(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161310
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】窒化物半導体ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20221014BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20221014BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B29/38 C
C30B29/38 D
C30B25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066022
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】萩本 和徳
(72)【発明者】
【氏名】石崎 順也
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE13
4G077BE15
4G077ED06
4G077FH07
4G077GA07
4G077HA06
4G077TA04
4G077TK01
4G077TK08
5F045AA03
5F045AB09
5F045AB14
5F045AB17
5F045AF03
5F045AF16
5F045BB16
5F045DA53
5F045DA54
5F045HA09
5F045HA19
(57)【要約】
【課題】シリコン単結晶基板上に窒化物半導体膜を形成させた窒化物半導体ウェーハにおいて、基板による損失及び第2高調波の特性が改善された窒化物半導体ウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン単結晶基板の上に窒化物半導体膜を形成する窒化物半導体ウェーハの製造方法であって、前記シリコン単結晶基板の上に前記窒化物半導体膜を形成する工程と、前記シリコン単結晶基板に1×10
14/cm
2以上の照射量の電子線を照射する工程とを含む窒化物半導体ウェーハの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶基板の上に窒化物半導体膜を形成する窒化物半導体ウェーハの製造方法であって、
前記シリコン単結晶基板の上に前記窒化物半導体膜を形成する工程と、前記シリコン単結晶基板に1×1014/cm2以上の照射量の電子線を照射する工程とを含むことを特徴とする窒化物半導体ウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記電子線を照射する工程において、前記照射する電子線の照射量を3×1014/cm2以上1×1016/cm2以下とすることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記電子線を照射する工程を、前記窒化物半導体膜を形成する工程の前に行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の窒化物半導体ウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記電子線を照射する工程を、前記窒化物半導体膜を形成する工程の後に行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の窒化物半導体ウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記電子線を照射する工程を、前記窒化物半導体膜を形成する工程の後の、さらに前記窒化物半導体膜にデバイスを作製した後に行うことを特徴とする請求項4に記載の窒化物半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体ウェーハの製造方法に関し、特に高周波デバイスに用いることに適した窒化物半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波デバイスは、小型化、低コスト化に向けて、アンテナやアンプ、スイッチ、フィルター等のデバイスをインテグレーションする開発が進められている。また、周波数の高周波化に従い、回路が複雑化し、使用されるデバイスの材料もシリコンCMOS、III-V族半導体や窒化物半導体を用いたデバイス、圧電体を用いたフィルターなど多岐にわたっている。
これらのデバイスの下地となる基板は、安価で大口径のウェーハが流通しているシリコン単結晶基板が適していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の高周波デバイスでは、基板起因による特性劣化、基板による損失及び第2・3高調波特性劣化がみられる。
ここで、高調波とは、元となる周波数の整数倍の高次の周波数成分のことである。元の周波数を基本波とし、基本波の2倍の周波数(2分の1の波長)を持つものが第2高調波、基本波の3倍の周波数(3分の1の波長)を持つものが第3高調波と定義されている。高周波回路では、高調波による混信を避けるために高調波の小さい基板が必要とされる。
【0005】
特許文献1には、パワー用途のワイドギャップバイポーラ半導体(SiC)に、予めγ線、電子線、荷電粒子線の1つを照射して、キャリア寿命を所定の範囲になるように調整することで、スイッチング特性を向上させることが記載されているが、第2高調波特性等の劣化については言及されていない。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、シリコン単結晶基板上に窒化物半導体膜を形成させた窒化物半導体ウェーハにおいて、基板による損失及び第2高調波の特性が改善された窒化物半導体ウェーハを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、シリコン単結晶基板の上に窒化物半導体膜を形成する窒化物半導体ウェーハの製造方法であって、
前記シリコン単結晶基板の上に前記窒化物半導体膜を形成する工程と、前記シリコン単結晶基板に1×1014/cm2以上の照射量の電子線を照射する工程とを含むことを特徴とする窒化物半導体ウェーハの製造方法を提供する。
【0008】
このような窒化物半導体ウェーハの製造方法であれば、1×1014/cm2以上の照射量(ドーズ量)の電子線を照射することで、基板による損失が改善されたり、第2高調波特性を改善し、第2高調波特性劣化が抑制された窒化物半導体ウェーハを製造することができる。そして、製造した窒化物半導体ウェーハを特には高周波デバイスに用いることで、基板による損失(例えば電力損失)や第2高調波特性が改善された高品質の高周波デバイスを提供することができる。
【0009】
このとき、前記電子線を照射する工程において、前記照射する電子線の照射量を3×1014/cm2以上1×1016/cm2以下とすることができる。
【0010】
このように電子線の照射量を3×1014/cm2以上にすれば、より一層、損失が改善され、また第2高調波特性劣化が抑制された窒化物半導体ウェーハを製造することができる。
また、1×1016/cm2以下とすることで、照射に要する時間が長くなりすぎることがないため、効率的である。
【0011】
また、前記電子線を照射する工程を、前記窒化物半導体膜を形成する工程の前に行うことができる。あるいは、前記電子線を照射する工程を、前記窒化物半導体膜を形成する工程の後に行うことができる。
【0012】
このように、シリコン単結晶基板に上記照射量の電子線を照射することができればよく、電子線の照射自体は、窒化物半導体膜を形成する工程の前に行うこともできるし、後に行うこともできる。
【0013】
このとき、前記電子線を照射する工程を、前記窒化物半導体膜を形成する工程の後の、さらに前記窒化物半導体膜にデバイスを作製した後に行うことができる。
【0014】
このように、上記電子線の照射を窒化物半導体膜にデバイスを作製した後に行うこともできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の窒化物半導体ウェーハの製造方法であれば、基板による損失の改善や、第2高調波特性の改善がなされた窒化物半導体ウェーハを製造することができ、特には高周波デバイス用に適したウェーハを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る窒化物半導体ウェーハの一例を示す概略図である。
【
図2】第2高調波特性を評価するために用いるCo-Planar Waveguide(CPW)の概略平面図である。
【
図3】各抵抗率の基板の第2高調波特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、シリコン単結晶基板上に窒化物半導体膜が形成された窒化物半導体ウェーハに関して、損失や第2高調波特性を改善、向上し、特性劣化が抑制された窒化物半導体ウェーハを得ることができる製造方法が求められていた。
【0018】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、シリコン単結晶基板の上に窒化物半導体膜を形成する窒化物半導体ウェーハの製造方法であって、前記シリコン単結晶基板の上に前記窒化物半導体膜を形成する工程と、前記シリコン単結晶基板に1×1014/cm2以上の照射量の電子線を照射する工程とを含む窒化物半導体ウェーハの製造方法により、損失や第2高調波特性を改善、向上し、第2高調波特性の劣化が抑制された窒化物半導体ウェーハを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の窒化物半導体ウェーハの製造方法について
図1を用いて説明する。
なお、以下の窒化物半導体ウェーハの構造は一例であって、これに限定されるものではない。
【0020】
最初にシリコン単結晶基板を準備する。このシリコン単結晶基板は特に限定されず、抵抗率に関しては、例えば抵抗率が100Ωcm以上といった高抵抗のものを用いることができる。抵抗率の上限値は特に限定されないが、例えば10000Ωcm以下とすることができる。また、抵抗率が1Ωcm以上100Ωcm未満のような通常抵抗のものや、あるいは抵抗率が1Ωcm未満のような低抵抗のものを用いることもできる。本発明の製造方法においては、シリコン単結晶基板の抵抗率の高低に関わらず、前述したような損失や第2高調波特性の改善を得ることができる。
【0021】
ところで、本発明の製造方法ではこの後に行う工程として、シリコン単結晶基板の上に窒化物半導体膜を形成する工程と、シリコン単結晶基板に所定の照射量(1×1014/cm2以上)の電子線を照射する工程とを含んでいるが、これらの工程はどちらを先に行ってもよいが、電子線を照射する工程を後に行うのがより好ましい。
ここでは、まず、シリコン単結晶基板に電子線照射を行う。電子線を照射することで、シリコン単結晶基板中のドーパント及び/又は原料由来の不純物等のキャリアを不活性化させることによる効果が顕著に得られる。ここでの不活性化は、すなわち、電子線を照射することで、シリコン単結晶基板中に点欠陥が形成され、これらがシリコン単結晶基板中のキャリアをトラップするといった、点欠陥とドーパント及び/又はキャリアの反応による。また、点欠陥によってドーパント及び/又はキャリアの移動度が低下することで抵抗が変化すると考えられる。シリコン単結晶基板中のドーパント及び/又はキャリアを不活性化させた結果、シリコン単結晶基板が高抵抗率化すると考えられる。
なお、後述する窒化物半導体膜を形成する工程の後に電子線を照射する場合、上記効果に加え、窒化物半導体膜中の点欠陥が減少し、特性が向上するものと考えられる。
【0022】
このとき、上記効果を得るため、電子線の照射条件として、電子線の照射量を1×1014/cm2以上とする。このような照射量とすることで、後述の窒化物半導体膜の形成後、基板による損失の改善や第2高調波特性の改善がなされた窒化物半導体ウェーハを製造することができる。
ここで、より好ましくは3×1014/cm2以上の照射量とすることができ、損失や第2高調波特性の改善をより一層図ることができる。なお、1×1015/cm2以上の照射量とするとさらに好ましい。
その一方、上限値としては例えば1×1016/cm2以下とすることができる。このような照射量であれば、照射時間が必要以上に長くなりすぎることを防ぐことができ、効率的である。
【0023】
それ以外の照射条件は特に限定されず、例えば、250keV以上のエネルギーをもつ電子を用いることができる。約250keV以上であれば、より確実にシリコン単結晶基板中に点欠陥を形成でき、シリコン単結晶基板中のドーパント及び/又は原料由来の不純物等のキャリアを不活性化させることができる。なお、照射エネルギーの上限は特に問わない。
ここでは一例として、2MeV、1×1015/cm2での電子線照射とする。
また、電子線は、シリコン単結晶基板表面の全面に照射してもよい。
【0024】
なお、シリコン単結晶基板に電子線を照射することができれば良く、この電子線照射は、後述の窒化物半導体膜を形成する工程の後に行うこともできる。窒化物半導体膜として複数層の窒化物半導体層を形成する場合には、複数層の窒化物半導体層の形成の間に電子線照射を行ってもよい。窒化物半導体膜を形成した後に電子線照射を行う場合、デバイス作製の前に行うこともできるし、後に行うこともできる。例えばダイシング前の、シリコン単結晶基板上の窒化物半導体膜にデバイスが作製されたウェーハ状のものに、上述した照射量での電子線照射を行うことができる。
また、電子線照射は、窒化物半導体膜の形成(あるいはデバイスの作製)の前でも後でも、特には裏面側(シリコン単結晶基板側)から行うことができる。
【0025】
このように、上記所定の照射量の電子線を照射して、ドーパント及び/又はキャリアを減少させる(シリコン単結晶基板を高抵抗率化する)ことで、高周波を印加したときに、高周波に追従するキャリアがなくなり、高調波が減少すると考えられる。
【0026】
次に窒化物半導体をエピタキシャル成長により形成する。形成する窒化物半導体膜は特に限定されず、少なくとも1層の窒化物半導体層を含んでいれば、単層でも複数層でもよい。例えば、窒化物半導体膜として複数層の窒化物半導体層を形成する場合には、
図1に示すように、最初に中間層を形成する。
中間層はシリコン単結晶基板上に例えば厚さ150nmのAlN層を形成し、その上に例えば厚さ160nmのAlGaN層を形成し、更にその上に例えばGaN層とAlN層が交互に70組積層された超格子層を形成することができる。
次にデバイス層を形成する。デバイス層は例えば厚さ800nmのGaN層を形成し、その上に例えば厚さ25nmのAlGaN層を形成し、更にその上に例えば厚さ3nmのGaN層を形成することができる。
【0027】
このように本発明の製造方法によって、上記所定の照射量の電子線を照射して製造した窒化物半導体ウェーハは、損失および第2高調波特性が改善され、特性劣化が抑制されたものとすることができる。そして、特に、そのような窒化物半導体ウェーハから製造される高周波デバイスは、損失が改善されており、また、第2高調波特性劣化が抑制されたものとすることができる。
【0028】
なお、高調波特性の測定、評価のために、
図2に示すようなCPW(Co-Planar Waveguide)のAl電極を形成することができる。窒化物半導体膜をエピタキシャル成長により形成して作製した窒化物半導体ウェーハを成膜装置から取り出し、ウェーハ上に絶縁膜を形成し、フォトリソグラフィーにより、この絶縁膜上にCPWのAl電極を形成する。
【0029】
CPWは、金属電極を隙間を開けて並列に並べて、その隙間の中央にこれら金属電極と並列に、線状の中央金属電極を形成した構造を持つ。
図2に示す一例では、金属電極の中央に線状の隙間を空けて、この隙間の中央に線状の電極を、外側の金属電極に触れないように形成した構造となっている。
CPWは、このような構造で、中央金属電極から左右両側の金属電極及び半導体基板内部に向かう方向の電界と、半導体基板内部において中央金属電極を囲む方向の磁界によって電磁波を伝送する。CPWをウェーハ上に形成すれば、高調波特性(Harmonic Distortion:HD)を測定することができる。
【実施例0030】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例および比較例)
抵抗率の異なるシリコン単結晶基板を3種類(8mΩcm、8Ωcm、5531Ωcm)準備した。上記の3種類のシリコン単結晶基板上に中間層として、厚さ150nmのAlN層を形成し、その上に厚さ160nmのAlGaN層を形成し、更にその上にGaN層とAlN層が交互に70組積層された超格子層を形成した。次にデバイス層として、厚さ800nmのGaN層を形成し、その上に厚さ25nmのAlGaN層を形成し、更にその上に厚さ3nmのGaN層を形成した(
図1参照)。
エピタキシャル成長により窒化物半導体膜を形成した窒化物半導体ウェーハを成長装置から取り出し、ウェーハ上に絶縁膜を形成して、フォトリソグラフィー工程により、
図2に示すようなCPWの電極(Al)(路線長:2199μm)を形成した。
【0031】
次に、まず、電子線照射前の窒化物半導体ウェーハの各素子の第2高調波特性(2HD)を測定した(照射無)。
この測定後、窒化物半導体ウェーハに電子線照射を行った。電子線照射は、2MeV、5×1011/cm2、5×1012/cm2、1×1014/cm2、1×1015/cm2とドーズ量を変えて、日新電機(NHVコーポレーション3000kV機)で行なった。
次に、電子線照射後の窒化物半導体ウェーハの各素子の第2高調波特性(2HD)を測定した。
なお、照射無、5×1011/cm2、5×1012/cm2の3つの場合が比較例であり、1×1014/cm2、1×1015/cm2の2つの場合が実施例である。
【0032】
測定結果を
図3に示す。
図3は、各抵抗率の基板の第2高調波特性を示すグラフである。グラフで縦軸のマイナスの値が大きい程、良好であることを意味する。なお、横軸の左端の位置は1×10
11/cm
2の位置ではあるが、表示されているプロット自体は照射無(すなわち、照射量が0/cm
2)の場合の測定値を示している。
【0033】
上記の種類(抵抗率)ごとに、各照射量における第2高調波特性を比較したところ、
図3に示すように、どの種類においても、照射無、5×10
11/cm
2、5×10
12/cm
2の3つの場合(比較例)よりも、1×10
14/cm
2、1×10
15/cm
2の2つの場合(実施例)の方が改善された結果となっていることが判る。
【0034】
例えば8Ωcmの場合では、1×1014/cm2の電子線照射を行った窒化物半導体ウェーハでは、照射無の場合と比べると、第2高調波損失に約20dBmの改善が観られた。更に1×1015/cm2の電子線照射を行った場合は、1×1014/cm2の場合よりも第2高調波損失が約25dBm改善されることが判った。すなわち、照射無の場合と比べると、約45dBmもの改善が観られた。
8mΩcmや5531Ωcmの場合でも、同等、あるいはそれ以上の改善が観られた。
グラフに示されているように、照射無(照射量が0/cm2)から照射量が5×1012/cm2程度までは第2高調波はさほど変化していないが、1×1014/cm2を境にして、第2高調波が大きく改善していく様子が判る。そしてグラフの曲線からも判るように3×1014/cm2以上、さらには1×1015/cm2以上と照射量が大きくなるにつれて、第2高調波はさらに改善されている。なお、1×1016/cm2やそれ以上の照射量においても第2高調波が大きく改善されるのを確認できたが、効率面を考慮すると1×1016/cm2程度の照射量で改善の度合いも十分であると考えられた。
【0035】
また、基板による損失についても調査を行った。なお、この損失は、中間層(バッファ層)のSLs部の2DEG(二次元電子ガス)やAlN層からシリコン単結晶基板へのAlの拡散によるPチャネル化に起因するリーク電流による電力損失を言う。
上記の種類(抵抗率)ごとに各照射量における損失を比較した。第2高調波特性のときと同様に、どの種類においても、照射無、5×1011/cm2、5×1012/cm2の3つの場合(比較例)よりも、1×1014/cm2、1×1015/cm2の2つの場合(実施例)の方が改善された結果となった。
例えば8Ωcmの種類では、損失は、照射無から5×1012/cm2程度までの間では-60dBm/mm程度のところ、1×1014/cm2の場合では-80dBm/mmであり改善していた。そして、1×1014/cm2の場合を境にして、それ以上の場合にさらに大きく改善したのを確認できた。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。