(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160835
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】双極型蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221013BHJP
H01M 50/102 20210101ALI20221013BHJP
H01M 10/12 20060101ALI20221013BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20221013BHJP
H01M 10/18 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/102
H01M10/12 K
H01M4/14 Z
H01M10/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065294
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智史
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恭貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 広樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】須山 健一
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC02
5H028AA07
5H028AA08
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC19
5H028HH05
5H050AA15
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
(57)【要約】
【課題】一対のピラーとセル部材の貫通孔との隙間において正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触することを回避することができる双極型蓄電池を提供する。
【解決手段】双極型蓄電池100において、複数のセルCの各々を形成する積層方向一側のフレームユニット120,110,110及び積層方向他側のフレームユニット110,110,130は、それぞれから突出して互いに対向する一対のピラー123;113,113;113,113;133によって固定される。また、各セル部材150には、積層方向に貫通し、一対のピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143が形成される。一対のピラー123;113,113;113,113;133と貫通孔143との隙間144には、各セル部材150の正極用活物質層103と負極用活物質層104とを仕切る仕切り手段160が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用活物質層を有する正極、負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する1又は複数の電解層を備えた複数のセル部材と、前記複数のセル部材を個別に収容する複数のセルを形成する、複数のフレームユニットと、を備え、積層方向に隣り合うセル部材同士が直列に電気的に接続されているとともに、前記複数のセルの各々を形成する積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットが、それぞれから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のピラーによって固定され、複数のセルの各々に収容される各セル部材には、積層方向に貫通し、前記一対のピラーが挿通される貫通孔が形成されている双極型蓄電池であって、
前記一対のピラーと前記貫通孔との隙間には、前記セル部材の前記正極用活物質層と前記負極用活物質層とを仕切る仕切り手段が設けられていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記仕切り手段は、内周側が前記一対のピラー間に挟まれて前記隙間を前記正極用活物質層の側の隙間と前記負極用活物質層の側の隙間とに仕切る仕切り部材で構成されることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記仕切り部材は、内周側が前記一対のピラーのそれぞれの接合面間に挟まれ、外周側が前記正極用活物質層及び前記負極用活物質層のいずれか一方と前記電解層との間、又は隣り合う2つの前記電解層間に挟まれるリング状の樹脂フィルムで構成されることを特徴とする請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの内周側が前記一対のピラーのうちの少なくとも1つに形成された段差に配置されてなることを特徴とする請求項3に記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの内周側の前記一対のピラーへの重なり幅が1mm以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記正極用活物質層及び前記負極用活物質層のいずれか一方における前記貫通孔の孔径と前記電解層における前記貫通孔の孔径のうち孔径が大きい方の貫通孔のある部材に対する前記樹脂フィルムの外周側の重なり幅、又は隣り合う2つの前記電解層における前記貫通孔の孔径のうち孔径が大きい方の貫通孔のある部材に対する前記樹脂フィルムの外周側の重なり幅が、1~20mmであることを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか一項に記載の双極型蓄電池。
【請求項7】
前記樹脂フィルムの厚みが10~500μmであることを特徴とする請求項3乃至6のうちいずれか一項に記載の双極型蓄電池。
【請求項8】
前記仕切り部材は、前記電解層の内周側を内方向に延長して前記一対のピラーに当接する当接部と、該当接部の内周面から内方向に突出し、前記一対のピラーのそれぞれの接合面間に挟まれる前記当接部と一体の内側突出部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項9】
前記仕切り部材は、前記電解層の内周側を内方向に延長して前記一対のピラーのそれぞれの接合面近傍に形成された凹部に挿入されるとともに、前記一対のピラーによって挟まれる挿入部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項10】
前記仕切り部材は、前記電解層の内周側を内方向に延長して前記一対のピラーに当接する当接部と、該当接部の内周面から内方向に延びて前記一対のピラーのそれぞれの接合面間に挟まれる前記当接部と一体の挟持部とを備え、
前記挟持部に積層方向に貫通する挟持部貫通孔を形成するとともに、前記一対のピラーのそれぞれの接合面に前記挟持部が嵌合するピラー側凹部を形成し、
前記ピラー側凹部に前記挟持部が嵌合した状態で前記一対のピラーのそれぞれの接合面同士が前記挟持部貫通孔内で接合されることを特徴とする請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項11】
前記正極が正極用鉛層を有し、前記負極が負極用鉛層を有する双極型鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の双極型蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されており、中でもエネルギー密度の観点から、双極(バイポーラ)型鉛蓄電池が注目されている。
【0003】
この双極型鉛蓄電池は、正極用活物質層を有する正極、負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する1又は複数の電解層を備えた複数のセル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数のセルを形成する、複数のフレームユニットと、を備え、積層方向に隣り合うセル部材同士が直列に電気的に接続されてなる。
そして、この双極型鉛蓄電池において、複数のセルの各々を形成する積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットを互いに固定するために、積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットが、それぞれから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のピラーによって固定されるものも開発されている。
【0004】
この双極型鉛蓄電池における、積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットを、それぞれから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のピラーによって固定するもとにして、従来、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
特許文献1に示すバイポーラ蓄電池プレートにおいては、各セルを形成する積層方向一側のフレーム及び積層方向他側のフレームが、それぞれのバイポーラプレートから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のスタンドオフによって固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した双極型鉛蓄電池においては、複数のセルの各々に収容される各セル部材には、積層方向に貫通し、一対のピラーが挿通される貫通孔が形成されている。そして、一対のピラーと貫通孔との間には少なからず、隙間が存在する。
ここで、貫通孔を各セル部材に形成するに際してはシート状の正極活物質層及び負極活物質層に貫通孔を加工することになる。この加工により正極活物質層及び負極活物質層のそれぞれの孔端部が脆くなることが多い。
【0007】
このため、双極型鉛蓄電池を使用していると、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれが正極活物質層及び負極活物質層のそれぞれの孔端部から脱落し、前述の隙間において脱落した正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触し、短絡してしまうおそれがある。
特許文献1においては、一対のスタンドオフとこれらスタンドオフが挿通されるセル部材の貫通孔については言及されておらず、特許文献1に示されたバイポーラ蓄電池プレートにおいても同様に、一対のスタンドオフと貫通孔との隙間において脱落した正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触し、短絡してしまうおそれがある。
【0008】
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、一対のピラーとセル部材の貫通孔との隙間において正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触することを回避することができる双極型蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有する双極型蓄電池を提供する。
(1)正極用活物質層を有する正極、負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する1又は複数の電解層を備えた複数のセル部材と、前記複数のセル部材を個別に収容する複数のセルを形成する、複数のフレームユニットと、を備える。積層方向に隣り合うセル部材同士が直列に電気的に接続されている。
(2)前記複数のセルの各々を形成する積層方向一側のフレームユニット及び積層方向他側のフレームユニットが、それぞれから突出して互いに対向する接合面同士で接合される一対のピラーによって固定され、複数のセルの各々に収容される各セル部材には、積層方向に貫通し、前記一対のピラーが挿通される貫通孔が形成されている。
(3)前記一対のピラーと前記貫通孔との隙間には、各セル部材の前記正極用活物質層と前記負極用活物質層とを仕切る仕切り手段が設けられている。
【0010】
ここで、「一対のピラー」は、積層方向一側のフレームユニットから突出するピラーと、積層方向他側のフレームユニットから突出するピラーとが対向していればよく、積層方向一側のフレームユニットから突出するピラーの突出長と、積層方向他側のフレームユニットから突出するピラーの突出長とが同じであっても異なっていてもよいものを意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明係る双極型蓄電池によれば、一対のピラーと貫通孔との隙間には、各セル部材の正極用活物質層と負極用活物質層とを仕切る仕切り手段が設けられているので、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれが正極活物質層及び負極活物質層のそれぞれの孔端部から前述の隙間に脱落しても、脱落した正極用活物質及び負極用活物質が仕切り手段によって仕切られる。このため、一対のピラーと貫通孔との隙間において脱落した正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触し、短絡してしまうおそれを回避することができる。
【0012】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、前記仕切り手段は、内周側が前記一対のピラー間に挟まれて前記隙間を前記正極用活物質層の側の隙間と前記負極用活物質層の側の隙間とに仕切る仕切り部材で構成されるので、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれが正極活物質層及び負極活物質層のそれぞれの孔端部から前述の隙間に脱落しても、脱落した正極用活物質が正極用活物質層の側の隙間に負極用活物質が負極用活物質層の側の隙間に収まる。このため、一対のピラーと貫通孔との隙間において脱落した正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触し、短絡してしまうおそれを確実に回避することができる。
【0013】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、仕切り部材は、内周側が一対のピラーのそれぞれの接合面間に挟まれ、外周側が正極用活物質層及び負極用活物質層のいずれか一方と電解層との間、又は隣り合う2つの電解層間に挟まれるリング状の樹脂フィルムで構成される。これにより、仕切り部材として簡単かつ準備が容易な構成の樹脂フィルムを用いて隙間を正極用活物質層の側の隙間と負極用活物質層の側の隙間とに仕切ることができる。
【0014】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、樹脂フィルムの内周側が一対のピラーのうちの少なくとも1つに形成された段差に配置されてなるので、樹脂フィルムの内周側の一対のピラーの接合面間への取付作業を容易なものとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、樹脂フィルムの内周側の一対のピラーへの重なり幅が1mm以上であるので、樹脂フィルムの内周側と一対のピラーとの間を確実に遮断することができる。
【0016】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、正極用活物質層及び負極用活物質層のいずれか一方における貫通孔の孔径と電解層における貫通孔の孔径のうち孔径が大きい方の貫通孔のある部材に対する樹脂フィルムの外周側の重なり幅、又は隣り合う2つの電解層における貫通孔の孔径のうち孔径が大きい方の貫通孔のある部材に対する樹脂フィルムの外周側の重なり幅が、1~20mmである。これにより、樹脂フィルムの外径を不必要に大きくすることなく、樹脂フィルムの外周側と正極用活物質層及び負極用活物質層のいずれか一方及び電解層との間、又は樹脂フィルムの外周側と隣り合う2つの電解層との間を確実に遮断することができる。
【0017】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、樹脂フィルムの厚みが10~500μmであるので、樹脂フィルムの厚みを不必要に大きくすることなく樹脂フィルムの強度を担保することができる。
【0018】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、仕切り部材は、電解層の内周側を内方向に延長して一対のピラーに当接する当接部と、当接部の内周面から内方向に突出し、一対のピラーのそれぞれの接合面間に挟まれる当接部と一体の内側突出部とを備えている。これにより、仕切り部材として一対のピラー及びセル部材以外の部材を用いることなく、電解層の一部(内側突出部)を一対のピラーのそれぞれの接合面間に挟んだ状態で接合面同士を電解層の一部とともに接合するだけで、電解層と一対のピラーとの間を遮断し、隙間を正極用活物質層の側の隙間と負極用活物質層の側の隙間とに仕切ることができる。
【0019】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、仕切り部材は、前記電解層の内周側を内方向に延長して一対のピラーのそれぞれの接合面近傍に形成された凹部に挿入されるとともに、一対のピラーによって挟まれる挿入部を備えている。これにより、仕切り部材として一対のピラー及びセル部材以外の部材を用いることなく、電解層(挿入部)を一対のピラーのそれぞれの接合面近傍に形成された凹部に挿入して一対のピラーの接合面同士を接合するだけで、電解層と一対のピラーとの間を遮断し、隙間を正極用活物質層の側の隙間と負極用活物質層の側の隙間とに仕切ることができる。
【0020】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、仕切り部材は、電解層の内周側を内方向に延長して一対のピラーに当接する当接部と、当接部の内周面から内方向に延びて一対のピラーのそれぞれの接合面間に挟まれる前記当接部と一体の挟持部とを備え、挟持部に積層方向に貫通する挟持部貫通孔を形成するとともに、一対のピラーのそれぞれの接合面に挟持部が嵌合するピラー側凹部を形成し、ピラー側凹部に挟持部が嵌合した状態で一対のピラーのそれぞれの接合面同士が挟持部貫通孔内で接合される。これにより、仕切り部材として一対のピラー及びセル部材以外の部材を用いることなく、一対のピラーのそれぞれの接合面に形成されたピラー側凹部に電解層から当接部を介して延びる挟持部を嵌合させた状態で一対のピラーのそれぞれの接合面同士を挟持部貫通孔内で接合するだけで、電解層と一対のピラーとの間を遮断し、隙間を正極用活物質層の側の隙間と負極用活物質層の側の隙間とに仕切ることができる。また、ピラー側凹部に挟持部が嵌合しているので、その状態で接合面同士を挟持部貫通孔内で接合すると、一対のピラーのそれぞれの接合面同士の接合を強固なものとすることができる。
【0021】
また、本発明に係る双極型蓄電池によれば、正極が正極用鉛層を有し、負極が負極用鉛層を有する双極型鉛蓄電池であるので、双極型鉛蓄電池において、一対のピラーと貫通孔との隙間において脱落した正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触し、短絡してしまうおそれを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1において、矢印Xで示す部分の拡大図である。
【
図3】
図1に示す本発明の第1実施形態に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれが隙間に脱落した際の仕切り手段の作用を説明するための図である。
【
図4】参考例に係る双極型蓄電池において、正極用活物質及び負極用活物質のそれぞれが隙間に脱落した際の様子を説明するための図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の一部の断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の一部の断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の一部を示し、(A)は断面図、(B)はバイポーラプレートから突出する積層方向他側のピラーの底面図、(C)は横断部の積層方向他面の平面図である。(B)において、ピラーの接触面に斜線を施し、ピラー側凹部を白抜きにし、(C)において、横断部に斜線を施し、横断部貫通孔を白抜きにしてある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る双極型蓄電池の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る双極型蓄電池について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1において、「上下方向」をセル部材の積層方向とし、「下側」を積層方向一側、「上側」を積層方向他側として説明する。
図1に示す双極(バイポーラ)型蓄電池100は、正極141が正極用鉛層101を有し、負極142が負極用鉛層102を有する双極型鉛蓄電池であり、複数(本実施形態にあっては3つ)のセル部材150と、複数(本実施形態にあっては2つ)の内部用フレームユニット(フレームユニット)110と、第一の端部用フレームユニット120(フレームユニット)と、第二の端部用フレームユニット(フレームユニット)130とを備えている。
複数のセル部材150は、積層方向(
図1における上下方向)に、間隔を空けて積層配置されている。
【0025】
複数の内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、及び第二の端部用フレームユニット130は、複数のセル部材150を個別に収容する複数のセル(空間)Cを形成する。
各内部用フレームユニット110は、平面形状が長方形で積層方向一面(下面)上に負極142を配設されて積層方向他面(上面)上に正極141を配設されるバイポーラプレート111と、バイポーラプレート111の周縁に設けられる例えば、四角状の枠形(額縁形)のリム112とを備えている。バイポーラプレート111は、セル部材150の積層方向で隣り合うセル部材150の間に配置されている。各内部用フレームユニット110の各リム112は、セル部材150の積層方向で互いに対向する接合面112aを備えている。
【0026】
バイポーラプレート111は、リム112の内側に一体化されている。内部用フレームユニット110は、耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(アクリル樹脂)、アクリルニトリルーブタンジエンースチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート等)製である。バイポーラプレート111は、リム112の厚さ方向(
図1における上下方向)の中程に位置している。リム112は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。
【0027】
第一の端部用フレームユニット120は、平面形状が長方形の第一のエンドプレート121と、四角状の枠形(額縁形)のリム122とからなる。第一のエンドプレート121はリム122の内側に一体化されている。第一の端部用フレームユニット120は耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂製である。
第一の端部用フレームユニット120は、双極型蓄電池100の積層方向一側端(
図1における下側端)において、セル部材150の側面と正極141側を囲うものである。第一のエンドプレート121がセル部材150の正極141側を囲い、リム122が、セル部材150の側面を囲っている。
【0028】
第一のエンドプレート121は、内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111と平行に配置され、リム122は、隣に位置する内部用フレームユニット110のリム112と接するように配列されている。つまり、リム122は、セル部材150の積層方向(
図1における上下方向)で、内部用フレームユニット110のリム112と対向する接合面122aを備えている。
第一のエンドプレート121は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。リム122は、第一のエンドプレート121の厚さよりも厚い厚さとなっている。第一のエンドプレート121は、リム122の厚さ方向(積層方向)で一方端(積層方向一側端)に位置するように設定されている。
【0029】
第二の端部用フレームユニット130は、平面形状が長方形の第二のエンドプレート131と、四角状の枠形(額縁形)のリム132とからなる。第二のエンドプレート131はリム132の内側に一体化されている。第二の端部用フレームユニット130は耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂製である。
第二の端部用フレームユニット130は、双極型蓄電池100の積層方向他側端(
図1における上側端)において、セル部材150の側面と負極142側を囲うものである。第二のエンドプレート131がセル部材150の負極142側を囲い、リム132が、セル部材150の側面を囲っている。
【0030】
第二のエンドプレート131は、内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111と平行に配置され、リム132は、隣に位置する内部用フレームユニット110のリム112と接するように配列されている。つまり、リム132は、セル部材150の積層方向(
図1における上下方向)で、内部用フレームユニット110のリム112と対向する接合面132aを備えている。
第二のエンドプレート131は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。リム132は、第二のエンドプレート131の厚さよりも厚い厚さとなっている。第二のエンドプレート131は、リム132の厚さ方向(積層方向)で他方端(積層方向他側端)に位置するように設定されている。
【0031】
バイポーラプレート111の積層方向一面(
図1における下面)上には、負極用鉛層102が配設されている。バイポーラプレート111の積層方向他面(
図1における上面)上には、正極用鉛層101が配設されている。負極用鉛層102上には、負極用活物質層104が配設され、負極用鉛層102及び負極用活物質層104により負極142を構成している。正極用鉛層101上には、正極用活物質層103が配設され、正極用鉛層101及び正極用活物質層103により正極141を構成している。
対向する正極用活物質層103と負極用活物質層104との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層140が配設されている。
【0032】
第一のエンドプレート121の積層方向他側(
図1における上側)の面上には、正極用鉛層101が配設されている。第一のエンドプレート121上の正極用鉛層101には、正極用活物質層103が配設され、正極用鉛層101及び正極用活物質層103により正極141を構成している。第一のエンドプレート121上の正極用活物質層103と、対向するバイポーラプレート111の負極用活物質層104との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層140が配設されている。
【0033】
第二のエンドプレート131の積層方向一側(
図1における下側)の面上には、負極用鉛層102が配設されている。第二のエンドプレート131上の負極用鉛層102には、負極用活物質層104が配設され、負極用鉛層102及び負極用活物質層104により負極142を構成している。第二のエンドプレート131上の負極用活物質層104と、対向するバイポーラプレート111の正極用活物質層103との間には、硫酸等の電解液を含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層140が配設されている。
第一のエンドプレート121上の正極用鉛層101には、第一のエンドプレート121の外側へ導通する正極端子105が設けられている。第二のエンドプレート131上の負極用鉛層102には、第二のエンドプレート131の外側へ導通する負極端子106が設けられている。
【0034】
つまり、第1実施形態に係る双極型蓄電池100は、正極用活物質層103を有する正極141、負極用活物質層104を有する負極142、および正極141と負極142との間に介在する電解層140を備えた複数(本実施形態にあっては3つ)のセル部材150と、複数のセル部材150を個別に収容する複数(本実施形態にあっては3つ)のセルCを形成する、複数(本実施形態にあっては4つ)のフレームユニット(複数(本実施形態にあっては2つ)の内部用フレームユニット110、第一の端部用フレームユニット120、第二の端部用フレームユニット130)とを備えている。
そして、積層方向に隣り合うセル部材150同士は電気的に直列に接続されている。このため、積層方向に隣り合うセル部材150同士の間に介在するバイポーラプレート111は、正極用鉛層101と負極用鉛層102とを電気的に接続する手段を備えている。
【0035】
また、隣接する内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士、隣接する第一の端部用フレームユニット120のリム122の接合面122a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士、及び隣接する第二の端部用フレームユニット130のリム132の接合面132a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士は、接着剤又は振動溶着により接合される。
振動溶着は、例えば、隣接する内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する際には、一方の接合面112aを他方の接合面112aに対して押圧し、振動させて摩擦熱を発生させ、一方の接合面112aと他方の接合面112aとを溶融させるものである。
【0036】
そして、双極型蓄電池100において、複数のセルCの各々を形成する積層方向一側のフレームユニット120,110,110及び積層方向他側のフレームユニット110,110,130が、それぞれから突出して互いに対向する接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士で接合される一対のピラー123;113,113;113,113;133によって固定される。
具体的に説明すると、積層方向一側端のセルCを形成する積層方向一側の第一の端部用フレームユニット120の第一のエンドプレート121には、平面視でそのほぼ中央部に第一のエンドプレート121から積層方向他側(
図1では上側)に向けて突出するピラー123が設けられている。ピラー123は、第一のエンドプレート121と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面123aとしてある。
【0037】
また、第一の端部用フレームユニット120と対向する積層方向他側の内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向一側(
図1では下側)に向けて突出するピラー113が設けられている。ピラー113は、ピラー123と対向するようにバイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
そして、積層方向一側の第一の端部用フレームユニット120のピラー123の接合面123aと、積層方向他側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aとを接合し、積層方向一側の第一の端部用フレームユニット120と積層方向他側の内部用フレームユニット110とが固定される。この接合面123a,113a同士の接合は、第一の端部用フレームユニット120のリム122の接合面122a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する時同時に行われ、接着剤又は振動溶着により接合される。なお、
図1に示すように、積層方向他側のピラー113の突出長は積層方向一側のピラー123の突出長よりも長くなっている。
【0038】
また、積層方向中央のセルCを形成する積層方向一側の内部用フレームユニット110(この内部用フレームユニットは積層方向一側端のセルCを形成する積層方向他側の内部用フレームユニット110と同一である)のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向他側(
図1では上側)に向けて突出するピラー113が設けられている。ピラー113は、バイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
また、積層方向他側の内部用フレームユニット110のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向一側(
図1では下側)に向けて突出するピラー113が設けられている。このピラー113は、積層方向一側の前述のピラー113と対向するようにバイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
【0039】
そして、積層方向一側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aと、積層方向他側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aとを接合し、積層方向一側の内部用フレームユニット110と積層方向他側の内部用フレームユニット110とが固定される。この接合面113a,113a同士の接合は、隣接する内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する時同時に行われ、接着剤又は振動溶着により接合される。なお、
図1に示すように、積層方向他側のピラー113の突出長は積層方向一側のピラー113の突出長よりも長くなっている。
【0040】
また、積層方向他側端のセルCを形成する積層方向一側の内部用フレームユニット110(この内部用フレームユニットは積層方向中央のセルCを形成する積層方向他側の内部用フレームユニット110と同一である)のバイポーラプレート111には、平面視でそのほぼ中央部にバイポーラプレート111から積層方向他側(
図1では上側)に向けて突出するピラー113が設けられている。ピラー113は、バイポーラプレート111と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面113aとしてある。
また、積層方向他側の第二の端部用フレームユニット130の第二のエンドプレート131には、平面視でそのほぼ中央部に第二のエンドプレート131から積層方向一側(
図1では下側)に向けて突出するピラー133が設けられている。このピラー133は、積層方向一側の前述のピラー113と対向するように第二のエンドプレート131と一体に形成された円柱部材で、その端面を接合面133aとしてある。
【0041】
そして、積層方向一側の内部用フレームユニット110のピラー113の接合面113aと、積層方向他側の第二の端部用フレームユニット130のピラー133の接合面133aとを接合し、積層方向一側の内部用フレームユニット110と積層方向他側の第二の端部用フレームユニット130とが固定される。この接合面113a,133a同士の接合は、第二の端部用フレームユニット130のリム132の接合面132a及び内部用フレームユニット110のリム112の接合面112a同士を接合する時同時に行われ、接着剤又は振動溶着により接合される。なお、
図1に示すように、積層方向他側のピラー133の突出長は積層方向一側のピラー113の突出長よりも長くなっている。
【0042】
そして、双極型蓄電池100において、複数のセルCの各々に収容される各セル部材150には、積層方向に貫通し、一対のピラー123;113,113;113,113;133が挿通される貫通孔143が形成されている。
具体的に説明すると、積層方向一側端に形成されるセルCに収容されるセル部材150を構成する正極141、負極142及び電解層140には、積層方向に貫通し、一対のピラー123;113が挿通される貫通孔143が形成されている。
【0043】
また、同様に、積層方向中央に形成されるセルCに収容されるセル部材150を構成する正極141、負極142及び電解層140には、積層方向に貫通し、一対のピラー113;113が挿通される貫通孔143が形成されている。
また、同様に、積層方向他側端に形成されるセルCに収容されるセル部材150を構成する正極141、負極142及び電解層140には、積層方向に貫通し、一対のピラー113;133が挿通される貫通孔143が形成されている。
【0044】
このように構成された双極型蓄電池100において、一対のピラー123;113,113;113,113;133と貫通孔143との間には、一対のピラー123;113,113;113,113;133を貫通孔143に挿通するために、少なからず隙間144が存在することになる。
ここで、貫通孔143を各セル部材150に形成するに際してはシート状の正極用活物質層103及び負極用活物質層104に貫通孔143を加工することになる。この加工により正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部がぼろぼろになることが多い。
【0045】
このため、
図4の参考例に示すように、双極型蓄電池を使用していると、正極用活物質103a及び負極用活物質104aのそれぞれが正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部から脱落し、前述の隙間144において脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが互いに接触し、短絡してしまうおそれがある。
この問題を解決するために、本発明の第1実施形態に双極型蓄電池100においては、
図1乃至
図3に示すように、一対のピラー123;113,113;113,113;133と貫通孔143との隙間144には、各セル部材150の正極用活物質層103と負極用活物質層104とを仕切る仕切り手段160が設けられている。
【0046】
これにより、
図3に示すように、正極用活物質103a及び負極用活物質104aのそれぞれが正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部から隙間144に脱落しても、脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが仕切り手段160によって仕切られる。このため、一対のピラー123;113,113;113,113;133(
図3には一対のピラー113;113のみ図示)と貫通孔143との隙間144において脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが互いに接触し、短絡してしまうおそれを回避することができる。
【0047】
これに対して、
図4に示す参考例に係る双極型蓄電池500においては、双極型蓄電池500を使用して正極用活物質103a及び負極用活物質104aのそれぞれが正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部から脱落した場合には、隙間144において正極用活物質103a及び負極用活物質104aを仕切るものが無いため、脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが互いに接触し、短絡してしまうおそれがある。
【0048】
次に、仕切り手段160について説明すると、仕切り手段160は、
図1乃至
図3に示すように、内周側が一対のピラー123;113,113;113,113;133間に挟まれて隙間144を正極用活物質層103の側の隙間144aと負極用活物質層104の側の隙間144bとに仕切る仕切り部材161で構成されている。
これにより、正極用活物質103a及び負極用活物質104aのそれぞれが正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部から隙間144に脱落しても、脱落した正極用活物質103aは正極用活物質層103の側の隙間144aに収まり、負極用活物質104aは負極用活物質層104の側の隙間144bに収まる。このため、一対のピラー123;113,113;113,113;133と貫通孔143との隙間144において脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが互いに接触し、短絡してしまうおそれを確実に回避することができる。
【0049】
次に、仕切り部材161の具体的構成について説明すると、
図2に示すように、仕切り部材161は、内周側が一対のピラー123;113,113;113,113;133(
図2には一対のピラー113;113のみ図示)のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a間に挟まれ、外周側が正極用活物質層103と電解層140との間に挟まれるリング状の樹脂フィルムで構成されている。
仕切り部材161を構成する樹脂フィルムの取付けは、内周側を一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a間に挟み、外周側を正極用活物質層103と電解層140との間に挟んだ状態で、当該接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士を接着剤又は振動溶着により接合すればよい。
【0050】
これにより、仕切り部材161として簡単かつ準備が容易な構成の樹脂フィルムを用いて隙間144を正極用活物質層103の側の隙間144aと負極用活物質層104の側の隙間144bとに仕切ることができる。
仕切り部材161を構成する樹脂フィルムは、絶縁性及び耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂製のリング状部材である。絶縁性及び耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(アクリル樹脂)、アクリルニトリルーブタンジエンースチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート等が挙げられる。また、絶縁性及び耐硫酸性を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラール樹脂、ポリイミド、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0051】
また、仕切り部材161を構成する樹脂フィルムの内周側は、一対のピラー123;113,113;113,113;133のうちの積層方向一側(
図2における下側)のピラー123,113,113に形成された段差113bに配置されていることが好ましい。これにより、一対のピラー123;113,113;113,113;133をそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133aで接合するに際して樹脂フィルムの内周側を段差113b上に配置した状態で接合すればよく、樹脂フィルムの内周側の一対のピラー123;113,113;113,113;133の接合面間への取付作業を容易なものとすることができる。
【0052】
また、仕切り部材を構成する樹脂フィルムの内周側の一対のピラー123;113,113;113,113;133への重なり幅B1は、1mm以上であることが好ましい。これにより、樹脂フィルムの内周側と一対のピラー123;113,113;113,113;133との間を確実に遮断することができる。なお、当該重なり幅B1の上限値は、ピラーの接合強度を維持する観点から5mm程度であることが好ましい。
【0053】
また、仕切り部材161を構成する樹脂フィルムにおいて、正極用活物質層103における貫通孔143の孔径Dと電解層140における貫通孔143の孔径dのうち孔径が大きい方の貫通孔のある部材(本実施形態の場合、孔径Dが孔径dよりも大きいので、正極用活物質層103)に対する樹脂フィルムの外周側の重なり幅B2は、1~20mmであることが好ましい。これにより、樹脂フィルムの外径を不必要に大きくすることなく、樹脂フィルムの外周側と正極用活物質層103及び電解層140との間を確実に遮断することができる。当該重なり幅B2が1mmよりも小さいと、樹脂フィルムが外れてしまうおそれがある。一方、当該重なり幅B2が20mmよりも大きいと、樹脂フィルムの外径が不必要に大きくなってしまうおそれがある。
【0054】
また、仕切り部材161を構成する樹脂フィルムの厚みtは、10~500μmであることが好ましい。これにより、樹脂フィルムの厚みを不必要に大きくすることなく樹脂フィルムの強度を担保することができる。当該厚みtが1μm未満であると、樹脂フィルムの機械的強度が弱くなってしまうおそれがある。一方、当該厚みtが500μmよりも厚いと、不必要に大きな板厚となって必要とされる機械的強度以上の機械的強度となりコスト高となってしまうおそれがある。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池について、
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の一部の断面図である。
図5において、
図1乃至
図3に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図5に示す第2実施形態に係る双極型蓄電池200は、その基本構成は
図1乃至
図3に示す第1実施形態に係る双極型蓄電池100と同一である。しかし、第2実施形態に係る双極型蓄電池200の仕切り部材161の具体的構成が第1実施形態に係る双極型蓄電池100の仕切り部材161の具体的構成と相違している。
【0056】
第2実施形態に係る双極型蓄電池200の仕切り部材161は、電解層140の内周側を内方向に延長して一対のピラー123;113,113;113,113;133に当接する当接部140aと、当接部140aの内周面から内方向に突出し、一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a間に挟まれる当接部140aと一体の内側突出部140bとを備えている。
仕切り部材161の取付けは、内側突出部140bを一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a間に挟んだ状態で、当該接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士を内側突出部140bとともに接着剤により接合すればよい。
図5において、符号170は接着層である。
【0057】
これにより、仕切り部材161として一対のピラー123;113,113;113,113;133及びセル部材150以外の部材を用いることなく、電解層140の一部(内側突出部140b)を一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a間に挟んだ状態で接合面同士を電解層140の一部とともに接合するだけで、電解層140と一対のピラー123;113,113;113,113;133との間を遮断し、隙間144を正極用活物質層103の側の隙間144aと負極用活物質層104の側の隙間144bとに仕切ることができる。
【0058】
これにより、正極用活物質103a及び負極用活物質104aのそれぞれが正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部から隙間144に脱落しても、脱落した正極用活物質103aは正極用活物質層103の側の隙間144aに収まり、負極用活物質104aは負極用活物質層104の側の隙間144bに収まる。このため、一対のピラー123;113,113;113,113;133と貫通孔143との隙間144において脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが互いに接触し、短絡してしまうおそれを確実に回避することができる。
なお、第2実施形態に係る双極型蓄電池200においては、積層方向一側のピラー123,113,113の突出長と、積層方向他側のピラー113,113,133の突出長とは同じである。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池について、
図6を参照して説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の一部の断面図である。
図6において、
図1乃至
図3に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図6に示す第3実施形態に係る双極型蓄電池300は、その基本構成は
図1乃至
図3に示す第1実施形態に係る双極型蓄電池100と同一である。しかし、第3実施形態に係る双極型蓄電池300の仕切り部材161の具体的構成が第1実施形態に係る双極型蓄電池100の仕切り部材161の具体的構成と相違している。
【0060】
第3実施形態に係る双極型蓄電池300の仕切り部材161は、電解層140の内周側を内方向に延長して一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a近傍に形成された凹部116に挿入されるとともに、一対のピラー123;113,113;113,113;133によって挟まれる挿入部161aを備えている。
仕切り部材161の取付けは、挿入部161aを一対のピラー123;113,113;113,113;133によって挟んだ状態で、接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士を接着剤又は振動溶着により接合すればよい。
【0061】
これにより、仕切り部材161として一対のピラー123;113,113;113,113;133及びセル部材150以外の部材を用いることなく、電解層140(挿入部161a)を一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a近傍に形成された凹部116に挿入して一対のピラー123;113,113;113,113;133の接合面同士を接合するだけで、電解層140と一対のピラー123;113,113;113,113;133との間を遮断し、隙間144を正極用活物質層の側の隙間144aと負極用活物質層104の側の隙間144bとに仕切ることができる。
【0062】
これにより、正極用活物質103a及び負極用活物質104aのそれぞれが正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部から隙間144に脱落しても、脱落した正極用活物質103aは正極用活物質層103の側の隙間144aに収まり、負極用活物質104aは負極用活物質層104の側の隙間144bに収まる。このため、一対のピラー123;113,113;113,113;133と貫通孔143との隙間144において脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが互いに接触し、短絡してしまうおそれを確実に回避することができる。
なお、第3実施形態に係る双極型蓄電池300においては、積層方向一側のピラー123,113,113の突出長と、積層方向他側のピラー113,113,133の突出長とは同じである。
【0063】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る双極型蓄電池について、
図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第4実施形態に係る双極型蓄電池の概略構成の一部を示し、(A)は断面図、(B)はバイポーラプレートから突出する積層方向他側のピラーの底面図、(C)は横断部の積層方向他面の平面図である。(B)において、ピラーの接触面に斜線を施し、ピラー側凹部を白抜きにし、(C)において、横断部に斜線を施し、横断部貫通孔を白抜きにしてある。
図7(A)は
図7(C)において線7Aに沿って切断した断面を示す。
図7において、
図1乃至
図3に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0064】
図7に示す第4実施形態に係る双極型蓄電池400は、その基本構成は
図1乃至
図3に示す第1実施形態に係る双極型蓄電池100と同一である。しかし、第4実施形態に係る双極型蓄電池400の仕切り部材161の具体的構成が第1実施形態に係る双極型蓄電池100の仕切り部材161の具体的構成と相違している。
第4実施形態に係る双極型蓄電池400の仕切り部材161は、電解層140の内周側を内方向に延長して一対のピラー123;113,113;113,113;133に当接する当接部140aと、当接部140aの内周面から内方向に延びて一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a間に挟まれる当接部140aと一体の挟持部145とを備えている。
【0065】
そして、挟持部145は、
図7(A),(C)に示すように、リング状部分145aと、リング状部分145aの外周から外方向に延び、当接部140aに繋がる4つの外方向突出部分145bとを備えている。そして、当接部140aとリング状部分145a及び4つの外方向突出部分145bとの間、及びリング状部分145aの内側は、積層方向に貫通する挟持部貫通孔146となっている。つまり、挟持部145には、積層方向に貫通する挟持部貫通孔146が形成されている。
ここで、挟持部145のリング状部分145a及び4つの外方向突出部分145bはその積層方向長さが電解層140の積層方向厚さと同一となっている。また、4つの外方向突出部分145bのリング状部分145a外周における設置ピッチは周方向で均等である。
【0066】
また、一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133aには、
図7(A),(B)に示すように、挟持部145が嵌合するピラー側凹部114が形成されている。各ピラー側凹部114は、挟持部145のリング状部分145aが嵌合される環状凹部114aと、挟持部145の4つの外方向突出部分145bが嵌合する、環状凹部114aから外方向に突出する外方向突出凹部114bとを備えている。
積層方向一側のピラー123,113,113に形成されるピラー側凹部114の積層方向深さは電解層140の積層方向厚さの1/2であり、積層方向他側のピラー113,113,133に形成されるピラー側凹部114の積層方向深さは電解層140の積層方向厚さの1/2である。
【0067】
そして、仕切り部材161は、一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133aに形成されたピラー側凹部114に挟持部145が嵌合した状態で一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士が挟持部貫通孔146内で接合されることで構成される。当該接合は、接着剤又は振動溶着により行えばよい。
【0068】
これにより、仕切り部材161として一対のピラー123;113,113;113,113;133及びセル部材150以外の部材を用いることなく、一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133aに形成されたピラー側凹部114に電解層140から当接部140aを介して延びる挟持部145を嵌合させた状態で一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士を挟持部貫通孔146内で接合するだけで、電解層140と一対のピラー123;113,113;113,113;133との間を遮断し、隙間144を正極用活物質層103の側の隙間144aと負極用活物質層104の側の隙間144bとに仕切ることができる。また、ピラー側凹部114に挟持部145が嵌合しているので、その状態で接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士を挟持部貫通孔146内で接合すると、一対のピラー123;113,113;113,113;133のそれぞれの接合面123a;113a,113a;113a,113a;133a同士の接合を強固なものとすることができる。
【0069】
これにより、正極用活物質103a及び負極用活物質104aのそれぞれが正極用活物質層103及び負極用活物質層104のそれぞれの孔端部から隙間144に脱落しても、脱落した正極用活物質103aは正極用活物質層103の側の隙間144aに収まり、負極用活物質104aは負極用活物質層104の側の隙間144bに収まる。このため、一対のピラー123;113,113;113,113;133と貫通孔143との隙間144において脱落した正極用活物質103a及び負極用活物質104aが互いに接触し、短絡してしまうおそれを確実に回避することができる。
なお、第4実施形態に係る双極型蓄電池400においては、積層方向一側のピラー123,113,113の突出長と、積層方向他側のピラー113,113,133の突出長とは同じである。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、第1乃至第4実施形態において、セルCの数を3つ、フレームユニット110,120,130の数を4つ(内部用フレームユニット110の数を2つ)としてあるが、セルCの数は2つ以上、フレームユニット110,120,130の数は3つ(内部用フレームユニット110の数は1つ)以上であればよい。
【0071】
また、第1実施形態に係る双極型蓄電池100において、仕切り部材161を構成する樹脂フィルムの外周側が正極用活物質層103と電解層140との間に挟まれるが、当該外周側は、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のいずれか一方と電解層140との間に挟まれればよい。
また、第1乃至第4実施形態100~400において、電解層140は1つでなくて複数であってもよい。この場合、第1実施形態に係る双極型蓄電池100において、仕切り部材161を構成する樹脂フィルムの外周側は、隣り合う2つの電解層140間に挟まれてもよい。
【0072】
また、第1実施形態に係る双極型蓄電池100において、仕切り部材161を構成する樹脂フィルムの内周側は、一対のピラー123;113,113;113,113;133のうちの積層方向一側(
図2における下側)のピラー123,113,113に形成された段差113bに配置されているが、樹脂フィルムの内周側が一対のピラー123;113,113;113,113;133のうちのうちの少なくとも1つに形成された段差に配置されていればよい。
【0073】
また、第1実施形態に係る双極型蓄電池100において、仕切り部材161を構成する樹脂フィルムにおいて、正極用活物質層103における貫通孔143の孔径Dと電解層140における貫通孔143の孔径dのうち孔径が大きい方の貫通孔143のある部材(本実施形態の場合、孔径Dが孔径dよりも大きいので、正極用活物質層103)に対する樹脂フィルムの外周側の重なり幅B2は、1~20mmとなっている。1~20mmとする樹脂フィルムの外周側の重なり幅は、正極用活物質層103及び負極用活物質層104のいずれか一方における貫通孔143の孔径と電解層140における貫通孔143の孔径のうち孔径が大きい方の貫通孔143のある部材に対する樹脂フィルムの外周側の重なり幅、又は隣り合う2つの電解層140における貫通孔143の孔径のうち孔径が大きい方の貫通孔143のある部材に対する樹脂フィルムの外周側の重なり幅であればよい。
【0074】
また、第1、第2、及び第4実施形態に係る双極型蓄電池100、300、400における接合面122a;112a,112a;112a,112a;132a及び接合面123a;113a,113a;113a,113a;133aでの接合方法は、接着剤や振動溶着による接合に限らず、熱板や赤外線加熱による熱溶着や溶剤溶解等の他の溶着処理による接合であってもよい。
【0075】
また、第1乃至第4実施形態に係る双極型蓄電池100~400におけるバイポーラプレート111に備えられる電気的接続手段は、特定の方法に限定されるものではない。例えば、バイポーラプレート111の全体に導電性粒子や導電性繊維を含有させることにより、バイポーラプレート111の両面を電気的に接続するようにすることも可能である。また、電気的導通を可能とする導電性部材をバイポーラプレート111に組み込むこともできる。
また、第1乃至第4実施形態に係る双極型蓄電池100~400においては、正極141が正極用鉛層101を有し、負極142が負極用鉛層102を有する双極型鉛蓄電池としてあるが、正極141及び負極142に鉛以外の金属を用いた双極型蓄電池としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る双極型蓄電池は、一対のピラーと貫通孔との隙間において脱落した正極用活物質及び負極用活物質が互いに接触し、短絡してしまうおそれを回避することができるので、各種産業において極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
100,200,300,400 双極(バイポーラ)型蓄電池
101 正極用鉛層
102 負極用鉛層
103 正極用活物質層
103a 正極用活物質
104 負極用活物質層
104a 負極用活物質
105 正極端子
106 負極端子
110 内部用フレームユニット
111 バイポーラプレート
112 リム
112a 接合面
113 ピラー
113a 接合面
113b 段差
114 ピラー側凹部
114a 環状凹部
114b 外方向突出凹部
116 凹部 120 第一の端部用フレームユニット
121 第一のエンドプレート
122 リム
122a 接合面
123 ピラー
123a 接合面
130 第二の端部用フレームユニット
131 第二のエンドプレート
132 リム
132a 接合面
133 ピラー
133a 接合面
140 電解層
140a 当接部
140b 内側突出部
141 正極
142 負極
143 貫通孔
144 隙間
144a 正極用活物質層側の隙間
144b 負極用活物質層側の隙間
145 挟持部
145a リング状部分
145b 外方向突出部分
146 挟持部貫通孔
150 セル部材
160 仕切り手段
161 仕切り部材
C セル(セル部材を収容する空間)