(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160604
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物、接続構造体及び半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20221012BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01L21/60 311R
H01L23/14 R
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126430
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2020120774の分割
【原出願日】2015-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】須方 振一郎
(72)【発明者】
【氏名】横地 精吾
(57)【要約】
【課題】伸縮及び屈曲を繰り返しても優れる接着強度及び導電性を有する硬化物を形成することができ、フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物であって、融点が200℃以下の金属を含む導電性粒子、熱硬化性樹脂、フラックス活性剤及び硬化触媒を含有する、導電性接着剤組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物であって、
融点が200℃以下の金属を含む導電性粒子、熱硬化性樹脂、フラックス活性剤及び硬化触媒を含有する、導電性接着剤組成物。
【請求項2】
前記フラックス活性剤が、水酸基及びカルボキシル基を有する化合物を含む、請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
前記導電性粒子の前記金属が、ビスマス、インジウム、スズ及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項5】
25℃での粘度が5~400Pa・sであるペースト状の組成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板に配置された接続端子と、前記電子部品に配置された接続端子とを電気的に接続するために用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項7】
前記フレキシブル配線基板が、可撓性及び伸縮性を有する基材から構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項8】
前記フレキシブル配線基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基材から構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項9】
第1の接続端子を有するフレキシブル配線基板と、
第2の接続端子を有する電子部品と、
前記フレキシブル配線基板及び前記電子部品の間に配置された接続部と、を備え、
前記接続部が、請求項1~8のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物の硬化物を含有し、前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子が電気的に接続されている、接続構造体。
【請求項10】
前記接続部が、融点が200℃以下の金属を含有する金属部と、熱硬化性樹脂を含有する樹脂部とから成る接続構造を有する、請求項9に記載の接続構造体。
【請求項11】
前記接続構造を前記第2の接続端子の上面に直交する断面で見たとき、前記金属部が前記第2の接続端子及び前記第1の接続端子に接しており、前記樹脂部が前記金属部の周囲に存在する接続構造を有する、請求項10に記載の接続構造体。
【請求項12】
前記金属部と前記樹脂部との面積比が、5:95~80:20である、請求項10又は11に記載の接続構造体。
【請求項13】
前記樹脂部の周囲に封止部材を更に有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項14】
前記フレキシブル配線基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基材から構成される、請求項9~13のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項15】
前記電子部品が、半導体発光素子、コンデンサ、ショットキーバリアダイオード及びドライバ集積回路からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項16】
第1の接続端子を有するフレキシブル配線基板と、
第2の接続端子を有する半導体発光素子と、
前記フレキシブル配線基板及び前記半導体発光素子の間に配置された接続部と、を備え、
前記接続部が、請求項1~8のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物の硬化物を含有し、前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子が電気的に接続されている、半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物、該接着剤組成物を用いた接続構造体及び半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟で伸縮性に富む回路基板を用いてデバイスを作製するフレキシブルエレクトロニクス及びストレッチャブルエレクトロニクスは、ウェアラブルデバイスのような利便性が高く用途が広いデバイスの製造技術として期待されている。このような分野では、使用される回路基板に対し大きな力学的負荷がかかるため、高い伸縮性及び可撓性を有する伸縮性基板及び回路パターンが提案されている(特許文献1~3参照)。
【0003】
しかしながら、柔軟で伸縮性に富む回路基板に電子部品を実装してデバイスを作製した場合、電子部品自体には伸縮性及び可撓性がないため、デバイス使用時に基板と電子部品との接続部に大きな歪みが発生し、接続部及び電子部品が破壊してしまうことが問題となっている。また、伸縮性基板には熱可塑性を有する有機基材が採用されている場合が多く、電子部品実装時の熱履歴によって基板が変形することも大きな問題となっている。そのため、当分野では、伸縮性基板に対して十分な耐伸縮性及び耐屈曲性を有する接続部を形成することができ、かつ電子部品実装時に基板へのダメージを極力減らすことが可能な接続法が要求されている。
【0004】
電子部品を回路基板等へ実装するには、鉛フリーはんだであるSn-Ag-Cuはんだ等を用いた接続法が広く知られている。ところが、Sn-Ag-Cuはんだは、接続温度が260℃と高く、ウェアラブルデバイス用の回路基板として有望視されている熱可塑性を有する有機基材を用いた場合では、電子部品を基板に搭載するリフロー工程における熱履歴によって、基板の熱収縮及び変形を招き、基板の柔軟性及び伸縮性が著しく低下する問題がある。
【0005】
また、より低温で接続可能な鉛フリーはんだとして、融点が138℃であるSn-Biはんだも用いられている。しかしながら、Sn-Biはんだによる接続法では、基板へのダメージは低減できるものの、回路基板の伸縮及び屈曲によって、はんだ接続部に甚大な応力が集中し、接続部が破壊され、導通不良となる問題がある。
【0006】
これらの問題を克服するために、熱硬化性樹脂に銀粉末等の金属粒子を分散させてペースト状にした導電性接着剤が提案されている(特許文献4参照)。当該熱硬化型の導電性接着剤は、熱硬化性樹脂をバインダ成分とすることで、温度サイクル試験耐性(耐TCT性)を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-162124号公報
【特許文献2】特開2014-162125号公報
【特許文献3】特開2015-079803号公報
【特許文献4】特開2002-161259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4に記載の導電性接着剤における導電性発現機構は、金属同士の接触によるものであるため、良好な導電性を確保するには導電粒子の含有量を増加させる必要がある。その結果、バインダ成分の減少に伴い、接着剤の接着力が低下することを招き、伸縮及び屈曲を繰り返しながら使用されるフレキシブル回路基板に適用された場合、接着強度及び導電性が著しく低下してしまう傾向がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、伸縮及び屈曲を繰り返しても優れる接着強度及び導電性を有する硬化物を形成することができ、フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物、該導電性接着剤組成物を用いた接続構造体及び半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物であって、融点が200℃以下の金属を含む導電性粒子、熱硬化性樹脂、フラックス活性剤及び硬化触媒を含有する、導電性接着剤組成物を提供する。
【0011】
上記フラックス活性剤は、水酸基及びカルボキシル基を有する化合物を含んでもよい。また、上記導電性粒子に含まれる金属は、ビスマス、インジウム、スズ及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。さらに、上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る導電性接着剤組成物は、25℃での粘度が5~400Pa・sのペースト状の組成物であってもよい。
【0013】
本発明に係る導電性接着剤組成物は、フレキシブル配線基板に配置された接続端子と、電子部品に配置された接続端子とを電気的に接続するために用いられてもよい。フレキシブル配線基板は、可撓性及び伸縮性を有する基材から構成されてもよい。
【0014】
フレキシブル配線基板は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基材から構成されてもよい。
【0015】
本発明はまた、第1の接続端子を有するフレキシブル配線基板と、第2の接続端子を有する電子部品と、フレキシブル配線基板及び電子部品の間に配置された接続部とを備え、接続部が、本発明に係る導電性接着剤組成物の硬化物を含有し、第1の接続端子及び第2の接続端子が電気的に接続されている、接続構造体を提供する。
【0016】
上記接続部は、融点が200℃以下の金属を含有する金属部と、熱硬化性樹脂を含有する樹脂部とから成る接続構造を有してもよい。
【0017】
本発明に係る接続構造体は、接続構造を第2の接続端子の上面に直交する断面で見たとき、金属部が第2の接続端子及び第1の接続端子に接しており、樹脂部が金属部の周囲に存在する接続構造を有してもよい。
【0018】
金属部と樹脂部との面積比は、5:95~80:20であってもよい。また、樹脂部の周囲には封止部材を更に有してもよい。
【0019】
前記電子部品は、半導体発光素子、コンデンサ、ショットキーバリアダイオード及びドライバ集積回路からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0020】
本発明はさらに、第1の接続端子を有するフレキシブル配線基板と、第2の接続端子を有する半導体発光素子と、フレキシブル配線基板及び半導体発光素子の間に配置された接続部とを備え、接続部が、本発明に係る導電性接着剤組成物の硬化物を含有し、第1の接続端子及び前記第2の接続端子が電気的に接続されている、半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、伸縮及び屈曲を繰り返しても良好な接着強度及び導電性を有する硬化物を形成することができ、フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物を提供することができる。そして、本発明によれば、上記導電性接着剤組成物の硬化物を含む接続部を備え、伸縮及び屈曲を繰り返しても優れる接着強度及び導電性を有する接続構造体及び半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板を提供することができる。
【0022】
また、本発明に係る導電性接着剤組成物は、フレキシブル配線基板と電子部品との実装工程における実装温度(例えばリフロー加熱温度)を低温化することができるため、基板の可撓性及び伸縮性を損なうことなく電子部品搭載フレキシブル配線基板等の接続構造体を作製することができる。さらに、本発明に係る導電性接着剤組成物は、金属部及び樹脂部が分離した接続構造を有する接続部を形成することができるため、接続部が補強され、耐屈曲性及び耐伸縮性だけでなく、耐TCT性にも優れる接続構造体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る電子部品搭載フレキシブル配線基板の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】本発明に係る電子部品搭載フレキシブル配線基板の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】本発明に係る電子部品搭載フレキシブル配線基板の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<導電性接着剤組成物>
本実施形態の導電性接着剤組成物は、(A)融点が200℃以下の金属を含む導電性粒子、(B)熱硬化性樹脂、(C)フラックス活性剤及び(D)硬化触媒を含有する。上記導電性接着剤組成物は、フレキシブル配線基板と電子部品とを電気的に接続するために用いられる。
【0026】
((A)成分:導電性粒子)
(A)導電性粒子は、融点が200℃以下である金属を含む。このような導電性粒子を導電性接着剤組成物に用いると、導電性粒子が比較的低い温度(例えば、200℃以下)で溶融して凝集するため、基板への電子部品の実装温度を低温化することができ、基板の可撓性及び伸縮性を損なうことなく導電性に優れる接続部を形成することができる。
【0027】
上記融点は、(A)導電性粒子に含まれる金属が1種である場合には、当該1種の金属の融点を意味し、(A)導電性粒子に含まれる金属が2種以上である合金等の場合には、金属全体の融点を意味する。すなわち、(A)導電性粒子は、金属全体の融点が200℃以下である金属を含むともいえる。(A)導電性粒子に含まれる金属の融点は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。(A)導電性粒子における金属の融点の下限は、特に限定されないが、例えば、100℃であってもよい。融点は、例えば、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry(DSC))により測定することができる。
【0028】
(A)導電性粒子における金属は、環境への負荷が小さい観点から、鉛以外の金属から構成されることが好ましい。このような金属としては、例えば、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)及び亜鉛(Zn)からなる群より選ばれる1種の金属又は2種以上の金属からなる合金が挙げられる。なお、当該合金は、より良好な接続信頼性を得ることができる点から、(A)導電性粒子における金属全体としての融点が200℃以下となる範囲で、プラチナ(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)等からなる群より選ばれる高融点の成分を含有してもよい。
【0029】
(A)導電性粒子を構成する金属として、具体的には、Sn42-Bi58はんだ(融点138℃)、Sn48-In52はんだ(融点117℃)、Sn42-Bi57-Ag1はんだ(融点139℃)、Sn90-Ag2-Cu0.5-Bi7.5はんだ(融点189℃)、Sn89-Zn8-Bi3はんだ(融点190℃)、Sn91-Zn9はんだ(融点197℃)等が、明確な溶融後の固化挙動を示すため好ましい。固化挙動とは、金属が溶融後に冷えて固まることをいう。これらの中でも、入手容易性及び低温接続性に優れる観点から、Sn42-Bi58はんだを用いることが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
(A)導電性粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、導電性接着剤組成物の粘度が高くなることを抑制し、更に良好な作業性を得る観点から、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましい。(A)導電性粒子の平均粒子径は、更に良好な印刷性及び接続信頼性を得る観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。このような観点から、(A)導電性粒子の平均粒子径は、0.1~100μmが好ましい。また、(A)導電性粒子の平均粒子径は、導電性接着剤組成物の更に良好な印刷性及び作業性を得る観点から、1~50μmがより好ましい。さらに、(A)導電性粒子の平均粒子径は、導電性接着剤組成物の保存安定性及び硬化物の実装信頼性を向上させる観点から、5~30μmが更に好ましい。ここで、平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって求められる。
【0031】
(A)導電性粒子は、融点が200℃以下である金属のみで構成される粒子に限定されず、200℃よりも高い融点を有する金属を含んでいてもよい。また、(A)導電性粒子は、セラミックス、シリカ、樹脂材料等の金属以外の固体材料からなる粒子の表面を、融点が200℃以下である金属からなる金属膜で被覆した導電性粒子であってもよく、複数種の導電性粒子の混合物であってもよい。
【0032】
導電性接着剤組成物における(A)導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物の硬化物の更に良好な導電性を得る観点から、導電性接着剤組成物の全量に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、45質量%以上が特に好ましい。(A)導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物の粘度が高くなることを抑制し、更に良好な作業性を得る観点、及び、導電性接着剤組成物中における(A)導電性粒子以外の成分(以下、「接着剤成分」ともいう)の含有量が相対的に少なくなることを抑制し、硬化物の更に良好な実装信頼性を得る観点から、導電性接着剤組成物の全量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。このような観点から、(A)導電性粒子の含有量は、5~95質量%が好ましい。また、(A)導電性粒子の含有量は、作業性及び導電性を更に向上させる観点から、10~90質量%がより好ましく、硬化物の実装信頼性を更に向上させる観点から、15~85質量%が更に好ましい。
【0033】
なお、(A)導電性粒子は、本発明による効果を阻害しない範囲において(a1)融点が200℃より高い金属からなる導電性粒子(以下、「(a1)導電性粒子」ともいう)と併用してもよい。融点が200℃より高い金属としては、例えば、Pt、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Al等からなる群より選ばれる1種の金属又は2種以上の金属からなる合金が挙げられ、例えば、Au粉、Ag粉、Cu粉及びAgめっきCu粉が挙げられる。市販品としては、例えば、AgめっきCu粉である「MA05K」(日立化成株式会社、商品名)が入手可能である。
【0034】
また、(A)導電性粒子と(a1)導電性粒子とを併用する場合、(A)導電性粒子と(a1)導電性粒子との配合比率は、質量比で99:1~50:50の範囲内であることが好ましく、99:1~60:40の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態の導電性接着剤組成物において、本発明による効果をより有効に発揮する観点から、(A)導電性粒子に対する(A)導電性粒子以外の成分の配合比率(接着剤成分:(A)導電性粒子)は、接着剤組成物中の固形分比(質量比)で、5:95~50:50であることが好ましい。また、接着性、導電性及び作業性に更に優れる観点から、上記配合比率は10:90~30:70であることがより好ましい。この配合比率が5:95以上であると、導電性接着剤組成物の粘度が高くなることが抑制されることで更に良好な作業性が得られると共に、導電性接着剤組成物の接着力を充分に確保することができる。配合比率が50/50以下であると、導電性を確保し易い。
【0036】
((B)成分:熱硬化性樹脂)
(B)熱硬化性樹脂は、被着体を接着する作用を有すると共に、導電性接着剤組成物中の導電性粒子及び必要に応じて添加されるフィラーを互いに結合させるバインダ成分として作用する。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性の有機高分子化合物、及び、それらの前駆体が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル樹脂とは、メタクリル樹脂及びアクリル樹脂を示す。これらの中では、(メタ)アクリル樹脂及びマレイミド樹脂に代表される重合可能な炭素-炭素二重結合を有する化合物、又は、エポキシ樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、耐熱性及び接着性に優れると共に、必要に応じて有機溶剤中に溶解又は分散させれば液体の状態で取り扱うこともできるため、作業性にも優れている。また、入手容易性と接続信頼性の観点から、エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。これらの熱硬化性樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限なく公知の化合物を使用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等のフェノール化合物とエピクロロヒドリドンとから誘導されるエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂としては、市販品を用いることができる。エポキシ樹脂しては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるAER-X8501(旭化成株式会社製、商品名)、R-301(三菱化学株式会社製、商品名)、YL-980(三菱化学株式会社製、商品名)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF-170(東都化成株式会社製、商品名)、YL-983(三菱化学株式会社製、商品名)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂であるR-1710(三井化学株式会社製、商品名)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるN-730S(DIC株式会社製、商品名)、Quatrex-2010(ダウ・ケミカル株式会社製、商品名)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるYDCN-702S(東都化成株式会社製、商品名)、EOCN-100(日本化薬株式会社製、商品名)、多官能エポキシ樹脂であるEPPN-501(日本化薬株式会社製、商品名)、TACTIX-742(ダウ・ケミカル株式会社製、商品名)、VG-3010(三井化学株式会社製、商品名)、1032S(三菱化学株式会社製、商品名)、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP-4032(DIC株式会社製、商品名)、脂環式エポキシ樹脂であるEHPE-3150、CEL-3000(いずれも株式会社ダイセル製、商品名)、DME-100(新日本理化株式会社製、商品名)、EX-216L(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)、脂肪族エポキシ樹脂であるW-100(新日本理化株式会社製、商品名)、アミン型エポキシ樹脂であるELM-100(住友化学株式会社製、商品名)、YH-434L(東都化成株式会社製、商品名)、TETRAD-X、TETRAD-C(いずれも三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)、630、630LSD(いずれも三菱化学株式会社製、商品名)、レゾルシン型エポキシ樹脂であるデナコールEX-201(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX-211(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)、ヘキサンジオール型エポキシ樹脂であるデナコールEX-212(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)、エチレンプロピレングリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEXシリーズ(EX-810、811、850、851、821、830、832、841、861(いずれもナガセケムテックス株式会社製、商品名))、下記化学式(I)で表されるエポキシ樹脂E-XL-24、E-XL-3L(いずれも三井化学株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、イオン性不純物が少なく、かつ、反応性に優れる観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂及びアミン型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化1】
【0039】
式(I)中、kは1~5の整数を示す。
【0040】
導電性接着剤組成物が(B)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、反応性希釈剤として、1分子中に1個のみのエポキシ基を有するエポキシ化合物を更に含有してもよい。このようなエポキシ化合物は、市販品として入手可能である。このようなエポキシ化合物としては、例えば、PGE(日本化薬株式会社製、商品名)、PP-101(東都化成株式会社製、商品名)、ED-502、ED-509、ED-509S(いずれも株式会社ADEKA製、商品名)、YED-122(三菱化学株式会社製、商品名)、KBM-403(信越化学工業株式会社製、商品名)、TSL-8350、TSL-8355、TSL-9905(いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名)等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
反応性希釈剤を接着剤組成物に配合する場合、その配合割合は、本発明による効果を阻害しない範囲であればよく、エポキシ樹脂の全量に対して0.1~30質量%であることが好ましい。
【0042】
(B)熱硬化性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂を含んでいてもよい。(メタ)アクリル樹脂は、重合可能な炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位を有する重合体である。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを示す。このような化合物としては、例えば、モノアクリレート化合物、モノメタクリレート化合物、ジアクリレート化合物及びジメタクリレート化合物が挙げられる。
【0043】
モノアクリレート化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、2-シアノエチルアクリレート、γ-アクリロキシエチルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート及びアクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェートが挙げられる。
【0044】
モノメタクリレート化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2-シアノエチルメタクリレート、γ-メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート及びメタクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェートが挙げられる。
【0045】
ジアクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビス(アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン及びビス(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0046】
ジメタクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート、ビス(メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン及びビス(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0047】
これらの(メタ)アクリレート化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(B)熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含む場合、(メタ)アクリレート化合物をあらかじめ重合して用いてもよく、(メタ)アクリレート化合物を(A)導電性粒子、(C)フラックス活性剤等と混合すると同時に重合を行ってもよい。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂としては、市販品を用いることができる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、FINEDIC A-261及びFINEDIC A-229-30(いずれもDIC株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0049】
(B)熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含む場合、導電性接着剤組成物はラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、通常用いられるものを使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、ボイドを有効に抑制する等の観点から、有機過酸化物が好適である。また、接着剤成分の硬化性及び粘度安定性をより向上させる観点から、有機過酸化物の分解温度は130℃~200℃であることが好ましい。
【0050】
ラジカル重合開始剤の配合割合は、導電性接着剤組成物の全量に対して0.01~20質量%であると好ましく、0.1~10質量%であるとより好ましく、0.5~5質量%であるとさらに好ましい。
【0051】
導電性接着剤組成物における(B)熱硬化性樹脂の含有量は、更に優れた接着強度を得る観点から、導電性接着剤組成物の全量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。(B)熱硬化性樹脂の含有量は、充分な導電性を確保し易い観点から、導電性接着剤組成物の全量に対して、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。すなわち、導電性接着剤組成物における(B)熱硬化性樹脂の含有量は、導電性接着剤組成物の全量に対して1~60質量%であってもよく、5~40質量%であってもよく、10~30質量%であってもよい。
【0052】
((C)成分:フラックス活性剤)
(C)フラックス活性剤は、(A)導電性粒子の表面に形成された酸化膜を除去する能力を示すものである。このようなフラックス活性剤を用いることにより、(A)導電性粒子の溶融凝集の妨げとなる酸化膜が除去される。(C)フラックス活性剤は、(B)熱硬化性樹脂の硬化反応を阻害しないものであれば特に制限なく、公知の化合物を使用することができる。
【0053】
(C)フラックス活性剤としては、例えば、ロジン系樹脂、カルボキシル基を有する化合物、水酸基を有する化合物、並びに、水酸基及びカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。水酸基としては、例えば、フェノール性水酸基又はアルコール性水酸基が挙げられる。これらの中では、良好なフラックス活性を示し、かつ、(B)熱硬化性樹脂として用いることのできるエポキシ樹脂と反応性を示すことから、水酸基及びカルボキシル基を有する化合物が好ましく、脂肪族ジヒドロキシカルボン酸がより好ましい。水酸基及びカルボキシル基を有する化合物として、具体的には、下記一般式(V)で表される化合物又は酒石酸が好ましい。
【化2】
【0054】
式(V)中、R5は、炭素原子数1~5のアルキル基を示し、良好な接続強度及び接続信頼性をより有効に発揮する観点から、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。また、n及びmはそれぞれ独立に0~5の整数を示し、良好な接続強度及び接続信頼性を更に有効に発揮する観点から、nが0かつmが1であるか、n及びmの両方が1であると好ましい。
【0055】
上記一般式(V)で表される化合物としては、例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸が挙げられる。
【0056】
(C)フラックス活性剤の含有量は、接続部の表面酸化膜の量が多い場合において金属の溶融性が低下することが抑制され、優れた導電性が得られ易い観点から、(A)導電性粒子の全量100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。(C)フラックス活性剤の含有量は、優れた保存安定性及び印刷性が得られ易い観点から、(A)導電性粒子の全量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。(C)フラックス活性剤の含有量は、良好な接続強度及び接続信頼性を更に有効に得る観点から、(A)導電性粒子の全量100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、0.5~15質量部がより好ましい。(C)フラックス活性剤の含有量は、保存安定性及び導電性に更に優れる観点から、1~10質量部が更に好ましく、1~5質量部であることが特に好ましい。
【0057】
((D)成分:硬化触媒)
(D)硬化触媒は、(B)熱硬化性樹脂の硬化を促進する効果を有する。(D)硬化触媒としては、所望の硬化温度における硬化性、可使時間の長さ、得られる硬化物の耐熱性等の観点から、イミダゾール化合物が好ましい。中でもイミダゾール系エポキシ樹脂用硬化剤がより好ましい。イミダゾール化合物の市販品としては、例えば、2P4MHZ-PW(2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール)、2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)、C11Z-CN(1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール)、2E4MZ-CN(1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール)、2PZ-CN(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)、2MZ-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン)、2E4MZ-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン)及び2MAOK-PW(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物)(いずれも四国化成工業株式会社製、商品名)が挙げられる。これらの硬化触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
(D)硬化触媒の含有量は、優れた硬化性が得られ易い観点から、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。硬化触媒の含有量は、粘度が増大することが抑制され、導電性接着剤組成物を取り扱う際の優れた作業性が得られ易い観点から、90質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。すなわち、(D)硬化触媒の含有量は、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して0.01~90質量部であってもよく、0.1~50質量部であってもよい。
【0059】
(その他の成分)
本実施形態の導電性接着剤組成物は、上述の各成分の他に、必要に応じて、応力緩和のための可撓剤、作業性向上のための添加剤(希釈剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤及び消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも1種)を含有してもよい。また、これらの成分の他、本発明による効果を阻害しない範囲において各種添加剤を含有してもよい。
【0060】
可撓剤としては、例えば、液状ポリブタジエン(宇部興産株式会社製、商品名「CTBN-1300×31」、「CTBN-1300×9」、日本曹達株式会社製、商品名「NISSO-PB-C-2000」)等が挙げられる。可撓剤を含有する場合、可撓剤の含有量は、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1~500質量部であることが好ましい。
【0061】
本実施形態の導電性接着剤組成物には、ペースト状組成物の作製時の作業性及び使用時の塗布作業性をより良好にするため、必要に応じて希釈剤を添加することができる。このような希釈剤としては、例えば、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、α-テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶剤が好ましい。これらの希釈剤を含有する場合、希釈剤の含有量は、導電性接着剤組成物の全量に対して0.1~30質量%であることが好ましい。
【0062】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤を接着力向上剤として含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、KBM-573(信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。また、本実施形態の導電性接着剤組成物は、アニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤を含有してもよい。さらに、本実施形態の導電性接着剤組成物は、消泡剤としてシリコーン油等を含有してもよい。上記接着力向上剤、濡れ性向上剤及び消泡剤は、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加剤を含有する場合、各添加剤の含有量は、導電性接着剤組成物の全量に対してそれぞれ0.1~10質量%であることが好ましい。
【0063】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、アクリルゴム、ポリスチレン等のポリマー粒子、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、シリカ等の無機粒子が挙げられる。これらのフィラーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、(B)熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)の硬化速度を調整するために硬化剤を更に含有してもよい。
【0065】
硬化剤としては、従来用いられるものであれば特に限定されず、市販のものが入手可能である。市販の硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂であるH-1(明和化成株式会社製、商品名)、VR-9300(三井東圧化学株式会社製、商品名)、フェノールアラルキル樹脂であるXL-225(三井東圧化学株式会社製、商品名)、下記一般式(II)で表されるp-クレゾールノボラック樹脂であるMTPC(本州化学工業株式会社製、商品名)、アリル化フェノールノボラック樹脂であるAL-VR-9300(三井東圧化学株式会社製、商品名)、下記一般式(III)で表されるフェノール樹脂であるPP-700-300(日本石油化学株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【化3】
【0066】
式(II)中、R
1は、それぞれ独立に1価の炭化水素基を示し、好ましくはメチル基又はアリル基を示し、qは1~5の整数を示す。
【化4】
【0067】
式(III)中、R2はそれぞれ独立にアルキル基を示し、好ましくはメチル基又はエチル基を示し、R3は水素原子又は1価の炭化水素基を示し、pは2~4の整数を示す。
【0068】
硬化剤としては、ジシアンジアミド等のように従来硬化剤として用いられているものを用いることができ、市販品が入手可能である。市販品としては、例えば、下記一般式(IV)で表される二塩基酸ジヒドラジドであるADH、PDH及びSDH(いずれも株式会社日本ファインケム製、商品名)、エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤であるノバキュア(旭化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの硬化剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化5】
【0069】
式(IV)中、R4は2価の芳香族基又は炭素原子数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示し、好ましくはm-フェニレン基又はp-フェニレン基を示す。
【0070】
硬化剤は、保存安定性及び硬化時間の観点から、実質的には導電性接着剤組成物に含有されていないことが好ましい。実質的に含有しないとは、導電性接着剤組成物の全量に対して0.05質量%以下であることをいう。
【0071】
本実施形態において、上述の各成分は、それぞれにおいて例示されたもののいずれを組み合わせてもよい。
【0072】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、上述の各成分を一度に又は複数回に分けて、混合、溶解、解粒混練又は分散することにより各成分が均一に分散したペースト状の組成物として得られる。ペースト状の組成物を得る際には、必要に応じて加熱してもよい。分散装置及び溶解装置としては、例えば、公知の撹拌器、らいかい器、3本ロール及びプラネタリーミキサーが挙げられる。
【0073】
本実施形態の導電性接着剤組成物の25℃における粘度は、ペーストの塗布性の観点から、5~400Pa・sであることが好ましく、50~300Pa・sであることがより好ましく、100~200Pa・sであることが更に好ましい。粘度は、例えば、英弘精機株式会社製B型粘度計により測定することができる。
【0074】
以上説明した本実施形態の導電性接着剤組成物は、良好な接着強度及び導電性を有し、かつ伸縮及び屈曲を繰り返しても良好な接着強度及び導電性を両立することが可能な硬化物を形成することができる。また、本実施形態の導電性接着剤組成物は、フレキシブル配線基板と電子部品との実装工程における実装温度を低温化することができるため、基板の可撓性及び伸縮性を損なうことなく電子部品搭載フレキシブル配線基板等の接続構造体を得ることができる。さらに、本実施形態に係る接着剤組成物は、金属部及び樹脂部が分離した接続構造を有する接続部を形成することができるため、接続部が補強され、耐屈曲性及び耐伸縮性だけでなく、耐TCT性にも優れる接続構造体を得ることができる。導電性接着剤組成物は、使用形体が曲げられた状態又は引伸ばされた形状となる、フレキシブル配線基板と電子部品から構成されるストレッチャブルデバイスに用いることができる。
【0075】
<接続構造体>
本実施形態の接続構造体は、第1の接続端子を有するフレキシブル配線基板と、第2の接続端子を有する電子部品と、フレキシブル配線基板及び電子部品の間に配置された接続部とを備え、接続部が上記本実施形態の導電性接着剤組成物の硬化物を含有し、第1の接続端子及び第2の接続端子が電気的に接続されている接続構造体である。
【0076】
フレキシブル配線基板としては、可撓性及び伸縮性を有する基材から構成されることが好ましい。可撓性及び伸縮性を有する基材としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)及びシクロオレフィンポリマーが挙げられる。これらの中では、配線加工後の寸法安定性の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートが好ましく、熱可塑性ポリウレタンエラストマーがより好ましい。
【0077】
電子部品としては、特に制限がなく、公知のものを用いることができる。その具体例としては、半導体発光素子、コンデンサ、ショットキーバリアダイオード、ドライバ集積回路(ドライバIC)等が挙げられる。半導体発光素子としては、例えば、LED-SMDパッケージ、LEDフリップチップ、LED-CSP等が挙げられる。
【0078】
接続部は、上記本実施形態の導電性接着剤組成物の硬化物を含有するものであり、融点が200℃以下の金属を含有する金属部と、熱硬化性樹脂を含有する樹脂部とから成る接続構造を有する態様をとることができる。金属部は、融点が200℃以下の金属を含む導電性粒子(A)に由来する金属を主成分とすることが好ましく、樹脂部は、熱硬化性樹脂等の接着剤成分に由来する樹脂を主成分とすることが好ましい。本実施形態に係る接続構造体では、電子部品における第2の接続端子の上面に直交する断面で見たとき、金属部は、電子部品の第2の接続端子及びフレキシブル配線基板の第1の接続端子に接しており、樹脂部は、金属部の周囲に存在する態様をとることができる。
【0079】
接続部における金属部と樹脂部との面積比(金属部:樹脂部)は、屈曲及び伸縮を繰り返しても接着強度及び導電性をより一層良好に維持する観点から、5:95~80:20であることが好ましく、10:90~90:10であることがより好ましく、30:70~70:30であることが更に好ましい。上記面積比は、接続部の断面観察により求めることができる。また、樹脂部の周囲には封止部材を更に有してもよい。
【0080】
本実施形態の接続構造体は、上記導電性接着剤組成物を用いて電子部品とフレキシブル配線基板とを接着させることにより得ることができる。例えば、まず、フレキシブル配線基板の接続端子上に、導電性接着剤組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布する。次いで、電子部品の接続端子とフレキシブル配線基板の接続端子とが導電性接着剤組成物を介して接するようにフレキシブル配線基板上に電子部品を積層する。その後、オーブン又はリフロー炉等の加熱装置を用いて導電性接着剤組成物を加熱硬化させ、導電性接着剤組成物の硬化物を介して、フレキシブル配線基板と電子部品とが電気的に接続された構造を有する接続構造体が得られる(以下、この接続構造体を「電子部品搭載フレキシブル配線基板」ともいう)。
【0081】
電子部品搭載フレキシブル配線基板としては、例えば、半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板等が挙げられる。当該半導体発光素子搭載フレキシブル配線基板では、第1の接続端子を有するフレキシブル配線基板と、第2の接続端子を有する半導体発光素子と、フレキシブル配線基板及び半導体発光素子の間に配置された接続部とを備え、接続部が上記導電性接着剤組成物の硬化物を含有し、第1の接続端子及び第2の接続端子が電気的に接続されている態様をとることができる。
【0082】
次に、本実施形態の接続構造体について
図1~3を用いて説明する。ただし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、電子部品搭載フレキシブル配線基板の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すように、電子部品搭載フレキシブル配線基板1は、フレキシブル配線基板5上に形成された基板接続端子7(第1の接続端子)と、電子部品4に形成された電子部品接続端子6(第2の接続端子)とが、接続部8により互いに接合されると共に電気的に接続された構造を有している。そして、接続部8は、上述した導電性接着剤組成物を硬化させた硬化物を含む。また、接続部8は、金属部8aと樹脂部8bとから構成されている。
【0083】
本実施形態に係る電子部品搭載フレキシブル配線基板は、
図1に示した構造に限定されず、例えば、
図2又は3に示す構造を有していてもよい。
図2は、電子部品搭載フレキシブル配線基板の他の実施形態を示す模式断面図である。
図2に示す電子部品搭載フレキシブル配線基板2は、フレキシブル配線基板5上に形成された基板接続端子7(第1の接続端子)と、電子部品4に接続されているリード9(第2の接続端子)とが、本実施形態の導電性接着剤組成物を硬化させてなる硬化物を含む接続部8により電気的に接続された構造を有している。また、接続部8は、金属部8aと樹脂部8bとから構成されている。
【0084】
また、
図3は、電子部品搭載フレキシブル配線基板のさらに他の実施形態を示す模式断面図である。
図3に示す電子部品搭載フレキシブル配線基板3は、本実施形態の導電性接着剤組成物とはんだとを組み合わせてフレキシブル配線基板5と電子部品4とを接続した構造を有している。電子部品搭載フレキシブル配線基板3において、電子部品4上には電子部品接続端子6が形成され、更に電子部品接続端子6上には、はんだボール10が形成されている。そして、このはんだボール10とフレキシブル配線基板5上に形成された基板接続端子7とが、本実施形態の導電性接着剤組成物を硬化させてなる硬化物を含む接続部8により電気的に接続され、電子部品搭載フレキシブル配線基板3が形成されている。また、接続部8は、金属部8aと樹脂部8bとから構成されている。
【0085】
図1~3に示した電子部品搭載フレキシブル配線基板1~3は、それぞれ基板における接続端子と、電子部品における接続端子とが、本実施形態の導電性接着剤組成物を硬化させてなる硬化物を含む接続部により、互いに接合されると共に電気的に接続された構造を有している。そして、当該接続部は、金属部8aと樹脂部8bとから構成され、金属部8aは、樹脂部8bによって補強されている。ここで、従来の接続部が金属部のみで構成されている電子部品搭載フレキシブル配線基板では、屈曲試験及び伸縮試験を行った場合、基板が大きく変形し、接続部及び電子部品にダイレクトに歪みがかかり、接続部及び電子部品が破壊に至ることがある。本実施形態の接続部が金属部と樹脂部とから構成されている電子部品搭載フレキシブル配線基板では、金属部が樹脂部によって補強されているため、基板が大きく変形したとしても基板の変形が樹脂部で食い止められ、接続部のリジット状態を保持することが可能である。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、
図1~3に示した接続構造体における基板上に、さらに他の基板又は電子部品等を実装してもよい。
【実施例0087】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
<導電性接着剤組成物の作製>
[実施例1]
熱硬化性樹脂であるYL980(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、商品名)16.0質量部と、硬化触媒である2P4MHZ-PW(イミダゾール化合物、四国化成工業株式会社製、商品名)1.3質量部と、フラックス活性剤であるBHPA(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)2.7質量部とを混合し、3本ロールを3回通して接着剤成分を調製した。
【0089】
次に、上述の接着剤成分20質量部に対して、導電性粒子であるSn42-Bi58はんだ(平均粒子径20μm、三井金属株式会社製、融点138℃)80質量部を加え、プラネタリーミキサーを用いて撹拌を行い、500Pa以下で10分間脱泡処理を行うことにより導電性接着剤組成物を得た。
【0090】
[実施例2~8、比較例1~7]
下記表1及び2に示す組成及び配合量とした以外は実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~7の導電性接着剤組成物を得た。また、表中の各成分の配合量の単位は質量部である。
【0091】
表中の各成分の詳細は下記のとおりである。
YL980:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、商品名
2P4MHZ-PW:イミダゾール化合物、四国化成工業株式会社製、商品名
BHPA:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸
BHBA:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸
Sn42-Bi58はんだ:平均粒子径20μm、三井金属株式会社製、融点138℃
Sn42-Bi57-Ag1はんだ:平均粒子径20μm、三井金属株式会社製、融点139℃
Sn96.5-Ag3-Cu0.5はんだ:平均粒子径20μm、三井金属株式会社製、融点217℃
Agペースト:藤倉化成株式会社製、硬化温度150℃
Sn42-Bi58クリームはんだ:千住金属工業株式会社製、融点138℃
Sn96.5-Ag3-Cu0.5クリームはんだ:千住金属工業株式会社製、融点219℃
【0092】
<特性評価>
上記実施例及び比較例で得られた導電性接着剤組成物の特性を下記の方法で評価した。その結果を下記表1及び2にまとめて示す。
【0093】
耐TCT性、耐屈曲性及び耐伸縮性の評価に用いたフレキシブル配線基板の基材には、可撓性及び伸縮性を有するTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)を使用した。
【0094】
(1)接着性(接着強度)
導電性接着剤組成物を銀めっき付き銅板上に約0.5mg塗布し、この上に長さ2mm×幅2mm×厚み0.25mmの矩形平板状の錫めっき付き銅板を圧着して試験片を得た。その後、実施例1~8、比較例1~6の試験片に対しては、150℃、10分間の熱履歴を加えた。比較例7の試験片に対しては、260℃、10分間の熱履歴を加えた。次に、実施例1~8及び比較例1~7の試験片に対して、シェア速度500μm/sec、クリアランス100μmでボンドテスター(DAGE社製、型番:2400)により、25℃におけるシェア強度を測定した。
【0095】
(2)導電性(体積抵抗率)
幅1mm×長さ50mm×厚み0.03mmの帯状の金めっき付き銅板2枚を、上記接着剤組成物を介して、互いに直交するように十字型に貼り合わせて、接着剤層(直交部分)が幅1mm×長さ1mm×厚み0.03mmの寸法になるような試験片を得た。続いて、上記(1)の接着性評価と同様の熱履歴を試験片に加えた。その後、試験片について、四端子法で厚み方向の体積抵抗率を測定した。
【0096】
(3)耐TCT性
1.7mm×1.4mmの銅箔ランドを設けた、長さ100mm×幅50mm×厚み1.0mmの矩形平板状のTPU基板を準備した。次いで、銅箔ランド上に接着剤組成物をメタルマスク(厚み100μm、開口寸法1.0mm×1.6mm)を用いて印刷し、チップ抵抗(3.2mm×1.6mm、ローム株式会社製MCR)を搭載した。この部品搭載基板に上記(1)の接着性評価と同様の熱履歴を加え、耐TCT性評価用の試験基板を得た。この試験基板を、熱衝撃試験機であるエスペック株式会社製TSE-11-A(1サイクル:-55℃で30分間保持、125℃まで5分間で昇温、125℃で30分間保持、-55℃まで5分間で降温)に投入し、接続抵抗を測定した。耐TCT性の評価は、初期抵抗値に対して±10%以内の抵抗変化率を示したサイクル数を指標とした。
【0097】
(4)耐屈曲性
1.7mm×1.4mmの銅箔ランドを設けた、長さ200mm×幅20mm×厚み1.0mmの矩形平板状のTPU基板を準備した。次いで、銅箔ランド上に接着剤組成物をメタルマスク(厚み100μm、開口寸法1.0mm×1.6mm)を用いて印刷し、チップ抵抗(3.2mm×1.6mm、ローム株式会社製MCR)を搭載した。この部品搭載基板に上記(1)の接着性評価と同様の熱履歴を加え、耐屈曲性評価用の試験基板を得た。この試験基板を、U字折り返し試験機(ユアサシステム機器株式会社、DLDMLH-FU)に、部品搭載部が内側になるように、屈曲半径が2.0mmとした状態でU字型に屈曲させて基板の両端を摺動板と固定板に装着し、試験雰囲気23℃において、摺動板を50mmのストローク、摺動速度100回/分で左右に摺動させて、試験基板を所定回繰り返し屈曲させた時の部品搭載部の抵抗値を測定した。耐屈曲性の評価は、初期抵抗値が10%上昇した時点での摺動回数を耐屈曲寿命とした。
【0098】
(5)耐伸縮性
1.7mm×1.4mmの銅箔ランドを設けた、長さ200mm×幅20mm×厚み1.0mmの矩形平板状のTPU基板を準備した。次いで、銅箔ランド上に接着剤組成物をメタルマスク(厚み100μm、開口寸法1.0mm×1.6mm)を用いて印刷し、チップ抵抗(3.2mm×1.6mm、ローム株式会社製MCR)を搭載した。この部品搭載基板に上記(1)の接着性評価と同様の熱履歴を加え、耐伸縮性評価用の試験基板を得た。この試験基板を、最も縮んだ状態となるように繰り返し伸縮試験機(株式会社大栄科学精器製作所製、DC-210)に両端をそれぞれ固定し、試験雰囲気23℃で、引っ張り時に伸張30%となるように100回/分で所定回繰り返し伸縮させた時の抵抗値を測定した。耐伸縮性の評価は、初期抵抗値が10%上昇した時点での伸縮回数を耐伸縮寿命とした。
【0099】
【0100】
【0101】
実施例1~8はいずれも良好な接着強度、体積抵抗率、耐TCT性、耐屈曲性及び耐伸縮性を示した。
【0102】
比較例1及び3は、金属粒子が凝集せず、接続性に問題があることが確認できた。比較例2、4及び6は、金属の接合は良好であるものの、実施例1~8と比較して耐TCT性、耐屈曲性及び耐伸縮性が劣っていることが確認できた。比較例5は、接着強度、体積抵抗率、耐TCT性、耐屈曲性及び耐伸縮性のいずれも実施例1~8より劣っていることが確認できた。また、比較例7は、良好な接続強度と体積抵抗率を示したが、耐TCT性、耐屈曲性及び耐伸縮性に関しては、260℃で加熱接続した際に、TPU基板が大きく変形し、接続部が破損したため、測定不能であった。
1,2,3…電子部品搭載フレキシブル配線基板、4…電子部品、5…フレキシブル配線基板、6…電子部品接続端子、7…基板接続端子、8…接続部、8a…金属部、8b…樹脂部、9…リード、10…はんだボール。