IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ウェーハの加工方法 図1
  • 特開-ウェーハの加工方法 図2
  • 特開-ウェーハの加工方法 図3
  • 特開-ウェーハの加工方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160903
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221013BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221013BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20221013BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 631
H01L21/304 621A
H01L21/304 621B
B24B37/00 H
B24B1/00 A
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065422
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】大関 正彬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 三千登
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA07
3C049CB01
3C049CB03
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB03
3C158DA17
3C158EB01
3C158ED26
5F057AA28
5F057DA02
5F057DA11
5F057EA07
5F057EA28
(57)【要約】
【課題】高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することができるウェーハの加工方法を提供すること。
【解決手段】ウェーハを平面研削又はラッピングする研削工程と、研削した前記ウェーハを粗研磨する粗研磨工程と、粗研磨した前記ウェーハを、分子内に2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子とを含み、前記2級アミンを有する化合物の濃度が10ppm~100ppmである研磨用組成物を供給しながらポスト粗研磨するポスト粗研磨工程と、ポスト粗研磨した前記ウェーハを仕上げ研磨する仕上げ研磨工程とを含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを平面研削又はラッピングする研削工程と、
研削した前記ウェーハを粗研磨する粗研磨工程と、
粗研磨した前記ウェーハを、分子内に2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子とを含み、前記2級アミンを有する化合物の濃度が10ppm~100ppmである研磨用組成物を供給しながらポスト粗研磨するポスト粗研磨工程と、
ポスト粗研磨した前記ウェーハを仕上げ研磨する仕上げ研磨工程と
を含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記ポスト粗研磨工程において、前記2級アミンが環状構造となっている化合物を少なくとも含む前記研磨用組成物を用いることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
前記ポスト粗研磨工程において、前記2級アミンが6員環構造となっている化合物を少なくとも含む前記研磨用組成物を用いることを特徴とする請求項2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
前記ポスト粗研磨工程において、砥粒として二酸化ケイ素が含まれている前記研磨用組成物を用いることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスプロセスにおいて、微細化が進むにつれ、基板となるシリコンウェーハも高平坦化、低欠陥化が求められる。
【0003】
シリコンウェーハは一般的に、単結晶シリコンのインゴットをスライスし、ウェーハ状にした後、平面研削やラッピング等の研削工程により、スライスにおいて発生したダメージ層を除去し、さらに複数段の研磨工程において平面研削工程等において発生したダメージ層を除去することで無欠陥化を図る。
【0004】
特に研磨工程では、既存のダメージ層や欠陥を素早く除去する必要がある。
一般的に研磨工程は粗研磨工程と仕上げ研磨工程から構成されており、粗研磨工程では平面研削等において発生したダメージを除去することが目的であり、仕上げ研磨では粗研磨工程で発生したダメージを除去することが目的である。
【0005】
粗研磨工程は、比較的硬質な研磨布を用い、強塩基ベースの研磨用組成物を用いることでpHも高くし、メカニカル面からもケミカル面からも研磨レートを高くしている。
【0006】
その一方、仕上げ研磨では比較的軟質な研磨布を用い、弱塩基ベースの研磨用組成物でpHも9~10程度とし、さらには水溶性高分子や界面活性剤などの添加剤を用い、メカニカル面からもケミカル面からも研磨レートを低くしている。
【0007】
そのため、粗研磨工程で発生したダメージを仕上げ研磨工程で除去するためには多大なる研磨時間を要し、生産性の低下が問題となっていた。
【0008】
また、生産性低下を防ぐため、仕上げ研磨工程の研磨時間を短くしてしまうと、欠陥が大幅に増加してしまうという問題点がある。
【0009】
仕上げ研磨時間を短くして発生する欠陥、すなわち粗研磨の残留欠陥はとくに凹欠陥と呼ばれ、粗研磨工程で発生したダメージの除去ができなかったものと考えられる。
【0010】
そのような中、近年は粗研磨工程と仕上げ研磨工程との間に「ポスト粗研磨工程」を挿入する試みがなされている。
【0011】
粗研磨で発生したダメージ除去に特化したポスト粗研磨工程を設けることにより、工程数は増えるものの仕上げ研磨の研磨時間を減らすことができるため、トータルで生産性の向上が実現する。
【0012】
ここで、ポスト粗研磨工程では、先述したように高い研磨レートにより素早く粗研磨起因のダメージを除去することが求められるのに加え、ポスト粗研磨工程自体で欠陥を発生させないようにしなければならない。
【0013】
ポスト粗研磨工程において、これまで例えば研磨加工中の荷重を高くするなどして研磨レートを高くする手法があるが、荷重を高くしてしまうとポスト粗研磨工程自体で多くの欠陥が発生してしまい、かえって仕上げ研磨工程の研磨時間が伸びてしまう。
【0014】
また、他にもアルカリ添加し研磨用組成物のpHを高くして研磨する手法も考案されているが、pHを高くすることで異方性エッチングの寄与が高くなり、粗研磨で発生したダメージ部がさらにエッチングされ結果的に多くの研磨取り代を要することになる。
【0015】
他には、砥粒のサイズを大きくして機械的な除去作用を増やす試みもあるが、砥粒サイズを大きくしすぎてしまうと砥粒によるダメージが発生してしまい、ポスト粗研磨工程自体で多くの欠陥が発生してしまい、仕上げ研磨工程の研磨時間が伸びてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008-147651号公報
【特許文献2】特開2016-124943号公報
【特許文献3】国際公開第WO2011/093223号パンフレット
【特許文献4】特開2017-11220号公報
【特許文献5】特開2019-119854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上のことから、ポスト粗研磨工程では、高い研磨レートで素早く粗研磨工程起因のダメージ除去を行いつつも、ポスト粗研磨工程自体で欠陥を作らない研磨技術が求められる。
【0018】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することができるウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明では、ウェーハを平面研削又はラッピングする研削工程と、
研削した前記ウェーハを粗研磨する粗研磨工程と、
粗研磨した前記ウェーハを、分子内に2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子とを含み、前記2級アミンを有する化合物の濃度が10ppm~100ppmである研磨用組成物を供給しながらポスト粗研磨するポスト粗研磨工程と、
ポスト粗研磨した前記ウェーハを仕上げ研磨する仕上げ研磨工程と
を含むことを特徴とするウェーハの加工方法を提供する。
【0020】
このような本発明のウェーハの加工方法によれば、高い研磨レートで、研削工程及び粗研磨工程で発生したダメージを十分に除去することができる。したがって、本発明のウェーハの加工方法によれば、高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することができる。
【0021】
前記ポスト粗研磨工程において、前記2級アミンが環状構造となっている化合物を少なくとも含む前記研磨用組成物を用いることが好ましい。
【0022】
このような化合物を含む研磨用組成物をポスト粗研磨工程で用いることにより、より高い研磨レートを実現することができる。
【0023】
前記ポスト粗研磨工程において、前記2級アミンが6員環構造となっている化合物を少なくとも含む前記研磨用組成物を用いることがより好ましい。
【0024】
このような化合物を含む研磨用組成物をポスト粗研磨工程で用いることにより、より高い欠陥低減能力を実現すると共に、更に高い研磨レートを実現することができる。
【0025】
前記ポスト粗研磨工程において、砥粒として二酸化ケイ素(シリカ)が含まれている前記研磨用組成物を用いることが好ましい。
【0026】
純度の観点から、このような研磨用組成物を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明のウェーハの加工方法によれば、高い研磨レートで、研削工程及び粗研磨工程で発生したダメージを十分に除去することができる。したがって、本発明のウェーハの加工方法によれば、高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することができ、生産性と表面欠陥低減に優れたウェーハの加工方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のウェーハの加工方法の一例を示すフロー図である。
図2】実施例1~5及び比較例1~6のウェーハの加工方法の各々での研磨レート(比較例1を1とした相対値)を示した図である。
図3】実施例1~5及び比較例1~6のウェーハの加工方法の各々での総欠陥数(比較例1を1とした相対値)を示した図である。
図4】実施例1~5及び比較例1~6のウェーハの加工方法の各々での凹欠陥数(各々の総欠陥数を1とした相対値)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述のように、高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することができるウェーハの加工方法の開発が求められていた。
【0030】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ポスト粗研磨工程において、分子内に2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子とを含み、2級アミンを有する化合物の濃度が10ppm~100ppmである研磨用組成物を用いることで、高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
即ち、本発明は、ウェーハを平面研削又はラッピングする研削工程と、
研削した前記ウェーハを粗研磨する粗研磨工程と、
粗研磨した前記ウェーハを、分子内に2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子とを含み、前記2級アミンを有する化合物の濃度が10ppm~100ppmである研磨用組成物を供給しながらポスト粗研磨するポスト粗研磨工程と、
ポスト粗研磨した前記ウェーハを仕上げ研磨する仕上げ研磨工程と
を含むことを特徴とするウェーハの加工方法である。
【0032】
なお、特許文献1~5には、アミン化合物を研磨組成物に含ませる技術が開示されているが、ポスト粗研磨工程において用いる研磨用組成物に、分子内に2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子とを含ませることは、記載も示唆もされていない。
【0033】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
図1は、本発明のウェーハの加工方法の一例を示すフロー図である。
【0035】
本発明のウェーハの加工方法では、図1に示すように、ウェーハを平面研削又はラッピングする研削工程、及び研削したウェーハを粗研磨する工程に続き、ポスト粗研磨工程を行う。ポスト粗研磨工程の後、ウェーハを仕上げ研磨する仕上げ研磨工程を行う。
【0036】
本発明のウェーハ加工方法では、ポスト粗研磨工程において、粗研磨したウェーハを、分子内に2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子とを含み、2級アミンを有する化合物の濃度が10ppm~100ppmである研磨用組成物を供給しながらポスト粗研磨する。このようなポスト粗研磨工程を行う理由を、以下に説明する。
【0037】
本発明者らは、上記課題を解決するため、ポスト粗研磨工程で用いる研磨用組成物への添加剤としてアミン類の検討を行った。
【0038】
検討の結果、特に2級アミン類(2級アミンを有する化合物)において、研磨レートの大幅な上昇が見られた。
【0039】
アミンは、窒素原子に結合しているアルキル基の数によって級数が決定し、例えば、1つのアルキル基しか結合せず、他は水素原子であれば1級アミン、2つのアルキル基が結合している場合は2級アミン、3つのアルキル基が結合している場合は3級アミンと呼ばれる。
【0040】
さらに、2級アミンのなかでも、特に環状構造物を有し、その中に2級アミン基を有する構造が特に研磨レートの上昇効果が顕著であった。
【0041】
一般的に、アミン類は高い求核性を有し、さらにアミン級数が上がるにつれてさらに求核性が高まる。一方、3級アミンは立体的な障害により求核性が減少するため、2級アミンが最も求核性が高い。
【0042】
今回、2級アミンの高い求核性により、シリコンウェーハ表面の化学反応が促進されたものと考えられる。
【0043】
また、環状構造で更に高い研磨レートの上昇効果を得られた点に関しては、2次元状の分子構造を有することで、平板上のシリコンウェーハとの相互作用が強まり、より高い化学作用を得られたためと考えられる。
【0044】
アミンの添加濃度に関して、添加量を10ppm以上にすることで、研磨レート増大効果が顕著となることが分かった。しかし、添加濃度を上げすぎてしまうとポスト粗研磨組成物のpHが高くなり、逆に欠陥が増加してしまう。
【0045】
pHが高くなることで、研磨における化学的作用が強くなり、粗研磨で発生したダメージが研磨中に顕在化してしまったことが原因と考えられる。
【0046】
そのため、研磨用組成物における2級アミンを有する化合物の濃度を10ppm~100ppmとした。
【0047】
また、アミン以外の添加剤として、水溶性高分子を添加することで、ポスト粗研磨工程で発生させる欠陥を減少させることが分かった。
【0048】
水溶性高分子は、研磨環境中で研磨布やウェーハに吸着し、シリコンウェーハ表面へのダメージを和らげる作用がある。
【0049】
水溶性高分子の中でも、特に重量平均分子量1万以上の水溶性高分子を用いることで、特に欠陥発生を抑制することができる。
【0050】
すなわち、研磨レート上昇効果を有する2級アミンを有する化合物と、重量平均分子量1万以上の水溶性高分子を共に添加し、2級アミンを有する化合物の濃度を10ppm~100ppmとした研磨用組成物を、粗研磨工程と仕上げ研磨工程との間に行なうポスト粗研磨工程で用いることにより、高い研磨レートと欠陥発生抑制を両立することができる。
【0051】
一方、上記研磨用組成物を、ポスト粗研磨工程においては用いずに例えば粗研磨工程や仕上げ研磨工程だけで用いても、本発明のように高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することはできない。
【0052】
以下、本発明のウェーハの加工方法における各工程の詳細を説明する。
【0053】
〇研削工程
研削工程では、ウェーハを平面研削又はラッピングする。平面研削及びラッピングは、一般に行われているいずれの工程をも適用することができ、特に限定されない。
【0054】
〇粗研磨工程
粗研磨工程は、研削工程で導入されたダメージを除去するために行われる。粗研磨工程はダメージ除去のため、0.1μm以上研磨するのが良く、さらには0.3μm以上が良く、1μm以上の除去が望ましい。一方、平坦度や生産性維持のため、30μm以下が望ましく、さらには10μm以下が望ましい。
【0055】
なお、粗研磨工程は片面研磨でも両面研磨でもどちらでも良い。
【0056】
粗研磨工程では硬質の研磨パッドにより研磨を行う。研磨パッドは発泡ウレタンパッドや不織布に樹脂を含浸させた不織布パッド、スウェードパッドを用いる。
【0057】
平坦性向上の観点から、なるべく硬質の研磨パッドを用いるのが望ましく、A硬度で70以上の研磨パッドを用いることが望ましい。
【0058】
粗研磨工程で用いる研磨用組成物としては、まず砥粒を有することが望ましい。砥粒としては、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物が挙げられるが、純度の観点から特に二酸化ケイ素が好ましい。
【0059】
砥粒の二酸化ケイ素は研磨レート確保の観点から、粗研磨工程で用いる研磨用組成物の0.01wt%以上含むのが良く、さらには0.1wt%以上が好ましい。一方、粗研磨工程でのダメージ低減の観点から、粗研磨工程で用いる研磨用組成物における二酸化ケイ素の含有量は、30wt%以下が好ましく、さらには10wt%以下が好ましい。
【0060】
粗研磨用組成物としては、砥粒のほかに塩基性化合物を含んでいても良い。塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウムなどがある。
【0061】
塩基性化合物により研磨用組成物のpHが増大するが、研磨レート促進の観点から、粗研磨工程で用いる研磨用組成物のpHは8.0以上が好ましく、さらには9.0以上が良く、さらには10.0以上が好ましい。また、砥粒の安定性の観点から、pHは14.0以下が好ましく、さらには13.0以下が良く、さらには12.0以下が好ましい。
【0062】
〇ポスト粗研磨工程
ポスト粗研磨工程は、粗研磨工程で発生した研磨ダメージを除去し、その後の仕上げ研磨の取り代を少なくするのが目的である。
【0063】
ポスト粗研磨工程の取り代は、粗研磨工程の条件に強く依存するが、0.1μm以上が好ましく、さらには0.3μm以上が望ましい。一方、平坦度維持の観点から10μm以下が望ましく、さらには3μm以下が望ましい。
【0064】
ポスト粗研磨工程も片面研磨でも両面研磨でもどちらでも良い。
【0065】
ポスト粗研磨工程では、研磨ダメージ低減のため、粗研磨工程より軟質な研磨パッドを用いるのが望ましい。研磨パッドは発泡ウレタンパッドや不織布に樹脂を含浸させた不織布パッド、スウェードパッドを用いる。
【0066】
ポスト粗研磨工程の研磨布硬度は、具体的には、粗研磨工程の研磨布硬度より小さく且つA硬度で90以下が望ましく、さらには80以下が望ましい。一方、平坦性向上のため、A硬度は40以上が望ましく、50以上が望ましい。
【0067】
ポスト研磨工程において用いる研磨用組成物は、分子内に2級アミンを有する化合物を含む。
【0068】
2級アミンを有する化合物としては、例えば、ピペラジン誘導体やアルコールアミン誘導体などが挙げられる。ピペラジン誘導体の中では、例えば、ピペラジンや、2-メチルピペラジン、2-ピロリジノン、2-アミノエチルピペラジンがあり、アルコールアミン誘導体としては、例えばジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0069】
2級アミンを有する化合物としては、先に述べた理由で環状構造となっている化合物が好ましく、6員環構造となっている化合物がより好ましい。
【0070】
2級アミンを有する化合物の添加濃度は、先に述べた理由で、10ppm~100ppmとする。
【0071】
ポスト粗研磨工程で用いる研磨用組成物には、研磨ダメージ低減のため、重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子を添加する。重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子は、セルロース誘導体やポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。
【0072】
水溶性高分子の平均重量平均分子量は、凝集による欠陥増加を低減するため、1000万以下が望ましく、さらには100万以下が望ましい。
【0073】
重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子は研磨ダメージ低減のため、ポスト粗研磨工程で用いる研磨用組成物に1ppm以上添加するのが望ましく、さらには10ppm以上添加するのが望ましい。一方、研磨レートの減少を防ぐために、10000ppm以下が望ましく、さらには1000ppm以下が望ましく、さらには100ppm以下が望ましい。
【0074】
ポスト粗研磨工程で用いる研磨用組成物は砥粒を更に含むことができる。砥粒としては、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物が挙げられるが、純度の観点から特に二酸化ケイ素が好ましい。すなわち、ポスト粗研磨工程において、砥粒として二酸化ケイ素が含まれている研磨用組成物を用いることが好ましい。
【0075】
ポスト粗研磨用組成物に含まれる砥粒の二酸化ケイ素は、研磨レート確保の観点から、研磨用組成物の0.01wt%以上含まれるのが良く、さらには0.1wt%以上が好ましい。一方、ポスト粗研磨工程でのダメージ低減の観点から、30wt%以下が好ましく、さらには10wt%以下が好ましい。
【0076】
ポスト粗研磨用組成物は、2級アミンを有する化合物とは別の、塩基性化合物を含んでいても良い。塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウムなどがある。
【0077】
2級アミンを有する化合物及び上記塩基性化合物により研磨用組成物のpHが増大するが、研磨レート促進の観点から、pHは8.0以上が好ましく、さらには9.0以上が良く、さらには10.0以上が好ましい。また、砥粒の安定性の観点から、pHは14.0以下が好ましく、さらには13.0以下が良く、さらには12.0以下が好ましい。
【0078】
〇仕上げ研磨工程
ポスト粗研磨工程を経たウェーハは、最終仕上げ研磨工程へと運ばれる。
【0079】
最終仕上げ研磨工程は、マイクロラフネスを除去するのが目的である。
【0080】
最終仕上げ研磨工程の取り代は、粗研磨工程やポスト粗研磨工程の条件に強く依存するものの、1nm以上が好ましく、さらには3nm以上が望ましい。一方、平坦度維持の観点から100nm以下が望ましく、さらに30nm以下が望ましい。
【0081】
最終仕上げ研磨工程も片面研磨でも両面研磨でもどちらでも良い。
【0082】
最終仕上げ研磨工程では、研磨ダメージ低減のため、ポスト粗研磨工程よりさらに軟質な研磨パッドを用いるのが望ましい。研磨パッドは発泡ウレタンパッドや不織布に樹脂を含浸させた不織布パッド、スウェードパッドを用いるが、この中ではスウェードパッドが好ましい。
【0083】
仕上げ研磨工程の研磨布硬度は、具体的には、ポスト粗研磨工程の研磨布硬度よりも小さく且つA硬度で80以下が望ましく、さらには70以下が望ましい。一方、平坦性向上のため、A硬度は30以上が望ましく、40以上が望ましい。
【0084】
仕上げ研磨工程で用いる砥粒として、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物が挙げられるが、純度の観点から特に二酸化ケイ素が好ましい。
【0085】
仕上げ研磨用組成物に含まれる砥粒の二酸化ケイ素は研磨レート確保の観点から、研磨用組成物の0.01wt%以上含むのが良く、さらには0.1wt%以上が好ましい。一方、粗研磨工程でのダメージ低減の観点から、30wt%以下が好ましく、さらには10wt%以下が好ましい。
【0086】
仕上げ研磨用組成物としては、砥粒のほかに塩基性化合物を含んでいても良い。塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウムなどがある。
【0087】
塩基性化合物により研磨用組成物のpHが増大するが、研磨レート促進の観点から、pHは7.0以上が好ましく、さらには8.0以上が良い。また、砥粒の安定性の観点から、pHは14.0以下が好ましく、さらには13.0以下が良く、さらには12.0以下が好ましい。
【0088】
仕上げ研磨用組成物には、研磨ダメージ低減のため、水溶性高分子を添加しても良い。水溶性高分子は、セルロース誘導体やポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。
【0089】
水溶性高分子は研磨ダメージ低減のため、重量平均分子量は100以上が好ましく、さらには1000以上が望ましい。一方、凝集による欠陥増加を低減するため、重量平均分子量は1000万以下が望ましく、さらには100万以下が望ましい。
【0090】
水溶性高分子は研磨ダメージ低減のため、1ppm以上添加するのが望ましく、さらには10ppm以上添加するのが望ましい。一方、研磨レートの減少を防ぐために、10000ppm以下が望ましく、さらには1000ppm以下が望ましく、さらには100ppm以下が望ましい。
【0091】
砥粒、塩基性化合物、水溶性高分子のほかに、研磨レート増大を目的としアミンを添加しても良い。アミンはピペラジン誘導体やアルコールアミン誘導体などが挙げられる。ピペラジン誘導体のなかでは、ピペラジンや、2-メチルピペラジン、2-ピロリジノン、2-アミノエチルピペラジンがあり、アルコールアミン誘導体としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0092】
アミン類の添加濃度としては、研磨レートの観点から1ppm以上添加するのが望ましく、さらには10ppm以上添加するのが望ましい。一方、面粗さの悪化を防ぐため、10000ppm以下が望ましく、さらには1000ppm以下が望ましく、さらには100ppm以下が望ましい。
【0093】
〇洗浄工程
研磨工程を経たウェーハを薬液によって洗浄する洗浄工程を行ってもよい。薬液は、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、過酸化水素水、塩酸、硫酸、クエン酸、フッ酸、オゾン水などから必要に応じて適宜選択される。
【0094】
〇検査工程
ウェーハ表面欠陥は、例えば、KLAテンコール社製のSurfscan、SP3により26nm以上の粒径の欠陥数を計測することにより求められる。
【0095】
また、上記欠陥の実態を調査する際、コンフォーカル光学系による欠陥レビュー検査を行うことがある。例えば、レーザーテック社製の欠陥検査レビュー装置MAGICS(M5640)を用いることができる。
【0096】
上記レビュー像を解析することで、欠陥が凸形状か凹形状か判定できる。一般的に凹形状は研削ダメージや粗研磨のダメージが残っていることを意味している。
【0097】
なお、本発明のウェーハの加工方法により加工するウェーハは特に限定されないが、例えばシリコンウェーハを加工対象とすることができる。
【実施例0098】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
以下の実施例及び比較例の各々では、粗研磨工程後、片面研磨によりポスト粗研磨工程を実施した。なお、加工フローは図1のように、研削工程(具体的には平面研削工程)、粗研磨工程、ポスト粗研磨工程、及び仕上げ研磨工程の順とした。
【0100】
実施例及び比較例では、ポスト粗研磨工程において用いる研磨用組成物を、以下の通り作製した。
【0101】
(比較例1~6)
比較例1では、砥粒にコロイダルシリカ、アルカリに水酸化カリウムを用いて作製した研磨用組成物を用いて、ポスト粗研磨工程を実施した。その際、水溶性高分子やアミン類の添加は行わなかった。
【0102】
比較例2では、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量25万)を100ppm添加したこと以外は比較例1と同様にして作製した研磨用組成物を用いて、ポスト粗研磨工程を実施した。
【0103】
比較例3では、比較例2で添加したのと同じヒドロキシエチルセルロースに加え、アミン類としてモノエタノールアミンを30ppm添加したこと以外は比較例1と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0104】
比較例4では、比較例3で用いたモノエタノールアミンの代わりに、トリエタノールアミンを30ppm添加したこと以外は比較例1と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0105】
比較例5では、ヒドロキシエチルセルロースを添加せず、アミンとしてピペラジンのみ30ppm添加したこと以外は比較例1と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0106】
比較例6では、ヒドロキシエチルセルロースと共に、ピペラジンを比較例5の30ppmから300ppmに増量して添加したこと以外は比較例2と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0107】
(実施例1~5)
実施例1では、ヒドロキシエチルセルロースと共に、ピペラジンを30ppm添加したこと以外は比較例2と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0108】
実施例2では、ヒドロキシエチルセルロースと共に、ピペラジンを90ppm添加したこと以外は実施例1と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0109】
実施例3では、ヒドロキシエチルセルロースと共に、2-メチルピペラジンを30ppm添加したこと以外は実施例1と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0110】
実施例4では、ヒドロキシエチルセルロースと共に、2-ピロリジノンを30ppm添加したこと以外は実施例1と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0111】
実施例5では、ヒドロキシエチルセルロースと共に、2-アミノエチルピペラジンを30ppm添加したこと以外は実施例1と同様にして研磨用組成物を作製した。
【0112】
各実施例及び各比較例では、これらのポスト粗研磨用組成物を作製し、粗研磨後のウェーハを取り代1μmとなるよう前記研磨用組成物を供給しながらポスト粗研磨を実施した。
【0113】
その後、仕上げ研磨を行った後、洗浄工程でウェーハ表面を清浄にし、各種検査を実施した。
【0114】
図2及び3に、実施例1~5及び比較例1~6のウェーハの加工方法の各々での研磨レート及び総欠陥数を、比較例1を1とした相対値として示す。また、図4に、実施例1~5及び比較例1~6のウェーハの加工方法の各々での凹欠陥数(各々の総欠陥数を1としたときの相対値)を示す。また、以下の表1に、実施例1~5及び比較例1~6のポスト粗研磨工程で用いた研磨用組成物の成分と共に、各例の検査結果を示す。
【0115】
【表1】
【0116】
その結果、図2及び表1からわかる通り、比較例1に対し、ピペラジン類を添加した比較例5で研磨レートの増大が認められていることが分かる。しかしながら、比較例5では、総欠陥数及び凹欠陥数が共に比較例1よりも大きかった。これは、比較例5のポスト粗研磨工程で用いた研磨用組成物が水溶性高分子を含んでいなかったためであると考えられる。
【0117】
一方、図3及び表1から、ポスト粗研磨工程で用いた研磨用組成物に、10ppm~100ppmの濃度のピペラジン類などの2級アミンを有する化合物と共に重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子を添加した実施例1~5では、図2及び表1に示すように研磨レートが比較例1と同等以上でありながら、仕上げ研磨後の総欠陥数が比較例1に対して減少していることが分かる。特に、ポスト粗研磨工程で用いた研磨用組成物に、10ppm~100ppmの濃度のピペラジン類と共に重量平均分子量が1万以上である水溶性高分子を添加した実施例1~3及び5では、図2及び表1に示すように、比較例1に対し、研磨レートの増大が認められると共に、仕上げ研磨後の総欠陥数が比較例1に対して減少していることが分かる。
【0118】
また、先ほどの欠陥をレビューし、凹欠陥の数を比較してみた結果、図4及び表1の通り、実施例1~5ではいずれも減少傾向となっていることが分かる。
【0119】
すなわち、実施例1~5では、高い研磨レートと高い欠陥低減能力とを両立することができた。
【0120】
この結果は、ピペラジン類などの2級アミンを有する化合物の10ppm~100ppmの濃度での添加により、ポスト粗研磨工程での研磨レートが増大し、粗研磨工程以前の研磨ダメージを減らし、凹欠陥を減少できたことに起因していると考えられる。
【0121】
また、ポスト粗研磨工程に用いる研磨用組成物に、水溶性高分子として、重量平均分子量が1万以上であるヒドロキシエチルセルロースを添加することで、ポスト粗研磨工程で発生する欠陥に関しても低減できたことも大きく寄与していると考えられる。
【0122】
一方、ポスト粗研磨工程で用いた研磨用組成物に2級アミンを有する化合物を添加しなかった比較例2~4は、図2図4、及び表1から明らかなように、実施例1~5よりも、研磨レートが低く、総欠陥数及び凹欠陥数は大きかった。特に、アミン類の添加量を同程度とした実施例1、3~5と比較例3及び4との比較から、高い研磨レートと高い欠陥低減能力との両立は、1級アミン又は3級アミンを有する化合物を用いた場合では実現できないことが分かる。
【0123】
また、図2図4から明らかなように、比較例6でも、総欠陥数及び凹欠陥数が大きかった。これは、比較例6のポスト粗研磨工程で用いた研磨用組成物におけるピペラジンの含有量が大き過ぎ、欠陥が増加してしまったからであると考えられる。
【0124】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4