(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161116
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】波長変換用材料、波長変換部材及び発光装置並びにこれに用いる化合物
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20221014BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20221014BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C09K11/06
C07F5/02 D CSP
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065685
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康介
【テーマコード(参考)】
2H148
4H048
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA11
2H148AA18
2H148AA19
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA11
4H048VA32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】媒体に対する溶解性に優れ、かつ、十分に大きなモル吸光係数を示すジピロメテンホウ素錯体化合物を用いた波長変換用材料、波長変換部材及び発光装置、並びに、化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含む波長変換用材料。
式中、R
1~R
7は水素原子又は置換基を示し、R
8及びR
9は特定の置換基を示す。但し、R
1~R
9の少なくとも1つは、下記式(A)で表される部分構造を有する。
式中、R
11~R
16は、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合部位を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含む、波長変換用材料。
【化1】
式中、R
1~R
7は水素原子又は置換基を示す。R
8及びR
9は、アルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子を示す。
但し、R
1~R
9の少なくとも1つは、下記式(A)で表される部分構造を有する。
【化2】
式中、R
11~R
16は、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合部位を示す。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物である、請求項1に記載の波長変換用材料。
【化3】
式中、R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16は、前記R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16と同義である。
【請求項3】
前記のR8及びR9の少なくとも一方がハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基である、請求項1又は2に記載の波長変換用材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の波長変換用材料を用いた波長変換部を有する波長変換部材。
【請求項5】
光源と、該光源によって発光された光を変換する、請求項4に記載の波長変換部材とを有する発光装置。
【請求項6】
表示装置又は照明装置である請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記表示装置が液晶表示装置である請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
下記一般式(1A)で表される化合物。
【化4】
式中、R
1~R
7は水素原子又は置換基を示す。R
8及びR
9は、アルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子を示す。
但し、R
8及びR
9の少なくとも一方はハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基であり、R
1~R
9の少なくとも1つは、下記式(A)で表される部分構造を有する。
【化5】
式中、R
11~R
16は、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合部位を示す。
【請求項9】
前記化合物が、下記一般式(2A)又は(3A)で表される化合物である、請求項8に記載の化合物。
【化6】
式中、R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16は、前記R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16と同義である。
【請求項10】
前記のR8及びR9の少なくとも一方がハロゲン化アルキル基又はシアノ基である、請求項8又は9に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換用材料、波長変換部材及び発光装置並びにこれに用いる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ディスプレイ等の表示装置には、白色光を出射する発光ダイオード(LED)が広く使用されている。また、近年、省エネルギーに関する問題への関心が高まり、蛍光灯等の照明装置としても白色LEDを使用したものが急速に普及している。
白色LEDは、通常、LEDと蛍光体とを組み合わせて構成されている。この蛍光体は、一般的に、LEDから放射された特定波長の光(入射光)を吸収して、この光とは異なる特定波長の光(出射光)を出射する機能又は性質(以下、波長変換特性と称す。)を有する蛍光性化合物と、必要により樹脂等とを含有する波長変換用材料から形成されている。蛍光性化合物の中でも有機系の蛍光性化合物は、一般に、無機系の蛍光性化合物よりも波長変換効率に優れている。
このような有機系の蛍光性化合物を用いた波長変換用材料として、ジピロメテン化合物がホウ素原子に2座配位したジピロメテンホウ素錯体化合物と樹脂とを含有するものが提案されている。例えば、特許文献1には、特定の一般式(1)で表されるジピロメテンホウ素錯体化合物として、電子求引性基を導入した化合物、又は、一般式(1)におけるR7がアリール基又はヘテロアリール基である化合物と、バインダー樹脂とを含有する色変換組成物(波長変換用材料)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/190283号
【特許文献2】特開2012-77153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、波長変換用材料としての記載ではないものの、特許文献2には、特定の一般式(I)で表されるジピロメテン系錯体化合物と、700nm以上の波長に吸収極大を有する赤外線吸収性化合物とを含有する着色組成物及びこの組成物を用いて形成されるカラーフィルタが記載されている。
【0005】
近年、波長変換用材料の波長変換効率を向上させたり、輝度を高めたりすることにより、波長変換特性をより向上させることが求められている。
波長変換用材料に用いられるジピロメテンホウ素錯体化合物には、より高輝度な波長変換用材料を開発する観点から、媒体(例えば溶剤、樹脂又はモノマー)に対する十分な溶解性を有することが求められている。高い溶解性を有するジピロメテンホウ素錯体化合物を使用することにより、波長変換用材料を作製する際に、凝集による性能低下、又は、析出による製造適性の低下等が起こりにくくなる。つまり、ジピロメテンホウ素錯体化合物を、得られる波長変換用材料中に高濃度かつ均一に存在させることができる。その結果、高輝度な波長変換用材料を得ることが可能となる。さらに、溶解性が低い場合には、加熱又は超音波等の処理による微粒子化等の溶解条件の変更が必要となったり、フィルターろ過等の処理による不溶成分の除去が必要となり、波長変換用材料の生産性の低下が生じ得るという問題もある。また、モル吸光係数と量子収率の積で表すことができる発光効率(波長変換効率)を高めることも波長変換用材料の高輝度化において重要な要素である。
しかし、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の波長変換用材料に用いられるジピロメテンホウ素錯体化合物は、溶解性が十分でなく、また、モル吸光係数も大きいとはいえず、改善の余地があることがわかってきた。
【0006】
本発明は、媒体に対する溶解性(以下、単に「溶解性」とも称す。)に優れ、かつ、十分に大きなモル吸光係数を示すジピロメテンホウ素錯体化合物を用いた波長変換用材料を提供することを課題とする。また、本発明は、溶解性に優れ、かつ、十分に大きなモル吸光係数を示すジピロメテンホウ素錯体化合物を提供することを課題とする。更に、本発明は、上記の波長変換用材料を用いた波長変換部材及び発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ジピロメテン骨格上に疎水性と嵩高さとを併せ持つ特定の置換基を導入した特定構造のジピロメテンホウ素錯体化合物が、溶解性に優れ、かつ、モル吸光係数も高められることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき、更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、以下の手段によって解決された。
〔1〕
下記一般式(1)で表される化合物を含む、波長変換用材料。
【化1】
式中、R
1~R
7は水素原子又は置換基を示す。R
8及びR
9は、アルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子を示す。
但し、R
1~R
9の少なくとも1つは、下記式(A)で表される部分構造を有する。
【化2】
式中、R
11~R
16は、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合部位を示す。
〔2〕
上記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物である、〔1〕に記載の波長変換用材料。
【化3】
式中、R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16は、上記R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16と同義である。
〔3〕
上記のR
8及びR
9の少なくとも一方がハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基である、〔1〕又は〔2〕に記載の波長変換用材料。
〔4〕
〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の波長変換用材料を用いた波長変換部を有する波長変換部材。
〔5〕
光源と、この光源によって発光された光を変換する、〔4〕に記載の波長変換部材とを有する発光装置。
〔6〕
表示装置又は照明装置である〔5〕に記載の発光装置。
〔7〕
上記表示装置が液晶表示装置である〔6〕に記載の発光装置。
〔8〕
下記一般式(1A)で表される化合物。
【化4】
式中、R
1~R
7は水素原子又は置換基を示す。R
8及びR
9は、アルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子を示す。
但し、R
8及びR
9の少なくとも一方はハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基であり、R
1~R
9の少なくとも1つは、下記式(A)で表される部分構造を有する。
【化5】
式中、R
11~R
16は、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合部位を示す。
〔9〕
上記化合物が、下記一般式(2A)又は(3A)で表される化合物である、〔8〕に記載の化合物。
【化6】
式中、R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16は、上記R
1、R
3~R
9、R
12、R
14及びR
16と同義である。
〔10〕
上記のR
8及びR
9の少なくとも一方がハロゲン化アルキル基又はシアノ基である、〔8〕又は〔9〕に記載の化合物。
【0009】
本発明において、「波長変換」とは、特定波長の(入射)光を、その特定波長と異なる波長(通常は特定波長よりも長波長)の(出射)光に変換することを意味し、「色変換」ともいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明の波長変換用材料及びこれを用いた波長変換部材及び発光装置は、溶解性に優れ、かつ、十分に大きなモル吸光係数を示すジピロメテンホウ素錯体化合物を用いてなり、発光効率に優れる。また、本発明のジピロメテンホウ素錯体化合物は、溶解性に優れ、かつ、十分に大きなモル吸光係数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、特定の符号又は式で表示された置換基若しくは連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は、複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成していてもよい。また、特段の断りがない限り、環、例えば脂環、芳香族環、ヘテロ環は、更に縮環して縮合環を形成していてもよい。
本発明において、特段の断りがない限り、二重結合については、分子内にE型及びZ型が存在する場合、そのいずれであっても、またこれらの混合物であってもよい。
本発明において、特段の断りがない限り、波長変換用材料を構成し得る成分(一般式(1)で表される化合物、樹脂、及びこれら以外のその他の成分等)は、それぞれ、波長変換用材料中に1種含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。このことは、波長変換用部材を構成し得る成分についても同様である。
本発明において、波長変換用材料中の各成分の含有量を算出するにあたり、固形分とは、溶剤以外の成分を意味する。
【0012】
本発明において、化合物(錯体を含む。)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。更に、置換又は無置換を明記していない化合物については、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい意味である。このことは、置換基及び連結基についても同様である。
本発明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、本発明ないし本明細書において特段の断りのない限りは、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
【0013】
また、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、組成物とは、成分濃度が一定である(各成分が均一に分散している)混合物に加えて、目的とする波長変換機能を損なわない範囲で成分濃度が変動している混合物を包含する。
【0014】
[波長変換用材料]
本発明の波長変換用材料は、下記一般式(1)で表される化合物(ジピロメテンホウ素錯体化合物)を含有する。この一般式(1)で表される化合物は蛍光性化合物であり、この一般式(1)で表される化合物が示す波長変換特性によって、本発明の波長変換用材料は、入射光の波長をより長波長の光に変換する。
このことは、後述する、本発明の波長変換用材料を用いた波長変換部においても同様であり、本発明の波長変換部は、式(1)で表される化合物が示す波長変換特性により、入射光の波長をより長波長の光に変換する。
本発明の波長変換用材料は、通常、一般式(1)で表される化合物の発光(蛍光)を吸収する化合物(例えば、赤外線吸収性化合物)を含まない。本発明の波長変換用材料の形態は、溶液状、分散液状、半固形(スラリー等)状、固形状のいずれの形態であってもよい。本発明の波長変換用材料は、すべての成分が均一に混じり合った形態、すなわち組成物の形態が好ましい。本発明の波長変換用材料が含有する一般式(1)で表される化合物以外の成分としては、後述する樹脂、原料モノマー、溶剤、その他の添加剤等が挙げられる。各形態の詳細については、後述の本発明の波長変換用材料の調製方法に記載の通りである。本発明の波長変換用材料は、必要により遮光、低温等の保存条件を制御することにより安定に保存することができる。
【0015】
<一般式(1)で表される化合物>
本発明の波長変換用材料は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【化7】
【0016】
式中、R1~R7は水素原子又は置換基を示す。R8及びR9は、アルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子を示す。
但し、R1~R9の少なくとも1つは、後述の式(A)で表される部分構造を有する。
【0017】
(i)R1~R7
R1~R7は、各々独立に水素原子又は置換基を示す。
R1~R7として採りうる置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基を挙げることができる。
【0018】
R1及びR7としては、上記の中でも、アルキル基、アリール基、アミノ基又はアシルアミノ基が好ましく挙げられる。
上記のアルキル基、アリール基、アミノ基及びアシルアミノ基が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられ、例えば、スルホニルアミノ基が挙げられる。
これらの中でも、R1及びR7はアミノ基がより好ましく、-NH2が更に好ましい。
【0019】
R2及びR6としては、上記の中でも、アルコキシカルボニル基又はシアノ基が好ましく挙げられる。
上記アルコキシカルボニル基としては、後述の式(A)で表される部分構造が好ましく挙げられる。
これらの中でも、R2及びR6は、後述の式(A)で表される部分構造を基として有することがより好ましい。
【0020】
R3及びR5としては、上記の中でも、アルキル基又はアリール基が好ましい。
【0021】
R4としては、上記の中でも、水素原子、アルキル基、アリール基又はシアノ基が好ましい。
上記のアルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられ、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアリール基及びアリール基が挙げられる。
これらの中でも、R4は、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
【0022】
(ii)R8及びR9
R8及びR9は、アルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を示し、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基又はハロゲン原子が好ましい。
す。
R8又はR9として採りうるアルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子としては、後述する置換基群Tにおけるアルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子を挙げることができる。
上記のアルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基及びヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Tにおける置換基が挙げられ、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)及びアリール基が挙げられる。
R8及びR9としては、少なくとも一方が、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基であることが好ましく、ハロゲン化アルキル基又はシアノ基がより好ましく、ハロゲン化アルキル基であることが更に好ましい。
【0023】
(iii)式(A)で表される部分構造
R
1~R
9の少なくとも1つは、下記式(A)で表される部分構造を有する。
【化8】
【0024】
式中、R11~R16は、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合部位を示す。
R11~R16として採りうるアルキル基としては、後述する置換基群Tにおけるアルキル基を挙げることができる。
R11~R16の組み合わせとしては、R11、R13及びR15が水素原子であって、R12、R14及びR16が水素原子又はアルキル基であることが好ましく、R11、R12、R14~R16が水素原子であって、R13が水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、R11、R12、R14~R16が水素原子であって、R13が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0025】
R1~R9の少なくとも1つが上記式(A)で表される部分構造を有する形態としては、R1~R9自体が上記式(A)で表される基である形態(すなわち、式(A)における*がR1~R9の結合手となる形態)、及び、R1~R9として採り得る置換基が、さらに置換基として上記式(A)で表される部分構造を有する形態(すなわち、式(A)における*がR1~R9として採り得る置換基に置換する結合手となる形態)のいずれであってもよく、R1~R9自体が上記式(A)で表される基である形態であることが好ましい。
R1~R9として採り得る置換基が、さらに置換基として上記式(A)で表される部分構造を有する形態においては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はヘテロアリール基がさらに置換基として上記式(A)で表される部分構造を有する形態が好ましく挙げられる。
【0026】
上記のR1~R9のうち、R2及びR6のうちの少なくとも一方が上記式(A)で表される部分構造を有することが好ましく、R2及びR6の両方が上記式(A)で表される部分構造を有することがより好ましい。
【0027】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0028】
【0029】
式中、R1、R3~R9、R12、R14及びR16は、上記一般式(1)におけるR1、R3~R9、R12、R14及びR16と同義である。
【0030】
<一般式(1A)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(1A)で表される化合物である。
【0031】
【0032】
式中、R1~R7は水素原子又は置換基を示す。R8及びR9は、アルキル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、スルファニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基又はハロゲン原子を示す。
但し、R8及びR9の少なくとも一方はハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基であり、R1~R9の少なくとも1つは、下記式(A)で表される部分構造を有する。
【0033】
【0034】
式中、R11~R16は、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合部位を示す。
【0035】
一般式(1A)で表される化合物は、R8及びR9の少なくとも一方がハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基である点以外は、上記一般式(1)で表される化合物と同じである。そのため、一般式(1A)におけるR1~R9及び式(A)で表される部分構造として、R8及びR9の少なくとも一方がハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルオキシ基又はシアノ基である点以外は、上記一般式(1)におけるR1~R9及び式(A)で表される部分構造の記載を適用することができる。
【0036】
上記一般式(1A)で表される化合物は、下記一般式(2A)又は(3A)で表される化合物であることが好ましい。
【0037】
【0038】
式中、R1、R3~R9、R12、R14及びR16は、上記一般式(1A)におけるR1、R3~R9、R12、R14及びR16と同義である。
【0039】
- 置換基群T -
本発明において、好ましい置換基としては、下記置換基群Tから選ばれる置換基が挙げられる。
また、本明細書において、単に置換基としてしか記載されていない場合は、この置換基群Tを参照するものであり、各々の基、例えば、アルキル基、が記載されているのみの場合は、この置換基群Tの対応する基が適用される。
更に、本明細書において、アルキル基を環状(シクロ)アルキル基と区別して記載している場合、アルキル基は、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基を包含する意味で用いる。一方、アルキル基を環状アルキル基と区別して記載していない場合、及び、特段の断りがない場合、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基及びシクロアルキル基を包含する意味で用いる。このことは、環状構造を採りうる基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等)を含む基(アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニルオキシ基等)、環状構造を採りうる基を含む化合物についても同様である。基が環状骨格を形成しうる場合、環状骨格を形成する基の原子数の下限は、この構造を採りうる基について下記に具体的に記載した原子数の下限にかかわらず、3以上であり、5以上が好ましい。
下記置換基群Tの説明においては、例えば、アルキル基とシクロアルキル基のように、直鎖又は分岐構造の基と環状構造の基とを明確にするため、これらを分けて記載していることもある。
【0040】
置換基群Tに含まれる基としては、下記の基が挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数1~20で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ペンチル、ヘプチル、1-エチルペンチル、ベンジル、2-エトキシエチル、1-カルボキシメチル、トリフルオロメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル等)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5~20で、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6~26で、例えば、フェニル、1-ナフチル、4-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、3-メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2~20で、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5員環または6員環のヘテロ環基がより好ましく、例えば、2-ピリジル、4-ピリジル、2-イミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、2-チアゾリル、2-オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、ビニルオキシ、アリルオキシ等)、アルキニルオキシ基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、2-プロピニルオキシ、4-ブチニルオキシ等)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数3~20で、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、4-メチルシクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~26で、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、3-メチルフェノキシ、4-メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(例えば、イミダゾリルオキシ、ベンゾイミダゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、ベンゾチアゾリルオキシ、トリアジニルオキシ、プリニルオキシ)、
【0041】
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、エトキシカルボニル、2-エチルヘキシルオキシカルボニル等)、シクロアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数4~20で、例えば、シクロプロピルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6~20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0~20で、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、無置換アミノ(-NH2)、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N-エチルアミノ、N-アリルアミノ、N-(2-プロピニル)アミノ、N-シクロヘキシルアミノ、N-シクロヘキセニルアミノ、アニリノ、ピリジルアミノ、イミダゾリルアミノ、ベンゾイミダゾリルアミノ、チアゾリルアミノ、ベンゾチアゾリルアミノ、トリアジニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましく、例えば、N,N-ジメチルスルファモイル、N-シクロヘキシルスルファモイル、N-フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、ベンゾイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、アセチルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのカルバモイル基が好ましく、例えば、N,N-ジメチルカルバモイル、N-シクロヘキシルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル等)、
【0042】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1~20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、2-ピロリジノン-1-イル等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0~20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基が好ましく、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N-メチルメタンスルホンアミド、N-シクロヘキシルスルホンアミド、N-エチルベンゼンスルホンアミド等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、シクロアルキルチオ基(好ましくは炭素数3~20で、例えば、シクロプロピルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、4-メチルシクロヘキシルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~26で、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ等)、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、ベンゼンスルホニル等)、
【0043】
シリル基(好ましくは炭素数1~20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリル基が好ましく、例えば、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジエチルベンジルシリル、ジメチルフェニルシリル等)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1~20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリルオキシ基が好ましく、例えば、トリエチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ、ジエチルベンジルシリルオキシ、ジメチルフェニルシリルオキシ等)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボキシル基、スルホ基、ホスホニル基、ホスホリル基、ホウ酸基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、上記アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはシアノ基が挙げられる。
【0044】
置換基群Tから選ばれる置換基は、特段の断りがない限り、上記の基を複数組み合わせてなる基をも含む。例えば、化合物又は置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは置換されていても置換されていなくてもよい。また、アリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0045】
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
本発明の波長変換用材料における一般式(1)で表される化合物の含有量、すなわち、本発明の波長変換用材料中の固形分1g当たりの一般式(1)で表される化合物の含有量は、特に限定されず、この化合物のモル吸光係数、求められる特性(例えば、量子収率、耐光性、耐湿熱性等)に応じて、適宜に決定される。例えば、上記含有量は、0.01~50μmol/g以下が好ましく、0.05~10μmol/g以下がより好ましく、0.1~1.0μmol/gが更に好ましく、0.1~0.5μmol/gが最も好ましい。
本発明の波長変換用材料において、一般式(1)で表される化合物の含有量は、上記固形分1g当たりの含有量を満たす限り特に制限されないが、後述する樹脂100質量部に対しては、例えば、0.0005~5質量部が好ましく、0.0025~1質量部以下がより好ましく、0.005~0.1質量部が更に好ましい。
なお、本発明の波長変換用材料に含有される一般式(1)で表される化合物は、1種でもよく、2種以上でもよい。本発明の波長変換用材料が一般式(1)で表される化合物を2種以上含有する場合、上記含有量は、2種以上の化合物の合計含有量とする。
【0050】
一般式(1)で表される化合物は、通常の合成法又は公知の合成方法、例えば特許文献1又は特許文献2に記載の合成法等を参考にして、合成することができる。また、後述する実施例にて説明する化合物(1-1)、(1-2)及び(2-1)の合成法に準拠して、合成することができる。
【0051】
<樹脂>
本発明の波長変換用材料は、樹脂を含有してもよい。特に後述する波長変換部材を形成する場合には、通常、バインダーとしての樹脂(バインダー樹脂ともいう。)を含有する。また。後述する発光性ラテックス粒子を形成する場合、樹脂粒子を含有することができる。
本発明において、バインダー樹脂としては、熱可塑性高分子化合物、熱若しくは光硬化性高分子化合物、又はこれらの混合物を用いることができる。本発明において、「高分子化合物」は、高分子化合物が熱若しくは光硬化性高分子化合物の場合には、高分子化合物を形成する化合物(単量体)又は重合前駆体も含む意味である。
なお、本発明の波長変換用材料が粒子以外の形態(非粒子の形態)をとる場合、バインダー樹脂は粒子の形態で使用されるものではない。
【0052】
本発明で用いるバインダー樹脂は、透明又は半透明であること(可視光線(波長300~830nm)の透過率が50%以上であること)が好ましい。
このようなバインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリ桂皮酸ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルフォン、ポリパラキシレン、ポリエステル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、セルロースアシレート、フッ素化樹脂、シリコーン樹脂、エポキシシリコーン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、芳香族スルホンアミド、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーンエラストマー、脂肪族ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、環状オレフィンコポリマー等が挙げられる。
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、セルロースアシレート若しくはシリコーン樹脂、又は、これら2種以上の混合物が好ましい。
バインダー樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、1,000~100,000であることがよい。
本発明の波長変換用材料に含有されるバインダー樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
波長変換用材料の固形分中におけるバインダー樹脂の含有量は、特に制限されないが、例えば、50質量%以上とすることができ、90質量%以上が好ましい。
【0053】
<溶剤>
本発明の波長変換用材料は、溶剤を含有する液状の材料とすることもできる。用いる溶剤としては、特に制限されず、例えば、後述する波長変換用材料の調製方法において説明する溶剤が挙げられる。
波長変換用材料中の溶剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、50質量%以上とすることができ、70質量%以上が好ましい。
【0054】
<添加剤>
本発明の波長変換用材料は、波長変換用材料に通常用いられる各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物以外のフォトルミネセンス蛍光体、無機蛍光体、色調補正用の色素、加工、酸化及び熱安定化剤(酸化防止剤、リン系加工安定化剤等)、耐光性安定化剤(紫外線吸収剤等)、シランカップリング剤、更には、有機酸、マット剤、ラジカル捕捉剤、劣化防止剤、充填剤(例えば、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ)、可塑剤、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン化合物)、難燃助剤、帯電防止剤、帯電性付与剤、耐衝撃性改良剤、変色防止剤、離型剤(例えば、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル)、流動性改良剤、反応性若しくは非反応性の希釈剤等が挙げられる。
なお、本発明の波長変換用材料は、波長変換機能を効果的に発現させるために、赤外線吸収性化合物などの蛍光吸収物質を含有しないことが好ましい。
【0055】
本発明で規定する一般式(1)で表される化合物以外のフォトルミネセンス蛍光体としては、特に限定されないが、公知のフォトルミネセンス蛍光体(色素)が挙げられる。上記各種の添加剤としては、具体的には、特許文献1に記載された「その他の成分」、又は、特開2011-241160号公報に記載のもの等が挙げられ、これらの記載は好ましく本明細書に取り込まれる。また、添加剤の含有量は、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲において適宜に決定される。
【0056】
本発明の波長変換用材料が含有する一般式(1)で表される化合物及び本発明の一般式(1A)で表される化合物(以下、「本発明で規定する(1)又は(1A)の化合物」とも称す。)は、いずれも、溶剤又は樹脂を構成する原料モノマーに対する溶解性に優れ、かつ、モル吸光係数も大きい。
この理由は定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、本発明で規定する(1)又は(1A)の化合物が化合物中に少なくとも1つ有する式(A)で表される特定の部分構造は、疎水性が高く、また嵩高い構造である。このため、式(A)で表される特定の部分構造によって媒体との親和性が高められ、かつ、本発明で規定する(1)又は(1A)の化合物の分子間相互作用が立体障害によって抑制されることで、溶解性を効果的に高めることができると考えられる。また、本発明で規定する(1)又は(1A)の化合物はHOMO(最高被占軌道)とLUMO(最低空軌道)の広がりが大きく、かつ、HOMOとLUMOの重なりが大きく、モル吸光係数をより大きなものとすることができると考えられる。
また、本発明で規定する(1)又は(1A)の化合物は、後述の実施例において示すように、従来の波長変換用材料に用いられるジピロメテンホウ素錯体化合物と同程度の優れた量子収率を示すことができ、上記モル吸光係数の向上と相まって優れた発光効率を示すことができる。すなわち、入射光の光強度に対する出射光の光強度の割合をより高めることができる。
上記のように、溶解性に優れた本発明で規定する(1)又は(1A)の化合物は、波長変換用材料を作製する際に、凝集による性能低下、又は、析出による製造適性の低下等が起こりにくく、波長変換用材料中に、高濃度に均一に存在させることができ、また、モル吸光係数は大きく、量子収率にも優れる。結果、この化合物を用いた波長変換材料において所望の高輝度を実現することができる。本発明の波長変換部及び発光装置についても同様である。
【0057】
また、表示装置及び照明装置等の発光装置の普及に伴って、これら装置に用いられる、蛍光性化合物及びこの蛍光性化合物を含有する波長変換用材料には、上記の優れた溶解性及び優れた発光効率だけでなく、耐光性、更には水分及び熱に対する耐久性(耐湿熱性)等の高いことが求められている。
本発明で規定する一般式(1)又は(1A)の化合物及び本発明の波長変換用材料は、優れた溶解性及び優れた発光効率に加えて、優れた耐光性及び耐湿熱性を示すこともできる。この理由の詳細についてはまだ定かではないが次のように考えられる。
本発明で規定する一般式(1)又は(1A)の化合物は、上記式(A)で表される部分構造によって、立体障害による反応性物質の近接防止、疎水化による水(反応性物質)の近接防止、本発明で規定する一般式(1)又は(1A)の化合物の会合の抑制による色相変化の防止作用が得られ、これらの作用によって、優れた耐光性及び耐湿熱性を示すことができると考えられる。
【0058】
<波長変換用材料の調製方法>
本発明の波長変換用材料を調製する方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法A~Cを挙げることができる。
【0059】
方法A:本発明で規定する一般式(1)で表される化合物と、必要によりバインダー樹脂及び添加剤とを、必要により溶剤に溶解又は懸濁する工程を含む方法
この方法Aにおいては、上記工程により得られた溶液を乾燥することもできる。
【0060】
方法B:本発明で規定する一般式(1)で表される化合物と、必要により、バインダー樹脂を形成する単量体及び/又は重合前駆体と、更には添加剤とを含む混合物を硬化する工程を含む方法
例えば、熱若しくは光硬化性高分子の単量体又は重合前駆体に、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物、必要により添加剤を混合(分散)した後、単量体又は重合前駆体を重合する方法が挙げられる。また、単量体又は重合前駆体の溶液に、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物、必要により添加剤を混合(溶解又は懸濁)した後に、溶剤を除去して、単量体又は重合前駆体を重合する方法が挙げられる。
【0061】
方法C:本発明で規定する一般式(1)で表される化合物と、必要によりバインダー樹脂及び添加剤との混合物を溶融する工程を含む方法
例えば、バインダー樹脂に、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物、必要により添加剤を分散させた後に、溶融する方法が挙げられる。
【0062】
上記方法A~Cにおいて、溶剤を用いない場合、及び、溶液を乾燥する場合、本発明の波長変換用材料は固体混合物として調製することができる。
本発明で規定する一般式(1)で表される化合物を、溶剤又はバインダー樹脂と混合(溶解、懸濁又は分散)する方法としては、特に制限されず、撹拌する方法、溶融ブレンド、バインダー樹脂等の粉体とを混合する方法等を用いることができる。溶融ブレンドする方法は、公知の方法を特に限定されることなく適用することができ、溶融ブレンド条件も適宜に設定できる。例えば、溶融ブレンド又は分散に用いる装置、溶融温度条件としては、例えば、特開2011-241160号公報に記載の各装置及び温度条件を適用することができ、これらの記載は好ましく本明細書に取り込まれる。
【0063】
溶剤を用いる場合、溶剤としては、トルエン等の炭化水素、ケトン化合物、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、エステル化合物、メタノール等のアルコール化合物、エーテル化合物等の各種溶剤、更には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルフォキサイド等の極性溶剤、また水等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。上記各溶剤の具体例としては、特開2011-241160号公報に記載の各有機溶剤が挙げられ、これらの記載は好ましく本明細書に取り込まれる。
溶剤を除去する方法は、特に制限されず、通常、室温放置若しくは送風により蒸発除去する方法、加熱により蒸発除去する方法、減圧下(大気圧以下)で蒸発除去する方法、又は、これらを組み合わせる方法が挙げられる。
【0064】
方法Bにおける、単量体及び/又は重合前駆体の重合方法は、特に限定されず、熱重合でもよく、また光重合でもよい。
熱重合は、常法により、行うことができる。熱重合法として、例えば、上記単量体及び/又は重合前駆体と本発明で規定する一般式(1)で表される化合物等との混合物に、必要に応じて触媒を加え、次いで加熱する方法が挙げられる。熱重合法及びその条件、更には用いる触媒及びその使用量については、特開2011-241160号公報に記載された方法等が挙げられ、この公報の記載は好ましく本明細書に取り込まれる。
光重合は、常法により、行うことができる。光重合法として、例えば、上記単量体及び/又は重合前駆体と本発明で規定する一般式(1)で表される化合物等との混合物に、必要に応じて光重合開始剤を加え、次いで光を照射する方法が挙げられる。光重合法及びその条件、更には用いる重合開始剤及びその使用量については、特開2011-241160号公報に記載の方法等が挙げられ、この公報の記載は好ましく本明細書に取り込まれる。
【0065】
バインダー樹脂がシリコーン樹脂である場合、付加硬化反応により重合する方法が好ましい。シリコーン樹脂の付加硬化反応も常法で行うことができる。例えば、重合性反応基(例えばアルケニル基)を有するオルガノシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子を有するハイドロジェンシロキサンとのヒドロシリル化反応により重合するのが好ましい。ヒドロシリル化反応の条件は、特に限定されないが、所望により付加反応触媒(例えば白金触媒)の存在下、室温以上、例えば50~200℃に加熱する条件が挙げられる。
【0066】
[発光性粒子]
本発明の波長変換用材料を粒子の形状とすることにより、発光性粒子として使用することもできる。粒子の材質は特に限定されず、例えば、ポリスチレンビーズなどの有機高分子粒子を用いる場合には、上記一般式(1)で表される化合物を、粒子中に含侵させるかまたは粒子表面に吸着等させることにより、発光性粒子とすることができる。通常は、粒子中に含侵された状態で主に存在する。
また、シリカゲル又はガラスビーズ等の無機粒子を用いることもでき、この場合には、上記一般式(1)で表される化合物を粒子表面に吸着等させることにより、発光性粒子とすることができる。
粒子の材質の具体例としては、スチレン、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ブタジエン、塩化ビニル、酢酸ビニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、又はブチルメタクリレートなどのモノマーを重合させたホモポリマー、並びに2種以上のモノマーを重合させたコポリマー、セルロース及びセルロース誘導体などが挙げられ、上記のホモポリマー又はコポリマーを均一に懸濁させたラテックスでもよい。また、粒子としては、その他の有機高分子粉末、無機物質粉末、微生物、血球、細胞膜片、リポソーム、マイクロカプセルなどが挙げられる。粒子としては、ラテックス粒子が好ましい。
【0067】
ラテックス粒子を使用する場合、ラテックスの材質の具体例としては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。ラテックスとしては、単量体としてスチレンを少なくとも含む共重合体が好ましく、スチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が特に好ましい。ラテックスの作製方法は特に限定されず、任意の重合方法により作製することができる。但し、上記発光性粒子に抗体を標識して使用する場合には、界面活性剤が存在すると抗体固定化が困難となるため、ラテックスの作製には、無乳化剤乳化重合、即ち界面活性剤などの乳化剤を用いない乳化重合を用いるか、界面活性剤などの乳化剤を用いた乳化重合によりラテックスを作製したのちに精製により界面活性剤を除去あるいは低減するのが好ましい。界面活性剤の除去あるいは低減をするための方法としては特に限定されないが、遠心分離によりラテックスを沈降させた後に上澄みを除去する操作を繰り返す精製方法が好ましい。
ラテックスの作製において、無乳化剤乳化重合を用いる場合、反応温度、モノマー組成比(例えば、スチレンとアクリル酸の比)、重合開始剤の量を変更することで、平均粒径を80~300nmの範囲で制御することができる。
ラテックスの作製において、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウムなど)を用いた乳化重合を用いる場合、界面活性剤の量、反応温度、モノマー組成比(例えば、スチレンとアクリル酸の比)、重合開始剤の量を変更することで、平均粒径を30~150nmの範囲で制御することができる。
ラテックス粒子の平均粒径は後述の発光性粒子の平均粒径と同義であり、測定方法についても後述の発光性粒子の平均粒径の測定方法を適用する。
【0068】
<発光性粒子>
上記発光性粒子は、上記一般式(1)で表される化合物を含むことにより、一般式(1)で表される化合物が有する式(A)で表される部分構造によって、ラテックス粒子中における化合物の会合が抑制される。その結果、一般式(1)で表される化合物のラテックスに対するモル数(化合物量)を増やした場合には、化合物量に応じた蛍光強度を得ることができ、高い輝度を示すことができる。
上記発光性粒子を発光させるための入射光及び出射光は、前述の波長変換用材料における入射光及び出射光と同義である。
【0069】
発光性粒子の発光極大波長は、市販の蛍光分光光度計を使用して測定することができ、例えば、島津製作所製の蛍光分光光度計RF-5300PCを使用して測定することができる。
【0070】
発光性粒子の量子収率とは、発光性粒子が吸収した光子数に対する蛍光として発光した光子数の割合のことである。
上記発光性粒子が示す量子収率は、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上であり、さらに一層好ましくは0.6以上であり、特に好ましくは0.7以上である。量子収率の上限は特に限定されないが、一般的には、1.0以下である。
上記発光性粒子の量子収率は、市販の量子収率測定装置を使用して測定することができ、例えば、浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率測定装置C9920-02を使用して測定することができる。
【0071】
(発光性粒子の平均粒径(平均粒子径)の測定方法)
上記発光性粒子の平均粒径は、粒子の材質や被検物質を測定する濃度範囲、測定機器などによって異なるが、0.001~10μm(より好ましくは0.01~1μm)の範囲が好ましく、30~500nmの範囲がより好ましく、50~300nmの範囲がさらに好ましく、80~200nmの範囲が特に好ましく、100~150nmの範囲が最も好ましい。本発明に用いることが可能な発光性粒子の平均粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。粒度分布の測定方法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。これらの測定方法のうち、粒子径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を用いて発光性粒子の平均粒径を測定することが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子(株))等が挙げられる。本発明では、平均粒径は、25℃にて、粘度0.8872CP、水の屈折率1.330の条件で測定したメジアン径(d=50)として求めるものとする。
【0072】
<発光性粒子の製造方法>
上記発光性粒子の製造方法は特に限定されないが、上記一般式(1)で表される少なくとも一種の化合物と粒子とを混合することによって製造することができる。例えば、ラテックス粒子などの粒子に、上記一般式(1)で表される化合物を添加することによって、上記発光性粒子を作製することができる。より具体的には、水及び水溶性有機溶剤(テトラヒドロフラン、メタノール等)の何れか一種以上を含む粒子の分散液に、上記一般式(1)で表される化合物を含む溶液を添加して攪拌することにより、上記発光性粒子を製造することができる。
【0073】
<分散液>
本発明によれば、上記した上記発光性粒子を含む分散液が提供される。
分散液は、上記発光性粒子を分散媒に分散することにより製造することができる。分散媒としては、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物等が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒などを使用することができる。
分散液における発光性粒子の固形分濃度は特に限定されないが、一般的には0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。
【0074】
<発光性粒子の利用>
上記発光性粒子は、一般式(1)で表される化合物のラテックスに対するモル数(化合物量)を増やした場合には、化合物量に応じた蛍光強度を得ることができ、高い輝度を示すことができる。このため、上記発光性粒子は蛍光検出法等に好適に使用することができ、例えば、タンパク質、酵素又は無機化合物などを定量するための蛍光検出法において使用することができる。
【0075】
[発光装置]
本発明の発光装置は、本発明の波長変換用材料を用いた波長変換部と光源とを有しており、目的とする波長光を出射する。本発明において、波長変換部と光源とからなるユニットを波長変換ユニットということがある。この波長変換部は、光源から発光(放射)された光(入射光)を吸収して、この光とは異なる特定波長(通常、入射光の波長をより長波長)の光(出射光)を出射(波長変換)する機能を有する。このとき、波長変換部は、光源からの光の全部又は一部を吸収して、特定波長の光を照射する。例えば、本発明の発光装置が全体として白色光を発光する場合(白色LED又は白色照明等)、光源からの青色光の一部を吸収して赤色光又は緑色光を発光し、光源からの青色光と相まって、装置全体として、白色光を発光することができる。このとき波長変換部は、赤色光又は緑色光に変換する機能を奏する。
本発明の発光装置の構造としては、従来公知の構造を特に限定されることなく適用することができる。詳細は後述する。
本発明の発光装置において、波長変換部と光源との配置についても、特に限定されず、波長変換部と光源とが近接若しくは接した状態に配置されていてもよく、離間した状態若しくは他の部材を介在した状態に配置されていてもよい。本発明の波長変換用材料及び波長変換部は、上述の通り、優れた耐光性及び耐湿熱性を示すこともできるため、波長変換部と光源とを近接して配置することもでき、また波長変換部と光源とを接した状態に配置することもできる。このような配置を採用しても、入射光を優れた波長変換効率で波長変換して出射光として発光することができ、また、高い量子収率で長期間に亘って発光することもできる。
本発明の発光装置は、白色LEDに、又は白色LEDとして用いることができ、この場合においても、優れた波長変換効率を示し、また、優れた耐光性及び耐湿熱性を示すこともできる。
【0076】
<波長変換部>
本発明の波長変換部は、本発明の波長変換用材料を用いたものであれば、その形状、寸法等は特に限定されず、用途等に応じて適宜に設定される。例えば、本発明の発光装置に用いる波長変換部は、本発明の波長変換用材料そのものであってもよく、成形体であってもよい。本発明の波長変換用材料そのものである場合、通常、被設置面に本発明の波長変換用材料を適用(塗布又は配置)して、形成される。成形体である場合、その形状としては、特に限定されず、例えば、膜状、板状(例えば、シート状、フィルム状、ディスク状)、レンズ状、ファイバー状、光導波路状等が挙げられる。
波長変換部は、板状であることが好ましい態様の1つである。この場合、波長変換部(波長変換フィルタともいう。)は、本発明の波長変換用材料を用いた波長変換層として形成されていればよい。波長変換層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~3000μmが好ましく、30~2000μmがより好ましい。
【0077】
波長変換部は、基板等に設けられた積層体(波長変換部材)とされてもよい。
基板としては、ガラス基板又は樹脂基板が挙げられる。ガラス基板としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、バリウム-ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウム-ホウケイ酸ガラス、石英等の各ガラス製の基板が挙げられる。樹脂基板としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフィド、ポリスルフォン等の各樹脂製の基板が挙げられる。
【0078】
波長変換部は、基板以外の構成部材を有していてもよい。このような構成部材としては、波長変換部材に通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、保護膜(フィルム)等が挙げられる。
【0079】
波長変換部は、入射光を優れた波長変換効率で波長変換して出射光として発光することができ、また高い量子収率で長期間に亘って発光することもできる。
波長変換部が示す量子収率は、好ましくは0.7以上である。量子収率の上限は特に限定されないが、一般的には、1.0以下である。本発明において、量子収率は、市販の量子収率測定装置を使用して測定することができ、例えば、絶対PL(フォトルミネッセンス)量子収率測定装置:C9920-02(浜松ホトニクス社製)を使用して、波長変換部(厚さ60μm)について、測定することができる。
【0080】
波長変換部が成形体である場合、本発明の波長変換用材料を所定形状に成形して作製する。
成形方法としては、特に限定されず、射出成形等の熱溶融状態で行う成形法、本発明の波長変換用材料を溶融させた後に行う製膜法が挙げられる。製膜法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート法、ロールコート法、バーコート法、ラングミュア-ブロジェット法、キャスト法、ディップ法、スクリーン印刷法、バブルジェット(登録商標)法、インクジェット法、蒸着法、電界法等が挙げられる。
また、バインダー樹脂が熱硬化性若しくは光硬化性樹脂である場合、バインダー樹脂の単量体及び/又は重合前駆体と本発明で規定する一般式(1)で表される化合物等との混合物を型に充填し、又は、上記製膜法により製膜し、光又は熱で重合する上記方法を適用することもできる。
【0081】
<光源>
本発明の発光装置に用いられる光源としては、少なくとも本発明で規定する一般式(1)で表される化合物、好ましくは波長変換部に含有される全ての蛍光性化合物を励起可能な発光波長(波長光)を発光するものであれば特に限定されない。このような光源としては、例えば、白熱電球、メタルハライドランプ、HIDランプ(高輝度放電灯:High Intensity Discharge Lamp)、キセノンランプ、ナトリウムランプ、水銀ランプ、蛍光ランプ、冷陰極管、カソードルミネッセンス、低速電子線管、発光ダイオード〔例えば、GaP(赤色、緑色)、GaPxAs(1-x)(赤色、橙色、黄色:0<x<1)、AlxGa(1-x)As(赤色:0<x<1)、GaAs(赤色)、SiC(青色)、GaN(青色)、ZnS、ZnSe〕、エレクトロルミネッセンス(例えば、ZnS母体と発光中心を使用する無機EL、有機EL)、レーザー(例えば、He-Neレーザー、CO2レーザー、Ar,Kr,He-Cdレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー等の気体レーザー、ルビーレーザー、イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)レーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー、色素レーザー、半導体レーザー)、太陽光等を挙げることができる。
光源は、発光ダイオード、エレクトロルミネッセンス又は半導体レーザーが好ましく、発光ダイオードがより好ましい。
【0082】
発光ダイオードとしては、少なくとも本発明で規定する一般式(1)で表される化合物を励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子として、発光層が上記半導体を含有するものが挙げられる。上記半導体以外の半導体としては、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物を効率よく励起できる短波長を発光可能な窒化物半導体(InxAlyGa(1-x-y)、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好ましい。より好ましくは、発光層は本発明で規定する一般式(1)で表される化合物を含有しない。発光層が含有する半導体は無機半導体が好ましい。半導体の構造としては、MIS(Metal-Insulator-Silicon)接合、PIN接合、pn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造又はダブルヘテロ構造のものが挙げられる。発光層の材料又はその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、発光層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造とすることもできる。
【0083】
後述する、本発明の発光装置に白色光を発光させる場合、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物からの発光波長との補色関係、又は、バインダー樹脂の劣化を考慮して、光源の発光波長(励起波長)は350~480nmが好ましい。光源と本発明で規定する一般式(1)で表される化合物との励起、発光効率をそれぞれより向上させるには、発光波長は380~450nmがより好ましい。発光ダイオードは、通常、銅箔等のパターニングされた金属を有する基板上に配置される。ここで、基板材料としては絶縁性の有機化合物又は無機化合物(例えばガラス、セラミックス)が挙げられる。有機化合物としては各種高分子材料(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂)を使用できる。また、基板の形状は、特に限定されるものではなく、板状、カップ状、多孔板状等の様々な形状を選択することができる。
【0084】
上記半導体レーザーは、特に限定されないが、以下の機構によるものが好ましい。すなわち、半導体をpn接合し、ここに順方向バイアスを印加し、高いエネルギー準位にある少数キャリアーの注入を行って、p形領域に流れ込んだ電子を正孔と、n形領域に流れ込んだ正孔を電子と再結合させる。これによって、電子を高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に遷移させ、そのエネルギー差に相当する光子を放出させる機構が挙げられる。
半導体レーザーの材料としては、ゲルマニウム、シリコン等のIV族元素、GaAs、InPなどの格子振動を伴わない直接遷移型のIII-V族、II-VI族化合物等を挙げることができる。また、これらの材料は、2元系のみならず、3元系、4元系、5元系等の多元系であってもよい。また、その積層構造はクラッド層を設けたダブルヘテロ構造であってもよく、また、下部クラッド、活性層、上部クラッドよりなる構成であってもよい。更には多重量子井戸構造を適用したものであってもよい。
【0085】
本発明の発光装置は、所望により、カラーフィルタを備えていてもよく、これにより色純度を調整できる。カラーフィルタとしては、通常用いられるものであれば特に限定されない。カラーフィルタに用いる顔料としては、例えば、ペリレン顔料、レーキ顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、アントラセン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、フタロシアニン顔料、トリフェニルメタン塩基性染料、インダンスロン顔料、インドフェノール顔料、シアニン顔料、ジオキサジン顔料等の各種顔料、又は、これら顔料2種以上の顔料混合物、更には、上記顔料若しくは顔料混合物とバインダー樹脂との混合物(溶解又は分散させた固体状態のもの)が挙げられる。
【0086】
本発明の発光装置において、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物は、光源からの入射光、好ましくは上記波長領域の入射光を、優れた変換効率で所定波長の射出光に変換して発光することができ、また長期間に亘って発光することもできる。
本発明の発光装置が全体として発光する光は、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物又は波長変換部により波長変換された光のみでもよく、この光と、光源からの上記波長光との混合光であってもよい。
【0087】
<発光装置の構成>
本発明の発光装置の構成としては、特に限定されないが、次の各構成が挙げられる。
具体的な構成として、例えば、光源/波長変換部、光源/透光性基板/波長変換部、光源/波長変換部/透光性基板、光源/透光性基板/波長変換部/透光性基板、光源/波長変換部/カラーフィルタ、光源/透光性基板/波長変換部/カラーフィルタ、光源/波長変換部/透光性基板/カラーフィルタ、光源/透光性基板/波長変換部/透光性基板/カラーフィルタ、光源/透光性基板/波長変換部/カラーフィルタ/透光性基板、光源/波長変換部/カラーフィルタ/透光性基板の各構成が挙げられる。上記各構成において、波長変換部は本発明の波長変換用材料を用いたものである。これに加えて、波長変換部が変換する光とは異なる光に波長変換する別の波長変換部を有していてもよい。この場合、本発明の波長変換用材料を用いた波長変換部と、別の波長変換部との配置関係は、特に限定されず、例えば並列に配置されてもよい。上記各構成において、各構成要素は互いに接触又は離間した状態に配置される。
【0088】
上記透光性基板とは、可視光を50%以上透過することができる基板をいい、具体的には、上記波長変換部が有していてもよい基材と同義である。また、カラーフィルタについても上記波長変換部が有していてもよいカラーフィルタと同義である。透光性基板及びカラーフィルタの形状は、特に限定されるものではなく、板状であってもよく、またレンズ状の形状であってもよい。
【0089】
本発明の発光装置は、各種の用途に用いることができ、好ましくは、各種ディスプレイ等の表示装置、照明装置等が挙げられる。
表示装置としては、特に限定されず、例えば、各種(液晶)ディスプレイ、液晶バックライト、液晶フロントライト、フィールドシーケンシャル液晶表示等の液晶表示装置、更には交通信号、交通表示装置等が挙げられる。照明装置としては、特に限定されず、例えば、一般照明装置(器具)、局所照明装置、インテリア照明装置等が挙げられる。
【0090】
本発明の発光装置は、公知の方法で作製できる。例えば、上述の構成に用いる各構成要素を順次積層して作製することができ、各構成要素を貼り合わせて作製することもできる。構成要素の積層順は、特に限定されない。
【実施例0091】
以下に実施例に基づき、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定さない。
【0092】
実施例及び比較例で用いた化合物(1-1)、(1-2)及び(2-1)、並びに、比較化合物(1)~(3)を、以下に示す。
【0093】
【0094】
比較化合物(1)は特許文献1の段落[0223]に記載の化合物G-32である。
比較化合物(2)は特開2018-146659号公報に記載の化合物(5-A)である。
比較化合物(3)は国際公開第2018/117073号に記載の化合物(2)である。
【0095】
以下に、各実施例で用いる化合物(1-1)、(1-2)及び(2-1)の合成方法を詳しく説明するが、出発物質、中間体及び合成ルートはこれらに限定されるものではない。
本発明において、室温とは25℃を意味する。
以下に示す各化合物の合成に用いた略語は、下記の化合物を表す。
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
TMSOTf:トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
【0096】
特に記載のない場合、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおける担体は、SNAP KP-Sil Cartridge(Biotage社製)、ハイフラッシュカラムW001、W002、W003、W004又はW005〔山善社製〕を使用した。
【0097】
MSスペクトルは、ACQUITY SQD LC/MS System〔Waters社製、イオン化法:ESI(ElectroSpray Ionization、エレクトロスプレーイオン化)〕又はLCMS-2010EV〔島津製作所社製、イオン化法:ESI及びAPCI(Atomospheric Pressure ChemicalIonization、大気圧化学イオン化)を同時に行うイオン化法〕を用いて測定した。
【0098】
(合成例)
特開2010-18788号公報に記載の方法に基づき、下記化合物(1-1A)及び(1-2A)を合成した。
【0099】
【0100】
【0101】
100ml三つ口フラスコに、化合物(1-1A)100mg、トルエン5ml、撹拌子を入れ、窒素雰囲気下で攪拌した。そこへ、N,N-ジイソプロピルエチルアミン0.17ml、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.19mlを加え、50~55℃で2時間攪拌させた。室温に戻し、ヘキサン及び酢酸エチルを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(1-1)60mgを得た。得られた化合物の同定は、LC-MSにて行った。[M+H+]+=769.5
【0102】
【0103】
100ml三つ口フラスコに、化合物(1-2A)100mg、トルエン5ml、撹拌子を入れ、窒素雰囲気下で攪拌した。そこへ、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン0.2ml、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.2mlを加え、100℃にて2時間攪拌させた。室温に戻し、ヘキサン及び酢酸エチルを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(1-2)30mgを得た。得られた化合物の同定は、LC-MSにて行った。[M+H+]+=879.6
【0104】
【0105】
100ml三つ口フラスコに、カリウムトリフルオロ(トリフルオロメチル)ボレート0.1g、アセトニトリル2ml、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル0.21mlを入れ、窒素雰囲気下で30分以上撹拌させた。一方で、100ml三つ口フラスコに、化合物(1-1A)100mg、ジクロロメタン2.5ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン0.29mlを加え、撹拌子を入れて窒素下、室温にて10分以上攪拌させた。その後、これら2つの溶液を10℃以下に冷却した後、混合し、室温にて10分反応させた。室温に戻し、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、有機層を減圧濃縮した。ヘキサン及び酢酸エチルを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(2-1)40mgを得た。得られた化合物の同定は、LC-MSにて行った。[M+H+]+=819.5
【0106】
[評価1:蛍光ラテックスの蛍光強度]
(蛍光ラテックス分散液の作製)
蛍光ラテックス粒子を以下のようにして作製した。
ラテックス粒子としてはスチレンとアクリル酸の質量比9対1の混合物を水中に分散させた状態で重合させて作製した、平均粒径150nmの粒子を用いた。平均粒径は、前述の測定条件に基づき、Zetasizer Nano ZS(商品名、Malvern Panalytical社製)を用い、動的光散乱法を用いて測定した。上記で作製した固形分2%のラテックス分散液25mL(固形分質量500mg)に対してTHF5mLを滴下して10分攪拌した。そこに、試験化合物(化合物(1-1)、(1-2)及び(2-1)並びに比較化合物(1)の何れか)のTHF溶液2.5mLを15分間かけて滴下した。各試料に用いた化合物の量は表1にまとめた。表1中の化合物量のμmol/gはラテックスの固形分1gに対する使用した化合物のモル数を表す。試験化合物の滴下終了後、30分攪拌した後、減圧濃縮してTHFを除去した。その後、遠心分離して粒子を沈殿させた後、超純水を加えて再度分散させることで固形分濃度2%の蛍光ラテックス分散液No.101~104、201、202、301~303及びc11~c14を製造した。
なお、作製した蛍光ラテックス粒子の、上記ラテックス粒子と同様にして測定した平均粒径は、いずれも150nmであった。
【0107】
(蛍光ラテックス分散液の評価)
上記で製造した固形分濃度2質量%の蛍光ラテックス分散液の発光極大波長における相対蛍光強度の評価を行った。なお、ラテックス分散液を超純水で200倍に希釈したものを用い、発光極大波長および発光極大波長における蛍光強度の測定には島津製作所社製の蛍光分光光度計RF-5300PC(商品名)を使用して評価を行った。
各試験化合物において、化合物量6μmol/gの発光極大波長における蛍光強度を基準として、その他の化合物量の発光極大波長における蛍光強度を相対蛍光強度として評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0108】
【0109】
表1の結果から、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物である、化合物(1-1)、(1-2)及び(2-1)は、比較化合物(1)に対して、化合物量を増やすにつれてより高い蛍光強度を示す蛍光ラテックスを得られることがわかる。
このように、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物は、本発明で規定する一般式(1)で表されない化合物に対して、蛍光ラテックスを作製した場合には、配合する化合物濃度を高くするにつれてより蛍光強度が高く、高い輝度を示す蛍光ラテックスを得ることができる。これは、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物が有する式(A)で表される部分構造によって、ラテックス粒子中における化合物の会合が抑制されていることに基づくと考えられる。
【0110】
(実施例)
実施例1
ポリスチレン(商品名:PSJ-ポリスチレンSGP-10、PSジャパン社製)30gを70gの塩化メチレンに溶解した後、化合物(1-1)を11.6mg(組成物中の固形分1g当たりの化合物のモル数は0.5μmol/g)加えて、波長変換用材料(波長変換用組成物(溶液))を調製した。
次いで、この波長変換用組成物をガラス板上に2000回転でスピンコートし、100℃のホットプレート上で乾燥させて、フィルム状の波長変換用材料(波長変換部材)を作製した。得られた波長変換層の厚さは60μmであった。
【0111】
実施例2
アセチル置換度2.87のセルロースアシレートを以下のようにして調製した。まず、触媒としての硫酸をセルロース100質量部に対し7.8質量部添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し、40℃でアシル化反応を行った。このアシル化後に40℃で熟成を行った。更にこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンを用いて洗浄し除去した。
次いで、このセルロースアシレート30gを170gの塩化メチレン-メタノール混合溶媒(質量比87:13)に溶解した後、化合物(1-1)を11.6mg(組成物中の固形分1g当たりの化合物のモル数0.5μmol/g)加えて、波長変換用材料(波長変換用組成物(溶液))を調製した。
次いで、この波長変換用組成物をガラス板上に2000回転でスピンコートし、140℃のホットプレート上で乾燥させて、フィルム状の波長変換用材料(波長変換部材)を作製した。得られた波長変換層の厚さは60μmであった。
【0112】
実施例3
ポリメタクリル酸メチル(アルドリッチ社製、表中においてメタクリル樹脂と称す。)30gを300mLのトルエンに溶解した後、化合物(1-1)を11.6mg(組成物中の固形分1g当たりの化合物のモル数0.5μmol/g)加えて、波長変換用材料(波長変換用組成物(溶液))を調製した。
次いで、この波長変換用組成物をガラス板上に2000回転でスピンコートし、50℃のホットプレート上で乾燥させて、フィルム状の波長変換用材料(波長変換部材)を作製した。得られた波長変換層の厚さは60μmであった。
【0113】
実施例4
シリコーン樹脂(商品名:KER-2500、2液混合付加硬化型、信越化学工業社製)のA液15gとB液15gを混合し、次いで化合物(1-1)を11.6mg(組成物中の固形分1g当たりの化合物のモル数0.5μmol/g)加えて、自転・公転ミキサー(シンキー社製、商品名:あわとり錬太郎)にて、2000rpm(rotation per minute)で混合し、2200rpmで脱泡した。こうして波長変換用材料(波長変換用組成物(溶液))を調製した。
次いで、この波長変換用組成物を、ガラス板上に塗布し、60℃のホットプレート上で2時間、更に150℃で4時間加熱して、硬化させた。このようにして、フィルム状の波長変換用材料(波長変換部材)を作製した。得られた波長変換層の厚さは60μmであった。
【0114】
実施例5及び6、比較例1~3
実施例1の波長変換用組成物(溶液)の調製及び波長変換部材の作製において、化合物(1-1)に代えて表2に示す化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、組成物中の固形分1g当たりの化合物のモル数が0.5μmol/gである、波長変換用組成物(溶液)をそれぞれ調製し、またフィルム状の波長変換部材をそれぞれ作製した。得られた波長変換層の厚さはいずれも60μmであった。
【0115】
[評価2:波長変換用材料の評価]
各化合物の吸収特性、作製したフィルム状の波長変換部材(波長変換層)の量子収率、波長変換性能及び耐湿熱性について、下記のようにして評価した。得られた結果をまとめて表2に示す。
【0116】
<化合物の吸収特性の評価>
島津製作所社製の分光光度計UV-3600(商品名)を使用して、極大吸収波長におけるモル吸光係数ε(l/mol・cm)と半値幅を測定し、下記評価ランクに基づき評価した。上記半値幅とは、極体吸収波長における極大値の半分の強度を示す2つの波長間の幅(距離)を意味する。表中において、モル吸光係数εの評価はεの欄に記載する。なお、測定溶媒にはクロロホルムを使用した。
本試験において、モル吸光係数は、評価ランク「B」以上(S~B)が合格であり、半値幅は、色再現性を向上させる観点から狭い方が好ましく、評価ランク「A」以上(S又はA)が合格である。
- モル吸光係数εの評価ランク -
S:130000以上
A:120000以上、130000未満
B:110000以上、120000未満
C:100000以上、110000未満
D:100000未満
上記評価ランクにおいて、εの単位はl/mol・cmである。
- 半値幅の評価ランク -
S:30nm以下
A:31nm以上、35nm以下
B:36nm以上、40nm以下
C:41nm以上
上記評価ランクにおいて、半値幅は小数点以下を四捨五入した値である。
【0117】
<量子収率の測定>
作製したフィルム状の波長変換部材を縦15mm×横15mmの正方形にカットした試験片(ガラス板付き)について、絶対PL量子収率測定装置:C9920-02(商品名、浜松ホトニクス社製)を使用して、量子収率を測定した。励起波長は各波長変換部材に用いた化合物の最大吸収波長より50nm短い波長に設定した。実施例1~6のフィルム状の波長変換部材の量子収率はいずれも0.7以上であり、比較例1~3のフィルム状の波長変換用材料と同程度であり、波長変換用材料として十分な量子収率を示していた。
【0118】
<波長変換性能の評価>
作製したフィルム状の波長変換部材を縦15mm×横15mmの正方形にカットした試験片について、蛍光分光器計RF5300PC(商品名、島津製作所社製)を用いて、発光スペクトルを測定した。
波長変換性能は、発光スペクトルの極大波長を下記の評価ランクに基づき評価した。発光極大波長が評価ランク「B」以上であると、波長変換用材料及び波長変換部材は、それぞれ、入射光を赤色発光に変換できる波長変換用材料又は波長変換部材として好適であることを示す。
- 極大発光波長の評価ランク -
AA:600nm以上、650nm未満
A:580nm以上、600nm未満
B:560nm以上、580nm未満
C:540nm以上、560nm未満
D:520nm以上、540nm未満
E:480nm以上、520nm未満
【0119】
<耐湿熱性試験>
作製したフィルム状の波長変換部材を縦40mm×横40mmの正方形にカットした試験片を、恒温恒湿器(商品名:ESPEC CORP PR-4T、エスペック社製)内に下記試験条件にて保存した。
保存前後での極大吸収波長における吸光度をUV3150分光光度計(商品名、島津製作所社製)を用いて測定した。7日経過後の吸光度保持率を、極大吸収波長での保存前の吸光度に対する極大吸収波長での保存後の吸光度の百分率([極大吸収波長での保存後の吸光度/極大吸収波長での保存前の吸光度]×100)として算出して、得られた吸光度保持率を下記評価ランクに基づき評価した。
本試験において、耐湿熱性試験は、評価ランク「C」以上(A~C)が合格である。
- 試験条件 -
保存時間:7日
設定温度:85℃
設定湿度:85RH%
- 評価ランク -
A:80%以上
B:70%以上、80%未満
C:60%以上、70%未満
D:50%以上、60%未満
E:50%未満
【0120】
【0121】
表2の結果から、以下のことが分かる。
本発明で規定する一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例の波長変換用組成物又は波長変換部材は、いずれも、化合物のモル吸光係数が小さかった。
これに対して、本発明で規定する一般式式(1)で表される化合物を含有する波長変換用組成物又は波長変換部材は、いずれも、比較例と同程度の量子収率を維持しながら、モル吸光係数が大きく、比較例に比べて優れた波長変換効率を示すことが分かる。すなわち、実施例の波長変換用組成物及び波長変換部材は、溶液状組成物であっても、またバインダー樹脂との混合物としてフィルム状の波長変換部材(固体状組成物)であっても、従来の量子収率を維持しつつ、モル吸光係数を大きく向上され、優れた波長変換機能を示す。しかも、赤色への優れた波長変換性能も示す。
【0122】
[評価3:化合物の溶解性]
<溶解性>
以下の溶剤又は樹脂の原料モノマーである媒体A~Gに対する溶解性を評価した。評価方法は各化合物1gmgに0.1mlの溶剤を加えて化合物を溶解させ、目視により、以下の評価ランクに基づき溶解性を判定した。本試験において、評価ランク「B」以上が合格である。
- 評価ランク -
A:完溶
B:大部分が溶解
C:やや溶解
D:大部分が不溶
【0123】
【0124】
(表の注)
媒体A:酢酸エチル
媒体B:トルエン
媒体C:2-フェノキシエチルアクリレート
媒体D:シクロヘキシルアクリレート
媒体E:イソボルニルアクリレート
媒体F:テトラヒドロフルフリルアクリレート
媒体G:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
【0125】
表3の結果から、以下のことが分かる。
本発明で規定する一般式(1)で表される化合物でない比較化合物(1)は、溶剤又は原料モノマーに対する溶解性に劣っていた。
これに対して、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物である化合物(1-1)及び(2-1)は、いずれも、溶剤又は原料モノマーに対する溶解性に優れていた。
【0126】
これらの結果、本発明で規定する一般式(1)で表される化合物は、従来のジピロメテンホウ素錯体化合物と比べて、モル吸光係数は大きく、しかも溶解性に優れる。上記一般式(1)で表される化合物を含有する本発明の波長変換用材料及び波長変換部材は、波長変換用材料中に上記一般式(1)で表される化合物をより高濃度に均一に存在させることが容易であり、高輝度な波長変換用材料及び波長変換部材を得ることができる。