(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159965
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】プロペラガード
(51)【国際特許分類】
B63H 5/16 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
B63H5/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064493
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】521152703
【氏名又は名称】株式会社フラクタリー
(71)【出願人】
【識別番号】000230700
【氏名又は名称】日本海工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】阪本 啓志
(72)【発明者】
【氏名】篠井 隆之
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲和
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 泰範
(57)【要約】
【課題】船舶のプロペラおよびプロペラ軸にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制し、これにより船舶の航行性能の低下を抑制するとともに、オペレータによるメンテナンスの頻度を削減して船舶の稼働率を向上させることができるプロペラガードを提供する。
【解決手段】プロペラ72が船体後部に配置され、プロペラ72の一部分または全部が、平面視において、船体10に対して後方および/または側方に突出するように配置されており、プロペラガード80は、プロペラ72を取り囲むとともに、船体10の後端部10BPよりも後方に延びている筒状部81と、筒状部81から連続するように前方に延びており、船体後部における船側部10Sの一部および船底部10BMの一部を覆うように配置される整流部83と、を有し、筒状部81および整流部83は、網目状の部材で構成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進力を発生させるプロペラが船体後部に配置されているとともに、前記プロペラの一部分または全部が、平面視において、前記船体に対して後方および/または側方に突出するように配置された船舶に用いられるプロペラガードであって、
前記プロペラを取り囲むとともに、前記船体の後端部よりも後方に延びている筒状部と、
前記筒状部から連続するように前方に延びており、船体後部における船側部の一部および船底部の一部を覆うように配置される整流部と、を有し、
前記筒状部および前記整流部は、網目状の部材で構成されている、
プロペラガード。
【請求項2】
前記整流部は、平面視において、前記船体の幅方向における寸法が一定、または後方に向かうに従って漸減しながら、前記筒状部に連続するように形成されている、
請求項1に記載のプロペラガード。
【請求項3】
前記整流部は、
前記船体の右舷側の船側部から船底部を介して左舷側の船側部に沿うように、前記船体の幅方向に配置される前縁部と、
前記船体の右舷側の船側部、および前記船体の左舷側の船側部にそれぞれ沿うように配置されるとともに、前記船体の船尾において相互に接続される、上縁部と、
を有する、
請求項1または請求項2に記載のプロペラガード。
【請求項4】
前記筒状部は、後部に開口部を有しており、
前記開口部は、前記網目状の部材で閉鎖させずに開放されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロペラガード。
【請求項5】
前記筒状部は、
後端部に沿って配置される係止部を有し、
前記係止部は、
前記船体の前後方向に突出する複数の凹凸部を有する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロペラガード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に用いられるプロペラガードに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、複数の船体を備え、船体の向きを相互に変更可能である船舶を提案している(特許文献1参照)。この船舶は、自船の位置を移動させる航行動作と、自船の位置を定点に保持する定点保持動作とを切り換えながら、少ないエネルギー消費量で広範囲を移動することができる。
【0003】
航行動作を行う際には、各船体の推進装置の推力を配分したり、各船体を回頭させることで操舵力(回頭モーメント)を発生させ、エネルギー消費量を抑制しながら航行する。
【0004】
また、定点保持動作を行う際には、複数の船体の船体船首方向を非平行とし、船舶の抵抗を増大させて水に対するブレーキ効果を生じさせる。ブレーキ効果によって船舶は風に流されにくくなり、エネルギー消費量を抑制しながら定点保持動作を行うことができる。
【0005】
本願発明者は、特許文献1に記載の船舶を、例えば海洋や湖沼における水中環境調査に利用することを検討している。この場合、船舶は、航行動作を自動操縦によって行い、調査対象の水域を移動する。水中環境調査を行う観測点では、自動操縦によって航行動作から定点保持動作に切り替えを行い、定点保持動作を行いながら水中環境調査を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、水中環境調査等の対象となる水域では、アマモなどの水草が群生している場合がある。アマモは水深1メートルから数メートル程度の水底に生える水草であり、葉は細長く1メートル程度の長さを有している。アマモが群生している場所はアマモ場と呼ばれており、浅瀬のアマモ場ではアマモが水面を覆うように密集している。また、アマモ場以外においても、水中には流れてきた水草など様々なものが浮遊している。
【0008】
一般的な船舶(例えば、搭乗者が操縦する高速艇型の小型船舶)であれば、アマモ等の浮遊物に対してプロペラ径が比較的大きく、回転駆動力も大きい。このため、高速で航走している状態でアマモ場を通過したり、水中の浮遊物に遭遇した場合でも、高速回転するプロペラ自体でアマモ等の浮遊物を切断することができ、航行性能上の大きな問題は生じない。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の船舶は、比較的小型であり、エネルギー消費量を抑制するためプロペラも小径で回転駆動力も大きくない。また、航行動作および定点保持動作においては、推進装置の推力を配分することによって操舵力(回頭モーメント)を発生させる場合があるため、プロペラの回転速度を低速や微速にしたり、正逆回転の切り替えも頻繁に行われる。
【0010】
このため、特許文献1に記載の船舶がアマモ場に進入したり、水中の浮遊物に遭遇した場合には、プロペラでアマモ等の浮遊物を切断することができず、プロペラに絡み付く場合がある。
図12は、特許文献1に記載の船舶のプロペラおよびプロペラ軸にアマモが絡み付いた状態を示している。
図12の状態になると、船舶の航行性能が著しく低下してしまう。この場合、船舶の自動操縦を停止し、オペレータが船舶を回収して絡み付いたアマモをプロペラから除去するメンテナンスを行う必要がある。
【0011】
本願発明者は、プロペラおよびプロペラ軸にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制するため、様々なプロペラガードを取り付けて検討を行った。
図13は、プロペラを取り囲む従来の枠状のプロペラガードを取り付けて検証を行った状態を示している。
図13のプロペラガードは、流木のような浮遊物や、水底の岩石等からプロペラを保護することについては有効である。しかしながら、アマモ等の浮遊物は、プロペラガードの隙間から内側に入り込んでしまうため、プロペラおよびプロペラ軸にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制する効果は十分ではなかった。
【0012】
図14のプロペラガードは、
図13に示した従来のプロペラガードの周囲にネットを取り付けた状態を示している。
図14に示すように、
図13のプロペラガードの周囲にネットを取り付けると、ネットを取り付けない状態と比較して、プロペラおよびプロペラ軸にアマモ等が絡み付くことを低減することができる。しかしながら、プロペラガードに取り付けたネット自体にアマモ等が絡み付く場合や、ネットの網目からプロペラガードの内側にアマモ等が入り込む場合があった。特にネットの内側に一旦入り込んだアマモ等の浮遊物は、ネットの外に排出されにくく、ネット内に蓄積されることとなる。また、ネットが取り付けられているためプロペラおよびプロペラ軸に絡み付いたアマモ等を除去しにくく、オペレータによる除去に手数が必要となる問題がある。
【0013】
また、プロペラガードでアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制するだけでなく、アマモ場を回避するように船舶の航行ルートを選定することも考えられる。しかしながら、アマモ場が発生しやすい水深の水域を回避すると、水中環境調査等の対象となる水域が限定される。また、浅瀬を避けて航行ルートを設定すると航行ルートが遠回りになる場合があり、エネルギー消費量が増大するという問題がある。さらに、この方法では水中に存在する浮遊物を回避することができないという問題もある。
【0014】
本発明の目的は、船舶のプロペラおよびプロペラ軸にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制し、これにより船舶の航行性能の低下を抑制するとともに、オペレータによるメンテナンスの頻度を削減して船舶の稼働率を向上させることができるプロペラガードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のプロペラガードは、
推進力を発生させるプロペラが船体後部に配置されているとともに、前記プロペラの一部分または全部が、平面視において、前記船体に対して後方および/または側方に突出するように配置された船舶に用いられるプロペラガードであって、
前記プロペラを取り囲むとともに、前記船体の後端部よりも後方に延びている筒状部と、
前記筒状部から連続するように前方に延びており、船体後部における船側部の一部および船底部の一部を覆うように配置される整流部と、を有し、
前記筒状部および前記整流部は、網目状の部材で構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプロペラガードによれば、船舶のプロペラおよびプロペラ軸にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制し、これにより船舶の航行性能の低下を抑制するとともに、オペレータによるメンテナンスの頻度を削減して船舶の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、船舶が平行配置となった状態の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1船体の船体船首方向の変更動作を説明する平面図である。
【
図4】
図4は、プロペラガードが装着された船体の平面図である。
【
図5】
図5は、プロペラガードが装着された船体の側面図である。
【
図6】
図6は、プロペラガードが装着された船体の船体後部を示す側面図である。
【
図7】
図7は、プロペラガードが装着された船体の船体後部を示す平面図である。
【
図8】
図8は、プロペラガードが装着された船体の船体後部を後方から見た図である。
【
図9】
図9は、第1定点保持モードにおいて、船舶が非平行配置となった状態の一例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、第2航行モードにおいて、船舶が船体操舵動作を行っている状態の一例を示す平面図である。
【
図11】
図11は、第2航行モードにおいて、船舶が船体操舵動作を行っている状態の一例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、船舶のプロペラおよびプロペラ軸にアマモが絡み付いた状態を示す図である。
【
図13】
図13は、プロペラを取り囲む従来の枠状のプロペラガードを取り付けた状態を示す図である。
【
図14】
図14は、
図13に示した従来のプロペラガードの周囲にネットを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態にかかるプロペラガードは、
推進力を発生させるプロペラが船体後部に配置されているとともに、前記プロペラの一部分または全部が、平面視において、前記船体に対して後方および/または側方に突出するように配置された船舶に用いられるプロペラガードであって、
前記プロペラを取り囲むとともに、前記船体の後端部よりも後方に延びている筒状部と、
前記筒状部から連続するように前方に延びており、船体後部における船側部の一部および船底部の一部を覆うように配置される整流部と、を有し、
前記筒状部および前記整流部は、網目状の部材で構成されている(第1の構成)。
【0019】
上記構成によれば、プロペラガードは、プロペラを取り囲む筒状部と、筒状部から連続するように前方に延びる整流部とを有しており、網目状の部材で構成されている。
このため、アマモ等の浮遊物がプロペラおよびプロペラ軸に絡み付くことを抑制できるとともに、筒状部と整流部が網目状の部材で連続して形成されているため、プロペラガードの筒状部にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制することができる。
また、整流部は、船体後部における船側部の一部および船底部の一部を覆うように配置されているため、船体に沿って前方から後方に流れてくるアマモ等の浮遊物は、整流部の表面に沿って後方に流れることとなり、アマモ等の浮遊物は、整流部にも絡み付きにくい。
また、船舶がプロペラの正逆回転の切り替えを頻繁に行っても、筒状部は、船体の後端部よりも後方に延びており、筒状部の後端とプロペラが離れているため、筒状部の後端からアマモ等の浮遊物を吸い込みにくい。
さらに、筒状部および整流部は、網目状の部材で構成されているため、船舶の抵抗になりにくい。
これにより、船舶のプロペラおよびプロペラ軸にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制することができ、船舶の航行性能の低下を抑制するとともに、オペレータによるメンテナンスの頻度を削減して船舶の稼働率を向上させることができる。
【0020】
上記第1の構成において、
前記整流部は、平面視において、前記船体の幅方向における寸法が一定、または後方に向かうに従って漸減しながら、前記筒状部に連続するように形成されていてもよい(第2の構成)。
【0021】
上記構成によれば、整流部は、平面視において、船体の幅方向における寸法が一定、または後方に向かうに従って漸減しながら、前記筒状部に連続するように形成されている。
このため、船体に沿って前方から後方に流れてくるアマモ等の浮遊物は、整流部の表面に沿って後方に流れやすくなり、アマモ等の浮遊物が整流部および筒状部に絡み付くことを抑制することができる。
【0022】
上記第1または第2の構成において、
前記整流部は、
前記船体の右舷側の船側部から船底部を介して左舷側の船側部に沿うように、前記船体の幅方向に配置される前縁部と、
前記船体の右舷側の船側部、および前記船体の左舷側の船側部にそれぞれ沿うように配置されるとともに、前記船体の船尾において相互に接続される、上縁部と、
を有してもよい(第3の構成)。
【0023】
上記構成によれば、整流部は、船体の右舷側から船底部を介して左舷側に配置される前縁部と、船体の右舷側および左舷側の船側部にそれぞれ沿うように配置される上縁部と、を有している。
このため、整流部の前縁部、および上縁部からアマモ等の浮遊物をプロペラガード内に吸い込むことを抑制することができる。
【0024】
上記第1から第3の構成において、
前記筒状部は、後部に開口部を有しており、
前記開口部は、前記網目状の部材で閉鎖させずに開放されていてもよい(第4の構成)。
【0025】
上記構成によれば、筒状部は後部に開口部を有しており、開口部は、閉鎖されずに開放されている。
このため、プロペラを逆転させた際などに筒状部に入り込んだアマモ等の浮遊物が、プロペラを正転させた際に筒状部から排出されやすくなり、プロペラガード内にアマモ等の浮遊物が蓄積されないようにすることができる。
【0026】
上記第1から第4の構成において、
前記筒状部は、
後端部に沿って配置される係止部を有し、
前記係止部は、
前記船体の前後方向に突出する複数の凹凸部を有してもよい(第5の構成)。
【0027】
上記構成によれば、筒状部の後端部に係止部が配置されており、係止部は、船体の前後方向に突出する複数の凹凸部を有する。
このため、プロペラを逆転させた際に筒状部付近のアマモ等の浮遊物が吸い寄せられても、アマモ等の浮遊物が係止部に係止されて筒状部の内側に入り込みにくくすることができる。
また、係止部に係止されたアマモ等の浮遊物は、プロペラを正転させた際に係止部から外れて排出される。
これにより、船舶のプロペラおよびプロペラ軸にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制することができる。
【0028】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係るプロペラガード80、およびプロペラガード80が用いられる船舶100について詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0029】
[船舶の全体構成]
まず、船舶100の全体構成について説明する。
図1は、船舶100が平行配置PAとなった状態の一例を示す平面図である。本実施形態にかかるプロペラガード80が用いられる船舶100は、自動運転を行いながら、例えば海洋や湖沼において水中環境調査等の作業を実行する。船舶100は、自動運転によって定点保持動作および航行動作を行うことができる。定点保持動作は、自船の位置を定点に保持させる動作である。航行動作は、定点保持動作させずに自船の位置を移動させる動作である。また、船舶100は、定点保持動作および航行動作について、それぞれ複数の運転モードを有している。
【0030】
図1に示すように、船舶100は、4体の船体10(第1船体101、第2船体102、第3船体103、第4船体104)、被支持体30、船体方向変更部50、推進装置70、および制御部180を備えている。本実施形態では、第3船体103および第4船体104にプロペラガード80が設けられている。以下の説明において、第1船体101、第2船体102、第3船体103、および第4船体104を区別せずに説明する場合には、単に船体10という場合がある。
【0031】
本実施形態では、各船体10の向きは固定されておらず、運転モードに対応させて各船体10の姿勢を変更することが可能である。各船体10の姿勢が変化するため、船舶100の前後左右と、各船体10の前後左右の関係は一定ではない。そこで船舶100と各船体10のそれぞれの向きを区別するため、以下のように定義する。
【0032】
船舶100の前部は、各船体10の向きに関わらず、第1船体101および第2船体102が配置されている側とし、船舶100の前方を矢印Fで示す。船舶100の後部は、第3船体103および第4船体104が配置されている側とし、船舶100の後方を矢印Bで示す。船舶100の左部は、第1船体101および第4船体104が配置されている側とし、船舶100の左方を矢印Lで示す。船舶100の右部は、第2船体102および第3船体103が配置されている側とし、船舶100の右方を矢印Rで示す。また、特に船舶100の前部が向く方向を船舶船首方向(ヘディング)HDとし、矢印HDで示す。船舶船首方向HDは、船舶100の前方Fと一致している。被支持体30には、船舶船首方向HDを示す三角形の表示30BAを付している。また、船舶100の上方を矢印U、船舶100の下方を矢印Dで示す。
【0033】
また、船舶100の進行方向に対する前方を矢印TF、船舶100の進行方向に対する後方を矢印TB、船舶100の進行方向に対する右方を矢印TR、船舶100の進行方向に対する左方を矢印TLでそれぞれ示す。
【0034】
船舶100は、運転モードによっては船舶100の前方F、後方B、右方R、左方L、斜め方向に直進および旋回が可能である。このため、船舶100の前方F、後方B、右方R、左方Lと、船舶100の進行方向の前方TF、後方TB、右方TR、左方TLは、必ずしも一致しない。
【0035】
各船体10には船首尾方向を示す仮想の船首尾線CLが示されている。各船体10の船首尾線CLを船首10F側に延ばした方向を船体船首方向DFとし、船体船首方向DFと反対の方向を船体船尾方向DBとする。各船体10の船首10F側には、船首10Fの向きを示す略三角形の表示10FAを付している。
【0036】
本実施形態では、各船体10は、同一の船型を有している。各船体10の船型は排水量型であり、船首尾線CLに対して対称である。船幅は、船首尾線CLの中央部Wにおいて最も広くなっている。船首尾線CLの長さは、船幅に対して長く、各船体10は平面視で長細い船型を有している。このため、各船体10が船体船首方向DFまたは船体船尾方向DBに移動する場合に流体から受ける抵抗は、比較的小さい。一方、船首尾線CLに交差する方向(斜め方向や横方向)に移動する場合に流体から受ける抵抗は、船体船首方向DFおよび船体船尾方向DBに移動する場合に受ける抵抗よりも大きい。
【0037】
被支持体30は、各船体10によって支持されている。被支持体30は、被支持体本体31およびアーム33を有している。
【0038】
被支持体本体31は、被支持体30の基体をなす部分である。被支持体本体31の中央部には、上下方向に貫通する作業口32が形成されている。作業口32は、例えば、水中環境調査等で用いる機器を昇降させる場合に用いられる。被支持体本体31の内部には、収容空間が構成されている。収容空間には、制御部180、および電源装置(図示せず)等が収容されている。被支持体本体31の上面には、現在位置情報取得部190が設けられている。現在位置情報取得部190は、GPSセンサ、方位センサ、風向・風速センサ、潮流センサ等を有している。
【0039】
アーム33は、各船体10に対応して設けられている。アーム33は、各船体10に設けられている支持軸51を保持して、各船体10と被支持体本体31を接続している。
【0040】
船体方向変更部50は、各船体10の船体船首方向DFを、船舶船首方向HDおよび他の船体船首方向DFに対して変更可能に構成されている。各船体10はそれぞれ船体船首方向DFを水平方向に全方位(360度)に変更可能である(
図3参照)。船体方向変更部50には支持軸51が上下方向に立設されている。各船体10は、支持軸51を介して被支持体30に接続されている。船舶100の前部側と後部側における各支持軸51の間隔、船舶100の右部側と左部側における各支持軸51の間隔は、各船体10の船体船首方向DFを変化させた場合に、各船体10が相互に干渉しないように設定されている。船体方向変更部50の動作は、制御部180によって制御されている。
【0041】
推進装置70は、各船体10に配置されており、各船体10の推進力を発生させる。推進装置70は、プロペラ軸71、プロペラ72、およびモータ73を有している。
【0042】
プロペラ72は、各船体10の船尾10B側に配置されており、プロペラ軸71の端部に取付けられている。
【0043】
モータ73は、プロペラ軸71に接続されており、プロペラ72を回転させて推力を発生させる。モータ73の回転数を変化させることで、各船体10の推力の大きさを変化させる。モータ73の回転方向を正逆に変化させることで、各船体10の推力を船体船首方向DFまたは船体船尾方向DBに切り換える。各船体10のモータ73を駆動させる電力は、被支持体30に搭載された電源装置(図示せず)から供給される。推進装置70の動作は、制御部180によって制御されている。
【0044】
制御部180は、船舶100の自動運転を制御する船舶制御システムを構成する。制御部180は、各船体10に設けられている船体方向変更部50および推進装置70に接続されている。制御部180は、各船体10の船体方向変更部50および推進装置70を制御することにより、船舶100の自動運転を制御する。
【0045】
本実施形態の船舶100は、操舵装置を備えておらず、各船体10の推進装置70による推力の配分によって操舵力(回頭モーメント)を発生させ、船舶100の移動方向を制御することができる。また、本実施形態の船舶100は、潮流・風等の外乱に対応させるため、船体操舵動作および潮流対応動作を行うこともできる。船体操舵動作は、船体の方向を変化させることによって操舵力(回頭モーメント)を発生させる動作である。潮流対応動作は、潮流の流向に合わせて船体の方向を変化させる動作である。船舶100は、各運転モードを切り替えながら、複数の目標位置に順次移動し、各目標位置で定点保持を行うように水中環境調査等の作業を実行する。
【0046】
図2は、
図1のA―A線における側面断面図である。
図2では、第1船体101および第4船体104の内部と、被支持体30が見えている。各船体10の内部には、主に船体方向変更部50、および推進装置70が設けられている。
【0047】
船体方向変更部50は、支持軸51、軸受け部53、およびモータ55を有している。軸受け部53は、船体10の内部に固定されている。支持軸51は、下部が軸受け部53によって回転可能に支持されており、上部は被支持体30のアーム33に固定されている。このため、船体10は、支持軸51およびアーム33に対して回転可能である。
【0048】
モータ55は、軸受け部53とともに船体10の内部に固定されている。モータ55の回転軸551には第1ギヤ571が取り付けられている。支持軸51の下部には、第2ギヤ572が取り付けられている。第1ギヤ571と第2ギヤ572は噛み合わされており、モータ55の回転軸551の回転力が支持軸51に伝達されるように構成されている。モータ55の回転軸551を回転させると、その回転力により、軸受け部53、モータ55および船体10が支持軸51を中心として回転する。
【0049】
モータ55は、例えばサーボモータやステッピングモータであり、回転軸551の回転角度を制御可能である。回転軸551の回転角度を制御して、支持軸51回りの回転角度を制御することにより、船体10の姿勢(船体船首方向DFの方向)を制御することができる。各船体10のモータ55を駆動させる電力は、被支持体30に搭載された電源装置(図示せず)から供給される。
【0050】
図3は、第1船体101の船体船首方向DFの変更動作を説明する平面図である。船体船首方向DFの変更動作について、第1船体101を例に挙げて説明する。
【0051】
図3では、第1船体101が姿勢101PAから姿勢101NPAに変化する状態を示している。姿勢101PAは、
図1に示した平行配置PAにおける第1船体101の姿勢である。姿勢101NPAは、
図9に示した非平行配置NPAにおける第1船体101の姿勢である。変更前の状態である姿勢101PAでは、船体船首方向DFが船舶船首方向HDと平行になっている。変更後の状態である姿勢101NPAでは、船体船首方向DFが船舶100の中心(平面視で被支持体30の中心)SQC方向を向いている。
【0052】
姿勢101PAから姿勢101NPAへの変更では、船体船首方向DFは、支持軸51を中心に右回りに角度θ1=135度変更されている。この船体船首方向DFの変更は、第1船体101に設けられた船体方向変更部50を制御部180で制御することによって実行される。第1船体101と同様に、第2船体102、第3船体103、および第4船体104についても各船体10に設けられた船体方向変更部50を制御部180で制御することによって船体船首方向DFの変更が実行される。なお、船体方向変更部50の動作は、
図3に示した動作に限定されない。船体船首方向DFの変更角度θ1は、任意の角度に設定することが可能である。
【0053】
[プロペラガード]
次に、本実施形態に係るプロペラガード80の構成について詳しく説明する。
図1を参照して説明したように、本実施形態では、第3船体103および第4船体104にプロペラガード80が設けられている。以下では、プロペラガード80が取り付けられている船体として第3船体103および第4船体104を区別せずに船体10として説明する。なお、プロペラガード80を取り付ける船体10は、第3船体103および第4船体104に限定されず、船舶100を構成する4体の船体10(第1船体101、第2船体102、第3船体103、第4船体104)全てに取り付けてもよい。また、4体の船体10(第1船体101、第2船体102、第3船体103、第4船体104)の全てではなく、一部のみに取り付けてもよい。
【0054】
以下のプロペラガード80の説明においては、船舶100の前後左右と、船体10の前後左右の関係は一致しているものとする。すなわち、船舶100の船舶船首方向HD(前方F)と、船体10の船体船首方向DFが一致しているものとして説明する。
【0055】
図4は、プロペラガード80が装着された船体10の平面図である。
図5は、プロペラガード80が装着された船体10の側面図である。
図4および
図5に示すように、本実施形態では、船体10の船型は排水量型であり、船首尾線CLに対して対称である。船幅は、船首尾線CLの中央部Wにおいて最も広くなっている。船首尾線CLの長さは、船幅に対して長く、各船体10は平面視で長細い船型を有している。水面位置WLにおける船首尾線CL方向の長さをLW(
図5参照)とし、水面位置における船幅方向の長さをBW(
図8参照)として、BW/LWは、1.0以下であればよく、0.5以下であれば好ましい。一例として本実施形態では、LWは約1.2m、BWは約0.3mとしており、BW/LWは約0.25となっている。船首10F側である船体前部の船型と、船尾10B側である船体前部の船型は、中央部Wに対して略対称であり、船幅は、中央部Wから船首10Fおよび船尾10Bに向かうにしたがって漸次細くなっている。
【0056】
船舶100の推進力を発生させるプロペラ72は、船体後部に配置されている。
図4に示すように、平面視において、プロペラ72の一部分が、船体10に対して後方および側方に突出するように配置されている。プロペラ72がこのように船体10に対して突出するように配置されているのは、船体10の船型が排水量型であり、船幅が中央部Wから船尾10Bに向かうにしたがって漸次細くなっているためであることと、船体10に操舵装置が設けられていないためである。プロペラ72がこのように配置されていることも、プロペラ72にアマモ等の浮遊物が絡み付く一因となっている。つまり、プロペラ72が船体10から突出していることにより、船体10に沿って前方から後方に流れてくるアマモ等の浮遊物が、船体10に遮られずにプロペラ72に絡み付くためである。本実施形態では、プロペラ72の直径は、約80mmとしている。プロペラガード80は、船体10の船体後部に取り付けられており、プロペラ72だけでなく、船体後部の船底部および船側部を覆うように取り付けられている。
【0057】
図6は、プロペラガード80が装着された船体10の船体後部を示す側面図である。
図7は、プロペラガード80が装着された船体10の船体後部を示す平面図である。
図8は、プロペラガード80が装着された船体10の船体後部を後方から見た図である。
【0058】
図6、
図7および
図8に示すように、プロペラガード80は、筒状部81および整流部83を有している。筒状部81および整流部83は、網目状の部材で構成されている。本実施形態では、筒状部81および整流部83は、網目が形成されたシート状材によって一体に構成されている。側面視(
図6参照)において、プロペラガード80の上部と船体10の船尾10Bとの交点801より後方の部分を筒状部81とし、交点801よりも前方の部分を整流部83としている。
【0059】
網目状の部材として、例えば、網目が形成されたポリエチレン製のシート状材を用いることができる。網目の大きさ(ピッチ)は、アマモ等の浮遊物が入り込みにくい大きさが好ましく、例えば、1mmから20mm、好ましくは、3mmから10mm、より好ましくは、5mmから7mm程度の大きさのものを選択することができる。シート状材として、例えば、ダイプラ株式会社のトリカルネット(登録商標)のうち、網目の大きさ(ピッチ)が6.4mm×6.4mmのものや、10mm×10mmのものなどを使用することができる。
【0060】
網目状の部材の網目の大きさ(ピッチ)が20mmを超えると、網目からプロペラガード80の内側にアマモ等の浮遊物が入り込みやすくなったり、網目にアマモ等の浮遊物が絡み付きやすくなる。反対に、網目の大きさ(ピッチ)が1mmより小さくなると、プロペラガード80が受ける水の抵抗が大きくなり、特に船体10の向きを変える際など、プロペラガード80の側方から水の流れを受ける際に抵抗が増大する。
【0061】
図6および
図7に示すように、筒状部81は、プロペラ72を取り囲むとともに、船体10の後端部10BPよりも後方に延びている。本実施形態では、プロペラ72が船体10の後端部10BPよりも後方に突出しているため、筒状部81は、プロペラ72の後端部よりも後方に延びるように長さが設定されている。筒状部81の後端とプロペラ72が離れていることにより、船舶100が航行動作および定点保持動作を行う際にプロペラ72の正逆回転の切り替えを頻繁に行っても、筒状部81の後端からアマモ等の浮遊物を吸い込みにくくすることができる。
【0062】
図8に示すように、筒状部81は、後部に開口部811を有している。開口部811は、網目状の部材で閉鎖させずに開放されている。このため、プロペラ72を逆転させた際などに筒状部81にアマモ等の浮遊物を吸い込んだとしても、プロペラ72を正転させた際に筒状部81から排出されやすくなり、プロペラガード80内にアマモ等の浮遊物が蓄積されないようにすることができる。なお、本実施形態では、筒状部81を円筒状としたが、円筒状に限定されず、断面形状が楕円形や他の形状であってもよい。また、断面形状が一定でなくてもよく、切断位置によって異なる断面形状を有していてもよい。
【0063】
また、
図6および
図7に示すように、開口部811の周囲には、係止部813が設けられている。係止部813は、船体10の前後方向に突出する複数の凹凸部815を有している。本実施形態では、網目に対して斜めになるように網目状のシート状材を切断することにより、開口部811の周囲に凹凸部815を形成している。係止部813を形成することにより、プロペラ72を逆転させた際に筒状部81付近のアマモ等の浮遊物が吸い寄せられても、アマモ等の浮遊物が係止部813に係止されて筒状部81の内側に入り込みにくくすることができる。また、係止部813に係止されたアマモ等の浮遊物は、プロペラ72を正転させた際に係止部813から外れるため、プロペラガード80にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制することができる。
【0064】
図6および
図7に示すように、整流部83は、筒状部81から連続するように前方に延びている。整流部83は、船体後部における右舷側の船側部(右船側部10SR)と左舷側の船側部(左船側部10SL)のそれぞれ一部、および船底部10BMの一部を覆うように配置されている。
【0065】
筒状部81と整流部83が網目状のシート状材で連続して形成されているため、プロペラガード80の筒状部にアマモ等の浮遊物が絡み付くことを抑制することができる。また、整流部83が、右船側部10SRと左船側部10SLのそれぞれ一部、および船底部10BMの一部を覆うように配置されているため、船体10に沿って前方から後方に流れてくるアマモ等の浮遊物は、整流部83の表面に沿って後方に流れることとなり、アマモ等の浮遊物が整流部83に絡み付きにくくすることができる。
【0066】
整流部83は、前縁部831、および上縁部833を有している。前縁部831は、船体10の右舷側の船側部(右船側部10SR)から船底部10BMを介して左舷側の船側部(左船側部10SL)に沿うように、船体10の幅方向に配置されている。整流部83は、前縁部831が船体10に密着するように船体10に取り付けられている。
【0067】
上縁部833は、右上縁部833R、および左上縁部833Lを有している。右上縁部833Rは、船体10の右船側部10SRに沿うように配置されており、左上縁部833Lは、船体10の左船側部10SLに沿うように配置されている。整流部83は、右上縁部833Rおよび左上縁部833Lが船体10に密着するように船体10に取り付けられている。また、右上縁部833Rおよび左上縁部833Lは、プロペラガード80の上部と船体10の船尾10Bの交点801において相互に接続され、整流部83は筒状部81に連続している。
【0068】
前縁部831、および上縁部833(右上縁部833Rおよび左上縁部833L)がそれぞれ船体10に沿うように配置されているため、整流部83と船体10の隙間からアマモ等の浮遊物をプロペラガード80内に吸い込むことを抑制することができる。
【0069】
図7に示すように、整流部83は、平面視において、船体10の幅方向における寸法が後方に向かうに従って漸減しながら、筒状部81に連続するように形成されている。具体的には、整流部83の前縁部831における整流部83の幅をL1とし、整流部83の後端部となる、交点801における整流部83の幅をL2とすると、整流部83は、船体10の幅方向における寸法をL1からL2まで漸減するように形成されている。
【0070】
このため、船体10に沿って前方から後方に流れてくるアマモ等の浮遊物は、整流部83の表面に沿って後方に流れやすくなり、アマモ等の浮遊物が整流部83および筒状部81に絡み付くことを抑制することができる。なお、整流部83は、平面視において、船体10の幅方向における寸法を漸減させずに一定にしてもよい。また整流部83の幅方向の寸法が全域において漸減または一定でなくてもよく、幅方向の寸法が実質的に漸減または一定であればよい。
【0071】
船体10の長さ方向における整流部83の長さは特に限定されないが、整流部83の長さは、船体10の長さの10%から20%程度としてもよい。本実施形態では、整流部83の長さは、船体10の長さの約20%である。また、前縁部831の位置も特に限定されないが、本実施形態では、前縁部831の位置は、船体10の後端部10BPから船体10の長さの約20%前方の位置である。
【0072】
[船舶の動作]
次に、各船体10が各運転モードにおいてとりうる配置および動作の一例について簡単に説明する。
図1は、第1航行モードにおいて、船舶100が平行配置PAとなった状態の一例を示す平面図である。
図9は、第1定点保持モードにおいて、船舶100が非平行配置NPAとなった状態の一例を示す平面図である。
図10および
図11は、第2航行モードにおいて、船舶100が船体操舵動作を行っている状態の一例を示す平面図である。
【0073】
図1に示すように、平行配置PAは、各船体10の船体船首方向DFが相互に平行となるように配置された状態である。平行配置PAは、主に、風による外乱が基準未満の状態において、船舶100が航行動作を行う場合の姿勢である(第1航行モード)。この状態で各船体10の推進装置70の推力の配分を制御することにより、船舶100の前方Fおよび後方Bへの推進力と、右方Rおよび左方Lへの操舵力(回頭モーメント)を発生させる。このため、船舶100は、前方Fおよび後方Bへの移動と、右方Rおよび左方Lへの旋回を行うことが可能である。
【0074】
図9に示すように、非平行配置NPAは、各船体10の船体船首方向DFが他の船体船首方向DFに対して非平行とされた状態である。
図9では、各船体10は、船首尾線CLが平面視で略X字状となるように配置されている。
【0075】
非平行配置NPAは、主に、潮流による外乱が基準未満の状態において、船舶100が定点保持動作を行う場合の姿勢である(第1定点保持モード)。非平行配置NPAの状態では、船舶100は、どの方向に移動する場合においても抵抗が大きくなっており、風による外乱がある場合でも定点から移動しにくくなるブレーキ効果を生じさせる。この状態で各船体10の推進装置70による推力の配分を制御することにより、船舶100の移動方向を船舶100の前方F、後方B、右方R、左方L、および斜め方向を含む水平方向に全方位(360度)に自在に制御することが可能である。
【0076】
図10および
図11は、船舶100が船体操舵動作を行う状態の一例を示している。船体操舵動作は、主に、風や潮流による外乱が基準以上の状態において、船舶100が定点保持動作および/または航行動作を行う際に実行される動作である(第2航行モード)。
【0077】
図10に示す船舶100では、進行方向を矢印TD1で示しており、操舵用船体10S(第1船体101)の船体船首方向DFを進行方向TD1に対して左方TLに向けて変化させていることにより、第1船体101は、船舶100を左方TLに旋回させる操舵力(回頭モーメント)を発生させている。
【0078】
図11に示した船舶100では、前方TFに配置される操舵用船体10S(第1船体101、第2船体102)の船体船首方向DF、および、後方TBに配置される操舵用船体10S(第3船体103、第4船体104)の船体船首方向DFを互いに逆位相に変化させている。このため、
図11に示した船舶100は、
図10に示した船舶100よりも大きな操舵力(回頭モーメント)を発生させている。
【0079】
なお、船体操舵動作を行う場合は、各船体10の推進装置70の推力は、操舵のために配分を制御する必要はないが、操舵力を発生させるように推力を配分してもよい。
【0080】
[変形例]
本発明に係る船舶は、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば、複数の船体のうち、一部の船体に推進装置が設けられている場合は、推進装置が設けられている船体にプロペラガードを装着すればよい。
【0081】
本実施形態の船舶は、自動運転を行うとしたが、外部から無線通信等によって制御されてもよい。また、一部または全部の運転をオペレータによる操縦としてもよい。例えば、オペレータが定点保持動作の操作を行ってもよい。
【0082】
本実施形態では、船舶は4体の船体を有する構成としたが、2体、3体、または5体以上の船体10を有する構成としてもよい。
【0083】
本実施形態では、水中環境調査を自動運転で行う小型の船舶について説明したが、大きさは限定されるものではない。例えば、作業員が搭乗して各種作業を行うことができる大きさや設備を備えた船舶であってもよい。また、水中環境調査を行う位置に運搬し、定点保持動作のみを行って、水中環境調査等を行うようにしてもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
100 船舶
10 船体
10BP 後端部
10S 船側部
10BM 船底部
72 プロペラ
80 プロペラガード
81 筒状部
83 整流部