(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160134
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】物質分布測定装置、物質分布の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20221012BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G01N29/07
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064693
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】槙 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 健
(72)【発明者】
【氏名】池田 逹紀
(72)【発明者】
【氏名】内垣 友貴
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BC02
2G047BC18
2G047CA01
2G047CA03
2G047CA04
2G047CB04
2G047GA14
2G047GF11
2G047GG30
2G047GG33
2G047GG46
2G047GH13
(57)【要約】
【課題】物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を評価できる物質分布測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】物質処理装置の外被に沿って伝播するように境界波を発生させる境界波発生手段と、
前記外被に沿って伝播した前記境界波を受信する複数の受信手段と、
前記複数の受信手段が受信した前記境界波のデータに基づいて、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布を求める演算部と、を有する物質分布測定装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質処理装置の外被に沿って伝播するように境界波を発生させる境界波発生手段と、
前記外被に沿って伝播した前記境界波を受信する複数の受信手段と、
前記複数の受信手段が受信した前記境界波のデータに基づいて、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布を求める演算部と、を有する物質分布測定装置。
【請求項2】
前記複数の受信手段は、前記外被の表面に一列に配列されている請求項1に記載の物質分布測定装置。
【請求項3】
前記境界波がLamb波である請求項1または請求項2に記載の物質分布測定装置。
【請求項4】
前記境界波発生手段により発生させる前記境界波の周波数が500Hz以上2000Hz以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物質分布測定装置。
【請求項5】
前記外被が金属および樹脂から選択された1種類以上を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物質分布測定装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記複数の受信手段が受信した前記境界波のデータから算出した分散曲線と、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布の予測パターンに基づいて算出される理論分散曲線とを対比し、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布を求める請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の物質分布測定装置。
【請求項7】
物質処理装置の外被に沿って伝播するように、境界波発生手段により境界波を発生させる境界波発生工程と、
前記外被に沿って伝播した前記境界波を複数の受信手段により受信する受信工程と、
前記複数の受信手段が受信した前記境界波のデータに基づいて、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布を求める演算工程と、を有する物質分布の測定方法。
【請求項8】
前記複数の受信手段は、前記外被の表面に一列に配列されている請求項7に記載の物質分布の測定方法。
【請求項9】
前記境界波がLamb波である請求項7または請求項8に記載の物質分布の測定方法。
【請求項10】
前記境界波発生手段により発生させる前記境界波の周波数が500Hz以上2000Hz以下である請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の物質分布の測定方法。
【請求項11】
前記外被が金属および樹脂から選択された1種類以上を含む請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の物質分布の測定方法。
【請求項12】
前記演算工程では、前記複数の受信手段が受信した前記境界波のデータから算出した分散曲線と、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布の予測パターンに基づいて算出される理論分散曲線とを対比し、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布を求める請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の物質分布の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質分布測定装置、物質分布の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で用いられている配管や反応槽等の物質処理装置の内部では、流動性を有する材料の搬送や、各種処理が行われており、長期間連続操業が行いながらも、定期的なメンテナンス作業により管理されている。流動性を有する材料は、スラリーや、液体、粉体等であり、物質処理装置の内部で搬送や各種処理を行う際、物質処理装置の内壁等に付着物が生じる場合があった。
【0003】
例えば配管に付着した付着物の厚さを評価する方法について従来から検討がなされている。特許文献1には、ボイラー管の下端を閉塞し、管内に常温より温度差のある非常温流体を充填し、管内に充填された非常温流体の温度と、所定時間後の管外壁の温度との差を求めてスケールの付着状態を判定することを特徴とするボイラー管の付着スケール測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物質処理装置の内壁等に生じた付着物は、程度によっては物質処理装置の安定した操業の妨げになる恐れがある。このため、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を測定し、適切なタイミングでメンテナンス作業を行う必要があり、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を評価できる物質分布測定装置が求められていた。
【0006】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を評価できる物質分布測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
物質処理装置の外被に沿って伝播するように境界波を発生させる境界波発生手段と、
前記外被に沿って伝播した前記境界波を受信する複数の受信手段と、
前記複数の受信手段が受信した前記境界波のデータに基づいて、前記外被の内表面に付着した物質の物質分布を求める演算部と、を有する物質分布測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を評価できる物質分布測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一態様に係る物質分布測定装置の模式図。
【
図2】本開示の一態様に係る物質分布測定装置の上面図。
【
図3】鉄板におけるLamb波のA
0モードの理論分散曲線。
【
図4】鉛板におけるLamb波のA
0モードの理論分散曲線。
【
図5】厚さ4mmの鉄板についての測定結果と理論分散曲線。
【
図6】厚さ6mmの鉄板についての測定結果と理論分散曲線。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いながら説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[物質分布測定装置]
図1、
図2に、本実施形態の物質処理装置の構成例を示す。
図1は、本実施形態の物質分布測定装置10を物質処理装置100に取り付けた状態における、物質分布測定装置10を通る面での断面図を示している。
図2は、
図1の物質分布測定装置10をブロック矢印Aに沿って見た上面図であり、演算部13や、配線の記載は省略して示している。
【0011】
本実施形態の物質分布測定装置や後述する物質分布測定方法を好適に適用できる物質処理装置についてまず説明を行う。
(1)物質処理装置
物質処理装置100は、スラリーや、液体、粉体等の流動性を有する各種材料の搬送や、処理等を行う装置、管であればよく、例えば、工場等で用いられる反応槽や、各種処理装置、配管等が挙げられる。
【0012】
物質処理装置100は、外被101と、外被101で囲まれた内部領域102とを有することができる。外被101の材料は特に限定されないが、本実施形態の物質分布測定装置10によれば、外被101の硬度が高い材料であっても、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を測定できる。このため、外被101は、例えば金属および樹脂から選択された1種類以上の材料を含むことができ、外被101は、金属製または樹脂製とすることもできる。
【0013】
そして、外被101で囲まれた内部領域102内で流動性を有する材料の搬送や、処理等を行うことで、外被101の内表面にスケール等の析出物である物質103が生じ、付着している。本実施形態の物質分布測定装置10によれば、外被101の内表面に付着した係る物質103について、厚さ等の物質分布を測定できる。ここでいう外被101の内表面とは、外被101で囲まれた内部領域102側の表面であり、物質処理装置100において、各種材料の搬送や処理がなされている側の面を意味する。
(2)物質分布測定装置
本発明の発明者らは、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を測定できる物質分布測定装置について検討を行った。検討を行う中で、非破壊で測定を行える弾性波に着目した。
【0014】
弾性波の一種として、実体波が挙げられる。しかし、物質処理装置の外被は通常、金属等で形成されており、金属等により形成された外被を実体波が伝播する速度は非常に速い。このため、物質処理装置の外被を伝播した実体波を受信手段で受信することは困難であり、実体波を用いた物質分布測定装置とすることは困難であった。
【0015】
そこで、本発明の発明者らはさらに検討を行い、弾性波の一種である境界波を用いることで、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を測定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の物質分布測定装置10は、境界波発生手段11と、受信手段12と、演算部13とを有することができる。
【0017】
以下、本実施形態の物質分布測定装置が有する各部材について説明する。
(2-1)境界波発生手段
境界波発生手段11は、物質処理装置の外被に沿って伝播するように境界波を発生させることができる。
【0018】
境界波発生手段11の構成は特に限定されず、所定の境界波を発生させることができる手段であればいいが、例えばハンマーや、圧電素子等が挙げられる。境界波発生手段11は、例えば物質処理装置100の外被101に対して、振動や衝撃を加えることで物質処理装置100の外被101に沿って伝播するように、境界波を発生させることができる。
【0019】
なお、境界波発生手段11は、境界波を発生させるタイミングや、受信手段12により外被を伝播した境界波を受信するタイミングを制御するため、演算部13や、別に設けた制御装置と接続しておくこともできる。
【0020】
境界波は、固体と気体や、固体と液体の境界を伝播し、周波数ごとに異なる速度で伝播する分散性を有している。本実施形態の物質分布測定装置が用いる境界波の種類は特に限定されない。ただし、通常物質処理装置の外被は板状であり、外被に付着する物質も外被に沿うように形成される。このように測定対象が板状体であることから、測定精度を高める観点から、境界波は、例えば板波の一種であるLamb波であることが好ましい。
【0021】
境界波発生手段11により発生させる境界波の周波数は特に限定されず、測定対象の厚さや測定に用いる境界波のモード等に応じて選択できる。境界波発生手段11により発生させる境界波の周波数は200Hz以上3000Hz以下であることが好ましく、500Hz以上2000Hz以下であることがより好ましい。
(2-2)受信手段
本実施形態の物質分布測定装置10は、境界波発生手段11で発生させ、物質処理装置100の外被101に沿って伝播した境界波を受信する複数の受信手段12を有することができる。
【0022】
受信手段12は境界波を受信できる手段であればよく、例えば地震計や光ファイバー型センサ(Distributed Acoustic Sensing; DAS)等を用いることができる。
【0023】
境界波は周波数ごとに異なる速度で伝播する分散性を有する。このため、物質処理装置100の外被101に複数の受信手段12を設け、各周波数の境界波の伝播速度を測定できるように構成することが好ましい。
【0024】
具体的には、境界波発生手段11から、各受信手段12までの距離が異なるように、複数の受信手段12を配置することが好ましく、例えば複数の受信手段12は、物質処理装置100の外被101の表面に一列に配列することが好ましい。具体的には例えば、
図2に示すように、直線L上に複数の受信手段12を配列できる。
【0025】
複数の受信手段12の間の距離L12は特に限定されず、受信手段12のサンプリング周波数や、用いる境界波の周波数領域等に応じて選択できる。
【0026】
後述するように、物質処理装置100の外被101の内表面に付着した物質の物質分布から、境界波の理論分散曲線を算出できる。そして、受信手段12で測定した、各周波数の境界波の伝播速度から求めた境界波の分散曲線と、上記理論分散曲線とを対比することで、物質処理装置100の外被101の内表面に付着した物質の物質分布を求めることができる。
【0027】
このため、受信手段12は、物質処理装置100の外被101の表面のうち、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を測定することが求められる領域を含むように配置することが好ましい。
【0028】
受信手段12は、演算部13と接続しておき、測定したデータを供給できるように構成することが好ましい。演算部13は、後述するように、受信手段12が受信したデータをもとに分散曲線を作成し、理論分散曲線と対比し、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を求めることができる。
(2-3)演算部
演算部13は、複数の受信手段12が受信した境界波のデータに基づいて、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を求めることができる。
【0029】
ここで、例えばLamb波は、以下の式(1-1)、式(1-2)にあるRayleigh-Lamb周波数方程式で示される。
【0030】
【0031】
【数2】
なお、式中のp、qは以下の式(2-1)、式(2-2)で表される。
【0032】
【0033】
【数4】
式中のkは波数、2hは平板の厚さ、ωは角周波数、V
PはP波速度、V
SはS波速度である。
【0034】
式(1-1)、式(1-2)はそれぞれ対称モード、反対称モードの分散関係式であり、これらを満たすkは同一周波数で複数存在し、それらはLamb波の異なる次数のモードに対応する。
【0035】
ここで、
図3に、一般的な鉄の弾性波速度であるV
P=6000m/s、V
S=3000m/sを仮定して計算を行ったLamb波のA
0モードの理論分散曲線を示す。なお、A
0モードは、式(1-2)の解から導出される反対称モードの基本モードに対応する分散曲線である。
図3中に凡例で示した鉄板の厚さ毎に理論値を計算した。
図3からも確認できるように、板が厚いほど同一の周波数における位相速度が速くなり、板が薄いほど位相速度が遅くなることを確認できる。
【0036】
また、
図4に、一般的な鉛の弾性波速度であるV
P=2000m/s、V
S=700m/sを仮定して計算を行ったLamb波のA
0モードの理論分散曲線を示す。
図3、
図4の比較から、V
P、V
Sが速いほど、Lamb波の位相速度が速くなることを確認できる。
【0037】
以上の様に、材料の弾性波速度や、厚さにより、理論分散曲線は変化する。このため、受信手段12で受信した境界波のデータに基づいて、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を求められる。具体的には受信手段での境界波の測定データと、例えば外被101の内表面に付着していると考えられる物質についての理論分散曲線と対比することで、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を求められる。
【0038】
具体的な対比例を
図5、
図6に示す。
図5は厚さが4mmの鉄板について、本実施形態の物質分布測定装置を用いて測定した結果となる。
図6は厚さが6mmの鉄板について、本実施形態の物質分布測定装置を用いて測定した結果となる。
【0039】
図5、
図6中、白黒のカラーマップでシグナルの大きさを示し、色が白いほどシグナルが大きいことを示す。黒点は周波数ごとに最も大きいシグナルの点となっている。また、
図5、
図6には、凡例で示した鉄板の厚さ毎の理論分散曲線をあわせて示す。
【0040】
図5における各周波数の測定したシグナルの最大値は、板厚が4mmの鉄板の理論分散曲線とほぼ一致することが確認できる。
図6における各周波数の測定したシグナルの最大値は、板厚が6mmの鉄板の理論分散曲線とほぼ一致することが確認できる。すなわち、受信手段での境界波の測定データと、外被101の内表面に付着していると考えられる物質についての理論分散曲線と対比することで、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を求められることを確認できた。
【0041】
ここでは、外被を介さず直接被測定物を測定した例を示しているが、外被を介して測定した場合でも、同様に測定データと、理論分散曲線とを比較することで、外被の内表面に付着した物質の物質分布を求められる。
【0042】
このため、演算部13は、複数の受信手段12が受信した境界波のデータから算出した分散曲線と、外被101の内表面に付着した物質の物質分布の予測パターンに基づいて算出される理論分散曲線とを対比し、外被101の内表面に付着した物質の物質分布を求められる。
【0043】
なお、ここではLamb波のA0モードを例に説明したが、A0モードを用いる場合に限定されず、用いる境界波の周波数帯を変化させ、他のモードで外被の内表面に付着した物質の物質分布を予測することもできる。
【0044】
演算部13の構成は特に限定されないが、上述のように受信手段12が受信した境界波のデータ処理や、受信手段12等との通信が行えるように、CPU(Central Processing Unit)や、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース等を有することができる。
【0045】
主記憶装置としてはRAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)が、補助記憶装置としてはSSD(Solid State Drive)や、HDD(Hard Disk Drive)等が挙げられる。入出力インターフェースとしては、境界波発生手段11や、受信手段12等との間で制御信号や、データをやり取りするための通信インターフェースが挙げられる。通信インターフェースの種類は特に限定されず、例えば有線LAN(Local Area Network)や、無線LAN等が挙げられる。
【0046】
以上に示した本実施形態の物質分布測定装置によれば、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を評価することができる。
[物質分布測定方法]
次に、本実施形態の物質分布測定方法について説明する。なお、本実施形態の物質分布測定検査方法は、既述の物質分布測定装置を用いて好適に実施することができる。このため、既に説明した事項については一部説明を省略する。
【0047】
また、本実施形態の物質分布測定方法を適用する物質処理装置についても物質分布測定装置の中で既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0048】
本実施形態の物質分布測定方法は、境界波発生工程と、受信工程と、演算工程とを有することができる。
【0049】
各工程について以下に説明する。
(1)境界波発生工程
境界波発生工程は、物質処理装置の外被に沿って伝播するように、境界波発生手段により境界波を発生させることができる。
【0050】
境界波発生手段の構成は特に限定されず、所定の境界波を発生させることができる手段であればいいが、例えばハンマーや、圧電素子等が挙げられる。
【0051】
本実施形態の物質分布測定方法が用いる境界波の種類は特に限定されないが、境界波は、例えばLamb波であることが好ましい。
【0052】
境界波発生手段11により発生させる境界波の周波数は特に限定されない。例えば境界波発生手段11により発生させる境界波の周波数は200Hz以上3000Hz以下の範囲内にあることが好ましく、500Hz以上2000Hz以下の範囲内にあることがより好ましい。
(2)受信工程
受信工程は、外被に沿って伝播した境界波を複数の受信手段により受信できる。
【0053】
境界波は周波数ごとに異なる速度で伝播する分散性を有する。このため、受信工程では、物質処理装置100の外被101に複数の受信手段12を設け、各周波数の境界波の伝播速度を測定できるように構成することが好ましい。
【0054】
具体的には、境界波発生手段11から、各受信手段12までの距離が異なるように、複数の受信手段12を配置することが好ましく、例えば複数の受信手段12は、物質処理装置100の外被101の表面に一列に配列することが好ましい。具体的には例えば、
図2に示すように、直線L上に複数の受信手段12を配列できる。
(3)演算工程
演算工程は、複数の受信手段が受信した境界波のデータに基づいて、外被の内表面に付着した物質の物質分布を求めることができる。
【0055】
演算工程では、複数の受信手段12が受信した境界波のデータから算出した分散曲線と、外被の内表面に付着した物質の物質分布の予測パターンに基づいて算出される理論分散曲線とを対比し、外被内部に付着した物質の物質分布を求めることができる。
【0056】
以上に示した本実施形態の物質分布測定方法によれば、物質処理装置の外被の内表面に付着した物質の物質分布を評価することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 物質分布測定装置
11 境界波発生手段
12 受信手段
13 演算部
100 物質処理装置
101 外被
102 内部領域