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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016016
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】撮像レンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20220114BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20220114BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
H04N5/225 400
H04N5/225 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119264
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 広樹
【テーマコード(参考)】
2H087
5C122
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA03
2H087MA08
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB13
2H087PB15
2H087QA02
2H087QA05
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA43
5C122EA12
5C122FB02
5C122FB03
5C122HB06
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】良好な光学性能を有する撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像レンズは、最も物体側から像側へ順に連続して、第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを備える。合焦の際には第2レンズ群のみが移動する。第2レンズ群の最も像側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである。第2レンズ群の最も像側の負メニスカスレンズの物体側の面の近軸曲率半径をrF、最大像高をYとした場合、撮像レンズは、0.5<rF/Y<3で表される条件式を満足する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も物体側から像側へ順に連続して、第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを備え、
合焦の際に、前記第1レンズ群は像面に対して固定され、前記第2レンズ群のみが移動し、
前記第2レンズ群の最も像側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであり、
前記負メニスカスレンズの物体側の面の近軸曲率半径をrF、
最大像高をYとした場合、
0.5<rF/Y<3 (1)
で表される条件式(1)を満足する撮像レンズ。
【請求項2】
前記第1レンズ群の最も物体側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記第2レンズ群の前記負メニスカスレンズの像側の面の近軸曲率半径をrRとした場合、
0.06<(rF-rR)/(rF+rR)<0.27 (2)
で表される条件式(2)を満足する請求項1又は2に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記第2レンズ群の像側から2番目のレンズの像側の面の近軸曲率半径をrRRとした場合、
0.35<(rRR+rF)/(rRR-rF)<1 (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第2レンズ群の最も物体側のレンズ面から前記第2レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離をTL2とした場合、
1.2<TL2/Y<2 (4)
で表される条件式(4)を満足する請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第1レンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含み、
前記第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズは像側に凸面を向けた負メニスカスレンズである請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も像側の前記負レンズの物体側の面の近軸曲率半径をr1F、
無限遠物体に合焦した状態における前記撮像レンズの焦点距離をfとした場合、
-2.5<r1F/f<-0.3 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項6に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記第1レンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含み、
前記第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズのd線基準のアッベ数をν1とした場合、
15<ν1<38 (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ群は少なくとも1枚の正レンズを含み、
前記第2レンズ群に含まれる正レンズのうち、最も像側の正レンズのd線基準のアッベ数をν2とした場合、
10<ν2<27 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項1から8のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、
前記第2レンズ群の焦点距離をf2とした場合、
0.05<f2/f1<0.32 (8)
で表される条件式(8)を満足する請求項1から9のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
合焦の際に、各レンズ群内のレンズの間隔は全て固定されている請求項1から10のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項12】
合焦の際に像面に対して固定されている絞りを含む請求項1から11のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記第1レンズ群の最も像側のレンズ面より像側に絞りを含む請求項1から12のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項14】
前記第2レンズ群は複数の正レンズを含む請求項1から13のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項15】
前記第2レンズ群は少なくとも3枚の正レンズを含む請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項16】
前記撮像レンズは少なくとも1枚の負レンズを含み、
前記撮像レンズに含まれる負レンズのうち最も物体側の負レンズの像側に連続して配置されたレンズの物体側の面は、凹面である請求項1から15のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項17】
合焦の際に像面に対して固定されている第3レンズ群を備える請求項1から16のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項18】
前記第1レンズ群の最も物体側のレンズは負レンズであり、
前記第1レンズ群の最も物体側の前記負レンズの焦点距離をfL1、
前記第1レンズ群の物体側から2番目のレンズの焦点距離をfL2とした場合、
0.7<fL1/fL2<2 (9)
で表される条件式(9)を満足する請求項1から17のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項19】
前記第1レンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含み、
前記第1レンズ群に含まれる全ての負レンズについてのd線基準のアッベ数の最大値をνmax、
前記第1レンズ群に含まれる全ての負レンズについてのd線基準のアッベ数の最小値をνminとした場合、
20<νmax-νmin<100 (10)
で表される条件式(10)を満足する請求項1から18のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の撮像レンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像レンズ、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等に用いられる撮像レンズとして、下記特許文献1、下記特許文献2、および下記特許文献3に記載のレンズ系が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-101180号公報
【特許文献2】特開2016-180851号公報
【特許文献3】特開2010-113248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、より良好な光学性能を有する撮像レンズが要望されている。
【0005】
本開示は、上記事情を鑑みてなされたものであり、良好な光学性能を有する撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の撮像レンズは、最も物体側から像側へ順に連続して、第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを備え、合焦の際に、第1レンズ群は像面に対して固定され、第2レンズ群のみが移動し、第2レンズ群の最も像側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであり、上記負メニスカスレンズの物体側の面の近軸曲率半径をrF、最大像高をYとした場合、
0.5<rF/Y<3 (1)
で表される条件式(1)を満足する。
【0007】
第1レンズ群の最も物体側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであることが好ましい。
【0008】
第2レンズ群の上記負メニスカスレンズの像側の面の近軸曲率半径をrRとした場合、本開示の撮像レンズは、
0.06<(rF-rR)/(rF+rR)<0.27 (2)
で表される条件式(2)を満足することが好ましい。
【0009】
第2レンズ群の像側から2番目のレンズの像側の面の近軸曲率半径をrRRとした場合、本開示の撮像レンズは、
0.35<(rRR+rF)/(rRR-rF)<1 (3)
で表される条件式(3)を満足することが好ましい。
【0010】
第2レンズ群の最も物体側のレンズ面から第2レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離をTL2とした場合、
1.2<TL2/Y<2 (4)
で表される条件式(4)を満足することが好ましい。
【0011】
第1レンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含み、第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズは像側に凸面を向けた負メニスカスレンズであることが好ましい。その際に、第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も像側の上記負レンズの物体側の面の近軸曲率半径をr1F、無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの焦点距離をfとした場合、本開示の撮像レンズは、
-2.5<r1F/f<-0.3 (5)
で表される条件式(5)を満足することが好ましい。
【0012】
第1レンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含み、第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズのd線基準のアッベ数をν1とした場合、本開示の撮像レンズは、
15<ν1<38 (6)
で表される条件式(6)を満足することが好ましい。
【0013】
第2レンズ群は少なくとも1枚の正レンズを含み、第2レンズ群に含まれる正レンズのうち、最も像側の正レンズのd線基準のアッベ数をν2とした場合、本開示の撮像レンズは、
10<ν2<27 (7)
で表される条件式(7)を満足することが好ましい。
【0014】
第1レンズ群の焦点距離をf1、第2レンズ群の焦点距離をf2とした場合、本開示の撮像レンズは、
0.05<f2/f1<0.32 (8)
で表される条件式(8)を満足することが好ましい。
【0015】
合焦の際に、各レンズ群内のレンズの間隔は全て固定されていることが好ましい。
【0016】
本開示の撮像レンズは、合焦の際に像面に対して固定されている絞りを含むことが好ましい。また、本開示の撮像レンズは、第1レンズ群の最も像側のレンズ面より像側に絞りを含むことが好ましい。
【0017】
第2レンズ群は複数の正レンズを含むことが好ましい。第2レンズ群は少なくとも3枚の正レンズを含むことが好ましい。
【0018】
本開示の撮像レンズは少なくとも1枚の負レンズを含み、撮像レンズに含まれる負レンズのうち最も物体側の負レンズの像側に連続して配置されたレンズの物体側の面は、凹面であるように構成してもよい。
【0019】
本開示の撮像レンズは、合焦の際に像面に対して固定されている第3レンズ群を備えるように構成してもよい。
【0020】
第1レンズ群の最も物体側のレンズは負レンズであり、第1レンズ群の最も物体側の負レンズの焦点距離をfL1、第1レンズ群の物体側から2番目のレンズの焦点距離をfL2とした場合、本開示の撮像レンズは、
0.7<fL1/fL2<2 (9)
で表される条件式(9)を満足することが好ましい。
【0021】
第1レンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含み、第1レンズ群に含まれる全ての負レンズについてのd線基準のアッベ数の最大値をνmax、第1レンズ群に含まれる全ての負レンズについてのd線基準のアッベ数の最小値をνminとした場合、本開示の撮像レンズは、
20<νmax-νmin<100 (10)
で表される条件式(10)を満足することが好ましい。
【0022】
本開示の撮像装置は、本開示の撮像レンズを備えている。
【0023】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、フィルタ、およびカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0024】
本明細書において、「正の屈折力を有する~群」は、群全体として正の屈折力を有することを意味する。同様に「負の屈折力を有する~群」は、群全体として負の屈折力を有することを意味する。「~レンズ群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。
【0025】
なお、本明細書における「レンズ群」とは、撮像レンズの構成部分であって、合焦の際に変化する空気間隔によって分けられた、少なくとも1枚のレンズを含む部分を指す。合焦の際には、レンズ群単位で移動又は固定され、かつ、1つのレンズ群内のレンズの相互間隔は変化しない。
【0026】
「正の屈折力を有するレンズ」、「正レンズ」、および「正のレンズ」は同義である。「負の屈折力を有するレンズ」、「負レンズ」、および「負のレンズ」は同義である。「負メニスカスレンズ」および「メニスカス形状の負のレンズ」は同義である。
【0027】
非球面を含むレンズに関する、屈折力の符号、面形状、および曲率半径は、特に断りが無い限り、近軸領域で考えることにする。曲率半径の符号については、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負とする。複合非球面レンズ(球面レンズと、その球面レンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。
【0028】
条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、無限遠物体に合焦した状態においてd線を基準とした場合の値である。本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「F線」は輝線である。本明細書においては、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)として扱う。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、良好な光学性能を有する撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1の撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図2】実施例1の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、および倍率色収差図である。
図3】実施例1の撮像レンズの無限遠物体に合焦した状態の横収差図である。
図4】実施例1の撮像レンズの近距離物体に合焦した状態の横収差図である。
図5】実施例2の撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図6】実施例2の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、および倍率色収差図である。
図7】実施例2の撮像レンズの無限遠物体に合焦した状態の横収差図である。
図8】実施例2の撮像レンズの近距離物体に合焦した状態の横収差図である。
図9】実施例3の撮像レンズの構成と光束を示す断面図である。
図10】実施例3の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、および倍率色収差図である。
図11】実施例3の撮像レンズの無限遠物体に合焦した状態の横収差図である。
図12】実施例3の撮像レンズの近距離物体に合焦した状態の横収差図である。
図13】一実施形態に係る撮像装置の正面側の斜視図である。
図14】一実施形態に係る撮像装置の背面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
【0032】
図1に、本開示の一実施形態に係る撮像レンズの無限遠物体に合焦した状態における構成と光束の断面図を示す。図1では、光束として、軸上光束2および最大像高の光束3を示す。図1では、左側が物体側、右側が像側である。図1に示す例は後述の実施例1の撮像レンズに対応している。
【0033】
図1では、撮像レンズが撮像装置に適用されることを想定して、撮像レンズと像面Simとの間に平行平板状の光学部材PPが配置された例を示している。光学部材PPは、各種フィルタ、および/又はカバーガラス等を想定した部材である。各種フィルタとは例えば、ローパスフィルタ、赤外線カットフィルタ、および特定の波長域をカットするフィルタ等である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0034】
本開示の撮像レンズは、光軸Zに沿って物体側から像側へ順に、最も物体側から像側へ順に連続して、第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とを備える。第2レンズ群G2を正の屈折力を有するレンズ群とすることによって、Fナンバーが小さいレンズ系において収差の変動を抑えながら合焦を行うことに有利となる。
【0035】
一例として、図1の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とからなる。図1の例では、第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、レンズL11~L17の7枚のレンズと開口絞りStとからなり、第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、レンズL21~L26の6枚のレンズからなり、第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、レンズL31~32の2枚のレンズからなる。図1の開口絞りStは大きさおよび形状を示しているのではなく光軸方向の位置を示している。
【0036】
本開示の撮像レンズでは、合焦の際に、第2レンズ群G2のみが移動する。すなわち、図1の例では、合焦の際に、光軸Zに沿って第2レンズ群G2のみが移動し、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3は像面Simに対して固定されている。以下では合焦の際に移動するレンズ群をフォーカス群と称する。図1に示す第2レンズ群G2の下の左方向へ向かう矢印は、第2レンズ群G2がフォーカス群であり、無限遠物体から最至近物体へ合焦する際に物体側へ移動することを意味する。本開示の撮像レンズでは、フォーカス群は第2レンズ群G2のみからなる。このように、大型化しやすい第1レンズ群G1が合焦の際に固定されている構成にすることによって、フォーカス群の軽量化に有利となる。
【0037】
本開示の撮像レンズでは、第2レンズ群G2の最も像側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであるように構成される。この構成によって、球面収差を抑えながら、像面湾曲を補正することに有利となる。
【0038】
以下に、本開示の撮像レンズの好ましい構成および可能な構成について述べる。以下の記述では、本開示の撮像レンズを撮像レンズともいう。
【0039】
第2レンズ群G2の最も像側の負メニスカスレンズの物体側の面の近軸曲率半径をrF、最大像高をYとした場合、撮像レンズは下記条件式(1)を満足することが好ましい。なお、Yは正の値をとるものとする。条件式(1)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、この面の曲率半径の絶対値が小さくなり過ぎないため、レンズの加工性において有利となり、また、像面湾曲が補正過剰になるのを抑制することに有利となる。条件式(1)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、像面湾曲が補正不足になるのを抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(1-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(1-2)を満足することがさらにより好ましい。
0.5<rF/Y<3 (1)
0.65<rF/Y<2.2 (1-1)
0.8<rF/Y<1.4 (1-2)
【0040】
第2レンズ群G2の最も像側の負メニスカスレンズについて、物体側の面の近軸曲率半径をrF、像側の面の近軸曲率半径をrRとした場合、撮像レンズは下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)は、第2レンズ群G2の最も像側の負メニスカスレンズのシェイプファクターに関する式である。条件式(2)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、球面収差が補正過剰になるのを抑制することに有利となる。条件式(2)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、球面収差が補正不足になるのを抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(2-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(2-2)を満足することがさらにより好ましい。
0.06<(rF-rR)/(rF+rR)<0.27 (2)
0.12<(rF-rR)/(rF+rR)<0.24 (2-1)
0.17<(rF-rR)/(rF+rR)<0.21 (2-2)
【0041】
第2レンズ群G2の最も像側の負メニスカスレンズの物体側の面の近軸曲率半径をrF、第2レンズ群G2の像側から2番目のレンズの像側の面の近軸曲率半径をrRRとした場合、撮像レンズは下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)は、第2レンズ群G2の像側から2番目のレンズと第2レンズ群G2の最も像側の負メニスカスレンズとの間に形成される空気レンズのシェイプファクターに関する式である。条件式(3)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、高画角の軸外光束の屈折が過剰になるのを抑制できるため、コマ収差の発生を抑えることができる。条件式(3)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、高画角の軸外光束の屈折が弱くなり過ぎないため、像面湾曲の補正に有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(3-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(3-2)を満足することがさらにより好ましい。
0.35<(rRR+rF)/(rRR-rF)<1 (3)
0.4<(rRR+rF)/(rRR-rF)<0.8 (3-1)
0.45<(rRR+rF)/(rRR-rF)<0.6 (3-2)
【0042】
第2レンズ群G2の最も物体側のレンズ面から第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離をTL2、最大像高をYとした場合、撮像レンズは下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、急唆に光線を曲げることなく像側へ光線を導くことが容易となるため、合焦の際の収差変動の抑制に有利となる。条件式(4)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、フォーカス群の大型化を抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(4-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(4-2)を満足することがさらにより好ましい。
1.2<TL2/Y<2 (4)
1.3<TL2/Y<1.8 (4-1)
1.4<TL2/Y<1.6 (4-2)
【0043】
第1レンズ群G1の最も物体側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであることが好ましい。このようにした場合は、広角化に有利となる。
【0044】
第1レンズ群G1は少なくとも1枚の負レンズを含み、第1レンズ群G1に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズは像側に凸面を向けた負メニスカスレンズであることが好ましい。このようにした場合は、軸上光束と軸外光束との分離が少なくなる位置に像側に凸面を向けた負メニスカスレンズを配置することができるので、これによって軸上色収差の補正に有利となる。
【0045】
第1レンズ群G1が少なくとも1枚の負レンズを含み、第1レンズ群G1に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズは像側に凸面を向けた負メニスカスレンズである構成において、撮像レンズは下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)では、第1レンズ群G1に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズの物体側の面の近軸曲率半径をr1F、無限遠物体に合焦した状態における撮像レンズの焦点距離をfとしている。条件式(5)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、上記の物体側の面の屈折力が弱くなり過ぎないため、軸上色収差の補正に有利となる。条件式(5)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、上記の物体側の面の屈折力が強くなり過ぎないため、特に、軸上光線のうち瞳周辺を通る光線について色収差が補正過剰になるのを抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(5-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(5-2)を満足することがさらにより好ましい。
-2.5<r1F/f<-0.3 (5)
-1.8<r1F/f<-0.5 (5-1)
-1.1<r1F/f<-0.7 (5-2)
【0046】
第1レンズ群G1は少なくとも1枚の負レンズを含み、第1レンズ群G1に含まれる負レンズのうち、最も像側の負レンズのd線基準のアッベ数をν1とした場合、撮像レンズは下記条件式(6)を満足することが好ましい。条件式(6)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、軸上色収差が補正過剰になるのを抑制することに有利となる。条件式(6)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、軸上色収差が補正不足になるのを抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(6-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(6-2)を満足することがさらにより好ましい。
15<ν1<38 (6)
18<ν1<33 (6-1)
23<ν1<29 (6-2)
【0047】
第1レンズ群G1は少なくとも1枚の負レンズを含み、第1レンズ群G1に含まれる全ての負レンズについてのd線基準のアッベ数の最大値をνmax、第1レンズ群G1に含まれる全ての負レンズについてのd線基準のアッベ数の最小値をνminとした場合、撮像レンズは下記条件式(10)を満足することが好ましい。条件式(10)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、倍率色収差が補正不足になるのを抑制することに有利となる。条件式(10)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、倍率色収差が補正過剰になるのを抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(10-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(10-2)を満足することがさらにより好ましい。
20<νmax-νmin<100 (10)
30<νmax-νmin<85 (10-1)
40<νmax-νmin<75 (10-2)
【0048】
第2レンズ群G2は少なくとも1枚の正レンズを含み、第2レンズ群G2に含まれる正レンズのうち、最も像側の正レンズのd線基準のアッベ数をν2とした場合、撮像レンズは下記条件式(7)を満足することが好ましい。条件式(7)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、倍率色収差が補正過剰になるのを抑制することに有利となる。条件式(7)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、倍率色収差が補正不足になるのを抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(7-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(7-2)を満足することがさらにより好ましい。
10<ν2<27 (7)
13<ν2<24 (7-1)
16<ν2<21 (7-2)
【0049】
第2レンズ群G2は複数の正レンズを含むことが好ましい。このようにした場合は、合焦の際の球面収差の変動を抑えることに有利となる。この効果をより顕著に得るためには、第2レンズ群G2は少なくとも3枚の正レンズを含むことが好ましい。
【0050】
第1レンズ群G1の焦点距離をf1、第2レンズ群G2の焦点距離をf2とした場合、撮像レンズは下記条件式(8)を満足することが好ましい。撮像レンズが下記条件式(8)を満足する場合、第1レンズ群G1は正の屈折力を有するレンズ群となる。第1レンズ群G1が正の屈折力を有するレンズ群であることによって、負の屈折力を有するレンズ群である場合に比べて、フォーカス群の小型化に有利となる。条件式(8)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の正の屈折力が弱くなり過ぎないため、第2レンズ群G2に入射する光束の小径化が容易となり、これによって、フォーカス群の小型化に有利となる。条件式(8)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなり過ぎないため、合焦の際のフォーカス群の移動量の抑制が容易となり、これによって、光学系全体の小型化に有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(8-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(8-2)を満足することがさらにより好ましい。
0.05<f2/f1<0.32 (8)
0.1<f2/f1<0.27 (8-1)
0.15<f2/f1<0.22 (8-2)
【0051】
第1レンズ群G1の最も物体側のレンズが負レンズであり、第1レンズ群G1の最も物体側の負レンズの焦点距離をfL1、第1レンズ群G1の物体側から2番目のレンズの焦点距離をfL2とした場合、撮像レンズは下記条件式(9)を満足することが好ましい。条件式(9)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の物体側から2番目のレンズの屈折力が弱くなり過ぎないため、高画角のコマ収差の補正に有利となる。条件式(9)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の最も物体側の負レンズの屈折力が弱くなり過ぎないため、広角化する際に、この負レンズの大径化を抑制することができ、これによって、小型化に有利となる。より良好な特性を得るためには、撮像レンズは下記条件式(9-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(9-2)を満足することがさらにより好ましい。
0.7<fL1/fL2<2 (9)
0.9<fL1/fL2<1.8 (9-1)
1.1<fL1/fL2<1.6 (9-2)
【0052】
撮像レンズが少なくとも1枚の負レンズを含む場合、撮像レンズに含まれる負レンズのうち最も物体側の負レンズの像側に連続して配置されたレンズの物体側の面は、凹面であるように構成してもよい。このようにした場合は、撮像レンズに含まれる負レンズのうち最も物体側の負レンズを小径化するのに有利となる。図1の撮像レンズはこの構成を有する。図1の例において、最も物体側の負のレンズL11の像側に連続して配置されたレンズL12の物体側の面は凹面となっている。
【0053】
撮像レンズが開口絞りStを含む場合、合焦の際に、開口絞りStは像面Simに対して固定されていることが好ましい。このようにした場合は、フォーカス群の軽量化に有利となる。また、開口絞りStは第1レンズ群G1の最も像側のレンズ面より像側に配置されていることが好ましい。このようにした場合は、第2レンズ群G2に入射する高画角の軸外光束の光軸Zからの高さを低くできるため、フォーカス群の軽量化に有利となる。
【0054】
図1に示すように、撮像レンズは、第2レンズ群G2より像側に、合焦の際に像面Simに対して固定されている第3レンズ群G3を備えてもよい。このようにした場合は、倍率色収差の補正に有利となる。なお、撮像レンズは、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、上記第3レンズ群G3とからなるように構成してもよく、このようにした場合は、良好な収差補正および小型化の両立に有利となる。
【0055】
撮像レンズが上記第3レンズ群G3を備える場合、上記第3レンズ群G3は負の屈折力を有するレンズ群であることが好ましい。このようにした場合は、第2レンズ群G2の正の屈折力を強くすることができるため、合焦の際のフォーカス群の移動量を抑えることに有利となる。
【0056】
合焦の際に、各レンズ群内のレンズの間隔は全て固定されていることが好ましい。このようにした場合は、フォーカス群の駆動機構の簡素化に有利となる。
【0057】
具体的には、各レンズ群は例えば、以下の構成を採ることができる。
【0058】
第1レンズ群G1は、4枚の負レンズと、3枚の正レンズとからなるように構成してもよい。あるいは、第1レンズ群G1は、5枚の負レンズと、3枚の正レンズとからなるように構成してもよい。第1レンズ群G1は、2組の接合レンズを含むように構成してもよく、このようにした場合は、色収差の補正に有利となる。第1レンズ群G1の最も像側のレンズは正レンズであるように構成してもよく、このようにした場合は、フォーカス群の小径化に有利となる。
【0059】
第2レンズ群G2は、3枚の正レンズと、3枚の負レンズとからなるように構成してもよい。第2レンズ群G2は、少なくとも1組の接合レンズを含むように構成してもよく、このようにした場合は、色収差の補正に有利となる。第2レンズ群G2が接合レンズを含む場合、その接合面は像側に凸面を向けた形状としてもよく、このようにした場合は、収差発生量の抑制に有利となる。
【0060】
第3レンズ群G3は、1枚の正レンズと、1枚の負レンズとからなるように構成してもよく、このようにした場合は、良好な性能および小型化の両立に有利となる。また、この場合、第3レンズ群G3の正レンズと負レンズとは接合されていてもよい。接合されている場合は、接合されていない場合に比べてより小型化に有利となる。
【0061】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。なお、条件式に関する好ましい構成は、式の形式で記載された条件式に限定されず、好ましい、より好ましい、および、さらにより好ましいとされた条件式の中から下限と上限とを任意に組み合わせて得られる全ての条件式を含む。
【0062】
一例として、本開示の撮像レンズの好ましい一態様は、最も物体側から像側へ順に連続して、第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とを備え、合焦の際に、第1レンズ群G1は像面Simに対して固定され、第2レンズ群G2のみが移動し、第2レンズ群G2の最も像側のレンズは物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであり、上記条件式(1)を満足する撮像レンズである。この好ましい一態様の撮像レンズによれば、良好な性能を保持し、フォーカス群の軽量化を図りながら、Fナンバーが小さいレンズ系において、収差の変動を抑えながら合焦を行うことに有利となる。
【0063】
次に、本開示の撮像レンズの実施例について図面を参照して説明する。
[実施例1]
実施例1の撮像レンズの構成と光束を示す断面図は図1に示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる。無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群G2のみが光軸Zに沿って物体側へ移動し、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3は像面Simに対して固定されている。
【0064】
第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL11と、両凹形状の負のレンズL12と、両凸形状の正のレンズL13と、両凹形状の負のレンズL14と、像側に凸面を向けたメニスカス形状の正のレンズL15と、像側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL16と、両凸形状の正のレンズL17と、開口絞りStとからなる。レンズL12とレンズL13とレンズL14とは接合されている。レンズL15とレンズL16とは接合されている。
【0065】
第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、両凸形状の正のレンズL21と、物体側に凹面を向けた負のレンズL22と、像側に凸面を向けた正のレンズL23と、物体側に凹面を向けた負のレンズL24と、両凸形状の正のレンズL25と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL26とからなる。レンズL21とレンズL22とは接合されている。レンズL23とレンズL24とは接合されている。
【0066】
第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、両凸形状の正のレンズL31と、物体側に凹面を向けた負のレンズL32とからなる。レンズL31とレンズL32とは接合されている。
【0067】
実施例1の撮像レンズについて、基本レンズデータを表1に、諸元と可変面間隔を表2に、非球面係数を表3に示す。表1において、Sの欄には最も物体側の面を第1面とし像側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示し、rの欄には各面の曲率半径を示し、dの欄には各面とその像側に隣接する面との光軸上の面間隔を示し、ndの欄には各構成要素のd線に対する屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0068】
表1では、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1には開口絞りStおよび光学部材PPも示している。開口絞りStに対応する面の面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。表1のdの最下欄の値は表中の最も像側の面と像面Simとの間隔である。表1では変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の物体側の面番号を付してdの欄に記入している。
【0069】
表2に、焦点距離f、開放FナンバーFNo.、最大全画角2ωmax、および、合焦の際の可変面間隔の各値を示す。2ωmaxの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表2では、物体距離が、無限遠および110mm(ミリメートル)のそれぞれの場合について示す。すなわち、無限遠物体に合焦した状態の値を「無限遠」と表記した欄に示し、物体距離が110mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の値を「110mm」と表記した欄に示す。物体距離は、物体から第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離である。表2に示す値は、d線を基準とした場合の値である。
【0070】
表1では、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表3において、Sの欄には非球面の面番号を示し、KAおよびAm(m=3、4、5、・・・16)の欄には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h/{1+(1-KA×C×h1/2}+ΣAm×h
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0071】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では予め定められた桁でまるめた数値を記載している。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
図2図3、および図4に、実施例1の撮像レンズの各収差図を示す。図2では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。図2では「無限遠」と付した上段に無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示し、「110mm」と付した下段に物体距離が110mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の各収差図を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線における収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線における収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線における収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線における収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線における収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。図2では各図の縦軸上端に対応するFNo.とωの値を示している。
【0076】
図3では無限遠物体に合焦した状態の横収差を示す。図3では、左列にタンジェンシャル方向の横収差を、右列にサジタル方向の横収差を示す。図3では、d線、C線、およびF線における収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。図3のωは半画角を意味する。図3と同様に、図4では、物体距離が110mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の横収差を示す。
【0077】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0078】
[実施例2]
実施例2の撮像レンズの構成と光束を示す断面図を図5に示す。実施例2の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とからなる。無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群G2のみが光軸Zに沿って物体側へ移動し、第1レンズ群G1は像面Simに対して固定されている。
【0079】
第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL11と、両凹形状の負のレンズL12と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正のレンズL13と、両凹形状の負のレンズL14と、両凸形状の正のレンズL15と、像側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL16と、両凸形状の正のレンズL17と、開口絞りStとからなる。レンズL12とレンズL13とは接合されている。レンズL14とレンズL15とは接合されている。
【0080】
第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、両凸形状の正のレンズL21と、両凹形状の負のレンズL22と、両凸形状の正のレンズL23と、両凹形状の負のレンズL24と、両凸形状の正のレンズL25と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL26とからなる。レンズL21とレンズL22とは接合されている。レンズL23とレンズL24とは接合されている。
【0081】
実施例2の撮像レンズについて、基本レンズデータを表4に、諸元と可変面間隔を表5に、非球面係数を表6に、各収差図を図6図8に示す。図6では、上段に無限遠物体に合焦した状態の球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示し、下段に物体距離が110mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。図7では、無限遠物体に合焦した状態の横収差を示す。図8では、物体距離が110mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の横収差を示す。
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
[実施例3]
実施例3の撮像レンズの構成と光束を示す断面図を図9に示す。実施例3の撮像レンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる。無限遠物体から最至近物体への合焦の際に、第2レンズ群G2のみが光軸Zに沿って物体側へ移動し、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3は像面Simに対して固定されている。
【0086】
第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL11と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL12と、両凹形状の負のレンズL13と、両凸形状の正のレンズL14と、両凹形状の負のレンズL15と、像側に凸面を向けたメニスカス形状の正のレンズL16と、像側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL17と、両凸形状の正のレンズL18と、開口絞りStとからなる。レンズL14とレンズL15とは接合されている。レンズL16とレンズL17とは接合されている。
【0087】
第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、両凸形状の正のレンズL21と、両凹形状の負のレンズL22と、両凸形状の正のレンズL23と、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負のレンズL24と、両凸形状の正のレンズL25と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負のレンズL26とからなる。レンズL21とレンズL22とレンズL23とレンズL24とは接合されている。
【0088】
第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、両凸形状の正のレンズL31と、両凹形状の負のレンズL32とからなる。レンズL31とレンズL32とは接合されている。
【0089】
実施例3の撮像レンズについて、基本レンズデータを表7に、諸元と可変面間隔を表8に、非球面係数を表9に、各収差図を図10図12に示す。図10では、上段に無限遠物体に合焦した状態の球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示し、下段に物体距離が110mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。図11では、無限遠物体に合焦した状態の横収差を示す。図12では、物体距離が110mm(ミリメートル)の物体に合焦した状態の横収差を示す。
【0090】
【表7】
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
表10に実施例1~3の撮像レンズの条件式(1)~(10)の対応値を示す。
【表10】
【0094】
実施例1~3の撮像レンズは、無限遠物体に合焦した状態でのFナンバーが1.5より小さく、最大画角が75度以上ある。このように、実施例1~3の撮像レンズは、小さなFナンバーと大きな画角を有しながらも、フォーカス群の軽量化および小型化が図られ、合焦の際の収差変動が少なく、諸収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0095】
次に、本開示の実施形態に係る撮像装置について説明する。図13および図14に本開示の一実施形態に係る撮像装置であるカメラ30の外観図を示す。図13はカメラ30を正面側から見た斜視図を示し、図14はカメラ30を背面側から見た斜視図を示す。カメラ30は、いわゆるミラーレスタイプのデジタルカメラであり、交換レンズ20を取り外し自在に装着可能である。交換レンズ20は、鏡筒内に収納された本開示の一実施形態に係る撮像レンズ1を含んで構成されている。
【0096】
カメラ30はカメラボディ31を備え、カメラボディ31の上面にはシャッターボタン32、および電源ボタン33が設けられている。また、カメラボディ31の背面には、操作部34、操作部35、および表示部36が設けられている。表示部36は、撮像された画像および撮像される前の画角内にある画像を表示可能である。
【0097】
カメラボディ31の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント37が設けられ、マウント37を介して交換レンズ20がカメラボディ31に装着される。
【0098】
カメラボディ31内には、交換レンズ20によって形成された被写体像に応じた撮像信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子、その撮像素子から出力された撮像信号を処理して画像を生成する信号処理回路、およびその生成された画像を記録するための記録媒体等が設けられている。カメラ30では、シャッターボタン32を押すことにより静止画又は動画の撮影が可能であり、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0099】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0100】
また、本開示の実施形態に係る撮像装置についても、上記例に限定されず、例えば、ミラーレスタイプ以外のカメラ、フィルムカメラ、およびビデオカメラ等、種々の態様とすることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 撮像レンズ
2 軸上光束
3 最大像高の光束
20 交換レンズ
30 カメラ
31 カメラボディ
32 シャッターボタン
33 電源ボタン
34、35 操作部
36 表示部
37 マウント
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
L11~L32 レンズ
PP 光学部材
Sim 像面
St 開口絞り
Y 最大像高
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14