(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160316
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】符号化装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/85 20140101AFI20221012BHJP
H04N 19/80 20140101ALI20221012BHJP
H04N 19/503 20140101ALI20221012BHJP
【FI】
H04N19/85
H04N19/80
H04N19/503
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064985
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159LA00
5C159MA05
5C159MA41
5C159NN01
5C159UA02
5C159UA11
(57)【要約】
【課題】符号化効率を向上させる。
【解決手段】符号化装置1は、原画像を局所復号したフレームを記憶するフレームメモリ21と、フレームメモリ21から取得した参照フレームに対して画像処理を行って、周波数成分を変化させたフィルタ処理フレームを1以上生成する画像処理部10と、1以上のフィルタ処理フレームを参照して、符号化対象フレームに対する画面間予測画像を生成する画面間予測部20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像を符号化する符号化装置であって、
前記原画像を局所復号したフレームを記憶するフレームメモリと、
前記フレームメモリから取得した参照フレームに対して画像処理を行って、周波数成分を変化させたフィルタ処理フレームを1以上生成する画像処理部と、
前記1以上のフィルタ処理フレームを参照して、符号化対象フレームに対する画面間予測画像を生成する画面間予測部と、
を備える符号化装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記参照フレームの高周波成分をぼかす処理又は鮮鋭化する処理を行い、前記フィルタ処理フレームを生成する、請求項1に記載の符号化装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、
前記参照フレームに対して多重解像度分解を行って、分解階数をn1とするn1階層分解画像、及び分解階数をn1よりも大きいn2とするn2階層分解画像を生成する多重解像度分解部と、
前記n1階層分解画像の最低周波数成分画像の分割ブロックごとに、前記n2階層分解画像の最低周波数成分画像内で最も類似度が高い類似ブロックを決定し、該類似ブロックの位置を示すレジストレーション情報を生成するレジストレーション部と、
前記レジストレーション情報に従って前記類似ブロックの位置を特定し、前記n2階層分解画像の各周波数成分画像内で、前記類似ブロックと同じ空間位相位置のブロックを割付ブロックとして特定し、該割付ブロックを前記n1階層分解画像の高周波成分内における前記分割ブロックと同じ空間位相位置に割り付けた高周波成分割付画像を生成する高周波成分割付部と、
前記高周波成分割付画像に対して多重解像度再構成を行って、前記参照フレームの高周波成分を鮮鋭化した前記フィルタ処理フレームを生成する鮮鋭化再構成部と、
を備える、請求項1又は2に記載の符号化装置。
【請求項4】
前記レジストレーション部は、前記分割ブロックの画素値と前記類似ブロックの画素値との差分がレジストレーション閾値を超える場合に、前記レジストレーション情報を生成する、請求項3に記載の符号化装置。
【請求項5】
前記高周波成分割付部は、前記n2階層分解画像を、分解階数がn2よりも1小さいn3階層の各周波数成分画像内で高周波成分画像と低周波成分画像に分類し、前記低周波成分画像内で前記類似ブロックと同じ空間位相位置のブロックを比較ブロックとして特定し、前記n3階層の各周波数成分画像内で、前記割付ブロックの画素値と前記比較ブロックの画素値との差分が第1割付閾値を超える場合に、該割付ブロックを割り付ける、請求項3又は4に記載の符号化装置。
【請求項6】
前記高周波成分割付部は、前記n2階層分解画像を、分解階数がn2よりも1小さいn3階層の各周波数成分画像内で高周波成分画像と低周波成分画像に分類し、前記低周波成分画像内で前記類似ブロックと同じ空間位相位置のブロックを比較ブロックとして特定し、前記類似ブロックの画素値と前記比較ブロックの画素値との差分が第2割付閾値を超える場合に、前記n3階層において該比較ブロックと同一の周波数成分画像内の前記割付ブロックを割り付ける、請求項3から5のいずれか一項に記載の符号化装置。
【請求項7】
前記参照フレームに対して幾何変換を行い、幾何変換後の参照フレームを1以上生成する幾何変換部を更に備え、
前記画像処理部は、前記幾何変換後の参照フレームに対して画像処理を行う、
請求項1から6のいずれか一項に記載の符号化装置。
【請求項8】
前記参照フレームは、前記符号化対象フレームの時間的に前に位置する1以上のフレーム、又は前記符号化対象フレームの時間的に後に位置する1以上のフレームを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の符号化装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から8のいずれか一項に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)、H.266/VVC(Versatile Video Coding)などの符号化方式では、画素相関を利用して動画像符号化を行うことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。画面間予測では、符号化対象フレーム(予測対象フレーム)の前後の参照フレームを参照して予測を行う。一般に、予測対象ユニットとその参照フレームの復号済ユニットが同一オブジェクトである場合は、同一オブジェクト間の画素相関は高いと考えられるため、画面間予測を高精度に行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】大久保榮監修、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」、株式会社インプレスジャパン、2013年10月21日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の符号化技術において、フレーム間で鮮鋭度が異なる場合には、画面間予測が困難であり、符号化効率が低下しやすいという課題がある。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、フレーム間で鮮鋭度が異なる動画像の符号化効率を向上させることが可能な符号化装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る符号化装置は、原画像を符号化する符号化装置であって、前記原画像を局所復号したフレームを記憶するフレームメモリと、前記フレームメモリから取得した参照フレームに対して画像処理を行って、周波数成分を変化させたフィルタ処理フレームを1以上生成する画像処理部と、前記1以上のフィルタ処理フレームを参照して、符号化対象フレームに対する画面間予測画像を生成する画面間予測部と、を備える。
【0007】
さらに、一実施形態において、前記画像処理部は、前記参照フレームの高周波成分をぼかす処理又は鮮鋭化する処理を行い、前記フィルタ処理フレームを生成してもよい。
【0008】
さらに、一実施形態において、前記画像処理部は、前記参照フレームに対して多重解像度分解を行って、分解階数をn1とするn1階層分解画像、及び分解階数をn1よりも大きいn2とするn2階層分解画像を生成する多重解像度分解部と、前記n1階層分解画像の最低周波数成分画像の分割ブロックごとに、前記n2階層分解画像の最低周波数成分画像内で最も類似度が高い類似ブロックを決定し、該類似ブロックの位置を示すレジストレーション情報を生成するレジストレーション部と、前記レジストレーション情報に従って前記類似ブロックの位置を特定し、前記n2階層分解画像の各周波数成分画像内で、前記類似ブロックと同じ空間位相位置のブロックを割付ブロックとして特定し、該割付ブロックを前記n1階層分解画像の高周波成分内における前記分割ブロックと同じ空間位相位置に割り付けた高周波成分割付画像を生成する高周波成分割付部と、前記高周波成分割付画像に対して多重解像度再構成を行って、前記参照フレームの高周波成分を鮮鋭化した前記フィルタ処理フレームを生成する鮮鋭化再構成部と、を備えてもよい。
【0009】
さらに、一実施形態において、前記レジストレーション部は、前記分割ブロックの画素値と前記類似ブロックの画素値との差分がレジストレーション閾値を超える場合にのみ、前記レジストレーション情報を生成してもよい。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記高周波成分割付部は、前記n2階層分解画像を、分解階数がn2よりも1小さいn3階層の各周波数成分画像内で高周波成分画像と低周波成分画像に分類し、前記低周波成分画像内で前記類似ブロックと同じ空間位相位置のブロックを比較ブロックとして特定し、前記n3階層の各周波数成分画像内で、前記割付ブロックの画素値と前記比較ブロックの画素値との差分が第1割付閾値を超える場合に、該割付ブロックを割り付けてもよい。
【0011】
さらに、一実施形態において、前記高周波成分割付部は、前記n2階層分解画像を、分解階数がn2よりも1小さいn3階層の各周波数成分画像内で高周波成分画像と低周波成分画像に分類し、前記低周波成分画像内で前記類似ブロックと同じ空間位相位置のブロックを比較ブロックとして特定し、前記類似ブロックの画素値と前記比較ブロックの画素値との差分が第2割付閾値を超える場合に、前記n3階層において該比較ブロックと同一の周波数成分画像内の前記割付ブロックを割り付けてもよい。
【0012】
さらに、一実施形態において、前記参照フレームに対して幾何変換を行い、幾何変換後の参照フレームを1以上生成する幾何変換部を更に備え、前記画像処理部は、前記幾何変換後の参照フレームに対して画像処理を行ってもよい。
【0013】
さらに、一実施形態において、前記参照フレームは、前記符号化対象フレームの時間的に前に位置する1以上のフレーム、又は前記符号化対象フレームの時間的に後に位置する1以上のフレームを更に含んでもよい。
【0014】
また、一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、上記符号化装置として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像の符号化効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る符号化装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る符号化装置における画像処理部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る符号化装置における鮮鋭化画像生成部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る符号化装置におけるレジストレーション処理の一例を説明する図である。
【
図5】一実施形態に係る符号化装置における割り付け処理の一例を説明する図である。
【
図6】一実施形態に係る符号化装置における割り付けの確度判定の第1の例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る符号化装置における割り付けの確度判定の第2の例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る符号化装置におけるぼやけ画像生成部の構成例を示すブロック図である。
【
図9】一実施形態に係る符号化装置における高周波成分抑制処理の一例を説明する図である。
【
図10】一実施形態に係る符号化装置における画像処理部の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る符号化装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す符号化装置1は、画像処理部10と、ブロック分割部11と、減算部12と、変換部13と、ビジュアルアクティビティ算出部14と、QP決定部15と、量子化部16と、逆量子化部17と、逆変換部18と、加算部19と、画面内予測部20と、フレームメモリ21と、画面間予測部22と、切替部23と、エントロピー符号化部24と、を備える。
【0019】
ブロック分割部11は、入力画像(原画像)を分割した分割ブロックを符号ユニット(CU:Coding Unit)として生成し、減算部12、ビジュアルアクティビティ算出部14、及び画面間予測部22に出力する。
【0020】
減算部12は、ブロック分割部11から入力した符号化ユニットの各画素値から、後述する画面内予測部20又は画面間予測部22から入力した予測ユニットの各画素値を減算して、符号化ユニットと予測ユニットと画素値の差分を示す残差信号を生成し、変換部13に出力する。
【0021】
変換部13は、減算部12から入力した残差信号を更に変換ユニット(TU:Transform Unit)に分割して、TUごとに直交変換などの変換処理を行って変換係数を算出し、量子化部16に出力する。
【0022】
ビジュアルアクティビティ算出部14は、ブロック分割部11から入力した符号化ユニットのビジュアルアクティビティを算出し、QP決定部15に出力する。符号化ユニットが高い周波数成分を多く含む場合にはビジュアルアクティビティは大きくなり、符号ユニットが高い周波数成分を多く含まない場合にはビジュアルアクティビティは小さくなる。
【0023】
QP決定部15は、ビジュアルアクティビティ算出部14から入力したビジュアルアクティビティに基づいて量子化パラメータ(QP値)を決定し、量子化部16に出力する。
【0024】
量子化部16は、変換部13から入力した変換係数を、QP決定部15から入力したQP値に対応する量子化ステップで除算して量子化することにより量子化係数を生成し、逆量子化部17及びエントロピー符号化部24に出力する。
【0025】
逆量子化部17は、量子化部16から入力した量子化係数に対して、量子化ステップを乗ずることにより変換係数を復元し、逆変換部18に出力する。
【0026】
逆変換部18は、逆量子化部17から入力した変換係数に対して、逆変換処理(変換部13で行った変換を元に戻す処理)を行って残差信号を復元し、加算部19に出力する。例えば、変換部13が離散コサイン変換を行った場合には、逆変換部18は逆離散コサイン変換を行う。
【0027】
加算部19は、逆変換部18から入力した残差信号と、切替部23から入力した予測ユニットとを加算して復号済ユニットを生成し、フレームメモリ21及び画面内予測部20に出力する。
【0028】
逆量子化部17、逆変換部18、及び加算部19により、局所復号部を構成し、局所復号(ローカルデコード)処理を行う。すなわち、局所復号部は、量子化係数に対して量子化ステップを乗じて変換係数を復元し、該変換係数に対して逆変換処理を行って残差信号を復元し、該残差信号と予測ユニットとを加算して復号済ユニットを生成する。
【0029】
画面内予測部20は、加算部19から入力した復号済ユニットを参照して、予測ユニット(PU:Prediction Unit)ごとに画面内予測(イントラ予測)を行って画面内予測画像を生成し、切替部23に出力する。
【0030】
フレームメモリ21は、加算部19から入力した復号済ユニットを、フレーム単位で記憶する。すなわち、フレームメモリ21は、原画像を量子化した後に局所復号したフレームを記憶する。
【0031】
画像処理部10は、フレームメモリ21から参照フレームを取得し、参照フレームに対して画像処理を行って、周波数成分を変化させたフィルタ処理フレームを1以上生成し、画面間予測部22に出力する。画像処理部10は、参照フレームの高周波成分をぼかす処理又は鮮鋭化する処理を行い、フィルタ処理フレームを生成してもよい。画像処理部10の詳細については後述する。
【0032】
画面間予測部22は、ブロック分割部11から入力した符号化ユニットを予測ユニットに分割する。そして、画面間予測部22は、参照フレームに加えて、画像処理部10から入力した1以上のフィルタ処理フレームを参照して、予測ユニットごとにブロックマッチングなどの手法により動きベクトルを生成する。画面間予測部22は、RD最適化等により最も符号化効率がよい動きベクトルを採用してもよい。画面間予測部22は、予測ユニットごとに動きベクトルに基づいて動き補償予測を行って、符号化対象フレームに対する画面間予測画像を生成し、切替部23に出力する。従来の符号化装置では参照フレームを参照して画面間予測を行うところ、符号化装置1では参照フレームに加えてフィルタ処理フレームを参照して画面間予測を行う点が相違する。
【0033】
切替部23は、画面内予測部20から入力された画面内予測画像と、画面間予測部22から入力された画面間予測画像とを切替えて予測画像とし、減算部12及び加算部19に出力する。
【0034】
エントロピー符号化部24は、量子化部16から入力された量子化係数、画面内予測部20から入力された予測モード情報、画面間予測部22から入力された動きベクトル情報などに対してエントロピー符号化を行い、データ圧縮を行ってビットストリームを生成し、符号化装置1の外部に出力する。エントロピー符号化は、0次指数ゴロム符号やコンテキスト適応型2値算術符号(CABAC:Context-based Adaptive Binary Arithmetic Coding)など、任意のエントロピー符号化方式を用いることができる。
【0035】
<画像処理部>
次に、画像処理部10の処理について説明する。
図2は、画像処理部10の構成例を示すブロック図である。
図2に示す画像処理部10は、多重解像度分解部30と、鮮鋭化画像生成部40と、ぼやけ画像生成部50と、を備える。
【0036】
画像処理部10は、フレームメモリ21から、局所復号部(逆量子化部17、逆変換部18、及び加算部19)により局所復号された参照フレームを入力(取得)する。参照フレームとは、画面間予測部22において画面間予測処理を行う際に参照されるフレームである。参照フレームは、H.265/HEVC、H.266/VVCなどの符号化方式で規定されている。符号化対象フレームがPピクチャ(Predictive Picture)である場合には、参照フレームは1枚であり、符号化対象フレームがBピクチャ(Bidirectionally Predictive Picture)である場合には、参照フレームは2枚である。画像処理部10は、フレームメモリ21から、さらに符号化対象フレームの前フレーム又は/及び後フレームを入力(取得)してもよい。前フレームは符号化対象フレームの時間的に前に位置する1以上のフレームを意味し、後フレームは符号化対象フレームの時間的に後に位置する1以上のフレームを意味する。以下に説明する実施形態では、画像処理部10は、参照フレームのみを入力するものとして説明する。
【0037】
多重解像度分解部30は、フレームメモリ21から入力した参照フレームに対して多重解像度分解を行って、分解階数をn1とするn1階層分解画像、及び分解階数をn1よりも大きいn2とするn2階層分解画像を生成する。そして、多重解像度分解部30は、n1階層分解画像及びn2階層分解画像を鮮鋭化画像生成部40に出力し、n1階層分解画像をぼやけ画像生成部50出力する。
【0038】
多重解像度分解部30は、ウェーブレットパケット分解により多重解像度分解を行ってもよい。ウェーブレットパケット分解を行うことにより、各周波数成分画像の位相情報を同じサイズとして扱うことができる。本実施形態では、多重解像度分解部30は、分解階数n1=1,n2=2としてウェーブレットパケット分解を行うものとする。多重解像度分解部30は、分解階数n1,n2の情報を外部から取得してもよい。
【0039】
鮮鋭化画像生成部40は、多重解像度分解部30からn1階層分解画像及びn2階層分解画像を入力する。そして、鮮鋭化画像生成部40は、n1階層分解画像の高周波帯域に、n2階層分解画像の高周波帯域を割り付けた後、多重解像度再構成を行うことで、参照フレームを鮮鋭化したフィルタ処理フレーム(鮮鋭化参照フレーム)を生成する。鮮鋭化画像生成部40は、生成した鮮鋭化参照フレームを画面間予測部22に出力する。
【0040】
ぼやけ画像生成部50は、多重解像度分解部30からn1階層分解画像を入力する。そして、ぼやけ画像生成部50は、n1階層分解画像の高周波帯域を抑制した後、多重解像度再構成を行うことで、参照フレームをぼかしたフィルタ処理フレーム(ぼやけ参照フレーム)を生成する。ぼやけ画像生成部50は、生成したぼやけ参照フレームを画面間予測部22に出力する。
【0041】
<<鮮鋭化画像生成部>>
次に、鮮鋭化画像生成部40の詳細について説明する。
図3は、鮮鋭化画像生成部40の構成例を示すブロック図である。
図3に示す鮮鋭化画像生成部40は、レジストレーション部41と、高周波成分割付部42と、鮮鋭化再構成部43と、を備える。
【0042】
レジストレーション部41は、n1階層分解画像の最低周波数成分画像を所定のサイズ(例えば、8×8画素)の分割ブロックに分割する。そして、n1階層分解画像の最低周波数成分画像内の分割ブロックごとに、n2階層分解画像の最低周波数成分画像内で分割ブロックと最も類似度(相関性)が高い類似ブロックをブロックマッチングにより決定する。そして、レジストレーション部41は、類似ブロックの位置を示すレジストレーション情報を生成し、高周波成分割付部42に出力する。
【0043】
図4を参照して、レジストレーション部41によるレジストレーション処理の具体例を説明する。この例では、多重解像度分解部30は、第1参照フレームに対して分解階数1のウェーブレットパケット分解を行って1階層分解画像F1を生成し、第2参照フレームに対して分解階数2のウェーブレットパケット分解を行って2階層分解画像F2を生成している。第1参照フレームと第2参照フレームは、同一フレームであってもよい。第2参照フレームを分解階数n2=2で多重解像度分解することにより、1階層分割画像として、4個の周波数成分画像(LL,HL,LH,HH)が生成される。また、2階層分解画像F2として、16個の周波数成分画像(LLLL,LLLH,LLHL,LLHH,HLLL,HLLH,HLHL,HLHH,LHLL,LHLH,LHHL,LHHH,HHLL,HHLH,HHHL,HHHH)が生成される。
【0044】
レジストレーション部41は、1階層分解画像F1の最低周波数成分画像LLの各分割ブロックBについて、2階層分解画像F2の最低周波数成分画像LLLLとレジストレーション(位置合わせ)を行い、最低周波数成分画像LLLL内で分割ブロックBと最も類似度(相関性)が高い類似ブロックSを決定する。
【0045】
レジストレーション部41は、レジストレーションの確度判定を行い、確度が高い場合にのみレジストレーション情報を生成するようにしてもよい。
【0046】
レジストレーション部41が確度判定を行う場合の処理について説明する。例えば、レジストレーション部41は、分割ブロックBの画素値と、類似ブロックSの画素値との差分がレジストレーション閾値を超える場合にのみ、レジストレーションの確度が高いと判定してレジストレーション情報を生成する。すなわち、該差分がレジストレーション閾値以下である場合には、レジストレーションの確度が低いと判定してレジストレーション情報を生成しない。レジストレーション部41は、画素値の差分として、SAD(Sum of Absolute Difference)又はSSD(Sum of Squared Difference)を算出してもよい。
【0047】
高周波成分割付部42は、レジストレーション部41から入力したレジストレーション情報に従って、類似ブロックSの位置を特定する。そして、高周波成分割付部42は、n2階層分解画像F2の各周波数成分画像内で、類似ブロックSと同じ空間位相位置のブロックを割付ブロックAとして特定する。そして、高周波成分割付部42は、割付ブロックAを、n1階層分解画像F1の高周波成分内における分割ブロックBと同じ空間位相位置に割り付けた高周波成分割付画像を生成する。そして、高周波成分割付部42は、高周波成分割付画像を鮮鋭化再構成部43に出力する。
【0048】
図5を参照して、高周波成分割付部42による割り付け処理について具体的に説明する。ここでは
図4と同様に、n1=1であり、n2=2である。高周波成分割付部42は、レジストレーション情報に従って、2階層分解画像F2の最低周波数成分画像LLLL内における類似ブロックSの位置を特定する。
図5ではこの位置合わせを、破線の矢印で示している。
【0049】
高周波成分割付部42は、2階層分解画像F2のうち、分解階数n2-1=1の各周波数成分画像における高周波成分画像(LLHL,LLLH,LLHH,HLHL,HLLH,HLHH,LHHL,LHLH,LHHH,HHHL,HHLH,HHHH)内で、類似ブロックSと同じ空間位相位置のブロックを割付ブロックAとして特定する。
図5では説明の便宜上、高周波成分画像LLHL、HLHL,LHHL,HHHLについてのみ割付ブロックAを示している。そして、高周波成分割付部42は、2階層分解画像F2のうち、分解階数1の各周波数成分画像における水平低周波・垂直高周波成分画像(LLHL,HLHL,LHHL,HHHL)内の割付ブロックAを、1階層分解画像F1の水平低周波・垂直高周波成分画像(HL)内において分割ブロックBと同じ空間位相位置に割り付ける。
図5ではこの割り付けを、実線の4本の矢印で示している。
【0050】
同様に、高周波成分割付部42は、2階層分解画像F2のうち、分解階数1の各周波数成分画像における水平高周波・垂直低周波成分画像(LLLH,HLLH,LHLH,HHLH)内の割付ブロックAを、1階層分解画像F1の水平高周波・垂直低周波成分画像(LH)内において分割ブロックBと同じ空間位相位置に割り付ける。同様に、高周波成分割付部42は、2階層分解画像F2のうち、分解階数1の各周波数成分画像における水平高周波・垂直高周波成分画像(LLHH,HLHH,LHHH,HHHH)内の割付ブロックAを、1階層分解画像F1の水平高周波・垂直高周波成分画像(HH)内において分割ブロックBと同じ空間位相位置に割り付ける。
【0051】
高周波成分割付部42は、割り付けの確度判定を行い、確度が高い場合にのみ割り付けを行うようにしてもよい。
【0052】
高周波成分割付部42が確度判定を行う場合の処理について説明する。高周波成分割付部42は、n2階層分解画像を分解階数がn2よりも1小さい階層における高周波成分画像と低周波成分画像に分類し、低周波成分画像内で類似ブロックと同じ空間位相位置のブロックを比較ブロックとして特定し、高周波成分画像内の割付ブロックの画素値と、低周波成分画像内の比較ブロックとの差分が第1割付閾値を超える場合にのみ、割り付けの確度が高いと判定して割付ブロックを割り付ける。すなわち、該差分が第1割付閾値を超える場合には、割り付けの確度が低いと判定して割付ブロックを割り付けない。この比較は、分解階数がn2よりも1小さい階層における分解画像ごとに行ってもよい。高周波成分割付部42は、画素値の差分として、SAD又はSSDを算出してもよい。
【0053】
図6を参照して、割り付けの確度判定の第1の例を説明する。ここでは
図4及び
図5と同様に、n1=1であり、n2=2である。高周波成分割付部42は、2階層分解画像F2を、分解階数がn2よりも1小さいn3階層の各周波数成分画像における高周波成分画像(
図6では背景を濃く表示)と低周波成分画像(
図6では背景を薄く表示)に分類し、各低周波成分画像内で類似ブロックSと同じ空間位相位置のブロックを比較ブロックCとして特定する。そして、高周波成分割付部42は、n3階層の各周波数成分画像(HL,LH,HH)内で、割付ブロックAの画素値と比較ブロックCの画素値との差分を求め、該差分が第1割付閾値T1を超える場合に、該割付ブロックAを割り付ける。なお、周波数成分画像LLには比較ブロックCが存在しないため、この確度判定は行われない。
【0054】
図7を参照して、割り付けの確度判定の第2の例を説明する。ここでは
図4から
図6と同様に、n1=1であり、n2=2である。高周波成分割付部42は、第1の例と同様に比較ブロックCを特定する。そして、高周波成分割付部42は、類似ブロックSの画素値と比較ブロックCの画素値との差分を求め、該差分が第2割付閾値T2を超える場合に、n3階層において該比較ブロックCと同一の周波数成分画像内の割付ブロックAを割り付ける。例えば、1階層分解画像HLにおいて、該差分が第2割付閾値T2を超える場合には、1階層分解画像HL内の3つの割付ブロックAを割り付ける。なお、周波数成分画像LLには比較ブロックCが存在しないため、この確度判定は行われない。また、高周波成分割付部42は、確度判定の第1の例及び第2の例を組み合わせ、双方の条件を満たす場合に割付ブロックAを割り付けるようにしてもよい。
【0055】
鮮鋭化再構成部43は、高周波成分割付部42から入力した高周波成分割付画像に対して多重解像度再構成を行って、参照フレームの高周波成分を鮮鋭化したフィルタ処理フレーム(鮮鋭化参照フレーム)を生成する。鮮鋭化再構成部43は、例えば、n1階層分解画像が参照フレームに対して分解階数n1のウェーブレットパケット分解により生成された画像である場合には、高周波成分割付画像に対して分解階数n1のウェーブレットパケット再構成を行う。
【0056】
<<ぼやけ画像生成部>>
次に、ぼやけ画像生成部50の詳細について説明する。
図8は、ぼやけ画像生成部50の構成例を示すブロック図である。
図8に示すぼやけ画像生成部50は、高周波成分抑制部51と、ぼやけ再構成部52と、を備える。
【0057】
高周波成分抑制部51は、多重解像度分解部30から入力したn1階層分解画像の高周波成分を抑制した高周波成分抑制画像を生成し、ぼやけ再構成部52に出力する。
【0058】
図9は、高周波成分抑制部51による高周波成分抑制処理の一例を示す図である。高周波成分抑制部51は、n1階層分解画像の高周波成分画像(HL,LH,HH)の画素値にぼやけ係数γを乗算して高周波成分抑制画像を生成する。ぼやけ係数γは1より小さい値であり、例えはγ=0.9とする。高周波成分抑制部51は、ぼやけ係数γの情報を外部から取得してもよい。
【0059】
ぼやけ再構成部52は、高周波成分抑制部51から入力した高周波成分抑制画像に対して多重解像度再構成を行って、参照フレームの高周波成分をぼかしたフィルタ処理フレーム(ぼやけ参照フレーム)を生成する。ぼやけ再構成部52は、例えば、n1階層分解画像が参照フレームに対して分解階数n1のウェーブレットパケット分解により生成された画像である場合には、高周波成分抑制画像に対して分解階数n1のウェーブレットパケット再構成を行う。
【0060】
<<鮮鋭化画像生成部の変形例>>
次に、鮮鋭化画像生成部40の変形例について説明する。鮮鋭化画像生成部40は、ぼやけ画像生成部50と同様に係数を乗算することにより、高周波成分を増加させてもよい。つまり、鮮鋭化画像生成部40は、変形例では、n1階層分解画像の高周波成分画像(HL,LH,HH)の画素値に鮮鋭化係数γ’を乗算して高周波成分増加画像を生成する。鮮鋭化係数γ’は1より大きい値であり、例えはγ’=1.1とする。鮮鋭化画像生成部40は、鮮鋭化係数γ’の情報を外部から取得してもよい。そして、鮮鋭化画像生成部40は、高周波成分増加画像に対して多重解像度再構成を行って、参照フレームの高周波成分を鮮鋭化したフィルタ処理フレーム(鮮鋭化参照フレーム)を生成する。
【0061】
<画像処理部の変形例>
次に、画像処理部10の変形例について説明する。
図10は、画像処理部10の変形例である画像処理部10aの構成例を示すブロック図である。画像処理部10aは、幾何変換部60と、多重解像度分解部30と、鮮鋭化画像生成部40と、ぼやけ画像生成部50と、を備える。画像処理部10aは、画像処理部10と比較して、幾何変換部60を更に備える点が相違する。
【0062】
幾何変換部60は、フレームメモリ21から参照フレームを入力し、参照フレームに対して幾何変換を行い、幾何変換後の参照フレームを1以上生成する。そして、幾何変換部60は、1以上の幾何変換後の参照フレーム(幾何変換画像群)を多重解像度分解部30に出力する。例えば、幾何変換部60は、幾何変換としてアフィン変換を行う。幾何変換パラメータは拡大・縮小a={0.9,1.0,1.1}、回転θ={1/16π,0,-1/16π}、スキューなし、とする。このアフィン変換を行った場合には、各参照フレームに対して9枚の幾何変換画像群が生成される。
【0063】
多重解像度分解部30は、幾何変換後の参照フレームに対して多重解像度分解を行う。その他の処理は画像処理部10と同じであるため、説明を省略する。
【0064】
<プログラム>
上述した符号化装置1として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0065】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0066】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0067】
以上説明したように、本発明では、フレームメモリ21から取得した参照フレームに対して画像処理を行って、周波数成分を変化させたフィルタ処理フレームを1以上生成し、フィルタ処理フレームを参照して、符号化対象フレームに対する画面間予測画像を生成する。このため、従来の符号化方法よりも画面間予測において参照するフレームが増加するため、符号化の精度が向上し、符号化効率を向上させることが可能となる。
【0068】
フィルタ処理フレームは、参照フレームの高周波成分をぼかした鮮鋭化参照フレーム、及び/又は参照フレームの高周波成分をぼかしたぼやけ参照フレームとすることが望ましい。画面間で相関性の低い画像を符号化する場合でも、鮮鋭化参照フレーム又はぼやけ参照フレームを用いることで、符号化対象フレームとの相関性が向上することが期待される。
【0069】
また、参照フレームに対して幾何変換を行った後にフィルタ処理を行ったり、符号化対象フレームの前フレーム又は後フレームに対してもフィルタ処理を行ったりすることにより、フィルタ処理フレームの枚数を増やすことができる。この場合には、画面間予測において参照するフレームの枚数がさらに増加するため、符号化効率を更に向上せることが可能となる。
【0070】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 符号化装置
10,10a 画像処理部
11 ブロック分割部
12 減算部
13 変換部
14 ビジュアルアクティビティ算出部
15 QP決定部
16 量子化部
17 逆量子化部
18 逆変換部
19 加算部
20 画面内予測部
21 フレームメモリ
22 画面間予測部
23 切替部
24 エントロピー符号化部
30 多重解像度分解部
40 鮮鋭化画像生成部
41 レジストレーション部
42 高周波成分割付部
43 鮮鋭化再構成部
50 ぼやけ画像生成部
51 高周波成分抑制部
52 ぼやけ再構成部
60 幾何変換部