(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161523
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】抵抗器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 3/06 20060101AFI20221014BHJP
H01C 3/10 20060101ALI20221014BHJP
H01C 1/012 20060101ALI20221014BHJP
H01C 17/02 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01C3/06
H01C3/10
H01C1/012
H01C17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066410
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福地 圭介
【テーマコード(参考)】
5E028
5E032
【Fターム(参考)】
5E028BA02
5E028BB01
5E028CA12
5E032BA02
5E032BB01
5E032CA12
5E032CC04
5E032CC05
(57)【要約】
【課題】抵抗導体が所望の形状とは異なる形状になることを抑制することができる抵抗器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】抵抗器は、蛇行形状を有する抵抗導体3と、抵抗導体3を蛇行形状に維持する一対のホルダ2とを備える。一対のホルダ2のそれぞれには、凸部221と凹部222とが一方向Xに交互に設けられた凹凸部22が形成されている。一対のホルダ2は、互いの凹凸部22同士が抵抗導体3を介して嵌合されることで抵抗導体3を蛇行形状に維持している。抵抗器1の製造方法は、抵抗導体3に張力を付与する工程と、張力が付与された状態の抵抗導体3を一対のホルダ2の凹凸部22によって挟み込むことによって抵抗導体3を蛇行形状に形成する工程と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行形状を有する抵抗導体と、
前記抵抗導体を前記蛇行形状に維持する一対のホルダと、を備え、
前記一対のホルダのそれぞれには、凸部と凹部とが一方向に交互に設けられた凹凸部が形成されており、
前記一対のホルダは、互いの前記凹凸部同士が前記抵抗導体を介して嵌合されることで前記抵抗導体を前記蛇行形状に維持している、
抵抗器。
【請求項2】
前記凹凸部の前記凸部は、突出先端側の端部における前記一方向の両側の角部が曲面状に形成されている、
請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記凸部は、突出先端側に向かうほど、前記一方向の幅が小さくなる、
請求項1又は2に記載の抵抗器。
【請求項4】
前記一対のホルダのそれぞれは、前記凸部が突出した側と反対側の面である背面と前記凹部との間の、前記凸部の突出方向における間隔が、前記凸部の突出長さよりも短い、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記抵抗導体を介した前記一対のホルダの嵌合状態を維持するための固定部材をさらに備える、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抵抗器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の抵抗器の製造方法であって、
前記抵抗導体に張力を付与する工程と、
張力が付与された状態の前記抵抗導体を前記一対のホルダの前記凹凸部によって挟み込むことによって前記抵抗導体を前記蛇行形状に形成する工程と、を備える、
抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同一平面上で蛇行形状に折り返すよう屈曲形成された金属抵抗線と、金属抵抗線を埋設するセメント材とを備える抵抗器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の抵抗器においては、蛇行形状の金属抵抗線をセメント材の内側に埋設させることによって金属抵抗線の蛇行形状が維持され得る。しかしながら、抵抗値を高めるために金属抵抗線の断面積を小さくすると、金属抵抗線の強度が低下する。このような場合、特許文献1に記載の抵抗器においては、例えば金属抵抗線が蛇行形状に形成された後、セメント材に埋設されるまでの工程などにおいて、金属抵抗線に力が加わり、金属抵抗線が所望の蛇行形状から変形するおそれが考えられる。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、抵抗導体が所望の形状とは異なる形状になることを抑制することができる抵抗器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、蛇行形状を有する抵抗導体と、前記抵抗導体を前記蛇行形状に維持する一対のホルダと、を備え、前記一対のホルダのそれぞれには、凸部と凹部とが一方向に交互に設けられた凹凸部が形成されており、前記一対のホルダは、互いの前記凹凸部同士が前記抵抗導体を介して嵌合されることで前記抵抗導体を前記蛇行形状に維持している、抵抗器を提供する。
【0007】
本発明は、前記の目的を達成するため、前記抵抗器の製造方法であって、前記抵抗導体に張力を付与する工程と、張力が付与された状態の前記抵抗導体を前記一対のホルダの前記凹凸部によって挟み込むことによって前記抵抗導体を前記蛇行形状に形成する工程と、を備える、抵抗器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抵抗導体が所望の形状とは異なる形状になることを抑制することができる抵抗器及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態における、抵抗器の正面図である。
【
図2】第1の実施の形態における、抵抗器の側面図である。
【
図3】第1の実施の形態における、外装樹脂を省略した抵抗器の正面図である。
【
図4】第1の実施の形態における、一対のホルダ、抵抗導体、及び一対の抵抗端子と、第1及び第2のストッパーとの分解斜視図である。
【
図5】第1の実施の形態における、一対のホルダ、抵抗導体、及び一対の抵抗端子の正面図である。
【
図6】第1の実施の形態における、ホルダの斜視図である。
【
図7】第1の実施の形態における、張力を印加した抵抗導体に一対のホルダを組み付ける様子を示す正面図。
【
図8】第1の実施の形態における、抵抗導体に一対のホルダが組み付いた様子を示す正面図。
【
図9】第1の実施の形態における、モータの全体構成を示す模式図である。
【
図10】第1の実施の形態における、モータ用配線部品の背面図である。
【
図11】第1の実施の形態における、モータ用配線部品の側面図である。
【
図12】第1の実施の形態における、モータ用配線部品の回路図である。
【
図13】第2の実施の形態における、一対のホルダ、抵抗導体、及び一対の抵抗端子の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図12を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(抵抗器1)
図1は、本形態の抵抗器1の正面図である。
図2は、本形態の抵抗器1の側面図である。本形態の抵抗器1は、一対のホルダ2と抵抗導体3と一対の抵抗端子4と第1及び第2のストッパー51,52と外装樹脂6とを備える。一対のホルダ2は、抵抗導体3を保持している。抵抗導体3は、その両端を除く部位であって一対のホルダ2に挟まれた部位が、蛇行形状を呈している。一対の抵抗端子4は、抵抗導体3の両端にそれぞれ接続されている。第1及び第2のストッパー51,52は、一対のホルダ2に組み付けられ、抵抗導体3を介した一対のホルダ2の嵌合状態を維持する。外装樹脂6は、一対のホルダ2、抵抗導体3、一対の抵抗端子4、及び第1及び第2のストッパー51,52を内側に封止している。
【0012】
図3は、外装樹脂(
図1及び
図2の符号6参照)を省略した抵抗器1の正面図である。
図4は、一対のホルダ2、抵抗導体3、及び一対の抵抗端子4と、第1及び第2のストッパー51,52との分解斜視図である。
図5は、一対のホルダ2、抵抗導体3、及び一対の抵抗端子4の正面図である。
図6は、ホルダ2の斜視図である。
【0013】
図5に示すごとく、一対のホルダ2は、互いに同じ形状を有する。ホルダ2は、基部21と、基部21から一方側に突出する複数の凸部221とを有する。基部21は、略矩形柱状に形成されている。複数の凸部221は、基部21の長手方向に並ぶよう形成されている。そして、ホルダ2には、複数の凸部221の並び方向における凸部221の両側に、凸部221の突出先端側の端部221aよりも基部21側に凹んだ凹部222が形成されている。すなわち、ホルダ2における基部21の一方側の部位は、複数の凸部221及び複数の凹部222を備える凹凸部22となっている。以後、凸部221と凹部222とが交互に並ぶ方向をX方向といい、基部21から各凸部221が突出する方向をY方向といい、X方向とY方向との双方に直交する方向をZ方向という。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する方向である。
【0014】
図5に示すごとく、各ホルダ2において、複数の凸部221は、基部21からの突出長さLが互いに同等である。凸部221の突出長さLは、凸部221のX方向の最大幅(すなわち凸部221の根元部分の幅)よりも大きく、本形態においては、凸部221のX方向の最大幅よりも2倍以上大きい。
【0015】
図5に示すごとく、基部21における凸部221が突出した側と反対側の面を背面211とする。背面211は、X方向とZ方向との双方に平行な面である。Y方向において、背面211と凹部222との間のY方向の間隔Iは、凸部221の突出長さLよりも短い。背面211と凹部222との間のY方向の間隔Iとは、Y方向における、凹部222と背面211との間の最短距離である。背面211と凹部222との間のY方向の間隔Iは、凸部221の突出長さLの半分の長さよりも短いことが好ましく、凸部221の突出長さLの1/5の長さよりも短いことがさらに好ましい。これらの場合には、Y方向における基部21の長さが大きくなることに起因して抵抗器1の全体が大型化することを抑制することができる。本形態においては、複数の凹部222と複数の凸部221とが存在するところ、複数の凹部222と背面211との間のそれぞれのY方向の間隔Iは、複数の凸部221のそれぞれの突出長さLよりも短い。
【0016】
図5及び
図6に示すごとく、凸部221は、基部21からの突出先端側の端部221aに向かうほど、X方向の幅が狭くなるよう形成されている。これにより、凸部221のX方向の両側の側面221cは、X方向における凸部221の突出先端側へ向かうにつれて、互いに近づくよう傾斜した傾斜面となっている。また、凸部221は、突出先端側の端部221aにおけるX方向の両側の角部221bが、曲面状に形成されている。Z方向から見たとき、凸部221の突出先端側の端部221aは、円弧状に形成されている。
【0017】
図5に示すごとく、一対のホルダ2は、互いの凹凸部22同士が、抵抗導体3を介して互いに凹凸嵌合している。すなわち、一対のホルダ2のそれぞれの複数の凸部221は、抵抗導体3を介して相手方のホルダ2の複数の凹部222に挿入されている。凹部222の底面222aは、当該凹部222に挿入された相手方のホルダ2の凸部221における突出先端側の端部221aに沿って湾曲している。そして、互いに組み合わされた一対のホルダ2の対向領域(すなわち抵抗導体3が配される領域)には、角状に屈曲した領域が存在しない。
【0018】
抵抗導体3は、薄帯状に形成されている。抵抗導体3は、一対のホルダ2に保持されていない自由状態において、自重によって撓む程度に薄く形成されている。なお、抵抗導体3の厚みは、これに限られない。例えば、抵抗導体3の厚みは、自由状態において抵抗導体3の形状が維持される程度の厚みであって、抵抗導体3がその厚み方向からの力を受けると容易に撓み得る程度の厚みであってもよい。
【0019】
抵抗導体3は、抵抗値が所定の値となるよう、材料(すなわち体積抵抗率)、長さ、断面積が設定されている。抵抗導体3の材料は、特に限定されないが、例えば、鉄を主成分として含むFe基アモルファス合金を薄帯状に形成したものを採用することができる。抵抗導体3の一例として、日立金属株式会社製のアモルファス合金薄帯である、「2605HB1M」、「2605SA1」、「2605S3A」、「2705M」、「2714A」、「2826MB」等を用いることが可能である。抵抗導体3の他の例として、ニッケル及びクロムを含有するニクロムを薄い帯状に形成したものを採用することも可能である。抵抗導体3を撓みやすくする観点から、一例として、抵抗導体3の厚みを100μm以下とすることが好ましく、1μm以上、20μm以下とすることがより好ましい。
【0020】
図5に示すごとく、抵抗導体3は、一対の凹凸部22の間に介在する部位を有する。これにより、抵抗導体3は、凹凸部22の表面に沿って蛇行した形状に形成される。すなわち、抵抗導体3は、Y方向に蛇行しつつX方向の一方側に延びるような蛇行形状を有する。抵抗導体3のZ方向の幅は、ホルダ2の凹凸部22のZ方向の幅以下であり、抵抗導体3の両端を除く部位は、Z方向において一対のホルダ2からはみ出ないよう一対のホルダ2の対向領域に収まっている。そして、抵抗導体3の両端は、一対のホルダ2からX方向の両外側に露出して、一対の抵抗端子4に接続されている。
【0021】
抵抗端子4は、棒状の導体からなる。本形態において、抵抗端子4は、L字状に屈曲した形状を有する。抵抗端子4の形状は、これに限られず、抵抗端子4に接続される相手部品の配置箇所等に合わせて適宜変更され得る。抵抗端子4の一端に、一対のホルダ2から露出した抵抗導体3の端部が巻き回されている。抵抗端子4と抵抗端子4に巻き回された抵抗導体3とは、例えばかしめ、接着、抵抗溶接などによって互いに固定されている。一対の抵抗端子4は、X方向において、一対のホルダ2を挟んで互いに反対側に位置している。また、一対の抵抗端子4は、Y方向において、一対のホルダ2の両端位置付近にそれぞれ配されている。
【0022】
図3に示すごとく、一対のホルダ2は、抵抗導体3を挟んだ状態で、互いに離れないよう第1及び第2のストッパー51,52によって保持されている。第1及び第2のストッパー51,52は、抵抗導体3を介した一対のホルダ2の嵌合状態を維持するための固定部材を構成している。
【0023】
図4に示すごとく、第1及び第2のストッパー51,52のそれぞれは、一対のホルダ2とZ方向に対向する矩形板状の対向壁501と、対向壁501の四隅からZ方向の一方側に突出した係合片502とを備える。係合片502は、基部21に設けられた係合凹部212に、スナップフィットにより係合されている。第1のストッパー51と第2のストッパー52は、一対のホルダ2を挟んで互いに反対側から、一対のホルダ2に組み付けられている。
【0024】
第1のストッパー51は、第2のストッパー52よりもX方向の寸法が小さい。そして、第1のストッパー51は、第2のストッパー52のX方向の両側の係合片502の間の位置に配されている。これによって第1のストッパー51と第2のストッパー52とが干渉しないようになっている。
図1及び
図2に示すごとく、一対のホルダ2、抵抗導体3、一対の抵抗端子4、第1のストッパー51及び第2のストッパー52は、外装樹脂6によって覆われている。
【0025】
外装樹脂6は、外装樹脂6を成形するための成形型の内側に、一対のホルダ2、抵抗導体3、一対の抵抗端子4、第1のストッパー51及び第2のストッパー52を配置した状態で成形型内に外装樹脂6を構成する溶融状態の樹脂を注入して硬化させるインサート成形によって成形される。外装樹脂6は、第1及び第2のストッパー51,52と同様、抵抗導体3を介した一対のホルダ2の嵌合状態を維持するための固定部材を構成している。外装樹脂6は、Z方向に厚みを有するとともに、Z方向から見たときの形状がX方向に長尺な長方形となっている。外装樹脂6は、抵抗器1の外形の小型化を図るべく、その表面と、外装樹脂6内に埋設された部品との間の厚みが可能な限り薄くなるよう形成される。一対の抵抗端子4は、抵抗導体3に接続された側の端部が外装樹脂6内に埋設されており、その反対側の端部が外装樹脂6から外部に突出している。
【0026】
一対のホルダ2、第1のストッパー51、第2のストッパー52、及び外装樹脂6は、抵抗器1の使用時に抵抗導体3に発生する熱を抵抗器1の外側に放出しやすくすべく、熱伝導の高い樹脂によって構成され得る。具体的には、一対のホルダ2、第1のストッパー51、第2のストッパー52、及び外装樹脂6のそれぞれを構成する材料は、PA6(ポリアミド6)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などのエンジニアリングプラスチック又はPPS(ポリフェニレンサルファイド)などのスーパーエンジニアリングプラスチックに、絶縁性が高く熱伝導率が高いセラミックス材料(熱伝導性フィラー)を混ぜた絶縁放熱材料とすることができる。これらの絶縁放熱材料は、一般的なプラスチック材料の熱伝導率(約0.2W/m/K)に比べて、1~10W/m/Kと5~50倍程度の高い熱伝導率を有する。
【0027】
(抵抗器1の製造方法)
次に、本形態の抵抗器1の製造方法の一例について説明する。
本形態の抵抗器1の製造方法においては、まず、
図7に示すごとく、抵抗導体3をその長手方向の両側に引っ張り、直線状にする。そして、張力が印加された状態の抵抗導体3を、当該抵抗導体3の厚み方向の両側から、一対のホルダ2の凹凸部22によって挟み込む。すなわち、一対のホルダ2の間に張力が印加された状態の抵抗導体3を介在させつつ、一対のホルダ2を互いに近付け、一対のホルダ2のそれぞれの複数の凸部221を、相手方のホルダ2の複数の凹部222に挿入させる。これにより、
図8に示すごとく、抵抗導体3は、一対の凹凸部22のそれぞれの表面に沿った蛇行形状に形成される。ここで、抵抗導体3は、張力が印加された状態で一対のホルダ2の凹凸部22によって挟み込まれるため、縒れずに凹凸部22の表面に沿うよう形成される。
【0028】
次いで、第1のストッパー51及び第2のストッパー52のそれぞれを、互いに組み付いた一対のホルダ2にスナップフィットにより固定する。また、一対のホルダ2からはみ出ている抵抗導体3の両端部を、一対の抵抗端子4のそれぞれに巻き付け、抵抗端子4と抵抗導体3とを、かしめ、接着、抵抗溶接などによって固定する。これにより、
図3に示す状態となる。
【0029】
次いで、
図3に示す状態の、一対のホルダ2、抵抗導体3、一対の抵抗端子4、第1のストッパー51及び第2のストッパー52を、外装樹脂6を形成する成形型内に配置し、当該成形型内に外装樹脂6を構成する溶融状態の樹脂を注入して硬化させる。これにより、
図1及び
図2に示す、本形態の抵抗器1が製造され得る。
【0030】
(モータ11)
図9は、モータ11の全体構成を示す模式図である。次に、本形態の抵抗器1を、モータ11のステータコイル112dとモータ11の端子台113とをつなぐモータ用配線部品8を構成するものとして用いた例につき説明する。モータ11は、電力によって駆動される電気自動車、ハイブリッド車等の車両に搭載される。
【0031】
モータ11は、ロータ(回転子)111と、ロータ111を囲うように配置されたステータ112(固定子)と、端子台113と、を備えている。ロータ111は、軟磁性金属からなるロータコア111aに複数の磁石111bが埋め込まれて構成されており、中心部に挿通されたシャフト114と共に回転する。ステータ112は、軟磁性金属からなるステータコア112aと、複数のコイル片112bとを有している。
【0032】
以下の説明では、シャフト114の回転軸線Oを通りかつ回転軸線Oに対して垂直な方向を径方向といい、シャフト114の回転方向を周方向という。
【0033】
図示していないが、ステータコア112aは、円筒状のバックヨークと、バックヨークから径方向内方に向かって突出した複数のティースとを一体に有している。周方向に隣り合うティースの間には、スロットが形成されている。それぞれのコイル片112bは、ステータコア112aのスロットに収容され保持されている。
【0034】
また、コイル片112bは、銅、アルミニウム等の良導電性を有する導電性金属112Mと、導電性金属112Mの表面を被覆する電気絶縁性の被覆層112Iとを有する。本形態では、導電性金属112Mが断面矩形状の平角単線であり、被覆層112Iがエナメル被覆からなる。コイル片112bの端部であるコイルエンド112cでは、被覆層112Iが除去されて導電性金属112Mが露出している。各コイル片112bは、コイルエンド112c同士が溶接され、電気角の位相が所定角度ずれた2組の三相(U相,V相,及びW相)ステータコイル112dを構成している。
【0035】
また、モータ11は、ステータ112を収容するハウジング(図略)と、ハウジングに固定された端子台113と、を備えている。端子台113は、ハウジングに固定された樹脂からなる基台113aと、インバータ12から三相交流電流(パルス幅変調によるパルス状の信号)が供給される3つの電極113bとを有している。
【0036】
さらに、モータ11は、ステータ112のコイルエンド112cと端子台113の電極113bとを接続するモータ用配線部品8を備えている。モータ用配線部品8は、インバータから端子台113の電極113bを介して供給された三相交流電流を、モータ11の各相のステータコイル112dに供給する。
【0037】
図10は、モータ用配線部品8の背面図である。
図11は、モータ用配線部品8の側面図である。
図12は、モータ用配線部品8の回路図である。モータ用配線部品8は、配線ユニット80にサージ抑制装置7を組み付けてなる。
図12に示すごとく、配線ユニット80は、モータ11とインバータ12とを電気的に接続するための配線を構成するものである。配線ユニット80は、インバータ12から出力されるU相電流が流れるU相配線部81uと、インバータ12から出力されるV相電流が流れるV相配線部81vと、インバータ12から出力されるW相電流が流れるW相配線部81wとを有する。以後、U相配線部81u、V相配線部81v、及びW相配線部81wを特に区別しない場合は、単に配線部81という。
【0038】
配線部81は、一端がステータ112のコイルエンド112cに電気的に接続される2本の導電線812と、2本の導電線812の他端に圧着された配線端子801とを備える。配線部81の2本の導電線812の一端は、ステータコア112aに巻回された各層の2組のステータコイル112dにそれぞれ接続されている。配線部81の2本の導電線812の他端は、配線端子801のバレル801a内にまとめて挿入されるとともにバレル801aを2本の導電線812に向けてかしめることにより、配線端子801に固定されている。配線端子801は、端子台113の電極113bに接続される。導電線812の両端部を除く部位は、絶縁被覆811によって被覆されている。そして、配線ユニット80に、サージ抑制装置7が取り付けられている。
【0039】
サージ抑制装置7は、本形態の抵抗器1とコンデンサ71とを直列に接続した直列回路部70を3つ有する。直列回路部70において、抵抗器1の一対の抵抗端子4のうち、一方の抵抗端子4は、2本の導電線812と共にバレル801aによってかしめられており、抵抗器1の他方の抵抗端子4は、コンデンサ71の一対のコンデンサ端子711のうちの一方に接続されている。そして、3つの直列回路部70のコンデンサ71の他方のコンデンサ端子711は、互いに電気的に接続されることでスター結線されている。3つのコンデンサ端子711は、バスバ72を介して互いに電気的に接続されている。図示は省略するが、3つの直列回路部70及びバスバ72は、一体にモールドされていてもよい。
【0040】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態の抵抗器1において、一対のホルダ2は、互いの凹凸部22同士が抵抗導体3を介して嵌合されることで抵抗導体3を蛇行形状に維持している。これにより、容易に、抵抗導体3を所望の蛇行形状に維持することができる。
【0041】
また、凹凸部22の凸部221は、突出先端側の端部221aにおけるX方向の両側の角部221bが曲面状に形成されている。それゆえ、一対のホルダ2の凹凸部22同士を、抵抗導体3を介して嵌合させる際、抵抗導体3が破れることを抑制することができる。例えば、凸部221の突出先端側の端部221aにおけるX方向の両側の角部221bが鋭利な角状に形成されている場合、一対のホルダ2の凹凸部22同士を、抵抗導体3を介して嵌合させる際、抵抗導体3が凸部221の角部221bに引っ掛かって破れるおそれが考えられる。そこで、凹凸部22の凸部221の突出先端側の端部221aにおけるX方向の両側の角部221bを曲面状に形成することにより、前述のような破れが生じることを抑制することができる。
【0042】
また、凸部221は、突出先端側に向かうほど、X方向の幅が小さくなる。それゆえ、ホルダ2において隣り合う、凸部221の突出先端側の端部221a同士の間隔を広くすることができ、その結果、一対のホルダ2の凹凸部22同士の嵌合を容易にすることができる。また、凸部221の根元部分の幅を大きくすることができるため、凸部221の強度を向上させることができる。
【0043】
また、一対のホルダ2のそれぞれは、背面211と凹部222とのY方向の間隔Iが、凸部221の突出長さLよりも短い。それゆえ、基部21のY方向の長さが大きくなり過ぎることを防止することができ、抵抗器1全体のY方向の小型化を図ることができる。
【0044】
また、本形態の抵抗器1は、抵抗導体3を介した一対のホルダ2の嵌合状態を維持するための固定部材(第1のストッパー51、第2のストッパー52、及び外装樹脂6)をさらに備える。それゆえ、一対のホルダ2の嵌合状態を確実に維持することができる。
【0045】
また、本形態において、一対のホルダ2は、互いに同形状である。それゆえ、形状が異なる2種類のホルダを用意する必要がなく、一対のホルダ2の製造を容易にすることができる。
【0046】
また、本形態の抵抗器1の製造方法においては、張力が付与された状態の抵抗導体3を一対のホルダ2の凹凸部22によって挟み込むことによって抵抗導体3を蛇行形状に形成する工程を備える。それゆえ、蛇行形状の抵抗導体3を、容易に製造することができる。
【0047】
以上のごとく、本形態によれば、抵抗導体が所望の形状とは異なる形状になることを抑制することができる抵抗器及びその製造方法を提供することができる。
【0048】
なお、本形態の抵抗器1は、固定部材として、第1のストッパー51、第2のストッパー52、及び外装樹脂6を備えるが、これに限られない。例えば、固定部材を、外装樹脂6のみで構成することも可能であるし、固定部材を第1及び第2のストッパー51,52のみで構成することも可能である。また、固定部材は、一対のホルダ2の嵌合状態を維持することが可能であれば、本形態に示した第1のストッパー51、第2のストッパー52、及び外装樹脂6以外のものを採用することも可能である。さらに、抵抗器1は、固定部材を備えていなくてもよい。この場合であっても、一対のホルダ2は、互いの凹凸部22同士において抵抗導体3を介して凹凸嵌合することにより、抵抗導体3を介した互いの摩擦力によって嵌合状態が維持され得る。
【0049】
また、一対のホルダ2は、抵抗導体3との間の電気的絶縁性が確保されていれば、金属などの導体によって構成することも可能である。
【0050】
[第2の実施の形態]
図13は、本形態の抵抗器1であって、第1及び第2のストッパー(
図1乃至
図4の符号51,52参照)、及び外装樹脂(
図1及び
図2の符号6参照)の図示を省略したものである。
【0051】
本形態の抵抗器1は、第1の実施の形態に対して、ホルダ2の凹凸部22の形状を変更したものである。本形態において、ホルダ2の凸部221のX方向の両側の側面221cは、基部21からY方向に沿ってまっすぐ形成されている。また、ホルダ2の凸部221の突出先端側の端部221aは、Z方向から見たとき、円弧状に形成されている。また、凹部222の底面222aは、当該凹部222に挿入された相手方のホルダ2の凸部221における突出先端側の端部221aに沿って円弧状に湾曲している。
【0052】
本形態のその他の構成は、第1の実施の形態の構成と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0053】
本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0054】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0055】
[1]蛇行形状を有する抵抗導体(3)と、前記抵抗導体(3)を前記蛇行形状に維持する一対のホルダ(2)と、を備え、前記一対のホルダ(2)のそれぞれには、凸部(221)と凹部(222)とが一方向(X)に交互に設けられた凹凸部(22)が形成されており、前記一対のホルダ(2)は、互いの前記凹凸部(22)同士が前記抵抗導体(3)を介して嵌合されることで前記抵抗導体(3)を前記蛇行形状に維持している、抵抗器(1)。
【0056】
[2]前記凹凸部(22)の前記凸部(221)は、突出先端側の端部(221a)における前記一方向(X)の両側の角部(221b)が曲面状に形成されている、前記[1]に記載の抵抗器(1)。
【0057】
[3]前記凸部(221)は、突出先端側に向かうほど、前記一方向(X)の幅が小さくなる、前記[1]又は[2]に記載の抵抗器(1)。
【0058】
[4]前記一対のホルダ(2)のそれぞれは、前記凸部(221)が突出した側と反対側の面である背面(211)と前記凹部(222)との間の、前記凸部(221)の突出方向(Y)における間隔(I)が、前記凸部(221)の突出長さ(L)よりも短い、前記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の抵抗器(1)。
【0059】
[5]前記抵抗導体(3)を介した前記一対のホルダ(2)の嵌合状態を維持するための固定部材(51,52,6)をさらに備える、前記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の抵抗器(1)。
【0060】
[6]前記[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の抵抗器(1)の製造方法であって、前記抵抗導体(3)に張力を付与する工程と、張力が付与された状態の前記抵抗導体(3)を前記一対のホルダ(2)の前記凹凸部(22)によって挟み込むことによって前記抵抗導体(3)を前記蛇行形状に形成する工程と、を備える、抵抗器(1)の製造方法。
【0061】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…抵抗器
2…ホルダ
211…背面
22…凹凸部
221…凸部
221a…凸部の突出先端側の端部
221b…凸部の角部
222…凹部
3…抵抗導体
51…第1のストッパー(固定部材)
52…第2のストッパー(固定部材)
6…外装樹脂(固定部材)
I…間隔
L…突出長さ