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特開2022-160063回転コネクタの回転量検出装置、回転量検出方法および回転量検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160063
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】回転コネクタの回転量検出装置、回転量検出方法および回転量検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20221012BHJP
   B62D 1/04 20060101ALI20221012BHJP
   H01R 35/04 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
G01D5/20 J
B62D1/04
H01R35/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064574
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 薫
(72)【発明者】
【氏名】中村 優斗
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良征
(72)【発明者】
【氏名】荒木 真哉
【テーマコード(参考)】
2F077
3D030
【Fターム(参考)】
2F077AA43
2F077CC02
2F077FF03
2F077FF16
2F077TT66
2F077WW02
3D030DA82
3D030DB25
(57)【要約】
【課題】回転コネクタが適用される回転部品を有する機器において、専用のセンサを用いることなく、回転部品の回転量を検出することのできる回転コネクタの回転量検出装置を提供する。
【解決手段】導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出部120と、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの複数種類の回転量のそれぞれにおける、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データを記憶する記憶部130と、検出部120によって検出された特性インピーダンスの変化に関する検出データと、記憶部130に記憶された複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて検出データに対応する固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの回転量を特定する特定部140と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と、前記固定側部材に対して回転自在な回転側部材と、導体を絶縁材料によって覆うことによって形成され、前記固定側部材と前記回転側部材との間に形成される環状の収容空間に積層した状態で収容され、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブルと、を備えた回転コネクタの回転量検出装置であって、
前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出部と、
前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データを記憶する記憶部と、
前記検出部によって検出された特性インピーダンスの変化に関する検出データと、前記記憶部に記憶された前記複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて前記検出データに対応する前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの回転量を特定する特定部と、を備える
回転コネクタの回転量検出装置。
【請求項2】
前記複数の特性インピーダンス変化データは、前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置から所定回転量毎の、特性インピーダンスの最大値および最小値と、前記フラットケーブルの一端部と他端部との間における前記特性インピーダンスの最大値および最小値のそれぞれが現れる位置と、の関係を表す複数のデータである
請求項1に記載の回転コネクタの回転量検出装置。
【請求項3】
前記回転コネクタは、前記固定側部材に対して前記回転側部材が所定の範囲内で回転可能であり、
前記基準位置は、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転可能な範囲内の中間の位置である
請求項1または2に記載の回転コネクタの回転量検出装置。
【請求項4】
前記検出部、前記記憶部及び前記特定部を含む制御部を備え、
前記制御部は、前記回転コネクタと一体に構成される
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転コネクタの回転量検出装置。
【請求項5】
前記回転コネクタは、前記固定側部材が車両のステアリングコラムに配置され、前記回転側部材が前記車両のステアリングシャフトに配置される
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転コネクタの回転量検出装置。
【請求項6】
固定側部材と、前記固定側部材に対して回転自在な回転側部材と、導体を絶縁材料によって覆うことによって形成され、前記固定側部材と前記回転側部材との間に形成される環状の収容空間に積層した状態で収容され、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブルと、を備えた回転コネクタの回転量検出方法であって、
前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出した特性インピーダンスの変化に関する検出データと、前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて前記検出データに対応する前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの回転量を特定する特定ステップと、を備える
回転コネクタの回転量検出方法。
【請求項7】
固定側部材と、前記固定側部材に対して回転自在な回転側部材と、導体を絶縁材料によって覆うことによって形成され、前記固定側部材と前記回転側部材との間に形成される環状の収容空間に積層した状態で収容され、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブルと、を備えた回転コネクタの回転量検出装置のコンピュータに実行させる回転量検出プログラムであって、
前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出した特性インピーダンスの変化に関する検出データと、前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて前記検出データに対応する前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの回転量を特定する特定ステップと、を実行させる
回転コネクタの回転量検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロールコネクタとして用いられる回転コネクタの回転量検出装置、回転量検出方法および回転量検出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定側部材と、固定側部材に対して回転自在な回転側部材と、導体を絶縁材料によって覆うことによって形成され、固定側部材と回転側部材との間に形成される環状の収容空間に積層した状態で収容される複数のフラットケーブルと、を備えた回転コネクタが知られている。
【0003】
回転コネクタは、車両本体側に設けられた機器とステアリングホイール側に設けられた機器との間で電力や電気信号を伝送するために、車両本体側のステアリングコラムとステアリングホイール側の回転部品としてのステアリングシャフトとの連結部分に設けられる所謂ステアリングロールコネクタとして車両に適用されている。
【0004】
回転コネクタが適用される車両は、走行の制御および車両に搭載された機器の制御を行う際に、車両本体に対するステアリングシャフトの回転角度の情報が必要となる場合があるため、ステアリングコラムに対するステアリングシャフトの回転角を検出するための操舵角センサを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-322794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
操舵角センサは、ステアリングシャフトの外周部に取り付けられる大径の歯車を有する回転角度検出部と、この回転角度検出部の大径の歯車に噛み合う小径の歯車を有するMRセンサ部と、から構成されている。このため、回転コネクタが適用される車両は、ステアリングシャフトに回転コネクタおよび操舵角センサの構成部品が取り付けられることになり、ステアリングシャフトに取り付けられる部品点数が多く、ステアリングシャフトの周りの構造が複雑となるため、製造コストが高くなるおそれがある。
【0007】
本発明の目的とするところは、回転コネクタが適用される回転部品を有する機器において、専用のセンサを用いることなく、回転部品の回転量を検出することのできる回転コネクタの回転量検出装置、回転量検出方法および回転量検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転コネクタの回転量検出装置は、固定側部材と、前記固定側部材に対して回転自在な回転側部材と、導体を絶縁材料によって覆うことによって形成され、前記固定側部材と前記回転側部材との間に形成される環状の収容空間に積層した状態で収容され、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブルと、を備えた回転コネクタの回転量検出装置であって、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出部と、前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データを記憶する記憶部と、前記検出部によって検出された特性インピーダンスの変化に関する検出データと、前記記憶部に記憶された前記複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて前記検出データに対応する前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの回転量を特定する特定部と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る回転コネクタの回転量検出装置は、前記複数の特性インピーダンス変化データが、前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置から所定回転量毎の、特性インピーダンスの最大値および最小値と、前記フラットケーブルの一端部と他端部との間における前記特性インピーダンスの最大値および最小値のそれぞれが現れる位置と、の関係を表す複数のデータである。
【0010】
また、本発明に係る回転コネクタの回転量検出装置は、前記回転コネクタが、前記固定側部材に対して前記回転側部材が所定の範囲内で回転可能であり、前記基準位置が、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転可能な範囲内の中間の位置である。
【0011】
また、本発明に係る回転コネクタの回転量検出装置は、前記検出部、前記記憶部及び前記特定部を含む制御部を備え、前記制御部は、前記回転コネクタと一体に構成される。
【0012】
また、本発明に係る回転コネクタの回転量検出装置は、前記回転コネクタが、前記固定側部材が車両のステアリングコラムに配置され、前記回転側部材が前記車両のステアリングシャフトに配置される。
【0013】
また、本発明に係る回転コネクタの回転量検出方法は、固定側部材と、前記固定側部材に対して回転自在な回転側部材と、導体を絶縁材料によって覆うことによって形成され、前記固定側部材と前記回転側部材との間に形成される環状の収容空間に積層した状態で収容され、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブルと、を備えた回転コネクタの回転量検出方法であって、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出した特性インピーダンスの変化に関する検出データと、前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて前記検出データに対応する前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの回転量を特定する特定ステップと、を備える。
【0014】
また、本発明に係る回転コネクタの回転量検出プログラムは、固定側部材と、前記固定側部材に対して回転自在な回転側部材と、導体を絶縁材料によって覆うことによって形成され、前記固定側部材と前記回転側部材との間に形成される環状の収容空間に積層した状態で収容され、前記固定側部材に対する前記回転側部材の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブルと、を備えた回転コネクタの回転量検出装置のコンピュータに実行させる回転量検出プログラムであって、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出した特性インピーダンスの変化に関する検出データと、前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、前記導体によって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて前記検出データに対応する前記固定側部材に対する前記回転側部材の基準位置からの回転量を特定する特定ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転コネクタが適用される回転部品を有する機器において、回転部品の回転量を検出する専用のセンサを用いることなく、回転部品の基準位置からの回転量を検出することが可能となるので、部品点数の低減を図るとともに、小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る回転コネクタの回転量検出装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る回転コネクタの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る回転コネクタの内部構造を説明する斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第1乃至第4フラットケーブルの断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る収容空間における第1乃至第4フラットケーブルの状態を説明する平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る制御部の処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る回転コネクタの回転量を検出する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図7は、本発明の一実施形態を示すものである。図1は回転コネクタの回転量検出装置の構成を示すブロック図であり、図2は回転コネクタの斜視図であり、図3は回転コネクタの内部構造を説明する斜視図であり、図4は第1乃至第4フラットケーブルの断面図であり、図5は収容空間における第1乃至第4フラットケーブルの状態を説明する平面図であり、図6は制御部の処理を示すフローチャートであり、図7は回転コネクタの回転量を検出する方法を説明する図である。
【0018】
本実施形態の回転コネクタの回転量検出装置100は、回転コネクタ1の後述する固定側ハウジングに対する回転側ハウジングの基準位置からの回転量を検出するためのものである。
【0019】
また、回転量検出装置100は、図1に示すように、回転コネクタ1が接続される制御部110を備えている。また、制御部110は、検出部120、記憶部130および特定部140を有している。
【0020】
まず、回転コネクタ1の構成について説明する。
【0021】
回転コネクタ1は、車両本体側のステアリングコラムと、ステアリングホイール側のステアリングシャフトと、の連結部分に設けられる所謂ステアリングロールコネクタとして車両に適用されるものである。回転コネクタ1は、車両本体側に設けられたメインECUと、ステアリングホイール側に設けられ、ステアリングホイール側に配置された電装品を制御するためのステアリングECUと、の間で電気信号を伝送するための通信回路の一部を構成するとともに、車両本体側とステアリングホイール側との間で電力及び電気信号を伝送するためのその他の導電回路の一部を構成している。ここで、回転コネクタ1は、ステアリングホイールおよびタイヤの舵角が0度の状態を基準位置として、右回りおよび左回りにそれぞれ900度の範囲内の回転を許容する。尚、許容される回転角度は、900度以内に限定されるものではない。
【0022】
回転コネクタ1は、図2に示すように、ステアリングコラムに固定される固定側部材としての固定側ハウジング10と、ステアリングシャフトに固定され、固定側ハウジング10に対して回転自在に設けられた回転側部材としての回転側ハウジング20と、図3に示すように、固定側ハウジング10と回転側ハウジング20との間に形成される環状の収容空間Sに収容される複数のフラットケーブル30と、を備えている。
【0023】
固定側ハウジング10は、図2および図3に示すように、ステアリングシャフトが挿通可能な開口が設けられた固定側リング部11と、固定側リング部11の外周側から固定側リング部11に対して垂直に延びる円筒状の外周円筒部12と、を有している。外周円筒部12の外周部には、複数のフラットケーブル30のうち、一部のフラットケーブル30の一端部が接続される第1固定側コネクタ13と、その他のフラットケーブル30一端部が接続される第2固定側コネクタ14と、が設けられている。
【0024】
回転側ハウジング20は、図2に示すように、固定側リング部11と対向するように配置され、ステアリングシャフトが挿通可能な開口が設けられた回転側リング部21と、外周円筒部12と対向するように配置され、回転側リング部21の内周側から回転側リング部21に対して垂直に延びる円筒状の内周円筒部22と、を有している。回転側リング部21の外面には、第1固定側コネクタ13に一端部が接続された一部のフラットケーブル30の他端部が接続される第1回転側コネクタ23と、第2固定側コネクタ14に一端部が接続されたその他のフラットケーブル30の他端部が接続される第2回転側コネクタ24と、が設けられている。
【0025】
収容空間Sは、固定側ハウジング10の固定側リング部11および外周円筒部12、回転側ハウジング20の回転側リング部21および内周円筒部22によって区画されることで、環状に形成される。
【0026】
複数のフラットケーブル30は、図4に示すように、それぞれ、同一の幅方向寸法を有する帯状に形成されている。複数のフラットケーブル30は、図3および図5に示すように、それぞれの一端部が外周円筒部12に固定され、外周円筒部12の内周面に沿って回転側ハウジング20の回転方向の一方に向かって巻き回され、それぞれの中間部が外周円筒部12と内周円筒部22との間においてU字状を成すように反転して回転方向の他方向に巻き回され、それぞれの他端部が内周円筒部22に固定されている。
【0027】
複数のフラットケーブル30は、図4に示すように、第1乃至第4フラットケーブル31,32,33,34(以降、31~34と表記する)を有している。第1乃至第4フラットケーブル31~34は、それぞれ、幅方向に間隔をおいて配置された複数の導体31a,32a,33a,34a(以降、31a~34aと表記する)を、絶縁材料31b,32b,33b,34b(以降、31b~34bと表記する)によって覆うことによって帯状に形成されている。
【0028】
ここで、収容空間Sに収容された第1乃至第4フラットケーブル31~34は、径方向外側において、外周円筒部12側から内周円筒部22側に向かって、第1フラットケーブル31、第2フラットケーブル32、第3フラットケーブル33、第4フラットケーブル34の順に積層された状態となる。また、収容空間Sに収容された第1乃至第4フラットケーブル31~34は、径方向内側において、内周円筒部22側から外周円筒部12側に向かって、第1フラットケーブル31、第2フラットケーブル32、第3フラットケーブル33、第4フラットケーブル34の順に積層された状態となる。さらに、収容空間Sに収容された第1乃至第4フラットケーブル31~34には、図5に示すように、それぞれの中間部側に、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の回転に伴って移動するUターン部31c,32c,33c,34c(以降、31c~34cと表記する)が形成される。したがって、Uターン部31c~34cが、第1乃至第4フラットケーブル31~34のそれぞれの長手方向の中央部に位置する場合には、固定側ハウジング10に対して回転側ハウジング20を一方向及び他方向のそれぞれに同一の角度の回転を許容する。
【0029】
前述の回転コネクタ1において、第1乃至第4フラットケーブル31~34は、収容空間Sに収容されている状態で、部分的に積層される枚数が異なる。例えば、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の回転方向の位置が一方向側端部と他方向側端部との中間位置である場合において、図5の部分aは、積層枚数が4枚である。しかし、図5の部分bは、部分aよりも収容空間Sの径方向内側に位置しており、第1乃至第4フラットケーブル31~34を巻き回す半径が部分aよりも小さいため、第1乃至第4フラットケーブル31~34フラットケーブルの一部が一周以上巻き回されることになり、積層枚数が6枚となる。さらに、図5の部分cは、第1フラットケーブル31のUターン部31cであるため、フラットケーブルの積層枚数が1枚となる。
【0030】
また、収容空間S内の第1乃至第4フラットケーブル31~34は、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の回転量の変化に応じて、各部分において積層枚数が変化する。例えば、図5において、固定側ハウジング10に対して回転側ハウジング20を右回り(時計回り)に回転させると、径方向外側において巻き回される第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が多くなる方向に変化する。また、径方向内側において巻き回される第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数は、少なくなる方向に変化する。さらに、第1乃至第4フラットケーブル31~34の一端部と他端部との間の積層枚数が1枚の部分は、収容空間S内を右回り(時計回り)に移動する。
【0031】
第1乃至第4フラットケーブル31~34の導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスは、インダクタンス及び静電容量のそれぞれの変化に伴って変化する。固定側ハウジング10に対して回転側ハウジング20が回転すると、隣り合う第1乃至第4フラットケーブル31~34が近づいたり離れたりすることによって、導体31a~34aによって構成される伝送線路上のインダクタンス及び静電容量が変化し、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスが変化する。
【0032】
制御部110は、CPU、ROM、RAM等を有する。制御部110は、入力側に接続された装置から入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0033】
また、制御部110は、図2図3および図5に示すように、回転コネクタ1の固定側ハウジング10に設置され、回転コネクタ1と一体に形成されている。
【0034】
検出部120は、第1乃至第4フラットケーブル31~34のいずれかにおける、いずれかの導体31a~34aに対して、ステップ信号を入力するとともに、入力したステップ信号の反射波を観測する、所謂TDR(Time Domain Reflectmetry:時間領域反射)法による特性インピーダンスの測定を行う。検出部120は、TDRの測定結果における時間を距離に換算することができ、導体31a~34aのいずれかによって構成される伝送線路上の任意の位置における特性インピーダンスの大きさを取得することが可能である。検出部120は、導体31a~34aのいずれかによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する。
【0035】
記憶部130は、ステアリングホイールおよびタイヤの舵角が0度の状態を基準位置として、固定側ハウジング10に対して回転側ハウジング20の右回りおよび左回りにそれぞれ900度の範囲内における、例えば、0.5度毎の導体31a~34aのいずれかによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データが記憶されている。具体的に説明すると、記憶部130には、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が1枚となるUターン部31c~34cに対応する特性インピーダンスの最大値と、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が6枚となる部分(図5の部分b)に対応する特性インピーダンスの最小値と、第1乃至第4フラットケーブル31~34の一端部と他端部との間における特性インピーダンスの最大値および最小値のそれぞれが現れる位置と、の関係を表す複数のデータが特性インピーダンス変化データとして記憶されている。
【0036】
特定部140は、検出部120によって検出された特性インピーダンスの変化に関する検出データと、記憶部130に記憶された複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて検出データに対応する固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの回転量を特定する。
【0037】
以上のように構成された回転コネクタ1の回転量検出装置100において、制御部110は、図6に示すように、所定時間毎に、検出部120において、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する(ステップS1)。また、制御部110は、図6に示すように、特定部140において、検出部120において検出した特性インピーダンスの変化に関する検出データと、記憶部130に記憶されている複数の特性インピーダンス変化データと、を比較し、検出データに相当する特性インピーダンス変化データを抽出し、抽出した特性インピーダンス変化データに対応付けられた基準位置からの回転量を特定する(ステップS2)。
【0038】
ここで、回転コネクタ1の基準位置からの回転量を検出する方法を、図7を用いて説明する。図7のグラフでは、縦軸が特性インピーダンス(Ω)の大きさであり、横軸が経過時間(s)である。グラフの横軸は、経過時間(s)を表すとともに、左側の端部をパルス信号が入力される導体31aの固定側ハウジング10側の端部とし、右側の端部を導体31aの回転側ハウジング20側の端部とし、右側の端部と左側の端部との間が、固定側ハウジング10側の端部からの距離を表している。ここでは、検出部120においてパルス信号を入力する導体を、第1フラットケーブル31の導体31aであるものとして説明する。
【0039】
図7(b)には、ステアリングホイールSWおよびタイヤTの舵角が0度である基準位置における特性インピーダンスの変化を表すグラフが示されている。図7(b)のグラフは、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が1枚となるUターン部31cに対応する特性インピーダンスが最大となる部分Pが、導体31aの長さ方向の中央部に位置していることを示している。また、図7(b)のグラフは、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が6枚となる部分に対応する特性インピーダンスが最小となる部分Vが、導体31aの長さ方向の固定側ハウジング10側に位置していることを示している。
【0040】
また、図7(a)には、ステアリングホイールSWを基準位置から左方向に720度回転させたときの特性インピーダンスの変化を表すグラフが示されている。図7(a)のグラフは、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が1枚となるUターン部31cに対応する特性インピーダンスが最大となる部分Pが、導体31aの長さ方向の固定側ハウジング10側に位置していることを示している。また、図7(a)のグラフは、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が6枚となる部分に対応する特性インピーダンスが最小となる部分Vが、導体31aの長さ方向の固定側ハウジング10側に位置していることを示している。
【0041】
さらに、図7(c)には、ステアリングホイールSWを基準位置から右方向に720度回転させたときの特性インピーダンスの変化を表すグラフが示されている。図7(c)のグラフは、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が1枚となるUターン部31c対応する特性インピーダンスが最大となる部分Pが、導体31aの長さ方向の回転側ハウジング20側に位置していることを示している。また、図7(c)のグラフは、第1乃至第4フラットケーブル31~34の積層枚数が6枚となる部分に対応する特性インピーダンスが最小となる部分Vが、導体31aの長さ方向の固定側ハウジング10側に位置していることを示している。
【0042】
即ち、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの回転量が変化すると、特性インピーダンスが最大となる積層枚数が1枚のUターン部31cと、特性インピーダンスが最小となる積層枚数が6枚の部分と、の位置関係が変化する。このため、特定部140では、特性インピーダンスが最大となる部分Pと、特性インピーダンスが最小となる部分Vと、のそれぞれの位置に基づいて、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの回転量を特定する。
【0043】
このように、本実施形態の回転コネクタ1の回転量検出装置100によれば、固定側ハウジング10と、固定側ハウジング10に対して回転自在な回転側ハウジング20と、導体31a~34aを絶縁材料31b~34bによって覆うことによって形成され、固定側ハウジング10と回転側ハウジング20との間に形成される環状の収容空間Sに積層した状態で収容され、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブル30(31~34)と、を備えた回転コネクタ1の回転量検出装置100であって、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出部120と、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データを記憶する記憶部130と、検出部120によって検出された特性インピーダンスの変化に関する検出データと、記憶部130に記憶された複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて検出データに対応する固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの回転量を特定する特定部140と、を備える。
【0044】
また、本実施形態の回転コネクタ1の回転量検出方法によれば、固定側ハウジング10と、固定側ハウジング10に対して回転自在な回転側ハウジング20と、導体31a~34aを絶縁材料31b~34bによって覆うことによって形成され、固定側ハウジング10と回転側ハウジング20との間に形成される環状の収容空間Sに積層した状態で収容され、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブル30(31~34)と、を備えた回転コネクタ1の回転量検出方法であって、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出ステップと、検出ステップにおいて検出した特性インピーダンスの変化に関する検出データと、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて検出データに対応する固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの回転量を特定する特定ステップと、を備える。
【0045】
また、本実施形態の回転コネクタ1の回転量検出プログラムによれば、固定側ハウジング10と、固定側ハウジング10に対して回転自在な回転側ハウジング20と、導体31a~34aを絶縁材料31b~34bによって覆うことによって形成され、固定側ハウジング10と回転側ハウジング20との間に形成される環状の収容空間Sに積層した状態で収容され、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の回転量の変化に応じて積層状態が変化する複数のフラットケーブル30(31~34)と、を備えた回転コネクタ1の回転量検出装置100のコンピュータに実行させる回転量検出プログラムであって、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化を検出する検出ステップと、検出ステップにおいて検出した特性インピーダンスの変化に関する検出データと、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの異なる複数の回転量のそれぞれにおける、導体31a~34aによって構成される伝送線路上の特性インピーダンスの変化に関する複数の特性インピーダンス変化データと、に基づいて検出データに対応する固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置からの回転量を特定する特定ステップと、を実行させる。
【0046】
これにより、回転コネクタ1が適用される回転部品を有する車両等の機器において、回転部品の回転量を検出する専用のセンサを用いることなく、回転部品の基準位置からの回転量を検出することが可能となるので、部品点数の低減を図るとともに、小型化を図ることが可能となる。
【0047】
また、複数の特性インピーダンス変化データは、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の基準位置から所定回転量毎の、特性インピーダンスの最大値および最小値と、フラットケーブル31~34の一端部と他端部との間における特性インピーダンスの最大値および最小値が現れる位置と、の関係を表す複数のデータである、ことが好ましい。
【0048】
これにより、記憶部130に記憶するデータ量を低減させることができるので、容量の小さい記憶部130を利用することが可能となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0049】
また、回転コネクタ1は、固定側ハウジング10に対して回転側ハウジング20が所定の範囲内で回転可能であり、基準位置は、固定側ハウジング10に対する回転側ハウジング20の回転可能な範囲内の中間の位置である、ことが好ましい。
【0050】
これにより、基準位置からの右周りおよび左回りのそれぞれの回転量を検出することが可能となり、車両のステアリングシャフト等の回転量の検出に利用することが可能となる。
【0051】
また、検出部120、記憶部130及び特定部140を含む制御部110を備え、制御部110は、回転コネクタ1と一体に構成される、ことが好ましい。
【0052】
これにより、回転コネクタ1および制御部110を一部品として取り扱うことが可能となるので、部品点数の低減を図るとともに、組付け工数の低減を図ることが可能となる。
【0053】
また、回転コネクタ1は、固定側ハウジング10が車両のステアリングコラムに配置され、回転側ハウジング20が車両のステアリングシャフトに配置され、特定部140は、ステアリングコラムに対するステアリングシャフトの基準位置からの回転量を特定する、ことが好ましい。
【0054】
これにより、車両のステアリングシャフトに従来取り付けられていた、ステアリングシャフトの回転量を検出する専用のセンサを使用することなく、ステアリンシャフトの基準位置からの回転量を検出することが可能となるので、車両の製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0055】
尚、前記実施形態では、本発明の回転コネクタを、ステアリングロールコネクタに適用したものを示したが、これに限られるものではない。本発明の回転コネクタは、ロボットアームの関節部分等の回転機構に適用することが可能である。また、本発明の回転コネクタは、固定側部材と、固定側部材に対して回転しながら移動する回転移動側部材と、固定側部材に一端部が接続され、回転移動側部材に他端部が接続され、回転移動側部材に巻き回される複数のフラットケーブルと、を備え、固定側部材と回転移動側部材との間において信号や電力の伝送を必要とするものであれば、例えば、車両のスライドシートやスライドドア等に適用することが可能である。
【0056】
また、前記実施形態では、記憶部130に、特性インピーダンスの最大値および最小値と、第1乃至第4フラットケーブル31~34の一端部と他端部との間における特性インピーダンスの最大値および最小値のそれぞれが現れる位置と、の関係を表すデータを、特性インピーダンス変化データとして記憶したものを示したが、これに限られるものではない。記憶部130に記憶する特性インピーダンス変化データとしては、0.5度の回転量毎の、フラットケーブルの一端部から他端部の全長にわたる特性インピーダンスの変化に関するデータを記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 回転コネクタ
10 固定側ハウジング
20 回転側ハウジング
30 フラットケーブル
31 第1フラットケーブル
31a 導体
31b 絶縁材料
32 第2フラットケーブル
32a 導体
32b 絶縁材料
33 第3フラットケーブル
33a 導体
33b 絶縁材料
34 第4フラットケーブル
34a 導体
34b 絶縁材料
100 回転量検出装置
110 制御部
120 検出部
130 記憶部
140 特定部
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7