蓄電池の性能維持、長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の構造の概略を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れを一部抜き出して示すフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの平面図及びA-A線切断端面図である。
図4】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの平面図及びA-A線切断端面図である。
図5】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの平面図及びA-A線切断端面図である。
図6】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの切断端面図である。
図7】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの切断端面図である。
図8】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの切断端面図である。
図9】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの切断端面図である。
図10】本発明の実施の形態における双極型蓄電池の製造工程の一部における、バイポーラプレートの切断端面図である。
図11】本発明の実施の形態における貫通穴と当該貫通穴に挿入される導通部との形状に関する第1の変形例を示す拡大切断端面図である。
図12】本発明の実施の形態における貫通穴と当該貫通穴に挿入される導通部との形状に関する第2の変形例を示す拡大切断端面図である。
図13】本発明の実施の形態における貫通穴と当該貫通穴に挿入される導通部との形状に関する第3の変形例を示す拡大切断端面図である。
図14】本発明の実施の形態における貫通穴と当該貫通穴に挿入される導通部との形状に関する第4の変形例を示す拡大切断端面図である。
図15】従来の双極型鉛蓄電池において、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極用鉛箔にグロースが生じた結果、正極用鉛箔と接着層との界面に電解液が浸入する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0020】
〔全体構成〕
まず、本発明の実施の形態における双極型蓄電池の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造の概略を示す概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140と、カバープレート160とを有する。
【0022】
ここで、図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0023】
なお、以下においては、図1に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(図1の上下方向)とし、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。
【0024】
セル部材110は、正極111、負極112、およびセパレータ(電解質層)113を備えている。正極111は、正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は、負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0025】
セパレータ113には電解液が含浸されている。セパレータ113は、正極111と負極112との間に介在している。セル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aは、この順に積層されている。
【0026】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0027】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121を間に挟まれた状態で積層されている。
【0028】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0029】
すなわち、バイポーラプレート120は、セル部材110の正極側および負極側の両方を覆い、平面形状が長方形の基板121と、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆うに枠体122と、を含む空間形成部材である。
【0030】
また、図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
バイポーラプレート120を構成する基板121と枠体122と柱部123は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0032】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層されることにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成され、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0033】
正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0034】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bの深さは第2の凹部121cより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0035】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aが配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aが配置されている。
【0036】
具体的には、正極用鉛箔111aは、基板121の第1の凹部121bと正極用鉛箔111aの間に設けられる金属層150を介して基板121の第1の凹部121bに接合されている。また、負極用鉛箔112aは、基板121の第2の凹部121cと負極用鉛箔112aの間に設けられる金属層150を介して基板121の第2の凹部121cに接合されている。
【0037】
すなわち、本発明の実施の形態においては、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aが加熱されることで、基板121と正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aとの間にある金属層150がその熱によって溶融する。それにより、金属層150と正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aとが金属接合されて、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aが基板121に設けられる。従って、基板121への正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aの接合に当たって、接着剤は用いられない。
【0038】
このように正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aは金属層150を介して基板121に設けられるが、そのために正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aが基板121に接合される前に、基板121には金属層150が設けられる。
【0039】
ここで上述したように、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aを基板121に接合する場合は、その構造上、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a側から基板121側に向けて加熱することになる。そのため、熱可塑性樹脂で構成されている基板121がこの熱の影響を受ける可能性を考慮する必要がある。また、加熱によって正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aが溶融してしまう等、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aに影響が出てはならない点も考慮する必要がある。
【0040】
そこで本発明の実施の形態においては、基板121に金属層150として第1の金属層150a及び第2の金属層150bの2層設けている。第1の金属層150aは基板121を覆うとともに、第2の金属層150bの下地層となり、第2の金属層150bは基板121と正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aとをつなぐ役割を果たす。
【0041】
なお、上述したように、本発明の実施の形態においては、金属層150として第1の金属層150a及び第2の金属層150bの2層の金属層を設けることとしたが、金属層150として何層設けるかについては任意に設定することができる。
【0042】
また上述した観点から、本発明の実施の形態では、少なくとも第2の金属層150bは、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを構成する鉛又は鉛合金の融点よりも低い融点を有する金属又は合金を備えるように構成されている。
【0043】
すなわち、第1の金属層150aとして設けられる金属又は合金の融点は、第2の金属層150b、或いは、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aのいずれよりも高い融点を備え、第2の金属層150bとして設けられる金属又は合金の融点は、第1の金属層150a、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aのいずれよりも低い融点を備えている。
【0044】
具体的には、まず基板121を覆うように設けられる第1の金属層150aとしては、ニッケル(Ni)を採用することができる。当該ニッケルの融点は、概ね1455℃程度である。一方、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aと接触する第2の金属層150bとしては、錫(Sn)を用いることができる。当該錫の融点は、概ね232℃程度である。
【0045】
第2の金属層150bに錫を用いることによって、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを加熱するに当たって、錫が溶融する温度で加熱して第2の金属層150bを溶融させ、溶融した当該第2の金属層150bを介して正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを基板121に接合させることができる。
【0046】
また、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを加熱する温度は上述したように第2の金属層150bである錫が溶融する程度の温度であるので、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aが溶融することもない。
【0047】
一方、第2の金属層150bの下地層としての第1の金属層150aを構成するニッケルの融点は第2の金属層150bの錫の融点よりも高いため、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを加熱して基板121に接合する場合であっても上述したような温度までの加熱であれば溶融することはなく、基板121への加熱による影響を可能な限り回避することができる。
【0048】
なお、第2の金属層150bとして、上述したような錫ではなく、鉛(Pb)を用いることも考えられる。これは、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aが鉛又は鉛合金から構成されており、同じ性質を持つ金属層を用いることで基板121と正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aとの接合のしやすさを考慮したものである。この接合を行う場合、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aに対する熱の影響を考慮して加熱温度が設定される。
【0049】
また、第2の金属層150bとして、上述した鉛(Pb)の他、同じように第1の金属層150a、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aのいずれよりも低い融点を備えているインジウム(In)やビスマス(Bi)も採用することができる。
【0050】
なお、基板121に金属層150を設けるに当たっては、例えば、メッキ処理を行うことができる。但し、基板121に金属層150が設けられる方法としてはこのメッキ処理の他、蒸着やエッチングといった、各種処理を採用することができる。
【0051】
また、第1の金属層150aが設けられる領域は、正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aが設けられる、第1の凹部121b及び第2の凹部121cの全領域である。併せて、貫通穴121aの内面においても設けられる。
【0052】
さらには、ここでは第1の金属層150aが設けられる領域として、上述した領域を挙げたが、例えば、バイポーラプレート120の枠体122の部分に第1の金属層150aが設けられていても良い。
【0053】
そして第2の金属層150bは第1の金属層150aを覆うように設けられる。そのため、ここでは、第1の金属層150aが設けられる第1の凹部121b及び第2の凹部121cの全領域、貫通穴121aの内部に第2の金属層150bが設けられる。
【0054】
正極用鉛箔111aの外縁部には、当該外縁部を覆うためのカバープレート160が設けられている。ここまで説明した通り、本発明の実施の形態においては、第1の金属層150a及び第2の金属層150bとからなる金属層150が設けられるが、当該外縁部においては、この金属層150が電解液と直接触れることになる。
【0055】
この場合、金属層150が電解液に溶け出すことが考えられ、溶け出してしまうとデンドライトが発生する可能性がある。特にデンドライトが成長して正極側と負極側とがつながってしまうと、両極間が短絡する可能性も否定できない。そこでこのような現象が生じることを少しでも回避するべく、カバープレート160を正極用鉛箔111aの外縁部に設けている。
【0056】
このカバープレート160は、薄板状の枠体で、長方形の内形線および外形線を有する。そして、カバープレート160の内縁部が正極用鉛箔111aの外縁部と重なり、カバープレート160の外縁部が基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と重なっている。
【0057】
すなわち、カバープレート160の内形線をなす長方形は、正極用活物質層111bの外形線をなす長方形より小さく、カバープレート160の外形線をなす長方形は、第1の凹部121bの開口面をなす長方形より大きい。
【0058】
金属層150は、正極用鉛箔111aの端面から第1の凹部121bの開口側の外縁部まで回り込んで配置される。一方、カバープレート160の内縁部と正極用鉛箔111aの外縁部との間、カバープレート160の外縁部と基板121の一面との間には接着剤170が配置されている。
【0059】
すなわち、カバープレート160は接着剤170により、基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの外縁部とに亘って固定されている。これにより、正極用鉛箔111aの外縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもカバープレート160で覆われている。
【0060】
なお、図1では示していないが、負極用鉛箔112aの外縁部も正極用鉛箔111aの外縁部を覆っているカバープレート160と同様のカバープレートで覆われていても良い。また、カバープレートについては、薄板状の枠体であることを例に挙げて説明したが、例えば、耐電解液(耐硫酸)性を備えていればテープ状の物等であっても構わない。
【0061】
バイポーラプレート120の基板121の貫通穴121aには、導通体180が配置される。すなわち導通体180は、貫通穴121a内に挿入されて加熱されることで、貫通穴121aを封止する役割を担う。さらに、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aとそれぞれ接合されることによって、正極側と負極側とを電気的に接続する役割もある。
【0062】
このように導通体180は、貫通穴121aに挿入されて貫通穴121a内を封止するため、導通体180は、貫通穴121aに嵌め合わせることができる形状に形成されている。
【0063】
すなわち、導通体180は、貫通穴121a内に挿入された場合に貫通穴121aと対向する面(以下、このような面を、適宜「対向面」と表す。)と当該面の両端面とから構成される。そのため、導通体180が貫通穴121aに挿入された際に、導通体180の両端面は、基板121の第1の凹部121bを構成する面及び第2の凹部121cを構成する面と概ね同一平面を構成する。
【0064】
また、導通体180は、基板121に対して設けられる金属層150を備えている。具体的には、導通体180の表面に対しては、上述したメッキ処理等によって、第2の金属層150bと同じ性質を持つ金属層が設けられている。そこで、導通体180に設けられている金属層についても、基板121に設けられる第2の金属層150bと同じ性質を持つ金属を用いることから、導通体180に設けられている金属層も適宜「第2の金属層150b」と表す。
【0065】
なお、導通体180自体の素材については、特に限定されない。例えば何らかの金属であっても良く、或いは、金属以外の素材が用いられても良い。後者の場合には、第2の金属層150bを設けるために、第1の金属層150aを設ける必要があるかもしれないが、導通体180の表面に第2の金属層150bが設けることができるのであれば良い。
【0066】
そして、このように第2の金属層150bが設けられた導通体180が貫通穴121に挿入され、加熱されることによって導通体180の第2の金属層150bと基板121の第2の金属層150bとが溶融し、貫通穴121a内に導通体180が金属接合される。
【0067】
これによって、貫通穴121aが金属によって確実に封止されることになる。そのため、たとえ電解液が漏洩したとしても、正極側から負極側に電解液が移動する液洛が生ずることを防止することができる。
【0068】
また、導通体180が金属で構成されており、この金属を覆うように第2の金属層150bが設けられている場合、貫通穴121aに挿入され接合された当該導通体180を介して正極側と負極側との導通が図られる。
【0069】
なお、金属以外の素材の表面に第2の金属層150bが設けられて構成される導通体180の場合、導通体180と貫通穴121aとの互いに対向する位置にある、金属接合された第2の金属層150bを介して正極側と負極側との間の導通が図られることになる。
【0070】
以上説明したように、基板121及び導通体180には金属層が設けられる。そして、導通体180は、当該基板121の貫通穴121aに挿入されて加熱処理がされる。さらに、導通体180によって貫通穴121aが封止された後、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを基板121上に載置し、改めて加熱処理を行って、金属層150を介して正極用鉛箔111aまたは負極用鉛箔112aとを基板121とので金属接合を行う。
【0071】
導通体180を貫通穴121aに挿入して封止する場合、及び、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aと第2の金属層150bとを接合して基板121に正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを設ける場合、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112a側から基板121に向けて挟み込むように加熱し金属接合する。
【0072】
この際の加熱温度は、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aの融点温度よりも低い融点温度を備える第2の金属層150bが溶融する程度の温度となる。まず導通体180と貫通穴121aとの接合について、導通体180に熱を加えると、導通体180を被覆する第2の金属層150bが溶融する。このまま加熱を継続すると引き続き貫通穴121aに設けられている第2の金属層150bが溶融することで、導通体180と貫通穴121aとが金属接合し、結果として貫通穴121aが封止される。
【0073】
次に、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aに対して加熱処理が行われることによって第1の凹部121b及び第2の凹部121cの全領域に設けられた第2の金属層150bが溶融し、第2の金属層150bと正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aとが接合し、これにより基板121に正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aが設けられる。
【0074】
このように導通体180が貫通穴121aにおいて接合され、さらに正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aが基板121と接合されることによって、正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続される。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続される。
【0075】
図1に示すように、第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0076】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0077】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0078】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0079】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、およびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0080】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0081】
第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが上述したように金属層150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121と同様に、カバープレート160が接着剤170により基板131の一面側に固定され、正極用鉛箔111aの外縁部が、凹部131bの周縁部との境界部においてもカバープレート160で覆われている。
【0082】
また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0083】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0084】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0085】
Z方向において、枠体142の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0086】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0087】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0088】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0089】
第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが金属層150を介して配置されている。また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0090】
ここで、隣接するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と隣接するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と隣接するバイポーラプレート120との接合の際には、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を採用することができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0091】
なお、溶着の対象としては、互いに隣接するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0092】
なお図面には示されていないが、枠体が有する四つの端面のうちの一つの端面には、空間Cに電解液を入れるための注入穴を形成する切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は、例えば図面右側に存在する枠体の側面に形成されている場合、枠体をX方向に貫通し、枠体のZ方向の両端面から半円弧状に凹む形状を有する。そして、この切り欠き部は上述の接合構造に関与せず、振動溶接により上述の接合構造が形成される際に、対向する切り欠き部によって円形の注入穴が形成される。
【0093】
〔製造方法〕
この実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。ここでは、図2ないし図10を適宜用いて双極型鉛蓄電池100の製造工程を説明する。
【0094】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
図2は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の製造の流れを一部抜き出して示すフローチャートである。すなわち、当該図2において示す製造工程は、特に正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a付きバイポーラプレートの製造の流れを示すものである。
【0095】
また図3ないし図10は、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100の製造工程の一部における、バイポーラプレート120の平面図、或いは、A-A線切断端面図である。ここで図3ないし図5においては、上段に平面図が、また、下段にA-A線切断端面図が示されている。また、図6ないし図10においては、図3等において示される平面図におけるA-A線で切断された状態を示す切断端面図が示されている。
【0096】
なお、図3ないし図5に示すバイポーラプレート120の基板121に関して、平面図では正極用鉛箔111aが設けられる、一方の面が示されている。また、図3ないし図10に示されるA-A線切断端面図、或いは、切断端面図においては、図面上側が一方の面に該当し、この一方の面に正極用鉛箔111aが設けられる。これに対して、図面下側が他方の面に該当し、この他方の面に負極用鉛箔112aが設けられる。
【0097】
また、図3ないし図5の平面図に示されているバイポーラプレート120の基板121には、その略中央に柱部123が設けられている。また、当該柱部123を囲むように正極側の一方の面と負極側の他方の面とを貫通する貫通穴121aが設けられている。但し、柱部123及び貫通穴121aの配置位置、配置数、径については、任意に設定することができる。
【0098】
図2のフローチャートに示すように、まず、バイポーラプレート120の基板121の一方の面と他方の面である両面及びこれら一方の面及び他方の面の間を貫通する貫通穴121aに第1の金属層150aを設ける(ST1)。上述したように、第1の金属層150aを構成する金属としては、本発明の実施の形態においては、例えば、ニッケルが採用されている。
【0099】
ニッケルは、メッキ処理等によって基板121の表面に設けられる。ここでは具体的には、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aが設けられる領域である、第1の凹部121b及び第2の凹部121cの全領域及び貫通穴121aにメッキ処理が施される。
【0100】
図3は、第1の金属層150aが設けられる前のバイポーラプレート120が示されている。この時点ではメッキ処理が行われておらず、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂からなる基板121そのものが示されている。
【0101】
これに対して、図4に示すバイポーラプレート120の基板121には、柱部123を除き、メッキ処理によって第1の金属層150aが設けられている。また、A-A線切断端面図に示されているように、貫通穴121a内にも第1の金属層150aが設けられている。
【0102】
次に、第1の凹部121b及び第2の凹部121cの全領域及び貫通穴121aに設けられた第1の金属層150aを覆うように第2の金属層150bが設けられる(ST2)。この状態を図5に示すバイポーラプレート120で見てみると、平面図において示されているように、柱部123を除き、メッキ処理によって第2の金属層150bが設けられている。さらに、A-A線切断端面図に示されているように、貫通穴121aにおいても第1の金属層150aを覆うように、第2の金属層150bが設けられる。
【0103】
上記ステップST1及びステップST2の工程を経ることによって、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを接合するためのバイポーラプレート120が完成する。そして、このような金属層150を設ける処理を、導通体180に対しても行う。
【0104】
すなわち、上述した基板121に対して第2の金属層150bを設ける際に用いた金属を用いて、導通体180に対しても第2の金属層150bを設ける(ST3)。ここで、導通体180を被覆するに当たって、基板121における第2の金属層150bと同じ金属を用いるのは、導通体180を貫通穴121aに挿入して接合すること、及び、導通体180と貫通穴121aとを接合した上で、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aとの間でも接合するに当たって、加熱温度の設定等、接合のための条件をなるべく揃えるためである。
【0105】
図6に示す切断端面図においては、基板121の上部であって、貫通穴121aの直上に導通体180が示されている。ここでは基板121に設けられている貫通穴121aが3つであるので、この数に合わせて導通体180も3つ用意されている。
【0106】
基板121及び導通体180のいずれについても、第2の金属層150bにてその表面が覆われている。また、ここでは、導通体180については、第2の金属層150bと同じ金属を用いて1層のみ金属層が設けられている。なお、第2の金属層150bに覆われる導通体180自体の素材に対しては、上述したように金属、或いは、樹脂等、様々な素材を自由に選択使用することができる。
【0107】
なお、これまでは基板121、導通体180の順に金属層150を設けるように説明したが、説明の都合上、この順で説明しただけであり、基板121及び導通体180に金属層150を設ける順については、この順に限定されない。
【0108】
このように金属層150を備える基板121及び導通体180を用意し、導通体180を貫通穴121aに嵌め込むように挿入する(ST4)。すなわち、図6の状態から図7に示すように、導通体180を貫通穴121aに嵌め込む。なおここでは貫通穴121aに導通体180が挿入されることを示すために、図7において一方の面側からの挿入を示す下向きの矢印を示しているが、導通体180の挿入は、一方の面側、或いは、他方の面側のいずれから行っても良い。
【0109】
導通体180が貫通穴121aに挿入されることによって、貫通穴121aに設けられている第2の金属層150bと、対向する位置に配置される導通体180の対向面に設けられている第2の金属層150bとが接する。また、導通体180の対向面から両端面に連続する第2の金属層150bは、基板121の第1の凹部121bを構成する面及び第2の凹部121cを構成する面に設けられた第2の金属層150bと接する。
【0110】
この状態で、導通体180に対して加熱装置190Aを接触させ、導通体180を加熱する(ST5)。この際、図8の切断端面図に示されているように、加熱装置190Aを正極側及び負極側の両側から挟み込むように導通体180に接触させ、導通体180を加熱する。導通体180を加熱することによって、導通体180を覆う第2の金属層150bが溶融する。
【0111】
なお、加熱装置190Aを用いて導通体180への加熱処理を行う際に、併せて導通体180を加圧することもできる。但し、加圧しすぎると貫通穴121aの内部において導通体180が変形してしまい、溶融した第2の金属層150bが貫通穴121aの外部に漏洩してしまう可能性もある。そこで、加圧する場合には、この点も考慮して加える圧力を調整する。
【0112】
そして、この導通体180の第2の金属層150bが溶融するとともに、加熱装置190Aの熱は導通体180の対向面に接触する貫通穴121aの第2の金属層150bにも伝わり、当該貫通穴121aの第2の金属層150bをも溶融させる。このように貫通穴121aにおいて、導通体180の第2の金属層150bと基板121の第2の金属層150bとが加熱により溶融されることで、両者は金属接合されて基板121と導通体180とが一体化する。
【0113】
なお、加熱処理を行う際に、基板121の第1の凹部121b及び第2の凹部121cに設けられている第2の金属層150bの全領域に対して加熱しても良い。
【0114】
また、導通体180の両端面に設けられる第2の金属層150bも加熱処理により溶融し、当該両端面に加えられた熱は、基板121の第1の凹部121b及び第2の凹部121cに設けられている第2の金属層150bにも伝わり、溶融する。従って、導通体180の対向面から両端面に連続する第2の金属層150bと第1の凹部121b及び第2の凹部121cに設けられた第2の金属層150bについても金属接合がなされる。
【0115】
以上説明した加熱処理によって、貫通穴121aにおける導通体180と基板121とは金属接合されるため、貫通穴121aは気密が保たれた状態で封止される。また、第1の凹部121b及び第2の凹部121cと導通体180の両端面とも金属接合されるためん、第1の凹部121b及び第2の凹部121cの領域において、貫通穴121aが導通体180によって塞がれ、概ね同一平面を構成することになる。
【0116】
次に正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを基板121に接合するための工程に入る(ST6)。具体的には、まずバイポーラプレート120を、基板121の第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置く。そして、第1の凹部121b内に正極用鉛箔111aが配置される。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。
【0117】
次に、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aが配置される。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。
【0118】
図9はこの状態を示している。図9の切断端面図に示されているように、基板121の一方の面の第2の金属層150bの上に正極用鉛箔111aが配置される。一方他方の面の第2の金属層150bの上には負極用鉛箔112aが配置される。
【0119】
そして、この状態で正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aを挟むように、正極側及び負極側から基板121側に向けて加熱する(ST7)。図10では、加熱装置190Bが正極用鉛箔111aが設けられる面及び負極用鉛箔112aが設けられる面の両面側に配置され、矢印に示すように基板121を挟み込むように移動して正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aを加熱する。
【0120】
なお、上述した正極側及び負極側から基板121側に向けて加熱する工程については、基板121を挟み込むように正極側及び負極側から同時に加熱しても良く、或いは、一方の側を加熱した後、他方の側についても加熱するというように、順に加熱するようにしても良い。
【0121】
加熱装置190Bからの熱が加えられることによって、基板121の第1の凹部121b及び第2の凹部121cと導通体180の両端面における第2の金属層150bを溶融させる。これによって、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aは、金属層150を介して基板121に接合されることになる。
【0122】
このように正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aを加熱することで第2の金属層150bが溶融することになるが、これは、上述したように、第2の金属層150bが正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aを構成する金属よりも融点が低い、例えば、錫から構成されているからである。
【0123】
また、このように加熱されることにより、第2の金属層150bを介して正極用鉛箔111a、導通体180、負極用鉛箔112aが互いに接合されるため、正極側と負極側とが互いに電気的に導通されることになる。
【0124】
次に、基板121の第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、正極用鉛箔111aの外縁部の上および第1の凹部121bの縁部となる基板121の上面に接着剤170を塗布し、その上にカバープレート160を載せて接着剤170を硬化させる。これにより、カバープレート160を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板121の部分(第1の凹部121bの周縁部)の上に亘って固定する。
【0125】
以上のような工程を経て、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。この正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を必要枚数だけ用意する。
【0126】
なお、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aが基板121上の第2の金属層150bと接合される工程について、ここでは、正極側と負極側に加熱装置190Bを配置して、基板121に向けて両側から加熱する例を挙げて説明した。但し、このような工程ではなく、正極用鉛箔111aと第2の金属層150bとを接合した後に、基板121をひっくり返して改めて負極用鉛箔112aと第2の金属層150bとの接合を行うようにしても良い。
【0127】
また、上述したように正極側と負極側から基板121に向けて加熱する工程においては、同時に正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aから基板121に向けて予め設定された力で圧力を掛けても良い。
【0128】
<正極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
上述したバイポーラプレート120の基板121に対して行った、第1の金属層150a及び第2の金属層150bを設ける処理を、第1のエンドプレート130の基板131に対しても行う。凹部131bに第2の金属層150bが設けられたら、第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置く。
【0129】
正極用鉛箔111aの貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通しながら、この凹部131b内に正極用鉛箔111aを配置する。そして、加熱装置190Bを用いて正極用鉛箔111aを加熱しながら第2の金属層150bとの間で接合し、基板131の一面に正極用鉛箔111aを設ける。
【0130】
次に、正極用鉛箔111aの外縁部の上および凹部131bの縁部となる基板131の上面に接着剤170を塗布し、その上にカバープレート160を載せて接着剤170を硬化させる。これにより、カバープレート160を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板131の部分の上に亘って固定する。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレートを得る。
【0131】
<負極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第1のエンドプレート130と同様、基板141の凹部141bに金属層150bが設けられたら、第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置く。負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通しながら、この凹部141b内に負極用鉛箔112aを配置する。そして、加熱装置190Bを用いて負極用鉛箔112aを加熱しながら第2の金属層150bとの間で接合し、基板141の一面に負極用鉛箔112aが設けられた第2のエンドプレート140を得る。
【0132】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111aおよびカバープレート160が固定された第1のエンドプレート130を、正極用鉛箔111aを上に向けて作業台に置き、カバープレート160の中に正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置く。その際に、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す。次に、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113、負極用活物質層112bを置く。
【0133】
次に、この状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せるとともに、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0134】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合され、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される。
【0135】
その結果、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合され、第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とで形成される空間Cにセル部材110が配置され、バイポーラプレート120の上面に正極用鉛箔111aが露出した状態となる。
【0136】
次に、このようにして得られた、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合されている結合体の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0137】
この状態で、この結合体を固定し、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。この振動溶接工程を、必要な枚数のバイポーラプレート120が第1のエンドプレート130の上に接合されるまで続けて行う。
【0138】
最後に、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、第2のエンドプレート140を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0139】
この状態で、この結合体を固定し、第2のエンドプレート140を基板141の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、第2のエンドプレート140が接合される。
【0140】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成され、対向する枠体の切り欠き部によって、双極型鉛蓄電池100の例えばX方向の一端面の各空間Cの位置に、円形の注入穴が形成されている。この注入穴から各空間Cの内部に電解液を所定量注液し、セパレータ113に電解液を含浸させる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる。
【0141】
なお、注入穴は、上述のように、予め枠体に切り欠き部を設けることで形成してもよいし、枠体の接合後にドリル等を用いて開けてもよい。
【0142】
以上説明したように、バイポーラプレート120の基板121に貫通穴121aも含めて金属層を設け、また、導通体180に対しても金属層を設けた上で貫通穴121aに嵌め合わせて互いに接合することで、正極と負極との間の導通を確保しつつ、基板を貫通して設けられる貫通穴を介して正極側から負極側へと電解液が移動することで生ずる液洛を確実に防止して蓄電池の性能維持、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及びこのような双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0143】
また、上述した本発明の実施の形態においては、金属層の一部として基板を覆い、第2の金属層の下地層として第1の金属層を設けたが、基板に第2の金属層の役割を果たす金属層を直接設けることができるのであれば、当該第1の金属層を設ける工程を省略することも可能である。
【0144】
さらにこれまでの説明では、基板に設ける第2の金属層を、貫通穴とともに、第1の凹部及び第2の凹部の全面に設けることを前提にしていた。しかしながら、第2の金属層を第1の凹部及び第2の凹部の全面に設けるのではなく、例えば、貫通穴の内面及び第1の凹部及び第2の凹部であって貫通穴の近傍にのみ設けることも可能である。
【0145】
なお、これまでは、貫通穴121aが円筒形に形成され、この形状に合わせるように、導通体180が断面視矩形状に形成されていることを前提に説明してきた。但し、これら両者の形状については、これらの形状に限定されるわけではなく、正極側と負極側を貫通する貫通穴121aが導通体180によって確実に封止されるのであれば、どのような形状を採用しても良い。
【0146】
すなわち、当該貫通穴及び導通体の形状について、以下図11ないし図14を用いて上述した双極型鉛蓄電池100における貫通穴121aと導通体180の変形例について説明する。なお、図11ないし図14においては、貫通穴及び導通体の部分以外の部分については、その図示を省略している。また、貫通穴については、第1の金属層150a及び第2の金属層150bが設けられていること、及び、導通体には第2の金属層150bが設けられていることもこれまで説明した通りである。
【0147】
図11は、本発明の実施の形態における貫通穴121Aと当該貫通穴121Aに挿入される導通体180Aとの形状に関する第1の変形例を示す拡大切断端面図である。図11に示す貫通穴121Aは、正極側である基板121の一方の面から負極側である他方の面に向けてテーパ状に形成されている。そして、当該貫通穴121Aの形状に合わせて、導通体180Aは、両端面のうち正極側の端面の方が負極側の端面よりも大きな面積を備えているように形成され、断面視略台形状に形成されている。
【0148】
次に、図12は、本発明の実施の形態における貫通穴121Bと当該貫通穴121Bに挿入される導通体180Bとの形状に関する第2の変形例を示す拡大切断端面図である。図12に示す貫通穴121Bは、貫通穴121Bにおいてその周方向に凸部121Baが設けられている。また、当該凸部121Baは負極側に設けられていることから、貫通穴121Bの開口は、負極側よりも正極側の方が広い。
【0149】
また、このような貫通穴121Bの形状から、導通体180Bは、逆に正極側の端面の方が負極側の端面よりも大きくなるように形成されている。そして、貫通穴121Bに嵌め合わせて封止された場合に気密が保たれるように、導通体180Bには、その対向面において凸部121Baの位置に合わせた段差が設けられている。
【0150】
なお、図11図12に示した第1の変形例、第2の変形例は、いずれも導通体の正極側の端面の方が負極側の端面よりも大きな面積を備えるような形状であるものとして説明した。但し、導通体の形状が、逆に、負極側の端面の方が正極側の端面よりも大きな面積を備えるような形状であっても構わないことはもちろんである。
【0151】
図13は、本発明の実施の形態における貫通穴121Cと当該貫通穴121Cに挿入される導通体180Cとの形状に関する第3の変形例を示す拡大切断端面図である。すなわち、第3の変形例においては、貫通穴121Cの内部の周方向に凸部が設けられていることは、第2の変形例と同様である。しかし、当該凸部121Caは貫通穴121C内において、基板121の厚み方向の概ね中央に設けられているとともに、正極側及び負極側からテーパ状となるように形成されている。
【0152】
そのため、第3の変形例における導通体180Cは、当該貫通穴121Cの形状に合わせて、両端面のうち一方の端面の方が他方の端面よりも大きな面積を備えているように形成され、断面視略台形状に形成される。そしてこのような導通体180Cが2つ用意され、正極側と負極側、それぞれから貫通穴121Cに嵌め合わせることで貫通穴121aに導通体180Cが挿入される。
【0153】
図14は、本発明の実施の形態における貫通穴121Dと当該貫通穴121Dに挿入される導通体180Dとの形状に関する第4の変形例を示す拡大切断端面図である。第4の変形例は、第3の変形例において示したように、貫通穴121Dの内部の周方向であって、基板121の厚み方向の概ね中央に凸部121Daが設けられている。
【0154】
そのため、貫通穴121Dは、正極側の開口と負極側の開口とは同じ大きさとなっているが、凸部121Daの部分における開口は、正極側、負極側の開口よりも小さくなるように形成されている。
【0155】
また、このような貫通穴121Dの形状から、導通体180Dは、図14に示されるような凸状に形成されている。そして、貫通穴121Dに嵌め合わせて封止された場合に気密が保たれるように、導通体180Dには、その対向面において凸部121Daの位置に合わせた段差が設けられている。
【0156】
以上の第1の変形例ないし第4の変形例における貫通穴及び導通体の組み合わせであっても、加熱処理されることによって設けられた金属層が溶融し互いに接合することで、貫通穴を気密に封止することができる。従って、これにより、正極側から負極側への液洛が生ずることを確実に防止することができる。
【0157】
また、図11ないし図14で示した形状を備える貫通穴及び当該貫通穴の形状に合わせた導通体を用いることによって、たとえ電解液が貫通穴に浸入することが生じたとしても、貫通穴における正極側から負極側へ至る距離、いわゆる沿面距離を十分に確保することができる。そのため、電解液が正極側から負極側に至る時間を遅らせることができ、その分電池性能の維持、長寿命化を図ることができる。
【0158】
なお、上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電板に鉛ではなく他の金属(例えば、アルミニウム、銅、ニッケル)や合金、導電性樹脂を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【符号の説明】
【0159】
100・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
120・・・バイポーラプレート
121・・・バイポーラプレートの基板
121a・・・基板の貫通穴
122・・・バイポーラプレートの枠体
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・金属層
150a・・・第1の金属層
150b・・・第2の金属層
160・・・カバープレート
170・・・接着剤
C・・・セル(セル部材を収容する空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15