(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161647
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20221014BHJP
H01R 9/00 20060101ALI20221014BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20221014BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H02K5/22
H01R9/00 Z
H01R13/52 301A
H01R4/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066614
(22)【出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉田 良平
(72)【発明者】
【氏名】中里 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 旭
【テーマコード(参考)】
5E012
5E086
5E087
5H605
【Fターム(参考)】
5E012BA12
5E086DD04
5E086LL10
5E086LL20
5E087EE11
5E087FF02
5E087FF03
5E087LL04
5E087LL12
5E087RR14
5E087RR36
5H605AA01
5H605AA02
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC06
5H605EC07
5H605EC08
5H605EC18
(57)【要約】
【課題】相手側端子とバスバーとの間に位置ズレがある場合でも、端子を固定するときのバスバーの変形を防止する。
【解決手段】端子台1は、ベース部3と、バスバー31,32,33と、カバー部35と、バスバーシール26と、を備える。ベース部3には、貫通孔20が形成される。バスバー31,32,33は、貫通孔20に差し込まれる。カバー部35は、バスバー31,32,33の周囲を取り囲むように配置される。カバー部35は、貫通孔20に差し込まれる。カバー部35の熱伝導性は、バスバー31,32,33よりも低い。バスバーシール26は、ベース部3及びカバー部35に液密的に接触する。貫通孔20の内壁面とカバー部35との間に隙間が形成される。バスバーシール26が弾性変形することで、バスバー31,32,33のベース部3に対する相対移動を許容する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にオイルを貯留可能なモータハウジングに取り付けられる端子台であって、
貫通孔が形成されたベース部と、
前記貫通孔に差し込まれて、一部が前記モータハウジングの内部に位置し、別の一部が前記モータハウジングの外部に位置する導電端子と、
前記導電端子の周囲を取り囲むように配置されて前記貫通孔に差し込まれ、前記導電端子より熱伝導性が低いカバー部と、
前記ベース部及び前記カバー部に液密的に接触するシール部材と、
を備え、
前記導電端子は、前記カバー部から前記モータハウジングの内部へ向けて突出する部分と、前記カバー部から前記モータハウジングの外側へ向けて突出する部分と、を有し、
前記貫通孔の内壁面と前記カバー部との間に隙間が形成され、
前記シール部材が弾性変形することで、前記導電端子の前記ベース部に対する相対移動を許容することを特徴とする端子台。
【請求項2】
請求項1に記載の端子台であって、
前記導電端子は板状であり、
前記隙間は少なくとも、前記導電端子の厚み方向の隙間を含むことを特徴とする端子台。
【請求項3】
請求項1に記載の端子台であって、
前記導電端子は棒状であることを特徴とする端子台。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記導電端子の長手方向に垂直な面で前記カバー部を切った断面は、前記導電端子の幅方向に細長い長円状又は角丸長方形状に形成され、
前記シール部材に、前記カバー部に対する周方向の位置ズレを防止するズレ防止部が設けられていることを特徴とする端子台。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記カバー部は樹脂製であり、
前記カバー部は前記導電端子に一体成形されており、
前記カバー部と前記導電端子の間を封止する封止部が、前記カバー部から前記導電端子が突出する部分に設けられていることを特徴とする端子台。
【請求項6】
請求項5に記載の端子台であって、
前記カバー部には、前記封止部を配置するための封止用凹部が、前記導電端子を取り囲むように形成され、
前記封止部は、前記封止用凹部に充填するように設けられていることを特徴とする端子台。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記貫通孔に差し込まれた状態の前記カバー部が抜けないように規制する規制部が設けられていることを特徴とする端子台。
【請求項8】
請求項7に記載の端子台であって、
前記規制部は、
前記カバー部に設けられた第1引掛け部と、
前記ベース部に設けられた第2引掛け部と、
を備え、
前記第1引掛け部及び前記第2引掛け部が接触することで、前記貫通孔から抜ける方向の前記カバー部の移動を阻止し、
前記第1引掛け部及び前記第2引掛け部のうち少なくとも一方が、規制を解除する方向に移動可能であることを特徴とする端子台。
【請求項9】
請求項8に記載の端子台であって、
前記第2引掛け部が、規制を解除する方向に移動可能であることを特徴とする端子台。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の端子台であって、
前記ベース部には、前記ベース部及び前記モータハウジングに液密的に接触するベースシール部材が配置され、
前記導電端子の長手方向において、前記シール部材及び前記ベースシール部材は前記規制部に対して同じ側に配置されていることを特徴とする端子台。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記導電端子は、間隔をあけて複数並べて配置されることを特徴とする端子台。
【請求項12】
請求項11に記載の端子台であって、
前記カバー部及び前記シール部材は、それぞれの前記導電端子に対して設けられていることを特徴とする端子台。
【請求項13】
請求項11に記載の端子台であって、
複数の前記導電端子に対して1つの前記カバー部及び1つの前記シール部材が設けられることを特徴とする端子台。
【請求項14】
請求項1から13までの何れか一項に記載の端子台であって、
前記導電端子に曲がり部が形成されており、
前記カバー部は、前記曲がり部を覆うように配置されていることを特徴とする端子台。
【請求項15】
請求項14に記載の端子台であって、
前記シール部材は、前記曲がり部の近傍に配置されていることを特徴とする端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両において、ハウジングの内部に配置されたモータに対して、ハウジングの外部の電気部品を電気的に接続するための端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動モータによって車輪を駆動する電動車では、モータをハウジングの内部に収容し、インバータをハウジングの外部に配置する構成が用いられることがある。特許文献1は、この場合において、モータとインバータとを電気的に接続するためにハウジングに取り付けられる端子台を開示する。
【0003】
特許文献1のモータユニットは、ハウジングを有する。ハウジングの収容空間には、モータ及びギヤ部が収容される。ハウジングの収容空間には、オイルが溜まるオイル溜りが設けられる。ハウジングには開口孔が形成され、この開口孔には、配線部材としてのバスバーが通される。バスバーは、開口孔を介して、ハウジングの内部と外部とにわたって延びる。バスバーは、端子台として機能する連結部材のバスバー固定部に固定される。連結部材は、開口孔の連通を遮断する。
【0004】
特許文献1では、バスバーをインサート部材とするインサート成形によって、バスバー固定部にバスバーが埋め込まれて固定される。特許文献1は、この構成により、バスバーとバスバー固定部との間のシール性が確保されるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
端子台においては一般的に、端子台及び接続する相手側端子の各種の公差等によって、バスバーと相手側端子との間にギャップ(隙間)が生じることがある。この場合は通常、ギャップをなくすようにバスバーと相手側端子をネジ等で締め付けることで、両者を互いに接触させ、電気的な接続を実現する。しかしながら、特許文献1のようにバスバーをインサート成形する構成では、締付けに伴ってバスバー又は相手側端子が意図せず塑性変形することがあり、改善が望まれていた。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、相手側端子とバスバーとの間に位置ズレがある場合でも、端子を固定するときのバスバーの変形を防止することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の端子台が提供される。即ち、この端子台は、内部にオイルを貯留可能なモータハウジングに取り付けられる。前記端子台は、ベース部と、導電端子と、カバー部と、シール部材と、を備える。前記ベース部には、貫通孔が形成される。前記導電端子は、前記貫通孔に差し込まれて、一部が前記モータハウジングの内部に位置し、別の一部が前記モータハウジングの外部に位置する。前記カバー部は、前記導電端子の周囲を取り囲むように配置されて前記貫通孔に差し込まれる。前記カバー部の熱伝導性は、前記導電端子よりも低い。前記シール部材は、前記ベース部及び前記カバー部に液密的に接触する。前記導電端子は、前記カバー部から前記モータハウジングの内部へ向けて突出する部分と、前記カバー部から前記モータハウジングの外側へ向けて突出する部分と、を有する。前記貫通孔の内壁面と前記カバー部との間に隙間が形成される。前記シール部材が弾性変形することで、前記導電端子の前記ベース部に対する相対移動を許容する。
【0010】
公差等の何らかの理由で、導電端子と相手側端子との間にギャップが生じている場合がある。上記の構成によれば、導電端子と相手側端子を締結手段で締結する際に、導電端子が、貫通孔との隙間の大きさの範囲内で移動することができる。従って、導電端子の塑性変形等を防止することができる。また、導電端子が移動するのに応じてシール部材が適宜弾性変形するので、シール性を維持することができる。シール部材が導電端子に直接接触しないので、高温によるシール部材の劣化を防止できる。
【0011】
前記の端子台においては、以下の構成とすることができる。即ち、前記導電端子は板状である。前記隙間は少なくとも、前記導電端子の厚み方向の隙間を含む。
【0012】
この場合、導電端子の厚み方向のギャップが導電端子と相手側端子の間に生じている場合でも、導電端子が折れ曲がるように塑性変形することを防止できる。
【0013】
前記の端子台においては、前記導電端子は棒状であるように構成することもできる。
【0014】
この場合、簡素な構成の端子台を実現することができる。
【0015】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記導電端子の長手方向に垂直な面で前記カバー部を切った断面は、前記導電端子の幅方向に細長い長円状又は角丸長方形状に形成される。前記シール部材に、前記カバー部に対する周方向の位置ズレを防止するズレ防止部が設けられている。
【0016】
これにより、カバー部のコンパクト化を実現できる。また、シール部材の位置ズレによるシール性の低下を防止できる。
【0017】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記カバー部は樹脂製である。前記カバー部は前記導電端子に一体成形されている。前記カバー部と前記導電端子の間を封止する封止部が、前記カバー部から前記導電端子が突出する部分に設けられている。
【0018】
これにより、カバー部と導電端子の間からオイルが漏れるのを防止することができる。
【0019】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記カバー部には、前記封止部を配置するための封止用凹部が、前記導電端子を取り囲むように形成される。前記封止部は、前記封止用凹部に充填するように設けられている。
【0020】
これにより、封止部がカバー部と導電端子とに隙間なく密着する構成を容易に実現することができる。
【0021】
前記の端子台においては、前記貫通孔に差し込まれた状態の前記カバー部が抜けないように規制する規制部が設けられていることが好ましい。
【0022】
これにより、導電端子の抜止めを行うことができる。
【0023】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記規制部は、第1引掛け部と、第2引掛け部と、を備える。前記第1引掛け部は、前記カバー部に設けられる。前記第2引掛け部は、前記ベース部に設けられる。前記第1引掛け部及び前記第2引掛け部が接触することで、前記貫通孔から抜ける方向の前記カバー部の移動を阻止する。前記第1引掛け部及び前記第2引掛け部のうち少なくとも一方が、規制を解除する方向に移動可能である。
【0024】
これにより、簡単な構成で、導電端子の抜止めを行うことができる。また、導電端子をベース部に組み付ける作業が容易である。
【0025】
前記の端子台においては、前記第2引掛け部が、規制を解除する方向に移動可能であることが好ましい。
【0026】
これにより、簡素な構成を実現できる。
【0027】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ベース部には、前記ベース部及び前記モータハウジングに液密的に接触するベースシール部材が配置される。前記導電端子の長手方向において、前記シール部材及び前記ベースシール部材は前記規制部に対して同じ側に配置されている。
【0028】
これにより、規制部の影響でシール性が失われるのを防止することができる。
【0029】
前記の端子台においては、前記導電端子は、間隔をあけて複数並べて配置されることが好ましい。
【0030】
これにより、複数の電流経路に適用可能な、簡素な構成の端子台を実現することができる。
【0031】
前記の端子台においては、前記カバー部及び前記シール部材は、それぞれの前記導電端子に対して設けられる構成とすることができる。
【0032】
この場合、導電端子の部分からのオイルの漏れを確実に防止することができる。
【0033】
前記の端子台においては、複数の前記導電端子に対して1つの前記カバー部及び1つの前記シール部材が設けられる構成とすることができる。
【0034】
この場合、簡素な構成を実現することができる。
【0035】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記導電端子に曲がり部が形成されている。前記カバー部は、前記曲がり部を覆うように配置されている。
【0036】
これにより、カバー部を導電端子に強固に固定することができる。
【0037】
前記の端子台においては、前記シール部材は、前記曲がり部の近傍に配置されていることが好ましい。
【0038】
これにより、導電端子をベース部に確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態に係る端子台と、モータハウジング、電動モータ、及びインバータの関係を示す模式図。
【
図2】モータハウジングの取付孔に固定された状態の端子台を示す斜視図。
【
図4】バスバーをベース部に差し込む組付け作業を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る端子台1と、モータハウジング50、電動モータ51、及びインバータ52の関係を示す模式図である。
図2は、モータハウジング50の取付孔55に固定された状態の端子台1を示す斜視図である。
図3は、端子台1の分解斜視図である。
【0041】
図1に示すように、本実施形態の端子台1は、モータハウジング(ハウジング)50に固定される。モータハウジング50の内部には、電動モータ51が配置される。モータハウジング50の外部には、インバータ52が配置される。端子台1は、インバータ52と電動モータ51との間の電流経路に配置され、電流の中継装置として機能する。
【0042】
インバータ52は、図示しないバッテリーの直流電流を交流電流に変換して電動モータ51へ供給する。インバータ52は、出力する交流電流の周波数を変更すること等により、電動モータ51の回転速度を制御することができる。
【0043】
端子台1、モータハウジング50、電動モータ51及びインバータ52は、車両に備えられている。車両は、電動モータ51を駆動源として走行する。このような車両としては、例えば、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等を挙げることができる。
【0044】
モータハウジング50は、中空状に構成されている。図示しないが、モータハウジング50は、前述の電動モータ51に加えて、ギア、伝動軸等からなる動力伝達構造を収容する。この動力伝達構造を介して、電動モータ51の回転動力がモータハウジング50の外部に取り出される。この動力は、図略のドライブトレーンを介して車輪に伝達される。この結果、車両を走行させることができる。
【0045】
モータハウジング50の内部空間には、適宜の量のオイル53が貯留されている。これにより、ギア、伝動軸等の動力伝達部品を潤滑及び冷却することができる。オイル53としては、例えば、オートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF)を用いることができる。
【0046】
モータハウジング50の適宜の位置(例えば、上壁)には、端子台1を取り付けるための取付孔55が貫通状に形成されている。取付孔55の軸方向に沿って見たときに、
図2に示すように、取付孔55は長円状に形成される。
図2では、モータハウジング50のうち上壁50aの部分だけが板状の部材として模式的に示されている。
図2において、上壁50aよりも下側はモータハウジング50の内側であり、上側はモータハウジング50の外側である。
【0047】
端子台1は、
図2に示すように、ベース部3と、3つのバスバー(導電端子)31,32,33と、を備える。
【0048】
ベース部3は、ブロック状に形成されている。ベース部3は、例えば、電気絶縁性を有する合成樹脂によって構成される。ベース部3は、プラグ部4と、取付ボス部5と、ナット保持部6と、が一体的に形成された構成となっている。
【0049】
ベース部3をモータハウジング50に取り付けるとき、プラグ部4の一部が取付孔55に差し込まれる。以下、取付孔55に対してプラグ部4を差し込む方向に平行な方向を、プラグ部4の軸方向と呼ぶことがある。
【0050】
軸方向に沿って見た場合、プラグ部4は、取付孔55の形状に対応する長円状に形成されている。3つのバスバー31,32,33は、長円状のプラグ部4の長手方向に並ぶように配置される。プラグ部4は、細長く形成された3つのバスバー31,32,33の長手方向中途部を保持している。
【0051】
プラグ部4の外周面には、長円ループ状の溝11が形成されている。この溝11に、弾性変形可能なプラグシール(ベースシール部材)12が配置されている。プラグシール12は、プラグ部4の溝11と、取付孔55の内壁と、の両方に液密的に接触する。これにより、プラグ部4と取付孔55との間からオイル53が漏れないように封止することができる。
【0052】
図2及び
図3に示すように、プラグシール12の長手方向途中部には、小さな位置決め突起17が凸状に形成されている。位置決め突起17は、プラグシール12に対して十字状に交差するように形成されている。この位置決め突起17に対応して、溝11には小さな凹部が形成されている。位置決め突起17が溝11の凹部に入ることで、プラグシール12が周方向にズレないように規制することができる。
【0053】
プラグ部4には貫通孔20が、バスバー31,32,33と同じ数だけ配置されている。それぞれの貫通孔20は、プラグ部4を軸方向に貫通するように形成されている。それぞれの貫通孔20にバスバー31,32,33が挿入される。端子台1の組立てのためにプラグ部4(ベース部3)にバスバー31,32,33が差し込まれる方向は、
図2及び
図3において上から下である。
【0054】
プラグ部4の軸方向一端には、収容凹部13が形成されている。収容凹部13は、端子台1をモータハウジング50に取り付けたときに、モータハウジング50の外部を向く側を開放させている。バスバー31,32,33をベース部3に保持するための貫通孔20は、収容凹部13にそれぞれ接続されている。バスバー31,32,33は、それぞれ収容凹部13を通過するように配置されている。
【0055】
それぞれの貫通孔20は、
図3等に示すように、第1孔21と、第2孔22と、を互いに接続した構成となっている。
【0056】
第1孔21は、貫通孔20のうち、収容凹部13から遠い側の端部に配置されている。第1孔21の内壁面と、第1孔21に差し込まれるバスバー31,32,33と、の間には、隙間(特に、バスバー31,32,33の厚み方向の隙間)が形成されている。
【0057】
第2孔22は、貫通孔20が収容凹部13に接続する部分の近傍に配置されている。第2孔22は、収容凹部13側に開口している。
【0058】
この第2孔22に、後述のカバー部35及びバスバーシール(シール部材)26が配置されている。第2孔22の内壁面と、第2孔22に差し込まれるカバー部35と、の間には、隙間が形成されている。
【0059】
取付ボス部5は、軸方向で見た場合に長円状に形成されているプラグ部4の長手方向の両端に、1つずつ配置されている。それぞれの取付ボス部5には、円筒部材14がインサート成形されている。円筒部材14の軸孔は、プラグ部4の軸と平行に向けられている。円筒部材14の軸孔にボルトを差し込み、モータハウジング50のメネジ孔(図略)に捩じ込むことで、ベース部3をモータハウジング50に固定することができる。
【0060】
ナット保持部6は、プラグ部4の軸方向のうち、収容凹部13とは反対側の端部に配置されている。
図3に示すようにナット保持部6は矩形の板状に形成されており、その厚み方向は、バスバー31,32,33の厚み方向と平行である。ナット保持部6は、プラグ部4の軸方向の端面から、当該軸方向に沿って延びている。端子台1をモータハウジング50に取り付けたとき、ナット保持部6はモータハウジング50の内部空間に差し込まれる。
【0061】
詳細は後述するが、バスバー31,32,33のそれぞれの長手方向一端部が、プラグ部4から、モータハウジング50の内部空間に向かって突出している。ナット保持部6は、これらのバスバー31,32,33の突出部分に対し、厚み方向一側で対面するように配置されている。ナット保持部6の幅は、3つ並べられたバスバー31,32,33の全部に対して対面できるように定められている。
【0062】
図3に示すように、ナット保持部6のうち、バスバー31,32,33の端部に対面している部分には、4角形状の凹部44がそれぞれ形成されている。それぞれの凹部44に、4角形状のナット43が配置されている。ナット43は、ナット保持部6に対して相対回転不能である。ナット43のネジ孔の位置は、バスバー31,32,33に形成される後述の第2固定孔42に対応している。
【0063】
それぞれの凹部44に対応して、ナット保持部6に接続孔45が貫通状に形成されている。接続孔45は、凹部44の中央に開口を形成している。ネジ部材をナット43のネジ孔に差し込んだ場合に、ネジ部材の軸部を接続孔45に通すことができる。
【0064】
並んで配置されたバスバー31,32,33の間を区画するように、ナット保持部6には2つの仕切り壁15がそれぞれ一体的に形成されている。これにより、電気的な短絡を防止することができる。
【0065】
バスバー31,32,33は、何れも板状の部材である。それぞれのバスバー31,32,33は、電気の良導体である金属から構成されている。バスバー31,32,33は、厚みが一様な金属板を、細長い適宜の形状に打ち抜くことで形成される。
【0066】
バスバー31,32,33のそれぞれにおいて、長手方向のうち収容凹部13に近い側の端部には、貫通状の第1固定孔41が形成される。バスバー31,32,33のそれぞれにおいて、長手方向のうちナット保持部6に近い側の端部には、貫通状の第2固定孔42が形成される。第1固定孔41及び第2固定孔42は、円形の孔として構成される。
【0067】
第1固定孔41及び第2固定孔42には、締結手段となる部材(例えば、ネジ部材)を差し込むことができる。この締結部材を介して、電線の端部に位置する図略の端子を、バスバー31,32,33に固定することができる。以下では、バスバー31,32,33に取り付けられる端子を相手側端子と呼ぶことがある。
【0068】
それぞれのバスバー31,32,33の長手方向中途部には、カバー部35が配置されている。このカバー部35は、バスバー31,32,33をインサート部材とするインサート部材により、一体的に設けられている。カバー部35をプラグ部4の軸方向に対して垂直に切った断面は、バスバー31,32,33の幅方向に細長い長円状となっている。ただし、長円状に代えて、例えば角丸長方形状に形成されても良い。
【0069】
カバー部35の外周面には、長円ループ状の溝36が形成されている。この溝36に、弾性変形可能なバスバーシール26が配置されている。第2孔22をプラグ部4の軸方向に対して垂直に切った断面は、カバー部35に対応した長円状となっている。バスバーシール26は、バスバー31,32,33が備えるカバー部35の表面と、第2孔22の内壁と、の両方に液密的に接触する。このバスバーシール26により、貫通孔20の長手方向中途部をシールすることができる。
【0070】
バスバーシール26の長手方向途中部には、プラグシール12と同様に、小さな位置決め突起(ズレ防止部)27が凸状に形成されている。位置決め突起27は、バスバーシール26に対して十字状に交差するように形成されている。この位置決め突起27に対応して、溝36には小さな凹部が形成されている。位置決め突起27が溝36の凹部に入ることで、バスバーシール26が周方向にズレないように規制することができる。
【0071】
それぞれのカバー部35の外周面には、1対の固定突起(第1引掛け部)37が形成されている。それぞれの固定突起37は、バスバー31,32,33の厚み方向と平行な方向に突出している。
【0072】
それぞれの固定突起37に対応するように、プラグ部4のうち収容凹部13の内壁には、弾性変形可能な規制爪(第2引掛け部)16が一体的に形成されている。規制爪16は、L字状に形成され、その先端が収容凹部13の内壁から内側に突出している。
【0073】
固定突起37及び規制爪16には、傾斜面が形成されている。バスバー31,32,33をプラグ部4の貫通孔20に差し込んで取り付けるとき、傾斜面同士が接触することにより、固定突起37が規制爪16を弾性変形させる。この結果、固定突起37は規制爪16を乗り越えて、収容凹部13の内底面と、規制爪16と、の間に位置する。バスバー31,32,33が貫通孔20から抜ける方向の移動は、固定突起37が規制爪16に接触することによって阻止される。
【0074】
固定突起37及び規制爪16により規制部が構成され、この規制部により、カバー部35(ひいては、バスバー31,32,33)が貫通孔20から抜けないように規制することができる。
【0075】
バスバー31,32,33の長手方向において、バスバーシール26は、規制部(固定突起37及び規制爪16)に対して、第2固定孔42に近い側に配置されている。プラグシール12も同様に、規制部に対して、第2固定孔42に近い側に配置されている。本実施形態においては、規制爪16を形成するためにプラグ部4にU字状の貫通孔が形成されている。このU字状の孔を通じて、プラグ部4と取付孔55の間の隙間と、貫通孔20の内部空間と、が繋がっている。しかし、この貫通孔よりも第2固定孔42に近い側に、バスバーシール26及びプラグシール12の両方が位置する。従って、オイルが外部に漏れることはない。
【0076】
カバー部35のうち第1固定孔41に近い側の端面には、封止用凹部38が形成される。この封止用凹部38には封止部28が配置される。封止部28は、バスバー31,32,33の表面と、第2孔22の内壁と、に液密的に接触する。封止部28により、バスバー31,32,33と、カバー部35と、の間からオイル53が漏れないように封止することができる。
【0077】
封止部28は、例えば紫外線硬化型の樹脂によって構成される。未硬化の状態の樹脂が封止用凹部38の内部に充填された状態で樹脂を硬化させることにより、
図4等に示す封止部28を構成することができる。
【0078】
次に、本実施形態の構成の効果について説明する。
【0079】
従来の構成は、
図5(a)に示すように、バスバー固定部80にインサート成形されたバスバー81と、相手方端子92と、の間にギャップG1がある場合に、ネジ91とナット82で締め付けると、バスバー81が折れ曲がるように大きく変形してしまう場合があった。
【0080】
これに対し、本実施形態では、
図5(b)に示すように、カバー部35と貫通孔20との間に隙間(特に、バスバー31,32,33の厚み方向の隙間)が形成される。このため、ネジ91とナット43での締付けに応じて、バスバー31の全体が当該隙間の範囲で移動することができる。その分、バスバー31の折れ曲がりが軽減されるので、塑性変形を防止することができる。また、バスバーシール26が弾性変形するので、オイルの漏れを防止することができる。
【0081】
前述の規制部において、固定突起37と規制爪16は、ある程度の間隔をあけて対面している。このように遊びが形成されているので、ベース部3に対するバスバー31,32,33の移動が妨げられることはない。
【0082】
端子台1の使用に伴って、バスバー31,32,33には大電流が流れる。しかしながら、バスバーシール26は、バスバー31,32,33に直接接触するように装着されるのではなく、カバー部35の外周に装着される。また、カバー部35は、バスバー31,32,33よりも熱伝導率の低い素材で構成されている。従って、バスバー31,32,33の熱がバスバーシール26に伝わりにくいので、バスバーシール26の熱による劣化を回避することができる。言い換えれば、バスバーシール26として耐熱性の低い安価なものを利用することができるので、コストを低減できる。
【0083】
3つのバスバー31,32,33のうち、中央を除いた2つのバスバー31,33には、
図3に示すように略クランク状の曲がり部47が形成されている。この結果、モータハウジング50の内部と外部とで、バスバー31,32,33の間隔を異ならせることができる。このように曲がり部47を有するバスバー31,33において、カバー部35は、曲がり部47の部分を覆うように形成される。また、バスバーシール26は、曲がり部47の近傍に配置されている。この結果、バスバー31,33をベース部3に確実に保持させることができる。
【0084】
以上に説明したように、本実施形態の端子台1は、内部にオイル53を貯留可能なモータハウジング50に取り付けられる。本実施形態の端子台1は、ベース部3と、バスバー31,32,33と、カバー部35と、バスバーシール26と、を備える。ベース部3には、貫通孔20が形成される。バスバー31,32,33は、貫通孔20に差し込まれて、一部がモータハウジング50の内部に位置し、別の一部がモータハウジング50の外部に位置する。カバー部35は、バスバー31,32,33の周囲を取り囲むように配置されて貫通孔20に差し込まれる。カバー部35の熱伝導性は、バスバー31,32,33よりも低い。バスバーシール26は、ベース部3及びカバー部35に液密的に接触する。バスバー31,32,33は、カバー部35からモータハウジング50の内部へ向けて突出する部分と、カバー部35からモータハウジング50の外側へ向けて突出する部分と、を有する。貫通孔20の内壁面とカバー部35との間に隙間が形成される。バスバーシール26が弾性変形することで、バスバー31,32,33のベース部3に対する相対移動を許容する。
【0085】
公差等の何らかの理由で、バスバー31,32,33と相手側端子との間にギャップが生じている場合がある。本実施形態では、この場合でも、バスバー31,32,33と相手方端子をネジ等で締結する際に、バスバー31,32,33が、貫通孔20との隙間の大きさの範囲内で移動することができる。従って、バスバー31,32,33が折れ曲がるように塑性変形するのを防止することができる。また、バスバー31,32,33が移動した場合でも、それに応じてバスバーシール26が適宜弾性変形するので、シール性を維持することができる。バスバーシール26がバスバー31,32,33に直接接触しないので、高温によるバスバーシール26の劣化を防止できる。
【0086】
また、本実施形態の端子台1において、バスバー31,32,33は板状である。貫通孔20の内壁面とカバー部35との間の隙間は、少なくとも、バスバー31,32,33の厚み方向の隙間を含む。
【0087】
これにより、バスバー31,32,33の厚み方向のギャップG1がバスバー31,32,33と相手側端子の間に生じている場合でも、バスバー31,32,33が折れ曲がるように塑性変形することを防止できる。
【0088】
また、本実施形態の端子台1において、バスバー31,32,33の長手方向に垂直な面でカバー部35を切った断面は、バスバー31,32,33の幅方向に細長い長円状に形成される。バスバーシール26に、カバー部35に対する周方向の位置ズレを防止する位置決め突起27が設けられている。
【0089】
これにより、カバー部35のコンパクト化を実現できる。また、バスバーシール26の位置ズレによるシール性の低下を防止できる。
【0090】
本実施形態の端子台1において、カバー部35は樹脂製である。カバー部35はバスバー31,32,33に一体成形されている。カバー部35とバスバー31,32,33の間を封止する封止部28が、カバー部35からバスバー31,32,33が突出する部分に設けられている。
【0091】
これにより、カバー部35とバスバー31,32,33の間からオイルが漏れるのを防止することができる。
【0092】
本実施形態の端子台1において、カバー部35には、封止部28を配置するための封止用凹部38が、バスバー31,32,33を取り囲むように形成される。封止部28は、封止用凹部38に充填するように設けられている。
【0093】
これにより、封止部28がカバー部35とバスバー31,32,33とに隙間なく密着する構成を容易に実現することができる。
【0094】
本実施形態の端子台1には、貫通孔20に差し込まれた状態のカバー部35が抜けないように規制する規制部が設けられている。
【0095】
これにより、バスバー31,32,33の抜止めを行うことができる。
【0096】
本実施形態の端子台1において、規制部は、固定突起37と、規制爪16と、を備える。固定突起37は、カバー部35に設けられる。規制爪16は、ベース部3に設けられる。固定突起37及び規制爪16が接触することで、貫通孔20から抜ける方向のカバー部35の移動を阻止する。規制爪16は、弾性変形することで、規制を解除する方向に移動可能である。
【0097】
これにより、簡単な構成で、バスバー31,32,33の抜止めを行うことができる。また、バスバー31,32,33をベース部3に組み付ける作業が容易である。
【0098】
本実施形態の端子台1において、規制爪16が、規制を解除する方向に移動可能である。
【0099】
これにより、簡素な構成を実現できる。
【0100】
本実施形態の端子台1において、ベース部3には、ベース部3及びモータハウジング50に液密的に接触するプラグシール12が配置される。バスバー31,32,33の長手方向において、バスバーシール26及びプラグシール12は規制部(固定突起37及び規制爪16)に対して同じ側に配置されている。
【0101】
これにより、規制部の影響でシール性が失われるのを防止することができる。
【0102】
本実施形態の端子台1において、バスバー31,32,33は、間隔をあけて複数並べて配置されている。
【0103】
これにより、複数の電流経路に適用可能な、簡素な構成の端子台1を実現することができる。
【0104】
本実施形態の端子台1において、カバー部35及びバスバーシール26は、それぞれのバスバー31,32,33に対して設けられている。
【0105】
これにより、バスバー31,32,33の部分からのオイル53の漏れを確実に防止することができる。
【0106】
本実施形態の端子台1において、3つのバスバー31,32,33のうち、中央を除いた2つには、曲がり部47が形成されている。これらのバスバー31,33において、カバー部35は、曲がり部47を覆うように配置されている。
【0107】
これにより、カバー部35をバスバー31,33に強固に固定することができる。
【0108】
本実施形態において、曲がり部47を有するバスバー31,33に関して、バスバーシール26は、曲がり部47の近傍に配置されている。
【0109】
これにより、バスバー31,33をベース部3に確実に取り付けることができる。
【0110】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0111】
ベース部3に対するバスバー31,32,33の差込方向は、収容凹部13側からであっても良いし、ナット保持部6側からであっても良い。
【0112】
封止部28の材料として、紫外線硬化型の樹脂に代えて、例えば熱硬化型の樹脂を用いることができる。封止部28は、液状の樹脂を封止用凹部38に注入して硬化させることに代えて、単にシール部材を封止用凹部38に配置することで実現することもできる。封止部28は、省略することもできる。
【0113】
板状のバスバー31,32,33の代わりに、棒状のバスバーを用いることもできる。バスバーは、例えば丸棒状、角棒状に形成することができる。棒状のバスバーによっても、簡素な構成の端子台を実現することができる。棒状のバスバーが差し込まれるベース部の貫通孔の内壁と、バスバーの表面と、の間に適宜の隙間が形成されることで、バスバーの塑性変形を防止することができる。
【0114】
バスバーの数は3つに限定されず、1つ、2つ又は4つ以上に変更することもできる。
【0115】
3つのバスバー31,32,33について、1つの共通のカバー部35が形成されても良い。この場合、プラグ部4には1つの大きな貫通孔20が形成される。1つのカバー部35が貫通孔20に差し込まれ、1つの共通のバスバーシール26によってベース部3に保持される。
【0116】
バスバー31,33について、曲がり部47が形成されず、中央のバスバー32と同様にストレート状に形成されても良い。
【0117】
固定突起37の代わりに、規制爪16で引っ掛けることが可能な凹部がカバー部35に形成されても良い。規制爪16の代わりに、固定突起37で引っ掛けることが可能な凹部がプラグ部4に形成されても良い。
【0118】
カバー部35に設けられる2つの固定突起37のうち少なくとも一方が、規制爪16から退避する方向に弾性変形して移動可能に構成しても良い。この場合、対応する規制爪16を、弾性変形不能な突起として構成することもできる。
【0119】
バスバー31,32,33の長手方向において、バスバーシール26及びプラグシール12の両方が、規制部(固定突起37及び規制爪16)に対して、第1固定孔41に近い側に配置されても良い。
【0120】
端子台1に、インバータ52以外の電気部品が電気的に接続されても良い。
【符号の説明】
【0121】
1 端子台
3 ベース部
12 プラグシール(ベースシール部材)
16 規制爪(第2引掛け部)
20 貫通孔
26 バスバーシール(シール部材)
27 位置決め突起(ズレ防止部)
28 封止部
31,32,33 バスバー(導電端子)
35 カバー部
37 固定突起(第1引掛け部)
38 封止用凹部
47 曲がり部
50 モータハウジング
53 オイル