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特開2022-161274ATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161274
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/886 20060101AFI20221014BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20221014BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K36/886
A61P43/00 111
A61K8/9794
A61Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065952
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】水本 百合
(72)【発明者】
【氏名】小方 美幸
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083BB51
4C083CC02
4C083EE12
4C088AB86
4C088AC05
4C088BA06
4C088CA01
4C088NA14
4C088ZC51
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物由来の組成物の中からATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤を提供する。
【解決手段】ATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤に、アロエベラの抽出物を有効成分として含有せしめる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロエベラの抽出物を有効成分として含有するATP産生促進剤。
【請求項2】
アロエベラの抽出物を有効成分として含有するグルタチオン産生促進剤。
【請求項3】
アロエベラの抽出物を有効成分として含有するフィラグリンmRNA発現促進剤。
【請求項4】
アロエベラの抽出物を有効成分として含有するインボルクリンmRNA発現促進剤。
【請求項5】
アロエベラの抽出物を有効成分として含有するトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ATP(Adenosine triphosphate;アデノシン三リン酸)は、生体のエネルギー物質として重要な役割を果たしている。生体内におけるATPの産生量を上げることにより、細胞の増殖、代謝、修復等の機能の活性化につながると考えられている。
【0003】
生体内のエネルギー物質として重要な役割を担うATPの産生能が低下すると、細胞の機能が低下し、老化や細胞死の促進につながる。低下した細胞の機能を促進させるためには、細胞分裂に必要なエネルギーを細胞に補給することが重要である。そのため、細胞におけるATPの産生を促進することができれば、その細胞を活性化して細胞分裂を促し、その細胞の機能を回復することができると考えられる。また、ATPの産生を促進することは、細胞の増殖、代謝、修復等の機能の活性化の効果や抗老化(アンチエイジング)の効果が奏されることにも期待される。さらに、ATPは、血管拡張作用を有することが知られており、ATPの産生を促進することで、眼精疲労、めまい、胃炎等を予防、治療又は改善することができると考えられる。従来、ATP産生促進作用を有するものとして、大麦若葉(特許文献1参照)、ハンニチバナ科(Cistaceae)ゴジアオイ属モンスペリエンシス(学名:Cistus monspeliensis)より抽出されたモンスペリエンシス抽出物(特許文献2参照)、ナンヨウスギ属植物より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物(特許文献3参照)等が知られている。
【0004】
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドである。細胞内におけるグルタチオンは、ラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節等の役割や、各種酵素のSH供与体、抗酸化成分等としての役割を果たすことが知られている。
【0005】
しかし、紫外線の照射や加齢の進行とともに皮膚中のグルタチオン量が低下すると、皮膚における酸化防御能が低下するため、DNAやタンパク質等の細胞の構成成分にダメージを与え、表皮のバリア機能、真皮の弾力性等が低下し、小ジワ、くすみ、色素沈着、肌荒れ等の皮膚の老化症状を呈することになる。特に、表皮における表皮角化細胞のグルタチオンの産生量が低下すると、バリア機能の低下、肌荒れ、小ジワの形成等の老化症状が現れやすくなる。一方、真皮における線維芽細胞のグルタチオンの産生量が低下すると、皮膚の弾力性及び水分保持機能の低下、色素沈着等の老化症状が現れやすくなる。そのため、皮膚においてグルタチオンの産生を促進することにより上記皮膚の老化症状を予防、治療又は改善することができると考えられる。また、グルタチオンは、肝臓内に多数存在し、肝臓内の有害物質を体外へ排出させる役割を果たすことが知られている。そのため、グルタチオンの産生を促進することで、慢性肝疾患における肝機能の改善や脂肪肝等の改善が可能になると考えられる。従来、グルタチオン産生促進作用を有するものとして、エンメイソウの溶媒可溶成分、インチンコウの溶媒可溶成分(特許文献4参照)、未発芽のセロリ種子より抽出されたセロリ種子抽出物(特許文献5参照)、ショウガ科(Zingiberaceae)ハナミョウガ属ゲットウ(Alpinia speciosa (Wendl.) K. Schum.)より抽出されたゲットウ抽出物(特許文献6参照)等が知られている。
【0006】
天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor;NMF)の主成分であるアミノ酸は、ケラトヒアリン顆粒に由来するフィラグリンが角層内で分解されて産生される。フィラグリンは、角層直下に位置する顆粒層に存在する表皮ケラチノサイトでプロフィラグリンとして発現する。その後、直ちにリン酸化し、ケラトヒアリン顆粒に蓄積され、脱リン酸、加水分解を経てフィラグリンへと分解され、角層に移行してケラチンフィラメントの凝集効率を高め、角層細胞の内部構築に関与することが報告されている(非特許文献1参照)。
【0007】
近年、フィラグリンが皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、及び乾燥等の条件によってフィラグリンの合成力が低下し、角層内におけるアミノ酸量が低下することが報告されている(非特許文献2参照)。そのため、表皮ケラチノサイトにおいてフィラグリンの産生を促進させることで、角層のアミノ酸量を増大させるとともに、皮膚の水分保持機能の低下を予防又は改善することができると考えられる。従来、フィラグリン産生促進作用を有するものとして、クチナシの抽出物(特許文献7参照)、紫根の抽出物(特許文献8参照)、サガラメの抽出物、ヒバマタの抽出物、紅茶の抽出物、及びエンメンソウの抽出物(特許文献9参照)等が知られている。
【0008】
角層細胞は、主成分としてのケラチン線維と、それを包む角化外膜細胞(cornified envelope;CE)とから構成される。角化外膜細胞は、表皮角化細胞の分化により産生される複数の角化外膜細胞前駆体タンパク質が、酵素トランスグルタミナーゼにより架橋され、不溶化することで形成される。さらに、セラミド等が共有結合して疎水的な構造をとることで、角化外膜細胞の一部に細胞間脂質のラメラ構造の土台が供給され、これにより角層バリア機能の基礎が形成される。
【0009】
角化外膜細胞前駆体タンパク質の1つとしてインボルクリンが知られており、インボルクリンの産生を促進することで、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状や魚鱗癬、乾癬、アトピー性皮膚炎、乾皮症、座瘡等の皮膚疾患等を予防、治療又は改善することができると考えられる。従来、インボルクリン産生促進作用を有するものとして、バンレイシ(Annona squamosa)の種子の抽出物(特許文献10参照)、キク科レオントポディウム属(Gnaphalium)植物のエーデルワイス(Gnaphalium uliginosum L.)より得られる抽出物(特許文献11参照)、シラカンバ(Betula platyphylla Sukatchev var.japonica Hara)樹液(特許文献12参照)等が知られている。
【0010】
顆粒層では、細胞膜が肥厚して肥厚細胞膜を形成するとともに、トランスグルタミナーゼ-1の作用により、蛋白分子間がグルタミル-リジン架橋され、強靱なケラチン蛋白線維が形成される。さらに、その一部にセラミド等が共有結合し、疎水的な構造をとることで、細胞間脂質のラメラ構造の土台を供給し、角層バリア機能及び皮膚の保湿機能の基礎が形成される。
【0011】
しかし、加齢とともに表皮におけるトランスグルタミナーゼ-1の産生量が減少すると、角層バリア機能及び皮膚の保湿機能が低下するため、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状を呈したり、魚鱗癬、乾癬、アトピー性皮膚炎、乾皮症、座瘡等の皮膚疾患を発症したりするようになる。そのため、表皮におけるトランスグルタミナーゼ-1の産生を促進することにより、皮膚の老化症状や上記皮膚疾患を予防、治療又は改善することができると考えられる。従来、トランスグルタミナーゼ-1産生促進作用を有するものとして、バンレイシ(Annona squamosa)の種子の抽出物(特許文献10参照)、湖南甜茶抽出物とその酸加水分解物(特許文献13参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019-073476号公報
【特許文献2】特開2011-162504号公報
【特許文献3】特開2007-106741号公報
【特許文献4】特開2018-188398号公報
【特許文献5】特開2012-051837号公報
【特許文献6】特開2010-195747号公報
【特許文献7】特開2020-105126号公報
【特許文献8】特開2018-035144号公報
【特許文献9】特開2018-002704号公報
【特許文献10】特開2009-242310号公報
【特許文献11】特開2009-084212号公報
【特許文献12】特開2007-217326号公報
【特許文献13】特開2007-099698号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル臨時増刊 Vol.17、p14-19、2000年発行
【非特許文献2】「Arch. Dermatol. Res.」Vol.288、p.442-446、1996年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、安全性の高い天然物由来の組成物の中からATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を解決するために、本発明は、アロエベラの抽出物を有効成分として含有するATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全性の高い天然物由来の組成物の中からATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤は、アロエベラの抽出物を有効成分として含有する。
【0018】
本実施形態における有効成分を得るために使用される抽出原料は、アロエベラ(学名:Aloe vera)である。
【0019】
アロエベラ(学名:Aloe vera)は、ユリ科アロエ属に属する多肉植物であって、アフリカやインド等で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るアロエベラの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、葉肉部、茎部、花部、果実部、果皮部、果核部、種子部、根部、これらの混合物、もしくは全草、又はこれらを圧搾して得られる液汁(圧搾液)やその濃縮物、乾燥物等が挙げられるが、葉肉部の圧搾液の濃縮物、乾燥物等を使用することが好ましい。
【0020】
上記の抽出原料からの抽出物に含まれるATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出等に一般に用いられている抽出方法によって、上記抽出原料からATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有する抽出物を得ることができる。なお、抽出物には、抽出処理によって抽出原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0021】
上記抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0022】
抽出に用いられる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、またはこれらの混合物等が挙げられ、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。抽出原料に含まれるATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有する成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に抽出することができる。
【0023】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0024】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0025】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0026】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温または還流加熱下で抽出することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、必要に応じて撹拌しながら、30分~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去することにより抽出物を得ることができる。得られた抽出液から抽出溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥することにより乾燥物が得られる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には50~95℃で1~4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40~80℃で30分~4時間程度である。
【0027】
以上のようにして得られた抽出液は、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0028】
なお、得られた抽出液はそのままでもATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤として使用することができるが、濃縮液または乾燥物としたもののほうが好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0029】
また、上記抽出物は特有の匂いと味を有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、化粧料等に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。精製は、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0030】
以上のようにして得られるアロエベラの抽出物は、ATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有しているため、その作用を利用してATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤の有効成分として用いられ得る。
【0031】
本実施形態に係るATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤は、アロエベラの抽出物を製剤化したものであってもよい。
【0032】
上記抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記抽出物を製剤化したATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用の形態としては、例えば、軟膏剤、外用液剤等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係るATP産生促進剤は、アロエベラの抽出物が有するATP産生促進作用を通じて、ATPの産生を促進することができる。これにより、細胞の増殖、代謝、修復等の機能の活性化につながり、抗老化(アンチエイジング)の効果が奏される。また、本実施形態におけるATP産生促進剤は、上記抽出物のATP産生促進作用を利用して、ATPの産生量低下に起因する疾患・症状等の予防、治療又は改善剤(例えば、眼精疲労、めまい、胃炎、むくみ等の予防、治療又は改善剤等)の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態に係るATP産生促進剤は、これらの用途以外にもATP産生促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0034】
本実施形態に係るグルタチオン産生促進剤は、アロエベラの抽出物が有するグルタチオン産生促進作用を通じて、グルタチオンの産生を促進することができる。これにより、小ジワ、くすみ、色素沈着、肌荒れ等の皮膚の老化症状を予防、治療又は改善することができる。特に、本実施形態におけるグルタチオン産生促進剤は、上記抽出物のグルタチオン産生促進作用を利用して、表皮においては、表皮角化細胞のグルタチオンの産生量低下に起因するバリア機能の低下、肌荒れ、小ジワの形成等の老化症状の予防、治療又は改善剤の有効成分として用いることができ、真皮においては、線維芽細胞のグルタチオンの産生量低下に起因する皮膚の弾力性及び水分保持機能の低下、色素沈着等の老化症状の予防、治療又は改善剤の有効成分として用いることができる。そのため、皮膚においてグルタチオンの産生を促進することにより上記皮膚の老化症状を予防、治療又は改善することができると考えられる。また、本実施形態におけるグルタチオン産生促進剤は、上記抽出物のグルタチオン産生促進作用を利用して、グルタチオンの産生量低下に起因する疾患・症状等の予防、治療又は改善剤(例えば、慢性肝疾患における肝機能の改善剤や脂肪肝等の改善剤等)の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態に係るグルタチオン産生促進剤は、これらの用途以外にもグルタチオン産生促進作用を発揮する意義のある全ての用途に用いることができる。
【0035】
本実施形態に係るフィラグリンmRNA発現促進剤は、アロエベラの抽出物が有するフィラグリンmRNA発現促進作用を通じて、フィラグリンの産生を促進することができる。これにより、角層の水分保持機能の低下を予防又は改善することができる。ただし、本実施形態におけるフィラグリンmRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもフィラグリンmRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0036】
本実施形態におけるインボルクリンmRNA発現促進剤は、アロエベラの抽出物が有するインボルクリンmRNA発現促進作用を通じて、インボルクリンの産生を促進することができる。これにより、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状や魚鱗癬、乾癬、アトピー性皮膚炎、乾皮症、座瘡等の皮膚疾患等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態におけるインボルクリンmRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもインボルクリンmRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0037】
本実施形態に係るトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤は、アロエベラの抽出物が有するトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を通じて、トランスグルタミナーゼ-1の産生を促進することができる。これにより、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状や、魚鱗癬、乾癬、アトピー性皮膚炎、乾皮症、座瘡等の皮膚疾患を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態に係るトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0038】
本実施形態に係るATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤の患者に対する投与方法としては、皮下組織内投与、筋肉内投与、静脈内投与、経口投与、経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態に係るATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0039】
また、本実施形態に係るATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤は、優れたATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有するため、皮膚化粧料、頭皮化粧料、頭髪化粧料等の化粧料や、飲食品等に配合するのに好適である。
【0040】
ATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤を配合可能な化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス、石鹸等が挙げられる。ATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤を化粧料に配合する場合、その配合量は、化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001~1質量%である。化粧料は、上記抽出物が有するATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を妨げない限り、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤またはその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0041】
飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態に係る「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する組成物を幅広く含むものである。本実施形態における飲食品は、当該飲食品又はその包装に上記抽出物が有するATP産生促進作用、グルタチオン産生促進作用、フィラグリンmRNA発現促進作用、インボルクリンmRNA発現促進作用及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用が表示されるものであってもよいし、当該飲食品は、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品又は医薬品であってもよい。
【0042】
上記抽出物、又は上記抽出物から製剤化したATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の形態である場合、上記抽出物、又は上記抽出物から製剤化したATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
【0043】
なお、本実施形態に係るATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することも可能である。
【実施例0044】
以下、製造例、試験例等を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記製造例、試験例等に何ら制限されるものではない。
【0045】
〔製造例〕アロエベラ抽出物の製造
アロエベラの葉肉部の圧搾液を濃縮して得られた固形物1gに30容量%1,3-ブチレングリコール溶液100mLを加え、50℃にて1時間加熱抽出を行い濾過した。得られた抽出液を乾燥してアロエベラ抽出物(0.8g)を得た。
【0046】
〔試験例1〕ATP産生促進作用試験
上記製造例で得られたアロエベラ抽出物について、下記の方法によりATP産生促進作用の試験を実施した。
【0047】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0048】
培養後に培地を除去し、被験試料(製造例のアロエベラ抽出物)を溶解したKGMを各ウェルに100μL添加し、2時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGMを用いて同様に培養した。
【0049】
ATP産生促進作用は、ホタルルシフェラーゼ発光法を用いて細胞内のATP量を測定することにより評価した。具体的には、培養終了後、『「細胞の」ATP測定試薬』(東洋ビーネット社製)を各ウェルに100μL添加し、反応後の化学発光量を測定した。測定結果から、下記式によりATP産生促進率(%)を算出した。
【0050】
ATP産生促進率(%)=A/B×100
式中の「A」は、被験試料を添加した細胞での化学発光量を表し、「B」は、被験試料無添加の細胞での化学発光量を表す。
【0051】
上記試験の結果を表1に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のATP産生促進率は100%となる。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、アロエベラ抽出物は、高いATP産生促進率を示した。この結果から、アロエベラ抽出物は、優れたATP産生促進作用を有することが確認された。
【0054】
〔試験例2〕表皮角化細胞におけるグルタチオン産生促進作用試験
上記製造例で得られたアロエベラ抽出物について、下記の方法により表皮角化細胞におけるグルタチオン産生促進作用の試験を実施した。
【0055】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×105cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、コラーゲンコートした48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、48時間培養した。
【0056】
培養後に培地を除去し、被験試料(製造例のアロエベラ抽出物)を溶解したKGMを各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGMを用いて同様に培養した。培養後に培地を除去し、300μLのPBS(-)にて洗浄後、150μLのM-PERR(PIERCE社製)を用いて細胞を溶解した。
【0057】
このうちの100μLを用いて総グルタチオンの定量を行った。具体的には、96ウェルプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1Mリン酸緩衝液50μL、2mM NADPH25μL、及び3.2units/mLグルタチオンレダクターゼ25μLを加え、37℃で10分間加温した後、10mM 5,5′-dithiobis (2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は酸化型グルタチオンを用いて作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
【0058】
グルタチオン産生促進率(%)=C/D×100
式中の「C」は、被験試料を添加した細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量を表し、「D」は、被験試料無添加の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量を表す。
【0059】
上記試験の結果を表2に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のグルタチオン産生促進率は100%となる。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示すように、アロエベラ抽出物は、表皮角化細胞において高いグルタチオン産生促進率を示した。この結果から、アロエベラ抽出物は、表皮角化細胞において優れたグルタチオン産生促進作用を有することが確認された。
【0062】
〔試験例3〕皮膚線維芽細胞におけるグルタチオン産生促進作用試験
上記製造例で得られたアロエベラ抽出物について、下記の方法により皮膚線維芽細胞におけるグルタチオン産生促進作用の試験を実施した。
【0063】
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α-MEMを用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有α-MEMで希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、48時間培養した。
【0064】
培養後に培地を除去し、被験試料(製造例のアロエベラ抽出物)を溶解した1%FBS含有D-MEMを各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の1%FBS含有D-MEMを用いて同様に培養した。培養後に培地を除去し、300μLのPBS(-)にて洗浄後、150μLのM-PERR(PIERCE社製)を用いて細胞を溶解した。
【0065】
このうちの100μLを用いて総グルタチオンの定量を行った。具体的には、96ウェルプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1Mリン酸緩衝液50μL、2mM NADPH25μL、及び3.2units/mLグルタチオンレダクターゼ25μLを加え、37℃で10分間加温した後、10mM 5,5′-dithiobis (2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は酸化型グルタチオンを用いて作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
【0066】
グルタチオン産生促進率(%)=C/D×100
式中の「C」は、被験試料を添加した細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量を表し、「D」は、被験試料無添加の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量を表す。
【0067】
上記試験の結果を表3に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のグルタチオン産生促進率は100%となる。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示すように、アロエベラ抽出物は、皮膚線維芽細胞において高いグルタチオン産生促進率を示した。この結果から、アロエベラ抽出物は、皮膚線維芽細胞において優れたグルタチオン産生促進作用を有することが確認された。
【0070】
〔試験例4〕フィラグリンmRNA発現促進作用試験
上記製造例で得られたアロエベラ抽出物について、下記の方法によりフィラグリンmRNA発現促進作用の試験を実施した。
【0071】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を6ウェルプレートに3.0×105cells/2mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、37℃・5%CO2-95%airの条件下で一晩培養した。
【0072】
培養後に培地を除去し、増殖因子を添加していない培地(正常ヒト表皮角化細胞基礎培地;KBM)に交換し、24時間培養した。培養後に培地を除去し、被験試料(製造例のアロエベラ抽出物)を溶解したKBMを各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2-95%airの条件下で24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0073】
この総RNAを鋳型とし、フィラグリン及び内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。フィラグリンmRNAの発現量は、GAPDHmRNAの値で補正し算出した。得られた値から、下記式によりフィラグリンmRNA発現促進率(%)を算出した。
【0074】
フィラグリンmRNA発現促進率(%)=E/F×100
式中の「E」は、被験試料を添加したものの補正値を表し、「F」は、被験試料無添加のものの補正値を表す。
【0075】
上記試験の結果を表4に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のフィラグリンmRNA発現促進率は100%となる。
【0076】
【表4】
【0077】
表4に示すように、アロエベラ抽出物は、高いフィラグリンmRNA発現促進率を示した。この結果から、アロエベラ抽出物は、優れたフィラグリンmRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0078】
〔試験例5〕インボルクリンmRNA発現促進作用試験
上記製造例で得られたアロエベラ抽出物について、下記の方法によりインボルクリンmRNA発現促進作用の試験を実施した。
【0079】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を6ウェルプレートに3.0×105cells/2mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、37℃・5%CO2-95%airの条件下で一晩培養した。
【0080】
培養後に培地を除去し、増殖因子を添加していない培地(正常ヒト表皮角化細胞基礎培地;KBM)に交換し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後に培地を除去し、被験試料(製造例のアロエベラ抽出物)を溶解したKBMを各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2-95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0081】
この総RNAを鋳型とし、インボルクリン及び内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。インボルクリンmRNAの発現量は、GAPDHmRNAの値で補正し算出した。得られた値から、下記式によりインボルクリンmRNA発現促進率(%)を算出した。
【0082】
インボルクリンmRNA発現促進率(%)=E/F×100
式中の「E」は、被験試料を添加したものの補正値を表し、「F」は、被験試料無添加のものの補正値を表す。
【0083】
上記試験の結果を表4に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のインボルクリンmRNA発現促進率は100%となる。
【0084】
【表5】
【0085】
表5に示すように、アロエベラ抽出物は、高いインボルクリンmRNA発現促進率を示した。この結果から、アロエベラ抽出物は、優れたインボルクリンmRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0086】
〔試験例6〕トランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用試験
上記製造例で得られたアロエベラ抽出物について、下記の方法によりトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用の試験を実施した。
【0087】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を6ウェルプレートに3.0×105cells/2mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、37℃・5%CO2-95%airの条件下で一晩培養した。
【0088】
培養後に培地を除去し、増殖因子を添加していない培地(正常ヒト表皮角化細胞基礎培地;KBM)に交換し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後に培地を除去し、被験試料(製造例のアロエベラ抽出物)を溶解したKBMを各ウェルに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2-95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0089】
この総RNAを鋳型とし、トランスグルタミナーゼ-1及び内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。トランスグルタミナーゼ-1mRNAの発現量は、GAPDHmRNAの値で補正し算出した。得られた値から、下記式によりトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0090】
トランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進率(%)=E/F×100
式中の「E」は、被験試料を添加したものの補正値を表し、「F」は、被験試料無添加のものの補正値を表す。
【0091】
上記試験の結果を表6に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進率は100%となる。
【0092】
【表6】
【0093】
表6に示すように、アロエベラ抽出物は、高いトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進率を示した。この結果から、アロエベラ抽出物は、優れたトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のATP産生促進剤、グルタチオン産生促進剤、フィラグリンmRNA発現促進剤、インボルクリンmRNA発現促進剤及びトランスグルタミナーゼ-1mRNA発現促進剤は、化粧料や飲食品等の一成分として、更には研究用の試薬として好適に利用され得る。