(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160139
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】組電池用筐体、組電池、組電池の集合体、及び電気車
(51)【国際特許分類】
H01M 50/244 20210101AFI20221012BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20221012BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221012BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/209
H01M50/249
H01M10/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064700
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】水杉 真也
(72)【発明者】
【氏名】大沼 孟光
(72)【発明者】
【氏名】堀川 真代
【テーマコード(参考)】
5H028
5H040
【Fターム(参考)】
5H028AA07
5H028CC01
5H028CC07
5H040AA14
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC05
5H040CC13
5H040CC34
5H040JJ03
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】複数の組電池を並べて固定する構造において、応力集中を低減できる組電池用筐体を提供する。
【解決手段】筐体5は、複数の二次電池セルを備える組電池3において複数の二次電池セルを収容する。筐体5は、互いに反対を向く側面51及び52を備える。側面51は凹凸形状510を有する。側面52は、凹凸形状510と嵌合する形状の凹凸形状520を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池セルを備える組電池において前記複数の二次電池セルを収容する筐体であって、
互いに反対を向く第1及び第2の外面を備え、
前記第1の外面は第1の凹凸形状を有し、
前記第2の外面は、前記第1の凹凸形状と嵌合する形状の第2の凹凸形状を有する、組電池用筐体。
【請求項2】
互いに対向する第1及び第2の側板を備え、
前記第1の外面は前記第1の側板の外面であり、
前記第2の外面は前記第2の側板の外面である、請求項1に記載の組電池用筐体。
【請求項3】
互いに対向する底板及び天板を備え、
前記第1の外面は前記天板の外面であり、
前記第2の外面は前記底板の外面である、請求項1に記載の組電池用筐体。
【請求項4】
前記第1の凹凸形状は一又は二以上の凸部を含み、
前記第2の凹凸形状は、前記一又は二以上の凸部と嵌合する形状の一又は二以上の凹部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組電池用筐体。
【請求項5】
前記第1の凹凸形状は一つの前記凸部を含み、前記凸部は前記第1の外面の略中央部分に設けられ、
前記第2の凹凸形状は一つの前記凹部を含み、前記凹部は前記第2の外面の略中央部分に設けられている、請求項4に記載の組電池用筐体。
【請求項6】
前記第1の凹凸形状は二以上の前記凸部を含み、
前記第2の凹凸形状は二以上の前記凹部を含み、
前記二以上の凸部は、前記第1及び第2の外面に沿う第1方向に延びており、前記第1及び第2の外面に沿い且つ前記第1方向と直交する第2方向に並んでおり、
前記二以上の凹部は、前記第1方向に延びており、前記第2方向に並んでいる、請求項5に記載の組電池用筐体。
【請求項7】
前記二以上の凸部の各一端は、前記第1方向における前記第1の外面の一端に達し、前記二以上の凸部の各他端は、前記第1方向における前記第1の外面の他端に達し、
前記二以上の凹部の各一端は、前記第1方向における前記第2の外面の一端に達し、前記二以上の凹部の各他端は、前記第1方向における前記第2の外面の他端に達する、請求項6に記載の組電池用筐体。
【請求項8】
前記第1の凹凸形状は、前記一又は二以上の凸部のうち少なくとも一つの凸部の頂面に形成された第3の凹凸形状を含み、
前記第2の凹凸形状は、前記一又は二以上の凹部のうち前記少なくとも一つの凸部に対応する少なくとも一つの凹部の底面に形成された、前記第3の凹凸形状と嵌合する形状の第4の凹凸形状を含む、請求項4に記載の組電池用筐体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組電池用筐体と、
前記組電池用筐体に収容される前記複数の二次電池セルと、
を備える、組電池。
【請求項10】
前記二次電池セルは亜鉛電池セルである、請求項9に記載の組電池。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の組電池を複数備え、
前記複数の組電池が、互いに隣り合う前記組電池のうち一方の前記組電池の前記組電池用筐体の前記第1の凹凸形状と、他方の前記組電池の前記組電池用筐体の前記第2の凹凸形状とが互いに嵌合するように並んで配置されている、組電池の集合体。
【請求項12】
請求項11に記載の組電池の集合体を備える、電気車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池用筐体、組電池、組電池の集合体、及び電気車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の電池セルを直列接続してなるセルモジュールを収容するための筐体を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば亜鉛電池などの二次電池のセル(単電池)を複数備える組電池が知られている。このような組電池においては、複数の二次電池セルを互いに直列に接続することにより、十分な電圧を出力することが可能になる。組電池において、複数の二次電池セルは、各二次電池セルの厚み方向に並んで配置された状態で、筐体内に収容される。そして、より大きな電力を必要とする場合には、複数の組電池を、隣り合う組電池同士が接するように並べて配置する。そして、隣り合う筐体同士を、例えばボルト及びナット等の局所的な固定方式を用いて点状に固定する。しかしながら、このような局所的な固定方式では、振動等が発生した際に固定部分に応力が集中し、固定部分が破断するおそれがある。本開示は、複数の組電池を並べて固定する構造において、応力集中を低減できる組電池用筐体、組電池、組電池の集合体、及び電気車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る組電池用筐体は、複数の二次電池セルを備える組電池において複数の二次電池セルを収容する筐体である。組電池用筐体は、互いに反対を向く第1及び第2の外面を備える。第1の外面は第1の凹凸形状を有する。第2の外面は、第1の凹凸形状と嵌合する形状の第2の凹凸形状を有する。
【0006】
この組電池用筐体を複数並べて配置する際には、各組電池用筐体の第1の外面と、該組電池用筐体に隣接する組電池用筐体の第2の外面とが互いに接する。このとき、各組電池用筐体の第1の外面の第1の凹凸形状と、該組電池用筐体に隣接する組電池用筐体の第2の外面の第2の凹凸形状とが、互いに嵌合する。これにより、互いに隣接する組電池用筐体同士が、ボルト及びナット等の局所的な固定方式よりも広がりを有する領域において固定される。したがって、この組電池用筐体によれば、振動等が発生した際の応力集中を低減し、破断を抑制することができる。
【0007】
上記の組電池用筐体は、互いに対向する第1及び第2の側板を備え、第1の外面は第1の側板の外面であり、第2の外面は第2の側板の外面であってもよい。この場合、各組電池用筐体の側板同士が接する態様にて複数の組電池用筐体を並べて固定する構造において、応力集中を効果的に低減できる。或いは、上記の組電池用筐体は、互いに対向する底板及び天板を備え、第1の外面は天板の外面であり、第2の外面は底板の外面であってもよい。この場合、各組電池用筐体の天板と、該組電池用筐体に隣接する組電池用筐体の底板とが接する態様にて複数の組電池用筐体を並べて固定する構造において、応力集中を効果的に低減できる。
【0008】
上記の組電池用筐体において、第1の凹凸形状は一又は二以上の凸部を含み、第2の凹凸形状は、一又は二以上の凸部と嵌合する形状の一又は二以上の凹部を含んでもよい。例えばこのような構成により、第1の凹凸形状と第2の凹凸形状とを容易に嵌合させることができる。
【0009】
上記の組電池用筐体において、第1の凹凸形状は一つの凸部を含み、凸部は第1の外面の略中央部分に設けられてもよい。また、第2の凹凸形状は一つの凹部を含み、凹部は第2の外面の略中央部分に設けられてもよい。例えばこのような構成により、第1の凹凸形状と第2の凹凸形状とを容易に嵌合させることができる。
【0010】
上記の組電池用筐体において、第1の凹凸形状は二以上の凸部を含み、第2の凹凸形状は二以上の凹部を含んでもよい。そして、二以上の凸部は、第1及び第2の外面に沿う第1方向に延びており、第1及び第2の外面に沿い且つ第1方向と直交する第2方向に並んでもよい。二以上の凹部は、第1方向に延びており、第2方向に並んでもよい。例えばこのような構成により、第1の凹凸形状と第2の凹凸形状とを容易に嵌合させることができる。また、互いに隣接する組電池用筐体同士を、より広がりを有する領域において固定するので、振動等が発生した際の応力集中をより効果的に低減できる。
【0011】
上記の組電池用筐体において、二以上の凸部の各一端は、第1方向における第1の外面の一端に達し、二以上の凸部の各他端は、第1方向における第1の外面の他端に達してもよい。二以上の凹部の各一端は、第1方向における第2の外面の一端に達し、二以上の凹部の各他端は、第1方向における第2の外面の他端に達してもよい。
【0012】
上記の組電池用筐体において、第1の凹凸形状は、一又は二以上の凸部のうち少なくとも一つの凸部の頂面に形成された第3の凹凸形状を含んでもよい。第2の凹凸形状は、一又は二以上の凹部のうち少なくとも一つの凸部に対応する少なくとも一つの凹部の底面に形成された、第3の凹凸形状と嵌合する形状の第4の凹凸形状を含んでもよい。この場合、より複雑な形状によって第1及び第2の凹凸形状が互いに嵌合するので、応力をより分散させ得るとともに、互いに隣接する組電池用筐体同士の固定をより強固にできる。
【0013】
本開示に係る組電池は、上記いずれかの組電池用筐体と、組電池用筐体に収容される複数の二次電池セルと、を備える。この組電池によれば、上記いずれかの組電池用筐体を備えることによって、振動等が発生した際の組電池用筐体における応力集中を低減し、組電池用筐体の破断を抑制することができる。故に、信頼性の高い組電池を提供できる。
【0014】
上記の組電池において、二次電池セルは亜鉛電池セルであってもよい。この場合、信頼性の高い亜鉛電池の組電池を提供できる。
【0015】
本開示に係る組電池の集合体は、上記いずれかの組電池を複数備える。複数の組電池は、互いに隣り合う組電池のうち一方の組電池の組電池用筐体の第1の凹凸形状と、他方の組電池の組電池用筐体の第2の凹凸形状とが互いに嵌合するように並んで配置されている。この組電池の集合体によれば、振動等が発生した際の組電池用筐体における応力集中を低減し、組電池用筐体の破断を抑制することができる。故に、信頼性の高い組電池の集合体を提供できる。
【0016】
本開示に係る電気車は、組電池の集合体を備える。この電気車によれば、上記の組電池の集合体を備えることによって、振動等が発生した際の組電池用筐体における応力集中を低減し、組電池用筐体の破断を抑制することができる。故に、信頼性の高い電気車を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、複数の組電池を並べて固定する構造において、応力集中を低減できる組電池用筐体、組電池、組電池の集合体、及び電気車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、組電池の集合体を搭載する電気車を示す図である。
【
図2】
図2は、組電池の集合体を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、筐体に収容される二次電池モジュールを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、一つの二次電池セルを拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図7は、複数の組電池を並べた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係る組電池の外観を示す斜視図であって、組電池を或る側面側から見た図である。
【
図9】
図9は、第1変形例に係る組電池の外観を示す斜視図であって、組電池を反対の側面側から見た図である。
【
図10】
図10は、第2変形例に係る組電池の外観を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第3変形例に係る組電池の外観を示す斜視図であって、組電池を或る側面側から見た図である。
【
図12】
図12は、第3変形例に係る組電池の外観を示す斜視図であって、組電池を反対の側面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本開示による組電池用筐体、組電池、組電池の集合体、及び電気車の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。以下の説明において、亜鉛電池とは、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、及び銀亜鉛電池等、負極に亜鉛を用いる電池の概念である。
【0020】
図1は、組電池の集合体2を搭載する電気車1を示す図である。
図1には、電気車1の例として、フォークリフトが示されている。
図1に示されるように、電気車1は、組電池の集合体2を搭載している。電気車1は、組電池の集合体2から供給される電力によって駆動される。組電池の集合体2は、例えば電気車1における座席の下に配置される。
【0021】
図2は、組電池の集合体2を示す斜視図である。
図2に示されるように、組電池の集合体2は、複数の組電池3と、複数の組電池3を収容する筐体4とを備える。
図2は、筐体4の内部を透視して示す。複数の組電池3は、左右方向(図中の方向D1)、前後方向(図中の方向D2)、及び上下方向(図中の方向D3)において空間的に並んでいる。方向D1,D2及びD3は互いに直交する。図示例では、30個の組電池3が、方向D1において5列、方向D2において2列、方向D3において3列にそれぞれ並んでいる。各組電池3は、一対の電極31,32を有する。一対の電極31,32のうち一方の電極31は陽極であり、他方の電極32は負極である。複数の組電池3の電極31は、図示しない配線を介して互いに電気的に接続される。複数の組電池3の電極32は、図示しない別の配線を介して互いに電気的に接続される。すなわち、複数の組電池3は、互いに並列に接続されている。或いは、各組電池3の電極31は、図示しない配線を介して、隣接する組電池3の電極32と電気的に接続されてもよい。この場合、複数の組電池3は、互いに直列に接続される。
【0022】
図3は、組電池3を示す斜視図である。
図3に示されるように、本実施形態の組電池3は、筐体5を備える。筐体5は、略直方体状又は略立方体状の中空容器であって、例えばABS樹脂、ポリプロピレン、又は他の合成樹脂によって主に構成されている。筐体5は、4つの側面51~54と、上面55及び下面56とを有する。側面51と側面52とは、方向D3において並んでおり、方向D1及びD2と平行な仮想平面に沿って延在し、互いに反対を向いている。側面51は本実施形態における第1の外面であり、側面52は本実施形態における第2の外面である。側面53と側面54とは、方向D2において並んでおり、方向D1及びD3と平行な仮想平面に沿って延在し、互いに反対を向いている。側面53及び54は、平坦である。上面55と下面56とは、方向D1において並んでおり、方向D2及びD3と平行な仮想平面に沿って延在し、互いに反対を向いている。
【0023】
筐体5は、上部が開口した有底容器である容器57と、容器57の開口を閉じる蓋部としての天板58とを有する。
図4は、容器57を示す斜視図である。容器57は、4つの側板571~574と、底板575とを有する。側板571(第1の側板)と側板572(第2の側板)とは、方向D3において並んでおり、方向D1及びD2と平行な仮想平面に沿って延在し、筐体5の内部空間を挟んで互いに対向する。上述した側面51及び52は、側板571及び572の外面をそれぞれ構成する。側板573と側板574とは、方向D2において並んでおり、方向D1及びD3と平行な仮想平面に沿って延在し、筐体5の内部空間を挟んで互いに対向する。上述した側面53及び54は、側板573及び574の外面をそれぞれ構成する。天板58と底板575とは、方向D1において並んでおり、方向D2及びD3と平行な仮想平面に沿って延在し、筐体5の内部空間を挟んで互いに対向する。上述した上面55及び下面56は、天板58及び底板575の外面をそれぞれ構成する。
【0024】
側面51は、凹凸形状510(第1の凹凸形状)を有する。本実施形態の凹凸形状510は、二以上の(図示例では2つの)凸部511を含む。二以上の凸部511は、側面51及び52に沿う方向D1(第1方向)に延びている。二以上の凸部511は、側面51及び52に沿い且つ方向D1と直交する方向D2(第2方向)において並んでいる。一例では、二以上の凸部511の延在方向は互いに平行である。一例では、二以上の凸部511の各一端は方向D1における側面51の一端(例えば上面55側の端)に達し、二以上の凸部511の各他端は方向D1における側面51の他端(例えば下面56側の端)に達する。側板571の厚さは略均一であり、側板571の内面には、二以上の凸部511の反対側にそれぞれ位置する二以上の凹部512が形成されている。また、側面51において互いに隣り合う凸部511の間の領域は、方向D1に延びる凹部513を成す。凸部511の側面は、方向D1及びD2と平行な仮想平面に対して傾斜しており、凸部511の延在方向に垂直な断面の形状は台形状となっている。
【0025】
側面52は、凹凸形状520(第2の凹凸形状)を有する。凹凸形状520は、凹凸形状510と嵌合可能な形状を有する。本実施形態の凹凸形状520は、二以上の(図示例では2つの)凹部521を含む。二以上の凹部521は、二以上の凸部511とそれぞれ一対一で対応する。すなわち、凹部521の数は凸部511の数と等しい。二以上の凹部521は、方向D1に沿って延びており、方向D2において並んでいる。一例では、二以上の凹部521の延在方向は互いに平行である。一例では、二以上の凹部521の各一端は方向D1における側面52の一端(例えば上面55側の端)に達し、二以上の凹部521の各他端は方向D1における側面52の他端(例えば下面56側の端)に達する。側板572の厚さは略均一であり、側板572の内面には、二以上の凹部521の反対側にそれぞれ位置する二以上の凸部522が形成されている。また、側面52において互いに隣り合う凹部521の間の領域は、方向D1に延びる凸部523を成す。凸部523は、凹部513と嵌合可能な形状を有する。凹部521の内側面は、方向D1及びD2と平行な仮想平面に対して傾斜しており、凹部521の延在方向に垂直な断面の形状は逆台形状となっている。
【0026】
図5は、筐体5に収容される二次電池モジュール6を示す斜視図である。組電池3は、筐体5に加えて、二次電池モジュール6を備える。この二次電池モジュール6は、複数(図示例では7個)の二次電池セル7を有する。複数の二次電池セル7は、例えば方向D2を厚み方向とし、方向D2に沿って並んで配置されている。ここで、厚みとは、互いに直交する3方向の寸法において最も小さい寸法をいう。
【0027】
図6は、一つの二次電池セル7を拡大して示す斜視図である。二次電池セル7は、例えば、厚み方向である方向D2に垂直な仮想平面に沿って延在する。方向D2から見た二次電池セル7の外形は、例えば長方形または正方形である。二次電池セル7は、例えば亜鉛電池のセルであり、一例ではニッケル亜鉛電池のセルである。二次電池セル7は、極板群及び電解液を収容する電槽71と、電槽71の上部開口を閉じる蓋体72とを有する。電槽71及び蓋体72の構成材料は例えば樹脂であり、一例ではポリプロピレンである。蓋体72には、導電性の正極端子73及び負極端子74が取り付けられている。正極端子73及び負極端子74は、複数の二次電池セル7の極板群同士を電気的に接続するために設けられている。正極端子73及び負極端子74は、蓋体72をその厚さ方向に貫通している。正極端子73及び負極端子74の各一端は、電槽71の内部において極板群と電気的に接続されている。隣り合う一方の二次電池セル7の正極端子73と他方の二次電池セル7の負極端子74とが配線を介して電気的に接続されることにより、複数の二次電池セル7は互いに直列に接続される。或いは、複数の二次電池セル7の正極端子73同士が配線を介して互いに電気的に接続され、複数の二次電池セル7の負極端子74同士が配線を介して互いに電気的に接続されてもよい。この場合、複数の二次電池セル7は、互いに並列に接続される。
【0028】
図7は、複数(図示例では3個)の組電池3を方向D3に沿って並べた状態を示す斜視図である。
図7に示されるように、複数の組電池3は、互いに隣り合う組電池3のうち一方の組電池3の筐体5の側面51と、他方の組電池3の筐体5の側面52とが互いに対向して接するように並んで配置されている。そして、互いに隣り合う組電池3のうち一方の組電池3の筐体5の凹凸形状510(
図3及び
図4を参照)と、他方の組電池3の筐体5の凹凸形状520(
図3及び
図4を参照)とが互いに嵌合する。このとき、互いに隣り合う組電池3のうち一方の組電池3の筐体5の側板571(
図4を参照)と、他方の組電池3の筐体5の側板572(
図4を参照)とは、例えばボルト及びナット等の局所的な固定方式を用いて、方向D3において互いに離れないように固定されてもよい。
【0029】
以上の構成を備える本実施形態の筐体5及び組電池3によって得られる効果について説明する。上述したように、本実施形態の筐体5は、複数の二次電池セル7を収容する。筐体5は、互いに反対を向く側面51及び側面52を備える。側面51は凹凸形状510を有する。側面52は、凹凸形状510と嵌合する形状の凹凸形状520を有する。
【0030】
図7に示されたように、この筐体5を複数並べて配置する際には、各筐体5の側面51と、該筐体5に隣接する筐体5の側面52とが互いに接する。このとき、各筐体5の側面51の凹凸形状510と、該筐体5に隣接する筐体5の側面52の凹凸形状520とが、互いに嵌合する。これにより、互いに隣接する筐体5同士が、ボルト及びナット等の局所的な固定方式よりも広がりを有する領域において固定される。具体的には、本実施形態の場合、凸部511の側面と凹部521の側面とが互いに当接しており、振動等が発生した際には凸部511の側面と凹部521の側面とが互いに押し合うので、互いに隣接する筐体5同士の方向D2における相対移動が抑制される。したがって、この筐体5によれば、振動等が発生した際の応力集中を低減し、筐体5の破断を抑制することができる。
【0031】
本実施形態のように、凹凸形状510が設けられる面が側板571の外面であり、凹凸形状520が設けられる面が側板572の外面であってもよい。この場合、各筐体5の側板571,572同士が接する態様にて複数の筐体5を並べて固定する構造において、応力集中を効果的に低減できる。
【0032】
本実施形態のように、凹凸形状510は二以上の凸部511を含み、凹凸形状520は、二以上の凸部511と嵌合する形状の二以上の凹部521を含んでもよい。例えばこのような構成により、凹凸形状510と凹凸形状520とを容易に嵌合させることができる。
【0033】
本実施形態のように、二以上の凸部511が、側面51及び側面52に沿う方向D1に沿って延びており、側面51及び側面52に沿い且つ方向D1と直交する方向D2において並んでもよい。そして、二以上の凹部521が、方向D1に沿って延びており、方向D2において並んでもよい。例えばこのような構成により、凹凸形状510と凹凸形状520とを容易に嵌合させることができる。また、互いに隣接する筐体5同士を、より広がりを有する領域において固定するので、振動等が発生した際の応力集中をより効果的に低減できる。
【0034】
本実施形態の組電池3は、筐体5と、筐体5に収容される複数の二次電池セル7と、を備える。この組電池3によれば、筐体5を備えることによって、振動等が発生した際の筐体5における応力集中を低減し、筐体5の破断を抑制することができる。故に、信頼性の高い組電池3を提供できる。この場合、二次電池セル7は亜鉛電池セルであってもよい。この場合、信頼性の高い亜鉛電池の組電池3を提供できる。
【0035】
本実施形態の組電池の集合体2は、組電池3を複数備える。上述したように、複数の組電池3は、互いに隣り合う組電池3のうち一方の組電池3の筐体5の凹凸形状510と、他方の組電池3の筐体5の凹凸形状520とが互いに嵌合するように並んで配置されている。この組電池の集合体2によれば、振動等が発生した際の筐体5における応力集中を低減し、筐体5の破断を抑制することができる。故に、信頼性の高い組電池の集合体2を提供できる。
【0036】
本実施形態の電気車1は、組電池の集合体2を備える。この電気車1によれば、振動等が発生した際の筐体5における応力集中を低減し、筐体5の破断を抑制することができる。故に、信頼性の高い電気車1を提供できる。
(第1変形例)
【0037】
図8及び
図9は、第1変形例に係る組電池3Aの外観を示す斜視図である。
図8は組電池3Aを側面51側から見た図であり、
図9は組電池3Aを側面52側から見た図である。組電池3Aは、前述した筐体5に代えて、筐体5Aを備える。組電池3Aの筐体5Aを除く他の構成は、組電池3と同様である。
【0038】
筐体5Aと前述した筐体5との相違点は、側面51,52が有する凹凸形状の態様である。
図8に示されるように、本変形例の側面51は、前述した凹凸形状510に代えて、凹凸形状514(第1の凹凸形状)を有する。凹凸形状514は、凸部515を含む。一例では、凹凸形状514は一つの凸部515のみからなる。凸部515は、側面51の法線方向から見て、例えば正方形、長方形、多角形、又は円形といった様々な形状を有し得る。図示例では、側面51の法線方向から見て、凸部515は正方形を成す。凸部515は、側面51における様々な位置に設けられることができる。図示例では、凸部515は側面51の略中央部分に設けられている。
【0039】
図9に示されるように、本変形例の側面52は、前述した凹凸形状520に代えて、凹凸形状524(第2の凹凸形状)を有する。凹凸形状524は、凹凸形状514と嵌合可能な形状を有する。本変形例の凹凸形状524は、凹部525を含む。一例では、凹凸形状524は一つの凹部525のみからなる。凹部525は、側面52の法線方向から見て、凸部515と嵌合可能な形状を有する。但し、側面52の法線方向から見た凹部525の形状は、凸部515の形状と一致してもよいが、必ずしも凸部515の形状と一致していなくてもよい。例えば、凸部515の形状が円形であるとき、凹部525の形状が正方形であってもよい。図示例では、側面51の法線方向から見て、凹部525は正方形を成す。凹部525は、側面52において、凸部515と対向する位置に設けられる。図示例では、凹部525は側面52の略中央部分に設けられている。
【0040】
本変形例によれば、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、本変形例では、凹凸形状514は一つの凸部515を含み、凹凸形状524は、凸部515と嵌合する形状の一つの凹部525を含む。このような構成により、凹凸形状514と凹凸形状524とを容易に嵌合させることができる。また、本変形例のように、凸部515が側面51の略中央部分に設けられ、凹部525が側面52の略中央部分に設けられてもよい。このような構成により、凹凸形状514と凹凸形状524とを容易に嵌合させることができる。
(第2変形例)
【0041】
図10は、第2変形例に係る組電池3Bの外観を示す斜視図である。組電池3Bは、前述した筐体5に代えて、筐体5Bを備える。組電池3Bの筐体5Bを除く他の構成は、組電池3と同様である。
【0042】
筐体5Bと前述した筐体5との相違点は、凹凸形状が形成される外面の位置である。
図10に示されるように、本変形例では、上面55が凹凸形状550を有し、下面56が凹凸形状560を有する。そして、側面51及び52は平坦である。すなわち、本変形例では、上面55が第1の外面に相当し、下面56が第2の外面に相当し、凹凸形状550が第1の凹凸形状に相当し、凹凸形状560が第2の凹凸形状に相当する。
【0043】
本変形例の凹凸形状550は、二以上の(図示例では2つの)凸部551を含む。二以上の凸部551は、上面55及び下面56に沿う方向D3(本変形例における第1方向)に沿って延びている。二以上の凸部551は、上面55及び下面56に沿い且つ方向D3と直交する方向D2(本変形例における第2方向)において並んでいる。一例では、二以上の凸部551の延在方向は互いに平行である。一例では、二以上の凸部551の各一端は方向D3における上面55の一端(例えば側面51側の端)に達し、二以上の凸部551の各他端は方向D3における上面55の他端(例えば側面52側の端)に達する。天板58の内面には、二以上の凸部551の反対側にそれぞれ位置する二以上の凹部(図示せず)が形成されている。また、上面55において互いに隣り合う凸部551の間の領域は、方向D3に沿って延びる凹部553を成す。凸部551の側面は、方向D2及びD3と平行な仮想平面に対して傾斜しており、凸部551の延在方向に垂直な断面の形状は台形状となっている。
【0044】
凹凸形状560は、凹凸形状550と嵌合可能な形状を有する。本実施形態の凹凸形状560は、二以上の(図示例では2つの)凹部561を含む。二以上の凹部561は、二以上の凸部551とそれぞれ一対一で対応する。すなわち、凹部561の数は凸部551の数と等しい。二以上の凹部561は、方向D3に沿って延びており、方向D2において並んでいる。一例では、二以上の凹部561の延在方向は互いに平行である。一例では、二以上の凹部561の各一端は方向D3における下面56の一端(例えば側面51側の端)に達し、二以上の凹部561の各他端は方向D3における下面56の他端(例えば側面52側の端)に達する。容器57の底板の内面には、二以上の凹部561の反対側にそれぞれ位置する二以上の凸部(図示せず)が形成されている。また、下面56において互いに隣り合う凹部561の間の領域は、方向D3に沿って延びる凸部563を成す。凹部561の内側面は、方向D2及びD3と平行な仮想平面に対して傾斜しており、凹部561の延在方向に垂直な断面の形状は逆台形状となっている。
【0045】
本変形例によれば、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、本変形例では、凹凸形状550が設けられる面が天板58の外面であり、凹凸形状560が設けられる面が容器57の底板の外面である。この場合、各筐体5Bの天板58と、該筐体5Bに隣接する筐体5Bの容器57の底板とが接する態様にて複数の筐体5Bを並べて固定する構造において、応力集中を効果的に低減できる。
(第3変形例)
【0046】
図11及び
図12は、第3変形例に係る組電池3Cの外観を示す斜視図である。
図11は組電池3Cを側面51側から見た図であり、
図12は組電池3Cを側面52側から見た図である。組電池3Cは、前述した筐体5に代えて、筐体5Cを備える。組電池3Cの筐体5Cを除く他の構成は、組電池3と同様である。
【0047】
筐体5Cと前述した筐体5との相違点は、側面51,52が有する凹凸形状の態様である。
図11に示されるように、本変形例の側面51は、前述した凹凸形状510に代えて、凹凸形状516(第1の凹凸形状)を有する。凹凸形状516は、一つ以上(図示例では2つ)の凸部511と、一つ以上(図示例では2つ)の凸部517と、少なくとも一つの(図示例では全ての)凸部511の頂面に形成された凹凸形状518(第3の凹凸形状)とを含む。図示例では、凹凸形状518は一つの凹部519のみからなるが、これに限らず、凹凸形状518は二以上の凹部を含んでもよく、凹部に代えて又は凹部とともに一又は二以上の凸部を含んでもよい。凸部511の形状は上記実施形態と同様である。
【0048】
凸部517は、側面51の法線方向から見て、例えば正方形、長方形、多角形、又は円形といった様々な形状を有し得る。図示例では、側面51の法線方向から見て、凸部517は正方形を成す。凸部517は、側面51における凸部511上を除く様々な位置に設けられることができる。図示例では、凸部517は、互いに隣り合う凸部511の間の凹部513の底面に設けられている。凸部517が複数設けられる場合、これらの凸部517は凹部513の延在方向(すなわち凸部511の延在方向)に沿って並んで配置されてもよい。
【0049】
また、
図12に示されるように、本変形例の側面52は、前述した凹凸形状520に代えて、凹凸形状526(第2の凹凸形状)を有する。凹凸形状526は、一つ以上(図示例では2つ)の凹部521を含む。凹部521の形状は上記実施形態と同様である。凹凸形状526は、少なくとも一つの(図示例では全ての)凹部521の底面に形成された、凹凸形状518と嵌合する形状の凹凸形状528(第4の凹凸形状)を含む。図示例では、凹凸形状528は一つの凸部529のみからなるが、これに限らず、凹凸形状528は二以上の凹部を含んでもよく、凹部に代えて又は凹部とともに一又は二以上の凸部を含んでもよい。
【0050】
加えて、凹凸形状526は、凸部517と嵌合する形状を有する、凸部517と同数の別の凹部527を含む。これらの凹部527は、側面52の法線方向から見て、例えば正方形、長方形、多角形、又は円形といった様々な形状を有し得る。側面52の法線方向から見た凹部527の形状は、凸部517の形状と一致してもよいが、必ずしも凸部517の形状と一致していなくてもよい。例えば、凸部517の形状が円形であるとき、凹部527の形状が正方形であってもよい。図示例では、側面52の法線方向から見て、凹部527は正方形を成す。凹部527は、側面52における凹部521上を除く様々な位置に設けられることができる。図示例では、凹部527は、互いに隣り合う凹部521の間の凸部523の頂面に設けられている。凹部527が複数設けられる場合、これらの凹部527は凸部523の延在方向(すなわち凹部521の延在方向)に沿って並んで配置されてもよい。
【0051】
本変形例によれば、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、本変形例では、凹凸形状516が、凸部511の頂面に形成された凹凸形状518を含む。また、凹凸形状526は、凹部521の底面に形成された、凹凸形状518と嵌合する形状の凹凸形状528を含む。この場合、より複雑な形状によって凹凸形状516,526が互いに嵌合するので、応力をより分散させ得るとともに、互いに隣接する筐体5C同士の固定をより強固にできる。
【0052】
なお、本変形例では凹凸形状518が全ての凸部511の頂面に形成され、凹凸形状528が全ての凹部521の底面に形成される場合を例示したが、凹凸形状518は一部の凸部511の頂面に形成されてもよく、凹凸形状528は一部の凹部521の頂面に形成されてもよい。
【0053】
本開示による組電池用筐体及び組電池は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では二次電池セルとして亜鉛電池セルを例示したが、亜鉛電池セルに代えて他の二次電池セルを用いてもよい。
【0054】
また、本開示における第1及び第2の凹凸形状は互いに嵌合可能であればよく、上述した各形態に限られない。例えば、上記実施形態では凹凸形状510が2つの凸部511を含み、凹凸形状520が2つの凹部521を含んでいるが、凹凸形状510は1つ又は3つ以上の凸部511を含んでもよく、凹凸形状520は1つ又は3つ以上の凹部521を含んでもよい。また、第1変形例では凹凸形状514が1つの凸部515を含み、凹凸形状524が1つの凹部525を含んでいるが、凹凸形状514は2つ以上の凸部515を含んでもよく、凹凸形状524は2つ以上の凹部525を含んでもよい。また、第1及び第2の凹凸形状は、上記実施形態及び各変形例の凹凸形状を組み合わせて構成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…電気車、2…集合体、3,3A,3B,3C…組電池、4,5,5A,5B,5C…筐体、6…二次電池モジュール、7…二次電池セル、31,32…電極、51~54…側面、55…上面、56…下面、57…容器、58…天板、71…電槽、72…蓋体、73…正極端子、74…負極端子、510,514,516,518,520,524,526,528,550,560…凹凸形状、511,515,517,522,523,529,551,563…凸部、512,513,519,521,525,527,553,561…凹部、571~574…側板、575…底板、D1,D2,D3…方向。