(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161359
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ヘパリン類似物質含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221014BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20221014BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221014BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K31/727
A61K8/63
A61K8/41
A61Q19/00
A61P29/00
A61K47/26
A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066104
(22)【出願日】2021-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三戸 靖子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC18
4C076DD51
4C076DD69
4C076FF67
4C083AC122
4C083AC621
4C083AC622
4C083AD152
4C083AD311
4C083AD312
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD642
4C083CC02
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE10
4C083EE11
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA27
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA07
4C086ZA89
4C086ZB11
(57)【要約】
【課題】ヘパリン類似物質の細胞毒性が低減された組成物、ヘパリン類似物質の細胞毒性の低減方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ヘパリン類似物質、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ヘパリン類似物質含有組成物。(A)ヘパリン類似物質を含有する組成物に、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを配合することを特徴とする、ヘパリン類似物質の細胞毒性を低減する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヘパリン類似物質、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ヘパリン類似物質含有組成物。
【請求項2】
前記成分(A)と、前記成分(B)及び前記成分(C)の合計量との質量比が、1:0.2~4000である、請求項1に記載のヘパリン類似物質含有組成物。
【請求項3】
前記組成物中、前記成分(A)の含有量が0.01~20質量%である、請求項1または2に記載のヘパリン類似物質含有組成物。
【請求項4】
(A)ヘパリン類似物質を含有する組成物に、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを配合することを特徴とする、ヘパリン類似物質の細胞毒性を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ヘパリン類似物質含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質は、保湿、血行促進、抗炎症といった有用作用を有する成分であり、従来、外用剤等に使用されている。その一例として、ヘパリン類似物質とヒアルロン酸オリゴ糖及び/又はその塩とを含有する外用組成物(特許文献1)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにヘパリン類似物質は従来使用されている成分であるところ、本発明者は、ヘパリン類似物質が細胞毒性を有することに気付いた。このことから、本開示は、ヘパリン類似物質の細胞毒性が低減された組成物、ヘパリン類似物質の細胞毒性の低減方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、ヘパリン類似物質に、グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と、トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせることにより、ヘパリン類似物質の細胞毒性を低減できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成されたものである。すなわち、本開示は次に掲げる発明を包含する。
項1.(A)ヘパリン類似物質、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ヘパリン類似物質含有組成物。
項2.前記成分(A)と、前記成分(B)及び前記成分(C)の合計量との質量比が、1:0.2~4000である、項1に記載のヘパリン類似物質含有組成物。
項3.前記組成物中、前記成分(A)の含有量が0.01~20質量%である、項1または2に記載のヘパリン類似物質含有組成物。
項4.(A)ヘパリン類似物質を含有する組成物に、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを配合することを特徴とする、ヘパリン類似物質の細胞毒性を低減する方法。
【発明の効果】
【0006】
ヘパリン類似物質の細胞毒性が低減されたヘパリン類似物質含有組成物、ヘパリン類似物質の細胞毒性を低減方法等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、細胞毒性評価の結果を示す(紫外線非照射群)。
【
図2】
図2は、細胞毒性評価の結果を示す(紫外線非照射群)。
【
図3】
図3は、細胞毒性評価の結果を示す(紫外線照射群)。
【
図4】
図4は、細胞毒性評価の結果を示す(紫外線照射群)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に包含される実施形態について更に詳細に説明する。なお、本開示において「含有する」とは、「含有する」、「実質的にからなる」、「のみからなる」も包含する。
【0009】
本開示に包含されるヘパリン類似物質含有組成物は、(A)ヘパリン類似物質、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0010】
(A)ヘパリン類似物質は、保湿作用、血行促進作用、抗炎症作用といった有用作用を有することが知られている従来公知の成分である。ヘパリン類似物質は、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、ムコ多糖を硫酸化することにより得られたもの、ウシ、ブタ等の動物(例えばブタの気管軟骨を含む肺臓)から抽出、精製等により得られたものなど、その由来は問わない。ヘパリン類似物質として、市販品を用いてもよく、好ましくは日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種は従来公知の成分であり、より具体的には、グリチルリチン酸は公知の成分であり、その誘導体としては、薬学的または香粧品科学的に許容される、または可食性である限り制限されず、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル等が例示される。グリチルリチン酸やその誘導体の塩は、薬学的または香粧品科学的に許容される、または可食性の塩であり、化粧品、医薬品、医薬部外品の成分として用いられるものであれば制限されない。グリチルリチン酸の塩として、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム等の多価金属塩などの金属塩;アンモニウム、トリシクロヘキシルアンモニウム等のアンモニウム塩等が例示される。グリチルリチン酸の塩として、本開示を制限するものではないが、好ましくはグリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム等のアルカリ金属塩;グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム等のアンモニウム塩などが例示され、より好ましくはグリチルリチン酸二カリウムが例示される。グリチルリチン酸、その誘導体、これらの塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらは、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において抗炎症作用、抗アレルギー作用等を有することが知られており、また、香味剤として使用可能であることも知られている。
【0012】
(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種は、抗炎症作用、美白作用といった有用作用を有することが知られている従来公知の成分である。
【0013】
より具体的には、トラネキサム酸は、抗炎症作用、美白作用といった有用作用を有することが知られている従来公知の成分である。トラネキサム酸の誘導体は、薬学的または香粧品科学的に許容できることを限度として、または可食性であることを限度として、特に制限されないが、トラネキサム酸二量体、トラネキサム酸エステル、トラネキサム酸ビタミンエステル、トラネキサム酸アルキルアミド、トラネキサム酸フェニルエステル、N,N-マレオイルミノトラネキサム酸等が例示される。本開示を制限するものではないが、トラネキサム酸エステルの具体例としては、炭素数1~30のアルキルエステル等;トラネキサム酸ビタミンエステルの具体例としては、ビタミンAエステル、ビタミンEエステル、ビタミンCエステル等;トラネキサム酸アルキルアミドの具体例としては、トラネキサム酸メチルアミド、トラネキサム酸エチルアミド等;トラネキサム酸フェニルエステルの具体例としては、炭素数1~30のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基等が任意に置換していてもよいフェニルエステル等が挙げられる。これらのトラネキサム酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
トラネキサム酸やその誘導体の塩としては、薬学的または香粧品科学的に許容できることを限度として、または可食性であることを限度として、特に制限されないが、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が例示される。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本開示を制限するものではないが、成分(C)として好ましくは、トラネキサム酸、トラネキサム酸エステル、トラネキサム酸ビタミンエステル等が例示され、更に好ましくはトラネキサム酸が例示される。
【0016】
ヘパリン類似物質含有組成物における成分(A)~(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、例えば、成分(A)1質量部あたり、成分(B)を0.1~2000質量部が挙げられ、好ましくは0.1~1000質量部、より好ましくは0.2~400質量部、更に好ましくは0.3~55質量部、より更に好ましくは0.4~26質量部、特に好ましくは0.4~15質量部が挙げられる。該含有量は、これらの範囲に含まれる値の如何なる組み合わせであってもよい。後述の数値についても同様に説明される。
【0017】
ヘパリン類似物質含有組成物における成分(A)~(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、例えば、成分(A)1質量部あたり、成分(C)を0.1~2000質量部が挙げられ、好ましくは0.1~1000質量部、より好ましくは0.2~400質量部、更に好ましくは0.3~55質量部、より更に好ましくは0.4~26質量部、特に好ましくは0.4~15質量部が挙げられる。
【0018】
ヘパリン類似物質含有組成物における成分(A)~(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、例えば、成分(A)1質量部あたり、成分(B)及び(C)を合計量で0.2~4000質量部が挙げられ、好ましくは1~3200質量部、より好ましくは1~110質量部、更に好ましくは1~51質量部、より更に好ましくは2~26質量部、特に好ましくは4~15質量部が挙げられる。
【0019】
また、このようにヘパリン類似物質含有組成物における成分(A)~(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、例えば、成分(B)1質量部あたり、成分(C)を0.7~400質量部が挙げられ、好ましくは1~200質量部、より好ましくは1~100質量部、更に好ましくは2~50質量部、より更に好ましくは3~30質量部が挙げられる。
【0020】
このように、ヘパリン類似物質含有組成物における成分(A)~(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、例えば、成分(A)0.01~20質量%が挙げられ、好ましくは0.02~15質量%、より好ましくは0.05~7.5質量%、更に好ましくは0.05~1質量%、特に好ましくは0.1~0.3質量%が挙げられる。
【0021】
また、このようにヘパリン類似物質含有組成物における成分(A)~(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、例えば、成分(B)0.01~5質量%が挙げられ、好ましくは0.02~3質量%、より好ましくは0.05~1質量%が挙げられる。
【0022】
また、このようにヘパリン類似物質含有組成物における成分(A)~(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、例えば、成分(C)0.01~20質量%が挙げられ、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~10質量%、更に好ましくは0.05~1質量%、特に好ましくは0.1~0.3質量%が挙げられる。
【0023】
本開示のヘパリン類似物質含有組成物は経口、非経口の別を問わず使用してもよく、好ましくは皮膚に適用される。この観点から、該組成物として好ましくはヘパリン類似物質含有外用組成物が例示される。また、本開示のヘパリン類似物質含有組成物の形態も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよく、液状形態(液剤、乳剤、懸濁剤等)、半固形または固形形態(粉末状、顆粒状、細粒状、ゲル状、クリーム状、ペースト状、ムース状、シート状、スティック状、液状形態の凍結乾燥物等)のいずれであってもよい。このことから該組成物は、例えば、ローション剤、リニメント剤等の液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、貼付剤、散剤、顆粒剤、細粒剤等のいずれの剤形であってよい。また、これらはシート等の担体に担持させて使用されるものであってもよい。また、該組成物は、化粧水、美容液、乳液、ゲル、日焼け止め用化粧料、ボディーローション、ボディークリーム、ハンドクリーム等の各種クリーム、液状ファンデーション等の任意の用途で使用することができる。
【0024】
該組成物の使用態様も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよく、食品組成物(飲料を含む、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメント等を含む)、病者用食品を含む)、医薬組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、飼料組成物、また、食品組成物、医薬組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、飼料等への添加剤等として使用することができる。
【0025】
本開示のヘパリン類似物質含有組成物は、前述の各種形態、使用態様等における従来公知の通常の手順に従い製造すればよく、前記(A)~(C)成分と、更に必要に応じて、本開示の効果を妨げないは範囲で、薬学的に許容される成分、香粧品科学的に許容される成分、可食性の成分といった任意の成分とを混合等して製造すればよい。
【0026】
該任意の成分として、基剤(水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない)等)、賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、香料、着色料、甘味料、矯味剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、緩衝剤、結合剤、浸透促進剤、安定剤、増量剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤(カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等)、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、酸化防止剤、清涼剤、皮膜形成剤、ゲル化剤、アミノ酸、ビタミン、酵素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤(金属酸化物等)、前記成分(A)~(C)以外の各種有用成分(抗炎症剤、メラニン生成阻害剤、抗酸化剤、血行促進剤、美白剤、保湿剤、各種栄養成分等)等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、その含有量も適宜決定すればよい。このことから、該組成物は、油中水型(W/O型)、水中油型(O/W型)等のいずれであってもよい。
【0027】
本開示を制限するものではないが、任意の成分について一例を示すと、本開示のヘパリン類似物質含有組成物は水を含有するものであってもよく、この場合、該組成物中の水の含有量として、好ましくは5~99質量%が例示され、より好ましくは5~90質量%、更に好ましくは10~70質量%、より更に好ましくは10~60質量%、特に好ましくは20~50質量%が例示される。
【0028】
本開示を制限するものではないが、任意の成分について一例を示すと、本開示のヘパリン類似物質含有組成物が多価アルコールを含有する場合、本開示を制限するものではないが、多価アルコールとして炭素数2~6且つ酸素数2~3の多価アルコールが例示される。多価アルコールとして、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール等が例示される。多価アルコールとして、好ましくはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール等が例示され、より好ましくはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が例示され、更に好ましくは1,3-ブチレングリコール等が例示される。多価アルコールは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本開示の組成物が多価アルコールを含有する場合、本開示を制限するものではないが、該組製物中、多価アルコールの含有量は、好ましくは1~10質量%程度が例示され、より好ましくは2~5質量%程度が例示される。
【0030】
また、本開示を制限するものではないが、任意の成分について一例を示すと、本開示のヘパリン類似物質含有組成物はシリコーンオイルを含有してもよく、その種類は特に制限されず、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のジオルガノポリシロキサン;シクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラフェニルテトラシクロシロキサン等の環状シロキサン;高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸の環状シロキサン溶液等;メチルトリメチコン;ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン;炭素数6~50のアルキル基を有するジオルガノポリシロキサン;アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーンオイル等が例示される。
【0031】
本開示を制限するものではないが、これらのシリコーンオイルの中でも、肌馴染み、保湿感を一層向上させる点から、好ましくはジメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等が例示され、より好ましくはジメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン等が例示され、更に好ましくはジメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン等が例示され、特に好ましくはジメチルポリシロキサンが例示される。シリコーンオイルはいずれも、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
また、本開示の組成物がシリコーンオイルを含有する場合、本開示を制限するものではないが、該組製物中、シリコーンオイルの含有量は、0.05~10質量%、好ましくは0.05~7質量%、より好ましくは0.05~5質量%が例示される。
【0033】
また、任意の成分について一例を示すと、本開示の組成物はアスコルビン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。アスコルビン酸、その誘導体については、薬学的または香粧品科学的に許容される、または可食性である限り制限されないが、例えば、アスコルビン酸;アスコルビン酸2-グルコシド;アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレート等のアスコルビン酸モノアルキルエステル;アスコルビン酸モノリン酸エステル等のアスコルビン酸モノエステル;アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレート等のアスコルビン酸ジアルキルエステル;アスコルビン酸ジリン酸エステル等のアスコルビン酸ジエステル;アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレート等のトリアルキルエステル;アスコルビン酸トリリン酸エステル等のアスコルビン酸トリエステル;3-O-エチル 6-アセチル-アスコルビン酸、3-O-エチル 6-ブチルアスコルビン酸、3-O-エチル 6-ラウロイルアスコルビン酸、3-O-エチル 6-パルミトイルアスコルビン酸、3-O-エチル 6-オレオイルアスコルビン酸、3-O-エチル 6-ステアロイルアスコルビン酸、3-O-エチル 6-ベヘルミノイル-アスコルビン酸等が挙げられる。これらのアスコルビン酸及びその誘導体は、L体またはD体のいずれであってもよいが、好ましくはL体が挙げられる。
【0034】
アスコルビン酸やその誘導体の塩も、薬学的または香粧品科学的に許容される、または可食性である限り制限されず、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が例示される。
【0035】
アスコルビン酸、その誘導体、これらの塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、安定性や美白効果等の観点から、例えば、好ましくはアスコルビン酸の誘導体等、より好ましくはアスコルビン酸グルコシド等が挙げられる。
【0036】
本開示の組成物におけるアスコルビン酸、その誘導体、これらの塩の含有量については、該組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~10質量%、好ましくは0.3~8質量%、より好ましくは0.5~7質量%、更に好ましくは1~5質量%、特に好ましくは2~4質量%が挙げられる。
【0037】
本開示のヘパリン類似物質含有組成物のpHは、後述する対象者(対象動物)に適用できる範囲であれば制限されず、好ましくは皮膚に適用できる範囲において制限されない。この限りにおいて制限されないが、該組成物が液状形態の場合、25℃で、好ましくはpH5~8、より好ましくはpH5.4~7.4、更に好ましくはpH6~7が例示される。pHは製品名LAQUA F-74(株式会社堀場製作所製)により測定される。半固形形態の場合も同様に測定すればよく、固形形態の場合、pHは該条件を考慮して対象者(対象動物)に適用できる範囲、好ましくは皮膚に適用できる範囲であれば制限されない。
【0038】
該組成物の対象者(対象動物)も制限されないが、ヒト、ヒト以外の哺乳動物が例示される。ヒト以外の哺乳動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ブタ、牛、馬等の動物、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等の動物が例示される。
【0039】
本開示のヘパリン類似物質含有組成物の使用量も制限されず、対象者(対象動物)の体格、年齢、症状、適用形態、使用目的、期待される効果の程度等に応じて適宜設定すればよい。本開示を制限するものではないが、該組成物の1日適用回数は単回(1回)であってもよく複数回(例えば2回~15回)であってもよい。皮膚以外へ適用する場合やヒト以外へ適用する場合等は、該基準を考慮して適用量を適宜決定すればよい。
【0040】
本開示のヘパリン類似物質含有組成物は、このように前記成分(A)~(C)が配合されたものであって、ヘパリン類似物質に由来する細胞毒性が低減されている。また、このように該組成物は成分(A)~(C)を含有することから、好ましくは成分(A)に由来する有用作用、成分(B)に由来する有用作用、成分(C)に由来する有用作用のうちの少なくとも1つの有用作用を発揮する。成分(A)に由来する有用作用としては、保湿作用、血行促進作用、抗炎症作用等の従来公知の作用が例示される。成分(B)に由来する有用作用としては、抗炎症作用、抗アレルギー作用等の従来公知の作用が例示される。成分(C)に由来する有用作用としては、抗炎症作用、美白作用等の従来公知の作用が例示される。このことから、本開示の該組成物は、抗炎症用、保湿用、血行促進用、抗アレルギー作用、肌荒れ抑制用、美白用といった用途を目的として使用することもできる。
【0041】
本開示において細胞毒性は、後述の実施例の通りタンパク質量の低下を意味し、すなわち、細胞生存率の低下を意味するともいえ、細胞毒性は、刺激、アレルギーといった皮膚等の不具合の原因となり得る。このことから、細胞毒性を低減することは重要である。また、日常生活においては紫外線に暴露される場合が多いが、成分(A)に成分(B)と(C)とを組み合わせることにより、紫外線非暴露下だけでなく紫外線暴露下においても、成分(A)に起因する細胞毒性が低減される。このことから、成分(A)と成分(B)及び(C)との組み合わせは、日常生活における細胞毒性の低減にも有用である。
【0042】
これらのことから、本開示はまた、(A)ヘパリン類似物質を含有する組成物に、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と(C)トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを配合することを特徴とする、該組成物においてヘパリン類似物質の細胞毒性を低減する方法を提供することを包含する。該方法によれば、ヘパリン類似物質を配合した組成物において、グリチルリチン酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と、トラネキサム酸、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせることにより、該組成物においてヘパリン類似物質の細胞毒性を低減することができる。該方法に関する説明、すなわち、成分(A)~(C)、該組成物中のこれらの成分の含有量(質量比等)、該組成物に配合可能な任意の成分等の各種説明は、前述の組成物に関する説明が適用される。
【実施例0043】
以下、例を示して本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されない。
【0044】
試験例1
1.細胞毒性評価手順
正常ヒト表皮細胞(NHEK(倉敷紡績株式会社製))に紫外線B波(UVB)を照射した。照射は25mJ/cm2の条件下で行った。これを照射群とした。また、細胞に紫外線が照射されないように、該照射時にアルミ箔にてカバーしてUVBを遮蔽した以外は同様の処理を行ったものを、非照射群とした。
【0045】
次いで、ヘパリン類似物質を0.125μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mLまたは1μg/mLとなるように市販の正常ヒト表皮角化細胞増殖用培地(HuMedia KB2(倉敷紡績株式会社製)に添加、混合し、このようにして得たヘパリン類似物質添加培地、またはヘパリン類似物質を添加していない該増殖用培地をウェルに注ぎ、次いで、前記紫外線非照射群のNHEKを約2.0×104cells/mLとなるように各ウェルに接種し、24時間培養した(n=3)。
【0046】
また、前記培地に、更にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ3.13μg/mLとなるように添加した以外は前述と同様にして、培地を調製、NHEKを培地に接種、培養した(n=3)。
【0047】
また、前記増殖用培地、ヘパリン類似物質を0.125μg/mLまたは0.25μg/mLとなるように添加した前記増殖用培地に、更にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ100μg/mLとなるように添加した以外は前述と同様にして、培地を調製、NHEKを培地に接種、培養した(n=3)。
【0048】
また、紫外線照射群についても同様に試験を行った。すなわち、前記増殖用培地、ヘパリン類似物質を0.0625μg/mL、0.125μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mLまたは1μg/mLとなるように添加した前記増殖用培地をウェルに注ぎ、次いで、前記紫外線照射群のNHEKを約2.0×104cells/mLとなるように各ウェルに接種し、24時間培養した(n=3)。
【0049】
また、前記増殖用培地、ヘパリン類似物質を添加した前記増殖用培地に、更にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ3.13μg/mLとなるように添加した以外は前述と同様にして、培地を調製、NHEK(紫外線照射群)を培地に接種、培養した(n=3)。
【0050】
また、前記培地に更にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ100μg/mLとなるように添加した以外は前述と同様にして、培地を調製、NHEK(紫外線照射群)を培地に接種、培養した(n=3)。
【0051】
なお、使用したヘパリン類似物質は製品名ヘパリン類似物質(アピ株式会社製)であり、トラネキサム酸は製品名「トラネキサム酸」(丸善製薬株式会社製)である。
【0052】
培養終了後、通常の手順に従いNHEKを回収し、従来公知のタンパク定量法であるBCA法にてウェルあたりのタンパク質量を測定、算出した。BCA法は、2価の銅イオンがタンパク質により1価の銅イオンに還元され、これにより生成した1価の銅イオンがビシンコニン酸(BCA)と選択的に錯体を形成する原理を用いた方法であって、形成された錯体の562nmでの吸光度を測定することにより、タンパク質を定量する方法である。
【0053】
2.結果
結果を
図1~
図4に示す。
図1及び
図2は紫外線非照射群の結果であり、
図3及び
図4は紫外線照射群の結果である。縦軸はタンパク質量(μg/well)、横軸はヘパリン類似物質の添加量を示す。より具体的には、
図1は、非照射群における、培地にヘパリン類似物質を添加した場合;培地にヘパリン類似物質と共にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ3.13μg/mLで組み合わせた場合;培地にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ3.13μg/mL添加した場合;培地のみの場合の結果を示す。
図2は、非照射群における、培地にヘパリン類似物質を添加した場合;培地にヘパリン類似物質と共にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ100μg/mLで組み合わせた場合;培地にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ100μg/mL添加した場合;培地のみの場合の結果を示す。
図3は、照射群における、培地にヘパリン類似物質を添加した場合;培地にヘパリン類似物質と共にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ3.13μg/mLで組み合わせた場合;培地にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ3.13μg/mL添加した場合;培地のみの場合の結果を示す。
図4は、照射群における、培地にヘパリン類似物質を添加した場合;培地にヘパリン類似物質と共にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ100μg/mLで組み合わせた場合;培地にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ100μg/mL添加した場合;培地のみの場合の結果を示す。
【0054】
図1~4に示す通り、ヘパリン類似物質の添加量が多くなるにつれて、タンパク質量が減少しており、また、紫外線非照射時よりも紫外線照射時においてタンパク質量が一層減少した。このように、ヘパリン類似物質に濃度依存的な細胞毒性が認められた。
【0055】
これに対して、
図1に示す通り、ヘパリン類似物質に、グリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ3.13μg/mLで組み合わせた場合、ヘパリン類似物質のみを用いた場合と比較して、タンパク質の減少が抑制された。また、
図2に示す通り、ヘパリン類似物質に、グリチルリチン酸とトラネキサム酸とをそれぞれ100μg/mLで組み合わせた場合も、ヘパリン類似物質のみを用いた場合と比較して、タンパク質の減少が抑制された。
図3及び
図4においても、同様に、ヘパリン類似物質に、グリチルリチン酸とトラネキサム酸とを組み合わせた場合は、ヘパリン類似物質のみを用いた場合と比較して、タンパク質の減少が抑制されることが確認された。
【0056】
また、前述の通り、紫外線を照射していない場合よりも紫外線を照射した場合においてタンパク質が減少しやすいにもかかわらず、例えば
図1と
図3、また、
図2と
図4から理解できる通り、紫外線照射下においてヘパリン類似物質にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とを組み合わせることにより、紫外線非照射下よりも紫外線照射下においてタンパク質量の低減を一層抑制できる傾向が認められた。本試験例においてタンパク質量の低下は細胞生存率の低下を意味するともいえる。
【0057】
これらのことから、ヘパリン類似物質にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とを組み合わせることにより、ヘパリン類似物質に由来する細胞毒性を低減できることが分かった。また、紫外線非照射下だけでなく紫外線照射下においてもグリチルリチン酸とトラネキサム酸とを組み合わせることにより、ヘパリン類似物質に起因する細胞毒性を低減できた。このことから、紫外線暴露を避けることが難しい日常環境においても、ヘパリン類似物質にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とを併用することにより、ヘパリン類似物質に起因する細胞毒性を低減できることが分かった。これらのことから、ヘパリン類似物質にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とを組み合わせて用いることは、皮膚等の適用部位への細胞毒性による悪影響が抑制された組成物の提供に有用であるといえる。
【0058】
処方例
表1に示す処方の組成物を調製した。いずれの処方についても、ヘパリン類似物質にグリチルリチン酸とトラネキサム酸とを組み合わせて用いることにより、皮膚等の適用部位への細胞毒性による悪影響が抑制されていた。
【0059】