(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161533
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20221014BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01L23/30 D
H01L23/30 B
H01L23/50 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066431
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】天童 一良
(72)【発明者】
【氏名】濱上 弘行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英一
【テーマコード(参考)】
4M109
5F067
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA01
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EA07
4M109EC04
4M109EC09
4M109FA07
5F067AA04
5F067AA07
5F067BB14
5F067CC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吸湿後リフローにおいて、インナーリード及び半導体素子と封止材間に剥離及びクラックが生じ難い、半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、リードフレーム1のダイパッド1aに半導体素子2を固着してワイヤーボンディングを行い、インナーリードの周面及び半導体素子2とダイパッド1aの周面に樹脂コート層4を形成した後、封止樹脂6を用いて封止した半導体装置を断面視したときに、半導体素子2側のインナーリード上面の外縁からアウターリードに向かって水平方向に20μmの位置までの樹脂コート層4の厚さと、水平方向に20μmの位置以降の樹脂コート層4の厚さとの比及び半導体素子2側のインナーリードの外縁から端面に沿う方向に向かって鉛直下向きに20μmの位置までの樹脂コート層4の厚さと、端面に沿う方向に20μmの位置以降の樹脂コート層4の厚さとの比を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレームのダイパッドに半導体素子を固着してワイヤーボンディングを行い、前記半導体素子と前記ダイパッドの接合部、及びボンディングワイヤーの接合部を除く、インナーリードの周面及び半導体素子とダイパッドの周面に樹脂コート層を形成した後、封止樹脂を用いて封止した半導体装置であって、前記半導体装置を断面視したときに、前記半導体素子側のインナーリード上面の外縁からアウターリードに向かって水平方向に20μmの位置までの前記樹脂コート層の平均厚さをtH1aとし、前記水平方向に20μmの位置以降の前記樹脂コート層の平均厚さをtH1bとしたときに、tH1a/tH1b≧0.7であり、前記半導体装置を断面視したときに、前記半導体素子側のインナーリードの外縁から、端面に沿う方向に向かって鉛直下向きに20μmの位置までの前記樹脂コート層の平均厚さをtV1aとし、端面に沿う方向に20μmの位置以降の前記樹脂コート層の平均厚さをtV1bとしたときに、tV1a/tV1b≧0.7であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体装置を断面視したときに、前記半導体素子上面の外縁から相対するもう一方の外縁方向に向かって水平方向に20μmの位置までの前記樹脂コート層の平均厚さをtH2aとし、上記水平方向に20μmの位置以降の前記樹脂コート層の平均厚さをtH2bとしたときに、tH2a/tH2b≧0.7であり、前記半導体装置を断面視したときに、前記半導体素子上面の外縁から端面に沿う方向に向かって、鉛直下向きに20μmの位置までの前記樹脂コート層の平均厚さをtV2aとし、端面に沿う方向に20μmの位置以降の前記樹脂コート層の平均厚さをtV2bとしたときに、tV2a/tV2b≧0.7である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂コート層の平均厚さが、5μm~50μmの範囲である、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂コート層の線膨張係数が80ppm/K以下であり、弾性率が0.5GPa~5.0GPaの範囲である請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁樹脂コート層のガラス転移温度(Tg)が200℃以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂コート層が、ポリアミド、ポリアミドイミド、及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法で製造された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージなどの半導体装置においては、小型化が進むと同時に、はんだの鉛フリー化によって、はんだのリフロー温度が260℃まで引き上げられており、リフロー工程においてパッケージが吸湿している場合、封止樹脂層とリードフレーム間及び半導体素子間の剥離や封止樹脂層にクラックが発生することがある。その結果、半導体パッケージの内部損傷が引き起こされ、電気接続不良及び部品の機能不全となる恐れがある。
【0003】
また、自動車部品においても電動化が進み、パワーICなどの半導体装置が数多く自動車に搭載されている。車載用半導体装置には、AEC-Q100のように車載用IC(半導体装置)の品質を保証する認定基準・規格が設けられ、グレードにより民生用途と比較して、より厳しい信頼性条件が要求されている。また、車載用に限らず民生用途の半導体装置においても、低コスト化のため防湿梱包の省略が要求され、リフロー工程時の吸湿による耐性レベル(JEDEC MSL)向上の要求は高まっており、最高レベルのJEDEC MSL1においては、フロワーライフ(水分吸湿寿命)が30℃、85%RH以下で無制限と規定されている。
【0004】
これに対し、リードフレーム表面にAgめっきを含む4層構造とすることが提案されている(特許文献1)。これにより、JEDEC MSL2a(60℃/60%RH×120h)、リフロー条件:260℃×3回にて封止材とリードフレーム間に剥離が生じていない。しかし、吸湿後の耐リフロー性要求は高度化しており、より高いレベルでの達成が求められるが、特許文献1では、JEDEC MSL2(85℃/60%RH×168h)以上の条件において検討されていない。
【0005】
また、吸湿後のリフローにおける半導体パッケージ内部の剥離改善に向けて、ポリイミド樹脂などの樹脂材料を用いて、半導体素子(シリコン)との密着性を向上することで、吸湿後のリフローにおける剥離を防止する方法が検討されている(特許文献2)。これにより、JEDEC MSL 1(85℃/85%RH×168h)後においても、シリコンに対して高い接着性を示している。半導体装置において、ポリイミド樹脂などからなる樹脂コート層による高密着性及び応力緩和性を実現するには、応力が集中し易いリードフレーム端部及び半導体素子端部においても、均一な樹脂コート膜が形成されることが好ましい。しかし、特許文献2では、均一なコート膜が得られるポリイミド膜の作製方法について言及されているが、半導体装置における樹脂コート膜の構成までは言及されておらず、応力が集中し易いリードフレーム端部及び半導体素子端部において、応力緩和効果が十分に発揮されるかを考慮できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5762081号公報
【特許文献2】特開2010-70645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献に開示された技術と本発明のアプローチの違いは半導体装置の製造方法に関するものであり、特に樹脂コート層の構成に着眼したものである。
高密着性及び応力緩和性に優れる樹脂コート層を半導体装置に塗布しても、応力が集中し易いインナーリード端部及び半導体素子端部において、十分な膜厚が確保されていないと、高密着性及び応力緩和効果が得られず、耐リフロー性が低下する傾向がある。
本発明は上記事情に鑑み、吸湿後のリフローにおいて、インナーリード及び半導体素子と封止材間に剥離及びクラックが生じ難い、半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1>リードフレームのダイパッドに半導体素子を固着してワイヤーボンディングを行い、前記半導体素子と前記ダイパッドの接合部、及びボンディングワイヤーの接合部を除く、インナーリードの周面及び半導体素子とダイパッドの周面に樹脂コート層を形成した後、封止樹脂を用いて封止した半導体装置であって、前記半導体装置を断面視したときに、前記半導体素子側のインナーリード上面の外縁からアウターリードに向かって水平方向に20μmの位置までの前記樹脂コート層の平均厚さをtH1aとし、前記水平方向に20μmの位置以降の前記樹脂コート層の平均厚さをtH1bとしたときに、tH1a/tH1b≧0.7であり、前記半導体装置を断面視したときに、前記半導体素子側のインナーリードの外縁から、端面に沿う方向に向かって鉛直下向きに20μmの位置までの前記樹脂コート層の平均厚さをtV1aとし、端面に沿う方向に20μmの位置以降の前記樹脂コート層の平均厚さをtV1bとしたときに、tV1a/tV1b≧0.7であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
<2>上記半導体装置であって、半導体装置を断面視したときに、半導体素子上面の外縁から対向するもう一方の外縁方向に向かって水平方向に20μmの位置までの上記樹脂コート層の平均厚さをtH2aとし、上記水平方向に20μmの位置以降の上記樹脂コート層の平均厚さをtH2bとしたときに、tH2a/tH2b≧0.7であり、半導体装置を断面視したときに、半導体素子上面の外縁から端面に沿う方向に向かって、鉛直下向きに20μmの位置までの樹脂コート層の平均厚さをtV2aとし、上記端面に沿う方向に20μmの位置以降の樹脂コート層の平均厚さをtV2bとしたときに、tV2a/tV2b≧0.7である<1>に記載の半導体装置の製造方法。
<3>上記樹脂コート層の膜厚が、5μm~50μmの範囲である、<1>又は<2>に記載の半導体装置の製造方法。
<4>上記樹脂コート層の線膨張係数が80ppm/K以下で、弾性率が0.5GPa~5.0GPaの範囲である<1>~<3>のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
<5>上記絶縁樹脂コート層のガラス転移温度(Tg)が200℃以上である、<1>~<4>のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
<6>上記樹脂コート層が、ポリアミド、ポリアミドイミド、及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<5>のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
<7><1>~<6>のいずれか一項に記載の製造方法で製造された半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸湿後のリフローにおいてインナーリード及び半導体素子と封止材間に剥離及びクラックが生じ難い、耐リフロー性に優れる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の一例を示す模式断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置のインナーリード端面の模式断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の半導体素子端面の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素は特に明記した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0012】
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
また本明細書において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本発明において実施形態について図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また各図面における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0013】
<半導体装置>
図1は、本発明の一実施形態である半導体装置の製造方法によって製造された、半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図1に示す半導体装置は、ダイパッド1aとリード1bから構成されるリードフレーム1と、半導体素子2と、接合材3と、樹脂コート層4と、ボンディングワイヤー5と、封止材層6を有する。
図1に示すように、半導体素子2とダイパッド1aの接続部及びボンディングワイヤー5の接続部を除く周面に、樹脂コート層4が設けられている。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態である半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置のインナーリード端部の模式断面図である。インナーリード上面の外縁からアウターリードに向かって水平方向20μmの位置までのインナーリード表面を覆う樹脂コート層の平均厚さt
H1aと、水平方向20μmの位置以降のインナーリード表面を覆う樹脂コート層の平均厚さt
H1bの関係が、t
H1a/t
H1b≧0.7であり、更にインナーリードの外縁から端面に沿う方向に向かって、垂直下向きに20μmまでのインナーリード表面を覆う樹脂コート層の平均厚さをt
V1aと、垂直方向20μm以降のリードフレーム表面を覆う樹脂コート層の平均厚さt
V1bの関係が、t
V1a/t
V1b≧0.7であることを特徴とする半導体装置である。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態である半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の半導体素子端部の模式断面図である。半導体素子上面の外縁から相対するもう一方の外縁方向に向かって水平方向に20μmの位置までの上記樹脂コート層の平均厚さをt
H2aとし
、上記水平方向に20μmの位置以降の樹脂コート層の平均厚さをt
H2bとしたときに、t
H2a/t
H2b≧0.7であり、半導体装置を断面視したときに、半導体素子上面の外縁から端面に沿う方向に向かって、鉛直下向きに20μmの位置までの樹脂コート層の平均厚さをt
V2aとし、上記端面に沿う方向に20μmの位置以降の樹脂コート層の平均厚さをt
V2bとしたときに、t
V2a/t
V2b≧0.7である半導体装置である。
【0016】
上述した樹脂コート層の厚さを有する半導体装置は、吸湿後のリフロー工程において、特に応力が集中し易いインナーリード及び半導体素子外縁部から所定の位置を境界として、上記樹脂コート厚さの比で樹脂コート層を設けることにより、応力緩和効果及び高密着性が得られ、耐リフロー性を高めることができる。
【0017】
特に、インナーリード端部において、封止樹脂層との剥離及び封止樹脂層のクラックが生じ易いため、樹脂コート層の厚さを上記<1>に示すように制御することが好ましい。また、半導体装置において半導体素子が占める割合が大きく、半導体素子端部に発生する応力が大きい場合や、封止樹脂層との密着性が低い窒化ケイ素などの半導体素子の場合は、樹脂コート層の厚さを上記<2>に示すように制御することが更に好ましい。
【0018】
<樹脂コート層の作製方法>
上記実施形態において、上記樹脂コート層には、特に制限なく、一般にアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、及びポリイミド系樹脂などを用いることができるが、耐熱性の観点から、ポリイミド樹脂又はポリイミド樹脂組成物、ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物、及びポリアミドイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂組成物を用いることが好ましく、密着性の観点からポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂組成物を用いることがより好ましい。
【0019】
一実施形態において、樹脂コート層の形成方法は、特に制限はなく、一般的に樹脂コート層を形成する方法を用いることができ、例えば、半導体素子上面、側面、リードフレーム上面、側面及び下面等に、樹脂コート材を塗布し乾燥させて樹脂コート層を形成することができる。
また、樹脂コート層を形成する工程の順序は、特に制限はなく、半導体素子をリードフレームに実装する前に、リードフレーム表面に樹脂コート層を形成することもできるが、耐リフロー性を向上させる観点から、半導体素子をリードフレームへ実装し、ワイヤーボンディング後、インナーリード及び半導体素子の周面に樹脂コート層を形成することが好ましい。後者の工程順で塗布することで、半導体素子とダイパッドの接合部、及びボンディングワイヤーの接合部を除く、インナーリード及び半導体素子、ダイパッドの周面に、一回の工程で樹脂コート層を形成することが可能なため、作業性にも優れる。
【0020】
上記樹脂コート層の形成は、上記樹脂コート層を形成する樹脂コート材を所定の箇所に塗布し、塗膜を乾燥することによって実施することができる。上記樹脂コート材の塗布は、各種塗布方法を用いることができる。塗布方法は、特に制限はなく、例えば、ポッティング法、ディッピング法、ディスペンス法、印刷法等が挙げられる。中でも、塗布量を精密に制御できる観点からディスペンス法による塗布が好ましい。
【0021】
樹脂コート層を塗布する領域は、耐リフロー性向上の観点から、応力が集中し易いインナーリード端部及び半導体素子端部に塗布することが好ましく、高密着性及び応力緩和効果を確実に得ること、並びに作業性向上の観点からインナーリード及び半導体素子の周面を樹脂コート層で覆うことが更に好ましい。
【0022】
樹脂コート層の膜厚は、成膜後において5μm~50μmの範囲であることが好ましく、樹脂コート層とインナーリード界面の応力緩和の観点から、膜厚10μm~35μmの範囲であることが更に好ましい。膜厚が5μmより薄いと応力緩和効果が低下する傾向があり、また膜厚が50μmより厚いと樹脂コート層自身の膨張及び収縮の影響が大きくなり、応力緩和効果が低下する傾向がある。
【0023】
インナーリード端部における樹脂コート層の膜厚は、半導体装置を断面視したときに、半導体素子側のインナーリード上面の外縁からアウターリードに向かって水平方向に20μmの位置までの上記樹脂コート層の平均厚さをtH1aとし、上記水平方向に20μmの位置以降の上記樹脂コート層の平均厚さをtH1bとしたときに、tH1a/tH1b≧0.7であることが好ましく、0.9以上であると、更に応力低減効果を得ることができる。上記膜厚の割合は、耐リフロー性向上の観点から全てのインナーリード端部に適用することが好ましい。
【0024】
また、半導体装置を断面視したときに、半導体素子側のインナーリード上面の外縁から、端面に沿う方向に向かって鉛直下向きに20μmの位置までの樹脂コート層の平均厚さをtV1aとし、上記端面に沿う方向に20μmの位置以降の樹脂コート層の平均厚さをtV1bとしたときに、tV1a/tV1b≧0.7であることが好ましく、0.9以上であると応力低減効果を更に得ることができる。上記膜厚の割合は、耐リフロー性向上の観点から全てのインナーリード端部に適用することが好ましい。
【0025】
半導体素子端部の樹脂コート層の膜厚は、半導体装置を断面視したときに、半導体素子上面の一方の外縁から相対する外縁方向に向かって水平方向に20μmの位置までの上記樹脂コート層の平均厚さをtH2aとし、上記水平方向に20μmの位置以降の上記樹脂コート層の平均厚さをtH2bとしたときに、tH2a/tH2b≧0.7であることが好ましく、0.9以上であると応力低減効果を更に得ることができる。上記樹脂コート層厚さの割合は、耐リフロー性向上の観点から全ての半導体素子端部に適用することが好ましい。
【0026】
また、半導体装置を断面視したときに、半導体素子上面の外縁から端面に沿う方向に向かって、鉛直下向きに20μmの位置までの樹脂コート層の平均厚さをtV2aとし、上記端面に沿う方向に20μmの位置以降の樹脂コート層の平均厚さをtV2bとしたときに、tV2a/tV2b≧0.7であることが好ましく、0.9以上であると応力低減効果を更に得ることができる。上記膜厚の割合は、耐リフロー性向上の観点から全ての半導体素子端部に適用することが好ましい。
【0027】
半導体装置において、半導体素子の占める割合が大きく、半導体素子端部に発生する応力が大きい場合や、封止樹脂層との密着性が低い窒化ケイ素などの半導体素子の場合は、樹脂コート層の厚さを上記<2>に示すように制御することが好ましい。
【0028】
樹脂コート材の膜厚の測定には、例えば、Bruker株式会社製の膜厚測定装置、商品名:DektakXT―Sを用いることができる。樹脂コート層の平均厚さtH1a、tV1a、tH2a、tV2aは、夫々4μm間隔で5点の測定を行い、その平均値とする。
【0029】
樹脂コート層、tH1b、tV1b、tH2b、tV2bの平均厚さは、夫々10μm間隔で5点の測定を行い、その平均値とする。
【0030】
樹脂コート層の線膨張係数は、リフロー工程時の熱応力を緩和する観点から成膜後、80ppm/K以下であることが好ましく、65ppm/K以下であることがより好ましい。80ppm/Kより大きい場合は、リードフレーム及び半導体素子との線膨張係数差が大きくなり、半導体装置の耐リフロー性が低下する傾向がある。
【0031】
線膨張係数の測定には、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の熱機械分析装置「TMA SS7100」を用いることができる。樹脂コート層を形成する樹脂コート材を塗布し、乾燥して得られる樹脂膜を10mm×4mmに切断し、チャック間距離10mm、荷重10g、測定温度30~400℃、昇温速度10℃/minの条件で測定する。線膨張係数は70℃及び140℃での測定値を直線で結び、その傾きより算出することができる。
【0032】
樹脂コート層の弾性率は、室温(25℃)での弾性率が0.5GPa~5.0GPaの範囲であることが好ましく、1.0~4.0GPaの範囲であることがより好ましい。弾性率が0.5GPaよりも小さいと、膜が柔らか過ぎて半導体装置の耐リフロー性が低下する傾向がある。一方、弾性率が5.0GPaを超えると、膜の応力緩和性が低下することにより、半導体装置の耐リフロー性が低下する傾向がある。半導体装置の信頼性をより高めるために良好な可とう性を得る観点から、上記弾性率は、2.0GPa~3.5GPaの範囲が更に好ましい。
【0033】
弾性率の測定には、例えば、株式会社ユービーエム製の動的粘弾性測定装置「Rheogel-E4000型」を用いることができる。樹脂コート層を形成する樹脂コート材を塗布し、乾燥して得られる樹脂膜を10mm×4mmに切断し、チャック間距離20mm、測定周波数10MHz、測定温度35℃の測定条件下で実施する。
【0034】
樹脂コート層のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性を担保する観点から、成膜後において200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。
【0035】
Tgの測定には、株式会社ユービーエム製、動的粘弾性測定装置「Rheogel-E4000型」を用いることができる。樹脂コート層を形成する樹脂コート材を塗布し、乾燥して得られる樹脂膜を10mm×4mmに切断し、チャック間距離20mm、昇温速度3℃/minで測定し、得られたtanδのピーク位置からTgを得ることができる。
【0036】
樹脂コート層を形成する樹脂コート材の粘度は、上記指定の膜厚比を担保する観点から150~500Pa・sの範囲が好ましく、作業性の観点から150~250Pa・sの範囲がより好ましい。粘度が150Pa・sより低い場合は、樹脂コート層が所定の塗布範囲よりも濡れ広がり易くなる傾向があり、粘度が500Pa・sより高い場合は、均一な厚みの樹脂コート層が得られ難くなる傾向がある。
【0037】
粘度特性は、例えば、東機産業株式会社製RE型粘度計を用い、JIS Z 8803に準拠して、測定温度を25℃±0.5℃に設定した後、粘度計に1mL~1.5mLの樹脂コート材を入れ、測定を行うことができる。
【0038】
樹脂コート層を形成する樹脂コート材の25℃におけるチキソトロピー係数は、上記指定の膜厚比を担保する観点から2.0~10.0の範囲であることが好ましく、2.0~7.0の範囲であることがより好ましく、2.0~5.0の範囲であることが更に好ましい。上記チキソトロピー係数が、上記範囲である場合、塗布性と、塗布後の形状保持性とを両立することが容易となる。
【0039】
チキソトロピー係数は、例えば、25℃でE型粘度計を使用し、コーン回転数1min-1の条件で測定される粘度(Pa・s)をAとし、同じくコーン回転数10min-1の条件で測定される粘度(Pa・s)をBとしたとき、A/Bとして算出する。
【0040】
<封止材層の作製方法>
封止材層は、当技術分野で封止材料として周知の樹脂材料を用いて形成されたものであってよく、例えば、液状又は固体のエポキシ系樹脂組成物であってよい。エポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂を含んでいればよく、必要に応じて、硬化剤、カップリング剤、硬化促進剤、フィラー、着色剤、その他添加剤を含んでもよい。エポキシ樹脂組成物の組成は、製造する半導体装置に求められる特性に応じて適宜調製される。
【0041】
封止材層は、例えば、タブレット、グラニュール及び、パウダー状等にした樹脂組成物を用いて、トランスファー成形又はコンプレッション成形によって形成することができる。
【0042】
<リードフレーム>
リードフレームは、特に限定されず、当該技術分野で周知の材料から選択することができる。例としては、鉄-ニッケル、及び鉄-ニッケルをベースにした合金、銅及び銅をベースにした合金を用いることができる。上記リードフレーム上には、ワイヤーボンディング性を向上させる目的でめっき層を有していることが好ましく、めっき層としては、Ag又はAg合金からなるめっき群、ニッケル又はニッケル合金からなるめっき群、及びニッケル又はニッケル合金からなる第1めっき層とパラジウム又はパラジウム合金からなる第2めっき層と金又は金合金からなる第3めっき層からなるめっき群から選択することができる。
【0043】
<半導体素子>
半導体素子の素材は、特に限定されず、例えば、シリコン、シリコンカーバイド及び、窒化ガリウム等であってよい。図示の例では、1つの半導体素子が搭載されているが、必要に応じて2つもしくはそれ以上の半導体素子を搭載してもよい。
【0044】
<接合材>
接合材は、特に限定されず、当該技術分野で周知の材料から選択することができる。例えば、Agペースト、はんだ、シンターリングペースト等であってよい。
【符号の説明】
【0045】
1 リードフレーム
1a ダイパッド
1b リード
2、10 半導体素子
3 接合材
4 樹脂コート層
5 ボンディングワイヤー
6 封止材層
7 インナーリード
8a インナーリード上面の外縁からアウターリードに向かって水平方向に20μmの位置までの樹脂コート層と8bの樹脂コート層厚みの合計
8b インナーリード上面の外縁から、端面に沿う方向に向かって鉛直下向きに20μmの位置までの樹脂コート層
9a インナーリード上面の外縁からアウターリードに向かって水平方向に20μmの位置以降の樹脂コート層
9b インナーリード上面の外縁から、端面に沿う方向に向かって鉛直下向きに20μmの位置以降の樹脂コート層
11a 半導体素子上面の外縁から相対するもう一方の外縁方向に向かって水平方向に20μmの位置までの樹脂コート層と11bの樹脂コート層厚みの合計
11b 半導体素子上面の外縁から端面に沿う方向に向かって、鉛直下向きに20μmの位置までの樹脂コート層
12a 半導体素子上面の外縁から相対するもう一方の外縁方向に向かって水平方向に20μmの位置以降の樹脂コート層
12b 半導体素子上面の外縁から端面に沿う方向に向かって、鉛直下向きに20μmの位置以降の樹脂コート層