(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161883
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】試験モニタ及び信号抽出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20221014BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G01R19/00 K
H04L25/02 V
G01R19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022064048
(22)【出願日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202121016402
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】17/714,842
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ケー・ティ・アヌラグ
(72)【発明者】
【氏名】ダルシャン・メタ
(72)【発明者】
【氏名】ピー・イー・ラメッシュ
(57)【要約】
【課題】二重通信ライン上の信号を効果的に分離する。
【解決手段】試験モニタ420は、差動伝送ラインを乱すことなく車載ネットワークの差動伝送ラインから波形を抽出し、抽出波形からデコードしたデータを記憶する。試験モニタ420は、第1ECU装置402と第2ECU装置404とを電気的に接続する差動伝送ラインに電気的に結合された電圧プローブ412から電圧波形を受信する第1入力部と、差動伝送ラインに電気的に結合された電流プローブ414から電流波形を受信する第2入力部とを有し、プロセッサ430は、電圧波形及び電流波形を受信し、電圧波形及び電流波形に基づいて第1ECU装置402の電圧及び第2ECU装置404の電圧を求める。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動伝送ラインを含むネットワーク用の試験モニタであって、
第1ECU装置と第2装置を電気的に接続する上記差動伝送ラインに電気的に結合された電圧プローブから電圧波形を受信するように構成された第1入力部と、
上記差動伝送ラインに電気的に結合された電流プローブから電流波形を受信するように構成された第2入力部と、
上記電圧波形及び上記電流波形を受けて、上記電圧波形及び上記電流波形に基づいて上記第1ECU装置の電圧及び上記第2装置の電圧を求めるように構成された1つ以上のプロセッサであって、上記第1ECU装置の上記電圧で表されるデータを第1記憶データとし、上記第2装置の上記電圧を第2記憶データとして記憶するように更に構成される上記1つ以上のプロセッサと、
上記第1記憶データ及び上記第2記憶データを記憶するメモリと
を具える試験モニタ。
【請求項2】
上記1つ以上のプロセッサが、上記差動伝送ラインのインピーダンスに基づいて上記第1ECU装置の電圧及び上記第2装置の電圧を求めるように更に構成される請求項1の試験モニタ。
【請求項3】
上記1つ以上のプロセッサが、
VTx=(VTxRx+ITxRx*Z)÷2
の式を用いて上記第1ECU装置の電圧を求めるように更に構成され、このとき、VTxは上記第1ECU装置の電圧であり、VTxRxは上記差動伝送ラインの上記電圧波形であり、ITxRxは上記差動伝送ラインの上記電流波形であり、Zは上記差動伝送ラインのインピーダンスである請求項1の試験モニタ。
【請求項4】
上記1つ以上のプロセッサが、
VRx=(VTxRx-ITxRx*Z)÷2
の式を用いて上記第1ECU装置の電圧を求めるように更に構成され、このとき、VRxは上記第2装置の電圧であり、VTxRxは上記差動伝送ラインの上記電圧波形であり、ITxRxは上記差動伝送ラインの上記電流波形であり、Zは上記差動伝送ラインのインピーダンスである請求項1の試験モニタ。
【請求項5】
上記1つ以上のプロセッサが、
VTx=(VTxRx+ITxRx*Z÷2)÷2
の式を用いて上記第1ECU装置の電圧を求めるように更に構成され、このとき、VTxは上記第1ECU装置の電圧であり、VTxRxは上記差動伝送ラインの上記電圧波形であり、ITxRxは上記差動伝送ラインの上記電流波形であり、Zは上記差動伝送ラインのインピーダンスである請求項1の試験モニタ。
【請求項6】
上記第1入力部及び上記第2入力部が第1チャンネルを構成し、上記試験モニタが、
第2ECUデバイスと第4デバイスを電気的に接続する第2差動伝送ラインに電気的に結合された第2電圧プローブから第2電圧波形を受信するように構成される第3入力部と、
上記第2差動伝送ラインに電気的に結合された第2電流プローブから第2電流波形を受信するように構成された第4入力部と
を有する第2チャンネルを更に具え、
上記1つ以上のプロセッサが、上記第2電圧波形及び上記電流波形を受けて、上記第2電圧波形及び上記第2電流波形に基づいて上記第2ECU装置の電圧及び上記第4装置の電圧を求めるように構成され、上記1つ以上のプロセッサが、上記第2ECU装置の上記電圧で表されるデータを第3記憶データとし、上記第4装置の上記電圧を第4記憶データとして記憶するように更に構成され、
上記メモリが、上記第3記憶データ及び上記第4記憶データを記憶する
請求項1の試験モニタ。
【請求項7】
上記第1ECU装置及び上記第2装置は、イーサネット車載ネットワークのノードであり、上記第2ECU装置及び上記第4装置は、上記イーサネット車載ネットワークに結合された非イーサネット車載ネットワークのノードであり、上記第1記憶データのタイム・スタンプを上記第3記憶データのタイム・スタンプと比較し、上記イーサネット車載ネットワークと上記非イーサネット車載ネットワークとの間の遅延時間を求める請求項1の試験モニタ。
【請求項8】
第1ECU装置と第2装置とを接続する伝送ライン上の第1ECU装置及び第2装置からの信号を抽出する方法であって、
上記伝送ラインに電気的に結合された電圧プローブから上記第1ECU装置からの信号及び上記第2装置からの信号を含む電圧波形を受信する処理と、
上記伝送ラインに電気的に結合された電流プローブから電流波形を受信する処理と、
上記電圧波形及び上記電流波形に基づいて上記電圧波形から上記第1ECU装置の信号及び上記上記第2装置の信号を分離する処理と、
上記電圧波形及び上記電流波形から上記第1ECU装置から送られてくるデータ及び上記第2装置から送られてくるデータをデコードする処理と、
デコードされたデータを第1記憶データとして記憶する処理と
を具える信号抽出方法。
【請求項9】
上記電圧波形から上記第1ECU装置の信号と上記第2装置の信号とを分離する処理が、上記差動伝送ラインのインピーダンスに基づいて上記第1ECU装置の信号と上記第2装置の信号とを分離する処理を有する請求項8の信号抽出方法。
【請求項10】
上記第1ECU装置の信号を分離する処理が、
VTx=(VTxRx+ITxRx*Z)÷2
の式を用いており、このとき、VTxは上記第1ECU装置の信号であり、VTxRxは上記電圧波形であり、ITxRxは上記電流波形であり、Zは上記伝送ラインのインピーダンスである請求項8の信号抽出方法。
【請求項11】
上記第1ECU装置の信号を分離する処理が、
VTx=(VTxRx+ITxRx*Z÷2)÷2
の式を用いており、このとき、VTxは上記第1ECU装置の信号であり、VTxRxは上記電圧波形であり、ITxRxは上記電流波形であり、Zは上記伝送ラインのインピーダンスである請求項8の信号抽出方法。
【請求項12】
上記伝送ラインが、車載ネットワークにおける同軸ケーブル上の全二重通信シリアル通信ラインである請求項8の信号抽出方法。
【請求項13】
第2ECU装置と第4装置との間の第2伝送ラインに電気的に結合された電圧プローブから上記第2ECU装置からの信号と上記第4装置からの信号とを含む第2電圧波形を受信する処理と、
上記第2伝送ラインに電気的に結合された第2電流プローブから第2電流波形を受信する処理と、
上記第2電圧波形及び上記第2電流波形に基づいて上記第2電圧波形から上記第2ECU装置の信号と上記第4装置の信号とを分離する処理と、
上記第2電圧波形及び上記第2電流波形から、上記第2ECU装置から送られてくるデータ及び第4装置から送られてくるデータをデコードする処理と、
デコードされたデータを第2記憶データとして記憶する処理と
を更に具える請求項12の信号抽出方法。
【請求項14】
上記第1ECU装置及び上記第2装置は、上記イーサネット車載ネットワークのノードであり、上記第2ECU装置及び上記第4装置は、上記イーサネット車載ネットワークに結合された非イーサネット車載ネットワークのノードであり、第1タイム・スタンプを第2タイム・スタンプと比較する処理の出力によって、上記イーサネット車載ネットワークと上記非イーサネット車載ネットワークとの間の遅延時間を求める請求項13の信号抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関連するシステム及び方法に関し、特に、通信リンクを乱すことなく、全二重シリアル通信信号上で伝送されるデータを記録及び分析するための方法及び装置に向けられる。
【背景技術】
【0002】
2つのデバイス間の全二重通信リンクは、多種多様な通信システムで採用されている。二重通信リンクを介して送信される信号はアナログであるが、波形レベルは、デジタル論理レベルの情報を伝える。100Base-T1、1000Base-T1などの全二重通信リンクを使用して通信する場合、各デバイスは、トレーニング・パターンを使用して、他方のデバイスと情報を交換し、これによって、エラーなく情報を受け取ることができるように、これらデバイスがリンク・パラメータを調整できる。
【0003】
動作時には、情報が誤って解釈されたり、失われないことが重要であるため、ビット・エラー・レートが低いことや冗長性がないことを確認するなど、ライン上の信号レベルを試験することが重要である。
【0004】
1つのデバイスのみが情報を送信している場合、オシロスコープその他の試験装置が、信号を監視(モニタ)し、情報をデコードして物理層の信号品質(signal integrity)を分析できる。しかし、二重通信リンクでは、両方のデバイスが情報を送信し、これら波形が、合成波形として1つに加算される。試験システムが、これら送信デバイスの少なくとも一方の知識を事前に持っていない限り、オシロスコープは、信号分離デバイスを利用することなく、取得した信号からの情報をデコードすることができないが、信号分離デバイスは、信号にノイズを挿入することがある。
【0005】
現代の自動車には、複数の別々で、時には異種のドメインを互いに結合する複雑な二重データ通信ネットワークが含まれている。ドメインの例には、複数の電子制御ユニット(electronic control unit:ECU)、パワートレイン(動力列)、ブレーキ、運転者支援システム、エアコン、エンターテイメントなどが含まれる。現在の自動車には、80個以上のECUが搭載されている。特に、より新しい自動運転車は、ステアリング、ブレーキ、歩行者観察、ナビゲーションなどのために存在するセンサの増加から、大量のデータを生成する。自動車が、相互接続されたデータ生成デバイスへの依存度を高めるにつれて、そのようなデータを運ぶこれらの車載ネットワークは、様々なドメイン間で共有するデータの増加に対応するために、より複雑になっている。これは、従来の車載ネットワークを新しいイーサネット車載ネットワークと組み合わせて下位互換性を提供すると同時に、現代のイーサネット車載ネットワークの高速性と容量を提供する場合には、特に当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-115124号公報
【特許文献2】特開2009-053032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ECUとそのネットワークの開発に特有の課題としては、特に、リンクの高品質の起動時間、通信準備完了状態、ハーネス障害検出などの品質を試験することの難しさがある。これらのECUと関連センサを取り付けたら、充分な動作境界(operational boundaries)を確保するために、試験と校正を行う必要がある。コンポーネント・インテグレータは、正しい起動と動作を保証するための診断ルーチンを開発する必要があり、これらの全てが、ネットワーク上で伝送される信号を妨害又は劣化させることなく、ネットワークを試験することに依存している。
【0008】
現在、上記の困難さのために、ネットワーク上で伝送されるデータを悪い方向へと変化させることなく、異なるドメインのデータ・ロギング及び分析機能を提供する試験システムはない。
【0009】
本開示技術の実施形態は、先行技術のこれら及び他の欠陥に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0011】
実施例1は、差動伝送ラインを含むネットワーク用の試験モニタであって、第1ECU装置と第2装置を電気的に接続する上記差動伝送ラインに電気的に結合された電圧プローブから電圧波形を受信するように構成された第1入力部と、上記差動伝送ラインに電気的に結合された電流プローブから電流波形を受信するように構成された第2入力部と、上記電圧波形及び上記電流波形を受けて、上記電圧波形及び上記電流波形に基づいて上記第1ECU装置の電圧及び上記第2装置の電圧を求めるように構成された1つ以上のプロセッサであって、上記第1ECU装置の上記電圧で表されるデータを第1記憶データとし、上記第2装置の上記電圧を第2記憶データとして記憶するように更に構成される上記1つ以上のプロセッサと、上記第1記憶データ及び上記第2記憶データを記憶するメモリとを具える。
【0012】
実施例2は、実施例1による試験モニタであり、上記1つ以上のプロセッサが、上記差動伝送ラインのインピーダンスに基づいて上記第1ECU装置の電圧及び上記第2装置の電圧を求めるように更に構成されている。
【0013】
実施例3は、上記実施例のいずれかによる試験モニタであって、上記1つ以上のプロセッサが、VTx=(VTxRx+ITxRx*Z)÷2の式を用いて上記第1ECU装置の電圧を求めるように更に構成され、このとき、VTxは上記第1ECU装置の電圧であり、VTxRxは上記差動伝送ラインの上記電圧波形であり、ITxRxは上記差動伝送ラインの上記電流波形であり、Zは上記差動伝送ラインのインピーダンスである。
【0014】
実施例4は、上記実施例のいずれかに記載の試験モニタであって、上記1つ以上のプロセッサが、VRx=(VTxRx-ITxRx*Z)÷2の式を用いて上記第1ECU装置の電圧を求めるように更に構成され、このとき、VRxは上記第2装置の電圧であり、VTxRxは上記差動伝送ラインの電圧波形であり、ITxRxは上記差動伝送ラインの電流波形であり、Zは上記差動伝送ラインのインピーダンスである。
【0015】
実施例5は、上記実施例のいずれかによる試験モニタであって、上記1つ以上のプロセッサが、VTx=(VTxRx+ITxRx*Z÷2)÷2の式を用いて上記第1ECU装置の電圧を求めるように更に構成され、このとき、VTxは上記第1ECU装置の電圧であり、VTxRxは上記差動伝送ラインの電圧波形であり、ITxRxは上記差動伝送ラインの電流波形であり、Zは上記差動伝送ラインのインピーダンスである。
【0016】
実施例6は、上記実施例のいずれかに記載の試験モニタであり、上記差動伝送ラインが、車載ネットワークにおける同軸ケーブル上の全二重シリアル通信ラインである。
【0017】
実施例7は、上記実施例のいずれかによる試験モニタであって、上記第1入力部及び上記第2入力部が第1チャンネルを構成し、上記試験モニタが、第2ECUデバイスと第4デバイスを電気的に接続する第2差動伝送ラインに電気的に結合された第2電圧プローブから第2電圧波形を受信するように構成される第3入力部と、上記第2差動伝送ラインに電気的に結合された第2電流プローブから第2電流波形を受信するように構成された第4入力部とを有する第2チャンネルを更に具え、上記1つ以上のプロセッサが、上記第2電圧波形及び上記電流波形を受けて、上記第2電圧波形及び上記第2電流波形に基づいて上記第2ECU装置の電圧及び上記第4装置の電圧を求めるように構成され、上記1つ以上のプロセッサが、上記第2ECU装置の上記電圧で表されるデータを第3記憶データとし、上記第4装置の上記電圧を第4記憶データとして記憶するように更に構成され、上記メモリが、上記第3記憶データ及び上記第4記憶データを記憶する。
【0018】
実施例8は、実施例7による試験モニタであって、上記第1記憶データが記憶されたとき及び上記第3記憶データが記憶されたときのしるしを記憶するタイミング生成部を更に備える。
【0019】
実施例9は、実施例8による試験モニタであり、上記1つ以上のプロセッサが、上記第1記憶データのタイム・スタンプを上記第3記憶データのタイム・スタンプと比較し、遅延時間を求めるように構成される。
【0020】
実施例10は、実施例8及び9による試験モニタであり、上記1つ以上のプロセッサが、上記第1記憶データと上記第3記憶データとを比較して、1つ以上のデータの不一致を求めるように構成される。
【0021】
実施例11は、上記実施例のいずれかによる試験モニタであって、上記第1記憶データ及び上記第2記憶データを上記試験モニタとは別の記憶場所に記憶ファイルとして送信する機能部を更に具える。
【0022】
実施例12は、上記実施例のいずれかによる試験モニタであって、上記試験モニタは、電気コネクタを介してネットワークに着脱可能に結合される物理的な装置の形で具現化される。
【0023】
実施例13は、実施例12による試験モニタであって、上記物理的な装置がFPGAを有する。
【0024】
実施例14は、上記実施例のいずれかによる試験モニタであって、上記第1ECU装置及び上記第2装置が、イーサネット車載ネットワークのノードである。
【0025】
実施例15は、実施例9による試験モニタであって、上記第1ECU装置及び上記第2装置は、イーサネット車載ネットワークのノードであり、上記第2ECU装置及び上記第4装置は、上記イーサネット車載ネットワークに結合された非イーサネット車載ネットワークのノードであり、上記第1記憶データのタイム・スタンプを上記第3記憶データのタイム・スタンプと比較し、上記イーサネット車載ネットワークと上記非イーサネット車載ネットワークとの間の遅延時間を求める。
【0026】
実施例16は、第1ECU装置と第2装置とを接続する伝送ライン上の第1ECU装置及び第2装置からの信号を抽出する方法であって、上記伝送ラインに電気的に結合された電圧プローブから上記第1ECU装置からの信号及び上記第2装置からの信号を含む電圧波形を受信する処理と、上記伝送ラインに電気的に結合された電流プローブから電流波形を受信する処理と、上記電圧波形及び上記電流波形に基づいて上記電圧波形から上記第1ECU装置の信号及び上記上記第2装置の信号を分離する処理と、上記電圧波形及び上記電流波形から上記第1ECU装置から送られてくるデータ及び上記第2装置から送られてくるデータをデコード(復号)する処理と、デコードされたデータを第1記憶データとして記憶する処理とを具える。
【0027】
実施例17は、実施例方法16による方法であって、上記電圧波形から上記第1ECU装置の信号と上記第2装置の信号とを分離する処理が、上記差動伝送ラインのインピーダンスに基づいて上記第1ECU装置の信号と上記第2装置の信号とを分離する処理を有する。
【0028】
実施例18は、上記実施例の方法のの1つによる方法であって、上記第1ECU装置の信号を分離する処理が、VTx=(VTxRx+ITxRx*Z)÷2の式を用いており、このとき、VTxは上記第1ECU装置の信号であり、VTxRxは上記電圧波形であり、ITxRxは上記電流波形であり、Zは上記伝送ラインのインピーダンスである。
【0029】
実施例19は、上記実施例の方法の1つによる方法であって、上記第1ECU装置の信号を分離する処理が、VTx=(VTxRx+ITxRx*Z÷2)÷2の式を用いており、このとき、VTxは上記第1ECU装置の信号であり、VTxRxは上記電圧波形であり、ITxRxは上記電流波形であり、Zは上記伝送ラインのインピーダンスである。
【0030】
実施例20は、上記実施例の方法の1つによる方法であって、上記伝送ラインが、車載ネットワークにおける同軸ケーブル上の全二重通信シリアル通信ラインである。
【0031】
実施例21は、実施例20による方法であって、第2ECU装置と第4装置との間の第2伝送ラインに電気的に結合された電圧プローブから上記第2ECU装置からの信号と上記第4装置からの信号とを含む第2電圧波形を受信する処理と、上記第2伝送ラインに電気的に結合された第2電流プローブから第2電流波形を受信する処理と、上記第2電圧波形及び上記第2電流波形に基づいて上記第2電圧波形から上記第2ECU装置の信号と上記第4装置の信号とを分離する処理と、上記第2電圧波形及び上記第2電流波形から上記第2ECU装置から送られてくるデータ及び第4装置から送られてくるデータをデコード(復号)する処理と、デコードされたデータを第2記憶データとして記憶する処理とを更に具える。
【0032】
実施例22は、実施例21による方法であって、上記第2記憶データを上記第1記憶データと比較する処理を更に具える。
【0033】
実施例23は、実施例21による方法であって、上記第1記憶データの第1タイム・スタンプ及び上記第2記憶データの第2タイム・スタンプを生成する処理と、上記第1タイム・スタンプを上記第2タイム・スタンプと比較する処理を更に具える。
【0034】
実施例24は、上記実施例の方法の1つによる方法であって、分離可能な電気コネクタ(separable electrical connector:分離型電気コネクタ)を介して上記電圧プローブを上記伝送ラインに接続する処理を更に具える。
【0035】
実施例25は、実施例方法24による方法であって、上記電圧プローブが、FPGAを含む物理的な装置に結合される。
【0036】
実施例26は、上記実施例の方法の1つによる方法であって、上記第1ECU装置及び上記第2装置がイーサネット車載ネットワークのノードである。
【0037】
実施例27は、実施例23による方法であって、上記第1ECU装置及び上記第2装置が、上記イーサネット車載ネットワークのノードであり、上記第2ECU装置及び上記第4装置が、上記イーサネット車載ネットワークに結合された非イーサネット車載ネットワークのノードであり、上記第1タイム・スタンプを上記第2タイム・スタンプと比較する処理の出力によって、上記イーサネット車載ネットワークと上記非イーサネット車載ネットワークとの間の遅延時間を求める。
【0038】
本開示技術の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照した実施形態の以下の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、従来の車載ネットワークを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態が動作できる現在及び将来のネットワークを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、通信リンクを介して他のECU装置に接続された第1ECU装置からの信号を測定する従来の試験測定システムの一例である。
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、ネットワークに影響を与えることなく車載ネットワークから信号を抽出し、データをデコードするための試験測定システムの一例である。
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、ネットワークに影響を与えることなく車載ネットワークから信号を抽出し、データをデコードするための試験測定システムの別の例である。
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの実施形態による通信リンクを乱すことなく装置から信号を抽出するための動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、2つのデバイス間の通信リンクから抽出された信号のプロット例を示している。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態による、通信ネットワークの複数のリンクを同時に監視するために本発明の実施形態をどのように使用できるかを示す例示的なネットワーク図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態による、現代のドメイン及びレガシー・ドメインを含むネットワークを監視するために本発明の実施形態をどのように使用できるかを示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態によるネットワーク遅延をどのように求めることができるかを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
車載データ・ネットワークには様々な形態がある。レガシー・ネットワークには、典型的には、CAN(Controller Area Network)が含まれ、これは、1つ以上の電子制御ユニット(ECU)間で通信するのに、2線式バスを通したメッセージ・ベースのプロトコルを使用する。
【0041】
図1は、中央ゲートウェイ102及び4つのドメインを含むCAN100の例を示す。
図1のCAN100内のドメインには、車体ドメイン110、パワートレイン・ドメイン120、シャーシ・ドメイン130及び運転者支援ドメイン140がある。上述のように、現代の自動車は、典型的には複数のドメインに分かれた80個以上のECUを含むことがあり、
図1は、説明を簡単にするため、4つのドメインのみを示しているが、現代のCANは、典型的には、提示したものよりも、はるかに多数のドメインを含む。
【0042】
中央ゲートウェイ102は、オプションである。古いCANにはゲートウェイがなく、代わりに全てのECUが単一のネットワークに接続されていた。このゲートウェイは、存在する場合、各ドメイン内のECUと通信するために、5つ以上の異なるタイプのインタフェースを管理しても良い。中央ゲートウェイ102は存在しても、しなくても構わないが、実施形態によっては、CAN100が、単一のネットワークとしても動作する、即ち、全てのECUが互いに結合されているため、各ECUは、他の全てのECUと通信することができた。これらECUは、ダイレクト・ポイント・ツー・ポイント、スモール・リング・ネットワーク、カスケード・ネットワークなど、様々な方法で互いに結合できる。
【0043】
CAN100上の全てのトラフィックは、ネットワーク上の全てのECUに送信されるので、試験デバイス150をバス上の通信ライン131の1つに接続するだけで、ネットワーク上のデータ・トラフィックを読み取ったり、見つけ出したり(sniff)することは比較的容易である。あるいは、試験デバイス150は、存在する場合、CAN100を通して送信されているデータ信号を観察するために、中央ゲートウェイ102に接続しても良い。
【0044】
古い車載ネットワークには、ECUを相互に接続する単線の通信ネットワークである1つ以上のLIN(Local Interconnect Network:ローカル相互接続ネットワーク)が含まれていた。上記CAN100の試験と同様に、LIN上の全てのトラフィックも、全てのECUノードに送信されるため、試験デバイスをLINに接続してLIN上のトラフィックを観察することは比較的簡単であった。
【0045】
図2は、より近代的な車載ネットワークを示すブロック図であり、これは、1つ以上のドメイン210、220、230、240が、高速イーサネット・バックボーン205に結合される。典型的には、ドメイン210、220、230、240の夫々は、それぞれのゲートウェイ212、222、232、242を有し、これは、それぞれのドメインとイーサネット・バックボーン205との間のトラフィックをルーティング(経路選択)する。
【0046】
イーサネット・バックボーン205の監視(monitoring)は、交換(switched)ネットワークを介してのみ可能であり、イーサネット・バックボーン205上に、試験デバイスを、もう1つ別のノードとして、スイッチを介して追加するため、イーサネット・バックボーン205上のトラフィックを監視することは、
図1のCAN100のネットワークを監視するほど容易ではない。イーサネット・バックボーン205に別のノードを追加すると、交換ネットワーク上の1つの送信先アドレスに送信されたメッセージは、この試験ノードには、やはり、送信されないというように、ネットワークの動作自体に影響する。これに代えて、イーサネット交換ネットワーク110上に試験ノードを挿入するには、ネットワーク・トラフィックのコピーを作成する(ネットワーク上のトラフィックを実質的にミラーリングする、つまり、2重にする)ように変更したネットワーク論理回路が必要となるであろうが、これは望ましくはない。
【0047】
ネットワーク上のイーサネット・トラフィックを監視するには、通常、
図3に示すようなシステムが使用される。
図3は、2つのECU装置302及び304間の二重通信信号を分離するための従来のシステム300を示す。イーサネット通信ラインのような差動伝送ラインには、ECU装置302及び304間で信号を送受信するための2本のライン306及び308がある。
【0048】
この従来のシステムでは、方向性カプラ(結合器)310は、伝送ライン306、308を遮断することによって、2つのECU302、304間の伝送ラインに挿入される。方向性カプラ310は、物理的に大きなものとなることがあり、方向性カプラ310を使用するのには、第1ECU302と第2ECU304との間に、十分なスペースがない場合がある。
【0049】
方向性カプラ310は、更なる分析のために、送信信号312及び314をオシロスコープなどの試験測定装置316に出力でき、受信信号318及び320を試験測定装置316に出力できる。しかし、方向性カプラ310によって生成される信号は、方向性カプラしだいで約12~20デシベル減衰され、これは、良好な信号対ノイズ比(SNR)で信号を正確に測定するのを困難にすることがある。更に、方向性カプラ310を伝送ライン306及び308に挿入すると、メッセージの送受信の間に遅延(latency:待ち時間)が生じるなど、通信信号にいくつかの望ましくない影響をもたらす可能性がある。ブレーキやステアリング・サブシステムなど、自動車の適切な動作にはタイムリーなメッセージの配信が不可欠であるため、遅延を最小限に抑えることは車載ネットワークで特に重要である。また、送信側からと受信側からの伝送ライン306及び308のプロービング・ポイント(即ち、方向性カプラ310の位置)との間に、長さ、寄生リアクタンスなどの特性の差異がある場合、送信信号を適切に分離しても、受信信号を正確に分離できない可能性があり、その逆も同様である。
図3に例示される従来のシステムの別の欠点は、方向性カプラ310の存在によって、もう1つ別の装置を追加し、これがネットワーク・トラフィックを反復するので、このシステムは、伝送ライン306及び308上で伝送される信号を含め、オリジナルのネットワークの動作を変更してしまうことである。
【0050】
以下でより詳細に説明するように、本開示技術の実施形態は、
図3のカプラ310のような方向性カプラを使用せずに、二重通信信号(duplex signal)を分離することを可能にする。更に言えば、詳細に説明するように、電圧プローブ及び電流プローブを使用することができ、試験測定装置は、これらプローブを介して受信した情報に基づいて信号を分離できる。更に、電圧及び電流プローブは、デコーダ及びデータ・ロガー装置に統合されてもよく、ベースとなるネットワーク上の信号に影響を与えることなく、また、方向性カプラ310を使用する必要なしに、ネットワーク上のトラフィックを分析するという問題に対する便利で完全な解決策を提供する。
【0051】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による試験測定システムの一例を示す。
図3と同様に、試験測定システムには、第1ECU装置402及び第2ECU装置404がある。第1ECU装置402と第2ECU装置404は、全二重差動通信信号を通信するための共通の差動伝送ライン上で通信する。この共通の差動伝送ラインは、限定するものではないが、例えば、100Base-T1、1000Base-T1などの全二重シリアル通信リンクであっても良い。このタイプのラインは、例えば、車載イーサネットでよく使用され、これは、単一のツイスト・ペアのワイヤ又は同軸ワイヤを通して、2つ以上のレベルのようなマルチレベル変調方式で動作する二重通信シグナリングを使用する。なお、本発明の実施形態は、車載ネットワークを用いて説明されるが、他の実施形態は、産業用ネットワークなどの任意のタイプのデータ・ネットワーク上で動作可能である。
【0052】
共通差動伝送ラインには、第1ライン406と第2ライン408がある。伝送ライン上の電圧波形と電流波形のそれぞれは、重ね合わせた波形として現れる。即ち、第1ECU装置402と第2ECU装置404とから同時に信号が送られる。これを第1ECU装置402の視点から見ると、第1ECU装置402の出力信号は送信信号であり、第2ECU装置404からの出力信号は受信信号である。説明を簡単にするために、第1ECU装置402の出力信号は、送信信号又はTx信号と見なし、第2ECU装置404の出力信号は、受信信号又はRx信号と見なすことにする。しかしながら、当業者ならばわかるように、第1ECU装置402及び第2ECU装置404の両方が、差動信号ライン上で同時に信号を送受信している。
【0053】
図4のシステムでは、差動電圧プローブ412が、差動信号ライン406及び408に接続されている。電流プローブ414は、これら差動信号ラインの一方に結合され、好ましくは電圧プローブの正極端子に近い。
図4において、電流プローブ414は、伝送ライン406に結合され、これは電圧プローブ412の正極(positive)プローブに接続されている。
図5では、電流プローブ416が、伝送ライン408に結合されており、電圧プローブ412に対するラインの極性が逆転している。
【0054】
電流プローブ414及び電圧プローブ412の出力信号は、試験モニタ420に送られ、これは、以下に説明するように、データ・ロギング及びデータ分析機能も有していても良い。従来の試験装置では、伝送ライン406及び408をプロービングして得られた信号は、重なり合う信号(重畳信号)として表示される。しかし、本開示技術の実施形態には、送信信号と受信信号とを分離できる1つ以上のプロセッサ430や他のハードウェアを有する試験モニタ420がある。電圧プローブ412と、電流プローブ414及び416は、標準の又は非標準の分離可能な電気コネクタを介して差動信号ラインに結合することができ、これにより、試験モニタ420をネットワークと容易に接続又は切断できる。また、差動信号ラインは、その実装に応じて、ツイストペア線や同軸線、あるいはその他によって具現化されても良い。
【0055】
説明を簡単にするために、第1ECU装置402からの信号はTxと呼び、第2ECU装置404からの信号はRxと呼ぶことにする。個別のネットワークに応じて、信号Tx及びRxの夫々は、最大1Vの高レベル及び最大-1Vの低レベルを有しても良い。ただし、Tx及びRx信号のレベルは、ネットワークの変調レベルの数に基づいている。差動伝送ラインは、Zと呼ぶ差動終端インピーダンスを有するとしても良い。この値は、実際に使用される差動伝送ラインの差動終端インピーダンスに基づいて設定されても良い。以下の例では、この例では、Zが100Ωに設定される。しかし、当業者であればわかるように、この値は、使用される差動終端ラインの実際の差動終端インピーダンスに基づいて、試験モニタ420において、ユーザによって設定されても良い。
【0056】
Tx信号とRx信号の両方がハイ(High)である場合、その時点での電圧プローブ412によって測定される電圧は、約2Vになる。その瞬間、Tx信号の電流は、第1ECU装置402から第2ECU装置404に流れる一方、Rx信号の電流は第2ECU装置404から第1ECU装置402へ流れる。TxとRxの電流の方向は互いに逆であるため、電流プローブ414で測定される重畳電流は、ゼロ・アンペアとなる。
【0057】
Tx及びRx信号の両方がロー(Low)である場合、電圧プローブ412は、-2Vの電圧を読み取るが、その間、電流は依然として互いに逆であるため、電流は依然として0アンペアである。しかし、Tx信号がハイで、Rx信号がローの場合、電圧プローブ412で測定した重畳電圧は0Vであり、この例では、TxノードからRxノードに電流が流れるため、重畳電流は20mAであり、これは数式(1)で示される。
【0058】
(1V/100Ω)-(-1V/100Ω)=20mA (1)
【0059】
代わりに、Tx信号がロー、Rx信号がハイである場合、電圧プローブ412によって測定される重畳電圧は再び0Vであり、RxノードからTxノードに電流が流れるので、重畳電流は-20mAである。説明の都合上、第1ECU装置402から第2ECU装置404に流れる電流は、正極の電流と定義する。
【0060】
電圧プローブ412によってプロービングされた電圧波形は、重畳電圧波形VTxRxと呼び、電流プローブ414によってプロービングされた電流波形は、重畳電流波形ITxRxと呼び、差動終端インピーダンスは、Zと呼ぶことにする。Tx信号の電圧は、VTxと呼び、電流はITxと呼ぶことにする。Rx信号の電圧は、VRxと呼び、電流はIRxと呼ぶことにする。
【0061】
重畳電圧波形VTxRxからTx電圧信号を抽出するには、重畳電圧波形VTxRxからRx電圧波形VRxを減算する必要がある。しかし、Rx電圧波形VRxは、上述したように、伝送ライン406及び408にTx及びRx信号が重畳されるため、プロービングによって直接得ることができない。
【0062】
しかし、プローブ電流ITxRxとインピーダンスZを乗算したものは、VTxからVRxを引いた値に等しい。従って、重畳電流波形ITxRxにZを掛けて、重畳電圧波形VTxRxに加算すると、次のようになる。
【0063】
VTxRx+ITxRx*Z=(VTx+VRx)+(VTx-VRx)=2VTx (2)
【0064】
よって、VTxは、次式に等しくなる。
【0065】
VTx=(VTxRx+ITxRx*Z)÷2 (3)
【0066】
VRxの場合、重畳電圧波形VTxRxから、重畳電流波形ITxRxにZを掛けたものを差し引くと、次のようになる。
【0067】
VTxRx-ITxRx*Z=(VTx+VRx)-(VTx-VRx)=2VRx (4)
【0068】
よって、VRxは、次式に等しくなる。
【0069】
VRx=(VTxRx-ITxRx*Z)÷2 (5)
【0070】
これらの式を用いて、本開示の一実施形態では、試験モニタ420の1つ以上のプロセッサ430が、第1入力部において、電圧プローブ412から重畳電圧波形V
TxRxを受信でき、第2入力部で電流プローブ414から重畳電流波形I
TxRxを受信できる。
図4では、第1及び第2入力部の夫々が、CH1プローブ・フロント・エンド421として図示されている。他のフロント・エンド、具体的には、CH2プローブ・フロント・エンド422及びCH3プローブ・フロント・エンド423は、以下で説明するように、他のチャンネル上の電圧及び電流プローブに結合された信号を受信するために、試験モニタ420によって使用されても良い。ただし、
図4の場合では、試験モニタ420は、1つのチャンネル(これがCH1である)にのみ結合される。試験モニタ420は、任意の数のフロント・エンドを有していて良く、同時に任意の数のチャンネルを監視できる。
【0071】
差動終端インピーダンスZを使用して、1つ以上のプロセッサ430は、Tx信号の電圧波形VTxと、Rx信号の電圧波形VRxを、重畳電圧波形VTxRxから分離できる。差動終端インピーダンスZは、ユーザ入力部を通して設定されても良いし、試験モニタ420に記憶されていても良い。
【0072】
第1ECU装置402からプロービング・ポイントまでと、第2ECU装置404からプロービング・ポイントまでの伝送ラインに沿った距離に差がある場合、例えば、プロービング・ポイントが第1ECU装置402の方に近い場合であって、もし第2ECU装置404からプロービング・ポイントの伝送ライン406及び408に寄生リアクタンスがある場合(コネクタや長い伝送ラインなどが原因で)には、第1ECU装置402からの電圧波形と電流波形との間に位相差がない場合でも、第2ECU装置404からの電圧波形と電流波形との間に位相差があるかもしれない。
【0073】
例えば、コネクタの寄生インダクタンスは、電流位相遅延を引き起こす可能性がある。この結果、数式(5)から求めたRx電圧波形VRxが、正確でないおそれがある。このような状況では、1つ以上のプロセッサ430は、デジタル信号処理を使用して、寄生リアクタンスによる位相差を補正でき、そして、位相補正されたRx波形を上記の波形演算処理に使用しても良く、これにより、Rx信号をより正確に抽出できる。
【0074】
即ち、上述した実施形態を用いて、測定された重畳電流波形ITxRx及び重畳電圧波形VTxRxを用いてTx信号を抽出してもよく、一方、測定された重畳電圧波形VTxRx及び遅延補正電流波形ITxRxを用いてRx信号を抽出しても良い。
【0075】
いくつかの実施形態では、
図5を参照すると、電流プローブ416を伝送ライン406及び408の両方に結合して、両方のライン406及び408上の電流を求めても良い。この電流プローブ416によって得られる差動電流波形は、コモン・モード電流ノイズを除去できる。いくつかの実施形態では、電流プローブ416は、1つのプローブがライン406に結合され、他方の電流プローブがライン408に結合された2つの異なる電流プローブであっても良い。
【0076】
電流プローブ416が、両方のライン406及び408に結合される場合、測定された重畳電流ITxRxは、2倍の振幅を有するであろう。これを考慮すると、上記の数式(3)と数式(5)は、次のように修正できる。
【0077】
VTx=(VTxRx+ITxRx*Z÷2)÷2 (6)
【0078】
VRx=(VTxRx-ITxRx*Z÷2)÷2 (7)
【0079】
図6は、いくつかの実施形態による重畳波形V
TxRxを分離する動作例を示す。最初に、工程600において、電流プローブと電圧プローブとの間でデスキュー処理を行っても良く、これによって、試験モニタ420の電流測定システム及び電圧測定システム間の位相校正が可能になる。
【0080】
電流及び電圧プローブが校正されると、次いで、工程602において、全二重通信信号は、電流及び電圧プロセスを用いて同時にプロービングされ、試験モニタ420において、重畳電流波形ITxRx及び重畳電圧波形VTxRxを取得する。
【0081】
いくつかの実施形態では、電圧プローブと電流プローブとをマッチングさせるために、適応フィルタが使用される。これにより、正しい信号分離が可能となり、また、適応フィルタは、現在使用されている電圧プローブ及び電流プローブのモデルに基づいて適応処理されても良い。
【0082】
試験モニタは、次に、工程604において、上述したように、重畳電流波形ITxRx及び重畳電圧波形VTxRxに基づいて、Tx波形を抽出する。例えば、試験モニタ420は、上述した数式(3)又は(6)のいずれかを使用して、Tx波形を求めても良い。試験モニタ420は、1つ以上のプロセッサ430を利用することによって又は試験モニタ420内に設けた他のハードウェアを使用することによって、これを行うことができる。
【0083】
工程606において、試験モニタ420は、次いで、1つ以上のプロセッサ430や他のハードウェアによって、上述した数式(4)又は(7)のいずれかを用いて、Rx波形を抽出できる。
【0084】
抽出されたTx波形及びRx波形は、メモリに保存されても良いし、ディスプレイ上でユーザに表示されても良いし、又は、信号品質やデコード解析などのために更に分析されても良い。
【0085】
いくつかの実施形態では、オプションの工程608を、工程606においてRx波形を抽出する前に実行しても良い。工程608において、試験モニタは、1つ以上のプロセッサ430や他のハードウェアのいずれかによって、上述したように、重畳電流波形ITxRxの位相を補償しても良い。即ち、重畳電流波形ITxRxの位相は、第2ECU装置404からプロービング・ポイントまでの伝送ライン上の寄生リアクタンスに基づいて補正できる。代替の実施形態では、重畳電流波形ITxRxを補正するのではなく、代わりに、重畳電圧波形VTxRxを、伝送ラインの寄生リアクタンスに基づいて補正しても良い。
【0086】
また、
図6は説明を簡単にするために示しており、このようにTx波形とRx波形の抽出を一直線に行う必要はない。更に言えば、Tx波形とRx波形を並行して抽出して処理時間を短縮しても良いし、あるいは、Tx波形の前にRx波形を抽出しても良い。
【0087】
図7は、波形の異なる多数のプロットを示している。プロット700は、重畳電圧波形V
TxRxを示し、プロット702は、重畳電流波形I
TxRxを示す。プロット704は、上述した実施形態を用いて、プロット700の重畳電圧波形から抽出されたV
Tx波形の一例を示す。プロット706は、プロット700の重畳電圧波形から抽出されたV
Rx波形の一例を示す。プロット704及び706のこれらの波形は、その後、アイ・ダイアグラムの生成などの更なる処理に使用されても良い。
【0088】
図4及び
図5を再度参照すると、試験モニタ420には、上述したように、1つ以上のフロント・エンド421、422、423がある。任意の数のフロント・エンドが試験モニタ420内に存在しても良い。電圧プローブ412及び電流プローブ414又は416がCH1プローブ・フロント・エンド421などのフロント・エンドに信号を送信すると、信号は、信号を増幅するプリアンプ424に供給される。1つ以上のプロセッサ430が、伝送ライン406、408から収集されたデータ信号を特定(determine)した後、データ信号は、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)426を用いてアナログ信号からデジタル・データに変換される。電圧データ及び電流データは、1つ以上のプロセッサ及び制御ロジック430によって分離されても良い。
【0089】
デジタル・データの内容は、ECU402、404間で送信される伝送ライン406、408から収集されたデータを反映する。データがイーサネット・パケット由来のものである場合、1つ以上のイーサネット・パケットに含まれるペイロードは、イーサネット・パケットのヘッダ又は他の情報から分離されても良い。ペイロード情報は、アプリケーション・ベースの情報を記憶している。
【0090】
次に、関連するデータがメモリ428に収集され、コピーがデータ・ストレージ432に記憶される。このプロセスは、ネットワークが動作しているときに、定期的に繰り返され、その結果、伝送ライン406及び408の別々のノードから収集されたデータが、分離され、デコード(復号)され、最終的にデータ・ストレージ432に記憶されて、伝送ライン406及び408を横断するいずれのデータ伝送にも悪影響を与えない方法で、ECU402及び404間で送信されるデータの完全な記録が記憶される。
【0091】
収集されたデータは、データ・ネットワーク全体に渡って、データがどのように同期されるかを見るために分析されても良い。更に、本発明の実施形態に従って収集及び分析されたデータは、車載ネットワークのウェイクアップ及びシャットダウン時間を測定するために使用されても良い。データは、好きなだけ、データ・ストレージ432に収集されても良い。更に、1つ以上のプロセッサ又は他の制御ロジック430は、以下に説明するように、データについての分析を実行するために使用されても良い。データは、また、画面上でユーザに提示され、試験モニタ420から出力されるプロトコル・ウィンドウとして表示されても良い。いくつかの実施形態では、試験モニタ420は、動作時間当たり、数ギガ・バイト、数テラ・バイト又はそれ以上を収集して記憶する。
【0092】
いくつかの実施形態では、試験モニタ420は、プログラムした又はコンフィギュレーションしたFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を使用して形成しても良い。他の実施形態では、試験モニタ420は、1つ以上のプログラムされた汎用プロセッサ又は専用プロセッサで具現化されても良い。試験モニタ420は、1つ以上のプロセッサ430及び制御ロジックを動作させて、本願に記載される所望の機能を実行するための処理工程を記憶するための様々なメモリ又はメモリ機能を有していても良い。
【0093】
上記の説明は、単一のデータ・チャンネルから、即ち、2つのECU間の単一の通信チャンネルのデータを監視し、データを生成する試験モニタ420に関して述べているが、本発明の実施形態は、任意の数のチャンネルのデータを監視及び収集するために使用されても良い。
図8は、4つの試験チャンネルに結合された試験モニタ820を示し、これは、上述した試験モニタ420の一実施形態であっても良い。
【0094】
具体的には、4つのECU800、802、804及び806は、モダン(最新式)車載情報ネットワークにおける車載イーサネット・スイッチのようなスイッチ又はゲートウェイ810に結合される。試験モニタ810は、この例では4つの別々のチャンネルをサンプリングするためのハードウェアを含み、ECU800、802、804、806の夫々と、スイッチ810との間の通信ラインの夫々と結合される。具体的には、サンプリング・ライン対801には、上述したように、第1ECU800とスイッチ810との間の、電圧をサンプリングする1ラインと、電流をサンプリングする1ラインとがある。サンプリング・ライン対803、805及び807は、スイッチ810と、ECU802、804及び806との間のデータを監視するために、同様にして夫々結合される。
【0095】
動作中、試験モニタ820の4つのデータ・チャンネルの夫々は、それぞれにデータ・ストリームを生成し、そのデータをデータ・ストアに収集する。試験モニタ820は、チャンネルごとに別個のデータ・ストアを有しても良いし、又は、試験モニタ820は、チャンネル識別子をデータに追加することによって、どのデータがどのチャンネルから来たかを識別しても良い。また、試験モニタ820は、データの各セットが試験モニタ820によって収集されたときに、タイム・スタンプを付加しても良い。
【0096】
試験モニタ820は、あるチャンネルから収集されたデータを別のチャンネルで収集されたデータと比較しても良い。車載ネットワークでは、多くの場合、遅延後にデータが転送されたり、2つ以上のチャンネルに現れたりする。例えば、最近の車では、ギアをバックに入れると、助手席サイド・ミラーが自動的に下向きに傾き、ドライバー(運転者)がバック(後退)するのを支援することがある。このような状況では、試験モニタ820は、記憶されたデータを分析することによって、車両のギアがバックに入っているしるしが、パワートレインのECUからミラー動作を制御するシャーシのECUに送信又は転送されると判断できても良い。次いで、シャーシのECUは、それに応じて、ミラー・ユニット内のサーボ・モータを下向きに動かすデータ信号を生成しても良い。本発明の実施形態を用いて、試験モニタ820は、接続された様々なECU間の1つ以上のチャンネル上で送信されるデータを分析し、このデータのタイム・スタンプを比較することによって、パワートレインECUとミラーが動作する間の遅延時間を測定しても良い。
【0097】
図9は、別の車載情報ネットワークの例を示しており、モダン(最新式)ドメイン902内にはイーサネット・スイッチ910があり、上述のCAN又はLINのようなレガシー・ドメイン930が結合されている。この実施形態では、モダン・ドメイン902のイーサネット・スイッチ910には、3つのMAC(Medium Access Control Layers)912、914、916があり、それぞれがPHYを含み、PHYは、各MACとその関連するECUとの間の物理的ハードウェア接続部を表す。この例では、MAC912が第1ECU913に結合され、MAC914は第2ECU915に結合され、MAC916は第3ECU917に結合される。上述したように、
図4の試験モニタ420の一例であっても良い試験モニタ920は、各MACと各ECUとの間の通信ラインの夫々に結合され、こうしたライン上で通信されるデータを、試験モニタ920内で、別々のデータ入力ストリームとして収集して記憶する。上述のように、モダン・ドメイン902は、更に、それ自身のPHYのセットを通して、レガシー・ドメイン930に接続される。モダン・ドメイン902間の通信は、同様に、試験モニタ920によって、監視及び記憶される。
【0098】
動作中、メッセージは、イーサネット・スイッチ910を介して、別のドメイン・コントローラと任意のECUとの間でやりとりされる。試験モニタ920は、例えば、第1ECU913によって生成されたデータを、第1ECU913がイーサネット・スイッチ910にデータを送信するときに捕捉する。次いで、試験モニタ920は、モダン・ドメイン902とレガシー・ドメイン930との間のデータ・トラフィックを観察する。もしモダン・ドメイン902が、同一又は類似のデータを、第1ECUからレガシー・ドメイン930へと送信する場合、試験モニタ920は、そのペイロード・データを比較することによって、そのデータ転送を検出しても良い。更に、上述のようにデータを分析することによって、試験モニタ920は、第1ECU913がデータをモダン・ドメイン902に送信した時点と、レガシー・ドメイン930がその同じデータを受信した時点との間の遅延を計算できる。更に、様々なドメイン間で生成されたデータの全ては、試験モニタ920内に記憶されるか、又は、データ分析のために別の装置に出力されても良い。
【0099】
試験モニタ920によって収集されたデータは、イーサネット・パケットのペイロード中にあるようなペイロード・データを含んでも良いし、送信元アドレス、送信先アドレスなどの任意のタイプの情報を含んでもよい。ペイロード・データは、様々なドメイン間であまり変化しない傾向にあるため、ペイロード・データが車載ネットワークを通って伝播するときに、ペイロード・データを車載ネットワーク上で追跡することは、特に価値が高い。次いで、試験モニタ920は、ある1つのチャンネルで取得されたペイロード・データを、他のチャンネルの中の1つで取得されたペイロード・データと比較して、ペイロード・データがネットワークを通じて、車載ネットワークの、ある1つのECUから他の1つ以上のECUへ、又は、他のコンポーネント間で、伝搬されているかどうかを判断できる。
【0100】
図10は、逆に、CANによって生成され、イーサネット・ネットワークに伝播されるメッセージでも、同様のコンセプトが機能することを示す。例えば、
図10は、多数のCANを示しており、第0のCAN950、第1のCAN952、第2のCAN954及び第NのCAN956の夫々は、それぞれに対応するCANコントローラ951、953、955、957に結合されている。車載ネットワークは、省略記号で示すように、任意の数のCANドメインを含むことができる。CAN950、952、954、956のいずれかから生成されたメッセージは、レシーバ960によって受信され、データとしてメモリ962に記憶され、ネットワーク・スタック964に置かれ、その後、イーサネットMAC966に送信され、その関係するPHYから、データとしてイーサネット・ネットワークを通して送信される。いくつかの実施形態では、レシーバ960、メモリ962及びネットワーク・スタック964は、全て、イーサネット・ネットワーク・スイッチ又はイーサネット・ネットワーク・ドメインの構成要素であっても良い。
【0101】
フレームは、CAN(例えば、第NのCAN956)によって生成された後、CANコントローラ957に送られ、これは、いくつかの実施形態では、ゲートウェイ・プロセッサ(図示せず)によって生成される割り込みを生成する。次いで、プロセッサは、メモリCANコントローラ957からフレームを読み取り、それをレシーバ960で受信し、メモリ962に記憶する。第NのCANからの信号を処理する準備ができると、メモリ962からのデータ(データは、この時、メモリのキュー(queue:処理待ち行列)中にあっても良い)は、ソフトウェア・ネットワーク・スタック964に渡される。これにより、1つ以上のデータ・パケットが生成され、これは、イーサネットMAC966で表されるイーサネット・コントローラの送信キューに渡される。その完全な処理には、ある程度の時間がかかり、これは、CANからイーサネットまでの遅延時間(Latency:レイテンシ、反応時間、待ち時間)と呼ばれる。第NのCAN956とCANコントローラ957との間のデータ・チャンネルを監視すると共に、イーサネットMAC966で生成されるトラフィックを監視することによって、本発明の実施形態は、監視対象トラフィック及びそれら夫々タイム・スタンプを比較する。そして、タイム・スタンプを比較することによって、試験モニタ920は、CAN遅延時間(レイテンシ)を生成して出力できる。
【0102】
本発明の実施形態は、モダン・イーサネット・ネットワーク又はレガシーCAN若しくはLINネットワークのいずれでも、任意の車載ネットワーク内の任意のECU又はドメインからのデータ収集を可能にする。上述のように、複数のチャンネルのデータを収集しても良く、そして、試験モニタ920によって分析しても良いし、又は、後でのデータ分析のために試験モニタ920からダウンロードしても良い。
【0103】
試験モニタ920は、車載ネットワークなどのネットワークを試験又はデバッグする際に、多くの機能を提供するために使用されても良い。上述のように、試験モニタ920は、単なるデータ・ロガーとして動作しても良く、試験モニタ920によって監視されているネットワークの任意の部分で運ばれる全てのデータをログに記録する。試験モニタ920には、複数のチャンネルがあり、そのため、ネットワークの複数の部分をサンプリングし、リアルタイムで記憶しても良い。複数の試験モニタ920を使用すれば、同時にモニタできるチャンネルの数が増加する。記憶されたデータのペイロード又は他の情報を互いに比較することによって、試験モニタ920は、ECUにおいてメッセージ又は信号が生成されてから、それがネットワーク内の他の場所に伝播されるときの遅延のようなネットワークの遅延を求めることができる。本発明の実施形態は、ネットワークにおけるCAN遅延及び他の遅延を求める簡潔な方法を提供する。また、アンチロック・ブレーキが開始されたことを示す信号のような特定の信号がECUから送信されたときに、信号を生成するための特定の試験又はトリガが試験モニタ920に記憶されても良い。
【0104】
異種ドメイン間のデータ品質を確保するために、試験モニタによって収集されたデータを分析することによって、データの値を分析しても良い。このデータは、リアルタイムで分析することも、後で分析することもできる。記憶されたデータは、分析のために別のデバイス又はネットワークに転送しても良い。本発明の実施形態を用いれば、例えば、特定のECUがデータ・メッセージを生成し、そのメッセージがネットワーク上で動作する他のハードウェア又はソフトウェアによって修正又は破損されたかどうかを判断及びデバッグできる。試験モニタ420によって収集されたデータは、他のデバイスに収集及び転送されても良いし、又は、情報クラウドに収集及び転送されて、インターネット又はプライベート・ネットワークでアクセス可能なネットワークのような仮想ネットワーク上に記憶されても良い。加えて、データは、1つ以上のプロトコル・ウィンドウを通して、リアルタイムで又は遅れてのいずれかでユーザに提示されても良い。膨大な量のデータを収集できることにより、本発明の実施形態は、まれにしか起こらないデータのイベントを捕捉できる。そして、収集された全てのデータを記憶することによって、データ・イベントは、後の時点又は後日、研究又は分析されても良い。
【0105】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0106】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0107】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0108】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0109】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0110】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0111】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0112】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0113】
402 第1ECU装置
404 第2ECU装置
406 第1ライン
408 第2ライン
412 差動電圧プローブ
414 電流プローブ
416 電流プローブ
420 試験モニタ
421 CH1プローブ・フロント・エンド
422 CH2プローブ・フロント・エンド
423 CH3プローブ・フロント・エンド
424 プリアンプ
426 ADC
428 メモリ
430 プロセッサ/制御ロジック
432 データ・ストレージ
434 データ分析機能
800 第1ECU
801 サンプリング・ライン対
802 第2ECU
803 サンプリング・ライン対
804 第3ECU
805 サンプリング・ライン対
806 第4ECU
807 サンプリング・ライン対
810 スイッチ又はゲートウェイ
820 試験モニタ
902 モダン・ドメイン
910 イーサネット・スイッチ
912 MAC
913 第1ECU
914 MAC
915 第2ECU
916 MAC
917 第3ECU
920 試験モニタ
930 レガシー・ドメイン
950 第0のCAN
951 CANコントローラ
952 第1のCAN
953 CANコントローラ
954 第2のCAN
955 CANコントローラ
956 第NのCAN
957 CANコントローラ
960 レシーバ
962 メモリ
964 ネットワーク・スタック
966 イーサネットMAC
【外国語明細書】