(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161547
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】抵抗ペーストの設計方法、抵抗ペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221014BHJP
H01C 17/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H01C17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066452
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 里司
【テーマコード(参考)】
3C100
5E032
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA57
3C100AA58
3C100AA70
3C100BB05
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100EE08
5E032BA04
(57)【要約】
【課題】抵抗ペーストを目的の特性となるように設計できる抵抗ペーストの設計方法を提供する。
【解決手段】原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成するモデル作成工程と、
前記予測モデルを用いて、目的とする前記抵抗ペーストの特性、および用いる前記原料の特性から、前記原料組成を算出する設計工程と、を有する抵抗ペーストの設計方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成するモデル作成工程と、
前記予測モデルを用いて、目的とする前記抵抗ペーストの特性、および用いる前記原料の特性から、前記原料組成を算出する設計工程と、を有する抵抗ペーストの設計方法。
【請求項2】
前記予測モデルを用いて、前記抵抗ペーストの特性、および用いる前記原料の特性から、前記原料組成を算出できる原料組成算出装置を作成する原料組成算出装置作成工程を有し、
前記設計工程では、前記原料組成算出装置により前記予測モデルを用いて、目的とする前記抵抗ペーストの特性、および用いる前記原料の特性から、前記原料組成を算出する請求項1に記載の抵抗ペーストの設計方法。
【請求項3】
前記予測モデルを用いて、目的とする前記抵抗ペーストの特性および前記原料の予測される複数の特性に応じた前記原料組成を算出して最適組成表を作成する最適組成表作成工程を有し、
前記設計工程では、前記最適組成表により、目的とする前記抵抗ペーストの特性、および用いる前記原料の特性から、前記原料組成を算出する請求項1に記載の抵抗ペーストの設計方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の抵抗ペーストの設計方法により原料組成を算出する組成設計工程と、
前記組成設計工程で算出した前記原料組成に基づいて原料を混合し、抵抗ペーストを製造する抵抗ペースト製造工程と、を有する抵抗ペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗ペーストの設計方法、抵抗ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散媒中に各種固体材料を分散したペーストが従来から各種分野で用いられており、ペーストとして例えば抵抗ペーストや導電ペーストなどが知られている。
【0003】
例えば、抵抗ペーストは導電物、ガラス、ビヒクル剤などを有機溶媒中に分散させてペースト状にした材料であり、電子部品に用いられている。
【0004】
近年の電子部品の微細化に伴い、使用される抵抗ペーストについても、特性が最適化されていること、すなわち特性値がより狭い規格範囲内に収まることが求められている。
【0005】
抵抗ペーストに求められる代表的な特性としては、例えばシート抵抗値や、抵抗温度係数(TCR)特性、粘度、接着強度やヒートサイクル特性などが挙げられる。
【0006】
それらの特性を満たすために種々の原料を混合した抵抗ペーストが従来から検討されている。
【0007】
例えば特許文献1には(A)銅及びニッケルからなる導電性粉末、(B)400~500℃の範囲の軟化点を有するカドミウムを含まないガラス粉末、(C)(a)酸化バナジウム、又は(b)酸化バナジウムと酸化ビスマス、酸化マンガン、酸化珪素、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化錫及び酸化コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種との組合わせからなる金属酸化物、(D)ビヒクルを含む抵抗ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されているように、抵抗ペーストは、導電性粉末や、ガラス粉末、ビヒクル等の原料を混合して製造される。しかしながら、量産プロセスにおいて、これら複数種類の原料の粘度や比表面積等の特性は若干ではあるが変化している。また、温湿度などの製造環境も一定ではない。そのため、得られる抵抗ペーストの特性も変化し、特性変動の要因となっている。
【0010】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、抵抗ペーストを目的の特性となるように設計できる抵抗ペーストの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成するモデル作成工程と、
前記予測モデルを用いて、目的とする前記抵抗ペーストの特性、および用いる前記原料の特性から、前記原料組成を算出する設計工程と、を有する抵抗ペーストの設計方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、抵抗ペーストを目的の特性となるように設計できる抵抗ペーストの設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一態様に係る抵抗ペースト設計装置のハードウェア構成図である。
【
図2】本開示の一態様に係る抵抗ペースト設計装置の機能を示すブロック図である。
【
図3】実施例1で作成した予測モデルによる特性Cの予測値と実測値との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[抵抗ペーストの設計方法]
本実施形態の抵抗ペーストの設計方法について説明する。
【0015】
本発明の発明者は、抵抗ペーストを目的の特性となるように設計できる抵抗ペーストの設計方法について検討を行った。そして、算出すべき原料組成と、従来着目されていなかった原料の特性および加工条件とを説明変数とし、得られる抵抗ペーストの特性を目的変数とした予測モデルを用いることで、目的とする特性の抵抗ペーストを設計できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
本実施形態の抵抗ペーストの設計方法は、以下のモデル作成工程と、設計工程とを有することができる。
【0017】
モデル作成工程は、原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成できる。
【0018】
設計工程は、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0019】
以下、各工程について説明する。
(1)モデル作成工程
モデル作成工程では、原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成できる。
【0020】
原料の特性としては特に限定されないが、例えば原料の粒度分布や比表面積(BET)等が挙げられる。また、加工条件としては、製造時の周囲の温度や湿度等が挙げられる。
【0021】
目的変数とする抵抗ペーストの特性としては、要求される特性を選択すればよく、特に限定されないが、例えばシート抵抗値や、抵抗温度係数(TCR)特性、粘度、接着強度やヒートサイクル特性などが挙げられる。
【0022】
なお、モデル作成工程で作成する予測モデルの数は特に限定されず、例えば目的変数とする抵抗ペーストの特性の数に対応した数の予測モデルを作成できる。
【0023】
予測モデルの求め方は特に限定されず、例えば上記説明変数と目的変数とから、線形回帰により求めることもできる。また、係る形態に限定されず、例えば決定木モデルのような非線形モデルやランダムフォレストのようなアンサンブルモデルでも良い。
【0024】
予測モデルを作成する際、サンプル数が不十分な場合にはベイズ推定を用いて、確率的に特性を予測するモデルを用いることもできる。
(2)設計工程、その他の工程
設計工程では、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0025】
設計工程における目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性としては、予測モデルに含まれる変数に対応したものを用いることができる。
【0026】
通常、目的とする抵抗ペーストの特性は既知であるか、容易に決定できる。用いる原料の特性としては例えば原料のロットについて測定した値を用いることができる。
【0027】
設計工程では、予測モデルが単純な線形モデルのケースでは、例えば線形計画法により、原料組成を求めることができる。複雑な予測モデルを用いるケースではparticle swarm optimization法(粒子群最適化法)や差分進化法などの最適化アルゴリズムを元に原料組成を算出できる。
【0028】
本実施形態の抵抗ペーストの設計方法を、後述する抵抗ペーストの製造方法で用いる場合、予測モデルや、設計工程での計算の方法によっては、例えば原料ロットの特性等を入力してから時間を要することになり、生産性が低下する恐れがある。
【0029】
そこで、本実施形態の抵抗ペーストの設計方法は、例えば予測モデルを用いて、抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる原料組成算出装置を作成する原料組成算出装置作成工程をさらに有することもできる。
【0030】
この場合、設計工程では、原料組成算出装置により、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0031】
すなわち既述の予測モデルを用いて、必要となるパラメータ、すなわち抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性を入力することで自動的に原料組成を算出できる原料組成算出装置を予め作成しておくことができる。この場合、設計工程では、必要なパラメータを入力することで、上述のように原料組成算出装置により、予測モデルを用いて原料組成を算出できる。
【0032】
このように、原料組成算出装置により、必要なパラメータを入力することで原料組成を算出できるように構成することで、設計工程で原料組成を算出するために要する時間を短くし、生産性を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態の抵抗ペーストの設計方法は、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性および原料の予測される複数の特性に応じた原料組成を算出して最適組成表を作成する最適組成表作成工程を有することもできる。
【0034】
この場合、設計工程では、最適組成表により、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0035】
すなわち、最適組成表作成工程において、目的とする抵抗ペーストの特性および予め原料の特性の予測されるばらつき幅に応じて、複数パターンの原料特性等に対応した原料組成を算出し、最適原料組成表を作成しておくことができる。
【0036】
そして、設計工程では、最適組成表を介して予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0037】
このように、予測モデルを用いて予め最適組成表を作成しておくことで、設計工程で原料組成を算出するために要する時間を短くし、生産性を高めることができる。
【0038】
以上に説明した本実施形態の抵抗ペーストの設計方法によれば、目的の特性の抵抗ペーストとなるように、原料の特性に応じて原料組成を選択できる。このため、原料の特性の変動によらず、目的の特性を有する抵抗ペーストを設計できる。
[抵抗ペースト設計装置]
本実施形態の抵抗ペースト設計装置は、以下のモデル作成部、設計部を有することができる。
【0039】
なお、本実施形態の抵抗ペースト設計装置によれば、既述の抵抗ペーストの設計方法を実施できる。このため、既に説明した事項については説明を一部省略する。
【0040】
モデル作成部は、原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成できる。
【0041】
設計部は、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0042】
図1に示したハードウェア構成図に示すように、本実施形態の抵抗ペースト設計装置10は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)12やROM(Read Only Memory)13と、補助記憶装置14と、入出力インタフェース15と、出力装置である表示装置16等を含むコンピューターシステムとして構成できる。これらは、バス17で相互に接続されている。なお、補助記憶装置14や表示装置16は、外部に設けられていてもよい。
【0043】
CPU11は、抵抗ペースト設計装置10の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU11は、ROM13または補助記憶装置14に格納された、例えば後述するプログラム(抵抗ペースト設計プログラム)を実行して、抵抗ペーストの原料組成等の算出を行うことができる。
【0044】
RAM12は、CPU11のワークエリアとして用いられ、主要なパラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
【0045】
ROM13は、プログラム(シュミレーションプログラム)等を記憶することができる。
【0046】
補助記憶装置14は、SSD(Solid State Drive)や、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、抵抗ペースト設計装置の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納できる。
【0047】
入出力インタフェース15は、タッチパネル、キーボード、表示画面、操作ボタン等のユーザインタフェースと、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとの双方を含む。
【0048】
表示装置16は、モニタディスプレイ等である。表示装置16では、解析画面が表示され、入出力インタフェース15を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
【0049】
図1に示した抵抗ペースト設計装置10の各機能は、例えばRAM12やROM13等の主記憶装置または補助記憶装置14からプログラム(抵抗ペースト設計プログラム)等を読み込ませ、CPU11により実行することにより、RAM12等におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うと共に、入出力インタフェース15および表示装置16を動作させることで実現できる。
【0050】
図2に、本実施形態の抵抗ペースト設計装置10の機能ブロック図を示す。
【0051】
図2に示すように、抵抗ペースト設計装置10は、受付部21、処理装置22、出力部23を有することができる。これらの各部は抵抗ペースト設計装置10が有するCPU、記憶装置、各種インタフェース等を備えたパーソナルコンピュータ等の情報処理装置において、CPUが予め記憶されている例えば後述するプログラムを実行することでソフトウェアおよびハードウェアが協働して実現される。
【0052】
各部の構成について以下に説明する。
(1)受付部
受付部21は、処理装置22で実行される処理に関係するユーザーからのコマンドやデータの入力を受け付ける。受付部21としてはユーザーが操作を行い、コマンド等を入力するキーボードやマウス、ネットワークを介して入力を行う通信装置、CD-ROM、DVD-ROM等の各種記憶媒体から入力を行う読み取り装置などが挙げられる。
【0053】
受付部21は、例えばモデル作成部が用いる原料の特性、加工条件、原料組成、抵抗ペーストの特性や、設計部が用いる目的とする抵抗ペーストの特性、用いる原料の特性等を受け付けることができる。
(2)処理装置
処理装置22は、モデル作成部221、設計部222を有することができる。
(2-1)モデル作成部
モデル作成部221は、原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成できる。
【0054】
モデル作成部221が作成した予測モデルは、例えば主記憶装置や、補助記憶装置に保存しておくことができる。
(2-2)設計部
設計部222は、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0055】
設計部222は、必要に応じて、モデル作成部221が作成し、保存された予測モデルを読み込み、原料組成を算出できる。
【0056】
本実施形態の抵抗ペースト設計装置は、必要に応じて、以下の原料組成算出装置作成部223や、最適組成表作成部224を有することもできる。
(2-3)原料組成算出装置作成部
原料組成算出装置作成部223は、予測モデルを用いて、抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる原料組成算出装置を作成できる。具体的には、モデル作成部221が作成した予測モデルを用いて、原料組成を算出する、逆問題を解くように構成したプログラムを作成できる。作成したプログラムは、例えば主記憶装置や、補助記憶装置に保存しておくことができる。
【0057】
そして、設計部222は、原料組成算出装置であるプログラムにより、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
(2-4)最適組成表作成部
最適組成表作成部224は、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性および原料の予測される複数の特性に応じた原料組成を算出して最適組成表を作成できる。作成した最適組成表は、例えば主記憶装置や、補助記憶装置に保存しておくことができる。
【0058】
そして、設計部222は、最適組成表により、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0059】
原料組成算出装置作成部223または最適組成表作成部224を設ける場合には、設計部222は、上述のように原料組成算出装置作成部223が作成した原料組成算出装置または最適組成表作成部224が作成した最適組成表を用いて、原料組成を算出できる。
(3)出力部
出力部23は、ディスプレイ等を有することができる。設計部222で得られた原料組成を出力部23に出力できる。
【0060】
以上に説明した本実施形態の抵抗ペースト設計装置によれば、目的の特性の抵抗ペーストとなるように、原料の特性に応じて原料組成を選択できる。このため、原料の特性の変動によらず、目的の特性を有する抵抗ペーストを設計できる。
[抵抗ペースト設計プログラム]
次に、本実施形態の抵抗ペースト設計プログラムについて説明する。
【0061】
本実施形態の抵抗ペースト設計プログラムは、コンピュータを以下のモデル作成部、設計部として機能させることができる。
【0062】
モデル作成部は、原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成できる。
【0063】
設計部は、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる。
【0064】
本実施形態の抵抗ペースト設計プログラムは、必要に応じて、コンピュータを以下の原料組成算出装置作成部や、最適組成表作成部として機能させることもできる。
【0065】
原料組成算出装置作成部は、予測モデルを用いて、抵抗ペーストの特性、および用いる原料の特性から、原料組成を算出できる原料組成算出装置を作成できる。
【0066】
最適組成表作成部は、予測モデルを用いて、目的とする抵抗ペーストの特性および原料の予測される複数の特性に応じた原料組成を算出して最適組成表を作成できる。
【0067】
本実施形態の抵抗ペースト設計プログラムは、例えば既述の抵抗ペースト設計装置のRAMやROM等の主記憶装置または補助記憶装置の各種記憶媒体に記憶させておくことができる。そして、係るプログラムを読み込ませ、CPUにより実行することにより、RAM等におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うと共に、入出力インタフェースおよび表示装置を動作させて実行できる。このため、抵抗ペースト設計装置で既に説明した事項については説明を省略する。
【0068】
以上に説明した本実施形態の抵抗ペースト設計方法プログラムによれば、目的の特性の抵抗ペーストとなるように、原料の特性に応じて原料組成を選択できる。このため、原料の特性の変動によらず、目的の特性を有する抵抗ペーストを設計できる。
[抵抗ペーストの製造方法]
本実施形態の抵抗ペーストの製造方法は、既述の抵抗ペーストの設計方法により原料組成を算出する組成設計工程と、
組成設計工程で算出した原料組成に基づいて原料を混合し、抵抗ペーストを製造する抵抗ペースト製造工程と、を有することができる。
【0069】
組成設計工程では、既述の抵抗ペーストの設計方法により原料組成を算出できる。抵抗ペーストの設計方法については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0070】
抵抗ペースト製造工程では、組成設計工程で算出した原料組成に基づいて原料を混合し、抵抗ペーストを製造できる。抵抗ペーストの製造方法は特に限定されず、一般的に抵抗ペーストを製造する際の条件により実施できる。例えば、3本ロールミルやビーズミル、遊星ミル等から選択された1種類以上の方法を用いて原料を混合し、抵抗ペーストを製造できる。
【0071】
本実施形態の抵抗ペーストの製造方法によれば、目的の特性の抵抗ペーストとなるように、原料の特性に応じて原料組成を選択、設計し、該設計に基づいて抵抗ペーストを製造できる。このため、原料の特性の変動によらず、目的の特性を有する抵抗ペーストを製造できる。
【実施例0072】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順により、抵抗ペーストの設計を行った。
(モデル作成工程)
モデル作成工程では、一部を表1に示した過去に抵抗ペーストを作成した際のデータを用いて、原料の特性、加工条件、および原料組成を説明変数とし、抵抗ペーストの特性を目的変数とする予測モデルを作成した。
【0073】
【表1】
表1中、各行が各ロットのデータを示している。そして、原料組成の欄に示したのが、各原料投入割合である。加工条件の欄に示したのが、加工の際の条件になる。また、原料の特性の欄に示したのが、原料についての重要な特性となる。抵抗ペーストの欄に示したのが得られた抵抗ペーストの重要特性となる。
【0074】
図3に、原料の特性、加工条件、原料組成を説明変数、特性Cを目的変数とし、Ridgeモデルを仮定して作成した予測モデルによる予測値と、実測値との関係を示す。
【0075】
この時決定係数であるR2=0.67であり、ある程度高い予測精度を有することを確認できた。
【0076】
ここでは特性Cについての結果を示したが、同様に特性A、特性B、特性D、特性Eについて予測モデルを作成した。
(設計工程)
目的とする抵抗ペーストの特性となるように、線形計画法により予測モデルから、原料組成を算出し、抵抗ペーストの原料組成を決定できた。
【0077】
なお、算出した原料組成に基づいて原料を混合し抵抗ペーストを製造し、評価を行ったところ、目的とする特性の抵抗ペーストを製造できた。