(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161820
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】画像表示装置、ヘッドマウントディスプレイ、画像表示システムおよび、パターン偏光子
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20221014BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20221014BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20221014BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20221014BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221014BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20221014BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221014BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20221014BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G09F9/30 349Z
H04N5/64 511A
G06T1/00 400G
G06T1/00 400B
G02B27/02 Z
G09F9/00 313
G09F9/33
G09F9/30 365
G02B5/30
G02B5/18
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】64
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017879
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021066757
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021194536
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】加茂 誠
(72)【発明者】
【氏名】野尻 真裕美
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 之人
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H249
5B047
5C094
5E555
5G435
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】光学作用を利用し、重量およびサイズが小さく意匠上の設計に適合する構造であり、検出精度および取得情報量に優れた画像表示装置、画像表示システムおよびヘッドマウントディスプレイを提供する。またその提供に寄与するパターン偏光子を提供する。
【解決手段】 非可視域に感受性を有する受光部と、基板および基板上に配置された複数の画素を含む画像表示パネルと、複数の画素から形成される可視域の光束が出射する出光面とを含む画像表示装置であって、受光部は、出光面を経て画像表示装置に入射する光のうち、非可視光のみを受光し、受光部は、出光面と画像表示パネルとの間、または、画像表示パネル上、または、画像表示パネルの出光面とは反対側に設けられており、出光面に垂直な方向から見た際に、受光部は、画像表示パネルと重複する位置に配置されており、受光部と、出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可視域に感受性を有する受光部と、基板および前記基板上に配置された複数の画素を含む画像表示パネルと、前記複数の画素から形成される可視域の光束が出射する出光面とを含む画像表示装置であって、
前記受光部は、前記出光面を経て前記画像表示装置に入射する光のうち、非可視光のみを受光し、
前記受光部は、前記出光面と前記画像表示パネルとの間、または、前記画像表示パネル上、または、前記画像表示パネルの前記出光面とは反対側に設けられており、
前記出光面に垂直な方向から見た際に、前記受光部は、前記画像表示パネルと重複する位置に配置されており、
前記受光部と、前記出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する、画像表示装置。
【請求項2】
前記受光部が、近赤外域に感受性を有する、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記受光部は、検知する対象から反射された非可視光を受光するものであり、
前記受光部により検知する対象が、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、および、虹彩のいずれかから選ばれる少なくとも1つである、請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
近赤外域で偏光選択性を有する前記近赤外偏光子の、波長850nmにおける単板透過率が55%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像表示装置、および、前記画像表示装置と、観察者の眼球との間に配置される接眼レンズを含むヘッドマウントディスプレイであり、
さらに前記眼球に近赤外光を照射可能な光源を含み、
前記光源からの近赤外光を前記眼球に反射させて得られた反射光を、前記近赤外偏光子を経て前記受光部で検出するアイトラッキングシステムを備えた、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記接眼レンズが近赤外透過性である、請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記接眼レンズが、近赤外透過性のハーフミラーおよび近赤外透過性の反射偏光子を含む、請求項5または6に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記接眼レンズと前記画像表示装置の前記複数の画素との間に、可視光に偏光特性を有する可視光偏光子をさらに含み、該可視光偏光子は近赤外域で透過性である、請求項5~7のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
前記近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さない、あるいは、可視域で透過性である、請求項5~8のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
前記近赤外偏光子は、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子領域と、可視光に偏光選択性を有する可視光直線偏光子領域とを同一面内に含むパターン偏光子である、請求項5~8のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
近赤外光に偏光選択性を有する前記近赤外偏光子領域は、波長850nmにおける単板透過率が55%未満である、請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像表示装置、および、使用者の顔面に近赤外光を照射可能な光源を含み、
前記光源からの近赤外光を観察者の顔面に反射させて得られた反射光を、前記近赤外偏光子を経て前記受光部で検出する顔認証システムまたは表情認識システムを備えた、画像表示システム。
【請求項13】
前記画像表示パネルはOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネルから選ばれる発光パネルであり、
前記画像表示装置は、前記出光面に外光反射低減のための円偏光板を設けたものであり、
該円偏光板は、可視光偏光子と位相差板とを積層したものであり、
前記画像表示装置は、前記出光面から前記基板に向かって、前記可視光偏光子、前記位相差板、および、前記基板をこの順に含む、請求項12に記載の画像表示システム。
【請求項14】
前記可視光偏光子と、前記位相差板との間に前記近赤外偏光子を含み、
該近赤外偏光子は可視光域で透過性であり、
波長550nmの光に対して、前記位相差板と前記近赤外偏光子の積層体が1/4波長板の作用を有する、請求項13に記載の画像表示システム。
【請求項15】
前記近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して並行または直交に配置されているか、
前記近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に配置され、かつ、近赤外偏光子が有する可視光域の位相差Re(550)が1/2波長であるか、
のいずれかである、請求項14に記載の画像表示システム。
【請求項16】
前記近赤外偏光子の透過軸が、前記可視光偏光子の透過軸に対して75°±10°であり、かつ前記近赤外偏光子が有する可視光域の位相差Re(550)が180nmから360nmの範囲であり、
前記位相差板の、前記可視光偏光子の透過軸に対しての遅相軸が15°±10°であり、前記位相差板の位相差Re(550)が115nmから155nmの範囲である、請求項14に記載の画像表示システム。
【請求項17】
前記可視光偏光子と、前記位相差板と、前記近赤外偏光子とをこの順に含み、
該近赤外偏光子は可視光域で透過性であり、
前記位相差板は、その遅相軸が可視光偏光子の透過軸に対して75°±10°であり、
かつ位相差Re(550)が180nmから360nmの範囲であり、
前記近赤外偏光子は、前記可視光偏光子の透過軸に対して遅相軸が15°±10°とし、
可視光域に有する位相差Re(550)が115nmから155nmの範囲である、請求項13に記載の画像表示システム。
【請求項18】
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像表示装置、および、測定対象に近赤外光を照射可能な光源を含み、
前記光源からの近赤外光を測定対象に反射させて得られた反射光を、前記近赤外偏光子を経て前記受光部で検出する測距システムないしは物体認識システムを備えた、画像表示システム。
【請求項19】
前記画像表示パネルはOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネルから選ばれる発光パネルであり、
前記画像表示装置は、前記出光面に外光反射低減のための円偏光板を設けたものであり、
該円偏光板は、可視光偏光子と位相差板とを積層したものであり、
前記画像表示装置は、前記出光面から前記基板に向かって、前記可視光偏光子、前記位相差板、および、前記基板をこの順に含む、請求項18に記載の画像表示システム。
【請求項20】
前記可視光偏光子と、前記位相差板との間に前記近赤外偏光子を含み、
該近赤外偏光子は可視光域で透過性であり、
波長550nmの光に対して、前記位相差板と前記近赤外偏光子の積層体が1/4波長板の作用を有する、請求項19に記載の画像表示システム。
【請求項21】
前記近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して並行または直交に配置されているか、
前記近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に配置され、かつ、近赤外偏光子が有する可視域の位相差Re(550)が1/2波長であるか、
のいずれかである、請求項20に記載の画像表示システム。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像表示装置、および、手、指、手のひら、および、皮膚から選ばれる生体の一部分に近赤外光を照射可能な光源を含み、
前記光源からの近赤外光を手、指、手のひら、および、皮膚から選ばれる生体の一部分に反射させて得られた反射光を、前記近赤外偏光子を経て前記受光部で検出する指紋認証システム、静脈認証システム、または生体測定システムを備えた、画像表示システム。
【請求項23】
前記光源から出射した近赤外光を導光する導光板をさらに含み、該導光板内を伝播する近赤外光が指と前記導光板との界面で散乱することにより、前記受光部が散乱した前記近赤外光を検知する指紋認証システムを備えた、請求項22に記載の画像表示システム。
【請求項24】
前記光源から出射した近赤外光を導光する導光板をさらに含み、該導光板は散乱層または回折機能層が付与され、導光する近赤外光の一部を前記出光面から出射して測定対象を照射し、前記測定対象からの反射光を前記受光部が受光する静脈認証システム、または生体測定システムを備えた、請求項22に記載の画像表示システム。
【請求項25】
非可視域に感受性を有する受光部と、
基板および複数の画素を含む画像表示パネルと、前記複数の画素から形成される光束が出射する出光面とを含む画像表示装置と、を含み、
前記複数の画素は、可視光域の光束を形成する画素群と、前記受光部が感受性を有する非可視域の光束を形成する画素とを含み、
前記出光面に垂直な方向から見た際に、前記複数の画素は、前記基板と重複する位置に配置されており、
前記受光部は、前記非可視域の光束を形成する画素から、前記出光面を経て照射されて検知する対象により反射または散乱された前記非可視光を受光するように配置され、光可視域の光束のみを受光するものであり、
前記画像表示装置は、前記非可視域の光束を形成する画素と、前記出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する、画像表示システム。
【請求項26】
前記受光部が、近赤外域に感受性を有する、請求項25に記載の画像表示システム。
【請求項27】
前記受光部は、検知する対象から反射された非可視光を受光するものであり、
前記受光部により検知する対象が、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、虹彩のいずれかから選ばれる少なくとも1つである、請求項25または26に記載の画像表示システム。
【請求項28】
近赤外域で偏光選択性を有する前記近赤外偏光子の、波長850nmにおける単板透過率が55%未満である、請求項25~27のいずれか一項に記載の画像表示システム。
【請求項29】
前記近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さない、あるいは、可視域で透過性である、請求項25~28のいずれか一項に記載の画像表示システム。
【請求項30】
請求項25~29のいずれか一項に記載の画像表示システム、および、接眼レンズを備え、
該画像表示装置から観察者の眼球に照射され反射した近赤外光を前記受光部で検出することによるアイトラッキングシステムを含む、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項31】
接眼レンズが、ハーフミラーおよび反射偏光子を含む、請求項30に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項32】
前記反射偏光子、および、前記ハーフミラーそれぞれの850nmにおける単板透過率は80%以上である、請求項31に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項33】
前記接眼レンズの眼球側表面に近赤外偏光子をさらに含み、該近赤外偏光子の単板透過率は、850nmで55%未満である、請求項30~32のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項34】
前記画像表示装置から出射される近赤外域の光束を使用者の顔面に照射し、得られた反射光を前記受光部で検知する顔認証システムないしは表情認識システムを備える、請求項25~29のいずれか一項に記載の画像表示システム。
【請求項35】
前記画像表示装置は、前記出光面から前記基板に向かって、前記近赤外偏光子、可視光偏光子、および、該可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に遅相軸を有する1/4波長板である位相差板をこの順に含む、請求項25~29および34のいずれか一項に記載の画像表示システム。
【請求項36】
前記近赤外偏光子は、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子である、請求項35に記載の画像表示システム。
【請求項37】
前記画像表示装置から出射される非可視光を測定対象に照射し、得られた反射光を前記受光部で検知する光検出と測距システムまたは物体認識システムを備える、請求項25~29のいずれか一項に記載の画像表示システム。
【請求項38】
前記画像表示装置は、前記出光面から前記基板に向かって、前記近赤外偏光子、可視光偏光子、および、該可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に遅相軸を有する1/4波長板である位相差板をこの順に含む、請求項37に記載の画像表示システム。
【請求項39】
前記近赤外偏光子は、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子である、請求項38に記載の画像表示システム。
【請求項40】
請求項25~29のいずれか一項に記載の画像表示システムを含むヘッドマウントディスプレイであり、
前記画像表示装置は、導光要素を含み、前記画像表示パネルから出射される前記可視光域の光束および前記非可視域の光束を、該導光要素を通じて、前記導光要素に設けられた出光面から観察者に出射するものであり、
該画像表示装置から観察者の眼球に照射され反射した近赤外光を前記受光部で検出することで眼球センシングを行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項41】
前記導光要素の前記出射面と観察者の眼球との間、および、前記受光部と観察者の眼球との間に近赤外偏光子をそれぞれ含む、請求項40に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項42】
前記近赤外偏光子のうち、前記導光要素の前記出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子において、該近赤外偏光子の可視光域の平均透過率が90%以上である、請求項41に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項43】
前記近赤外偏光子のうち、前記導光要素の前記出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子において、該近赤外偏光子の850nmにおける偏光度が90%以上である、請求項41または42に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項44】
前記近赤外偏光子のうち、前記受光部と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子において、該近赤外偏光子の850nmにおける偏光度が90%以上である、請求項41~43のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項45】
前記導光要素の前記出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子と、前記受光部と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子とが、眼球表面を反射面としたとき、それぞれクロスニコルの関係で配置される、請求項41~44のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項46】
非可視域に感受性を有する受光部と、基板および複数の画素とを含む画像表示パネルと、前記複数の画素から形成される可視域の光束が出射する出光面とを含み、
前記受光部は、前記出光面と前記画像表示パネルとの間、または、前記画像表示パネル上、または、前記画像表示パネルの前記出光面とは反対側に設けられており、
前記複数の画素は、可視光域の光束を形成する画素群と、前記受光部が感受性を有する非可視域の光束を形成する画素とを含み、
前記出光面に垂直な方向から見た際に、前記受光部は、前記画像表示パネルと重複する位置に配置されており、
前記受光部は、前記出光面を経て前記画像表示装置に入射する光のうち、非可視光のみを受光し、
前記非可視域の光束を形成する画素と、前記出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する、画像表示装置。
【請求項47】
前記非可視光の光束を形成する画素は、近赤外光に発光帯域を有し、
前記受光部は、近赤外光に感受性を有し、
前記可視光の光束を形成する画素群は画像表示を行う、請求項46に記載の画像表示装置。
【請求項48】
該近赤外偏光子の単板透過率は、850nmで55%未満である請求項46または47に記載の画像表示装置。
【請求項49】
前記近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さない、あるいは、可視域で透過性である、請求項46~48のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項50】
請求項46~49のいずれか一項に記載の画像表示装置、および、接眼レンズを備え、前記画像表示装置により眼球に対し近赤外光の照射と検出とを行うことによりアイトラッキングを行う、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項51】
前記近赤外偏光子は、対応する画素ごとに異なる透過軸ないしは偏光選択性を有する領域をパターン状に配置したパターン偏光子である、請求項50に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項52】
前記接眼レンズが、ハーフミラーおよび反射偏光子を含む、請求項50または51に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項53】
前記反射偏光子、および、前記ハーフミラーは近赤外域において透過性であり、単板透過率は850nmにおいてそれぞれ80%以上である、請求項52に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項54】
前記非可視光の光束を形成する画素から出射される非可視光を使用者の顔面に照射し、得られた反射光を前記受光部で検知する顔認証システムないしは表情認識システムとして利用される、請求項46~49のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項55】
前記近赤外偏光子が、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子である、請求項54に記載の画像表示装置。
【請求項56】
測定対象に前記画像表示装置からの非可視光を照射し、測定対象に反射させて得られた反射光を、受光部で検出する光検出と測距システムまたは物体認識システムを備える、請求項46~49のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項57】
前記近赤外偏光子として互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子を含む、請求項56に記載の画像表示装置。
【請求項58】
前記画像表示装置から出射された非可視光を使用者の手、指、手のひら、および、皮膚から選ばれる生体の一部に透過または反射させて得られた光を、前記近赤外偏光子を経て前記受光部で検出する指紋センサー、静脈認証システム、および、血流センサーのいずれかとして利用される、請求項46~49のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項59】
前記近赤外偏光子が、偏光選択性が異なる複数の領域をパターン状に含んだパターン偏光子である、請求項58に記載の画像表示装置。
【請求項60】
近赤外域の光に対して偏光選択性を有する層を有し、前記層は、近赤外域に偏光選択性を有する領域を少なくとも含み、該偏光選択性が異なる複数の領域を面内にパターン状に含む、パターン偏光子。
【請求項61】
偏光選択性の層の面内に、第一の偏光選択性を有する第一領域と、該第一の偏光選択性を有する領域に囲まれるように設けられた、偏光選択性を有しない第二領域とを含むパターン偏光子であるか、または、
偏光選択性の層の面内に、少なくとも第一の偏光選択性を有する第一領域と、該第二の偏光選択性を有する第二領域とを含むパターン偏光子のいずれか1つから選ばれる構造を有する、請求項60に記載のパターン偏光子。
【請求項62】
前記偏光選択性を有する領域における波長850nmにおける単板透過率が、50%未満である、請求項60または61に記載のパターン偏光子。
【請求項63】
前記近赤外域において偏光選択性を有する層の厚さは、0.1μm~5μmである、請求項60~62のいずれか一項に記載のパターン偏光子。
【請求項64】
前記近赤外域において偏光選択性を有する層は、近赤外域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したものである、請求項60~63のいずれか一項に記載のパターン偏光子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、ヘッドマウントディスプレイ、画像表示システムに関する。またそれに用いられるパターン偏光子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学作用を利用して物体の状態を観測する画像表示装置が提案されている。
例えば、物体の検出および物体との距離の測定等を行うためのセンサー(例えば特許文献1)、反射光または透過光を検出することで物体の表面状態や内部状態を測定するためのセンサー(例えば特許文献2)などである。
【0003】
こうしたセンサーから得られた情報は、デバイス内で演算されたうえで使用者へ情報を提供するため、デバイス自体がデバイスの状態を制御するため、あるいは、計測対象を認証キーとしてユーザーに各種の権限を付与するためのセキュリティシステムを構成するサブシステムとして用いられる。また、第五世代移動通信システム(5G)の普及を背景に、デバイスで取得された情報は瞬時にネットワークを介して共有され、各種サービスの提供に利用されている。
【0004】
センサーを搭載したデバイスは多岐にわたり、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートグラスといったポータブルデバイスから、テレビ、スマートスピーカーといった据置型デバイスの他、自動車、ドローン、建造物ならびに交通インフラなどにも搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したポータブルデバイス、ならびに、主に屋内向けの据置型デバイスまたは車載デバイスにおいては、重量およびサイズ、あるいは意匠上の理由により、画像表示装置に割り当てられるスペースに制約が課される。ディスプレイシステムおよび照明システムなど、発光システムのために大きなスペースを必要とするデバイスではその制約が特に厳しい。
一方で、画像表示装置の検出精度および取得情報量を増大させるためには、特にその光学作用に関わるシステム部分を他の光学システムと独立させてノイズを低減し、十分なスペースを確保して精度の良い光学系を搭載することが望ましい。スペース上の制約と、検出精度および取得情報量の要求とは、このように相反する課題であり、その両立は容易でない。
【0007】
本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、光学作用を利用し、重量およびサイズが小さく意匠上の設計に適合する構造でありながら、検出精度および取得情報量に優れた画像表示装置、ヘッドマウントディスプレイ、画像表示システムを提供することにある。またその提供に寄与するパターン偏光子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 非可視域に感受性を有する受光部と、基板および基板上に配置された複数の画素を含む画像表示パネルと、複数の画素から形成される可視域の光束が出射する出光面とを含む画像表示装置であって、
受光部は、出光面を経て画像表示装置に入射する光のうち、非可視光のみを受光し、
受光部は、出光面と画像表示パネルとの間、または、画像表示パネル上、または、画像表示パネルの出光面とは反対側に設けられており、
出光面に垂直な方向から見た際に、受光部は、画像表示パネルと重複する位置に配置されており、
受光部と、出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する、画像表示装置。
[2] 受光部が、近赤外域に感受性を有する、[1]に記載の画像表示装置。
[3] 受光部は、検知する対象から反射された非可視光を受光するものであり、
受光部により検知する対象が、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、および、虹彩のいずれかから選ばれる少なくとも1つである、[1]または[2]に記載の画像表示装置。
[4] 近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子の、波長850nmにおける単板透過率が55%未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の画像表示装置。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の画像表示装置、および、画像表示装置と、観察者の眼球との間に配置される接眼レンズを含むヘッドマウントディスプレイであり、
さらに眼球に近赤外光を照射可能な光源を含み、
光源からの近赤外光を眼球に反射させて得られた反射光を、近赤外偏光子を経て受光部で検出するアイトラッキングシステムを備えた、ヘッドマウントディスプレイ。
[6] 接眼レンズが近赤外透過性である、[5]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[7] 接眼レンズが、近赤外透過性のハーフミラーおよび近赤外透過性の反射偏光子を含む、[5]または[6]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[8] 接眼レンズと画像表示装置の複数の画素との間に、可視光に偏光特性を有する可視光偏光子をさらに含み、該可視光偏光子は近赤外域で透過性である、[5]~[7]のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
[9] 近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さない、あるいは、可視域で透過性である、[5]~[8]のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
[10] 近赤外偏光子は、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子領域と、可視光に偏光選択性を有する可視光直線偏光子領域とを同一面内に含むパターン偏光子である、[5]~[8]のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
[11] 近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子領域は、波長850nmにおける単板透過率が55%未満である、[9]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[12] [1]~[4]のいずれかに記載の画像表示装置、および、使用者の顔面に近赤外光を照射可能な光源を含み、
光源からの近赤外光を観察者の顔面に反射させて得られた反射光を、近赤外偏光子を経て受光部で検出する顔認証システムまたは表情認識システムを備えた、画像表示システム。
[13] 画像表示パネルはOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネルから選ばれる発光パネルであり、
画像表示装置は、出光面に外光反射低減のための円偏光板を設けたものであり、
該円偏光板は、可視光偏光子と位相差板とを積層したものであり、
画像表示装置は、出光面から基板に向かって、可視光偏光子、位相差板、および、基板をこの順に含む、[12]に記載の画像表示システム。
[14] 可視光偏光子と、位相差板との間に近赤外偏光子を含み、
該近赤外偏光子は可視光域で透過性であり、
波長550nmの光に対して、位相差板と近赤外偏光子の積層体が1/4波長板の作用を有する、[13]に記載の画像表示システム。
[15] 近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して並行または直交に配置されているか、
近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に配置され、かつ、近赤外偏光子が有する可視光域の位相差Re(550)が1/2波長であるか、
のいずれかである、[14]に記載の画像表示システム。
[16] 近赤外偏光子の透過軸が、可視光偏光子の透過軸に対して75°±10°であり、かつ近赤外偏光子が有する可視光域の位相差Re(550)が180nmから360nmの範囲であり、
位相差板の、可視光偏光子の透過軸に対しての遅相軸が15°±10°であり、位相差板の位相差Re(550)が115nmから155nmの範囲である、[14]に記載の画像表示システム。
[17] 可視光偏光子と、位相差板と、近赤外偏光子とをこの順に含み、
該近赤外偏光子は可視光域で透過性であり、
位相差板は、その遅相軸が可視光偏光子の透過軸に対して75°±10°であり、
かつ位相差Re(550)が180nmから360nmの範囲であり、
近赤外偏光子は、可視光偏光子の透過軸に対して遅相軸が15°±10°とし、
可視光域に有する位相差Re(550)が115nmから155nmの範囲である、[13]に記載の画像表示システム。
[18] [1]~[4]のいずれかに記載の画像表示装置、および、測定対象に近赤外光を照射可能な光源を含み、
光源からの近赤外光を測定対象に反射させて得られた反射光を、近赤外偏光子を経て受光部で検出する測距システムないしは物体認識システムを備えた、画像表示システム。
[19] 画像表示パネルはOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネルから選ばれる発光パネルであり、
画像表示装置は、出光面に外光反射低減のための円偏光板を設けたものであり、
該円偏光板は、可視光偏光子と位相差板とを積層したものであり、
画像表示装置は、出光面から基板に向かって、可視光偏光子、位相差板、および、基板をこの順に含む、[18]に記載の画像表示システム。
[20] 可視光偏光子と、位相差板との間に近赤外偏光子を含み、
該近赤外偏光子は可視光域で透過性であり、
波長550nmの光に対して、位相差板と近赤外偏光子の積層体が1/4波長板の作用を有する、[19]に記載の画像表示システム。
[21] 近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して並行または直交に配置されているか、
近赤外偏光子の透過軸は、可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に配置され、かつ、近赤外偏光子が有する可視域の位相差Re(550)が1/2波長であるか、
のいずれかである、[20]に記載の画像表示システム。
[22] [1]~[4]のいずれかに記載の画像表示装置、および、手、指、手のひら、および、皮膚から選ばれる生体の一部分に近赤外光を照射可能な光源を含み、
光源からの近赤外光を手、指、手のひら、および、皮膚から選ばれる生体の一部分に反射させて得られた反射光を、近赤外偏光子を経て受光部で検出する指紋認証システム、静脈認証システム、または生体測定システムを備えた、画像表示システム。
[23] 光源から出射した近赤外光を導光する導光板をさらに含み、該導光板内を伝播する近赤外光が指と導光板との界面で散乱することにより、受光部が散乱した近赤外光を検知する指紋認証システムを備えた、[22]に記載の画像表示システム。
[24] 光源から出射した近赤外光を導光する導光板をさらに含み、該導光板は散乱層または回折機能層が付与され、導光する近赤外光の一部を出光面から出射して測定対象を照射し、測定対象からの反射光を受光部が受光する静脈認証システム、または生体測定システムを備えた、[22]に記載の画像表示システム。
[25] 非可視域に感受性を有する受光部と、
基板および複数の画素を含む画像表示パネルと、複数の画素から形成される光束が出射する出光面とを含む画像表示装置と、を含み、
複数の画素は、可視光域の光束を形成する画素群と、受光部が感受性を有する非可視域の光束を形成する画素とを含み、
出光面に垂直な方向から見た際に、複数の画素は、基板と重複する位置に配置されており、
受光部は、非可視域の光束を形成する画素から、出光面を経て照射されて検知する対象により反射または散乱された非可視光を受光するように配置され、光可視域の光束のみを受光するものであり、
画像表示装置は、非可視域の光束を形成する画素と、出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する、画像表示システム。
[26] 受光部が、近赤外域に感受性を有する、[25]に記載の画像表示システム。
[27] 受光部は、検知する対象から反射された非可視光を受光するものであり、
受光部により検知する対象が、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、虹彩のいずれかから選ばれる少なくとも1つである、[25]または[26]に記載の画像表示システム。
[28] 近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子の、波長850nmにおける単板透過率が55%未満である、[25]~[27]のいずれかに記載の画像表示システム。
[29] 近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さない、あるいは、可視域で透過性である、[25]~[28]のいずれかに記載の画像表示システム。
[30] [25]~[29]のいずれかに記載の画像表示システム、および、接眼レンズを備え、
該画像表示装置から観察者の眼球に照射され反射した近赤外光を受光部で検出することによるアイトラッキングシステムを含む、ヘッドマウントディスプレイ。
[31] 接眼レンズが、ハーフミラーおよび反射偏光子を含む、[30]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[32] 反射偏光子、および、ハーフミラーそれぞれの850nmにおける単板透過率は80%以上である、[31]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[33] 接眼レンズの眼球側表面に近赤外偏光子をさらに含み、該近赤外偏光子の単板透過率は、850nmで55%未満である、[30]~[32]のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
[34] 画像表示装置から出射される近赤外域の光束を使用者の顔面に照射し、得られた反射光を受光部で検知する顔認証システムないしは表情認識システムを備える、[25]~[29]のいずれかに記載の画像表示システム。
[35] 画像表示装置は、出光面から基板に向かって、近赤外偏光子、可視光偏光子、および、該可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に遅相軸を有する1/4波長板である位相差板をこの順に含む、[25]~[29]および[34]のいずれかに記載の画像表示システム。
[36] 近赤外偏光子は、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子である、[35]に記載の画像表示システム。
[37] 画像表示装置から出射される非可視光を測定対象に照射し、得られた反射光を受光部で検知する光検出と測距システムまたは物体認識システムを備える、[25]~[29]のいずれかに記載の画像表示システム。
[38] 画像表示装置は、出光面から基板に向かって、近赤外偏光子、可視光偏光子、および、該可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に遅相軸を有する1/4波長板である位相差板をこの順に含む、[37]に記載の画像表示システム。
[39] 近赤外偏光子は、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子である、[38]に記載の画像表示システム。
[40] [25]~[29]のいずれかに記載の画像表示システムを含むヘッドマウントディスプレイであり、
画像表示装置は、導光要素を含み、画像表示パネルから出射される可視光域の光束および非可視域の光束を、該導光要素を通じて、導光要素に設けられた出光面から観察者に出射するものであり、
該画像表示装置から観察者の眼球に照射され反射した近赤外光を受光部で検出することで眼球センシングを行う、ヘッドマウントディスプレイ。
[41] 導光要素の出射面と観察者の眼球との間、および、受光部と観察者の眼球との間に近赤外偏光子をそれぞれ含む、[40]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[42] 近赤外偏光子のうち、導光要素の出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子において、該近赤外偏光子の可視光域の平均透過率が90%以上である、[41]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[43] 近赤外偏光子のうち、導光要素の出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子において、該近赤外偏光子の850nmにおける偏光度が90%以上である、[41]または[42]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[44] 近赤外偏光子のうち、受光部と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子において、該近赤外偏光子の850nmにおける偏光度が90%以上である、[41]~[43]のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
[45] 導光要素の出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子と、受光部と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子とが、眼球表面を反射面としたとき、それぞれクロスニコルの関係で配置される、[41]~[44]のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
[46] 非可視域に感受性を有する受光部と、基板および複数の画素とを含む画像表示パネルと、複数の画素から形成される可視域の光束が出射する出光面とを含み、
受光部は、出光面と画像表示パネルとの間、または、画像表示パネル上、または、画像表示パネルの出光面とは反対側に設けられており、
複数の画素は、可視光域の光束を形成する画素群と、受光部が感受性を有する非可視域の光束を形成する画素とを含み、
出光面に垂直な方向から見た際に、受光部は、画像表示パネルと重複する位置に配置されており、
受光部は、出光面を経て画像表示装置に入射する光のうち、非可視光のみを受光し、
非可視域の光束を形成する画素と、出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する、画像表示装置。
[47] 非可視光の光束を形成する画素は、近赤外光に発光帯域を有し、
受光部は、近赤外光に感受性を有し、
可視光の光束を形成する画素群は画像表示を行う、[46]に記載の画像表示装置。
[48] 該近赤外偏光子の単板透過率は、850nmで55%未満である[46]または[47]に記載の画像表示装置。
[49] 近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さない、あるいは、可視域で透過性である、[46]~[48]のいずれかに記載の画像表示装置。
[50] [46]~[49]のいずれかに記載の画像表示装置、および、接眼レンズを備え、画像表示装置により眼球に対し近赤外光の照射と検出とを行うことによりアイトラッキングを行う、ヘッドマウントディスプレイ。
[51] 近赤外偏光子は、対応する画素ごとに異なる透過軸ないしは偏光選択性を有する領域をパターン状に配置したパターン偏光子である、[50]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[52] 接眼レンズが、ハーフミラーおよび反射偏光子を含む、[50]または[51]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[53] 反射偏光子、および、ハーフミラーは近赤外域において透過性であり、単板透過率は850nmにおいてそれぞれ80%以上である、[52]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
[54] 非可視光の光束を形成する画素から出射される非可視光を使用者の顔面に照射し、得られた反射光を受光部で検知する顔認証システムないしは表情認識システムとして利用される、[46]~[49]のいずれかに記載の画像表示装置。
[55] 近赤外偏光子が、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子である、[54]に記載の画像表示装置。
[56] 測定対象に画像表示装置からの非可視光を照射し、測定対象に反射させて得られた反射光を、受光部で検出する光検出と測距システムまたは物体認識システムを備える、[46]~[49]のいずれかに記載の画像表示装置。
[57] 近赤外偏光子として互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子を含む、[56]に記載の画像表示装置。
[58] 画像表示装置から出射された非可視光を使用者の手、指、手のひら、および、皮膚から選ばれる生体の一部に透過または反射させて得られた光を、近赤外偏光子を経て受光部で検出する指紋センサー、静脈認証システム、および、血流センサーのいずれかとして利用される、[46]~[49]のいずれかに記載の画像表示装置。
[59] 近赤外偏光子が、偏光選択性が異なる複数の領域をパターン状に含んだパターン偏光子である、[58]に記載の画像表示装置。
[60] 近赤外域の光に対して偏光選択性を有する層を有し、層は、近赤外域に偏光選択性を有する領域を少なくとも含み、該偏光選択性が異なる複数の領域を面内にパターン状に含む、パターン偏光子。
[61] 偏光選択性の層の面内に、第一の偏光選択性を有する第一領域と、該第一の偏光選択性を有する領域に囲まれるように設けられた、偏光選択性を有しない第二領域とを含むパターン偏光子であるか、または、
偏光選択性の層の面内に、少なくとも第一の偏光選択性を有する第一領域と、該第二の偏光選択性を有する第二領域とを含むパターン偏光子のいずれか1つから選ばれる構造を有する、[60]に記載のパターン偏光子。
[62] 偏光選択性を有する領域における波長850nmにおける単板透過率が、50%未満である、[60]または[61]に記載のパターン偏光子。
[63] 近赤外域において偏光選択性を有する層の厚さは、0.1μm~5μmである、[60]~[62]のいずれかに記載のパターン偏光子。
[64] 近赤外域において偏光選択性を有する層は、近赤外域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したものである、[60]~[63]のいずれかに記載のパターン偏光子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学作用を利用し、省スペースでありながら高い検出感度を有する画像表示装置、ヘッドマウントディスプレイ、画像表示システムを提供できる。またその提供に寄与するパターン偏光子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態の一例を表す概念図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の他の一例を表す概念図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の他の一例を表す概念図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に関するディスプレイデバイスの具体例である。
【
図5】
図5のディスプレイデバイスの上面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に関する別のディスプレイデバイスの具体例である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に関するさらに別のディスプレイデバイスの具体例である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に関する効果の概念図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの概念図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの概念図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの光学系に関する概念図である。
【
図12a】本発明の第1の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの光学系に関する概念図である。
【
図12b】本発明の第1の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの光学系に関する概念図である。
【
図12c】本発明の第1の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの光学系に関する概念図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの別の光学系に関する概念図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図16】本発明の第1の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図17】本発明の第1の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図18】本発明の第1の実施形態の一つであるLIDARシステムまたは物体認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図19】本発明の第1の実施形態の一つであるLIDARシステムまたは物体認識システムの動作を示す概念図である。
【
図20】本発明の第1の実施形態の一つである指紋センサー、静脈認証システム、あるいは血流センサーを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図21】本発明の第1の実施形態の一つである指紋認証システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図22】本発明の第1の実施形態の一つである静脈認証システムまたは血流センサーを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図23】本発明の第2の実施形態を表す概念図である。
【
図24】本発明の第2の実施形態を表す概念図である。
【
図25】本発明の第2の実施形態を表す概念図である。
【
図26】本発明の第2の実施形態に関する画像表示システムの具体例である。
【
図27】
図26の画像表示システムが有するディスプレイデバイスの上面図である。
【
図28】本発明の第2の実施形態に関する別の画像表示システムの具体例である。
【
図29】本発明の第2の実施形態に関する作用の概念図である。
【
図30】本発明の第2の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの概念図である。
【
図31】本発明の第2の実施形態の一つである、別の態様のヘッドマウントディスプレイの概念図である。
【
図32】本発明の第2の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図33】本発明の第2の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図34】本発明の第2の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの別の概念図である。
【
図35】本発明の第2の実施形態の一つであるLIDARシステムまたは物体認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図36】本発明の第3の実施形態を表す概念図である。
【
図37】本発明の第3の実施形態を表す概念図である。
【
図38】本発明の第3の実施形態を表す概念図である。
【
図39】本発明の第3の実施形態に関するディスプレイデバイスの具体例である。
【
図40】本発明の第3の実施形態に関する作用の概念図である。
【
図41】本発明の第3の実施形態の一つであるヘッドマウントディスプレイの概念図である。
【
図42】本発明の第3の実施形態の一つである、別の態様のヘッドマウントディスプレイの概念図である。
【
図43】本発明の第3の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図44】本発明の第3の実施形態の一つである顔認証システムまたは表情認識システムを備えた画像表示システムの光学系の概念図である。
【
図45】本発明の第3の実施形態の一つであるLIDARシステムまたは物体認識システムを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図46】本発明の第3の実施形態の一つである指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーを備えた画像表示システムの概念図である。
【
図47】本発明の第2の実施形態の画像表示装置を含むヘッドマウントディスプレイの好ましい一態様の概念図である。
【
図48】本発明の第2の実施形態の画像表示装置を含むヘッドマウントディスプレイの好ましい一態様の概念図である。
【
図49】本発明の第2の実施形態の画像表示装置を含むヘッドマウントディスプレイの好ましい一態様の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の画像表示装置、ヘッドマウントディスプレイ、画像表示システムおよび、パターン偏光子について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0012】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
【0013】
本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域および780nmを超える波長域の光である。非可視光のうち、近赤外光は780nmを超え2500nmまでの波長域の光を示し、本明細書中では単に「赤外光」とも称する場合がある。
【0014】
本明細書において、Re(λ)は、波長λにおける面内のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本明細書において、Re(λ)は、AxoScan(Axometrics社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0015】
本明細書において、P(λ)は、波長λにおける偏光度を表す。偏光度は、波長λの垂直入射光に対して以下の要領で算出する。
P(λ)=[(MD-TD)/(MD+TD)]×100
MD:偏光選択性の層において、透過量が最大となる方向と直交する方向の直線偏光に対する透過率
TD:偏光選択性の層において、透過量が最大となる方向の直線偏光に対する透過率
直線偏光に対する透過率は、分光光度計において測定光を当該方向の偏光とすることにより測定できる。
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の画像表示装置の第1の実施形態は、非可視域に感受性を有する受光部と、基板および基板上に配置された複数の画素とを含む画像表示パネルと、複数の画素から形成される可視域の光束が出射する出光面とを含む画像表示装置であって、受光部は、前記出光面を経て前記画像表示装置に入射する光のうち、非可視光のみを受光し、受光部は、出光面と画像表示パネルとの間、または、画像表示パネル上、または、画像表示パネルの出光面とは反対側に設けられており、出光面に垂直な方向から見た際に、受光部は、画像表示パネルと重複する位置に配置されており、受光部と、出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する画像表示装置である。
この画像表示装置は、非可視光を照射する外部の光源と組み合わせて、センサーを有する画像表示システムとして利用される。
【0017】
従来、可視光を出射する発光領域と、センシングのための受光部とは分離して設けることが一般的である。しかし、デバイスの小型化と、発光領域(特にディスプレイデバイスであるならば、表示領域と言い換えても良い)の拡張とを両立するためには、発光領域でない領域を最小限に止める必要があり、このことは画像表示装置の小型化に伴う検出精度の低下や取得情報量の減少をもたらす。
【0018】
具体的には、例えば、ヘッドマウントディスプレイにおいて、画像表示装置が、使用者の眼に非可視光を照射し、使用者の眼からの反射光を受光部で受光して、使用者の眼が視認している方向等を検出する場合に、受光部が画像表示装置の表示面の外側(面方向の外側)に配置されていると、画像表示装置の表示面が使用者の眼の正面に配置されるため、使用者の眼で反射された光は、受光部に斜め方向から入射することになる。使用者の眼からの反射光が受光部に対して斜め方向から入射する場合、検出精度および取得情報量が低下してしまう。
【0019】
これに対して、本発明の画像表示装置を適用することにより、発光領域以外のスペースを最小限に抑えつつ、画像表示装置にとって受光部を十分な面積で設けることができるので、検出精度および取得情報量に優れた画像表示装置を有するデバイス(画像表示システム)が提供できる。
【0020】
具体的には、出光面に垂直な方向から見た際に(すなわち、面方向において)、受光部が画像表示パネルと重複する位置に配置されているため、使用者の眼で反射された光は、受光部に正面方向から入射することになり、検出精度および取得情報量を向上することができる。
ここで、受光部を画像表示パネルと重複する位置に配置すると、可視光が受光部にて受光されてしまい検出精度が低下してしまうおそれがある。これに対して、本発明では、受光部は、非可視光のみを受光し、可視光に感受性を有さないため、可視光を検出せずに、検出精度および取得情報量を向上することができる。
また、受光部と出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有するため、ノイズとなる外部からの近赤外光の一部をカットして、使用者の眼で反射された光の割合を増加させることができるため、SN比を向上でき、検出精度および取得情報量を向上することができる。
【0021】
上述した、第1の実施形態の好ましい態様の一つを、
図1を用いて説明する。画像表示装置10は、基板1上に設けられた複数の画素2a~2dを含む画像表示パネル3と、受光部4とを含み、画素2a~2dから可視域の光束5が形成される。可視域の光束5は出光面6から出光して、画像光として利用者に認識されるか、あるいは対象物を照らすことができる。
ここで、非可視域のみに感受性を有する受光部4は出光面6から画像表示パネル3の間に設けることができる。また、
図1に示すように、面方向において、受光部4は画像表示パネル3と重複する位置に配置されている。受光部4は、例えば光束5に対して透過性の基板7上に設けられていても良い。受光部4は、外部から入射する非可視光8を受光して電気信号へと変換し、図示しない演算回路を経て検知した情報を出力することができる。
なお、
図1に示す画像表示装置10においては、近赤外偏光子の図示は省略している。この点については、
図2および
図3も同様である。
【0022】
また、第1の実施形態の別の好ましい態様の一つを、
図2を用いて説明する。画像表示装置20における画像表示パネル3、および出光面6は
図1と同様であるが、非可視域に感受性を有する受光部4は画像表示パネル3上に設けられている。ここでいう「画像表示パネル3上に設けられている」とは、単に画像表示パネル3の出光面6側の表面に設けられていることに限定せず、発光パネル内に設けられた電極層やパッシベーション層、絶縁層等上あるいはその下に設けられるなどして発光パネルと一体化していることを表すものとする。
【0023】
第1の実施形態のさらに別の好ましい態様の一つを、
図3を用いて説明する。画像表示装置30における画像表示パネル3、および出光面6は
図1と同様であるが、非可視域に感受性を有する受光部4は、画像表示パネル3の出光面6とは反対側に設けられている。受光部4は、画像表示パネル3とは別に設けられた基板7上に設けられていても良いし、画像表示パネル3の出光面6側とは反対側の表面に隣接して設けられていても良い。
ここで、画像表示パネル3の基板1は、受光部4が感受性を有する非可視光8を透過することができる。ここでいう透過とは、基板に空隙または空孔を設けることによって、対象とする非可視光を遮ることなく受光部4に達するようにするものでも良い。また、基板そのものが、対象とする非可視光の波長域に対して透過性であっても良い。
図2および
図3に示す例の場合も、面方向において、受光部4は画像表示パネル3と重複する位置に配置されている。
【0024】
上述した画像表示パネルとしては、LED(light emitting diode)アレイ、OLED(Organic light emitting diode)表示パネル、マイクロLEDパネル、および、ミニLEDパネル等の発光パネルを適用することができる。また、画像表示パネルは、透過型液晶パネルとバックライトユニットを組み合わせたものであってもよい。
【0025】
画像表示パネルに含まれる基板としては、画像表示パネルの形状を保ち、画像表示パネルを構成するトランジスタ素子、発光層、電極、導電層、絶縁層、バンク、パッシベーション層、および、平滑化層などを設けるにあたってそれらを保持することができればよく、ガラスあるいは高分子材料から形成されたシートないしはフィルム等を用いることができる。高分子材料としては公知のものが利用でき、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、シクロオレフィン、エポキシ樹脂などが例示される。
【0026】
基板上に設けられる画素とは、LEDアレイ、OLEDパネル、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネルなどであれば発光素子であり、透過型液晶パネルとバックライトユニットの組合せであれば、駆動電極およびカラーフィルター層ないしはブラックマトリクスによって区画される各色の領域である。
LEDアレイ、OLEDパネル、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネルなどに含まれる発光素子からは、直接に可視光域の光束が生成される。また、透過型液晶パネルとバックライトユニットの組合せからは、バックライトユニットで生成された光束が透過型液晶パネルの画素を通過することによって可視光域の光束が形成される。
【0027】
上述のように形成された可視光の光束は、出光面を通じて画像表示装置の外部へ放出される。この出光面は、画像表示装置の出射側の最表面であり、例えば画像表示装置の前面保護板の表面、カラーフィルター基板の外側表面、あるいは、視認側偏光板の視認側表面等でありうる。システムの外部へ放出された光束は、例えば物体を照らすのに用いられ、また、観察者に視覚情報を与えるものである。本発明の好ましい一態様として、これら画像表示パネルから出射する可視域の光束を利用して画像および情報等を表示することにより、本発明の画像表示装置を構築することができる。
【0028】
受光部としては、非可視域に感受性を有し、可視光に感受性を有さないフォトダイオードまたはフォトトランジスタのような光検出素子を適用することができる。好ましくは、受光部は、近赤外域のみに感受性を有し、可視光域に感受性を有さないフォトダイオードまたはフォトトランジスタである。光検出素子として、有機フォトダイオード(OPD)、有機フォトトランジスタ(OPT)を適用してもよい。
【0029】
受光部は、出光面と画像表示パネルとの間、または、画像表示パネル上、または、画像表示パネルの出光面とは反対側に設けられている。また、前述のとおり、面方向において、受光部は画像表示パネルと重複する位置に配置されている。受光部は、検知する対象から反射された非可視光を受光することで、対象の情報を検知するものである。受光部により検知する対象は、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、および、虹彩のいずれかから選ばれる少なくとも1つとすることができる。すなわち、本発明の画像表示装置は、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、および、虹彩等を検知もしくは認識しうる。
【0030】
本発明の第1の実施形態の画像表示装置のより具体的な一例として、
図4を用いて、基板上に画素および受光部を含む発光パネルを含む、OLEDディスプレイデバイス40を示す。
OLEDディスプレイデバイス40は、基板1上に設けられた駆動部42、センサー部43、OLED部41からなる発光パネル、および必要に応じて設けられる中間層48、カバープレート49を含む。
図4に記載の構成では、カバープレート49の表面が光束5の出光面6となる。
【0031】
駆動部42は、基板1上に形成され、上部のセンサー部43及びOLED部41の電気的信号を入出力するための多様なトランジスタアレイ(42a、42b)及び多層配線層が形成された層間絶縁膜47を含む。
トランジスタアレイおよび多層配線層は、一般に金属材料あるいは半導体材料が適用されることから、センサー部43及びOLED部41の光の出入りを阻害しないよう、基板側に配置されることが好ましい。
【0032】
センサー部43は、受光部4として有機光ダイオードを含み、この有機ダイオードは駆動部42から引き出された配線に接続されることによって駆動される。有機光ダイオードの光吸収層の材料としては、例えば、スクアライン(squaraine)系、D-π-A系、ボディパイ(Bodipy)系、フタロシアニン(Phthalocyanine)系などの物質であり、目的とする非可視領域の光の受光に適切なあらゆる物質が使用される。有機ダイオードの基板側電極は、センサー感度を高めることを目的として、反射電極を用いてもよい。電極の材料としては、例えば基板1側の電極はAl、Ag、Mo、AlNd、Mo/Al/Mo、TiN、ITO/Ag/ITO、ITO/Al/ITO、ITO/Mo/ITOなどで形成され、出光面6側の電極は透明性を確保する点からITO、IZO、AlZO、Agナノワイヤ、グラフェン、CNTなどで形成される。
【0033】
OLED部41において、それぞれ異なる波長の色(R、G、B)を発光する画素(2a、2b、2c)の集合が一つのピクセルを構成し、このようなピクセルが行列のようなパターンで複数繰り返して配列される。このようなピクセルのパターンは例えば
図5のような上面図で表される、いわゆるペンタイルマトリックス状に配列されうる。非画素領域が上述したセンサー部の受光部4に垂直に配置されるようにすることで、画素を構成する下部電極41c、有機発光層41a、上部電極41bによって阻害されることなく、入射した非可視光8を受光部4に到達させ検知することができる。
下部電極41cは、発光効率を高めることを目的として、反射電極を用いてもよい。電極の材料としては、例えば基板1側の電極はAl、Ag、Mo、AlNd、Mo/Al/Mo、TiN、ITO/Ag/ITO、ITO/Al/ITO、ITO/Mo/ITOなどで形成される。上部電極41bはITO、IZO、AlZO、Agナノワイヤ、グラフェン、CNTなどの透明材料で形成されうる。上部電極41bは、可視光の透過率が80%以上であることが好ましい。
【0034】
有機発光層41aは、所定波長領域の可視光を発光する公知の発光物質を含み、例えば蛍光物質、燐光物質、又はTADF(熱活性型遅延蛍光)を含む。公知の発光物質は、Ir錯化合物、Pt錯化合物、Os錯化合物、及びPd錯化合物のような金属錯化合物、アントラセン(青)、Alq3(緑)、DCM(赤)、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0035】
中間層48は必要に応じて設けられる。中間層48は、後述するカバープレート49とOLED部とを連結している。必要に応じ、タッチセンサ、輝度向上層や指向性制御層といった光学機能層、偏光板、意匠層、駆動部42のうち出光面側から露出している電極、配線を隠蔽するための黒色層を設けても良い。
【0036】
カバープレート49は必要に応じて設けられる。カバープレートは損傷や外部の湿熱からOLED部やセンサー部を保護する目的、または、表面反射防止層を出光面に設けることで画素からの光を効率よく外部へ出射する目的で設けることができる。
【0037】
図示しないが、OLEDディスプレイデバイス40には、必要に応じて任意の場所にバリア層、タッチセンサ層、インデックスマッチング層、接着層、拡散層、指向性制御層、可視光吸収層、近赤外光吸収層等を付与してもよい。
【0038】
本発明の画像表示装置の別の一例として、
図6を用いて、基板上に画素を含む発光パネル3と、発光パネル3の出光面6とは反対側に受光部4を有するOLEDディスプレイデバイス60の概念を示す。
【0039】
発光パネル3は、基板1上に画素2を含む。画素2は
図5のように各色の画素がパターン状に配置されているが、図中では簡便のため連続的に表されている。出光面6に対して、基板1の反対側には、受光部4が設けられている。画素2から出射した光は出光面6を通じてディスプレイデバイスから出射される。図示しない外部の非可視光光源から対象物を経てOLEDディスプレイデバイス60の出光面6に入射した非可視光は、基板上の非画素領域を通過して受光部4に入射し、対象物の情報をもたらす。
【0040】
ここで、基板1は入射した非可視光8に対して透過性であるように
図6では描画しているが、基板1に穿孔を設けて非可視光8が透過するようにしてもよい。また、実際の基板1上には、図示しない駆動用のTFT(Thin Film Transistor)素子、配線、および各種の機能層が積層されているため、これらを避けて非可視光8が受光部4へ到達するよう配置を行うか、これらの要素が非可視光8に対して透過性であることが好ましい。
【0041】
また、受光部4は非画素領域の幅に対して十分に大きく、かつ、非センサー領域DPA_D(
図6参照)を設けるように描画しているが、本発明はこれに限定されず受光部4は任意の大きさと任意の領域に設けることができる。例えば、非画素領域に対しての大きさは制限なく、より小さく設けても良く、より大きく設けても良い。また、受光部4は単位受光素子を複数離間して設けても良いし、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)チップやCCD(Charge Coupled Device)チップのように集積化された素子を1か所にのみ設けるようにしてもよい。また、非センサー領域DPA_Dは設けても設けなくてもよく、基板1全体にわたりその大半をセンサー領域DPA_T(
図6参照)としてもよく、また、複数のセンサー領域DPA_Tを分割して設け、その間を非センサー領域DPA_Dで覆うようにしてもよい。
【0042】
また、本発明の第1の実施形態の画像表示装置の一例として、
図7を用いて、基板1a、およびカラーフィルター基板1bの間に液晶層71を含み、図示しない電極によって駆動される液晶パネルと、該液晶パネルの基板1a上に設けられた受光部4と、バックライトユニット79とを含むディスプレイデバイス70を示す。
【0043】
バックライトユニット79から出射した可視光の光束5は、液晶パネルの基板の表面73上に形成された電極による液晶層71の変調、および図示しない上下一対の偏光板によって透過および不透過が切り替えられるとともに、カラーフィルター層72の各画素を規定するカラーフィルターCFによって特定の色の光となって出光面6(図示例においては、カラーフィルター基板1bの表面)から出射する。
この液晶パネルにおいて画素2は、各色のカラーフィルターCFおよびそれらを区画するブラックマトリクスBMとで規定される。
【0044】
図示しない光源から検出対象に照射されてディスプレイデバイス70に入射する非可視光8は、ブラックマトリクスBMを非可視光に対して透過性としておくことにより、ブラックマトリクス部を透過して受光部4に到達する。ブラックマトリクスBMから受光部4の受光面までの間を液晶層71で満たしていてもよいが、非可視光8を精度よく受光部4に到達させることを目的に、導光部材74を設けても良い。導光部材74の側面74aは、受光部4への集光性を高めることを目的に、逆テーパー状をなしていてもよい。
【0045】
図7では受光部を基板1a上に設けた場合を図示したが、受光部を設ける場所としては上述したように、出光面6と基板1aとの間、基板1a上、基板1aに対し出光面6とは反対側に設けても良く、例えば
図7におけるバックライトユニット79と一体に設けても良い。
【0046】
本発明の画像表示装置においては、受光部から出光面までの間には、受光部に到達する非可視光の偏光を制御し、検出精度を向上させるか、取得情報量を増やすこと、またはその両方を目的として、非可視光に作用する偏光子を設ける。好ましい一態様として、上述した画像表示装置に含まれる受光部と出光面との間に偏光子を含み、該偏光子が近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子である、画像表示システムを
図8に具体例を挙げて説明する。
【0047】
図8に示す画像表示システムは、画像表示装置10に含まれる近赤外域に感受性を有する受光部4と、出光面6との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子4bを有する。なお、
図8においては、画像表示パネルの図示は省略している。
図8に示す画像表示システムは、さらに、画像表示領域の外に、近赤外の偏光を照射する光源9を有している。図示例においては、光源9は、画像表示装置10の側面に取り付けられている。画像表示装置10に取り付けられた近赤外の偏光を照射する光源9から出射された光(非可視光)8aは、測定対象に反射し、入射光8bとなって画像表示装置10に入射する。この時、入射光8bは特定の偏光を多く含む状態となる。ところで、環境中に存在する太陽光やその他装置からの近赤外光ノイズ8cは、本発明の画像表示装置(画像表示システム)にとってのノイズとなりうる。しかし近赤外光ノイズ8cが入射光8bとは異なる偏光状態または無偏光状態であれば、上記近赤外偏光子4bが入射光8bに多く含まれる偏光のみを透過する偏光子とすることにより、近赤外光ノイズ8cの大部分は近赤外偏光子4bで吸収され、受光部4は入射光8bのみを精度よく検出することが可能となる。
【0048】
図8中、測定対象に対して近赤外光である光(以下、近赤外光ともいう)8aと入射光8bは反射の関係になるように描画されているが、本発明の画像表示システムとしては必ずしも反射する系のみに限定せず、光源9を本発明の画像表示装置とは別に設けて、測定対象に対して近赤外光8aと入射光8bが透過の関係になるように配置しても良い。また、測定対象としては任意のものを対象とすることができる。例えば使用者の手、指、手のひら、皮膚等の生体の一部分、静脈パターン、顔、眼球、唇、手足、およびそれらの動きやジェスチャー、または、特定のインターフェースデバイス、周囲の物体といったオブジェクト、あるいは、温度、湿度、パーティクル、および、気体の組成などを含む、周囲の環境の状態などが例示される。なお、本発明において、手は、指および手のひらの全体を含む部位を意図し、指は、手のひら側の付け根から、指の先までであり、手のひらは、指の付け根から、手首までを意図する。
【0049】
非可視光(赤外光)の偏光を照射する光源9としては任意のものを適用することができ、典型的にはIR発光性のLEDデバイス、IRレーザ、近赤外域に発光帯を有する各種のランプ類である。またこれらの偏光度を高めることを目的に、近赤外域に偏光特性を有する別の偏光子をこれら光源に隣接してさらに設けても良い。
【0050】
近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、近赤外域に吸収を有する二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させたもの、近赤外域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したもの、ヨウ素系偏光板をポリエン化したもの、ワイヤーグリットを応用したもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型のもの、メタサーフェスなどの表面微細構造を利用したものなどを適用することができる。
【0051】
近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、波長850nmにおける単板透過率が50%未満であるものが好ましく、47%未満であることがより好ましい。また、波長950nmにおける単板透過率が55%未満であるものが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることがより好ましい。また、偏光度について、P(850)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。また、P(950)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。P(850)およびP(950)の上限は理論上1.00であるが、実用上は1.00未満の範囲である。
この範囲であると、十分にノイズが除去でき、検出精度を向上させることができる。
【0052】
単板透過率の測定方法は、分光光度計(製品名:VAP-7070(日本分光社製)、または、製品名:VAP-7200(日本分光社製)など)を用いて測定することができる。測定の一例として、可視光域の単板透過率は、測定波長は400~700nmの範囲として測定する。また、別の一例として、非可視光、特に近赤外の単板透過率は、測定波長を800~1500nmとして測定する。偏光子表面の界面反射の影響を除くため、マッチングオイルに浸漬して界面反射を除去した状態で測定することが好ましい。また、「波長αnmにおける単板透過率」とする場合は、指定された波長αnmにおける透過率を意味する。
偏光度の測定方法は、検光子を用いて、偏光子の平行透過率(H0)及び直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0-H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。可視光域の偏光度であれば、測定波長は400~700nmの範囲とし、非可視域の偏光度であれば、測定波長は800~1500nmとすることができる。また、特定の波長のみの偏光度を規定することもできる。例えば、波長850nmの偏光度は、波長850nmの光に対しての偏光子の平行透過率(H0-850)及び直交透過率(H90-850)を測定し、上記の偏光度を求める式に当てはめることにより、求めることができる。
【0053】
また、本発明の第1の実施形態の画像表示装置は、画像表示を実現するため、ないしは、画質を向上させるために、可視域に偏光選択性を有する可視光偏光子をさらに設けることができる。
図4、
図6に例示したOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネルを有する画像表示装置においては、非発光時(黒表示時)および強い外光下での表示コントラスト向上を目的に、発光パネルの出光面側あるいは出光面そのものとして可視域に作用する円偏光板を設けることができる。この円偏光板は、可視光偏光子と位相差板とを積層したもので構成でき、出光面側から順に、可視域に偏光選択性を有する直線偏光子である可視光偏光子と位相差層として1/4波長板とをこの順に含むことができる。
【0054】
また、
図7に示したディスプレイデバイス70においては、図示しない上下2枚の偏光子を含んでおり、これら2枚の偏光子は可視域に偏光選択性を有する。これら2枚の偏光子は、
図7のディスプレイデバイス70で画像表示をするにあたっては必須となる。加えて、表示コントラストの向上および斜め方向の視野角特性向上を目的に、これら偏光子と液晶パネルとの間には光学異方性層を設けることができる。
【0055】
上述した可視域に偏光選択性を有する偏光子(可視光偏光子)は、市販のものが利用でき、例えば、ヨウ素または可視域に吸収を有する二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させたもの、可視域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したもの、ワイヤーグリットを応用したもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型のもの、メタサーフェスなどの表面微細構造を利用したものなどを適用することができる。
【0056】
上述した近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子と、可視域に偏光選択性を有する可視光偏光子とは、本発明の画像表示装置、画像表示システムないしはヘッドマウントディスプレイの設計の上で、互いの作用が干渉する可能性がある。これらの干渉の影響を低減するために、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さないか、あるいは可視域で透過性であることが好ましい。また同様の観点で、可視域で偏光選択性を有する可視光偏光子は、近赤外域で偏光特性を有さないか、あるいは近赤外域で透過性であることが好ましい。
【0057】
近赤外域で偏光選択性を有し、かつ、可視域で透過性である近赤外偏光子としては、近赤外域に吸収を有し可視域は透過性である二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させたもの、近赤外域に吸収を有し可視域は透過性である二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型偏光子のうち反射帯域を近赤外領域にのみ有するもの、メタサーフェスなどの表面微細構造を有するもののうち、近赤外領域にのみ偏光選択作用を有するものが例示される。
【0058】
近赤外域で偏光選択性を有し、かつ、可視域で透過性である近赤外偏光子としては、波長850nmにおける単板透過率が55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることがより好ましい。また、波長700nmにおける単板透過率が58%以上であることが好ましく、75%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。また、偏光度について、P(850)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。また、P(950)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。P(850)およびP(950)の上限は理論上1.00であるが、実用上は1.00未満の範囲である。
【0059】
可視域で偏光選択性を有し、かつ、近赤外域で透過性である可視光偏光子としては、近赤外域の吸収特性を減じたヨウ素系偏光子、可視域に吸収を有し近赤外域は透過性である二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させたもの、可視域に吸収を有し近赤外域は透過性である二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型偏光子のうち反射帯域を可視光領域にのみ有するもの、メタサーフェスなどの表面微細構造を有するもののうち、可視光領域にのみ偏光選択作用を有するものが例示される。
【0060】
可視域で偏光選択性を有し、かつ、近赤外域で透過性である可視光偏光子としては、波長850nmにおける単板透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、波長700nmにおける単板透過率が55%未満であることが好ましく、50%未満であることが好ましく、47%未満であることが特に好ましい。
また、偏光度について、P(550)は0.90以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、0.98以上であることがさらに好ましく、0.99以上であることが特に好ましい。P(550)の上限は理論上1.00であるが、実用上は1.00未満の範囲である。
【0061】
また本発明の第1の実施形態の画像表示装置、画像表示システム、ないしはヘッドマウントディスプレイの別の好ましい一態様として、
図1、
図2、
図3、
図4、
図6、
図7における非可視光(近赤外光束)8と、可視域の光束(以下、可視光束ともいう)5とが互いに干渉しない画像表示装置、画像表示システム、ないしはヘッドマウントディスプレイとすることができる。具体的には、可視域の光束5と近赤外光束8とが微視的に異なる光路を通るよう設計することによって、それぞれの光路に適した偏光選択性を有する層をパターン状に設けることである。また、別の具体例としては、可視域の光束5に対する偏光選択性と、近赤外光束8に対する偏光選択性とが偏光子上で一致するようにして、可視域および近赤外域の両方に偏光選択性を有する1つの偏光子を設けることである。
【0062】
近赤外光束8および可視光束5のそれぞれの光路に適した偏光選択性を有する層をパターン状に設けた偏光子としては、それぞれの領域に適した吸収および透過特性を持つ二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成して固定した複数の領域を含むパターンを含むもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型偏光子のうち反射帯域が異なる複数の領域を含むパターンを含むもの、メタサーフェスなどの表面微細構造を有するもののうち、作用帯域が異なる複数の領域を含むパターンを含むものが例示される。
【0063】
また、可視域および近赤外域の両方に偏光選択性を有し、互いの偏光選択性が一致するものとしては、ヨウ素または可視域から近赤外域まで吸収特性を有する二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させたもの、可視域から近赤外域まで吸収特性を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したもの、ワイヤーグリットを応用したもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型のもののうち、可視域から近赤外域まで反射帯域を有するものを適用することができる。
【0064】
可視域および近赤外域の両方に偏光選択性を有し、互いの偏光選択性が一致するものとしては、波長750nmおよび850nmの両方において、単板透過率が55%未満であるものが好ましく、少なくとも一方の波長においてさらに50%未満であるものが好ましく、少なくとも一方の波長においてさらに47%未満であるものが特に好ましい。
【0065】
上述した画像表示装置および画像表示システムは、例えばヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブルデバイス、スマートフォンおよびタブレット等のモバイルディスプレイデバイス、ならびに、テレビ、および、照明等の据置型ディスプレイデバイスに適用することができる。
これらの好ましいそれぞれの態様について、以下具体例を以て説明する。
【0066】
本発明の第1の実施形態の画像表示装置を含むヘッドマウントディスプレイとして、
図9に示すように、本発明の画像表示装置91、接眼レンズ92、および、近赤外光を照射可能な光源(以下、近赤外光源ともいう)9を備え、近赤外光源9から眼球99に照射され反射した近赤外光(入射光)8bを、接眼レンズ92を介して受光部4で検出することによりアイトラッキングシステムとしたヘッドマウントディスプレイ90が例示される。なお、画像表示装置91が有する画像表示パネルの図示は省略している。接眼レンズ92は画像表示装置91の出光面6から出射した画像となる可視域の光束5を眼球に投影する機能を有し、観察者に広いFOV(Field of View:視野角)を提供し、没入感に優れた画像表示を実現する。上述のアイトラッキングから得られた眼球位置および視線の情報は、投影される画像のレンダリング、および、表示画像上に埋め込まれたグラフィックインターフェースの操作に用いることができる。画像表示装置91は、受光部4と出光面6との間には近赤外偏光子4bを含むため、光学系内の迷光およびヘッドマウントディスプレイ外部またはヘッドマウントディスプレイを構成する他の部材からの近赤外光ノイズを低減することができる。また、接眼レンズ92は、眼球99で反射した近赤外光である入射光8bの強度を維持する点で、近赤外透過性であることが好ましい。また、接眼レンズ92の表面は近赤外反射防止コーティングがなされていることが好ましく、その表面反射率は4%未満であることが好ましく、2%未満であることがより好ましい。
【0067】
従来、ヘッドマウントディスプレイのアイトラッキングシステムは、表示光学系とは重ならないように設けられていたためにスペースの制約が厳しく、かつ、眼球、特に視線方向に対して大きな角度でセンシングを行う必要があり、検出精度の向上が求められていた。本発明のセンシングシステムにより、表示光学系とアイトラッキング光学系とを共通のスペースに収めることができ、コンパクトで、かつ、光線角度が適正で検出精度に優れたアイトラッキングが可能になる。
【0068】
また、接眼レンズとして、ハーフミラーおよび反射偏光子を用いたいわゆるパンケーキレンズを用いた場合を
図10で説明する。パンケーキレンズ101とは、ハーフミラー101aおよび反射偏光子101bを、そのいずれか一方または両方を曲面とすることにより反射屈折光学系としてレンズの作用を発揮する部材である。通常用いられるガラスまたは樹脂の屈折作用を利用したレンズに比べ、単色収差、色収差が制御しやすくに、かつ、同等の単色収差、色収差を示す樹脂レンズに比較して軽量かつ薄型であるため、ヘッドマウントディスプレイの接眼レンズとして好ましく用いることができる。
【0069】
この光学系がレンズとして作用する様子を、一例を以て説明する。ヘッドマウントディスプレイ100において、画像表示装置91から出射した可視光束5は
図10のように、反射偏光子101bおよびハーフミラー101aでそれぞれ1回、反射して眼球99に到達する。この時、反射偏光子101bを円偏光選択性とするか、反射偏光子101bを直線偏光選択性かつ反射偏光子101bとハーフミラー101aとの間に図示しない1/4波長板を設け、ハーフミラーから1/4波長板に入射する光束5を1/4波長板の遅相軸に対して偏光方向が45°をなす直線偏光とすることで、反射偏光子101bで反射されてハーフミラー101a側へ回帰し再度ハーフミラー101aで反射した光は、反射偏光子101bを透過する偏光状態へと変化する。これら一連の作用は屈折を利用したレンズと同等の光学作用を発揮し、ヘッドマウントディスプレイの接眼レンズとして利用することができる。
なお、上述の説明は好ましい一例であり、いわゆるパンケーキレンズとしての作用を発揮できる限りにおいて、ハーフミラー101aおよび反射偏光子101b、および組み合わせる各種波長板の特性は様々に組み合わせることができる。また、反射偏光子101bから眼球に入射する光のうち、反射偏光子101bから意図しない偏光が漏れることによるゴースト、および、眼球に入射した画像となる光束5が眼球表面とパンケーキレンズ101の眼球側表面とをこの順に反射して生じる迷光の影響を低減するため、パンケーキレンズ101の眼球側にさらに追加の吸収型可視光偏光子、および、さらに別の位相差板を設けても良い。
【0070】
本発明の第1の実施形態の好ましい一態様として、さらに、反射偏光子101b、ハーフミラー101aを近赤外域において透過性とすることができる。この構成によれば、近赤外光源9から眼球99に照射されて受光部4に向けて入射する入射光8bは、パンケーキレンズ101の反射の作用を受けることなく受光部4まで到達することができる。この時、例えば上述のようにパンケーキレンズ系が1/4波長板を含む場合、近赤外光源9から出射した近赤外光が偏光であっても、画像表示装置91の出光面6を通過する入射光8bは1/4波長板等の影響によって偏光状態が変化していることがある。検知精度の向上を目的に、こうした偏光状態変化を補償して近赤外偏光子4bで入射光8bの透過率が向上するように、入射光8bの光路上の任意の位置に追加の位相差層を設けてもよい。
【0071】
上述したハーフミラーとしては、金属蒸着膜、誘電体多層膜、多層ポリマー反射偏光子(例えば、APF又はDBEF)、コレステリックミラー、反射性のワイヤグリッド偏光子、メタサーフェス偏光子とすることができる。
【0072】
上述した反射偏光子としては、多層ポリマー反射偏光子(例えば、APF又はDBEF)、コレステリックミラー、反射性のワイヤグリッド偏光子、メタサーフェス偏光子とすることができる。一般に、多層ポリマー反射偏光子、反射性のワイヤグリッド偏光子は直線偏光選択性であり、コレステリックミラーは円偏光選択性である。本発明においては、反射偏光子として波長選択性を有することが好ましい。
【0073】
上述した1/4波長板としては、所定の波長域で1/4波長相当の位相遅延量を有する位相差素子であれば制限なく用いることができ、無機位相差板、ポリマー延伸位相差板、液晶化合物または重合性液晶化合物を配向状態にて固定した液晶位相差板、メタサーフェス位相差板などが挙げられる。ここでいう1/4波長相当の位相遅延量を有するとは、Re(550)が120nmから160nmの範囲であることを表す。可視光束に作用させる場合は広帯域で1/4波長特性を示すことが好ましく、その波長分散性はRe(450)<Re(550)≦Re(650)の関係を示す、いわゆる逆波長分散性であることが好ましい。
1/4波長板としては、単層のフィルムまたはシートであってもよく、複数のフィルムまたはシートを積層することによってその特性を発揮するものであってもよい。また、捻じれ配向液晶やハイブリッド配向液晶を用いた位相差板と組み合わせることで、特定の偏光に対してのみ1/4波長板の特性を示すものであっても良い。
【0074】
図10のヘッドマウントディスプレイ100の例を、
図11から
図13に概念的に表して光学系の特徴および利得をより詳細に説明する。
【0075】
本発明の第1の実施形態のヘッドマウントディスプレイの好ましい一態様として、
図11に、受光部4、画素2を備えた画像表示装置111と、画像表示装置111の表面に設けられた偏光子115、ハーフミラー112、1/4波長板113、反射型直線偏光子(本発明における反射偏光子)114とがこの順に配置され、観察者の眼119に可視光束5を投影することによって画像表示を行い、さらに、近赤外光源9からの近赤外光を観察者の眼119に照射し、反射した入射光8bを受光部4で検知してアイトラッキングを行う、ヘッドマウントディスプレイ110を示す。
図11中では、偏光子115のハーフミラー112側表面が、ディスプレイデバイスの出光面6である。図示しない近赤外偏光子は、偏光子115と受光部4との間に設けてもよく、偏光子115と一体化していてもよい。また、偏光子115とハーフミラー112との間に近赤外偏光子を設けても良く、この場合、出光面6はこの近赤外偏光子のハーフミラー112側表面である。
【0076】
上述した偏光子115、ハーフミラー112、1/4波長板113、反射型直線偏光子114の順の配置およびそれらの形状を適切に設計することで、接眼レンズとしての作用を発揮しうる。なお、
図11は概念図であり、実際にはハーフミラー112、反射型直線偏光子114はその少なくとも一方またはその両方が曲面形状を有することが好ましいが、図では簡単のため平面状に描いている。また、可視光束5および近赤外光8a、入射光8bの光路も図示のため本来の光路とは異なって描かれている。
【0077】
ここで、眼119で反射した近赤外光である入射光8bは、反射型直線偏光子114、1/4波長板113、ハーフミラー112、偏光子115の順に通過して受光部4に到達するが、反射型直線偏光子114、1/4波長板113、ハーフミラー112、偏光子115のいずれか、または複数の表面において入射光8bの一部が散乱または反射することによって、ゴースト像もしくはノイズを生じる。近赤外光源9として偏光光源を用い、出光面6と受光部4との間に近赤外偏光子4bを設けることで、これらのゴースト像およびノイズを低減することができる。
【0078】
例えば、入射光8bとして図示した光路を経て受光部4に向かう近赤外光は、反射型直線偏光子114、1/4波長板113、ハーフミラー112、偏光子115が有する近赤外光に対する位相差による位相差変化を受けるが、入射光8bとして図示した光路以外を経て受光部4に到達した光束は、上述した各部材への入射角度や入射回数が異なるため、本来受けるべき位相差変化量とは異なる位相差変化量を有する。よって、所定の位相差変化量を持つ入射光8bのみを透過し、かつ、それとは異なる位相差変化量を持つ近赤外光を吸収するように、近赤外偏光子4bおよび必要に応じて設ける位相差板とを配置することで、観察者の眼の情報を正しく取得し、検出精度を高めることができる。
【0079】
上述した位相差板としては、公知のものを制限なく用いることができ、無機位相差板、ポリマー延伸位相差板、液晶化合物または重合性液晶化合物を配向状態にて固定した液晶位相差板、メタサーフェス位相差板などが挙げられる。
【0080】
図11中の画像表示装置111について、上述した検出精度向上に効果を発揮しうる偏光子115を含む構成を
図12a~
図12cに例示する。
【0081】
例えば好ましい一態様として、
図12aには、ハーフミラー126側から順に、第一の位相差板125、可視光に偏光選択性を有する直線偏光子である可視光偏光子124、必要に応じて設けられる第二の位相差板123、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子122、画素2および受光部4を含む発光パネル(画像表示パネル)121の順に配置されたディスプレイデバイス(画像表示装置)120aを示す。この場合、ディスプレイデバイス120aの出光面は、第一の位相差板125のハーフミラー126側表面、または、可視光偏光子124のハーフミラー126側表面とすることができる。また、
図11における偏光子115は可視光偏光子124とすることができる。
【0082】
観察者の眼球で反射された近赤外光である入射光8bは、ハーフミラー126、第一の位相差板125、可視光に偏光選択性を有する可視光偏光子124、必要に応じて設けられる第二の位相差板123、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子122をこの順に経て、受光部4へ到達する。ここで、必要に応じて設けられる第二の位相差板123は、入射光8bの偏光状態を近赤外偏光子122の透過軸に略一致させるように位相差を有していることが好ましい。このようにすることで、入射光8bは受光部4へ到達することができる。
ここで、可視光偏光子124で反射した一部の近赤外光束8dは、ハーフミラー126で再度反射されて受光部4へ向かって再び進行する。このような近赤外光束8dは、ゴースト像または迷い光となって、本発明の画像表示装置の検出精度または取得情報量を減少させうる。しかし、第一の位相差板125を二度経ていることから、その偏光状態は入射光8bとは異なり、第二の位相差板123で偏光変換されると、近赤外偏光子122の透過軸とは一致しない直線偏光ないしは楕円偏光となるので、近赤外偏光子122によってその光量の大部分が除去される。このため、
図12aの構成であれば本発明の画像表示装置における検出精度または取得情報量を高めることができる。なお、説明に用いた近赤外光束8dは、意図しない光路を経る光束の例として例示したものであり、実際には眼球(測定対象)から近赤外偏光子までの間に存在する界面または反射面で起こる意図しない反射によって生じうるゴースト像、迷光についても同様の作用によって低減することが可能である。
【0083】
一方、画素2から出射した可視光束5は、近赤外偏光子122、必要に応じて設けられる第二の位相差板123、可視光偏光子124、第一の位相差板125を通じて、偏光となってハーフミラー126へ入射する。第一の位相差板125は、可視光偏光子124の透過軸に対して45°または135°に配置された遅相軸を有する1/4波長板であることが好ましく、この構成では、ハーフミラー126には円偏光が入射する。ハーフミラー126に入射した円偏光の一部は反射されて可視光偏光子124へ入射するが、ハーフミラー126で反射された可視光束5dは入射した円偏光とは逆向きの円偏光になるため、1/4波長板である第一の位相差板によって可視光偏光子124の透過軸とは直交する直線偏光に変換されて、可視光偏光子124によって吸収される。よって、表示画像において生じるゴースト像や迷光による表示コントラスト低下を抑制することができる。
【0084】
可視光に偏光選択性を有する直線偏光子である可視光偏光子124は、近赤外光である入射光8bに対して透過性であることが好ましい。
可視光偏光子124は、偏光度P(550)は0.90以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、0.98以上であることがさらに好ましく、0.99以上であることが特に好ましい。また、波長850nmにおける単板透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0085】
また、近赤外偏光子122は可視光域で透過性であることが好ましい。
近赤外偏光子122は、波長850nmにおける単板透過率が50%未満であるものが好ましく、47%未満であることがより好ましい。また、波長950nmおける単板透過率が55%未満であるものが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることがより好ましい。また、偏光度について、P(850)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。また、P(950)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。P(850)およびP(950)の上限は理論上1.00であるが、実用上は1.00未満の範囲である。
【0086】
また別の好ましい一態様として、
図12bにはハーフミラー126から順に、必要に応じて設けられる第二の位相差板123、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子122、必要に応じて設けられる第一の位相差板125、可視光に偏光選択性を有する可視光偏光子124、画素2および受光部4を含む発光パネル121の順に配置されたディスプレイデバイス(画像表示装置)120bを示す。この場合、ディスプレイデバイス120bの出光面は、第二の位相差板123のハーフミラー126側表面、または、近赤外偏光子122のハーフミラー126側表面とすることができる。また、
図11における偏光子115は可視光偏光子124とすることができる。
【0087】
観察者の眼球で反射した近赤外光である入射光8bは、ハーフミラー126、必要に応じて設けられる第二の位相差板123、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子122、必要に応じて設けられる第一の位相差板125、可視光に偏光選択性を有する可視光偏光子124をこの順に経て、受光部4へ到達する。ここで、必要に応じて設けられる第二の位相差板123は、入射光8bの偏光状態を近赤外偏光子122の透過軸に略一致させるように位相差を有していることが好ましい。このようにすることで、入射光8bは受光部4へ到達することができる。また、
図12aのディスプレイデバイスで説明したのと同様の作用により、意図しない光路を経る近赤外光束8dを除去し、検出精度および取得情報量を向上させうる。
【0088】
また、画素2から出射した可視光束5は、可視域に偏光選択性を有する可視光偏光子124で偏光となってハーフミラー126へ入射する。この時、第一の位相差板125、近赤外偏光子122、第二の位相差板123がそれぞれ有する位相差によって偏光状態が変化する。この偏光状態の変化を、ちょうど1/4波長分の変化となるように第一の位相差板125、近赤外偏光子122、第二の位相差板123の位相差値および遅相軸配置とすることにより、ハーフミラーに入射する可視光束5は円偏光となり、ハーフミラーで反射されて発光パネル121側へ向かう可視光束5dは可視光偏光子124の透過軸とは直交した直線偏光に変換されて、可視光偏光子124で除去される。こうすることで、表示画像において生じるゴースト像や迷光による表示コントラスト低下を抑制することができる。
【0089】
さらに別の好ましい一態様として、
図12cにはハーフミラー126から順に、第一の位相差板125、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子領域127aと、可視光に偏光選択性を有する可視光直線偏光子領域127bとをパターン状に有するパターン偏光子127、画素2および受光部4を含む発光パネル121の順に配置されたディスプレイデバイス(画像表示装置)120cを示す。この場合、ディスプレイデバイス120cの出光面は、第一の位相差板125のハーフミラー126側表面、または、パターン偏光子127のハーフミラー126側表面とすることができる。パターン偏光子127は、本発明における近赤外偏光子に相当する。言い換えると、パターン偏光子127は、本発明における近赤外偏光子となる領域を有するものである。また、パターン偏光子127は、上述した可視光偏光子としての機能も有する。
【0090】
眼球で反射され受光部4へ入射する近赤外光である入射光8bと、意図しない光路を経た近赤外光束8dとの分離、および、画素2から出射した可視光束5がハーフミラーで反射されて発光パネル121へ向かう可視光束5dの除去のメカニズムについては
図12a、
図12bに例示したディスプレイデバイスと同様であり、画像表示装置における検出精度および取得情報量の向上、および、表示画像のゴーストおよびコントララスト低減を押さえることができる。
【0091】
パターン偏光子としては、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子領域127aと、可視光に偏光選択性を有する可視光直線偏光子領域127bとを同一面内に有するものであってもよく、また、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子領域と近赤外域に偏光選択性を有しない近赤外非偏光領域とを同一面内に有する近赤外パターン偏光素子と、可視光に偏光選択性を有する可視光直線偏光子領域と可視光域に偏光選択性を有しない可視光非偏光領域とを同一面内に有する可視光パターン偏光素子とを積層した積層体でもよい。
近赤外パターン偏光素子に代えて、近赤外域に対する吸収の異方性が面内方向に配向した領域と近赤外域に対する吸収の異方性が厚み方向に配向した領域とを同一面内に有する光学素子を用いても良い。また、可視光パターン偏光素子に代えて、可視光域に対する吸収の異方性が面内方向に配向した領域と可視光域に対する吸収の異方性が厚み方向に配向した領域とを同一面内に有する光学素子を用いてもよい。
【0092】
近赤外偏光子領域は、近赤外偏光子と同様に、波長850nmにおける単板透過率が50%未満であるものが好ましく、47%未満であることがより好ましい。また、波長950nmおける単板透過率が55%未満であるものが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることがより好ましい。また、偏光度について、P(850)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。また、P(950)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。P(850)およびP(950)の上限は理論上1.00であるが、実用上は1.00未満の範囲である。
この範囲であると、十分にノイズが除去でき、検出精度を向上させることができる。
【0093】
第一の位相差板125は、可視光直線偏光子領域127bの透過軸に対して45°または135°に配置された遅相軸を有する1/4波長板である。第一の位相差板125は、さらに、入射光8bの偏光状態を、近赤外偏光子領域127aが選択透過性を示す偏光状態に変換する特性を有していることが好ましい。第一の位相差板125は、可視光域で1/4波長板を示す領域と、近赤外偏光子領域127aが選択透過性を示す偏光状態に変換する特性を有する領域とがパターン状に配置された、パターン位相差板であってもよく、そのパターンは、上述のパターン偏光子の可視光直線偏光子領域127bに対応する領域では可視光域で1/4波長板を示し、近赤外偏光子領域127aに対応した位置では近赤外偏光子領域127aが選択透過性を示す偏光状態に変換する特性を有するように配置することができる。
【0094】
また、本発明の第1の実施形態の好ましい別の一態様として、
図13には、受光部4、および、画素2を備えたディスプレイデバイス(画像表示装置)131と、その表面に設けられた直線偏光子および1/4波長板(すなわち、円偏光板)133、ハーフミラー132、円偏光選択性反射偏光子134とがこの順に配置され、観察者の眼119に可視光束5を投影することによって画像表示を行い、さらに、近赤外光源9からの近赤外光を観察者の眼119に照射し、その反射光を受光部4で検知してアイトラッキングを行う、ヘッドマウントディスプレイ130を示す。
【0095】
上述した偏光子、ハーフミラー132、円偏光選択性反射偏光子134がこの順に並んだ配置、および、それらの形状を適切に設計することで、接眼レンズとしての作用を発揮しうる。なお、
図13もまた概念図であり、実際の部材の形状ならびに光束の経路を簡略化して表してある。
【0096】
前述した円偏光選択性反射偏光子としては、コレステリックミラー、上述した直線反射偏光子に広帯域1/4波長板を積層したものが好ましい。単層で形成することができ光学的な界面が少ない点、また、近赤外光に与える位相差量が小さい点で、コレステリックミラーを用いることがより好ましい。
ハーフミラー132、ならびに、円偏光板(直線偏光子+位相差板)133と受光部4、画素2、図示しない近赤外偏光子を含むディスプレイデバイス131としては、それぞれ
図11および
図12a~
図12cの説明で例示されたものを用いることができる。
【0097】
本発明の第1の実施形態の画像表示装置を含む画像表示システムの一態様として、表情センシング(表情認識システム)ないしは顔認証システムを備えた画像表示システムの例を、
図14を用いて説明する。
【0098】
本発明の第1の実施形態の画像表示システムの好ましい一態様は、本発明のディスプレイデバイス(画像表示装置)20を含み、使用者の顔面に近赤外光8aを照射可能な光源9をさらに含み、光源9からの近赤外光8aを観察者の顔面に反射させて得られた入射光8bを、近赤外偏光子4bを経て受光部4で検出する顔認証システムないしは表情認識システムを備える画像表示システム140である。観察者は、複数の画素2から形成される可視光の光束5で形成される画像を視聴しながら、上述の顔認証システムないしは表情認識システムを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理されて、デバイスあるいはサービスのセキュリティロックの解除、使用者個人の認識、検知された表情および/または顔面の状態に応じたサービスの提供あるいはデバイスの能動的制御に用いることができる。
【0099】
従来の表情センシングないしは顔認証システムは、モバイルディスプレイの辺縁部に備えられた撮像素子を用いるものであった。これらの撮像素子は素子1つあたりのFOV(Field Of View)が狭く、認識に必要な取得情報量を得るために、使用者は撮像素子に対して繰り返し顔を大きく動かす必要があった。この課題を解消するために撮像素子をモバイルディスプレイの複数の辺縁部に設けると、そのためのスペースがデバイスのサイズおよび意匠上の問題となることがあった。
しかし、本発明の第1の実施形態の画像表示装置により、複数の受光部を表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、必要な画素数を備えた受光部を必要な数だけ設けることができ、十分な情報量を瞬時に取得できる。
【0100】
用いるディスプレイデバイス20に含まれる画像表示パネルとしては、
図4、
図6に例示したOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネル等の発光パネル、
図7に示した液晶セルを用いたディスプレイデバイスなどが例示される。
上述したように、これらの画像表示パネルは、画像を形成するため、または、画質を向上させることを目的として偏光子を含むことができる。
【0101】
発光パネルとして、OLED表示パネルおよびその表面に外光反射低減のための円偏光板を設けた構成について、近赤外光である入射光8bと可視光束5の干渉を低減するための構成を、
図15、
図16にそれぞれ示す概念図を用いて説明する。
【0102】
図15は、
図14の画像表示システムをより詳細に表したものである。
ディスプレイデバイス(画像表示装置)150は出光面6から基板1に向かって、近赤外偏光子4b、可視光偏光子151、位相差板152、および、画素2と受光部4とを含む基板1をこの順に含んでいる。
【0103】
偏光発光性の近赤外光源9から出射した近赤外光8aは、使用者の顔面に反射して入射光8bとなり、出光面6からディスプレイデバイス20へ入射する。可視光偏光子151は近赤外域の光に対し透過性であり、その透過軸に関わらず近赤外光である入射光8bを透過する。近赤外偏光子4bは、入射光8bが多く有する偏光方向と一致した透過軸を有し、近赤外偏光子4bを透過した光は、可視光偏光子151、位相差板152を経て受光部4に達する。可視光偏光子151、位相差板152は、近赤外光に対し透過性であることが好ましい。可視光偏光子151、位相差板152は近赤外域に位相差を有しうるが、受光部4を構成する素子は偏光選択性が無いので、影響なく入射光8bを検知できる。一方、太陽光などに含まれる外部からの近赤外光ノイズ8cは、近赤外偏光子4bに入射した際、入射光8bと異なる偏光状態または無偏光状態であるため、そのほとんどが近赤外偏光子4bに吸収され、受光部4に達しない。よって、外部近赤外光によるノイズを低減し、高い検出精度を得ることができる。
【0104】
可視光束5および外光155については、可視光偏光子151および位相差板152が円偏光板を構成している場合、従来知られたOLEDパネル反射防止の原理に従って、コントラスト向上の効果が得られる。近赤外偏光子4bは可視光偏光子151より視認側にあるため、この原理に何ら影響しない。また、近赤外偏光子4bと可視光偏光子151のそれぞれの透過軸を自由に設計できる利点がある。
【0105】
図16もまた、
図14の画像表示システムをより詳細に表したものである。
ディスプレイデバイス(画像表示装置)160は出光面6から基板1に向かって、可視光偏光子161、近赤外偏光子4b、位相差板162、および、画素2と受光部4とを含む基板1をこの順に含んでいる。近赤外偏光子4bは受光部4に近いほど、ノイズ低減や迷光低減の効果を発揮しうるので、検出感度や取得情報量の向上に対しては、
図15の構成よりも
図16の構成のほうが好ましい場合がある。
【0106】
偏光発光性の近赤外光源9から出射した近赤外光8aは、使用者の顔面に反射して入射光8bとなり、出光面6からディスプレイデバイス160へ入射する。可視光偏光子161は近赤外域の光に対し透過性であり、その透過軸に関わらず近赤外光である入射光8bを透過する。近赤外偏光子4bは、入射光8bが多く有する偏光方向と一致した透過軸を有し、近赤外偏光子4bを透過した光は、位相差板162を透過して受光部4に到達する。位相差板162は近赤外透過性であることが好ましい。位相差板162を透過する際に入射光8bの偏光状態が変化しうるが、受光部4を構成する素子は偏光選択性が無いので、影響なく入射光8bを検知できる。
【0107】
太陽光などに含まれる外部からの近赤外光ノイズ8cは、入射光8bと同様に可視光偏光子161を透過し、近赤外偏光子4bに入射するが、近赤外光ノイズ8cは入射光8bと異なる偏光状態または無偏光状態であるため、そのほとんどが近赤外偏光子4bに吸収され、受光部4に達しない。よって、外部近赤外光によるノイズを低減し、高い検出精度を得ることができる。
【0108】
画素2から形成された可視光束5は無偏光状態であり、位相差板162を透過しても偏光状態に変化はない。近赤外偏光子4bは可視光域に対して透過性である。近赤外偏光子4bは可視光域に位相差を有するが、位相差板162に対してそうであったように、可視光束5の偏光状態に変化はない。可視光偏光子161では一部の偏光のみが透過して出光面6から出射され、画像光として観察される。
【0109】
一方、外部可視光165は、出光面6から入射した後、可視光偏光子161を透過する際、紙面に平行な直線偏光成分のみがより内部に入射できる。さらに近赤外偏光子4b、位相差板162を経て基板1、または基板1上に形成された配線および電極などによって反射する。このとき、近赤外偏光子を図のように紙面に垂直な吸収軸を持つように配置することで、近赤外偏光子が有する可視光域の位相差の遅相軸も紙面に垂直または平行になるため、近赤外偏光子を透過した外部可視光は直線偏光を保つ。位相差板162の位相差Re(550)を1/4波長かつその遅相軸が可視光偏光子161に対して45°または135°となるようにすることで、基板1、または基板1上に形成された配線、電極などに到達する外部可視光165は円偏光となり、反射によって逆方向の円偏光に変換された後、再び位相差板152によって紙面に垂直な直線偏光となり、近赤外偏光子4bでは偏光状態が変化しないまま可視光偏光子161に入射し、吸収される。こうして外部可視光の内部反射成分は除去され、コントラストに優れた画像表示が可能になる。
【0110】
なお、位相差板152と近赤外偏光子の積層体が、波長550nmの光に対して、1/4波長板の作用を有するものとしてもよい。
【0111】
図16では一例として、可視光偏光子の透過軸に対して、近赤外偏光子の透過軸を垂直に配置した例を示したが、同様の効果を得る構成として、例えば、
・可視光偏光子の透過軸に対して、近赤外偏光子の透過軸を並行に配置した場合。
・可視光偏光子の透過軸に対して、近赤外偏光子の透過軸を45°または135°に配置し、かつ、近赤外偏光子が有する可視域の位相差Re(550)が1/2波長である場合。
などが挙げられる。
【0112】
この場合に組み合わせる位相差板としては、1/4波長板特性を示すものであれば任意のものが利用でき、例えばポリマー延伸位相差板、液晶化合物を配向状態で固定して形成した液晶位相差板、構造複屈折板などが例示される。また、斜め方向から入射する外部可視光165に対しても十分な内部反射防止特性を得ることを目的に、光学補償層をさらに設けても良い。
【0113】
上述した構成では、可視光偏光子の透過軸方向に対して、近赤外偏光子の透過軸は平行、直交、または、45°(135°)のいずれかに限定されうる。ここで、デバイス上の制約によってその他の角度で設けざるを得ない場合、もしくは、検出精度および取得情報量をより優れたものにするため、可視光偏光板の透過軸方向に対して、近赤外偏光板の透過軸を上述した以外の範囲で設けることもできる。
【0114】
このような構成として、例えば、可視光偏光子の透過軸に対して、近赤外偏光子の透過軸を75°±10°に配置し、かつ近赤外偏光子が有する可視光域の位相差Re(550)が180nmから360nmの範囲にすることができる。この場合、位相差板としては、可視光偏光子の透過軸に対して遅相軸が15°±10°とし、位相差Re(550)を115nmから155nmの範囲とすることができる。
【0115】
また、近赤外偏光子4bをさらに受光部4に近づけて検出精度および取得情報量を向上させたい場合、
図16における可視光偏光子161、近赤外偏光子4b、位相差板162について、配置順を視認側から可視光偏光子、位相差板、近赤外偏光子の順にすることができる。
この場合、
図16に示した各光束に対して同様の光学作用を発揮させるため、位相差板は、その遅相軸が可視光偏光子の透過軸に対して75°±10°であり、かつ位相差Re(550)が180nmから360nmの範囲とし、近赤外偏光子として、可視光偏光子の透過軸に対して遅相軸が15°±10°とし、可視光域に有する位相差Re(550)を115nmから155nmの範囲とすることができる。
また、位相差板を、厚さ方向に螺旋軸をもつ捻じれ配向液晶層とすることもできる。組み合わせる近赤外偏光子が有する可視光域の位相差、および透過軸方向に応じて、この位相差板の単位厚さあたり屈折率異方性Δnと厚さの積、捻じれ角および表面ダイレクタの方向を適宜調節することで、位相差板および近赤外偏光子の積層体が可視光域で広帯域1/4波長板として作用する積層体とすることができる。
【0116】
また好ましい別の一態様として、
図17に、出光面6から基板1に向かって、近赤外光に偏光選択性を有する近赤外偏光子領域171aと、可視光に偏光選択性を有する可視光直線偏光子領域171bとをパターン状に有するパターン偏光子171、位相差板172、受光部4と画素2とをこの順に含むディスプレイデバイス(画像表示装置)170およびそれを含む画像表示システムを示す。
【0117】
近赤外偏光子領域171aは、好ましくは受光部4に対応した位置に設けられ、対象の顔面から入射する近赤外光である入射光8bを透過し、かつ、外部からの近赤外光ノイズ8cを吸収して除去し、本発明の画像表示装置における検出精度および取得情報量を向上させることができる。可視光直線偏光子領域171bは、位相差板172と共に可視光域に作用する円偏光板を構成し、基板等からの内部反射光を除去して表示コントラストを向上させることができる。
必要に応じ、画素2に対応した位置には可視光透過部171cを設け、画素2から放出される可視光束5を吸収することなく透過させてもよい。画素2に対応した位置には可視光透過部171cを設けることで、ディスプレイデバイス170の表示輝度を向上させ、より高い表示コントラストを得ることができる。
【0118】
このようにパターン偏光子171を適用することで、可視光束と近赤外光に対する各光学素子の干渉を最小限に抑えることができ、好ましい。このようなパターン偏光子としては、
図12cの説明にて挙げたパターン偏光子を適用することができる。
【0119】
本発明の第1の実施形態の画像表示装置を含む画像表示システムの好ましい一態様は、
図18に示すように、本発明のディスプレイデバイス20を含み、測定対象181、182に近赤外光8aを照射可能な光源9をさらに含み、光源9からの近赤外光8aを測定対象181、182に反射させて得られた入射光8bを、近赤外偏光子4bを経て受光部4で検出する光検出と測距(LIDAR(light detection and ranging))システムまたは物体認識システムを備える画像表示システム180である。使用者は、複数の画素2から形成される可視光の光束5で形成される画像を視聴しながら、上述のLIDARシステムまたは物体認識システムを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理され、表示される画像に取得情報がリアルタイムにマウントされた双方向コミュニケーション、および、測定対象に付与された不可視マーキング183を用いた様々なサービス提供が可能になる。
【0120】
上述した表情センシングないしは顔認証システムにおける課題と同様に、LIDARシステムまたは物体認識システムを備えた画像表示システムは、その辺縁部に備えられた撮像素子を用いるものであった。これらの撮像素子は素子1つあたりのFOV(Field Of View)が狭く、認識に必要な取得情報量を得るために、複数の撮像素子をそれぞれ異なる位置に設ける必要があり、サイズおよび重量上ならびに意匠上の課題があった。
しかし、本発明の画像表示システムにより、複数の受光部を表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、必要な画素数を備えた受光部を必要な数だけ設けることができ、十分な情報量を瞬時に取得できる。
【0121】
例えば
図19に示すように、第一の測定対象191の背後に置かれた第二の測定対象192について物体認識を行う場合について考える。従来であれば、LIDARシステムまたは物体認識システムを備えた画像表示システム180において、辺縁部に備えられた撮像素子4eで取得した画像を演算してそれぞれの位置を把握していた。しかし、第二の測定対象192によって遮蔽された第一の測定対象191の遮蔽領域194は情報を取得することができない。第一の測定対象191に付与された不可視マーキング193が遮蔽領域194に覆われた場合、不可視マーキング193はシステム上意味をなさない。
一方、LIDARシステムまたは物体認識システムを備えた画像表示システムにおいて、本発明の画像表示システム180を適用すれば、複数の受光部4同士を、最大で画面の幅いっぱいに離間して設けることができるので、遮蔽領域194を減らし、第一の測定対象191の情報をより多く取得することができる。
【0122】
用いるディスプレイデバイス20に含まれる画像表示パネルとしては、上述した顔認証システムないしは表情認識システムを備える画像表示システムで用いられる各種発光パネルが利用できる。また、これら発光パネルの画像形成に必須な要素、または表示コントラストの向上のためにさらに可視光偏光子を設けることができ、それらの配置ならびに必要に応じて設ける位相差板ならびにその具体的様態については、上述した顔認証システムないしは表情認識システムを備える画像表示システムで述べた構成および部材を適用することができる。例えば、画像表示装置は、出光面に外光反射低減のための円偏光板を設けたものとすることができる。円偏光板は、可視光偏光子と位相差板とを積層したものであり、出光面から基板に向かって、可視光偏光子、位相差板、および、基板の順に配置される。
【0123】
あるいは、
図16に示した例と同様に、画像表示装置は、可視光偏光子と、位相差板との間に近赤外偏光子を含み、近赤外偏光子は可視光域で透過性であり、波長550nmの光に対して、位相差板と近赤外偏光子の積層体が1/4波長板の作用を有する構成であってもよい。この場合も、外部可視光の内部反射成分は除去され、コントラストに優れた画像表示が可能になる。
【0124】
また、上記説明では、可視光偏光子の透過軸に対して、近赤外偏光子の透過軸を垂直に配置した例を示したが、同様の効果を得る構成として、例えば、
・可視光偏光子の透過軸に対して、近赤外偏光子の透過軸を並行に配置した場合。
・可視光偏光子の透過軸に対して、近赤外偏光子の透過軸を45°または135°に配置し、かつ、近赤外偏光子が有する可視域の位相差Re(550)が1/2波長である場合。
などが挙げられる。
【0125】
上述した不可視マーキング183および193としては、例えば近赤外域のみを吸収し可視光では透明なマーキング、または、近赤外域のみを反射し可視光では透明なマーキングを適用することができ、付与する面が近赤外域で鏡面反射性か拡散反射性か吸収性かに応じて、適宜選択することができる。マーキングは文字、ないしは記号であることができ、バーコードあるいは二次元バーコードのように符号化された記号であってもよい。
【0126】
本発明の第1の実施形態の画像表示装置を有する画像表示システムの一態様として、指紋センサー(指紋認証システム)、静脈認証システム、血流センサーなどの生体センシング機能(生体測定システム)を備えた画像表示システムの例を、
図20を用いて説明する。
【0127】
本発明の第1の実施形態の画像表示装置を含む画像表示システムの好ましい一態様は、本発明のディスプレイデバイス20を含み、使用者の手、指、手のひら、および、皮膚など体の一部に近赤外光8aを照射可能な光源9をさらに含み、光源9からの近赤外光8aを使用者の体の一部に透過または反射させて得られた入射光8bを、近赤外偏光子4bを経て受光部4で検出する指紋センサー(指紋認証システム)、静脈認証システム、血流センサーなどの生体センシング機能(生体測定システム)を備える画像表示システム200である。観察者は、体の一部をディスプレイデバイス20の出光面6に接触させるか近接させるかによって指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理されて、デバイスあるいはサービスのセキュリティロックの解除、検知された血流状態あるいは皮膚の状態に応じたサービスの提供あるいはデバイスの能動的制御に用いることができる。
【0128】
従来の生体センシング機能を有する画像表示システムは、装置の辺縁部に備えられた専用の検知素子を用いるものであった。しかし、測定対象が指、手のひら、または皮膚など一定以上の面積を必要とする体の一部分であることから、素子が必要とするスペースは大きなものとならざるを得ず、デバイス設計上、重量、スペースあるいは意匠上の課題が不可避であった。また、指紋認証は、セキュリティレベルをより高めることを目的に、複数の指を同時に認証するようなシステムが提案されているが、指紋認証のための専用の検知素子を複数個所に設けることは重量、スペースあるいは意匠上の課題が不可避である。
しかし、本発明の画像表示システムにより、複数の受光部を表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、体の一部と対向または接触させるのに十分な面積を確保することができる。また。複数の接触部位を表示画面上の任意の部位に設けることが可能になる。
【0129】
用いるディスプレイデバイス20に含まれる画像表示パネルとしては、上述した顔認証システムないしは表情認識システムを備える画像表示システムで用いられる各種発光パネルが利用できる。また、これら発光パネルの画像形成に必須な要素、または表示コントラストの向上のためにさらに可視光偏光板を設けることができ、それらの配置ならびに必要に応じて設ける位相差板ならびにその具体的様態については、上述した顔認証システムないしは表情認識システムを備える画像表示システムで述べた構成および部材を適用することができる。
【0130】
特に光源9に関して、測定対象が画像表示システムへの接触または近接を要するものである場合、近赤外光源と測定部位との相対位置に制限が生じる。本発明の好ましい一態様である指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーを備える画像表示システムは、近赤外光源と、近赤外光源から出射した近赤外光を導光する導光板とを含むことができる。
図21は、好ましい一態様として、導光板211がディスプレイデバイス20の出光面6を形成するように設けた指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーなどの生体センシング機能を有する画像表示システム210を示している。出光面6に指214が接触すると、指紋の凸部が接触した部分のみ導光状態が変化し、近赤外光源9から出射して導光板211内を伝播する近赤外光8aが指と導光板との界面で散乱してその一部が入射光8bとして受光部4に向かう。この散乱光を検知することによって、指紋センサーとしての機能を発揮しうる。導光板211は可視光域で透過性であることが好ましい。また、導光板211は、ディスプレイデバイス20のカバープレートを兼ねても良く、さらにその表面に防汚層、可視光に対する反射防止層、防眩層、ハードコート層を備えても良い。また、ノイズを低減し、非接触領域での誤検知を抑制するため、近赤外光源9は偏光光源であることが好ましい。近赤外光源としては、レーザーダイオード、および、近赤外発光性のLED素子と偏光選択素子とを組み合わせたものが好ましく適用できる。
【0131】
また、近接してはいるが接触していない状態の皮膚や体の一部を検出するため、あるいは、接触しているが、表面接触に伴う導光状態の変化以上に積極的に接触面に近赤外光を照射したい場合、導光板に散乱層または回折機能層を付与することで、測定対象により多くの近赤外光を照射し、静脈パターンや心拍、血流量、および、皮膚の表面状態に関するセンシングを行うことができる。
【0132】
図22は、好ましい一態様として、散乱層または回折機能層を付与した導光板211がディスプレイデバイス20の出光面6を形成するように設けられた、指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーなどの生体センシング機能を有する画像表示システム220を示す。導光板211の表面に付与された散乱または回折機能層212は、導光する近赤外光8aの一部を出光面から出射して測定対象213を照射する。測定対象によって反射または吸収または散乱、およびその組合せの作用を受けた近赤外光である入射光8bは、出光面6からディスプレイデバイス20に入射し、受光部4で検知される。
【0133】
付与する散乱層としては、近赤外域に散乱極大を有するものが好ましく、850~1000nmに散乱極大を有するものが特に好ましい。付与する回折機能層としては、ブレーズホログラム層、レリーフホログラム層、体積ホログラム層、液晶回折層、誘電体多層膜層などが好ましく、偏光選択性があり検出対象からの入射光8bからのノイズ要因を低減できる点で、液晶回折層が特に好ましい。
付与する散乱層、回折機能層は、
図21中では導光板211の出光面側に設けたが、本発明の好ましい態様としてはこれに限らず、導光板211の出光面とは反対側の表面に設けても良く、導光板211の内部に設けても良い。またそれらの組合せであってもよい。
【0134】
[第2の実施形態]
本発明の画像表示システムの第2の実施形態は、非可視域に感受性を有する受光部、ならびに、基板および基板上に配置された複数の画素とを含む画像表示パネルと複数の画素から形成される光束が出射する出光面とを含む画像表示装置を含み、複数の画素は、可視光域の光束を形成する画素群と、受光部が感受性を有する非可視域の光束を形成する画素とを含む、画像表示システムであり、出光面に垂直な方向から見た際に、複数の画素は、基板と重複する位置に配置されており、受光部は、非可視域の光束を形成する画素から、出光面を経て照射されて検知する対象により反射または散乱された非可視光を受光するように配置され、光可視域の光束のみを受光するものであり、画像表示装置は、非可視域の光束を形成する画素と、出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有するものである。
【0135】
従来、センシングのための非可視光源は、可視発光部とは別に設けることが一般的であり、装置のスペースおよび重量、意匠上の課題から、センシングのための非可視光源は小さなものであった。ほぼ点光源に近いこうした非可視光源では、画像表示システムの受光部が高性能化しても、取得できる情報に限界があった。
しかし、本発明の画像表示システムを適用することにより、発光領域以外のスペースを最小限に抑えつつ、画像表示システムの光源部を十分な面積で設けることができるので、検出精度および取得情報量に優れた画像表示システムを有するデバイスが提供できる。
【0136】
上述した、第2の実施形態の好ましい態様の一つを、
図23を用いて説明する。画像表示システム230は、基板1上に設けられた複数の画素2a~2dを含む画像表示パネル3を含み、画素2a~2dから可視域の光束5が形成される。可視域の光束5は出光面6から出光して、画像光として利用者に認識されるか、あるいは対象物を照らすことができる。ここで、非可視光8を発光する光源9は出光面6から画像表示パネル3の間に設けることができる。また、
図23に示すように、面方向において、光源9は画像表示パネル3と重複する位置に配置されている。非可視光を発光する光源9は、例えば光束5に対して透過性の基板7上に設けられていても良い。光源9から出射した非可視光8は、測定対象で反射あるいは透過されて受光部4によって検出される。なお、
図23では、測定対象の図示は省略し、非可視光8は、光源9から受光部4に直接、入射するように図示している。この点については、
図24、
図25、
図26および
図28も同様である。また、
図23に示す画像表示システム230においては、近赤外偏光子の図示は省略している。この点については、
図24、
図25、
図26および
図28も同様である。
【0137】
また、第2の実施形態の別の好ましい態様の一つを、
図24を用いて説明する。画像表示システム240における画像表示パネル3、および出光面6は
図23と同様であるが、非可視光を発光する光源9は画像表示パネル3上に設けられている。ここでいう「画像表示パネル3上に設けられている」とは、単に画像表示パネル3の出光面6側の表面に設けられていることに限定せず、画像表示パネル内に設けられた電極層やパッシベーション層、絶縁層等上あるいはその下に設けられるなどして画像表示パネルと一体化していることを表すものとする。
【0138】
第2の実施形態のさらに別の好ましい態様の一つを、
図25を用いて説明する。画像表示システム250における画像表示パネル3、および出光面6は
図1と同様であるが、非可視光を発光する光源9は、画像表示パネル3の出光面6とは反対側に設けられている。受光部4は、画像表示パネル3とは別に設けられた基板7上に設けられていても良いし、画像表示パネル3の出光面6側とは反対側の表面に隣接して設けられていても良い。
ここで、画像表示パネル3の基板1は、非可視光を発光する光源9が放出する非可視光8を透過することができる。ここでいう透過とは、基板に空隙または空孔を設けることによって、対象とする非可視光を遮ることなく非可視光を発光する光源9から対象物まで達するようにするものでも良い。また、基板そのものが、対象とする非可視光の波長域に対して透過性であっても良い。
図24および
図25に示す例の場合も、面方向において、光源9は画像表示パネル3と重複する位置に配置されている。
【0139】
上述した画像表示パネルとしては、LEDアレイ、OLEDパネル、マイクロLEDパネル、および、ミニLEDパネル等の発光パネルを適用することができる。また、画像表示パネルは、透過型液晶パネルとバックライトユニットを組み合わせたものであってもよい。
【0140】
画像表示パネルおよびそれらに含まれる基板、画素は、上述した第1の実施形態で述べたものが適用できる。また、出光面6の例もまた、第1の実施形態で述べたものでありうる。システムの外部へ放出された可視光束は、例えば物体を照らすのに用いられ、また、観察者に視覚情報を与えるものである。本発明の好ましい一態様として、画像表示装置は、これら画像表示パネルから出射する可視域の光束を利用して画像および/または情報を表示する。
【0141】
受光部としては、非可視域に感受性を有し、可視光に感受性を有さないフォトダイオードまたはフォトトランジスタのような光検出素子を適用することができる。好ましくは、受光部は、近赤外域のみに感受性を有し、可視光域に感受性を有さないフォトダイオードまたはフォトトランジスタである。光検出素子として、有機フォトダイオード(OPD)、有機フォトトランジスタ(OPT)を適用してもよい。
【0142】
受光部は、検知する対象から反射された非可視光を受光し、対象を検知する。
受光部を設ける場所は特に制限なく、画像表示パネルに隣接または重ねて設けても良いし、独立したデバイスとして設けても良い。受光部により検知する対象は、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、および、虹彩のいずれかから選ばれる少なくとも1つとすることができる。受光部は、これら測定対象に合わせて適した場所に設けることが好ましい。
【0143】
光源(発光部)としては任意のものを適用することができ、典型的には近赤外発光性のLED素子、OLED素子、レーザ素子が好ましく用いられる。面発光レーザ、特に、垂直共振器型面発光レーザも好ましく用いられる。発光部として用いる場合は、単一の素子として設けても良いし、複数の素子からなるアレイとして設けても良い。アレイとして設けることで、制御された波面やパターンなどを有する光束を形成することができる。また、発光部としては単一の素子で設けた上で、複数の発光部を連動させることにより制御された波面やパターンなどを有する光束を形成してもよい。検出精度を高め、取得情報量を増加させることを目的に、発光部により形成され出光面から放出される非可視光は、制御された波面やパターンなどを有することが好ましい。
【0144】
近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。また、第1の実施形態と同様に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、波長850nmにおける単板透過率が50%未満であるものが好ましい。
【0145】
本発明の第2の実施形態の画像表示システムの一例として、
図26を用いて、基板上に画素2および発光部9を含むOLEDディスプレイデバイス(画像表示装置)261を有する画像表示システム260を示す。本発明において、発光部(光源)9および受光部4は、近赤外光に発光帯域および感受性を有することが好ましい。以下の説明では、いずれも発光部9は近赤外発光デバイス、受光部4は近赤外受光素子であるものとして説明する。
【0146】
基板1上にはトランジスタ層263a、263dが設けられ、画素2の下部電極262aおよび発光部9の下部電極264aと接続されている。下部電極262a、下部電極264a上には可視EL発光層262bと透明電極262c、近赤外EL発光層264bと透明電極264cがそれぞれ積層されており、それらは電極と接続されている。それぞれの下部電極は反射電極として、光取り出し効率を高めてもよい。また、可視EL発光層、近赤外EL発光層とそれぞれの下部電極との間には透明導電層262d、264dを設けて、共振構造により光取り出し効率をさらに高めてもよい。
【0147】
さらに上部には絶縁層265を介して、カバープレート267が設けられる。カバープレート267の基板側に、必要に応じ着色層266a、266dを設けてもよい。例えば、可視EL発光層262bとして白色発光材料を用いて、着色層266aをそれぞれ赤、緑、青の透過性を有するカラーフィルターとすることで画素2a~2cによるフルカラー表示を行っても良い。また、可視EL発光層262bとして赤、緑、青それぞれを発光する可視EL発光層とし、着色層266aをノッチフィルタとして作用するようにして、色再現性を高めてもよい。
図26の記載において、画像表示装置261の出光面6は、カバープレート267の視認側表面である。
【0148】
画素2a~2cから形成された可視光束5は、表示画像となって観察者に視認される。発光部9から放出された近赤外光束8は、図示しない検出対象に照射された後、受光部4で検出され、各種センシングが可能である。画素2a~2c、および発光部9で、1つのピクセルユニット268を形成してもよい。
【0149】
図27は、
図26の発光パネルの一部を上面から観察し、ピクセルユニット268の配置の一例を表した概念図である。画素2a~2cと発光部9とを一体に設けることによりディスプレイデバイスとして制御されたパターン光を対象に照射できるようになるので、検出精度を高め取得情報量を増加させることができる。
【0150】
本発明の第2の実施形態の画像表示システムの別の一例として、
図28を用いて、基板上に画素2を含むOLEDパネル(発光パネル)282と、基板に対し出光面6とは反対側に設けられた発光部9とを含む画像表示装置(OLEDディスプレイデバイス)281と、受光部4とを含む、画像表示システム280を示す。
【0151】
基板上に画素2を含むOLEDパネル282の観察者側には、カバープレート283が設けられており、
図28に例示した構成ではこのカバープレート283の観察者側表面が出光面6である。OLEDパネル282は、画素2から形成される可視光によって画像表示を行うことができる。
【0152】
近赤外光を発光する発光部9は、第二の基板284上に設けられた回路層285の上に設けられ、OLEDパネル282の基板(図示しない)に対して、出光面6とは反対側に位置するよう設けられている。OLEDパネル282に対する相対位置の固定および発光部9同士が干渉しあうことを防ぐために、遮光性のスペーサー288を設けることができる。
【0153】
発光部9から放出された近赤外光束8は、OLEDパネル282の開口部または透過性部を通過して出光面6から出射され、対象に照射された後、受光部4で検知される。このため、OLEDパネル282は個々の層が近赤外光に対して透過性であるか、非画素領域に近赤外光の透過領域または開口部を設けておくことが好ましい。
【0154】
発光部9は上述した各種近赤外発光素子を用いることができるが、画素2を構成するOLED素子と回路を共有する必要がないため、レーザーダイオードおよび面発光レーザのような強力かつ偏光性の光源を適用することができる。検出精度を高め取得情報量を増加させる観点から、上述したレーザーダイオードおよび面発光レーザ等を用いることが好ましい。
【0155】
上述した本発明の第2の実施形態の画像表示システムについて
図29を用いてその作用を説明する。
図29に示す画像表示システム290は、画像表示装置10あるいはそれを含む画像表示システムに含まれる近赤外光を発光する発光部9を含み、出光面6から出射する近赤外光8aが偏光である。より好ましくは、受光部4が偏光選択性または偏光感受性である。
画像表示システムに含まれる発光部9および9eから出射された偏光である近赤外光8aおよび近赤外光8eは測定対象に照射され、検出光束(入射光)8bとなって受光部4に入射する。従来のように単一の近赤外光源から測定対象に照射した場合に対して、検出光束8bは複数の光源から照射されることにより光量が増し、検出精度を向上させることができる。また、近赤外光8aおよび近赤外光8eの偏光をそれぞれ異なる偏光とすることで、偏光の違いに応じた測定対象からの情報の差異を取得することができ、取得情報量が増加する。
【0156】
図29中、測定対象に対して近赤外光8aおよび8eと、検出光束8bとは反射の関係になるように描画されているが、本発明の画像表示システムとしては必ずしも反射する系のみに限定せず、受光部4を画像表示装置10とは別に設けて、測定対象に対して近赤外光8aまたは8eと、検出光束8bとが透過の関係になるように配置しても良い。また、測定対象としては任意のものを対象とすることができる。例えば使用者の手、指、手のひら、皮膚等の生体の一部、静脈パターン、顔、眼球、唇、手足、およびそれらの動きやジェスチャー、または、特定のインターフェースデバイス、周囲の物体といったオブジェクト、あるいは、温度、湿度、パーティクル、および、気体の組成などを含む、周囲の環境の状態などが例示される。
【0157】
発光部としては上述のように、典型的には近赤外発光性のLED素子、OLED素子、レーザ素子が好ましく用いられる。面発光レーザ、特に、垂直共振器型面発光レーザも好ましく用いられる。レーザ素子は、偏光発光性であるため好ましく用いることができる。発光素子が偏光発光しない素子の場合、出光面から出射する近赤外光8aを偏光にするため、さらに近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子9bを発光部9、9eと出光面6との間、または、出光面と測定対象までの間に設けても良い。
【0158】
受光部4としては任意のものを適用することができ、典型的には近赤外域に感度を有するフォトダイオード等の光電変換素子を利用することができる。また必要に応じて、受光部側に近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子、位相差素子、または、電気的に偏光選択性、位相差を変調可能な能動素子を設けても良い。
【0159】
近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、第1の実施形態で例示した各種の偏光子を用いることができる。また、それらの波長選択性についても、第1の実施形態で例示した種々の波長選択性を有したものを目的に応じて適用することができる。
近赤外偏光子が、上述した画像表示システムにおける可視光の光学経路上に重複する場合は、近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さないか、あるいは可視域で透過性であることが好ましい。このような近赤外偏光子もまた、第1の実施形態で例示したものから採用することができる。このような光学系とすることで、近赤外光と可視光の経路が互いに干渉することがない光学系を構成できる。
【0160】
上述した画像表示システムは、例えばヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブルデバイス、および、スマートフォンやタブレット等のモバイルディスプレイデバイス、テレビ、照明等の据置型ディスプレイデバイスに適用することができる。
これらの好ましいそれぞれの態様について、以下具体例を以て説明する。
【0161】
本発明の第2の実施形態の画像表示システムの好ましい一態様は、
図30に示すように、本発明の画像表示システムに含まれるディスプレイデバイス(画像表示装置)301、接眼レンズ302、および、受光部4を備え、ディスプレイデバイス301から眼球309に照射され反射した近赤外光である入射光8bを、受光部4で検出することによりアイトラッキングシステムとしたヘッドマウントディスプレイ300である。接眼レンズ302の作用は、第1の実施様態で説明したものと同様である。上述のアイトラッキングから得られた眼球位置および視線の情報は、投影される画像のレンダリング、および、表示画像上に埋め込まれたグラフィックインターフェースの操作に用いることができる。
【0162】
従来、ヘッドマウントディスプレイのアイトラッキングシステムは、表示光学系とは重ならないように設けられていたためにスペースの制約が厳しく、かつ、眼球、特に視線方向に対して大きな角度、かつ数少ない光源数で近赤外光の照射を行う必要があったため、受光部に十分な光量が到達しない、偏光を照射しても表面反射の偏光依存性によって所望の検出光が得られない、取得できる情報に限界がある、などの課題があった。本発明の画像表示システムにより、表示光学系とアイトラッキング光学系とを共通のスペースに収めることができ、コンパクトで、かつ、照射光線角度が適正で検出精度に優れ、取得情報量が多いアイトラッキングが可能になる。
【0163】
また、接眼レンズとして、ハーフミラーおよび反射偏光子を用いたいわゆるパンケーキレンズを用いた場合を
図31で説明する。パンケーキレンズの構造、作用およびその利得については、第1の実施様態で述べたのと同様である。
【0164】
本発明の第2の実施形態の好ましい一態様として、さらに、反射偏光子311b、ハーフミラー311aを近赤外域において透過性とすることができる。反射偏光子311b、ハーフミラー311aの850nmにおける単板透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。この構成によれば、近赤外光源9から眼球309に照射されて受光部4に向けて入射する入射光8bは、パンケーキレンズ311の反射の作用を受けることなく受光部4まで到達することができる。
このことは、例えば発光部9によって所定の近赤外光パターンを眼球に照射して、瞳孔または角膜における反射および/または吸収によって生じるパターンの変形および欠損を検知することによってアイトラッキングを行う場合、パンケーキレンズによって生じるアイボックスに依らずに照射パターンの設計を行える利点がある。このような利点は、大きな眼球運動および/または瞳孔の細かな動きも検知できる点で、本発明のセンサー付き画像表示には特に好ましい。
【0165】
例えば上述のようにパンケーキレンズ系が1/4波長板を含む場合、近赤外光源9から出光面6を経て、偏光として出射した近赤外光8aが偏光であっても、これら1/4波長板等の影響によって眼球309に到達した時点での近赤外光8aの偏光状態が変化していることがある。検知精度の向上および取得情報量の増加を目的に、こうした偏光状態変化を補償して眼球に到達する時点で所望の偏光状態になるように、近赤外偏光子9bから近赤外光8aの光路上の任意の位置に追加の位相差層を設けてもよい。また、パンケーキレンズ311の反射偏光子311bの眼球309側表面にさらに追加の近赤外偏光子9bを設けても良い。
【0166】
眼球309側表面に設けられる近赤外偏光子9bとしては、偏光状態を補償することができるものであれば、第1の実施形態で説明した近赤外偏光子と同様のものが利用できる。近赤外偏光子9bの単板透過率は、850nmで55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることが特に好ましい。この範囲であると受光部4における検出精度を高めることができる。
【0167】
パンケーキレンズに含まれるハーフミラー、反射偏光子、1/4波長板については、第1の実施様態で例示したものを同様に用いることができる。反射偏光子としてコレステリックミラーを用いたパンケーキレンズであることが、近赤外光束への偏光状態への影響が小さいため、より好ましい。
【0168】
本発明の第2の実施形態のヘッドマウントディスプレイの好ましい一態様は、
図47に示すように、画像表示システム471を備え、画像表示システム471は、画像表示パネル472と導光要素473とを含み、画像表示パネル472から出射される可視光域の光束(実線)および非可視域の光束(破線)を、導光要素473を通じて、導光要素473に設けられた光出射面(出光面)6から観察者の眼球479に出射するものであり、画像表示システム471から観察者の眼球479に照射され反射した近赤外光を受光部4で検出することで眼球センシングを行うヘッドマウントディスプレイである。眼球センシングによって得られる情報は、アイトラッキング、虹彩による個人認証、虹彩および網膜、角膜の表面状態を検出することによるバイタル情報、眼球中の血管を検出することによる血流、血圧、心拍、血中成分の分析情報などである。
【0169】
一般に、画像表示パネルから出射される可視光域の光束を、導光要素を通じて、導光要素に設けられた出射面から観察者に出射するディスプレイデバイスは、観察者の顔面が覆われる面積を小さくできること、導光要素を一部可視光透過性とすることにより、外部視野を取り入れつつ画像表示が可能なことから、拡張現実向けヘッドマウントディスプレイとして普及が進んでいる。しかし、これらの利点を残したまま、センシングシステムを付加的に設けることは、スペース上、意匠上の制約があった。また、眼球のほぼ正面に導光要素が位置するため、導光要素とは別にセンシングシステムを設ける場合、眼球に対して大きな角度で光束を照射あるいは検出する必要があり、照射光線角度の選択の幅および検出精度に限界があった。
【0170】
本発明の画像表示システムを有するヘッドマウントディスプレイにおいては、センシングシステムの光学系の一部を表示光学系内に組み込んであるため、スペース上、意匠上の制約が小さい。また、眼球のほぼ正面に位置する導光要素から非可視光域の光束を眼球に照射できるため、照射光線角度が適切で検出精度に優れたセンシングが可能である。
【0171】
なお、上述した画像表示パネルから出射される可視光域の光束を、導光要素を通じて、導光要素に設けられた出射面から観察者に出射するヘッドマウントディスプレイは、画像表示パネルが非常に小さく集約されていることが多いため、ここでいう画像表示パネルとは、単にパネル状の形態にとどまらず、画像形成機構全体を画像表示パネルとして、その内部に可視光域の画素と非可視光域の画素とを有するものを概念的に含むものとする。
【0172】
導光要素としては、
図47に示すように、内部全反射を用いて導光を行い、光入射および光出射のための回折素子を設けたものの他、表面に鏡面処理を施したプリズムミラーなど、従来知られたヘッドマウントディスプレイ用導光要素を適用することができる。導光要素は非可視光域の光束を通すため、導光要素を主に形成する材料は、非可視光域、特に、800~1800nmの波長域で透明であることが好ましい。センシングに使用する波長が狭い帯域である場合は、ピーク波長に対して±100nmの範囲で透明であることが好ましい。こうした材料としては、ガラス、樹脂などが使用できる。
【0173】
導光要素の構成としては、
図47の導光要素473に示すようにモノリシックな構造であってもよく、複数の部材を組合せたものであっても良い。また、導光経路は、各光束の波長によってそれぞれ分割されていてもよい。各光束の波長によって経路を分割する場合は、導光方向を主面として、面内方向に分割するものであってもよく、また、面外方向(特に導光要素が平板である場合、平板の厚さ方向)に分割されたものであってもよい。一例として、内部全反射を用いて導光を行い、光入射および光出射のための回折素子を設けた平板上の導光要素において、可視光域の光束を第一の平板で導光し、非可視光域の光束を、第一の平板に平行に設けられた第二の平板で導光するものであってもよい。
【0174】
さらに好ましい一態様として、
図48に示すように、導光要素の光出射面と観察者の眼球との間、および、受光部と観察者の眼球との間に、それぞれ、追加の近赤外偏光子484、485を配置することができる。
図31における説明と同様に、追加の近赤外偏光子を有することで、近赤外光8aの偏光状態を補償することができる。追加の近赤外偏光子としては、偏光状態を補償することができるものであれば、第1の実施形態で説明したものと同様の近赤外偏光子が利用できる。この近赤外偏光子の単板透過率は、850nmで55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることが特に好ましい。
このような近赤外偏光子を設けることにより、外光および乱反射光によるノイズを低減し、検出精度を向上させることができる。
【0175】
このうち、導光要素の光出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子484において、可視光域の光束が形成する表示画像、および導光要素を透過して観察可能な外部の景色に対する影響を最小化するため、該近赤外偏光子484は可視光域において透明であることが好ましい。
この観点から、該近赤外偏光子484の可視光域の平均透過率は、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
一方で、上述したノイズ低減の効果を発揮するために、導光要素の光出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子484は、偏光度が高いことが望ましい。この観点から、該近赤外偏光子484の850nmにおける偏光度が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0176】
また、上述したノイズ低減の観点からは、近赤外偏光子のうち、受光部4と観察者の眼球489との間に設けられる近赤外偏光子485において、該近赤外偏光子485の850nmにおける偏光度が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0177】
上述した近赤外偏光子484、485としては、例えば、近赤外域に吸収を有する二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させたもの、近赤外域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したもの、ヨウ素系偏光板をポリエン化したもの、ワイヤーグリットを応用したもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型のもの、メタサーフェスなどの表面微細構造を利用したものなどが挙げられる。薄膜で生産性に優れ、可視光の透過率が高く設計可能な点において、近赤外域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したものが好ましい。
【0178】
導光要素の光出射面と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子484の吸収軸方向と、受光部と観察者の眼球との間に設けられる近赤外偏光子485の吸収軸方向とは、設計に応じてどのように配置しても良い。好ましい一例として、
図49に示すように、観察者の眼球490の角膜491を鏡面反射と仮定した場合に、互いにクロスニコルの配置となるように配置することが好ましい。
虹彩認証、瞳孔の位置および大きさを特定する方式のアイトラッキング、網膜など眼球内部の状態を検出する方式のセンシングシステムでは、角膜表面での反射成分はノイズとなり、測定上の障害となる。導光要素483の光出射面6と観察者の眼球489との間に設けられる近赤外偏光子484の吸収軸方向と、受光部4と観察者の眼球489との間に設けられる近赤外偏光子485の吸収軸方向とを、観察者の眼球489を鏡面反射と仮定した場合に、互いにクロスニコルの配置となるように配置すると、鏡面に近い反射特性を有する角膜491の表面の反射はほぼ除去されるが、虹彩493、瞳孔492および網膜(図示しない)などの内部組織での反射は偏光が変化して受光部4で検出可能となり、角膜491の表面反射成分を除去して信号を検出することができる。
【0179】
また、ノイズ低減のための別の好ましい一例として、近赤外偏光子484、485に、当該波長で1/4波長板として作用する位相差要素を組み合わせて円偏光板とすることにより、同様に角膜表面の反射成分を除く構成が可能である。用いる1/4波長板としては、公知の位相差材料が適用可能であり、例えば、他波長に影響を及ぼしにくいという点では、メタサーフェス材料の適用が好ましい。
【0180】
本発明の第2の実施形態の画像表示システムの好ましい一態様を
図32に示す。
図32に示す本発明の画像表示システム320は、ディスプレイデバイス(画像表示装置)322を含み、ディスプレイデバイス322に含まれる画像表示パネルに配置された近赤外光を発光する発光部9から出射される近赤外光8aを使用者の顔面に照射し、顔面で反射して得られた入射光(反射光)8bを受光部4で検知する顔認証システムないしは表情認識システムを備える画像表示システム320である。
観察者は、複数の画素2から形成される可視光の光束5で形成される画像を視聴しながら、上述の顔認証システムないしは表情認識システムを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理されて、デバイスあるいはサービスのセキュリティロックの解除、使用者個人の認識、検知された表情および/または顔面の状態に応じたサービスの提供あるいはデバイスの能動的制御に用いることができる。
【0181】
従来の表情センシングないしは顔認証システムは、モバイルディスプレイの辺縁部に備えられた撮像素子および光源を用いるものであった。これらの光源は出力が小さく指向性も限られているために、認識に必要な取得情報量を得るために、使用者は撮像素子および光源に対して繰り返し顔を大きく動かす必要があった。この課題を解消するために撮像素子および光源の組合せをモバイルディスプレイの複数の辺縁部に設けると、そのためのスペースがデバイスサイズおよび意匠上の問題となることがあった。
しかし、本発明の画像表示システムにより、複数の発光部を表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、必要な発光素子数を備えた発光部を必要な数だけ設けることができ、十分な情報量を瞬時に取得できる。
【0182】
用いるディスプレイデバイス20に含まれる画像表示パネルとしては、
図26や
図28に示したOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネル等の発光パネル、液晶セルを用いたディスプレイデバイスなどが例示される。
上述したように、これらの画像表示パネルは、画像を形成するため、または、画質を向上させることを目的として偏光子を含むことができる。
【0183】
画像表示パネルとして、OLED表示パネルおよびその表面に外光反射低減のための円偏光板を設けた構成について、近赤外光8aと可視光束5の干渉を低減するための構成を、
図33、
図34にそれぞれ示す概念図を用いて説明する。
【0184】
図33は、
図32の画像表示システムをより詳細に表したものである。
ディスプレイデバイス(画像表示装置)330は出光面6から基板1に向かって、近赤外偏光子9b、可視光偏光子331、可視光偏光子331の透過軸に対して45°または135°に遅相軸を有する1/4波長板である位相差板332、および、画素2と発光部9とを含む基板1をこの順に含んでいる。
【0185】
発光部9から出射した近赤外光8aは、近赤外偏光子9bによって偏光化されて出光面6から出射し、測定対象へと照射され、反射して受光部4にて検知される。上述したように、偏光を照射することで検出精度を向上させ、取得情報量を増加させることができる。図示しない別の発光部からの光を同じ偏光、あるいは、異なる偏光にすることによりさらに検出精度と取得情報量の改善を図ることができる。近赤外偏光子は、面内で均一な透過軸方向を有するものであってもよいし、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子であってもよい。
【0186】
近赤外偏光子の単板透過率は、850nmで55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることが特に好ましい。近赤外偏光子がパターン偏光子である場合は、近赤外域に偏光選択性を有する領域で上記の単板透過率を有していることが好ましい。
また、偏光度について、P(850)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。また、P(950)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。P(850)およびP(950)の上限は理論上1.00であるが、実用上は1.00未満の範囲である。
【0187】
画素2から出射した可視光束5、および、外光335に対する可視光偏光子331と1/4波長板である位相差板332の作用は、OLEDパネルの内部反射防止機構として知られたものであり、表示コントラストが向上する。
可視光偏光子331と1/4波長板である位相差板332が近赤外透過性であり、かつ、近赤外偏光子9bが可視光透過性であれば、この配置において可視光と近赤外光はそれぞれ作用が干渉しあうことがなく、画像表示システムとしての検出精度と取得情報量の向上、および、画像表示装置としてのコントラスト向上とを両立させることができる。
【0188】
図34は、近赤外偏光子は、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子である場合を示した概念図である。可視光偏光子341および1/4波長板である位相差板342の配置およびその作用については、
図33に示した例と同様である。
【0189】
パターン偏光子349は、紙面に平行な透過軸を有する領域349bと、紙面に垂直な透過軸を有する領域349eを含んでいる。領域349b、領域349eに対応する発光部9、9eから放出された光は、それぞれ紙面に平行な直線偏光8fと、紙面に垂直な直線偏光8gとなって出光面6から出射され、使用者の顔に照射される。例として2つの異なる偏光方向を有するパターンニングを例に示したが、3つ以上に互いに異なる透過軸を有する領域をパターニングしてもよい。また、発光部9、9eが設けられていない非発光部領域に対応する領域349fは、任意の透過軸を有する領域であっても良く、また、偏光選択性が無い領域であってもよい。
【0190】
このようなパターン偏光子としては、後述するように、配向状態で固定された液晶化合物中に近赤外域に吸収を有する二色性化合物を含有し、液晶化合物の配向状態および配向方向を領域ごとに変化させてパターン化した近赤外偏光子が例示される。
【0191】
本発明の第2の実施形態の画像表示システムの別の好ましい一態様を
図35に示す。
図35に示す画像表示システムは、ディスプレイデバイス(画像表示装置)351を含み、測定対象352、353に近赤外光8aを照射し、近赤外光8aを測定対象352、353に反射させて得られた入射光8bを、受光部4で検出するLIDARシステムまたは物体認識システムを備える画像表示システム350である。使用者は、複数の画素2から形成される可視光の光束5で形成される画像を視聴しながら、上述のLIDARシステムまたは物体認識システムを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理され、表示される画像に取得情報がリアルタイムにマウントされた双方向コミュニケーションや、測定対象に付与された不可視マーキング354を用いた様々なサービス提供が可能になる。
【0192】
上述した表情センシングないしは顔認証システムにおける課題と同様に、LIDARシステムまたは物体認識システムを備えた画像表示システムは、その辺縁部に備えられた撮像素子と光源とを用いるものであった。これらの光源は素子1つあたりの指向性が狭くまた出力に限りがあるため、認識に必要な取得情報量を得るために、複数の光源をそれぞれ異なる位置に設ける必要があり、サイズおよび重量上ならびに意匠上の課題があった。
しかし、本発明の画像表示システムにより、複数の発光部を表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、必要な出力を備えた発光部を必要な数だけ設けることができ、十分な情報量を瞬時に取得できる。
【0193】
画像表示装置としてのコントラスト向上と、発光部からの近赤外光束の偏光方向を様々にパターニングすることによる検出精度と取得情報量の向上とを両立させるための具体的な構成は、
図33、
図34に示した構成と同様のものが利用できる。特に、構造化光を出光面6から出射して検出精度と取得情報量を向上させる点で、近赤外偏光子として、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子を用いた構成とすることが好ましい。また、ディスプレイデバイス(画像表示装置)351は、出光面6から基板に向かって、近赤外偏光子9b、可視光偏光子、可視光偏光子の透過軸に対して45°または135°に遅相軸を有する1/4波長板である位相差板、および、画素2と発光部9とを含む基板をこの順に含んでいることが好ましい。また、近赤外偏光子の単板透過率は、850nmで55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることが特に好ましい。
ここでいう構造化光とは、対象物に照射される光について、その位相、振幅、波長、偏光状態の少なくともいずれかが面内で異なるように、変調された光のことを指す。構造化光においては、変調された照射光の状態は予め決められており、所定のパターンを形成している。対象を経て検出された信号が、所定のパターンに対してどのような面内分布に変化しているかを計算することにより、対象物の距離および/または形状、表面状態などを、従来より精度よく、かつ、短時間に計測することができる。
【0194】
[第3の実施形態]
本発明の画像表示装置の第3の実施形態は、非可視域に感受性を有する受光部と、基板および複数の画素とを含む画像表示パネルと、複数の画素から形成される可視域の光束が出射する出光面とを含み、受光部は、出光面と画像表示パネルとの間、または、画像表示パネル上、または、画像表示パネルの出光面とは反対側に設けられており、複数の画素は、可視光域の光束を形成する画素群と、受光部が感受性を有する非可視域の光束を形成する画素とを含み、出光面に垂直な方向から見た際に、受光部は、画像表示パネルと重複する位置に配置されており、受光部は、出光面を経て画像表示装置に入射する光のうち、非可視光のみを受光し、非可視域の光束を形成する画素と、出光面との間に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子を有する、画像表示装置である。
【0195】
上述した、第3の実施形態の好ましい態様の一つを、
図36を用いて説明する。画像表示装置360は、基板1上に設けられた複数の画素2a~2c、2eを含む画像表示パネル3を含み、画素2a~2cから可視域の光束5が形成され、非可視光画素2eからは非可視光8が形成される。可視域の光束5は出光面6から出光して、画像光として利用者に認識されるか、あるいは対象物を照らすことができる。ここで、非可視域にのみ感受性を有する受光部4は出光面6から画像表示パネル3の間に設けることができる。受光部4は、例えば光束5に対して透過性の基板7上に設けられていても良い。また、
図36に示すように、面方向において、受光部4は画像表示パネル3と重複する位置に配置されている。受光部4は、外部から入射する非可視光8を受光して電気信号へと変換し、図示しない演算回路を経て検知した情報を出力することができる。
なお、
図36に示す画像表示装置360においては、近赤外偏光子の図示は省略している。この点については、
図37および
図38も同様である。
【0196】
また、第3の実施形態の別の好ましい態様の一つを、
図37を用いて説明する。画像表示装置370における画像表示パネル3、および出光面6は
図36と同様であるが、非可視域に感受性を有する受光部4は画像表示パネル3上に設けられている。ここでいう「画像表示パネル3上に設けられている」とは、単に画像表示パネル3の出光面6側の表面に設けられていることに限定せず、画像表示パネル内に設けられた電極層やパッシベーション層、絶縁層等上あるいはその下に設けられるなどして画像表示パネルと一体化していることを表すものとする。
【0197】
第3の実施形態のさらに別の好ましい態様の一つを、
図38を用いて説明する。画像表示装置380における画像表示パネル3、および出光面6は
図36と同様であるが、非可視域に感受性を有する受光部4は、画像表示パネル3の出光面6とは反対側に設けられている。受光部4は、画像表示パネル3とは別に設けられた基板7上に設けられていても良いし、画像表示パネル3の出光面6側とは反対側の表面に隣接して設けられていても良い。
図37および
図38に示す例の場合も、面方向において、受光部4は画像表示パネル3と重複する位置に配置されている。
【0198】
上述した画像表示パネルとしては、LEDアレイ、OLEDパネル、マイクロLEDパネル、および、ミニLEDパネル等の発光パネルを適用することができる。また、画像表示パネルは、透過型液晶パネルとバックライトユニットを組み合わせたものであってもよい。
【0199】
画像表示パネルおよびそれらに含まれる基板、画素は、上述した第1の実施形態で述べたものが適用できる。また、出光面6の例もまた、第1の実施形態で述べたものでありうる。システムの外部へ放出された可視光束は、例えば物体を照らすのに用いられ、また、観察者に視覚情報を与えるものである。本発明の好ましい一態様として、画像表示装置は、これら画像表示パネルから出射する可視域の光束を利用して画像および/または情報を表示。
【0200】
非可視光を形成する画素は上述した第2の実施形態で述べたものが適用できる。非可視光を形成する画素は、近赤外域に発光帯域を有することが好ましい。
【0201】
受光部としては、非可視域に感受性を有し、可視光に感受性を有さないフォトダイオードまたはフォトトランジスタのような光検出素子を適用することができる。好ましくは、受光部は、近赤外域のみに感受性を有し、可視光域に感受性を有さないフォトダイオードまたはフォトトランジスタである。光検出素子として、有機フォトダイオード(OPD)、有機フォトトランジスタ(OPT)を適用してもよい。
【0202】
受光部は、検知する対象から反射された非可視光を受光し、対象を検知する。
受光部により検知する対象は、物体の立体形状、物体の表面状態、および、使用者の眼球運動、眼球位置、表情、顔形状、静脈パターン、血流、脈拍、血中酸素飽和度、指紋、および、虹彩のいずれかから選ばれる少なくとも1つとすることができる。受光部は、これら測定対象に合わせて適した場所に設けることが好ましい。
【0203】
近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。また、第1の実施形態と同様に、近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、波長850nmにおける単板透過率が50%未満であるものが好ましい。
【0204】
本発明の第3の実施形態の画像表示装置の一例として、
図39を用いて、基板392上に可視光束を形成する画素(可視光画素)2a~2cと、非可視光束を形成する画素(非可視光画素)2eと、受光部4とを含む画像表示パネル391を含む、OLEDディスプレイデバイス(画像表示装置)390を示す。本発明の画像表示装置の非可視光画素2eおよび受光部4は、近赤外光に発光帯域および感受性を有することが好ましい。以下の説明では、いずれも非可視光画素2eは近赤外発光素子、受光部4は近赤外受光素子であるものとして説明する。
【0205】
基板392上には図示しないトランジスタ層が設けられ駆動回路を構成し、画素2a~2c、2eはそれぞれ下部電極、EL発光層、透明電極を含んでいる。また、図示しない回路に接続された受光部4が非画素領域に形成されている。画像表示パネル391の視認側にはカバープレート393を設けることができ、カバープレート393によって発光パネルを保護している。
図39の構成においては、カバープレート393の視認側表面が出光面6となる。
【0206】
図示しないが、カバープレート393と画像表示パネル391との間には、絶縁層、接着層などを設けることができる。また、色純度を高めるためのカラーフィルター層、内部反射防止のための円偏光板を設けても良い。
【0207】
可視光画素2a~2cから形成された可視光束5は、表示画像となって観察者に視認される。非可視光画素2eから放出された近赤外光束8は、検出対象に照射された後、受光部4で検出され、各種センシングが可能である。可視光画素2a~2c、および非可視光画素2eで、1つのピクセルユニットを形成してもよい。
【0208】
上述した本発明の画像表示装置について
図40を用いてその作用を説明する。
画像表示装置400は、可視光画素2a~2c、非可視光画素2e、受光部4を含む画像表示パネルを含んでいる。可視光画素2a~2cから放出された可視光束5は出光面6から出射し、表示画像として視認される。非可視光画素2eから放出された近赤外光8aは測定対象に照射され、測定対象から出光面6を経て、受光部4で検知されてセンサーとして機能する。
【0209】
画像表示装置400は、出光面6と非可視光画素2eとの間に、近赤外域に偏光選択性を有する近赤外偏光子402を含むことが好ましい。こうすることで、出光面6から出射する近赤外光8aが偏光となり、検出精度と取得情報量の向上を図ることができる。また、外部からの近赤外光ノイズ8cがノイズとして出光面6から入射するが、これらは通常、非偏光または、非可視光画素2eから照射される近赤外光8aとは異なる偏光状態にあることから、そのほとんどが近赤外偏光子402で吸収され、受光部4に到達しない。よって、ノイズを除去し、検出精度を向上することができる。
【0210】
また、出光面6では非可視光画素2eからの光の一部が反射して内部に向かう近赤外光束8dが生じ、受光部4での誤検出の原因となりうる。これを防ぐため、非可視光画素2eから出射して近赤外偏光子402を経て出光面6に入射する光束は、円偏光性とすることが好ましい。より具体的には、近赤外偏光子402をコレステリックミラーのような円偏光選択透過性とするか、近赤外偏光子402を近赤外域の直線偏光子とし、さらに近赤外偏光子402と出光面6との間に、近赤外偏光子402の透過軸に対して遅相軸が45°または135°となるように配置した、近赤外域で1/4波長板として作用する位相差板をさらに設けることができる。こうすることで、出光面6で反射した光束は、円偏光の回転方向が逆転し、受光部4に向かう光路上で近赤外偏光子402にさえぎられるので受光部4に到達できず、検出精度を確保することができる。
【0211】
画像表示装置400の測定対象としては任意のものを対象とすることができる。例えば使用者の手、指、手のひら、皮膚等の生体の一部分、静脈パターン、顔、眼球、唇、手足、およびそれらの動きやジェスチャー、または、特定のインターフェースデバイス、周囲の物体といったオブジェクト、あるいは、温度、湿度、パーティクル、および、気体の組成などを含む、周囲の環境の状態などが例示される。
【0212】
近赤外域で偏光選択性を有する近赤外偏光子としては、第1の実施形態で例示した各種の偏光子を用いることができる。また、それらの波長選択性についても、第1の実施形態で例示した種々の波長選択性を有したものを目的に応じて適用することができる。
近赤外偏光子は、可視域で偏光特性を有さないか、あるいは可視域で透過性であることが好ましい。後述するように、近赤外偏光子が、偏光選択性が異なる複数の領域をパターン状に含んだパターン偏光子である場合も、可視域で偏光特性を有さないか、あるいは可視域で透過性であることが好ましい。このようにすると、センシングのための近赤外光と、画像表示のための可視光とが干渉することなく、良好な表示性能と、精度の高い測定とを両立することができる。
【0213】
上述した画像表示装置は、例えばヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブルデバイス、および、スマートフォンやタブレット等のモバイルディスプレイデバイス、テレビ、照明等の据置型ディスプレイデバイスに適用することができる。
これらの好ましいそれぞれの態様について、以下具体例を以て説明する。
【0214】
本発明の第3の実施形態の画像表示装置を含む画像表示システムの好ましい一態様は、ヘッドマウントディスプレイであり、
図41に示すように、本発明の画像表示装置411、および、接眼レンズ412を備え、画像表示装置411により眼球419に近赤外光の照射と検出とを行うことによりアイトラッキングシステムとしたヘッドマウントディスプレイ410である。接眼レンズ412の作用は、第1の実施様態で説明したものと同様である。上述のアイトラッキングから得られた眼球位置および視線の情報は、投影される画像のレンダリング、および、表示画像上に埋め込まれたグラフィックインターフェースの操作に用いることができる。
【0215】
ヘッドマウントディスプレイにおける重量、サイズ、およびスペース上の課題と、検出精度および取得情報量の確保の課題とが相反することは第1の実施形態及び第2の実施形態にて述べた通りであるが、本実施形態においては、発光部と受光部の両方を視認光学系と統合することにより発光部および受光部の両方が眼球に対して正対した方向に配置できることから、スペース上の課題が解消されるだけでなく、光学設計上の自由度が大きく増加し、検出精度および取得情報量に優れたアイトラッキングシステムを構築することができる。
【0216】
図40で説明したように、非可視光画素2eから出射され出光面6で反射して直接、受光部4に入射する成分の除去、および、視認光学系内における迷光の除去を目的として、非可視光画素2eと画像表示装置411の出光面6との間に、近赤外偏光子414を設けることが好ましい。近赤外偏光子414は、コレステリックミラーであるか、非可視光画素2e側から順に近赤外域の直線偏光子、近赤外域の直線偏光子の透過軸方向と45°または135°の遅相軸を有する近赤外域で1/4波長板として作用する位相差板をこの順に含む積層体であるかのいずれかが好ましい。
【0217】
取得情報量を増加させる観点から、非可視光画素2eから出射する近赤外光8aの偏光の向きや状態をそれぞれ異なるものとして、眼球419に照射し、受光部4で検知するようにしてもよい。非可視光画素2eから出射する近赤外光8aの偏光の向きや状態をそれぞれ異なるものにするために、上述した近赤外偏光子414は、対応する画素ごとに異なる透過軸ないしは偏光選択性を有する領域をパターン状に配置したパターン偏光子とすることができる。
【0218】
また、接眼レンズとして、ハーフミラーおよび反射偏光子を用いたいわゆるパンケーキレンズを用いた場合を
図42で説明する。パンケーキレンズの構造、作用およびその利得については、第1の実施様態で述べたのと同様である。
【0219】
本発明の第3の実施形態の好ましい一態様として、さらに、反射偏光子421b、ハーフミラー421aを近赤外域において透過性とすることができる。反射偏光子421b、ハーフミラー421aの850nmにおける単板透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
この構成によれば、非可視光画素2eから眼球429に照射される近赤外光8a、および、眼球429で反射され受光部4に向けて入射する入射光8bは、パンケーキレンズ421の反射の作用を受けないため、パンケーキレンズの開口およびアイボックス等の制約を受けることなく、アイトラッキングシステムの光学設計の自由度をより高めることができる。このような利点は、大きな眼球運動および/または瞳孔の細かな動きも検知できる点で、本発明のセンサー付き画像表示には特に好ましい。
【0220】
パンケーキレンズに含まれるハーフミラー、反射偏光子、1/4波長板については、第1の実施様態で例示したものを同様に用いることができる。反射偏光子としてコレステリックミラーを用いたパンケーキレンズであることが、近赤外光束への偏光状態への影響が小さいため、より好ましい。
【0221】
画像表示装置423には、その出光面6と非可視光画素2eとの間に近赤外偏光子424を設ける。その理由および利得、好ましい構成については
図41における説明と同様である。
【0222】
画像表示装置423とパンケーキレンズ421との間には、パンケーキレンズ421に含まれる各光学要素が近赤外域に有する位相差および偏光状態へ影響を及ぼす因子によって近赤外光8aおよび入射光8bに及ぼされる光学的影響、特に偏光状態の変化を打ち消し、望ましい偏光状態で眼球への照射あるいは受光部4での検出を可能にすることを目的に、さらに第二の位相差板を設けても良い。
【0223】
本発明の第3の実施形態の画像表示装置の好ましい一態様を
図43に示す。
図43に示す画像表示装置は、画像表示装置431に含まれる画像表示パネル432の非可視光画素2eから出射される近赤外光8aを使用者の顔面に照射し、反射して得られた入射光8bを受光部4で検知する顔認証システムないしは表情認識システムを備える画像表示装置431である。
観察者は、複数の可視光画素2a~2cから形成される可視光の光束5で形成される画像を視聴しながら、上述の顔認証システムないしは表情認識システムを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理されて、デバイスあるいはサービスのセキュリティロックの解除、使用者個人の認識、検知された表情および/または顔面の状態に応じたサービスの提供あるいはデバイスの能動的制御に用いることができる。
【0224】
従来の表情センシングないしは顔認証システムは、モバイルディスプレイの辺縁部に備えられた撮像素子および光源を用いるものであった。しかし、昨今ではモバイルディスプレイは表示面全てを画像表示領域とし、いわゆる額縁部を最小限に抑えた画像表示パネルが意匠上求められており、撮像素子および光源を設けるスペースが極めて小さいか、全く無い場合がある。
一方で、使用者にとって高いサービスを提供するために、モバイルディスプレイで使用者の個人認証、健康状態、心理状態などを直接センシングし、表示する画像および音声で適切なサービスを提供する試みがなされている。使用者の個人認証、健康状態、心理状態のセンシングは多くの情報取得を必要とし、またその検出精度は高いものでなければならない。
しかし、本発明の画像表示装置により、複数の発光部と受光部とを表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、発光部と受光部とを必要な数だけ設けることができ、十分な情報量を瞬時に取得できる。
【0225】
画像表示装置431に含まれる画像表示パネルとしては、
図39に例示したOLED表示パネル、および、LEDアレイ、マイクロLEDパネル、ミニLEDパネル等の発光パネル、液晶セルを用いたディスプレイデバイスなどが例示される。
上述したように、これらの画像表示パネルは、画像を形成するため、または、画質を向上させることを目的として偏光子を含むことができる。
【0226】
画像表示パネルとして、OLED表示パネルおよびその表面に外光反射低減のための円偏光板を設けた構成について、近赤外光と可視光のノイズをそれぞれ低減するための構成を、
図44に示す概念図を用いて説明する。
【0227】
図44は、
図43の画像表示装置をより詳細に表したものである。画像表示装置440は出光面6から基板1に向かって、近赤外域で1/4波長板特性を示す位相差板444、位相差板444の遅相軸に対してその透過軸が45°または135°である近赤外偏光子445、可視光偏光子441、可視光偏光子441の透過軸に対して45°または135°に遅相軸を有する1/4波長板である位相差板442、および、可視光画素(図示しない)と非可視光画素2eと受光部4とを含む基板1をこの順に含んでいる。
【0228】
非可視光画素2eから出射した近赤外光8aは、近赤外偏光子445によって偏光化されて出光面6から出射し、測定対象へと照射され、受光部4にて検知される。上述したように、偏光を照射することで検出精度を向上させ、取得情報量を増加させることができる。図示しない別の非可視光画素からの光を同じ偏光、あるいは、異なる偏光にすることによりさらに検出精度と取得情報量の改善を図ることができる。近赤外偏光子は、面内で均一な透過軸方向を有するものであってもよいし、互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子であってもよい。
【0229】
出光面6からは外部からの近赤外光ノイズ8cが入射するが、近赤外光ノイズ8cは無偏光であるか、検出を意図した入射光8bとは異なる偏光状態であるため、近赤外偏光子445でその大部分が吸収されて受光部4まで到達しない。また、出光面6から出射せず、出光面6で反射する光束8hは、出光面6で反射される際に、位相差板444で変換された円偏光とは逆の円偏光となり、再度、位相差板444に入射して近赤外偏光子445の透過軸とは直交する直線偏光となるので、こちらも受光部4には到達しない。こうしてノイズを除去し、検出精度を確保することができる。
【0230】
可視光画素から出射した可視光(図示せず)、および、外光446に対する可視光偏光子441と1/4波長板である位相差板442の作用は、OLEDパネルの内部反射防止機構として知られたものであり、表示コントラストが向上する効果を有する。
可視光偏光子441と1/4波長板である位相差板442が近赤外透過性であり、かつ、近赤外偏光子9bが可視光透過性であれば、この配置において可視光と近赤外光はそれぞれ作用が干渉しあうことがなく、画像表示装置としての検出精度と取得情報量の向上、および、画像表示装置としてのコントラスト向上とを両立させることができる。
【0231】
本発明の第3の実施形態の画像表示装置の別の好ましい一態様を
図45に示す。本発明の画像表示装置454は、測定対象451、452に近赤外光8aを照射し、近赤外光8aを測定対象451、452に反射させて得られた入射光8bを、受光部4で検出するLIDARシステムまたは物体認識システムを備える画像表示装置である。使用者は、複数の画素2から形成される可視光の光束5で形成される画像を視聴しながら、上述のLIDARシステムまたは物体認識システムを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理され、表示される画像に取得情報がリアルタイムにマウントされた双方向コミュニケーション、測定対象に付与された不可視マーキング453を用いた様々なサービス提供が可能になる。
【0232】
上述した表情センシングないしは顔認証システムにおける課題と同様に、LIDARシステムまたは物体認識システムを備えたディスプレイデバイスは、その辺縁部に備えられた撮像素子と光源とを用いるものであった。これらの光源は素子1つあたりの指向性が狭くまた出力に限りがあるため、認識に必要な取得情報量を得るために、複数の光源をそれぞれ異なる位置に設ける必要があり、サイズおよび重量上ならびに意匠上の課題があった。
しかし、本発明の画像表示装置により、複数の発光部(非可視光画素)および受光部を表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、必要な出力を備えた発光部および受光部を必要な数だけ設けることができ、十分な情報量を瞬時に取得できる。
【0233】
画像表示装置としてのコントラスト向上と、発光部からの近赤外光束の偏光方向を様々にパターニングすることによる検出精度と取得情報量の向上とを両立させるための具体的な構成は、
図44に示した構成と同様のものが利用できる。特に、構造化光を出光面6から出射して検出精度と取得情報量を向上させる点で、近赤外偏光子として互いに異なる透過軸を有する領域がパターン状に分布したパターン偏光子を用いた構成とすることが好ましい。
【0234】
本発明の第3の実施形態の画像表示装置の一態様として、指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーなどの生体センシング機能を備えた画像表示装置の例を、
図46を用いて説明する。
【0235】
本発明の第3の実施形態の画像表示装置の好ましい一態様を
図46に示す。本発明の第3の実施形態の画像表示装置461は、使用者の手、指、手のひら、皮膚など体の一部に近赤外光8aを照射可能な非可視光画素2e、受光部4、可視光画素2a~2cを含み、非可視光画素2eからの近赤外光8aを使用者の体の一部に透過または反射させて得られた入射光8bを、近赤外偏光子4bを経て受光部4で検出する指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーを備える画像表示装置である。
観察者は、体の一部を画像表示装置に接触させるか近接させるかによって指紋センサー、静脈認証システム、血流センサーを利用することができ、得られた情報は図示しない演算回路で処理されて、デバイスあるいはサービスのセキュリティロックの解除、検知された血流状態および/または皮膚の状態に応じたサービスの提供あるいはデバイスの能動的制御に用いることができる。
【0236】
従来の生体センシング機能を有する画像表示装置は、装置の辺縁部に備えられた専用の検知素子を用いるものであった。しかし、測定対象が手、指、手のひら、または皮膚など一定以上の面積を必要とする体の一部分であることから、検知素子が必要とするスペースは大きなものとならざるを得ず、デバイス設計上、重量、スペースあるいは意匠上の課題が不可避であった。また、指紋認証は、セキュリティレベルをより高めることを目的に、複数の指を同時に認証するようなシステムが提案されているが、指紋認証のための専用の検知素子を複数個所に設けることは重量、スペースあるいは意匠上の課題が不可避である。
しかし、本発明の画像表示装置により、複数の受光部を表示画面と一体化して設けることができるので、サイズおよび意匠上の問題を引き起こすことなく、体の一部と対向または接触させるのに十分な面積を確保することができる。また。複数の接触部位を表示画面上の任意の部位に設けることが可能になる。
【0237】
画像表示装置461には、非可視光画素2eから放出された光を偏光にするための近赤外偏光子462を設けることができる。近赤外偏光子462を設けることにより、迷光によるノイズを低減し、検出精度を向上する効果が得られる。また、近赤外偏光子462を、偏光選択性が異なる複数の領域をパターン状に含んだパターン偏光子とすることで、複数の偏光を測定対象に照射することが可能になり、取得情報量を向上させることができる。
【0238】
以上、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態で述べてきた種々の例は、好ましい一態様としての例示である。また、各々の実施形態で例示した好ましい実施の態様を組み合わせることも可能である。
【0239】
[パターン偏光子]
上述した画像表示装置、およびそれを備えた画像表示システム、ヘッドマウントディスプレイの検出精度と取得情報量を向上させるために、パターン偏光子を適用することが好ましい。よって、本発明の別の実施形態は、近赤外域の光に対して偏光選択性を有する領域を少なくとも含み、偏光選択性が異なる複数の領域をパターン状に含む、パターン偏光子である。
【0240】
このようなパターン偏光子としては、一例として、偏光選択性の層を有し、その面内に、第一の偏光選択性を有する第一領域と、該第一の偏光選択性を有する領域に囲まれるように設けられた、偏光選択性を有しない第二領域とを含むパターン偏光子であるか、または、別の一例として、偏光選択性の層を有し、その面内に、少なくとも第一の偏光選択性を有する第一領域と、該第二の偏光選択性を有する第二領域とを含むパターン偏光子のいずれか1つから選ばれる構造を有することが好ましい。
【0241】
偏光選択性の層としては、例えば、近赤外域に吸収を有する二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させたもの、近赤外域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したもの、ヨウ素系偏光板をポリエン化したもの、ワイヤーグリットを応用したもの、コレステリック液晶あるいは誘電体多層膜を用いた反射型のもの、メタサーフェスなどの表面微細構造を利用したものなどが挙げられる。薄膜で生産性に優れ、パターニングの精度が良い点で、近赤外域に吸収を有する二色性染料を液晶性組成物中に溶解または分散して配向状態を形成し固定したものが好ましい。
【0242】
偏光選択性の層について、偏光選択性を有する領域における波長850nmにおける単板透過率は、50%未満であるものが好ましく、47%未満であることがより好ましい。また同様に、波長950nmおける単板透過率が55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましく、47%未満であることがより好ましい。
また、偏光度について測定可能な場合、P(850)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。また、P(950)は0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。P(850)およびP(950)の上限は理論上1.00であるが、実用上は1.00未満の範囲である。
【0243】
[液晶性組成物]
液晶性組成物としては、重合性液晶化合物を含み、重合性液晶化合物を配向状態にすることができ、かつ、加熱、冷却または重合反応によってその配向を固定できるものであれば制限なく用いることができる。本発明における具体的な一例としては、重合性液晶化合物と、近赤外域に吸収を有する二色性染料とを含み、必要に応じてその他の成分を含みうる。
【0244】
[重合性液晶化合物]
液晶性組成物が含有する重合性液晶化合物としては、高分子重合性液晶化合物および低分子重合性液晶化合物のいずれも用いることができ、配向度を高くできる理由から、高分子重合性液晶化合物を用いることが好ましい。
ここで、「高分子重合性液晶化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する重合性液晶化合物のことをいう。
また、「低分子重合性液晶化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない重合性液晶化合物のことをいう。
また、重合性液晶化合物として、高分子重合性液晶化合物および低分子重合性液晶化合物を併用してもよい。
低分子重合性液晶化合物としては、例えば国際公開第2019/235355号の[0042]~[0053]段落の記載を参考にできる。
【0245】
[二色性色素化合物]
本発明のパターニング偏光子に用いる、近赤外域に吸収を有する二色性色素化合物は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、無機物質(例えば量子ロッド)、などが挙げられ、従来公知の二色性色素化合物(二色性色素)を使用することができる。
【0246】
[その他の成分]
その他の成分として、溶媒、レベリング剤、重合開始剤、および、その他の添加剤を含むことができる。
溶媒としては液晶性化合物と二色性色素を溶解可能なものであればよく、また、製造適性の点では沸点が40~150℃の範囲のものが好ましく用いられる。具体的には、ケトン類(特にシクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル類(特にテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソラン)、および、アミド類(特に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン)が好ましい。
【0247】
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、o-アシルオキシム化合物(特開2016-27384明細書[0065])、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア-184、イルガキュア-907、イルガキュア-369、イルガキュア-651、イルガキュア-819、イルガキュア-OXE-01およびイルガキュア-OXE-02等が挙げられる。
【0248】
液晶性組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が更に向上したりハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性が向上したりする効果が見込まれる。
界面活性剤としては、二色性色素化合物と液晶性化合物を塗布表面側で水平にさせるものを使用してもよく、垂直にさせるものを使用してもよい。例えば、国際公開第2016/009648号の[0155]~[0170]段落に記載されている化合物、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)や、国際公開第2019/235355号の[0071]~[0097]段落に記載の化合物(垂直配向剤)を用いることができる。
【0249】
偏光選択性の層の厚さには制限はなく、必要な偏光特性を得られる厚さを、形成材料等に応じて、適宜、設定すればよい。
偏光選択性の層の厚さとして具体的には、0.1μm~5μmが好ましく、0.3μm~2.5μmがより好ましい。なお、後述するように、偏光選択性の層が段差(厚さ分布)を有する場合には、上述した厚さは、最も厚い場所における厚さである。
【0250】
[偏光選択性の層の形成方法]
上述した液晶組成物を用いた偏光選択性の層の形成方法には制限はなく、組成物を用いた公知の各種の成膜方法が利用可能である。
偏光選択性の層の形成方法としては、一例として、上述した液晶組成物を支持体上に塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布膜に含まれる液晶性化合物を配向させる工程と、をこの順に含む方法が挙げられる。
なお、液晶性化合物とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性色素化合物が液晶性を有している場合には、液晶性を有する二色性色素化合物も含む成分である。
【0251】
上述した、偏光選択性が異なる複数の領域を設ける方法としては、層の形成時に予め配向を制御する等の方法によって層中に形成することができる。また、層を形成する際には均一な配向としておき、層が形成された後、剥離や除去などの方法で形成してもよい。
【0252】
一例として、支持体として配向膜を有するものを用い、配向膜の配向規制力が異なる領域を複数パターン状に設けることで偏光選択性が異なる複数の領域を設けることができる。また、液晶性組成物中に光反応性の添加剤を添加しておき、配向状態を形成する際に偏光照射等によって配向を誘起して、領域ごとに異なる偏光選択性を発揮するように配向処理を行っても良い。
また別の一例として、支持体として配向膜を有するものを用い、配向膜の一部を予め除去ないしは変性させておくことにより領域ごとの剥離力に差を設けて、偏光選択性の層を剥離転写する際に、その一部の領域が偏光選択性の層から除去されるようにしても良い。
【0253】
上述した支持体、例えば、ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;などが挙げられる。
【0254】
上述した配向膜としては、例えば、光配向層、ラビング処理配向層等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、光配向層が好ましい。光配向層の例としては、国際公開2020/179864号公報の[0018]~[0078]段落に記載した例を用いることができる。
【0255】
上述したパターン偏光子は、本発明の画像表示装置に組み入れることによりその検出精度と取得情報量を向上させることができ、また、複数の偏光子を統合した機能を有するため、サイズ、重量、および意匠上の課題を解消できる。本発明のパターン偏光子を用いた画像表示装置、およびそれを含む画像表示システムおよびヘッドマウントディスプレイの説明は、本発明の好ましい実施様態として示した第一の実施形態、第二の実施形態、第三の実施形態の各項にて説明された通りである。
【符号の説明】
【0256】
1、1a、7、392 基板
1b カラーフィルタ基板
2 画素
2a~2d 画素(可視光画素)
2e 非可視光画素
3、121、261、322、391、432、472 画像表示パネル(発光パネル)
4 受光部
4b、9b、122、402、414、424、445、462、484、485 近赤外偏光子
4e 撮像素子
5 光束(可視光束)
5d 可視光束
6 出光面(光出射面)
8 非可視光(近赤外光束)
8a、8e 近赤外光
8b 入射光(検出光束)
8c 近赤外光ノイズ
8d 近赤外光束
8f、8g 直線偏光
8h 光束
9、9e 光源(近赤外光源、発光部)
10、20、30、70、91、111、120a、120b、120c、131、150、160、170、281、301、321、330、351、360、370、380、401、411、423、431、440、451、461 画像表示装置(ディスプレイデバイス)
40、60、390 OELDディスプレイデバイス
41 OLED部
41a 有機発光層
41b 上部電極
41c、262a、264a 下部電極
42 駆動部
42a、42b トランジスタアレイ
43 センサー部
47 層間絶縁膜
48 中間層
49、267、283、393 カバープレート
71 液晶層
72 カラーフィルター層
73 表面
74 導光部
74a 側面
79 バックライトユニット
90、100、110、130、300、310、410 ヘッドマウントディスプレイ
92、302、412 接眼レンズ
99、309、419、429、479、489、490 眼球
101、311、421 パンケーキレンズ
101a、112、126、132、311a、421a ハーフミラー
101b、311b、421b 反射偏光子
113 1/4波長板
114 反射型直線偏光子
115 偏光子
123 第二の位相差板
124、151、161、331、341、441 可視光偏光子
125 第一の位相差板
127、171、349 パターン偏光子
127a、171a 近赤外偏光子領域
127b、171b 可視光直線偏光子領域
133 円偏光板
134 円偏光選択性反射偏光子
119、139 眼
140、180、200、210、220、230、240、250、260、280、290、320、350、471、481 画像表示システム
152、162、172、332、342、442、444 位相差板
155、446 外光
165 外部可視光
171c 可視光透過部
181、182、213、352、353、451、452 測定対象
183、193、354、453 不可視マーキング
191 第一の測定対象
192 第二の測定対象
194 遮蔽領域
211 導光板
212 回折機能層
214 指
262b 可視EL発光層
262c、264c 透明電極
262d、264d 透明電極層
263a、263d トランジスタ層
264b 近赤外EL発光層
265 絶縁層
266a、266d 着色層
268 ピクセルユニット
282 OELDデバイス⇒OLEDパネル
284 第二の基板
285 回路層
288 スペーサー
349b、349e、349f 領域
473、483 導光要素
491 角膜
492 瞳孔
493 虹彩