(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161641
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20221014BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20221014BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20221014BHJP
H01R 9/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H02K5/22
H01R4/38 C
H01R13/52 301A
H01R9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066603
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉田 良平
(72)【発明者】
【氏名】中里 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 旭
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 正則
【テーマコード(参考)】
5E012
5E086
5E087
5H605
【Fターム(参考)】
5E012BA12
5E086DD04
5E086LL10
5E086LL20
5E087EE11
5E087FF02
5E087FF03
5E087GG17
5E087LL02
5E087LL12
5E087QQ06
5E087RR12
5E087RR36
5H605AA01
5H605AA02
5H605BB05
5H605CC06
5H605EC07
5H605EC08
5H605EC18
(57)【要約】
【課題】相手側端子とバスバーとの間に位置ズレがある場合でも、端子を固定するときのバスバーの変形を防止する。
【解決手段】端子台1は、内部にオイルを貯留可能なモータハウジング50に取り付けられる。端子台1は、ベース部3と、バスバー31,32,33と、封止部25と、を備える。ベース部3には、貫通孔20が形成される。バスバー31,32,33は、貫通孔20に差し込まれる。バスバー31,32,33のそれぞれの一部がモータハウジング50の内部に位置し、別の一部がモータハウジング50の外部に位置する。貫通孔20の内壁面と、バスバー31,32,33と、の間に隙間が形成されている。封止部25は、耐熱性を有し、ベース部3及びバスバー31,32,33に液密的に接触する。封止部25が弾性変形することで、バスバー31,32,33のベース部3に対する相対移動を許容する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にオイルを貯留可能なモータハウジングに取り付けられる端子台であって、
貫通孔が形成されたベース部と、
前記貫通孔に差し込まれて、一部が前記モータハウジングの内部に位置し、別の一部が前記モータハウジングの外部に位置する導電端子と、
耐熱性を有し、前記ベース部及び前記導電端子に液密的に接触する封止部と、
を備え、
前記貫通孔の内壁面と、前記導電端子と、の間に隙間が形成され、
前記封止部が弾性変形することで、前記導電端子の前記ベース部に対する相対移動を許容することを特徴とする端子台。
【請求項2】
請求項1に記載の端子台であって、
前記導電端子は板状であり、
前記隙間は少なくとも、前記導電端子の厚み方向の隙間を含むことを特徴とする端子台。
【請求項3】
請求項1に記載の端子台であって、
前記導電端子は棒状であることを特徴とする端子台。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記モータハウジングの内部空間から遠い側の端部に位置することを特徴とする端子台。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記モータハウジングの内部空間に近い側の端部に位置することを特徴とする端子台。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記導電端子が前記貫通孔に差し込まれる方向の手前側の端部に位置することを特徴とする端子台。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記導電端子が前記貫通孔に差し込まれる方向の奥側の端部に位置することを特徴とする端子台。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記貫通孔は、
前記導電端子を通過させる通過凹部と、
前記導電端子を通過させる封止凹部と、
を含み、
前記封止凹部の内壁面と前記導電端子の間の距離が、前記通過凹部の内壁面と前記導電端子の間の距離よりも大きく、
前記封止部は、前記封止凹部の内壁と、前記導電端子とに液密的に接触することを特徴とする端子台。
【請求項9】
請求項8に記載の端子台であって、
前記封止部は、流動性を有する状態で前記封止凹部の少なくとも一部に充填され、その後に固化していることを特徴とする端子台。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の端子台であって、
前記封止凹部には区画シール部材が配置され、
前記封止凹部の内部は、前記区画シール部材によって、前記封止部が配置される場所と配置されない場所に分けられ、
前記封止部は前記区画シール部材に接触していることを特徴とする端子台。
【請求項11】
請求項10に記載の端子台であって、
前記区画シール部材の移動を規制する規制部を備えることを特徴とする端子台。
【請求項12】
請求項11に記載の端子台であって、
前記規制部は、前記導電端子に一体的に形成されていることを特徴とする端子台。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の端子台であって、
前記規制部は、相対的に凹状となっている部分を含み、
前記封止部の少なくとも一部が前記凹状の部分に入っていることを特徴とする端子台。
【請求項14】
請求項1から13までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記導電端子は、間隔をあけて複数並べて配置されていることを特徴とする端子台。
【請求項15】
請求項14に記載の端子台であって、
前記封止部は、複数の前記導電端子のそれぞれに対して設けられていることを特徴とする端子台。
【請求項16】
請求項1から15までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記導電端子に曲がり部が形成されており、
前記封止部は、前記曲がり部の近傍に液密的に接触するように配置されていることを特徴とする端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両において、ハウジングの内部に配置されたモータに対して、ハウジングの外部の電気部品を電気的に接続するための端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動モータによって車輪を駆動する電動車では、モータをハウジングの内部に収容し、インバータをハウジングの外部に配置する構成が用いられることがある。特許文献1は、この場合において、モータとインバータとを電気的に接続するためにハウジングに取り付けられる端子台を開示する。
【0003】
特許文献1のモータユニットは、ハウジングを有する。ハウジングの収容空間には、モータ及びギヤ部が収容される。ハウジングの収容空間には、オイルが溜まるオイル溜りが設けられる。ハウジングには開口孔が形成され、この開口孔には、配線部材としてのバスバーが通される。バスバーは、開口孔を介して、ハウジングの内部と外部とにわたって延びる。バスバーは、端子台として機能する連結部材のバスバー固定部に固定される。連結部材は、開口孔の連通を遮断する。
【0004】
特許文献1では、バスバーをインサート部材とするインサート成形によって、バスバー固定部にバスバーが埋め込まれて固定される。特許文献1は、この構成により、バスバーとバスバー固定部との間のシール性が確保されるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
端子台においては一般的に、端子台及び接続する相手側端子の各種の公差等によって、導電端子と相手側端子との間にギャップ(隙間)が生じることがある。この場合は通常、ギャップをなくすように導電端子と相手側端子をネジ等で締め付けることで、両者を互いに接触させ、電気的な接続を実現する。しかしながら、特許文献1のようにバスバーをインサート成形する構成では、締付けに伴ってバスバー又は相手側端子が意図せず塑性変形することがあり、改善が望まれていた。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、相手側端子と導電端子との間に位置ズレがある場合でも、端子を固定するときの導電端子の変形を防止することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の端子台が提供される。即ち、この端子台は、内部にオイルを貯留可能なモータハウジングに取り付けられる。前記端子台は、ベース部と、導電端子と、封止部と、を備える。前記ベース部には、貫通孔が形成される。前記導電端子は、前記貫通孔に差し込まれる。前記導電端子の一部が前記モータハウジングの内部に位置し、別の一部が前記モータハウジングの外部に位置する。前記封止部は、耐熱性を有し、前記ベース部及び前記導電端子に液密的に接触する。前記貫通孔の内壁面と、前記導電端子と、の間に隙間が形成される。前記封止部が弾性変形することで、前記導電端子の前記ベース部に対する相対移動を許容する。
【0010】
公差等の何らかの理由で、導電端子と相手側端子との間にギャップが生じている場合がある。上記の構成によれば、導電端子と相手側端子を締結手段で締結する際に、導電端子が、貫通孔との隙間の大きさの範囲内で移動することができる。従って、導電端子の塑性変形等を防止することができる。また、導電端子が移動するのに応じて封止部が適宜弾性変形するので、シール性を維持することができる。
【0011】
前記の端子台においては、以下の構成とすることができる。即ち、前記導電端子は板状である。前記隙間は少なくとも、前記導電端子の厚み方向の隙間を含む。
【0012】
この場合、導電端子の厚み方向のギャップが導電端子と相手側端子の間に生じている場合でも、導電端子が折れ曲がるように塑性変形することを防止できる。
【0013】
前記の端子台においては、前記導電端子は棒状であるように構成することもできる。
【0014】
この場合、簡素な構成の端子台を実現することができる。
【0015】
前記の端子台において、前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記モータハウジングの内部空間から遠い側の端部に位置するように構成することができる。
【0016】
前記の端子台において、前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記モータハウジングの内部空間に近い側の端部に位置するように構成することもできる。
【0017】
前記の端子台において、前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記導電端子が前記貫通孔に差し込まれる方向の手前側の端部に位置するように構成することができる。
【0018】
前記の端子台において、前記封止部は、前記貫通孔のうち、前記導電端子が前記貫通孔に差し込まれる方向の奥側の端部に位置するように構成することもできる。
【0019】
貫通孔の端部に封止部が配置されることにより、オイルの漏れを防止する簡素な構成を実現できる。
【0020】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記貫通孔は、通過凹部と、封止凹部と、を含む。前記通過凹部は、前記導電端子を通過させる。前記封止凹部は、前記導電端子を通過させる。前記封止凹部の内壁面と前記導電端子の間の距離が、前記通過凹部の内壁面と前記導電端子の間の距離よりも大きい。前記封止部は、前記封止凹部の内壁と、前記導電端子とに液密的に接触する。
【0021】
これにより、導電端子の移動に対して封止性能が低下しにくい封止部を実現することができる。
【0022】
前記の端子台においては、前記封止部は、流動性を有する状態で前記封止凹部の少なくとも一部に充填され、その後に固化していることが好ましい。
【0023】
これにより、封止部が封止凹部と導電端子とに隙間なく密着する状態を確実に実現することができる。この結果、オイルの漏れを良好に防止できる。
【0024】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記封止凹部には区画シール部材が配置される。前記封止凹部の内部は、前記区画シール部材によって、前記封止部が配置される場所と配置されない場所に分けられる。前記封止部は前記区画シール部材に接触している。
【0025】
これにより、封止凹部の全部を埋めるように封止部を構成する必要がなくなる。従って、部品コスト又は材料コストを低減することができる。
【0026】
前記の端子台においては、前記区画シール部材の移動を規制する規制部を備えることが好ましい。
【0027】
これにより、区画シール部材を正しい位置に保持することができる。従って、封止部を形成する場合に液状の樹脂が漏れること等を防止できる。
【0028】
前記の端子台においては、前記規制部は、前記導電端子に一体的に形成されていることが好ましい。
【0029】
これにより、簡素な構成を実現できる。
【0030】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記規制部は、相対的に凹状となっている部分を含む。前記封止部の少なくとも一部が前記凹状の部分に入っている。
【0031】
これにより、封止部と導電端子との強固な結合を実現できる。
【0032】
前記の端子台においては、前記導電端子は、間隔をあけて複数並べて配置されていることが好ましい。
【0033】
これにより、複数の電流経路に適用可能な、簡素な構成の端子台を実現することができる。
【0034】
前記の端子台においては、前記封止部は、複数の前記導電端子のそれぞれに対して設けられていることが好ましい。
【0035】
これにより、オイルの漏れを確実に防止することができる。
【0036】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記導電端子に曲がり部が形成されている。前記封止部は、前記曲がり部の近傍に液密的に接触するように配置されている。
【0037】
これにより、バスバーにおいて複雑な形状となっている部分を容易に封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態に係る端子台と、モータハウジング、電動モータ、及びインバータの関係を示す模式図。
【
図2】モータハウジングの取付孔に固定された状態の端子台を示す斜視図。
【
図4】封止部を構成するために、ベース部に形成された封止凹部に樹脂を注入する工程を説明する斜視図。
【
図5】封止部を構成するために樹脂が充填される部分を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る端子台1と、モータハウジング50、電動モータ51、及びインバータ52の関係を示す模式図である。
図2は、モータハウジング50の取付孔55に固定された状態の端子台1を示す斜視図である。
図3は、端子台1の分解斜視図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の端子台1は、モータハウジング(ハウジング)50に固定される。モータハウジング50の内部には、電動モータ51が配置される。モータハウジング50の外部には、インバータ52が配置される。端子台1は、インバータ52と電動モータ51との間の電流経路に配置され、電流の中継装置として機能する。
【0041】
インバータ52は、図示しないバッテリーの直流電流を交流電流に変換して電動モータ51へ供給する。インバータ52は、出力する交流電流の周波数を変更すること等により、電動モータ51の回転速度を制御することができる。
【0042】
端子台1、モータハウジング50、電動モータ51及びインバータ52は、車両に備えられている。車両は、電動モータ51を駆動源として走行する。このような車両としては、例えば、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等を挙げることができる。
【0043】
モータハウジング50は、中空状に構成されている。図示しないが、モータハウジング50は、前述の電動モータ51に加えて、ギア、伝動軸等からなる動力伝達構造を収容する。この動力伝達構造を介して、電動モータ51の回転動力がモータハウジング50の外部に取り出される。この動力は、図略のドライブトレーンを介して車輪に伝達される。この結果、車両を走行させることができる。
【0044】
モータハウジング50の内部空間には、適宜の量のオイル53が貯留されている。これにより、ギア、伝動軸等の動力伝達部品を潤滑及び冷却することができる。オイル53としては、例えば、オートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF)を用いることができる。
【0045】
モータハウジング50の適宜の位置(例えば、上壁)には、端子台1を取り付けるための取付孔55が貫通状に形成されている。取付孔55の軸方向に沿って見たときに、
図2に示すように、取付孔55は長円状に形成される。
図2では、モータハウジング50のうち上壁50aの部分だけが板状の部材として模式的に示されている。
図2において、上壁50aよりも下側はモータハウジング50の内側であり、上側はモータハウジング50の外側である。
【0046】
端子台1は、
図2に示すように、ベース部3と、3つのバスバー(導電端子)31,32,33と、を備える。
【0047】
ベース部3は、ブロック状に形成されている。ベース部3は、例えば、電気絶縁性を有する合成樹脂によって構成される。ベース部3は、プラグ部4と、取付ボス部5と、ナット保持部6と、が一体的に形成された構成となっている。
【0048】
ベース部3をモータハウジング50に取り付けるとき、プラグ部4の一部が取付孔55に差し込まれる。以下、取付孔55に対してプラグ部4を差し込む方向に平行な方向を、プラグ部4の軸方向と呼ぶことがある。
【0049】
軸方向に沿って見た場合、プラグ部4は、取付孔55の形状に対応する長円状に形成されている。3つのバスバー31,32,33は、長円状のプラグ部4の長手方向に並ぶように配置される。プラグ部4は、細長く形成された3つのバスバー31,32,33の長手方向中途部を保持している。
【0050】
プラグ部4の外周面には、長円ループ状の溝11が形成されている。この溝11に、弾性変形可能なプラグシール12が配置されている。プラグシール12は、プラグ部4の溝11と、取付孔55の内壁と、の両方に液密的に接触する。これにより、プラグ部4と取付孔55との間からオイル53が漏れないように封止することができる。
【0051】
プラグ部4には貫通孔20が、バスバー31,32,33と同じ数だけ配置されている。それぞれの貫通孔20は、プラグ部4を軸方向に貫通するように形成されている。それぞれの貫通孔20にバスバー31,32,33が挿入される。端子台1の組立てのためにプラグ部4(ベース部3)にバスバー31,32,33が差し込まれる方向は、
図2及び
図3において上から下である。
【0052】
プラグ部4の軸方向一端には、収容凹部13が形成されている。収容凹部13は、端子台1をモータハウジング50に取り付けたときに、モータハウジング50の外部を向く側を開放させている。バスバー31,32,33をベース部3に保持するための貫通孔20は、収容凹部13にそれぞれ接続されている。バスバー31,32,33は、それぞれ収容凹部13を通過するように配置されている。
【0053】
それぞれの貫通孔20は、
図3等に示すように、通過凹部21と、封止凹部22と、を互いに接続した構成となっている。
【0054】
通過凹部21は、貫通孔20のうち、収容凹部13から遠い側の端部に配置されている。通過凹部21の内壁面と、通過凹部21に差し込まれるバスバー31,32,33と、の間には、隙間(特に、バスバー31,32,33の厚み方向の隙間)が形成されている。
【0055】
封止凹部22は、貫通孔20が収容凹部13に接続する部分の近傍に配置されている。封止凹部22は、収容凹部13側に開口している。封止凹部22の内壁面と、バスバー31,32,33と、の間には、隙間が形成されている。
【0056】
プラグ部4の軸方向に対して垂直に切った断面を考えた場合に、封止凹部22の断面積は、通過凹部21の断面積よりも大きい。従って、封止凹部22においてバスバー31,32,33の周囲に形成される隙間は、通過凹部21においてバスバー31,32,33の周囲に形成される隙間よりも大きい。
【0057】
この封止凹部22に、後述の封止部25及び区画シール部材26が配置されている。封止性能を高めるため、封止凹部22をプラグ部4の軸方向に対して垂直に切った断面は、角丸状となっている。
【0058】
取付ボス部5は、軸方向で見た場合に長円状に形成されているプラグ部4の長手方向の両端に、1つずつ配置されている。それぞれの取付ボス部5には、円筒部材14がインサート成形されている。円筒部材14の軸孔は、プラグ部4の軸と平行に向けられている。円筒部材14の軸孔にボルトを差し込み、モータハウジング50のメネジ孔(図略)に捩じ込むことで、ベース部3をモータハウジング50に固定することができる。
【0059】
ナット保持部6は、プラグ部4の軸方向のうち、収容凹部13とは反対側の端部に配置されている。ナット保持部6は矩形の板状に形成されており、その厚み方向は、バスバー31,32,33の厚み方向と平行である。ナット保持部6は、プラグ部4の軸方向の端面から、当該軸方向に沿って延びている。端子台1をモータハウジング50に取り付けたとき、ナット保持部6はモータハウジング50の内部空間に差し込まれる。
【0060】
詳細は後述するが、バスバー31,32,33のそれぞれの長手方向一端部が、プラグ部4から、モータハウジング50の内部空間に向かって突出している。ナット保持部6は、これらのバスバー31,32,33の突出部分に対し、厚み方向一側で対面するように配置されている。ナット保持部6の幅は、3つ並べられたバスバー31,32,33の全部に対して対面できるように定められている。
【0061】
図3に示すように、ナット保持部6のうち、バスバー31,32,33の端部に対面している部分には、4角形状の凹部44がそれぞれ形成されている。それぞれの凹部44に、4角形状のナット43が配置されている。ナット43は、ナット保持部6に対して相対回転不能である。ナット43のネジ孔の位置は、バスバー31,32,33に形成される後述の第2固定孔42に対応している。
【0062】
それぞれの凹部44に対応して、ナット保持部6に接続孔45が貫通状に形成されている。接続孔45は、凹部44の中央に開口を形成している。ネジ部材をナット43のネジ孔に差し込んだ場合に、ネジ部材の軸部を接続孔45に通すことができる。
【0063】
並んで配置されたバスバー31,32,33の間を区画するように、ナット保持部6には2つの仕切り壁15がそれぞれ一体的に形成されている。これにより、電気的な短絡を防止することができる。
【0064】
バスバー31,32,33は、何れも板状の部材である。それぞれのバスバー31,32,33は、電気の良導体である金属から構成されている。バスバー31,32,33は、厚みが一様な金属板を、細長い適宜の形状に打ち抜くことで形成される。
【0065】
バスバー31,32,33のそれぞれにおいて、長手方向のうち収容凹部13に近い側の端部には、貫通状の第1固定孔41が形成される。バスバー31,32,33のそれぞれにおいて、長手方向のうちナット保持部6に近い側の端部には、貫通状の第2固定孔42が形成される。第1固定孔41及び第2固定孔42は、円形の孔として構成される。
【0066】
第1固定孔41及び第2固定孔42には、締結手段となる部材(例えば、ネジ部材)を差し込むことができる。この締結部材を介して、電線の端部に位置する図略の端子を、バスバー31,32,33に固定することができる。以下では、バスバー31,32,33に取り付けられる端子を相手側端子と呼ぶことがある。
【0067】
それぞれのバスバー31,32,33の長手方向中途部には、区画シール部材26が取り付けられる。区画シール部材26は、バスバー31,32,33を取り囲むようにループ状に形成される。区画シール部材26は、バスバー31,32,33の表面と、封止凹部22の内壁と、の両方に液密的に接触する。この区画シール部材26により、貫通孔20の長手方向中途部をシールすることができる。
【0068】
図3に示すように、バスバー31,32,33において区画シール部材26が装着される部分には、幅が狭くなるようにくびれる、くびれ部(規制部)46が形成されている。くびれ部46に区画シール部材26が装着された状態で、バスバー31,32,33が貫通孔20にそれぞれ差し込まれる。くびれ部46により、バスバー31,32,33に対する区画シール部材26の移動が規制される。従って、区画シール部材26の位置ズレを防止することができる。
【0069】
図2に示すように、区画シール部材26に対してバスバー31,32,33の長手方向一側に、封止部25が配置される。封止部25は、バスバー31,32,33の表面と、封止凹部22の内壁と、区画シール部材26と、に液密的に接触する。封止部25により、バスバー31,32,33と、貫通孔20と、の間からオイル53が漏れないように封止することができる。
【0070】
封止部25は、例えば紫外線硬化型のエラストマーによって構成される。バスバー31,32,33が区画シール部材26とともに封止凹部22に差し込まれ、区画シール部材26によって仕切られた状態の封止凹部22の内部に、未硬化の状態の樹脂が収容凹部13側から充填される。樹脂が注入される位置が、
図4及び
図5に白抜き矢印で例示されている。樹脂が注入されるのは、
図5で示す封止凹部22のうち、区画シール部材26よりも軸方向一側(
図5において、上側)の領域だけである。この状態で樹脂を硬化させることにより、
図2に示す封止部25を構成することができる。
【0071】
硬化した状態の封止部25は、弾性変形可能に構成されている。封止凹部22よりも狭く形成された通過凹部21においても、バスバー31,32,33と貫通孔20の内壁面との間には、バスバー厚み方向の小さな隙間が形成されている。従って、バスバー31,32,33は、この隙間に相当する遊びを有しながら、ベース部3に保持される(フローティング保持)。封止部25は、バスバー31,32,33が動いた場合でも、その動きに追従するように適宜変形しながら封止状態を維持する。
【0072】
バスバー81をバスバー固定部80にインサート成形する従来の構成は、
図6(a)に示すように、バスバー81と相手方端子92との間にギャップG1がある状態からネジ91とナット82で締め付けると、バスバー81が折れ曲がるように大きく変形してしまう場合があった。
【0073】
これに対し、本実施形態では、
図6(b)に示すようにバスバー31と貫通孔20との間に隙間があるため、ネジ91とナット43での締付けに応じて、バスバー31の全体が当該隙間の範囲で移動することができる。その分、バスバー31の折れ曲がりが軽減されるので、塑性変形を防止することができる。また、封止部25が弾性変形するので、オイルの漏れを防止することができる。
【0074】
端子台1の使用に伴って、バスバー31,32,33には大電流が流れる。従って、バスバー31,32,33は高温となり易い。本実施形態において、封止部25は、区画シール部材26よりも耐熱性が高い材料によって構成される。従って、高温のバスバー31,32,33に接触している状態でも、封止部25は区画シール部材26と比較して劣化しにくい。
【0075】
区画シール部材26は、封止凹部22の内部空間を仕切って、封止部25を形成するために充填される液状の樹脂を堰き止める。これにより、封止部25の樹脂の量を減らすことができる。封止部25に用いられるエラストマー樹脂は一般に高価であるため、樹脂量の削減によってコストを効果的に低減することができる。区画シール部材26のシール性は、封止部25の樹脂を充填するときだけ発揮されれば十分である。従って、区画シール部材26として、耐熱性の低い安価なものを利用することができる。
【0076】
バスバー31,32,33を貫通孔20に差し込んだ状態で、くびれ部46及び区画シール部材26は封止凹部22に位置する。この状態で、
図5の白抜き矢印で示すように収容凹部13側から封止凹部22に樹脂を充填すると、区画シール部材26が封止凹部22に密着する部分より上側、即ち、
図5の深さD1の範囲に樹脂が存在することになる。
【0077】
深さD1の範囲には、くびれ部46の一部が含まれている。即ち、封止部25を形成するにあたって、液状の樹脂は、バスバー31,32,33に形成されるくびれ部46の内側に入り込むように流れ、その状態で固化する。従って、封止部25を介して、バスバー31,32,33をベース部3に対して強固に結合することができる。
【0078】
3つのバスバー31,32,33のうち、中央を除いた2つのバスバー31,33には、クランク状の曲がり部47が形成されている。この結果、モータハウジング50の内部と外部とで、バスバー31,32,33の間隔を異ならせることができる。このように曲がり部47を有するバスバー31,33において、封止部25及び区画シール部材26は、曲がり部47の部分に液密的に接触するように配置されている。この結果、バスバー31,33をベース部3に確実に保持させることができる。
【0079】
以上に説明したように、本実施形態の端子台1は、内部にオイル53を貯留可能なモータハウジング50に取り付けられる。端子台1は、ベース部3と、バスバー31,32,33と、封止部25と、を備える。ベース部3には、貫通孔20が形成される。バスバー31,32,33は、貫通孔20に差し込まれる。バスバー31,32,33のそれぞれは、その一部がモータハウジング50の内部に位置し、別の一部がモータハウジング50の外部に位置する。封止部25は、耐熱性を有し、ベース部3及びバスバー31,32,33に液密的に接触する。貫通孔20の内壁面と、バスバー31,32,33と、の間に隙間が形成される。封止部25が弾性変形することで、バスバー31,32,33のベース部3に対する相対移動を許容する。
【0080】
公差等の何らかの理由で、バスバー31,32,33と相手側端子との間にギャップが生じている場合がある。本実施形態では、この場合でも、バスバー31,32,33と相手方端子をネジ等で締結する際に、バスバー31,32,33が、貫通孔20との隙間の大きさの範囲内で移動することができる。従って、バスバー31,32,33が折れ曲がるように塑性変形するのを防止することができる。また、バスバー31,32,33が移動した場合でも、それに応じて封止部25が適宜弾性変形するので、シール性を維持することができる。
【0081】
また、本実施形態の端子台1において、バスバー31,32,33は板状である。貫通孔20の内壁面と、バスバー31,32,33と、の間の隙間は、少なくとも、バスバー31,32,33の厚み方向の隙間を含む。
【0082】
これにより、バスバー31,32,33の厚み方向のギャップG1がバスバー31,32,33と相手側端子の間に生じている場合でも、バスバー31,32,33が折れ曲がるように塑性変形することを防止できる。
【0083】
また、本実施形態の端子台1において、封止部25は、貫通孔20のうち、モータハウジング50の内部空間から遠い側の端部に位置する。
【0084】
ただし、封止部25は、貫通孔20のうち、モータハウジング50の内部空間に近い側の端部に位置するように構成することもできる。
【0085】
封止部25は、貫通孔20のうち、バスバー31,32,33が貫通孔20に差し込まれる方向の手前側の端部に位置する。
【0086】
ただし、封止部25は、貫通孔20のうち、バスバー31,32,33が貫通孔20に差し込まれる方向の奥側の端部に位置するように構成することもできる。
【0087】
何れの場合も、貫通孔20の端部を封止することにより、オイルの漏れを防止する簡素な構成を実現できる。
【0088】
本実施形態の端子台1において、貫通孔20は、通過凹部21と、封止凹部22と、を含む。通過凹部21及び封止凹部22は、バスバー31,32,33を通過させる。封止凹部22の内壁面とバスバー31,32,33の間の距離が、通過凹部21の内壁面とバスバー31,32,33の間の距離よりも大きい。封止部25は、封止凹部22の内壁と、バスバー31,32,33とに液密的に接触する。
【0089】
これにより、バスバー31,32,33の移動に対して封止性能が低下しにくい封止部25を実現することができる。
【0090】
本実施形態の端子台1において、封止部25は、流動性を有する状態で封止凹部22の一部に充填され、その後に固化する。
【0091】
これにより、封止部25が封止凹部22とバスバー31,32,33とに隙間なく密着する状態を容易に実現することができる。
【0092】
本実施形態の端子台1において、封止凹部22には区画シール部材26が配置される。封止凹部22の内部は、区画シール部材26によって、封止部25が配置される場所と配置されない場所に分けられる。封止部25は区画シール部材26に接触している。
【0093】
これにより、封止凹部22の全部を埋めるように封止部25を配置する必要がなくなる。従って、部品コスト又は材料コストを低減することができる。
【0094】
本実施形態の端子台1は、区画シール部材26の移動を規制するくびれ部46を備える。
【0095】
これにより、区画シール部材26を正しい位置に保持することができる。従って、封止部25を形成する場合に液状の樹脂が漏れること等を防止できる。
【0096】
本実施形態の端子台1において、くびれ部46は、バスバー31,32,33に一体的に形成されている。
【0097】
これにより、簡素な構成を実現できる。
【0098】
本実施形態の端子台1において、くびれ部46は、相対的に凹状となっている部分を含む。封止部25の少なくとも一部が凹状の部分に入っている。
【0099】
これにより、封止部25とバスバー31,32,33との強固な結合を実現できる。
【0100】
本実施形態の端子台1において、バスバー31,32,33は、間隔をあけて複数並べて配置されている。
【0101】
これにより、複数の電流経路に適用可能な、簡素な構成の端子台1を実現することができる。
【0102】
本実施形態の端子台1において、封止部25は、複数のバスバー31,32,33のそれぞれに対して設けられている。
【0103】
これにより、オイル53の漏れを確実に防止することができる。
【0104】
本実施形態の端子台1において、3つのバスバー31,32,33のうち、中央を除いた2つには、曲がり部47が形成されている。封止部25は、曲がり部47の近傍に液密的に接触するように配置されている。
【0105】
これにより、バスバー31,33をベース部3に確実に取り付けることができる。
【0106】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0107】
板状のバスバー31,32,33の代わりに、棒状のバスバーを用いることもできる。バスバーは、例えば丸棒状、角棒状に形成することができる。棒状のバスバーによっても、簡素な構成の端子台を実現することができる。棒状のバスバーが差し込まれるベース部の貫通孔の内壁と、バスバーの表面と、の間に適宜の隙間が形成されることで、バスバーの塑性変形を防止することができる。
【0108】
ベース部3に対するバスバー31,32,33の差込方向は、収容凹部13側からであっても良いし、ナット保持部6側からであっても良い。
【0109】
封止部25の材料として、紫外線硬化型の樹脂に代えて、例えば熱硬化型の樹脂を用いることができる。封止部25は、液状の樹脂を封止凹部22に注入して硬化させることに代えて、弾性変形可能なシール部材を封止凹部22に配置することで実現することもできる。
【0110】
区画シール部材26を省略し、封止凹部22の全部に樹脂を充填して封止部25を構成することもできる。また、封止凹部22を含む貫通孔20の全部に樹脂を充填することもできる。
【0111】
バスバー31,32,33においてくびれ部46を省略することができる。くびれ部46の代わりに、バスバー31,32,33に1つ以上の突起を形成することもできる。突起は、バスバー31,32,33の幅方向に突出しても良いし、バスバー31,32,33の厚み方向に突出しても良い。突起の周囲の部分は相対的に凹状になっているので、この部分に区画シール部材26を配置すれば、区画シール部材26の位置ズレを防止できる。
【0112】
バスバーの数は3つに限定されず、1つ、2つ又は4つ以上に変更することもできる。
【0113】
3つのバスバー31,32,33が、1つの共通の貫通孔20に差し込まれ、1つの共通の封止部25によってベース部3に保持されても良い。
【0114】
バスバー31,33について、曲がり部47が形成されず、中央のバスバー32と同様にストレート状に形成されても良い。
【0115】
端子台1に、インバータ52以外の電気部品が電気的に接続されても良い。
【符号の説明】
【0116】
1 端子台
3 ベース部
20 貫通孔
22 封止凹部
25 封止部
26 区画シール部材
31,32,33 バスバー(導電端子)
46 くびれ部(規制部)
50 モータハウジング
53 オイル