(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161790
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】導電性基板の製造方法及び導電性基板
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20221014BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20221014BHJP
C23C 18/44 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01B13/00 503B
H01B5/14 A
C23C18/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124371
(22)【出願日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021066722
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021110396
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】中山 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】温井 克行
(72)【発明者】
【氏名】元村 勇也
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹
(72)【発明者】
【氏名】中平 真一
【テーマコード(参考)】
4K022
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4K022AA03
4K022AA20
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA01
4K022DA01
4K022DB01
4K022DB08
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC02
5G307FC09
5G323BA01
5G323BA05
5G323BB01
5G323BB02
5G323BC03
(57)【要約】
【課題】電気抵抗が小さく、視認されてにくい導電性細線を有する導電性基板の製造方法及び導電性基板を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に配置された導電性細線とを含む導電性基板を製造する、導電性基板の製造方法であって、基板上に、金属を含む細線を形成する工程1と、細線と有機酸を含む溶液とを接触させる工程2と、細線に対してめっき処理を施して、導電性細線を形成する工程3と、をこの順に有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に配置された導電性細線とを含む導電性基板を製造する、導電性基板の製造方法であって、
基板上に、金属を含む細線を形成する工程1と、
前記細線と有機酸を含む溶液とを接触させる工程2と、
前記細線に対してめっき処理を施して、導電性細線を形成する工程3と、をこの順に有する、導電性基板の製造方法。
【請求項2】
前記工程1と前記工程2との間に、前記細線に対してめっき処理を施す工程4を更に有する、請求項1に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項3】
前記有機酸を含む溶液のpH値が、温度25℃において1.5~6.0の範囲である、請求項1又は2に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項4】
前記有機酸を含む溶液が、カルボン酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項5】
前記カルボン酸は、2価以上のカルボン酸である、請求項4に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項6】
前記カルボン酸は、グルタル酸、及び、クエン酸からなる群から選択されるいずれかである、請求項4又は5に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項7】
前記有機酸を含む溶液が、第4級アンモニウム塩を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項8】
前記第4級アンモニウム塩が、一般式(X)で表される化合物、一般式(Y)で表される化合物、及び、一般式(Z)で表される化合物からなる群から選択される、請求項7に記載の導電性基板の製造方法。
【化1】
一般式(X)中、R
a1及びR
a2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、R
a3及びR
a4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Y)中、R
b1~R
b3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、R
b4は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Z)中、R
c1は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
【請求項9】
前記有機酸を含む溶液は、2価以上のカルボン酸と、一般式(X)で表される化合物、一般式(Y)で表される化合物、及び、一般式(Z)で表される化合物からなる群から選択される化合物とを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性基板の製造方法。
【化2】
一般式(X)中、R
a1及びR
a2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、R
a3及びR
a4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Y)中、R
b1~R
b3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、R
b4は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Z)中、R
c1は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
【請求項10】
前記工程2において、前記細線と前記有機酸を含む前記溶液との接触時間が、5~180秒間である、請求項1~9のいずれか1項に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項11】
前記工程1と前記工程2との間、又は、前記工程2と前記工程3との間に、
前記細線に対して、第4級アンモニウム塩を含む溶液を接触させる工程5を更に有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項12】
前記工程3又は前記工程4は、前記細線を、pH3~7の酸性溶液に接触させ、前記めっき処理によるめっき反応を停止させる中和洗浄工程を有する、請求項2~11のいずれか1項に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項13】
前記酸性溶液は、緩衝作用を有する、請求項12に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項14】
前記細線は、高分子を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項15】
基板と、前記基板上に配置され、金属を含む導電性細線とを含む導電性基板であって、
前記導電性細線が延在する方向と直交する方向での前記導電性細線の垂直断面において、
前記金属が観察される観察領域の最大内接円内での前記金属を示す領域の割合が81~99%であり、
反射光を用いて前記導電性細線を撮像して得られるグレー値が256階調で表される輝度の値で150以下である、導電性基板。
【請求項16】
前記金属が観察される前記観察領域に外接する、4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺が前記基板の表面に平行な外接四角形において、前記外接四角形の前記基板の前記表面に垂直な辺と前記観察領域との接点のうち、前記基板の前記表面から最も離れた位置にある上部接点を1つの角とした、前記外接四角形の前記上部接点より前記基板の前記表面の反対側の四角形領域を上部外接四角形とし、前記上部外接四角形は、4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺が前記基板の前記表面に平行であり、
前記上部外接四角形内において、前記金属が存在する領域の輪郭の長さをLmとし、前記上部外接四角形の4辺の合計長さをLsとし、Lm/Lsで表される比をγとするとき、1.3≦γ≦2.0である、請求項15に記載の導電性基板。
【請求項17】
前記導電性細線の線幅は、0.1μm以上5.0μm未満である、請求項15又は16に記載の導電性基板。
【請求項18】
前記導電性細線が前記延在する方向と前記直交する方向での前記導電性細線の前記垂直断面において、
前記導電性細線の線幅に対する前記導電性細線の高さの比が0.6以上1.5未満である、請求項15~17のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項19】
前記基板は、可撓性フィルムで構成される、請求項15~18のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項20】
前記可撓性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、又は、ポリカーボネートを含む、請求項19に記載の導電性基板。
【請求項21】
前記導電性細線が含む前記金属は、銀を含む、請求項15~20のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項22】
前記導電性細線が含む前記金属は、銀である、請求項15~21のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項23】
前記導電性細線が含む前記金属は、粒子状である、請求項15~22のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項24】
前記導電性細線は、高分子を含む、請求項15~23のいずれか1項に記載の導電性基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性細線を有する導電性基板の製造方法及び導電性基板に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性細線(導電性を示す細線状の配線)を有する導電性基板は、タッチパネル等の種々の用途に幅広く利用されている。
導電性基板の導電性細線は、例えば、特許文献1に示されるように、ハロゲン化銀を含む感光性層に、露光処理、及び、現像処理等を順次実施して、金属銀を含む導電性細線が形成されている。
【0003】
特許文献1には、支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有する導電性材料前駆体を用いて製造する導電性材料の製造方法が記載されている。特許文献1の導電性材料の製造方法では、導電性材料前駆体を、ハロゲン化銀乳剤層を構成するバインダーに作用する酵素を含有する酵素含有処理液で処理し、その後めっき処理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性細線を有する導電性基板が、タッチパネルに用いられた場合、導電性細線は、導電性、すなわち、電気抵抗が小さいことが要求され、かつ視認されにくいことも要求される。
しかしながら、特許文献1では、上記特性の両立ができていなかった。
【0006】
本発明の目的は、電気抵抗が小さく、視認されてにくい導電性細線を有する導電性基板の製造方法及び導電性基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様は、基板と、基板上に配置された導電性細線とを含む導電性基板を製造する、導電性基板の製造方法であって、基板上に、金属を含む細線を形成する工程1と、細線と有機酸を含む溶液とを接触させる工程2と、細線に対してめっき処理を施して、導電性細線を形成する工程3と、をこの順に有する、導電性基板の製造方法を提供するものである。
【0008】
工程1と工程2との間に、細線に対してめっき処理を施す工程4を更に有することが好ましい。
有機酸を含む溶液のpH値が、温度25℃において1.5~6.0の範囲であることが好ましい。
有機酸を含む溶液が、カルボン酸を含むことが好ましい。
カルボン酸は、2価以上のカルボン酸であることが好ましい。
カルボン酸は、グルタル酸、及び、クエン酸からなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。
有機酸を含む溶液が、第4級アンモニウム塩を更に含むことが好ましい。
第4級アンモニウム塩が、一般式(X)で表される化合物、一般式(Y)で表される化合物、及び、一般式(Z)で表される化合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0009】
【0010】
一般式(X)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Y)中、Rb1~Rb3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、Rb4は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Z)中、Rc1は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
【0011】
有機酸を含む溶液は、2価以上のカルボン酸と、一般式(X)で表される化合物、一般式(Y)で表される化合物、及び、一般式(Z)で表される化合物からなる群から選択される化合物とを含むことが好ましい。
【0012】
【0013】
一般式(X)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Y)中、Rb1~Rb3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、Rb4は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
一般式(Z)中、Rc1は、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
【0014】
工程2において、細線と有機酸を含む溶液との接触時間が、5~180秒間であることが好ましい。
工程1と工程2との間、又は、工程2と工程3との間に、細線に対して、第4級アンモニウム塩を含む溶液を接触させる工程5を更に有することが好ましい。
工程3又は工程4は、細線を、pH3~7の酸性溶液に接触させ、めっき処理によるめっき反応を停止させる中和洗浄工程を有することが好ましい。
酸性溶液は、緩衝作用を有することが好ましい。
細線は、高分子を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の一態様は、基板と、基板上に配置され、金属を含む導電性細線とを含む導電性基板であって、導電性細線が延在する方向と直交する方向での導電性細線の垂直断面において、金属が観察される観察領域の最大内接円内での金属を示す領域の割合が81~99%であり、反射光を用いて導電性細線を撮像して得られるグレー値が256階調で表される輝度の値で150以下である、導電性基板を提供するものである。
金属が観察される観察領域に外接する、4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺が基板の表面に平行な外接四角形において、外接四角形の基板の表面に垂直な辺と観察領域との接点のうち、基板の表面から最も離れた位置にある上部接点を1つの角とした、外接四角形の上部接点より基板の表面の反対側の四角形領域を上部外接四角形とし、上部外接四角形は、4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺が基板の表面に平行であり、上部外接四角形内において、金属が存在する領域の輪郭の長さをLmとし、上部外接四角形の4辺の合計長さをLsとし、Lm/Lsで表される比をγとするとき、1.3≦γ≦2.0であることが好ましい。
【0016】
導電性細線の線幅は、0.1μm以上5.0μm未満であることが好ましい。
導電性細線が延在する方向と直交する方向での導電性細線の垂直断面において、導電性細線の線幅に対する導電性細線の高さの比が0.6以上1.5未満であることが好ましい。
基板は、可撓性フィルムで構成されることが好ましい。
可撓性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、又は、ポリカーボネートを含むことが好ましい。
導電性細線が含む金属は、銀を含むことが好ましい。
導電性細線が含む金属は、銀であることが好ましい。
導電性細線が含む金属は、粒子状であることが好ましい。
導電性細線は、高分子を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気抵抗が小さく、視認されてにくい導電性細線を有する導電性基板の製造方法及び導電性基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の導電性基板一例を示す模式的斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の導電性基板の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の割合の測定方法の一工程を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の割合の測定方法の一工程を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の割合の測定方法の一工程を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の割合の測定方法の一工程を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の外接四角形を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の外接四角形を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の外接四角形を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線により形成されるメッシュパターンの一例を示す平面図である。
【
図11】本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの一例を示す模式的平面図である。
【
図12】本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第1の例を示す模式図である。
【
図13】本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第2の例を示す模式図である。
【
図14】本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第3の例を示す模式図である。
【
図15】本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第4の例を示す模式図である。
【
図16】本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第5の例を示す模式図である。
【
図17】本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの他の例を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の導電性基板の製造方法及び導電性基板を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εα~数値εβとは、εの範囲は数値εαと数値εβを含む範囲であり、数学記号で示せばεα≦ε≦εβである。
「具体的な数値で表された角度」、「平行」、「垂直」及び「直交」等の角度は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0020】
<導電性基板>
図1は本発明の実施形態の導電性基板一例を示す模式的斜視図であり、
図2は本発明の実施形態の導電性基板の一例を示す模式図である。
導電性基板10は、基板12と、基板12の表面12a上に配置され、金属を含む導電性細線14とを有する。なお、
図1では、一方向に延びる導電性細線14が2つ示されているが、導電性細線14の配置形態、及び、その数は特に制限されない。
導電性細線14は、上述のように金属を含むが、例えば、
図2に示すように金属15と高分子16とを含むことが好ましい。
図2に示す導電性細線14では、金属15が高分子16中に存在している。なお、金属15は、例えば、粒子状であるが、粒子状に限定されず、例えば、融着して一部又は全体にわたって結合している等の形態であってもよい。
【0021】
図1及び
図2に導電性細線14が延在する方向DLに直交する方向DWでの導電性細線14の垂直断面Acを示す。
導電性細線14の垂直断面Acとは、導電性細線14が延在する方向DLに直交する面で切断した際の断面のことである。つまり、導電性細線14の垂直断面Acとは、導電性細線14が延在する方向DLに直交する方向DWに沿って、導電性細線14の表面14aに垂直な面で切断した際の断面である。
導電性細線14の垂直断面Acにおいて、金属15が観察される観察領域Rの最大内接円S内での金属15を示す領域の割合が81~99%である。中でも、好ましくは、86%以上であり、より好ましくは、88%以上である。上限は、好ましくは、96%以下であり、より好ましくは、94%以下である。
上述の金属を示す領域の割合が81~99%であれば、電気抵抗を小さくでき導電性が得られ、かつ導電性細線14の線見えを防止できる。
導電性細線14において、金属15を示す領域の割合が81%未満では、十分な導電性が得られない。一方、導電性細線14において、金属15を示す領域の割合が99%を超えると、折り曲げ性が悪くなる。
【0022】
導電性細線14を反射光を用いて撮像して得られるグレー値は、256階調で表される輝度の値で150以下である。256階調の値は毎回、JIS(日本産業規格) K 5602に準拠した標準白色板で補正した値である。グレー値は、輝度の値で0~150であることが好ましく、より好ましくは0~130である。上述のグレー値が輝度の値で150以下であれば、黒化処理をすることなく、導電性細線14の線見えを防止できる。
グレー値は、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX-5000)を用いて、レンズ倍率×5000倍、照明輝度70%にて、以下のように、導電性細線14を反射光を用いて観察し、撮影する。撮影した導電性細線14の画像上に長さ20μmに相当する線を引く。次に、画像処理ソフトImageJを用いて、上述の長さ20μmに相当する線のグレー値を算出する。1画像につき3回グレー値を算出して、平均値を求める。この平均値を、導電性細線14のグレー値とする。なお、グレー値の測定は、毎回標準校正板を用いたキャリブレーションを行った後に撮影を実施した。
【0023】
導電性基板10において、延在する1本の導電性細線を選択して、選択された1本の導電性細線の任意の箇所を選び垂直断面Acを得る。垂直断面Acを走査型電子顕微鏡により観察して、以下のようにして最大内接円S、金属を示す割合、及び、比γを求める。
【0024】
走査型電子顕微鏡による測定方法は、導電性細線14の表面に導電性を付与するため、イオンスパッタ装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製E-1030型イオンスパッタ)を用いてPtを被覆する。この状態で、集束イオンビーム加工機能付き走査型電子顕微鏡(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Helios600i)のイオンビーム加工機能にて導電性細線14の垂直断面Acを加工し、露出した断面形態を観察することにより、導電性細線14内部の金属15が存在する領域を観察でき、垂直断面Acの観察画像が得られる。なお、観察条件は、反射電子モードで、加速電圧:1kVで行う。
【0025】
図2に示すように導電性細線14の垂直断面Acには金属15が存在する。
最大内接円Sは、垂直断面Acにおいて金属15が観察される観察領域Rにおける内接円のうち、最大のものである。
ここで、
図3~6は、本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の割合の測定方法を工程順に示す模式図である。
まず、導電性細線14の垂直断面Ac(
図2参照)の観察画像(図示せず)を得る。観察画像は、コンピューターにより解析可能な画像データの形式で取得する。画像データは、2値データでも、グレースケールデータでも、RGBのデータでもよい。例えば、観察画像から、
図3に示す観察領域Rの画像データを得る。
【0026】
次に、観察領域Rから、
図4に示す輪郭線R
Lを得る。輪郭線R
Lは垂直断面Ac(
図2参照)において金属が観察される観察領域Rの輪郭を示す。垂直断面Ac(
図2参照)では輪郭線R
L内に金属15が存在する。
輪郭線R
Lは、例えば、画像解析ソフトImageJを用いて観察領域Rの画像から抽出する。なお、輪郭線R
Lを抽出できれば、画像解析ソフトは、ImageJに特に限定されるものではない。
次に、輪郭線R
Lに対して、最大内接円Sを設定する。最大内接円Sは、例えば、輪郭線R
L内において、ランダムに内接円を発生させて、発生させた内接円のうち、半径が最大のものを最大内接円Sとする。最大半径となる内接円が複数ある場合、内接円の中心位置が、観察領域Rの画像データにおける重心に近いものを、最大内接円Sとする。このため、最大半径となる内接円が複数ある場合には、観察領域Rの画像データにおける質量中心を求め、質量中心の位置の位置情報を記憶する。質量中心の位置は、画像処理ソフトを用いる等、公知の方法を用いて得られる。質量中心の位置の位置情報は、例えば、画像データにおける位置座標である。
なお、内接円の中心位置、及び最大内接円Sの中心位置は、輪郭線R
L内であれば、特に限定されるものではない。最大内接円Sの中心位置の位置情報を記憶する。中心位置の位置情報は、例えば、画像データにおける位置座標である。
【0027】
次に、
図3で得られた観察領域Rに、最大内接円Sの中心位置の位置情報を用いて、
図6に示すように最大内接円Sを合わせる。次に、最大内接円S内における金属15を示す領域の面積を測定する。最大内接円S内における金属15を示す領域の面積をSmとする。なお、最大内接円Sの面積をSsとする。最大内接円Sの面積Ssに対する、最大内接円S内における金属15を示す領域の面積Smを求める。すなわち、(Sm/Ss)×100(%)を求める。これにより、金属が観察される観察領域の最大内接円内での金属を示す領域の割合(%)を得ることができる。
【0028】
ここで、
図7は本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の外接四角形を示す模式図であり、
図8は本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の外接四角形を示す模式図であり、
図9は本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線における金属を示す領域の外接四角形を示す模式図である。
【0029】
導電性細線14では、また、金属15が観察される観察領域Rに外接する、4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺20aが基板12の表面12aに平行な外接四角形20において、外接四角形20の基板12の表面12aに垂直な辺20b、20cと観察領域Rとの接点21、22のうち、基板12の表面12aから最も離れた位置にある上部接点22a(
図8参照)を1つの角とした、外接四角形20の上部接点22aより基板12の反対側の四角形領域を上部外接四角形23(
図8、9参照)とする。上部外接四角形23は、4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺23aが基板12(
図7参照)の表面12a(
図7参照)に平行である。
【0030】
上部外接四角形23内において、金属15が存在する領域Rb(
図8参照)の輪郭線Rm(
図8参照)の長さをLmとし、上部外接四角形23(
図9参照)の4辺の合計長さをLsとし、Lm/Lsで表される比をγとするとき、1.3≦γ≦2.0であることが好ましい。Lm/Lsで表される比γは、導電性細線14の表面14a側の凹凸が反映されるパラメータである。比γの値が大きいと、金属15が存在する領域Rb(
図8参照)の輪郭線Rm(
図8参照)の長さLmが長く、長さLmと、上部外接四角形23(
図9参照)の4辺の合計長さLsとの差が大きい。すなわち、比γの値が大きいと、導電性細線14の表面積が大きく、導電性細線14の表面14aが凹凸していることを示す。なお、比γの値が2.0以内のとき、導電性細線14の表面14aの凹凸が好ましい大きさとなり、拡散反射光が小さくなり導電性細線14が見えにくくなる。
比γの値が小さいと、長さLmが短い。すなわち、比γの値が小さいと、導電性細線14の表面積が小さく、導電性細線14の表面14aの凸凹が小さいことを示している。なお、比γの値が1.3以上のとき、導電性細線14の表面14aの凹凸が好ましい大きさとなり、正反射光が小さくなり導電性細線14が見えにくくなる。
比γの値が1.3≦γ≦2.0であることにより、導電性細線14の反射率が低下し、輝度が低下する。
【0031】
上述の比γは、まず、
図7に示すように金属15が観察される観察領域Rの画像データを得る。画像データは、上述のようにコンピューターにより解析可能なデータである。
次に、金属15が観察される観察領域Rに外接する外接四角形20を設定する。外接四角形20は、上述のように4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺20aが基板12の表面12aに平行である。4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺が基板12の表面12aに平行な外接四角形をランダムに発生させ、発生させた外接四角形のうち、面積が最大のものが外接四角形20である。
次に、外接四角形20の基板12の表面12aに垂直な辺20b、20cと観察領域Rとの接点21、22を求める。接点21、22のうち、基板12(
図1参照)の表面12a(
図7参照)から最も離れた位置にある接点22を上部接点22a(
図8参照)とする。この上部接点22aを1つの角とした外接四角形20の上部接点22aより基板12の反対側の四角形領域を上部外接四角形23(
図8参照)とする。上部外接四角形23は、例えば、外接四角形20をトリミングすることにより得られる。上述のように上部外接四角形23は、4つの角の角度がそれぞれ90°であり、かつ一辺23aが基板12(
図7参照)の表面12a(
図7参照)に平行である。
上部外接四角形23内において、金属15が存在する領域Rb(
図8参照)に対して、輪郭線Rm(
図9参照)を得る。
図9に示す輪郭線Rmは、上述の輪郭線R
L(
図4参照)と同様にして得ることができる。
次に、輪郭線Rmの長さLmを求める。また、上部外接四角形23の4辺の合計長さLsを求める。次に、Lm/Lsで表される比γを求める。
なお、3つの導電性細線14について比γを求め、その平均値を、最終的な比γの値とする。
【0032】
導電性細線は金属を含む。金属は、導電性細線の導電性を担保する部分である。
金属としては、導電性がより優れる点で、銀(金属銀)、銅(金属銅)、金(金属金)、ニッケル(金属ニッケル)、パラジウム(金属パラジウム)、又は、これらのうちの2種以上の混合物が好ましく、銀、銅、又は、その混合物がより好ましく、銀が更に好ましくい。導電性細線に、金属として銀だけが含まれていてもよく、金属は全て銀で構成されることが好ましい。金属を全て銀で構成することにより、導電性細線の断線故障の発生が低下する。
なお、金属は、導電性細線14中に粒子状の形態で存在しているが、この形態には限定されず、例えば、金属が層状となって導電性細線中に分散した形態であってもよい。
また、導電性細線は、高分子を含んでもよい。この場合、金属粒子が、高分子中に離散して存在してもよく、高分子中に、金属粒子が凝集して凝集体として存在してもよい。高分子の種類は特に制限されず、公知の高分子を使用することができる。
高分子としては、後述する導電性細線の製造方法の説明で述べられる細線に含まれる高分子が挙げられ、後述する特定高分子が好ましい。
【0033】
基板12は、例えば、可撓性フィルムで構成される。可撓性フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)で構成される。
【0034】
導電性細線14の線幅Wa(
図2参照)は、導電性細線14が延在する方向DL(
図1参照)に直交する方向DW(
図2参照)における導電性細線14の金属15が存在する領域の最大の長さである。導電性細線14の線幅Waは、折り曲げ性及び視認しづらさのバランスの点から、0.1μm以上5.0μm未満であることが好ましい。なかでも、導電性細線14が視認されにくい点から、線幅Waは2.5μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、導電性細線の導電性がより優れる点から、0.5μm以上が好ましく、1.2μm以上がより好ましい。
導電性細線の高さT(
図2参照)は、基板12の表面12aに垂直な方向における導電性細線14の金属15が存在する領域の最大の長さである。導電性細線14の高さTは、特に制限されないが、導電性と折り曲げ性のバランスの点から、0.06μm以上7.5μm未満であることが好ましく、高さTは0.3以上3μm以下であることがより好ましい。
【0035】
上述の導電性細線14の線幅Waは、走査型電子顕微鏡を用いて、1本の導電性細線の線幅に相当する任意の5箇所を選択し、5箇所の線幅相当の算術平均値を線幅Waとする。
また、上述の導電性細線14の高さTは、走査型電子顕微鏡を用いて、1本の導電性細線の高さに相当する任意の5箇所を選択し、5箇所の高さに相当する部分の算術平均値を高さTとする。
導電性細線14の導電性を確保するためには、ある程度のアスペクト比(例えば、アスペクト比:0.3~2.5)が必要であるが、アスペクト比がある程度低いほうが、ロールの面圧を受けにくく、断線等が生じにくい。このため、導電性細線14の垂直断面Acにおいて、導電性細線14の線幅Waに対する導電性細線14の高さTの比が0.6以上1.5未満であることが好ましい。
【0036】
導電性細線の線抵抗値は、200Ω/mm未満であることが好ましい。なかでも、タッチパネルとして用いた際の操作性の点から、100Ω/mm未満であることがより好ましく、60Ω/mm未満が更に好ましい。
線抵抗値とは、四端針法で測定した抵抗値を測定端子間距離で除したものである。より具体的には、メッシュパターンを構成する任意の1本の導電性細線の両端を断線させてメッシュパターンから切り離した後に、4本(A、B、C、D)のマイクロプローブ(株式会社マイクロサポート製タングステンプローブ(直径0.5μm))を該切り離された導電性細線に接触させて、最外プローブA、Dにソースメーター(KEITHLEY製ソースメーター 2400型汎用ソースメーター)を用いて内部プローブB、C間の電圧Vが5mVになるよう定電流Iを印加し、抵抗値Ri=V/Iを測定し、得られた抵抗値RiをB、C間距離で除して線抵抗値を求める。
【0037】
導電性細線は所定のパターンを形成していてもよく、例えば、そのパターンは特に制限されず、正三角形、二等辺三角形、直角三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形、(正)六角形、(正)八角形等の(正)n角形、円、楕円、及び、星形等を組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、メッシュ状(メッシュパターン)であることがより好ましい。
メッシュ状とは、
図10に示すように、交差する導電性細線14Bにより構成される複数の開口部(格子)18を含んでいる形状を意図する。導電性細線14Bは、上述の導電性細線14と同じ構成である。
図10において、開口部18は、ひし形(正方形)の形状を有しているが、他の形状であってもよい。例えば、多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形、及び、ランダムな多角形)としてもよい。また、一辺の形状を直線状の他、湾曲形状にしてもよいし、円弧状にしてもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する二辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する二辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。
ここで、
図10は本発明の実施形態の導電性基板の導電性細線により形成されるメッシュパターンの一例を示す平面図である。
【0038】
開口部18の一辺の長さLは特に制限されないが、1500μm以下が好ましく、1300μm以下がより好ましく、1000μm以下であることが更に好ましく、5μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、80μm以上が更に好ましい。開口部の辺の長さが上述の範囲である場合には、更に透明性も良好に保つことが可能であり、導電性基板を表示装置の前面にとりつけた際に、違和感なく表示を視認することができる。
可視光透過率の点から、メッシュパターンの開口率は、90.00%以上が好ましく、95.00%以上がより好ましく、99.50%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、100%未満が挙げられる。
開口率とは、メッシュパターン領域中における導電性細線がある領域を除いた基板上の領域が全体に占める割合に相当する。
【0039】
<タッチパネルセンサー>
図11は本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの一例を示す模式的平面図である。
タッチパネルセンサー30は、タッチパネル(図示せず)のタッチセンサーとして機能する部位であり、使用者によって入力操作が可能な検出領域E
1である検出部32と、検出領域E
1の外側に位置する周辺領域E
2に周辺配線部33とを有する。
検出部32は、例えば、第1検出電極層34Aと第2検出電極層34Bとを有する。第1検出電極層34Aと第2検出電極層34Bとは、例えば、基板12を介して配置されている。第1検出電極層34Aと第2検出電極層34Bとは基板により電気的に絶縁される。基板は電気的な絶縁層として機能する。
図11に示すように、第1検出電極層34Aは、複数の第1検出電極35と隣接した第1検出電極35間に配置され、第1検出電極35と絶縁された複数の第1ダミー電極36aとを有する。
【0040】
複数の第1検出電極35は、互いに平行にX方向に延びる帯状の電極であり、互いにX方向と直交するY方向に間隔をあけて、互いにY方向において電気的に絶縁された状態で基板12の表面12a上に設けられている。また、複数の第1ダミー電極36aは、第1検出電極35間に配置され、第1検出電極35と電気的に絶縁された状態で基板12の表面12a上に設けられている。第1検出電極35は、それぞれX方向の少なくとも一端に第1電極端子38が設けられている。
第2検出電極層34Bは、複数の第2検出電極37と隣接した第2検出電極37間に配置され、第2検出電極37と絶縁された複数の第2ダミー電極36bとを有する。複数の第2検出電極37は、互いに平行にY方向に延びる帯状の電極であり、互いにX方向に間隔をあけて、互いにX方向において電気的に絶縁された状態で基板12の裏面12b上に設けられている。また、複数の第2ダミー電極36bは、第2検出電極37間に配置され、第2検出電極37と電気的に絶縁された状態で基板12の裏面12b上に設けられている。第2検出電極37は、それぞれY方向の一方の端に第2電極端子39が設けられている。
【0041】
複数の第1検出電極35と複数の第2検出電極37とは、直交して設けられているが、上述のように基板12により互いに電気的に絶縁されている。
なお、第1検出電極35及び第2検出電極37における第1ダミー電極36a及び第2ダミー電極36bは、第1検出電極35又は第2検出電極37と断線部により分断されており、電気的に接続されていない領域である。このため、上述のように、複数の第1検出電極35は互いにY方向において電気的に絶縁された状態であり、複数の第2検出電極37は互いにX方向において電気的に絶縁された状態である。
図11に示すように検出部32では、第1検出電極35が6つ、第2検出電極37が5つ設けられているが、その数は特に限定されるものではなく複数あればよい。
第1検出電極層34Aと第2検出電極層34Bとは、導電性細線14(
図1参照)により構成される。第1検出電極35及び第2検出電極37が、導電性細線14によるメッシュパターンを有する金属メッシュである場合、第1ダミー電極36a及び第2ダミー電極36bも導電性細線14によるメッシュパターンを有する金属メッシュである。
第1検出電極35の電極幅及び第2検出電極37の電極幅は、特に制限はないが、例えば、1~5mmであり、電極間ピッチは1~6mmである。第1検出電極35の電極幅はY方向の最大長さであり、第2検出電極37の電極幅はX方向の最大長さである。
【0042】
周辺配線部33は、第1検出電極35及び第2検出電極37にタッチ駆動信号及びタッチ検出信号をコントローラ(図示せず)から送信又は伝達するための配線である周辺配線(第1周辺配線40a、第2周辺配線40b)が配置された領域である。周辺配線部33は、複数の第1周辺配線40a及び複数の第2周辺配線40bを有する。第1周辺配線40aは、一端が第1電極端子38を介して第1検出電極35に電気的に接続され、他端が第1外部接続端子41aに電気的に接続されている。また、第2周辺配線40bは、一端が第2電極端子39を介して第2検出電極37に電気的に接続されて、他端が第2外部接続端子41bに電気的に接続されている。
第1外部接続端子41a及び第2外部接続端子41bに、フレキシブル回路基板42が電気的に接続されて、コントローラ(図示せず)と接続される。
なお、第1電極端子38及び第2電極端子39は、ベタ膜形状でもよく、特開2013-127658号公報に示されるようなメッシュ形状でもよい。第1電極端子38及び第2電極端子39の幅の好ましい範囲は、それぞれ第1検出電極35及び第2検出電極37の電極幅の1/3倍以上1.2倍以下である。
【0043】
第1検出電極35と第1ダミー電極36aと第1電極端子38と第1周辺配線40aとは、電気抵抗、及び断線の発生しにくさの等の観点から一体構成であることが好ましく、更には同じ金属材料で形成することがより好ましい。
同じく、第2検出電極37と第2ダミー電極36bと第2電極端子39と第2周辺配線40bとは、電気抵抗、及び断線の発生しにくさの等の観点から一体構成であることが好ましく、更には同じ金属材料で形成することがより好ましい。
【0044】
図12は本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第1の例を示す模式図であり、
図13本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第2の例を示す模式図である。
図14は本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第3の例を示す模式図であり、
図15は本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第4の例を示す模式図である。
図16は本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの第1周辺配線の第5の例を示す模式図である。
なお、
図12~
図16において、
図11に示すタッチパネルセンサー30と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図12に示すように第1周辺配線40aは、例えば、線幅が同じ構成である。すなわち、一定の線幅で第1周辺配線40aが構成されている。また、第1周辺配線40aは、
図13に示すように、部分的に線幅が異なる構成でもよい。
図13では、第1周辺配線40aは、線幅が狭い第1の配線部43aと、第1の配線部43aよりも線幅が広い第2の配線部43bとを有する。第1の配線部43aが第1検出電極35に接続されている。
また、第1周辺配線40aは、1本で構成されていることに限定されるものではなく、
図14~
図16に示すように、一部を複数線で構成でもよい。
図14~
図16に示すように第1周辺配線40aの構成により断線を抑制することができる。
図14~
図16に示す第1周辺配線40aでは、第1検出電極35に接続される部分を複数線で構成している。
【0046】
図14に示す第1周辺配線40aは、第1検出電極35(図示せず)側に、第2の配線部43bよりも線幅が狭い第3の配線部43cと、第4の配線部43dとを有する。第3の配線部43cと、第4の配線部43dとは平行に配置されている。第4の配線部43dは、第3の配線部43cよりも線幅が狭い。第4の配線部43dは、導電性細線14と線幅が同じであることにより、めっき均一性を向上させ、且つ断線する確率を低減できるため好ましい。
図15に示す第1周辺配線40aは、第1検出電極35(図示せず)側に、第2の配線部43bよりも線幅が狭い第3の配線部43cと、第4の配線部43dとを有する。第4の配線部43dの両側に第3の配線部43cが配置されており、第1周辺配線40aは、一部が、3つの配線部で構成されている。第4の配線部43dは、導電性細線14と線幅が同じであることにより、めっき均一性を向上させ、且つ断線する確率を低減できるため好ましい。
図16に示す第1周辺配線40aは、第1検出電極35(図示せず)側に、第2の配線部43bよりも線幅が狭い第3の配線部43cを有する。2つの第3の配線部43cが平行に配置されており、第1周辺配線40aは、一部が2つの配線部で構成されている。
なお、タッチパネルセンサー30の第1周辺配線40aについて説明したが、第2周辺配線40bについても、第1周辺配線40aと同様の構成とすることもできる。
【0047】
図17は本発明の実施形態の導電性基板を用いたタッチパネルセンサーの他の例を示す模式的平面図である。なお、
図17において、
図11に示すタッチパネルセンサー30と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図17に示すタッチパネルセンサー30aは、
図11に示すタッチパネルセンサー30に比して、シールド電極43を有する点が異なり、それ以外の構成は、
図11に示すタッチパネルセンサー30と同様である。シールド電極43は、基板12の裏面12bにおいて、検出領域E
1を囲むようにして設けられている。シールド電極43は、基板12の裏面12bにおいて周辺領域E
2に相当する領域に設けられている。
シールド電極43は、検出部32に対する電磁波を遮蔽するものである。シールド電極43により、検出部32に対する電磁波の影響が抑制される。なお、シールド電極43は、ベタ膜でもよく、例えば、第1検出電極35と同様にメッシュパターンでもよい。また、シールド電極43はグランド電極として利用することもできる。
【0048】
導電性細線は、金属部に炭素原子、好ましくは、高分子を多く含む方が好ましい。高分子を含むことにより、耐久性、折り曲げ性、及び、ハンドリング適性を向上させることができる。高分子としては、ゼラチン、及び、後述するゼラチンとは異なる高分子等が好ましく、ゼラチン等の水溶性高分子であることがより好ましい。
導電性細線中における高分子の含有量は、導電性細線の面積当たり、200mg/m2以上であることが好ましく、400mg/m2以上であることがより好ましく、500mg/m2以上であることが更に好ましい。上記高分子の含有量は、高分子が、例えば、ゼラチンであれば、金属ベタ膜が形成された部位のみ、4cm×4cm程度の範囲について、BCA法(ビシンコニン酸法)で定量することができ、それ以外の高分子であれば、抽出法等適宜公知の方法を選択して定量することができる。
また、導電性細線による検出部に対し、周辺配線部に位置するパターン部分(以下、単に「周辺パターン」ともいう。)に高分子を多く含むことが好ましく、周辺パターン内部の金属原子数比率が50%以上の領域において、炭素原子/金属原子の原子数比率の比が0.2以上であることが好ましい。
原子数比率は、周辺パターンの原子組成を、導電性細線の基板とは反対側の表面から深さ方向にArスパッタ(2kV、Arイオン、2mm×2mm)と、XPS(X線源:Al Kα、アルバック・ファイ株式会社製Quantera SXM)によって分析することにより算出できる。
金属原子数比率が50%以上となった位置より基板側を内部と定義し、内部領域の炭素原子と金属原子との原子数比率(炭素原子/金属原子)を求めることができる。原子組成を求める方法としては、例えば、幅100μm以上の導電性細線又はパターンの場合、上述のスパッタとXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)法を用いることができる。パターンの大きさがより小さく、例えば、100μm以下の場合、パターンの断面を出し、その中心を代表値として、SEM-EDX(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectrometry)法によってパターン内部の原子組成を求めることができる。
【0049】
検出部の導電性細線だけでなく、検出部に接続する周辺配線部、検出部の外部に位置するグランド電極、及びシールド電極等がある場合も好ましく、めっき均一性の効果を得ることができる。周辺配線部、グランド配線、シールド電極等について、検出部との相対位置、構成、及び面積等に特に制限はなく、各アプリ―ケーションの用途に沿って好ましく調節することができる。第1周辺配線40a及び複数の第2周辺配線40bの形状については適宜選択することができるが、めっき法の場合、めっき均一性を向上させるため、第1周辺配線40a及び複数の第2周辺配線40bは線幅が、導電性細線14の線幅と同程度であることが好ましい。
また、第1周辺配線40a及び複数の第2周辺配線40bは、上述の
図13に示すように、第1検出電極35に接続される第1の配線部43aが細い構成も好ましい。第1の配線部43aの線幅を細くすると、ハンドリング時、又は加工時に断線リスクが増大するため、第1周辺配線40a及び複数の第2周辺配線40bは、
図14~
図16に示すように、一部を複数線で構成することも好ましい。複数線で構成した場合、めっき均一性を向上させるために、線幅を導電性細線と等しいか、又は導電性細線の線幅と同程度とすることが好ましい。
【0050】
第1周辺配線40a、第2周辺配線40bの高さは、
図2に示すように導電性細線と同様に規定、測定することができる。周辺配線の高さは、特に制限されないが、導電性と折り曲げ性のバランスの点から、0.06μm以上7.5μm未満であることが好ましく、0.3以上3μm以下であることがより好ましい。
【0051】
第1周辺配線40a、第2周辺配線40bの線幅は、
図2に示すように導電性細線と同様に規定、測定することができる。周辺配線の線幅に特に制限はないが、導電性向上には大きい方が好ましく、タッチセンサ―の額縁部分の面積を狭くしデザイン性を上げるためには小さい方が好ましい。具体的には、1μm以上50μm未満が好ましく、1.5μm以上30μm未満が更に好ましく、3μm以上25μm未満が最も好ましい。
第1周辺配線40a、第2周辺配線40bのアスペクト比は、ある程度低いほうがロールの面圧を受けにくく、断線等が生じにくい。このため、第1周辺配線40a、第2周辺配線40bの垂直断面において、周辺配線の線幅に対する周辺配線の高さの比が0.01以上1未満であることが好ましく、0.03以上0.6未満であることが更に好ましい。
【0052】
<導電性基板の製造方法>
次に、導電性基板の製造方法について説明する。
導電性基板の製造方法は、上述した構成の導電性基板が製造できれば特に制限されないが、上述した所定の特性を有する導電性基板を生産性よく製造できる点で、以下の工程1~3をこの順で有する製造方法が好ましい。
工程1:基板上に金属を含む細線を形成する工程
工程2:上記細線と有機酸を含む溶液とを接触させる工程
工程3:上記細線に対してめっき処理を施して、導電性細線を形成する工程
以下、各工程について詳述する。
【0053】
[工程1]
工程1は、基板上に金属を含む細線を形成する工程である。
【0054】
金属の種類としては、上述した導電性細線に含まれる金属として例示したものが挙げられ、銀が好ましい。
金属は粒子状であってもよく、その場合、金属粒子の平均粒子径は、球相当径で10~1000nmが好ましく、10~200nmがより好ましく、50~150nmが更に好ましい。
なお、球相当径とは、同じ体積を有する球形粒子の直径である。また、上記金属粒子の平均粒子径として用いられる「球相当径」は、平均値であり、100個の対象物の球相当径を測定して、それらを算術平均したものである。
【0055】
金属粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角形平板状、三角形平板状、四角形平板状等)、八面体状、及び、十四面体状等の形状が挙げられる。
細線における金属の含有量は特に制限されず、導電性基板の導電性がより優れる点で、3.0~20.0g/m2が好ましい。
【0056】
上記細線は、高分子を含むことが好ましい。つまり、細線においては、高分子をバインダーとして、金属が高分子中に分散していることが好ましい。
高分子の種類は特に制限されないが、より強度がより優れる導電性細線を形成できる点で、ゼラチンと異なる高分子(以下、「特定高分子」とも記載する。)が好ましい。
特定高分子の種類はゼラチンと異なれば特に制限されず、後述するゼラチンを分解する、タンパク質分解酵素又は酸化剤で分解しない高分子が好ましい。
特定高分子としては、疎水性高分子(非水溶性高分子)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリジエン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系重合体、及び、キトサン系重合体からなる群から選ばれる少なくともいずれかの樹脂、又は、これらの樹脂を構成する単量体からなる共重合体等が挙げられる。
また、特定高分子は、後述する架橋剤と反応する反応性基を有することが好ましい。
特定高分子は、粒子状であることが好ましい。つまり、感光性層は、特定高分子の粒子を含むことが好ましい。
なかでも、特定高分子としては、後述する一般式(1)で表される高分子(共重合体)が好ましい。
【0057】
細線における高分子の含有量は特に制限されず、導電性細線の電気抵抗がより低いこと、及び、導電性細線がより視認しづらいことの少なくとも一方の効果が得られる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、0.005~2.0g/m2が好ましく、0.01~1.0g/mが好ましい。
【0058】
細線は所定のパターンを形成していてもよく、上述した導電性細線が形成し得るパターンが挙げられる。
基板の説明は、上述した通りである。
【0059】
基板上に金属を含む細線を形成する方法は特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、ハロゲン化銀を用いて露光及び現像を行う方法、基板の全面に金属を含有する層を形成した後、レジストパターンを用いて上記層の一部を除去して、上記細線を形成する方法、並びに、金属粒子及び高分子を含む組成物をインクジェット等の公知の印刷方法により基材上に吐出して細線を形成する方法が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、ハロゲン化銀を用いて露光及び現像を行う方法が好ましい。
以下、この方法について詳述する。
【0060】
ハロゲン化銀を用いて露光及び現像を行う方法は、以下の工程を有することが好ましい。
工程A:基板上に、ハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とを含むハロゲン化銀含有感光性層を形成する工程
工程B:ハロゲン化銀含有感光性層を露光した後、現像処理して、金属銀とゼラチンとゼラチンとは異なる高分子とを含む細線状の銀含有層を形成する工程
工程C:工程Bで得られた銀含有層に対して加熱処理を施す工程
工程D:工程Cで得られた銀含有層中のゼラチンを除去して、上記細線を形成する工程
以下、各工程の手順について詳述する。
【0061】
[工程A]
工程Aは、基板上に、ハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とを含むハロゲン化銀含有感光性層(以下、「感光性層」ともいう。)を形成する工程である。本工程により、後述する露光処理が施される感光性層付き基板が製造される。
まず、工程Aで使用される材料及び基板について詳述し、その後、工程Aの手順について詳述する。
【0062】
(ハロゲン化銀)
ハロゲン化銀に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びフッ素原子のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、塩化銀、臭化銀、又は、ヨウ化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく、塩化銀又は臭化銀を主体としたハロゲン化銀がより好ましい。なお、塩臭化銀、ヨウ塩臭化銀、又は、ヨウ臭化銀も、好ましく用いられる。
ここで、例えば、「塩化銀を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中、全ハロゲン化物イオンに占める塩化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。この塩化銀を主体としたハロゲン化銀は、塩化物イオンのほかに、臭化物イオン及び/又はヨウ化物イオンを含んでいてもよい。
【0063】
ハロゲン化銀は、通常、固体粒子状であり、ハロゲン化銀の平均粒子径は、球相当径で10~1000nmが好ましく、10~200nmがより好ましく、50~150nmが更に好ましい。
ハロゲン化銀の粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角形平板状、三角形平板状、四角形平板状等)、八面体状、及び、十四面体状等の形状が挙げられる。
【0064】
(ゼラチン)
ゼラチンの種類は特に制限されず、例えば、石灰処理ゼラチン、及び、酸処理ゼラチンが挙げられる。また、ゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物、並びに、アミノ基及び/又はカルボキシル基で修飾されたゼラチン(フタル化ゼラチン、及び、アセチル化ゼラチン)等を用いてもよい。
【0065】
(特定高分子)
感光性層には、ゼラチンと異なる高分子(特定高分子)が含まれる。この特定高分子が感光性層に含まれることにより、感光性層より形成される銀含有層及び導電性細線の強度がより優れる。
特定高分子の種類、具体例及び形状等の特徴は、上述した通りである。
【0066】
なかでも、特定高分子としては、以下の一般式(1)で表される高分子(共重合体)が好ましい。
一般式(1): -(A)x-(B)y-(C)z-(D)w-
なお、一般式(1)中、A、B、C、及びDはそれぞれ、下記一般式(A)~(D)で表される繰り返し単位を表す。
【0067】
【0068】
R1は、メチル基又はハロゲン原子を表し、メチル基、塩素原子、又は、臭素原子が好ましい。pは0~2の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
R2は、メチル基又はエチル基を表し、メチル基が好ましい。
R3は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。Lは、2価の連結基を表し、下記一般式(2)で表される基が好ましい。
一般式(2):-(CO-X1)r-X2-
一般式(2)中、X1は、酸素原子又はNR30-を表す。ここでR30は、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、アシル基を表し、それぞれ置換基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、及び、ヒドロキシル基)を有してもよい。R30としては、水素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、及び、n-オクチル基)、又は、アシル基(例えば、アセチル基、及び、ベンゾイル基)が好ましい。X1としては、酸素原子又はNH-が好ましい。
X2は、アルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基、又は、アルキレンアリーレンアルキレン基を表し、これらの基には-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NH-、-SO2-、-N(R31)-、又は、-N(R31)SO2-等が途中に挿入されてもよい。R31は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。X2としては、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、-CH2CH2OCOCH2CH2-、又は、-CH2CH2OCO(C6H4)-が好ましい。
rは0又は1を表す。
qは0又は1を表し、0が好ましい。
【0069】
R4は、アルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表し、炭素数5~50のアルキル基が好ましく、炭素数5~30のアルキル基がより好ましく、炭素数5~20のアルキル基が更に好ましい。
R5は、水素原子、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、又は、-CH2COOR6を表し、水素原子、メチル基、ハロゲン原子、又は、-CH2COOR6が好ましく、水素原子、メチル基、又は、-CH2COOR6がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
R6は、水素原子又は炭素数1~80のアルキル基を表し、R4と同じでも異なってもよく、R6の炭素数は1~70が好ましく、1~60がより好ましい。
【0070】
一般式(1)中、x、y、z、及びwは各繰り返し単位のモル比率を表す。
xは、3~60モル%であり、3~50モル%が好ましく、3~40モル%がより好ましい。
yは、30~96モル%であり、35~95モル%が好ましく、40~90モル%がより好ましい。
zは、0.5~25モル%であり、0.5~20モル%が好ましく、1~20モル%がより好ましい。
wは、0.5~40モル%であり、0.5~30モル%が好ましい。
一般式(1)において、xは3~40モル%、yは40~90モル%、zは0.5~20モル%、wは0.5~10モル%の場合が好ましい。
【0071】
一般式(1)で表される高分子としては、下記一般式(2)で表される高分子が好ましい。
【0072】
【0073】
一般式(2)中、x、y、z及びwは、上記の定義の通りである。
【0074】
一般式(1)で表される高分子は、上記一般式(A)~(D)で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含んでもよい。
他の繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、オレフィン類、クロトン酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、ビニル異節環化合物、グリシジルエステル類、及び、不飽和ニトリル類が挙げられる。これらのモノマーとしては、特許第3754745号公報の段落0010~0022にも記載されている。疎水性の観点から、アクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類が好ましく、ヒドロキシアルキルメタクリレート又はヒドロキシアルキルアクリレートがより好ましい。
一般式(1)で表される高分子は、一般式(E)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0075】
【0076】
上記式中、LEはアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2~6のアルキレン基がより好ましく、炭素数2~4のアルキレン基が更に好ましい。
【0077】
一般式(1)で表される高分子としては、下記一般式(3)で表される高分子が特に好ましい。
【0078】
【0079】
上記式中、a1、b1、c1、d1及びe1は各繰り返し単位のモル比率を表し、a1は3~60(モル%)、b1は30~95(モル%)、c1は0.5~25(モル%)、d1は0.5~40(モル%)、e1は1~10(モル%)を表す。
a1の好ましい範囲は上記xの好ましい範囲と同じであり、b1の好ましい範囲は上記yの好ましい範囲と同じであり、c1の好ましい範囲は上記zの好ましい範囲と同じであり、d1の好ましい範囲は上記wの好ましい範囲と同じである。
e1は、1~10モル%であり、2~9モル%が好ましく、2~8モル%がより好ましい。
【0080】
特定高分子は、例えば、特許第3305459号公報及び特許第3754745号公報等を参照して合成できる。
特定高分子の重量平均分子量は特に制限されず、1000~1000000が好ましく、2000~750000がより好ましく、3000~500000が更に好ましい。
【0081】
感光性層には、必要に応じて、上述した材料以外の他の材料が含まれていてもよい。
他の材料としては、例えば、ハロゲン化銀の安定化及び高感度化のために用いられるロジウム化合物及びイリジウム化合物等の8族及び9族に属する金属化合物が挙げられる。また、他の材料としては、特開2009-004348号公報の段落0220~0241に記載されるような、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤、レドックス化合物、モノメチン化合物、及び、ジヒドロキシベンゼン類も挙げられる。
また、他の材料としては、粘度調整剤(例えば、増粘多糖類、セルロース類、水溶性ポリマー等)、造膜助剤(例えば、グリコール誘導体、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート等のジオール化合物等)、防腐剤、可塑剤、滑り材、有機又は無機又は有機無機の複合素材からなるフィラー類(例えば、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)、ポリスチレン、コロイダルシリカ、ジルコニア、セルロースナノファイバー、CNT(カーボンナノチューブ)等)、及び、紫外線吸収剤等も挙げられる。
帯電防止剤は、ハロゲン化銀含有感光材料の帯電による異物の付着又は放電発光による意図せぬ感光による故障を防止することができ、好ましい。界面活性剤は、感光性層の塗布性、基板との密着性、並びに、ハロゲン化銀及びバインダーその他含有成分の分散性を制御できるため好ましい。
また、感光性層には、特開2009-004348号公報の段落0146~0158に記載の架橋剤又は硬化剤、段落0160~0170に記載の染料、段落0214~0217に記載の水溶性バインダーが含まれていてもよい。また、感光性層には、国際公開第2020/195622号の段落0079~0081に記載の金属安定化剤、段落0109~0118に記載の特定化合物が含まれていてもよい。更には、感光性層には、物理現像核が含まれていてもよい。
【0082】
また、感光性層には、上記特定高分子同士を架橋するために使用される架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることにより、特定高分子同士間での架橋が進行し、ゼラチンが分解除去された際にも導電性細線中の金属銀同士の連結が保たれる。これらゼラチン及び特定高分子以外の材料は、後述のハロゲン化銀不含有層及び/又は保護層に含有させてもよい。
【0083】
(工程Aの手順)
工程Aにおいて上記成分を含む感光性層を形成する方法は特に制限されないが、生産性の点から、ハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とを含む感光性層形成用組成物を基板上に接触させ、基板上に感光性層を形成する方法が好ましい。
以下に、この方法で使用される感光性層形成用組成物の形態について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
【0084】
(感光性層形成用組成物に含まれる材料)
感光性層形成用組成物には、上述したハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とが含まれる。なお、必要に応じて、特定高分子は粒子状の形態で感光性層形成用組成物中に含まれていてもよい。
感光性層形成用組成物には、必要に応じて、溶媒が含まれていてもよい。
溶媒としては、水、有機溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、及び、エーテル類)、イオン性液体、及び、これらの混合溶媒が挙げられる。
【0085】
感光性層形成用組成物と基板とを接触させる方法は特に制限されず、例えば、感光性層形成用組成物を基板上に塗布する方法、及び、感光性層形成用組成物中に基板を浸漬する方法等が挙げられる。
なお、上記処理後、必要に応じて、乾燥処理を実施してもよい。
【0086】
(ハロゲン化銀含有感光性層)
上記手順により形成された感光性層中には、ハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とが含まれる。
感光性層中におけるハロゲン化銀の含有量は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、銀換算で3.0~20.0g/m2が好ましく、5.0~15.0g/m2がより好ましい。
銀換算とは、ハロゲン化銀が全て還元されて生成される銀の質量に換算したことを意味する。
感光性層中における特定高分子の含有量は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、0.04~2.0g/m2が好ましく、0.08~0.40g/m2がより好ましい。
【0087】
[工程B]
工程Bは、感光性層を露光した後、現像処理して、金属銀とゼラチンと特定高分子とを含む細線状の銀含有層を形成する工程である。
【0088】
感光性層に露光処理を施すことにより、露光領域において潜像が形成される。
露光はパターン状に実施してもよく、例えば、後述する導電性細線からなるメッシュパターンを得るためには、メッシュ状の開口パターンを有するマスクを介して、露光する方法、及び、レーザー光を走査してメッシュ状に露光する方法が挙げられる。
露光の際に使用される光の種類は特に制限されず、ハロゲン化銀に潜像を形成できるものであればよく、例えば、可視光線、紫外線、及び、X線が挙げられる。
【0089】
開口パターンを有するマスクを介して露光する場合、マスク開口パターン中の特定の場所のみ露光量を減らして露光し、潜像形成量を調整してもよい。潜像形成量を調整すると、後段の操作で形成される金属量、厚み(高さ)を調整することができる。特定の場所のみ露光量を減らす手段に特に制限はないが、例えば、特定部分に照射される光源からの露光量を調整する方法が挙げられる。例えば、当部分の上のランプ、LEDのみ出力を落として露光量を低くする、あるいは、特定部分の上部に減光フィルタを設置する、などの方法が挙げられる。また、特定の場所のみ露光量を減らす別の手段として、マスク開口パターンの特定部分に半透過膜を付与したハーフトーンマスクを用いる方法が挙げられる。生産性の観点で、ハーフトーンマスクを用いることが好ましい。
【0090】
露光された感光性層に現像処理を施すことにより、露光領域(潜像が形成された領域)では、金属銀が析出する。
現像処理の方法は特に制限されず、例えば、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、及び、フォトマスク用エマルジョンマスクに用いられる公知の方法が挙げられる。
現像処理では、通常、現像液を用いる。現像液の種類は特に制限されず、例えば、PQ(phenidone hydroquinone)現像液、MQ(Metol hydroquinone)現像液、及び、MAA(メトール・アスコルビン酸)現像液が挙げられる。
【0091】
本工程は、未露光部分のハロゲン化銀を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を更に有していてもよい。
定着処理は、現像と同時及び/又は現像の後に実施される。定着処理の方法は特に制限されず、例えば、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、及び、フォトマスク用エマルジョンマスクに用いられる方法が挙げられる。
定着処理では、通常、定着液を用いる。定着液の種類は特に制限されず、例えば、「写真の化学」(笹井著、株式会社写真工業出版社)p321記載の定着液が挙げられる。
【0092】
上記処理を実施することにより、金属銀とゼラチンと特定高分子とを含む、細線状の銀含有層が形成される。
銀含有層の線幅を調整する方法としては、例えば、露光時に使用されるマスクの開口幅を調整する方法が挙げられる。
また、露光時にマスクを使用する際には、露光量を調整することにより、形成される銀含有層の幅を調整することもできる。例えば、マスクの開口幅が目標とする銀含有層の幅よりも狭い場合には、露光量を通常よりも増加させることにより、潜像が形成される領域の幅を調整できる。
更に、レーザー光を用いる場合は、レーザー光の集光範囲及び/又は走査範囲を調整することにより、露光領域を調整できる。
【0093】
なお、上述した、周辺パターン内部の金属原子数比率が50%以上の領域における、炭素原子/金属原子の原子数比率の比率を調整するためには、検出電極に対する周辺パターンの大きさを調整する方法が挙げられる。検出電極に対する周辺パターンの大きいと、後述する工程Dの際に、周辺パターンからゼラチンが除去しづらくなり、結果として、炭素原子の比率が高い周辺パターンを形成できる。
【0094】
[工程C]
工程Cは、工程Bで得られた銀含有層に対して加熱処理を施す工程である。本工程を実施することにより、銀含有層中の特定高分子間での融着が進行し、銀含有層の強度が向上する。
【0095】
加熱処理の方法は特に制限されず、銀含有層と過熱蒸気とを接触させる方法、及び、温調装置(例えば、ヒーター)で銀含有層を加熱する方法が挙げられ、銀含有層と過熱蒸気とを接触させる方法が好ましい。
【0096】
過熱蒸気としては、過熱水蒸気でもよいし、過熱水蒸気に他のガスを混合させたものでもよい。
過熱蒸気と銀含有層との接触時間は特に制限されず、10~70秒間が好ましい。
過熱蒸気の供給量は、500~600g/m3が好ましく、過熱蒸気の温度は、1気圧で100~160℃(好ましくは100~120℃)が好ましい。
【0097】
温調装置で銀含有層を加熱する方法における加熱条件としては、100~200℃(好ましくは100~150℃)で1~240分間(好ましくは60~150分間)加熱する条件が好ましい。
【0098】
[工程D]
工程Dは、工程Cで得られた銀含有層中のゼラチンを除去して、上記細線を形成する工程である。本工程を実施することにより、銀含有層からゼラチンが除去され、内部に空隙が形成された上記細線が形成される。この空隙に後述するめっき液が浸入し、金属めっきが形成される。
なお、ゼラチンを除去する際には、銀含有層中のゼラチンの全てを除去してもよいし、ゼラチンの一部が残るように除去してもよい。中でも、本発明の効果がより優れる点で、ゼラチンの一部が残るように工程Dを実施することが好ましい。
【0099】
ゼラチンを除去する方法は特に制限されず、例えば、タンパク質分解酵素を用いる方法(以下、「方法1」ともいう。)、及び、酸化剤を用いてゼラチンを分解除去する方法(以下、「方法2」ともいう。)が挙げられる。
【0100】
方法1において用いられるタンパク質分解酵素としては、ゼラチン等のタンパク質を加水分解できる植物性又は動物性酵素で公知の酵素が挙げられる。
タンパク質分解酵素としては、例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、及び、細菌プロテアーゼが挙げられ、トリプシン、パパイン、フィシン、又は、細菌プロテアーゼが好ましい。
方法1における手順としては、銀含有層と上記タンパク質分解酵素とを接触させる方法であればよく、例えば、銀含有層とタンパク質分解酵素を含む処理液(以下、「酵素液」ともいう。)とを接触させる方法が挙げられる。接触方法としては、銀含有層を酵素液中に浸漬させる方法、及び、銀含有層上に酵素液を塗布する方法が挙げられる。
酵素液中におけるタンパク質分解酵素の含有量は特に制限されず、ゼラチンの分解除去の程度が制御しやすい点で、酵素液全量に対して、0.05~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
酵素液には、上記タンパク質分解酵素に加え、通常、水が含まれる。
酵素液には、必要に応じて、他の添加剤(例えば、pH緩衝剤、抗菌性化合物、湿潤剤、及び、保恒剤)が含まれていてもよい。
酵素液のpHは、酵素の働きが最大限得られるように選ばれるが、一般的には、5~9が好ましい。
酵素液の温度は、酵素の働きが高まる温度、具体的には20~45℃が好ましい。
【0101】
なお、必要に応じて、酵素液での処理後に、得られた銀含有層を温水にて洗浄する洗浄処理を実施してもよい。
洗浄方法は特に制限されず、銀含有層と温水とを接触させる方法が好ましく、例えば、温水中に銀含有層を浸漬する方法、及び、銀含有層上に温水を塗布する方法が挙げられる。
温水の温度は使用されるタンパク質分解酵素の種類に応じて適宜最適な温度が選択され、生産性の点から、20~80℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。
温水と銀含有層との接触時間(洗浄時間)は特に制限されず、生産性の点から、1~600秒間が好ましく、10~180秒間がより好ましい。
【0102】
方法2で用いられる酸化剤としては、ゼラチンを分解できる酸化剤であればよく、標準電極電位が+1.5V以上である酸化剤が好ましい。なお、ここで標準電極電位とは、酸化剤の水溶液中における標準水素電極に対する標準電極電位(25℃、E0)を意図する。
上記酸化剤としては、例えば、過硫酸、過炭酸、過リン酸、次過塩素酸、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素水、過塩素酸、過ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、過硫酸アンモニウム、オゾン、次亜塩素酸又はその塩等が挙げられるが、生産性、経済性の観点で、過酸化水素水(標準電極電位:1.76V)、次亜塩素酸又はその塩が好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
【0103】
方法2における手順としては、銀含有層と上記酸化剤とを接触させる方法であればよく、例えば、銀含有層と酸化剤を含む処理液(以下、「酸化剤液」ともいう。)とを接触させる方法が挙げられる。接触方法としては、銀含有層を酸化剤液中に浸漬させる方法、及び、銀含有層上に酸化剤液を塗布する方法が挙げられる。
酸化剤液に含まれる溶媒の種類は特に制限されず、水、及び、有機溶媒が挙げられる。
【0104】
[工程E]
工程1は、工程Aの前に、基板上にゼラチン及び特定高分子を含むハロゲン化銀不含有層を形成する工程Eを有していてもよい。本工程を実施することにより、基板とハロゲン化銀含有感光性層との間にハロゲン化銀不含有層が形成される。このハロゲン化銀不含有層は、いわゆるアンチハレーション層の役割を果たすと共に、導電性細線と基板との密着性向上に寄与する。
ハロゲン化銀不含有層には、上述したゼラチンと特定高分子とが含まれる。一方、ハロゲン化銀不含有層には、ハロゲン化銀が含まれない。
ハロゲン化銀不含有層中における、ゼラチンの質量に対する、特定高分子の質量の比(特定高分子の質量/ゼラチンの質量)は特に制限されず、0.1~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましい。
ハロゲン化銀不含有層中の特定高分子の含有量は特に制限されず、0.03g/m2以上の場合が多く、導電性細線の密着性がより優れる点で、1.0g/m2以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1.63g/m2以下の場合が多い。
【0105】
ハロゲン化銀不含有層の形成方法は特に制限されず、例えば、ゼラチンと特定高分子とを含有する層形成用組成物を基板上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。
層形成用組成物には、必要に応じて溶媒が含まれていてもよい。溶媒の種類は、上述した感光性層形成用組成物で使用される溶媒が例示される。
ハロゲン化銀不含有層の厚みは特に制限されず、0.05μm以上の場合が多く、導電性細線の密着性がより優れる点で、1.0μm超が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、3.0μm未満であることが好ましい。
【0106】
[工程F]
工程1は、工程Aの後で工程Bの前に、ハロゲン化銀含有感光性層上にゼラチンと特定高分子とを含む保護層を形成する工程Fを有していてもよい。保護層を設けることにより、感光性層の擦り傷防止及び力学特性を改良できる。
保護層中における、ゼラチンの質量に対する、特定高分子の質量の比(特定高分子の質量/ゼラチンの質量)は特に制限されず、0超2.0以下が好ましく、0超1.0以下がより好ましい。
また、保護層中の特定高分子の含有量は特に制限されず、0g/m2超0.3g/m2以下が好ましく、0.005~0.1g/m2がより好ましい。
【0107】
保護層の形成方法は特に制限されず、例えば、ゼラチンと特定高分子とを含む保護層形成用組成物をハロゲン化銀含有感光性層上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。
保護層形成用組成物には、必要に応じて溶媒が含まれていてもよい。溶媒の種類は、上述した感光性層形成用組成物で使用される溶媒が例示される。
保護層の厚みは特に制限されず、0.03~0.3μmが好ましく、0.075~0.20μmがより好ましい。
【0108】
なお、上述した工程E、工程A及び工程Fは、同時重層塗布によって同時に実施してもよい。
【0109】
[工程2]
工程2は、上記細線と有機酸を含む溶液とを接触させる工程である。本工程を実施することにより有機酸が細線の表面に付着し、後述する工程3のめっき処理の際に、細線表面でのめっき析出を抑制し、細線内部にめっき液がより浸透しやすくなる。結果として、細線内で金属(金属めっき)が析出しやすくなり、所望の効果が得られる。
以下では、まず、本工程で使用される溶液について詳述し、その後、工程2の手順について詳述する。
【0110】
(有機酸を含む溶液)
有機酸を含む溶液(以下、単に「第1溶液」ともいう。)に含まれる有機酸の種類は特に制限されず、炭素原子を含む酸であればよく、例えば、カルボン酸(カルボキシ基を有する有機化合物)、スルホン酸(スルホン酸基を有する有機化合物)、及び、ホスホン酸(ホスホン酸基を有する有機化合物)が挙げられる。中でも、本発明の効果がより優れる点で、カルボン酸が好ましい。
【0111】
有機酸(例えば、カルボン酸)の分子量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、60~400が好ましく、90~300がより好ましい。
【0112】
カルボン酸は、1価のカルボン酸であってもよいし、2価以上(多価)のカルボン酸であってもよく、本発明の効果がより優れる点で、多価のカルボン酸が好ましい。2価以上のカルボン酸としては、2~7価のカルボン酸が好ましく、2~4価のカルボン酸がより好ましい。
なお、上記価数は、カルボキシ基が含まれる数を表し、1価のカルボン酸はカルボキシ基を1つ有する化合物である。
【0113】
カルボン酸は、カルボキシ基以外の他の極性基(例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、エーテル基)を有していてもよい。
【0114】
カルボン酸としては、酢酸、乳酸、及び、ヒドロキシ酪酸等の1価のカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、L-アスパラギン酸、DL-リンゴ酸、オキサロ酢酸、コハク酸、グルタミン酸、2-オキソグルタル酸、グルタル酸、アジピン酸、及び、ピメリン酸等の2価のカルボン酸、クエン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、及び、1,3,5-ペンタトリカルボン酸等の3価のカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、及び、エチレングリコールビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N,N-四酢酸等の4価のカルボン酸、並びに、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等の5価のカルボン酸が挙げられる。
【0115】
第1溶液には溶媒が含まれる。溶媒の種類は特に制限されず、水、有機溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、及び、エーテル類)、イオン性液体、及び、これらの混合溶媒が挙げられる。中でも、水が好ましい。
【0116】
第1溶液には、上記有機酸及び溶媒以外の他の成分が含まれていてもよい。
他の成分としては、後述する第2溶液に含まれる第4級アンモニウム塩が挙げられる。第4級アンモニウム塩の態様については、後段で詳述する。
【0117】
第1溶液中における有機酸の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、第1溶液全質量に対して、0.2~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。
【0118】
第1溶液のpH値は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、温度25℃において1.5~6.0が好ましく、2.0~4.0がより好ましい。
pHの測定方法としては、pH電極を用いたpHメーターで測定することができる。
【0119】
第1溶液が第4級アンモニウム塩を含む場合、第1溶液中における第4級アンモニウム塩の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、第1溶液全質量に対して、10-6~10-1質量%が好ましく、10-5~10-3質量%がより好ましい。
【0120】
(工程2の手順)
細線と第1溶液とを接触させる方法は特に制限されず、細線を有する基板を第1溶液中に浸漬させる方法、及び、細線上に第1溶液を塗布する方法が挙げられる。
細線と第1溶液との接触時間は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点及び生産性の点から、5~180秒間が好ましく、20~120秒間が好ましい。
細線と第1溶液との接触時の第1溶液の温度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、30~100℃が好ましく、65~95℃がより好ましい。
【0121】
細線と第1溶液とを接触させた後、必要に応じて、細線を溶媒(例えば、水)で洗浄してもよい。
【0122】
[工程3]
工程3は、上記細線に対してめっき処理を施して、導電性細線を形成する工程である。本工程を実施することにより、細線中に金属(めっき金属)が充填された導電性細線が形成される。特に、上述した工程A~Dを実施して得られた細線中には、ゼラチンを除去することにより形成された空間があるため、この空間中に金属(めっき金属)が充填される。
なお、工程3の直前に工程2が実施された場合には、工程2で得られた細線に対してめっき処理を施す。後述するように、工程2と工程3との間に、工程5が実施された場合には、工程5で得られた細線に対してめっき処理を施す。
【0123】
めっき処理の種類は特に制限されないが、無電解めっき(化学還元めっき、又は、置換めっき)及び電解めっきが挙げられ、無電解めっきが好ましい。無電解めっきとしては、公知の無電解めっき技術が用いられる。
めっき処理としては、例えば、銀めっき処理、銅めっき処理、ニッケルめっき処理、及び、コバルトめっき処理が挙げられ、導電性細線の電気抵抗がより小さい点で、銀めっき処理又は銅めっき処理が好ましく、銀めっき処理がより好ましい。
【0124】
めっき処理で用いられるめっき液に含まれる成分は特に制限されないが、通常、溶媒(例えば、水)の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)、4.pH調整剤が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤等、公知の添加剤が含まれていてもよい。
めっき液に含まれるめっき用の金属イオンの種類は析出させたい金属種に応じて適宜選択でき、例えば、銀イオン、銅イオン、ニッケルイオン、及び、コバルトイオンが挙げられる。
めっき液のpHは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、温度25℃において、アルカリ性が好ましく、8.5~11.0がより好ましく、9.0~10.5が更に好ましい。
【0125】
上述のめっき処理の手順は特に制限されず、細線とめっき液とを接触させる方法であればよく、例えば、めっき液中に銀含有層を浸漬させる方法、及び、細線上にめっき液を塗布する方法が挙げられる。
細線とめっき液との接触時間は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点、及び、生産性の点から、25秒間~30分間が好ましい。
めっき液に接触した後に、細線を水で洗浄したり、pH3~7の酸性溶液で中和洗浄してもよく、酸性溶液のpHは4~6であることがより好ましい。酸性溶液は、pH3~7であれば、めっき液由来の亜硫酸から硫黄等が発生することがない。また、めっき液のpHの上昇も抑制され、めっき反応を停止できる。酸性溶液は、めっき停止液として機能する。
酸性溶液は、緩衝作用を有することが好ましく、固形分濃度が0.1質量%以上であれば十分な緩衝能力を発揮するため好ましい。
めっき液の温度は、10~40℃が好ましく、15~30℃がより好ましい。
接触時間は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点、及び、生産性の点から、5~60秒が好ましい。
【0126】
上記工程2及び工程3は繰り返し実施してもよい。つまり、工程3が終わった後、更に、工程2及び工程3を実施してもよい。
工程2及び工程3の手順を繰り返す回数は特に制限されず、2~4回が好ましい。
【0127】
[工程4]
導電性基板の製造方法は、工程1と工程2との間に、細線に対してめっき処理を施す工程4を更に有していてもよい。工程4を実施することにより、導電性細線の導電性がより優れる。
工程4の手順は、上述した工程3の手順と同じであるため、説明を省略する。
なお、工程4と工程2と工程3とは繰り返し実施してもよい。つまり、工程3が終わった後、更に、工程4と工程2と工程3とを実施してもよい。
工程4~工程3までの手順を繰り返す回数は特に制限されず、2~4回が好ましい。
工程4でも、工程3と同様に、めっき液に接触した後に、細線を水で洗浄したり、pH3~7の酸性溶液で中和洗浄してもよく、酸性溶液のpHは4~6であることがより好ましい。酸性溶液は、pH3~7であれば、めっき液由来の亜硫酸から硫黄等が発生することがない。また、めっき液のpHの上昇も抑制され、めっき反応を停止できる。
酸性溶液は、緩衝作用を有することが好ましく、固形分濃度が0.1質量%以上であれば十分な緩衝能力を発揮するため好ましい。
上述のように、工程3又は工程4は、細線を、pH3~7の酸性溶液に接触させ、めっき処理によるめっき反応を停止させる中和洗浄工程を有することが好ましい。また、酸性溶液は、上述のように緩衝作用を有することが好ましい。中和洗浄に緩衝液を用いることにより、めっき液が混入したとしてもpH上昇を抑えることができ、一様にめっき反応を停止させることができる。
【0128】
[工程5]
導電性基板の製造方法は、工程1と工程2との間、又は、工程2と工程3との間に、細線に対して、第4級アンモニウム塩を含む溶液を接触させる工程5を更に有していてもよい。本工程を実施することにより第4級アンモニウム塩のイオンが細線の表面に付着し、後述する工程3のめっき処理の際に、細線表面でのめっき析出を抑制し、細線内部にめっき液がより浸透しやすくなる。結果として、細線内で金属(金属めっき)が析出しやすくなり、所望の効果が得られる。
以下では、まず、本工程5で使用される溶液について詳述し、その後、工程5の手順について詳述する。
【0129】
(第4級アンモニウム塩を含む溶液)
第4級アンモニウム塩を含む溶液(以下、単に「第2溶液」ともいう。)に含まれる第4級アンモニウム塩の種類は特に制限されず、第4級窒素を有する化合物である。
第4級アンモニウム塩の分子量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、100~700が好ましく、200~650がより好ましい。
【0130】
第4級アンモニウム塩としては、一般式(I)で表される化合物、又は、一般式(II)で表される化合物が好ましい。
一般式(I) (R1)4N+A-
【0131】
【0132】
一般式(I)中、R1は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。4つのR1は同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよい。
上記アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基(例えば、フェニル基)、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基(例えば、アセチル基)、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、及び、ジアリールアミノ基が挙げられる。
【0133】
一般式(II)中、R2は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R2で表される置換基を有していてもよいアルキル基の例示及び好適範囲は、上述したR1で表される置換基を有していてもよいアルキル基の例示及び好適範囲が挙げられる。
【0134】
一般式(I)及び(II)中のA-は、アニオンを表す。アニオンの種類は特に制限されず、例えば、ハロゲンイオン(例えば、F-、Cl-、Br-、及び、I-)、HSO4
-、OH-、CH3COO-、PF6
-、R3CO3
-、ClO4
-、BF4
-、SbF6
-、及び、AsF6
-が挙げられる。なお、R3は、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R3で表される置換基を有していてもよいアルキル基の例示及び好適範囲は、上述したR1で表される置換基を有していてもよいアルキル基の例示及び好適範囲が挙げられる。
【0135】
第4級アンモニウム塩としては、本発明の効果がより優れる点で、一般式(X)で表される化合物、一般式(Y)で表される化合物、又は、一般式(Z)で表される化合物が好ましい。
【0136】
【0137】
一般式(X)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数8以上のアルキル基を表す。
Ra1及びRa2で表される置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は4以下であり、本発明の効果がより優れる点で、1又は2が好ましい。
Ra3及びRa4で表される置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は8以上であり、本発明の効果がより優れる点で、8~30が好ましく、10~20がより好ましい。
Ra1及びRa2で表されるアルキル基、並びに、Ra3及びRa4で表されるアルキル基がそれぞれ有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、及び、ジアリールアミノ基が挙げられる。
【0138】
一般式(Y)中、Rb1~Rb3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、Rb4は、置換基を有していてもよい炭素数10以上のアルキル基を表す。
Rb1~Rb3で表される置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は4以下であり、本発明の効果がより優れる点で、1又は2が好ましい。
Rb4で表される置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は8以上であり、本発明の効果がより優れる点で、8~30が好ましく、10~20がより好ましい。
Rb1~Rb3で表されるアルキル基、並びに、Rb4で表されるアルキル基がそれぞれ有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、例えば、上述したRa1で表されるアルキル基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。
【0139】
一般式(Z)中、Rc1は、置換基を有していてもよい炭素数10以上のアルキル基を表す。
Rc1で表される置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は10以下であり、本発明の効果がより優れる点で、10~30が好ましく、10~20がより好ましい。
Rc1で表されるアルキル基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、例えば、上述したRa1で表されるアルキル基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。
【0140】
一般式(X)~(Z)中のA-は、アニオンを表す。
一般式(X)~(Z)中のA-で表されるアニオンとしては、上述した一般式(I)及び(II)中のA-のアニオンとして例示されたアニオンが挙げられる。
【0141】
第2溶液には溶媒が含まれる。溶媒の種類は特に制限されず、水、有機溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、及び、エーテル類)、イオン性液体、及び、これらの混合溶媒が挙げられる。中でも、水が好ましい。
【0142】
第2溶液には、上記第4級アンモニウム塩及び溶媒以外の他の成分(例えば、上述した有機酸)が含まれていてもよい。
【0143】
第2溶液中における第4級アンモニウム塩の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、第2溶液全質量に対して、10-6~1質量%が好ましく、10-6~0.1質量%がより好ましい。
【0144】
第2溶液のpH値は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、温度25℃において3~7が好ましく、4~6がより好ましい。
【0145】
(工程5の手順)
細線と第2溶液とを接触させる方法は特に制限されず、細線を有する基板を第2溶液中に浸漬させる方法、及び、細線上に第2溶液を塗布する方法が挙げられる。
細線と第2溶液との接触時間は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点及び生産性の点から、5~180秒間が好ましく、20~120秒間が好ましい。
細線と第2溶液との接触時の第2溶液の温度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、20~80℃が好ましく、30~70℃がより好ましい。
【0146】
細線と第2溶液とを接触させた後、必要に応じて、細線を溶媒(例えば、水)で洗浄してもよい。
【0147】
工程1と工程2との間で工程5を実施する場合、工程5と工程2と工程3とは繰り返し実施してもよい。つまり、工程3が終わった後、更に、工程5と工程2と工程3とを実施してもよい。
工程5~工程3までの手順を繰り返す回数は特に制限されず、2~4回が好ましい。
【0148】
また、工程2と工程3との間で工程5を実施する場合、工程2と工程5と工程3とは繰り返し実施してもよい。つまり、工程3が終わった後、更に、工程2と工程5と工程3とを実施してもよい。
工程2~工程5までの手順を繰り返す回数は特に制限されず、2~4回が好ましい。
【0149】
[工程6]
導電性基板の製造方法は、工程3の後に、工程3で得られた導電性細線に対して加熱処理を施す工程6を有していてもよい。本工程を実施することにより、導電性細線の強度が向上する。
工程6で実施する加熱処理としては、上述した工程Cで実施する加熱処理が挙げられる。
【0150】
[工程7]
導電性基板の製造方法は、工程3の後、又は、工程6の後に、導電性細線を溶媒で洗浄してもよい。使用される溶媒としては、水、有機溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、及び、エーテル類)、イオン性液体、及び、これらの混合溶媒が挙げられる。
洗浄に用いられる溶媒は数種類使用してもよい。例えば、有機溶剤で洗浄した後に、さらに水で洗浄してもよい。
溶媒としては、混合溶媒を用いてもよく、例えば、アルコール類又はエーテル類と、水との混合溶媒が好ましい。アルコール類としては、エタノールが好ましく、エーテル類としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0151】
<用途>
上述のようにして得られた導電性基板は、種々の用途に適用でき、タッチパネル(又は、タッチパネルセンサー)、半導体チップ、各種電気配線板、FPC(Flexible Printed Circuits)、COF(Chip on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、アンテナ、多層配線基板、及び、マザーボード等の種々の用途に適用できる。なかでも、本発明の導電性基板は、タッチパネル(静電容量式タッチパネル)に用いることが好ましい。
本発明の導電性基板をタッチパネルに用いる場合、上述した導電性細線は検出電極として有効に機能し得る。
なお、導電性基板においては、上述した所定の特性を有する導電性細線とは別に、導電性細線とは構成が異なる導電部を有していてもよい。この導電部は、上述した導電性細線と電気的に接続して、導通していてもよい。
【0152】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の導電性基板の製造方法及び導電性基板について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例0153】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0154】
<実施例1>
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
30℃、pH4.5に保たれた下記1液に、下記の2液及び3液の各々90%に相当する量を、1液を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて、得られた溶液に下記4液及び5液を8分間にわたって加え、更に、下記の2液及び3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、核粒子を0.10μmまで成長させた。更に、得られた溶液にヨウ化カリウム0.15gを加え、5分間熟成し、粒子形成を終了した。
【0155】
1液:
水 750ml
ゼラチン 8.6g
臭化カリウム 3g
1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
2液:
水 300ml
硝酸銀 150g
3液:
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
4液:
水 100ml
硝酸銀 50g
5液:
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0156】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、上述の得られた溶液の温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、得られた溶液から上澄み液を約3リットル除去した(第1水洗)。次に、上澄み液を除去した溶液に、3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、得られた溶液から上澄み液を3リットル除去した(第2水洗)。第2水洗と同じ操作を更に1回繰り返して(第3水洗)、水洗及び脱塩工程を終了した。水洗及び脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ゼラチン2.5g、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mg及び塩化金酸10mgを加え、55℃にて最適感度を得るように化学増感を施した。その後、更に、得られた乳剤に、安定剤として1,3,3a,7-テトラアザインデン100mg、及び、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に得られた乳剤は、沃化銀を0.08モル%含み、塩臭化銀の比率を塩化銀70モル%、臭化銀30モル%とする、平均粒子径(球相当径)100nm、変動係数9%の塩臭化銀立方体粒子乳剤であった。
【0157】
(感光性層形成用組成物の調製)
上述の乳剤に1,3,3a,7-テトラアザインデン(1.2×10-4モル/モルAg)、ハイドロキノン(1.2×10-2モル/モルAg)、クエン酸(3.0×10-4モル/モルAg)、2,4-ジクロロ-6-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジンナトリウム塩(0.90g/モルAg)、及び、微量の硬膜剤を添加し、組成物を得た。次に、クエン酸を用いて組成物のpHを5.6に調整した。
上述の組成物に、下記(P-1)で表される高分子(以下、「高分子1」ともいう。)とジアルキルフェニルPEO(PEOはポリエチレンオキシドの略号である。)硫酸エステルからなる分散剤と水とを含有するポリマーラテックス(高分子1の質量に対する分散剤の質量の比(分散剤の質量/高分子1の質量、単位はg/g)が0.02であって、固形分含有量が22質量%である。)を、組成物中のゼラチンの合計質量に対する、高分子1の質量の比(高分子1の質量/ゼラチンの質量、単位g/g)が0.25/1となるように添加して、ポリマーラテックス含有組成物を得た。ここで、ポリマーラテックス含有組成物において、ハロゲン化銀由来の銀の質量に対するゼラチンの質量の比(ゼラチンの質量/ハロゲン化銀由来の銀の質量、単位はg/gである。)は0.11であった。
更に、架橋剤としてEPOXY RESIN DY 022(商品名:ナガセケムテックス株式会社製)を添加した。なお、架橋剤の添加量は、後述するハロゲン化銀含有感光性層中における架橋剤の量が0.09g/m2となるように調整した。更に後述の界面活性剤1、界面活性剤2、及び増粘剤としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量約100万)を加えた。
以上のようにして感光性層形成用組成物を調製した。
なお、高分子1は、特許第3305459号公報及び特許第3754745号公報を参照して合成した。
【0158】
【0159】
厚み40μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(「富士フイルム株式会社製ロール状の長尺フィルム」)に上述のポリマーラテックスを塗布して、厚み0.05μmの下塗り層を設けた。この処理はロール・トゥ・ロールで行い、以下の各処理(工程)もこれと同様にロール・トゥ・ロールで行った。なお、このときのロール幅は1m、長さは1000mであった。
【0160】
(工程E-1、工程A-1、工程F-1)
次に、下塗り層上に、ハロゲン化銀不含有層形成用組成物と、上述の感光性層形成用組成物と、後述の保護層形成用組成物とを、同時重層塗布し、下塗り層上にハロゲン化銀不含有層と、ハロゲン化銀含有感光性層と、保護層とを形成した。
ここで、ハロゲン化銀不含有層形成用組成物は、上述の高分子1とゼラチンと、後述の染料の固体分散物、界面活性剤1、界面活性剤2、界面活性剤3、及び増粘剤としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量約100万)を含む水溶液からなり、ハロゲン化銀不含有層の厚みは2.0μmであり、ハロゲン化銀不含有層中における高分子1とゼラチンとの混合質量比(高分子1/ゼラチン)は2/1であり、高分子1の含有量は1.3g/m2であった。また、染料の含有量は0.08g/m2であり、界面活性剤1、界面活性剤2、界面活性剤3、増粘剤の含有量はそれぞれ0.02g/m2、0.02g/m2、0.02g/m2、0.04g/m2であった。
また、ハロゲン化銀含有感光性層の厚みは2.5μmであり、ハロゲン化銀含有感光性層中における高分子1とゼラチンとの混合質量比(高分子1/ゼラチン)は0.25/1であり、高分子1の含有量は0.19g/m2であった。また、界面活性剤1、界面活性剤2、増粘剤の含有量はそれぞれ0.04g/m2、0.01g/m2、0.01g/m2であった。
【0161】
また、保護層形成用組成物は、上述の高分子1と、ゼラチンと、コロイダルシリカ(平均粒径12nm:日産化学株式会社製、スノーテックスC)、界面活性剤1、界面活性剤2、界面活性剤3、界面活性剤4、増粘剤としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量約100万)、及び、ゼラチン架橋剤としてN,N'-ビス(ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミンエチレンビス(ビニルスルホニルアセトアミド)を含む水溶液からなり、保護層の厚みは0.15μmであり、保護層中における高分子1とゼラチンとの混合質量比(高分子1/ゼラチン)は0.1/1であり、高分子1の含有量は0.015g/m2であった。また、コロイダルシリカの含有量は0.1g/m2、界面活性剤1、界面活性剤2(平均分子量1368)、界面活性剤3、界面活性剤4、増粘剤の含有量はそれぞれ0.01g/m2、0.02g/m2、0.02g/m2、0.001g/m2、0.01g/m2であった。また、ゼラチン架橋剤の含有量は全層のゼラチンの質量の合計に対して3質量パーセントとなる量であった。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
(工程B)
作製した上述の感光性層に、格子状のフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。フォトマスクとしてはパターン形成用のマスクを用いており、
図10に示すような格子を形成する単位正方格子の線幅は1.2μm、格子(開口部)の一辺の長さLは600μmになるようにした。
露光後、得られたサンプルに対して、後述する現像液で現像し、更に定着液(商品名:CN16X用N3X-R:富士フイルム株式会社製)を用いて現像処理を行った後、25℃の純水でリンスし、その後乾燥して、メッシュパターン状に形成された、金属銀を含む銀含有層を有するサンプルAを得た。サンプルAにおいては、21.0cm×29.7cmの大きさの導電性メッシュパターン領域が形成されていた。
【0168】
(現像液の組成)
現像液1リットル(L)中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N-メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0169】
得られた上述のサンプルAを、50℃の温水中に180秒間浸漬させた。この後、エアシャワーで水を切り、自然乾燥させた。
【0170】
(工程C-1)
工程B-1で得られたサンプルAを、110℃の過熱水蒸気処理槽に搬入し、30秒間静置して、過熱水蒸気処理を行った。なお、このときの蒸気流量は100kg/hであった。
【0171】
(工程D-1)
工程C-1で得られたサンプルAを、タンパク質分解酵素水溶液(40℃)に30秒間浸漬した。サンプルAをタンパク質分解酵素水溶液から取り出し、サンプルAを温水(液温:50℃)に120秒間浸漬して、洗浄した。この後、エアシャワーで水を切り、自然乾燥させた。
なお、使用したタンパク質分解酵素水溶液は、以下の手順に従って調製した。
タンパク質分解酵素(ナガセケムテックス社製ビオプラーゼ30L)の水溶液(タンパク質分解酵素の濃度:0.5質量%)に、トリエタノールアミン、硫酸を加えてpHを8.5に調製した。
【0172】
(工程2-1)
工程D-1で得られたサンプルAを、1質量%のグルタル酸水溶液(70℃)に2分間浸漬した。サンプルAをグルタル酸水溶液から取り出し、サンプルAを30℃の水に5秒間浸漬して、洗浄した。グルタル酸は富士フイルム和光純薬株式会社製を用いた。
【0173】
(工程3-1)
工程2-1で得られたサンプルAを、以下組成のめっき液A(30℃)に5分間浸漬した。サンプルAをめっき液Aから取り出し、サンプルAを1質量%のクエン酸緩衝液(pH=5、液温:25℃)に30秒間浸漬して、洗浄した。すなわち、中和洗浄を実施した。
めっき液A(全量1200ml)の組成は、以下の通りであった。なお、めっき液AのpHは9.9であり、炭酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を所定量加えることにより調整した。また、使用した以下の成分は、すべて富士フイルム和光純薬株式会社製を用いた。めっき処理前後で線幅の変化は見られなかった。
【0174】
(めっき液Aの組成)
・AgNO3 2.1g
・亜硫酸ナトリウム 86g
・チオ硫酸ナトリウム五水和物 60g
・アロンT-50(東亞合成株式会社製、固形分濃度40%) 36g
・メチルヒドロキノン 13g
・炭酸カリウム 所定量
・水 残部
【0175】
(工程7-1)
工程3-1で得られたサンプルAを、質量比:水/ジエチレングリコールモノエチルエーテル=30/70の溶液(液温:50℃)に、60秒間浸漬した。その後、得られたサンプルAを水(液温:30℃)に30秒間浸漬して洗浄した。
(工程6-1)
工程3-1で得られたサンプルAに対して、110℃の過熱水蒸気処理槽に搬入し、30秒間静置して、過熱水蒸気処理を行った。なお、このときの蒸気流量は100kg/hであった。得られた導電性メッシュパターン領域は、導電性細線より形成されるメッシュ状の層であった。導電性細線の線幅は1.8μm、導電性細線の厚み(高さ)は1.8μmであった。
【0176】
得られたサンプルAについて、導電性細線の表面に導電性を付与するため、イオンスパッタ装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製E-1030型イオンスパッタ)を用いてPtを被覆した。この状態で、集束イオンビーム加工機能付き走査型電子顕微鏡(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Helios600i)のイオンビーム加工機能にて導電性細線の垂直断面を加工し、露出した断面形態を観察することにより、導電性細線内部の金属が存在する領域を観察でき、垂直断面の観察画像が得られた。なお、観察条件は、反射電子モードで、加速電圧:1kVで行った。
【0177】
表1に記載する「線幅」及び「グレー値」は工程6-1の加熱水蒸気処理後に測定しており、測定には株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX-5000を使用した。
【0178】
<実施例2~12、18~22>
後述する表1に示すように、使用した第1溶液の種類、第1溶液の温度、基板の種類、導電性細線の線幅、導電性細線のアスペクト比を調整した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を作製した。
なお、導電性細線の線幅は、工程B-1における露光量を調整することにより制御した。また、導電性細線のアスペクト比は、感光性層形成用組成物の塗布量を調整することにより制御した。
【0179】
<実施例13>
工程D-1と工程2-1との間に、以下の工程5-13を実施した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を作製した。
【0180】
[工程5-13]
工程D-1で得られたサンプルAを、0.1質量%のラウリルピリジニウムクロリド水溶液(30℃)に2分間浸漬した。サンプルAをラウリルピリジニウムクロリド水溶液から取り出し、サンプルAを30℃の水に5秒間浸漬して、洗浄した。ラウリルピリジニウムクロリドは富士フイルム和光純薬株式会社製を用いた。
【0181】
<実施例14>
工程2-1と工程3-1との間に、以下の工程5-14を実施した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を作製した。
【0182】
[工程5-14]
工程2-1で得られたサンプルAを、0.1質量%のラウリルピリジニウムクロリド水溶液(30℃)に2分間浸漬した。サンプルAをラウリルピリジニウムクロリド水溶液から取り出し、サンプルAを30℃の水に5秒間浸漬して、洗浄した。ラウリルピリジニウムクロリドは富士フイルム和光純薬株式会社製を用いた。
【0183】
<実施例15~17>
後述する表1に示すように、使用した第2溶液の種類を変更した以外は、実施例14と同様の手順に従って、導電性基板を作製した。
【0184】
<比較例1>
工程2-1及び工程3-1を実施しなかった以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を作製した。
【0185】
<比較例2>
工程2-1を実施しなかった以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を作製した。
【0186】
<評価>
以下、評価項目である導電性、折り曲げ性、及び、視認性について説明する。
【0187】
(導電性)
導電性については、得られた導電性基板の導電性メッシュパターン領域の線抵抗値を測定して評価した。線抵抗値とは、四端針法で測定した抵抗値を測定端子間距離で除したものである。より具体的には、メッシュパターンを構成する任意の1本の導電性細線の両端を断線させてメッシュパターンから切り離した後に、4本(A、B、C、D)のマイクロプローブ(株式会社マイクロサポート製タングステンプローブ(直径0.5μm))を切り離された導電性細線に接触させて、最外プローブA、Dにソースメーター(KEITHLEY製ソースメーター、2400型汎用ソースメーター)を用いて250μm間隔とした内部プローブB、C間の電圧Vが5mVになるよう定電流Iを印加し、抵抗値Ri=V/Iを測定し、得られた抵抗値RiをB、C間距離で除して線抵抗値を求めた。得られた抵抗値RiをB、C間距離で除して線抵抗値とし、任意の10箇所の測定値の平均値を、以下の基準に従って、導電性として評価した。導電性の評価としては、下記1~5のうち、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5が更に好ましい。
5:線抵抗値が60Ω/mm未満である。
4:線抵抗値が60Ω/mm以上、80Ω/mm未満である。
3:線抵抗値が80Ω/mm以上、100Ω/mm未満である。
2:線抵抗値が100Ω/mm以上、200Ω/mm未満である。
1:線抵抗値が200Ω/mm以上である。
【0188】
(折り曲げ性)
折り曲げ性については、得られた導電性基板を折り曲げ試験機で複数回、導電性細線が延在する方向と、折り曲げ方向とが作る角度が45°になる方向に折り曲げ、導電性の変化を測定して評価した。折り曲げ試験には、ユアサシステム機器株式会社製の小型卓上試験機TCDM111LHを使用した。折り曲げ半径を2mmとし、20万回折り曲げた後の抵抗変化δによって以下の基準に従って評価した。抵抗変化δは、抵抗変化δ=(折り曲げ試験後の抵抗値)/(折り曲げ試験前の抵抗値)で表される。
ここでいう「抵抗値」とは、上述の導電性評価によって得られた抵抗値Riを指す。折り曲げ性の評価としては、下記1~5のうち、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5が更に好ましい。
5:δが1.1未満である。
4:δが1.1以上、1.15未満である。
3:δが1.15以上、1.2未満である。
2:δが1.2以上、1.5未満である。
1:δが1.5以上である、もしくは導電性細線が破断している。
【0189】
(視認性)
得られた導電性基板をガラス/導電性基板/偏光板/偏光板(偏光面が直行する向き)/黒PET(パナック株式会社製、工業用黒PET(GPH100E82A04))の順になるよう積層して、積層体を得た。なお、導電性基板中、導電性メッシュパターンがガラス側に位置するように、導電性基板を配置した。
次に、得られた積層体に対して、500luxの環境光にて、ガラス面側の正面及び斜め30~60°の角度から10人の観察者が目視にて観察し、以下の基準に従って、視認性を評価した。なお、メッシュパターンが視認されにくい場合、光学特性に優れ、導電性基板をディスプレイに積層した際に発生するモアレが低減される。視認性の評価としては、下記1~5のうち、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5が更に好ましい。
5:15cm離れた位置から導電性基板を観察した際に、メッシュパターンが視認されなかった。
4:30cm離れた位置から導電性基板を観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が0人又は1人であった。
3:30cm離れた位置から導電性基板を観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が2~4人であった。
2:30cm離れた位置から導電性基板を観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が5人以上であった。
1:50cm離れた位置から導電性基板を観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が5人以上であった。
【0190】
表1中の使用される化合物である「LPC」はラウリルピリジニウムクロリド(富士フイルム和光純薬株式会社製)を表し、「DSAB」はジステアリルジメチルアンモニウムブロミド(富士フイルム和光純薬株式会社製)を表し、「EPB」はエチルピリジニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)を表す。
【0191】
表1中、「第1溶液」欄の「化合物」欄は第1溶液に含まれる有機酸の種類を表し、「第1溶液」欄の「濃度」欄は第1溶液に含まれる有機酸の第1溶液全質量に対する含有量(質量%)を表し、「第1溶液」欄の「pH」欄は第1溶液のpHを表し、「第1溶液」欄の「温度」欄は第1溶液の温度を表す。
なお、実施例11及び12においては、第1溶液中にグルタル酸及びLPCの2種が含まれていることを示しており、「濃度」欄は左側の数値がグルタル酸の第1溶液全質量に対する含有量(質量%)、右側の数値がLPCの第1溶液全質量に対する含有量(質量%)を表す。
表1中、「第2溶液」欄の「化合物」欄は第2溶液に含まれる有機酸の種類を表し、「第2溶液」欄の「濃度」欄は第2溶液に含まれる有機酸の第2溶液全質量に対する含有量(質量%)を表し、「第2溶液」欄の「pH」欄は第2溶液のpHを表し、「第2溶液」欄の「温度」欄は第2溶液の温度を表す。
表1中、「内部銀密度」欄は、導電性細線が延在する方向と直交する方向での導電性細線の垂直断面において、銀(金属)が観察される観察領域の最大内接円内での銀(金属)を示す領域の割合を表す。
表1中、「線幅」欄は、導電性細線の線幅を表す。
表1中、「厚み(高さ)」欄は、導電性細線の厚み(高さ)を表す。
表1中、「アスペクト比」欄は、導電性細線のアスペクト比(導電性細線の線幅に対する導電性細線の高さの比)を表す。
表1中、「グレー値」欄は、上述した、反射光を用いて導電性細線を撮像して得られるグレー値である。
表1中、「比γ」欄は、上述した、Lm/Lsで表される比γである。
なお、上述したように、実施例13においては、第2溶液を用いた工程5は第1溶液を用いた工程2の前に実施し、実施例14~17においては、第2溶液を用いた工程5は第1溶液を用いた工程2の後に実施した。
【0192】
【0193】
上記表1に示すように、本発明の導電性基板は所定の効果を示した。
なお、実施例1~17の比較より、内部銀密度が86%以上の場合、導電性がより優れることが確認された。
また、実施例1~17の比較より、グレー値が115以下の場合、視認性がより優れることが確認された。
また、実施例20と他の実施例との比較より、導電性細線の線幅が0.1μm以上5.0μm未満である場合、視認性がより優れることが確認された。
また、実施例20及び21と他の実施例との比較より、導電性細線のアスペクト比が0.6以上1.5未満の場合、折り曲げ性がより優れることが確認された。
また、実施例22と他の実施例との比較より、基板として可撓性フィルムを使用した場合、折り曲げ性がより優れることが確認された。
また、実施例1、2、6~7の比較より、第1溶液の温度が65~95℃の場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例1、3~5の比較より、第1溶液中における有機酸の含有量が0.5質量%以上の場合(好ましくは、0.5~1.5質量%の場合)、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例1、8~10の比較より、有機酸として2価以上のカルボン酸を使用した場合、より優れた効果が得られることが確認された。
【0194】
<実施例23~28、比較例3~4>
後述する表2に示すように、タンパク質分解酵素水溶液温度、浸漬時間、及び、溶液Xの種類及び浸漬時間を変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
なお、比較例3及び4では、溶液Xによる処理を実施していない。
また、実施例23~28においては、
図17に示すような、タッチパネルセンサー(検出電極層、周辺配線、シールド電極)が得られるようなマスクを用いて露光を行った。
【0195】
タンパク質分解酵素水溶液を用いた処理(工程D)を実施した後に得られた細線中のゼラチン量、及び、めっき処理(工程3)を実施した後に得られた導電性細線中のゼラチンの量に関して、BCA法にて定量した。結果を表2にまとめて示す。
導電性基板中の導電性細線内の金属原子数比率が50%以上となった位置より基板側の内部領域の炭素原子と銀原子との原子数比率(炭素原子/銀原子:C/Ag比)は、周辺パターンの基板側とは反対側の表面から深さ方向にArスパッタ(2kV,Arイオン,2mm□)とXPS(X線源:Al Kaアルバック・ファイ株式会社製Quantera SXM)によって分析することで算出した。
表2中の「残量1」欄は、工程Dを実施した後に得られた細線中のゼラチン量を表す。
表2中の「残量2」欄は、工程3後のシールド電極中でのゼラチン量を表す。
表2中の「残量3」欄は、工程3後の検出電極中でのゼラチン量を表す。
表2中の「残量4」欄は、工程3後の周辺配線中でのゼラチン量を表す。
表2中の「周辺パターン」欄は、シールド電極でのC/Ag比を表す。
【0196】
【0197】
表2に示すように、ゼラチン除去の時間や、溶液Xとの接触時間を変更しても、所定の効果が得られることが確認された。
【0198】
<実施例29>
図12に示す検出電極(長さ18cm、幅2mm、導電性細線の線幅1.8μm、開口率99)及び周辺配線(幅20μm、長さ11cm)が得られるようにフォトマスクを変更し、溶液Xの温度及び浸漬時間を変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0199】
<実施例30>
検出電極の露光量に対する周辺配線の露光量が0.3倍となるように調整した以外は、実施例29と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0200】
<実施例31>
図13に示す検出電極(長さ18cm、幅2mm、導電性細線の線幅1.8μm、開口率99)及び周辺配線(第1の配線部:幅10μm、長さ7cm、第2の配線部:幅20μm、長さ4cm)が得られるようにフォトマスクを変更し、溶液Xの温度及び浸漬時間を変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0201】
<実施例32>
検出電極の露光量に対する周辺配線の露光量が0.3倍となるように調整した以外は、実施例31と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0202】
<実施例33>
第1の配線部の幅を5mmに変更した以外は、実施例31と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0203】
<実施例34>
検出電極の露光量に対する周辺配線の露光量が0.3倍となるように調整した以外は、実施例33と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0204】
表3に示すように、周辺配線が接続されたパターンに変更しても、また、周辺配線の膜厚を変更しても所定の効果が得られることが確認された。
【0205】
【0206】
<実施例35>
図12に示す検出電極(長さ18cm、幅2mm、導電性細線の線幅1.8μm、開口率99)及び周辺配線(幅20μm、長さ11cm)が得られるようにフォトマスクを変更した以外は、実施例27と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0207】
<実施例36>
実施例35で使用したフォトマスクについて、検出電極の露光量に対する周辺配線の露光量が0.35倍となるように、周辺配線部分のみに半透過膜を付与したハーフトーンマスクを用いた以外は、実施例35と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0208】
<実施例37>
実施例35で使用したフォトマスクについて、検出電極の露光量に対する周辺配線の露光量が0.25倍となるように、周辺配線部分のみに半透過膜を付与したハーフトーンマスクを用いた以外は、実施例35と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0209】
<実施例38>
図13に示す検出電極(長さ18cm、幅2mm、導電性細線の線幅1.8μm、開口率99)及び周辺配線(第1の配線部:幅10μm、長さ7cm、第2の配線部:幅20μm、長さ4cm)が得られるようにフォトマスクを変更した以外は、実施例27と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0210】
<実施例39>
実施例38で使用したフォトマスクについて、検出電極の露光量に対する周辺配線の露光量が0.35倍となるように、周辺配線部分のみに半透過膜を付与したハーフトーンマスクを用いた以外は、実施例35と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0211】
<実施例40>
実施例38で使用したフォトマスクについて、検出電極の露光量に対する周辺配線の露光量が0.25倍となるように、周辺配線部分のみに半透過膜を付与したハーフトーンマスクを用いた以外は、実施例35と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0212】
<実施例41>
第1の配線部の幅を5mmに変更した以外は、実施例38と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0213】
<実施例42>
第1の配線部の幅を5mmに変更した以外は、実施例39と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0214】
<実施例43>
第1の配線部の幅を5mmに変更した以外は、実施例40と同様の手順に従って、導電性基板を製造した。
【0215】
表4に示すように、周辺配線が接続されたパターンに変更しても、また、周辺配線の膜厚を変更しても所定の効果が得られることが確認された。
【0216】
【0217】
<実施例44>
実施例1と同様の手順でサンプルAを連続で100枚作製した。工程Bの現像液・定着液、工程D-1のタンパク質分解酵素水溶液、工程2-1の1質量%グルタル酸水溶液、工程3-1の1質量%クエン酸緩衝液は同じ液を連続して使用した。それ以外の液は都度新しい液を使用した。100枚目のサンプルについて実施例1と同様の評価を行った。
<実施例45>
工程3-1の1質量%クエン酸緩衝液を0.15質量%クエン酸水溶液(pH:2.7)に変更した以外は実施例44と同様の手順に従って作製した。
<実施例46>
工程3-1の1質量%クエン酸緩衝液を純水に変更した以外は実施例44と同様の手順に従って作製した。
【0218】
表5に示すように、実施例44は、めっき停止液に緩衝液を用いており、めっき液が混入してもpH上昇が抑制され、連続100枚処理しても、1枚目と同等の性能を維持することができた。また、実施例45は、めっき停止液に用いた緩衝液のpHが低く、めっき液由来の亜硫酸から硫黄等が発生し、導電率が若干低下した。実施例46は、めっき停止液に純水を用いており、めっき液が混入するにつれてpHが上昇し、めっき反応が停止しにくくなり、グレー値が上がり、視認性が若干悪くなった。
【0219】