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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161887
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】固形医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/9068 20060101AFI20221014BHJP
   A61K 36/233 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/8888 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/488 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/17 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 29/02 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
A61K36/9068
A61K36/233
A61K36/539
A61K36/8888
A61K36/484
A61K36/488
A61K36/54
A61K36/65
A61P43/00 121
A61K33/06
A61K47/04
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/26
A61K36/17
A61P29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064346
(22)【出願日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2021066311
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 美咲
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076DD22
4C076DD67
4C076EE30
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF46
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA04
4C086MA35
4C086NA03
4C086ZA07
4C086ZC75
4C088AB04
4C088AB33
4C088AB38
4C088AB40
4C088AB58
4C088AB59
4C088AB60
4C088AB80
4C088AB81
4C088BA08
4C088MA09
4C088MA35
4C088NA03
4C088ZA07
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、変色抑制性に優れた柴葛解肌湯エキスの固形製剤を提供することである。
【解決手段】(A)柴葛解肌湯エキス、並びに(B)軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物を含む固形医薬組成物は、変色抑制性に優れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)柴葛解肌湯エキス、並びに(B)軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物を含む、固形医薬組成物。
【請求項2】
前記セルロース化合物がカルメロース塩である、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量が50~95重量%である、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たりショウキョウを3~5重量部含む、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が総量で0.5~50重量%である、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項6】
前記(A)成分100重量部当たりの前記(B)成分の含有量が総量で1~70重量部である、請求項1記載の固形医薬組成物。
【請求項7】
さらに(C)デンプン、乳糖及び/又はデキストリンを含む、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項8】
軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物を含む、柴葛解肌湯エキスを含む固形医薬組成物の変色抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色抑制性に優れる固形医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
柴葛解肌湯(浅田家方)は、小柴胡湯と葛根湯との合方から人参と大棗を去り石膏を加えた合方的薬方であり、薬方の構成及び出典の記載内容から、太陽病及び裏的少陽証の併病に運用されるべきものと考えられている(非特許文献1)。
【0003】
近年では、COVID-19等の未知の感染症に対し、発症機序解明並びに新薬及びワクチンの開発が盛んに行われている一方で、臨床的には漢方治療も適用されている。その中で、柴葛解肌湯については、COVID-19の軽症患者の重症化予防において、葛根湯や麻黄湯では対応できない発熱を認めた時点で処方することが提案されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本東洋医学雑誌、第44巻第4号、1994年、p.107-111
【非特許文献2】週刊日本医事新報、5008号、2020年、p.44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、柴葛解肌湯エキスの固形製剤の製剤安定性はこれまで十分に検討されていない。本発明者が検討したところ、柴葛解肌湯エキスの固形製剤は、保存中に特に変色が生じやすいことが判明した。
【0006】
そこで本発明の目的は、変色抑制性に優れた柴葛解肌湯エキスの固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、柴葛解肌湯エキスに、軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物を配合することによって、優れた変色抑制性を奏する固形製剤となることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)柴葛解肌湯エキス、並びに(B)軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物を含む、固形医薬組成物。
項2. 前記セルロース化合物がカルメロース塩である、項1に記載の固形医薬組成物。
項3. 前記(A)成分の含有量が50~95重量%である、項1又は2に記載の固形医薬組成物。
項4. 前記(A)成分の抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たりショウキョウを3~5重量部含む、項1~3のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項5. 前記(B)成分の含有量が総量で0.5~50重量%である、項1~4のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項6. 前記(A)成分100重量部当たりの前記(B)成分の含有量が総量で1~70重量部である、項1~5のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項7. さらに(C)デンプン、乳糖及び/又はデキストリンを含む、項1~6のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項8. 軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物を含む、柴葛解肌湯エキスを含む固形医薬組成物の変色抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固形医薬組成物によれば、変色抑制性に優れた柴葛解肌湯エキスの固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.固形医薬組成物
本発明の固形医薬組成物は、(A)柴葛解肌湯エキス(以下において、「(A)成分」とも記載する)、並びに(B)軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物(以下において、これらをまとめて「(B)成分」とも記載する)を含むことを特徴とする。以下、本発明の固形医薬組成物について詳述する。
【0011】
(A)柴葛解肌湯エキス
本発明の固形医薬組成物は、(A)成分として柴葛解肌湯エキスを含有する。柴葛解肌湯を構成する生薬としては、六書、蘊要、又は浅田の処方が挙げられ、本発明においては、これらのいずれの処方のものを用いてもよい。
【0012】
本発明で使用される柴葛解肌湯エキスの製造に供される生薬調合物における各生薬の配合量は特に限定されないが、いずれの処方であっても、当該生薬調合物の全量100重量部当たり、例えばショウキョウの配合量として1~5重量部が挙げられる。変色抑制性をより一層高めるから、当該生薬調合物の全量100重量部当たりのショウキョウの配合量としては、好ましくは3~5重量部、より好ましくは3.5~5重量部、さらに好ましくは4~5重量部が挙げられる。
【0013】
本発明で使用される柴葛解肌湯エキスの製造に供される生薬調合物の好適な例として、変色抑制性をより一層高める観点から、好ましくは浅田の処方のものが挙げられる。浅田の処方による柴葛解肌湯エキスの製造に供される生薬調合物は、サイコ、カッコン、マオウ、ケイヒ、オウゴン、シャクヤク、ハンゲ、ショウキョウ、カンゾウ、及びセッコウからなる。これらの生薬の分量の好ましい例としては、サイコ1.5~5重量部、カッコン1.25~4重量部、マオウ1~3重量部、ケイヒ1~3重量部、オウゴン1~3重量部、シャクヤク1~3重量部、ハンゲ1~4重量部、ショウキョウ0.5~1重量部(好ましくは0.8~1重量部、より好ましくは0.9~1重量部)、カンゾウ0.5~2重量部、及びセッコウ2~8重量部が挙げられ、特に好ましい例としては、サイコ4重量部、カッコン4重量部、マオウ2.5重量部、ケイヒ2重量部、オウゴン2重量部、シャクヤク2重量部、ハンゲ3重量部、ショウキョウ1重量部、カンゾウ1重量部、及びセッコウ6重量部が挙げられる。
【0014】
本発明で使用される柴葛解肌湯エキスは、前記生薬調合物を公知の手法で抽出することによって得ることができる。前記生薬調合物を抽出する方法については、従来の柴葛解肌湯エキスの抽出法と同様の方法で行えばよく、例えば、前記生薬調合物に対して、約10~20倍量、好ましくは10~15倍量の水を加え、80~100℃程度、好ましくは95~100℃で0.5~3時間程度、好ましくは0.5~1時間撹拌して抽出する方法が挙げられる。抽出後に、遠心分離、濾過等の固液分離に供して固形分を除去し、必要に応じて、濃縮処理や乾燥処理に供することによって柴葛解肌湯エキスが得られる。
【0015】
柴葛解肌湯エキスをエキス末として得るには、固形分を除去した抽出液を、必要に応じて濃縮した後に、スプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理に供すればよい。また、乾燥処理(特に、スプレードライによる乾燥処理)に供する際に、必要に応じて抽出液に、賦形剤を添加してもよい。
【0016】
本発明の固形医薬組成物における(A)成分の含有量としては特に限定されないが、たとえば45~98重量%、50~95重量%、52~80重量%、54~70重量%、又は56~60重量%が挙げられる。
【0017】
(B)軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物
本発明の固形医薬組成物は、(B)成分として軽質無水ケイ酸(以下において、「(B1)成分」とも記載する)及び/又はセルロース化合物(以下において、「(B2)成分」とも記載する)を含有する。(B)成分は、(A)成分を含む固形医薬組成物において、保存時における変色を抑制する。本発明においては、(B)成分として、(B1)成分又は(B2)成分を単独で用いてもよいし、(B1)成分及び(B2)成分を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
セルロース化合物は、セルロースを原料として生物的又は化学的に官能基導入及び/又は解重合等の処理を行うことにより得られる、セルロース骨格を有する化合物である。本発明で使用されるセルロース化合物の具体例としては、カルメロース(すなわちカルボキシメチルセルロース)、カルメロース塩(より具体的には、カルメロースのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。)、クロスカルメロース塩(すなわち架橋カルメロース塩;より具体的には、クロスカルメロースアルカリ金属塩、クロスカルメロースアルカリ土類金属塩)、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等が挙げられる。これらのセルロース化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのセルロース化合物の中でも、変色抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくはカルメロース塩、クロスカルメロース塩、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロースが挙げられ、より好ましくはカルメロース塩、
ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられ、さらに好ましくはカルメロース塩が挙げられ、一層好ましくはカルメロースのアルカリ土類金属塩が挙げられ、特に好ましくはカルメロースカルシウムが挙げられる。
【0019】
本発明の固形医薬組成物における(B)成分の含有量としては、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、総量で0.5~50重量%が挙げられる。
【0020】
(B)成分に(B1)成分を含む場合、(B1)成分の含有量としては、変色抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくは3~50重量%、より好ましくは8~50重量%、さらに好ましくは15~50重量%、一層好ましくは20~50重量%、より一層好ましくは25~50重量%、25~40重量%、又は25~30重量%が挙げられる。
【0021】
(B)成分に(B2)成分を含む場合、(B2)成分の含有量としては、変色抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくは1~50重量%、2~50重量%、4~50重量%、10~50重量%、20~50重量%、30~50重量%、又は35~50重量%が挙げられる。(B2)成分は、少ない含有量であっても好ましい変色抑制性を奏するため、上記(B2)成分の含有量の範囲の上限は、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、又は3重量%以下であってもよい。
【0022】
本発明の固形医薬組成物において、(A)成分100重量部当たりの(B)成分の含有量(総量)については、上記各成分の含有量により定まるが、例えば1~70重量部が挙げられる。
【0023】
(B)成分に(B1)成分を含む場合、(A)成分100重量部当たりの(B1)成分の含有量としては、変色抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくは5~70重量部、より好ましくは15~70重量部、さらに好ましくは25~70重量部、一層好ましくは30~70重量部、より一層好ましくは40~70重量部、40~60重量部、又は40~50重量部が挙げられる。
【0024】
(B)成分に(B2)成分を含む場合、(A)成分100重量部当たりの(B2)成分の含有量としては、変色抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくは1.5~70重量部、5~70重量部、8~70重量部、15~70重量部、30~70重量部、50~70重量部、又は60~70重量部が挙げられる。(B2)成分は、(A)成分に対して少ない比率であっても好ましい変色抑制性を奏するため、上記(B2)成分の含有量の範囲の上限は、55重量部以下、35重量部%以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、又は3重量部以下であってもよい。
【0025】
(C)デンプン、乳糖及び/又はデキストリン
本発明の固形医薬組成物は、変色抑制性をより一層向上させる観点から、さらに(C)成分としてデンプン、乳糖及び/又はデキストリン(以下において、「(C)成分」とも記載する)を含有することができる。
【0026】
デンプンとしては特に限定されないが、例えばトウモロコシデンプン及びバレイショデンプン等が挙げられる。
【0027】
これらの(C)成分の中でも、変色抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくはデンプン及び乳糖が挙げられ、より好ましくはデンプンが挙げられ、さらに好ましくはトウモロコシデンプンが挙げられる。
【0028】
本発明の固形医薬組成物における(C)成分の含有量としては、総量で、例えば4~50重量%、好ましくは20~45重量%、より好ましくは30~40重量%が挙げられる。
【0029】
他の成分
本発明の固形医薬組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分以外の他の成分として、添加剤及び/又は基剤を含むことができる。
【0030】
添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、結合剤(例えばアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、寒天等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等)、着色剤(例えば、カラメル、クチナシ色素、酸化チタン、酸化鉄等)、保存剤(例えば、L-アスコルビン酸等)、防腐剤(例えば、安息香酸塩、パラオキシ安息香酸エステル等)、pH調整剤(例えば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等)、界面活性剤(例えば、サポニン、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル等)、コーティング剤(例えば、シェラック、マクロゴール、カルナバロウ等)が挙げられる。これらの添加剤及び基剤は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、固形医薬組成物として製剤できることを限度として、使用する添加剤及び基剤の種類等に応じて適宜設定される。
【0031】
また、本発明の固形医薬組成物は、柴葛解肌湯エキスの他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0032】
製剤形態
本発明の固形医薬組成物の製剤形態については、固形製剤であれば特に限定されず、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤(カプセルに充填される顆粒剤も含む)等が挙げられ、これらの中でも特に好ましくは錠剤が挙げられる。
【0033】
本発明の固形医薬組成物が錠剤である場合、錠剤の形状及び大きさ等は特に限定されない。錠剤形状としては、丸型、楕円型、三角型、四角型等が挙げられる。丸型錠の場合にあっては、直径6~12mm、好ましくは8~10mmが挙げられる。一錠当たりの重量としては、200~600mg、好ましくは300~400mgが挙げられる。
【0034】
本発明の固形医薬組成物から製造される錠剤は、素錠(裸錠)であってもよいし、薬剤の安定化、及び矯味や矯臭等の目的で表面にコーティングを施したコーティング錠であってもよい。本発明の固形医薬組成物は変色抑制性に優れているため、素錠であっても効果的に変色を抑制することができる。
【0035】
製造方法
本発明の固形医薬組成物は、上記(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される(C)成分及び/又は他の成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製造することができる。好ましくは、本発明の固形医薬組成物の製造方法は、上記(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される(C)成分及び/又は他の成分を混合した混合物を造粒する造粒工程、及び造粒物を打錠する打錠工程を含む。打錠工程における打錠圧としては、例えば4~20kN、好ましくは8~15kNが挙げられる。
【0036】
2.柴葛解肌湯エキスを含む固形医薬組成物の変色抑制剤
上述の通り、軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物は、柴葛解肌湯エキスを含む固形医薬組成物の変色抑制することができる。従って、本発明は、軽質無水ケイ酸及び/又はセルロース化合物を含む、柴葛解肌湯エキスを含む固形医薬組成物の変色抑制剤も提供する。
【0037】
柴葛解肌湯エキスを含む固形医薬組成物の変色抑制剤において、使用する成分の種類、使用量等については、前記「1.固形医薬組成物」の欄に示す通りである。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
試験例
1.柴葛解肌湯エキス末の製造
原料生薬として、サイコ4.0(重量部、以下同じ)、カッコン4.0、マオウ2.5、ケイヒ2.0、オウゴン2.0、シャクヤク2.0、ハンゲ3.0、ショウキョウ1.0、カンゾウ1.0、セッコウ6.0の割合で用い、これらを刻んだ後、水12倍重量を用いて約100℃で30分間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮し、スプレードライヤーを用いて乾燥し、柴葛解肌湯エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給することによって行った。
【0040】
2.固形医薬組成物の製造
上記1で得た柴葛解肌湯エキス末と、表1,2に示す成分とを表中の組成で混合し、卓上型標準プレス機(エヌピーシーシステム株式会社製)とそれに対応した臼と杵を用いて12kNの圧力で圧縮成型することで、直径9.5mm、重量350mgの錠剤(素錠)を得た。
【0041】
3.変色抑制性試験
得られた錠剤(素錠)を、40℃、75%RHの条件下で90分保存した。保存後の錠剤について、それぞれ、製造直後品のL値を100%とした場合の相対L値(%)を、コニカミノルタ製の分光測色計CM-700dを用いて測定し、得られた相対L値(%)を100%から減じた値を「変色抑制率」(%)として算出した。変色抑制率が100%に近いほど、変色抑制効果が高い。結果を表1,2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】

【0044】
表1,2から明らかなとおり、柴葛解肌湯エキスを含む固形医薬品は、軽質無水ケイ酸やセルロース化合物を配合することで、変色抑制性を顕著に向上することができることが認められた(実施例1~20)。また、ケイ酸化合物という点で軽質無水ケイ酸と共通しているタルク、及び二酸化ケイ素という点で軽質無水ケイ酸と共通している含水二酸化ケイ素を配合した場合には、いずれも所望の変色抑制性は得ることができなかった(比較例2~5)ことから、軽質無水ケイ酸の配合によって奏される顕著な変色抑制性は、軽質無水ケイ酸に特有の効果であることが分かった。さらに、セルロース化合物の中でも、とりわけ、カルメロース塩(カルメロースカルシウム)が、少量でも格別顕著な変色抑制性を奏する(実施例4~6,16,18,20)ことが分かった。