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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022161983
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】CMP装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20221014BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B24B37/30 C
H01L21/304 622G
H01L21/304 622K
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129160
(22)【出願日】2022-08-15
(62)【分割の表示】P 2017254250の分割
【原出願日】2017-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】永井 大智
(57)【要約】
【課題】テンプレート厚の経時的変化に伴うウェハの研磨形状の変化を抑制することができるCMP装置を提供する。
【解決手段】CMP装置1は、中央にウェハWを収容可能な収容ポケット41aを備えたリテーナリングホルダ41と、リテーナリングホルダ41の上面に貼着されたメンブレンフィルム50と、ウェハWより小径に形成され、収容ポケット41a内でメンブレンフィルム50に貼着されたバッキングフィルム60と、を備えている。リテーナリングホルダ41が摩耗してポケット高さHが小さくなった場合であっても、バッキングフィルム60がウェハWの周縁の外側に回り込むように弾性変形することなくウェハWを押圧して、ウェハWの周縁における研磨レートが、ウェハWの他の領域における研磨レートと比べて著しく変動することを抑制する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを研磨パッドに押し当てて前記ウェハを研磨するCMP装置であって、
円環状に形成され、中央に前記ウェハを収容可能な収容ポケットを備えたテンプレートと、
前記テンプレートの上面に貼着されたメンブレンフィルムと、
前記ウェハより小径に形成され、前記収容ポケット内で前記メンブレンフィルムに貼着されたバッキングフィルムと、
を備え、
前記メンブレンフィルムに前記ウェハを押圧する空気圧が作用した際に、前記バッキングフィルムが前記ウェハの周縁を押圧する押圧力が確保されるように、前記メンブレンフィルムのうち前記バッキングフィルムと前記テンプレートとを跨ぐ部分が前記バッキングフィルム側に弾性変形することを特徴とするCMP装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェハをCMP研磨するCMP装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)を平坦化するCMP装置が知られている。
【0003】
特許文献1記載の研磨装置は、化学的機械的研磨、いわゆるCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を適用した研磨装置である。この研磨装置では、研磨ヘッドが、キャリアとリテーナリングに周縁を保持された弾性シートとの隙間に形成されたエア室のエア圧でウェハを研磨布に押し付けて研磨する。
【0004】
また、特許文献2には、研磨時に研磨布に押し付けられるテンプレートの上面に弾性基材が貼着され、弾性基材とウェハとの間にはバッキングフィルムが介在する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3683149号公報
【特許文献2】特開2016-159385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなCMP装置では、ウェハの研磨に伴ってテンプレート自体も研磨されることにより、研磨を繰り返すとテンプレート厚が次第に薄くなるため、テンプレート厚が経時的に変化する影響を受けて、ウェハの周縁における研磨レートが、ウェハの他の領域における研磨レートと比べて著しく変動する虞があった。
【0007】
また、テンプレートの材質を耐摩耗性が高いものに置き換えることも考えられるが、テンプレートの硬度を過度に高く設定してしまうと、ウェハがテンプレート内に衝突した際に、ウェハが破損する虞があった。
【0008】
そこで、テンプレート厚の経時的変化に伴うウェハの研磨形状の変化を抑制するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るCMP装置は、ウェハを研磨パッドに押し当てて前記ウェハを研磨するCMP装置であって、円環状に形成され、中央に前記ウェハを収容可能な収容ポケットを備えたテンプレートと、前記テンプレートの上面に貼着されたメンブレンフィルムと、前記ウェハより小径に形成され、前記収容ポケット内で前記メンブレンフィルムに貼着されたバッキングフィルムと、を備え、前記メンブレンフィルムに前記ウェハを押圧する空気圧が作用した際に、前記バッキングフィルムが前記ウェハの周縁を押圧する押圧力が確保されるように、前記メンブレンフィルムのうち前記バッキングフィルムと前記テンプレートとを跨ぐ部分が前記バッキングフィルム側に弾性変形する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、テンプレート厚が経時的に変化した場合であっても、ウェハの周縁における研磨レートが、ウェハの他の領域における研磨レートと比べて著しく変動することを抑制するため、ウェハを所望の研磨形状に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るCMP装置を模式的に示す斜視図。
図2】研磨ヘッドの要部を模式的に示す縦断面図。
図3】研磨ヘッドの底面図。
図4】従来のCMP装置におけるウェハの周縁付近を示す拡大断面図。
図5図1に示すCMP装置のウェハの周縁付近を示す拡大断面図。
図6】ウェハがテンプレートの内周に当接した状態を示す研磨ヘッドの底面図。
図7】本発明の変形例に係るCMP装置におけるウェハの周縁付近を示す拡大断面図。
図8】硬質パッドを用いた比較例に係るCMP装置のポケット深さ毎の研磨レートを示すグラフ。
図9】硬質パッドを用いた第1実施例に係るCMP装置のポケット深さ毎の研磨レートを示すグラフ。
図10】硬質パッドを用いた第2実施例に係るCMP装置のポケット深さ毎の研磨レートを示すグラフ。
図11】軟質パッドを用いた比較例に係るCMP装置のポケット深さ毎の研磨レートを示すグラフ。
図12】軟質パッドを用いた第1実施例に係るCMP装置のポケット深さ毎の研磨レートを示すグラフ。
図13】軟質パッドを用いた第2実施例に係るCMP装置のポケット深さ毎の研磨レートを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0013】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0014】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るCMP装置1を模式的に示す斜視図である。CMP装置1は、ウェハWの一面を平坦に研磨するものである。CMP装置1は、プラテン2と、研磨ヘッド10と、を備えている。
【0016】
プラテン2は、円盤状に形成されており、プラテン2の下方に配置された回転軸3に連結されている。回転軸3がモータ4の駆動によって回転することにより、プラテン2は図1中の矢印D1の方向に回転する。プラテン2の上面には、研磨パッド5が貼付されており、研磨パッド5上に図示しないノズルから研磨剤と化学薬品との混合物であるCMPスラリーが供給される。
【0017】
研磨ヘッド10は、プラテン2より小径の円盤状に形成されており、研磨ヘッド10の上方に配置された回転軸10aに連結されている。回転軸10aが図示しないモータの駆動によって回転することにより、研磨ヘッド10は、図1中の矢印D2の方向に回転する。研磨ヘッド10は、図示しない昇降装置によって垂直方向Vに昇降自在である。研磨ヘッド10は、ウェハWを研磨する際に下降して研磨パッド5にウェハWを押圧する。研磨ヘッド10が研磨するウェハWは、図示しないウェハ搬送機構によって受け渡される。
【0018】
CMP装置1の動作は、図示しない制御手段によって制御される。制御手段は、CMP装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御手段の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0019】
次に、研磨ヘッド10について説明する。図2は、研磨ヘッド10の要部を模式的に示す縦断面図である。図3は、研磨ヘッド10の底面図である。
【0020】
研磨ヘッド10は、ヘッド本体20と、キャリア30と、リテーナリング40と、メンブレンフィルム50と、バッキングフィルム60と、を備えている。
【0021】
ヘッド本体20は、回転軸10aに接続されており、回転軸10aと共に回転する。ヘッド本体20は、回転部21を介してヘッド本体20の下方に配置されたキャリア30に連結されており、ヘッド本体20及びキャリア30は連動して回転する。
【0022】
キャリア30には、キャリア30の周縁に等間隔に離間して配置されたエアライン31が設けられている。エアライン31の下端は、キャリア30の下面30aとメンブレンフィルム50との間に形成されたエア室Aに開口している。エアライン31は、図示しないエア供給手段としてのエア供給源に接続されており、エア室Aには、エアライン31を介してエアが導入される。エアライン31に供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。
【0023】
ヘッド本体20とキャリア30との間には、キャリア押圧手段32が設けられている。キャリア押圧手段32は、図示しないエア供給源から供給されるエアによって膨張するエアバッグ等である。エア供給源から供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。キャリア押圧手段32は、供給されるエアの圧力に応じて、キャリア30を介してウェハWを研磨パッド5に押圧する。
【0024】
キャリア30の下面30aには、同軸上に配置された図示しない複数の弾性押圧部材が設けられている。また、複数の押圧部材は、それぞれ径の異なる円環状に形成されている。弾性押圧部材は、キャリア30の下面30aに固着されており、2液性エポキシ樹脂接着剤等でキャリア30に着脱自在に貼着されている。弾性押圧部材は、研磨ヘッド10の回転軸と同軸上に配置されており、エア室Aを区画する。
【0025】
リテーナリング40は、キャリア30の周囲を囲むように配置されている。リテーナリング40は、上面にメンブレンフィルム50が貼着されたテンプレートとしてのリテーナリングホルダ41を備えている。
【0026】
リテーナリングホルダ41は、例えば、ガラスエポキシ、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂から成る。リテーナリングホルダ41は、円環状に形成されており、中央にウェハWを収容する収容ポケット41aを備えている。リテーナリングホルダ41は、スナップリング42を介してリテーナ押圧部材43に取り付けられている。ヘッド本体20とリテーナ押圧部材43との間には、リテーナ押圧手段44が設けられている。なお、符号45は、スナップリング42の上方を覆うカバーである。
【0027】
リテーナ押圧手段44は、図示しないエア供給源から供給されるエアによって膨張するエアバッグ等である。エア供給源から供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。リテーナ押圧手段44は、供給されるエアの圧力に応じて、リテーナ押圧手段44を介してリテーナリング40を研磨パッド5に押圧する。
【0028】
メンブレンフィルム50は、例えば、四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂から成る。メンブレンフィルム50は、収容ポケット41aを覆うようにリテーナリングホルダ41に貼着されており、エア室Aに圧縮空気が導入されると、空気圧で収容ポケット41a内に向かって弾性変形する。
【0029】
バッキングフィルム60は、例えば、スウェードフィルムである。バッキングフィルム60は、その中心が研磨ヘッド10の回転軸10a上に位置決めされた状態でメンブレンフィルム50に貼着されている。バッキングフィルム60は、エア室Aに圧縮空気が導入されると、メンブレンフィルム50の弾性変形に伴って弾性変形してウェハWを加圧する。図3に示すように、バッキングフィルム60は、ウェハWの外径よりも小径に形成されている。なお、以下では、リテーナリングホルダ41の下端からバッキングフィルム60の下端までの高さを「ポケット高さ」と称す。
【0030】
次に、CMP装置1の作用について説明する。従来のCMP装置70では、図4(a)に示すように、バッキングフィルムBFがウェハWの外径よりも大径に形成されていた。そして、リテーナリングホルダ71が厚く、ポケット深さH’が十分に確保されている場合には、図4(b)に示すように、エア室Aに圧縮空気が導入されて、メンブレンフィルムMFが下向きに弾性変形すると、バッキングフィルムBFは、ウェハの周縁(破線部分)をウェハWの他の領域に比べて小さい押圧力が作用する。
【0031】
その後、研磨を繰り返し行うと、研磨パッド5に押圧されるリテーナリングホルダ71の下面が徐々に研磨されるため、リテーナリングホルダ71の厚みは加工時間に比例して薄くなり、ポケット深さH’が小さくなる。このようにリテーナリングホルダ71の厚みが薄い状態で、メンブレンフィルムMFが下向きに弾性変形すると、図4(c)の破線部分に示すように、バッキングフィルムBFが、ウェハWの周縁から外周に回り込むように弾性変形し、ウェハWの周縁には、ウェハWの他の領域と比べて大きい押圧力が作用する。このようにして、リテーナリングホルダ71の厚みが経時的に変化することにより、ウェハWの周縁の研磨レートが、ウェハWの他の領域と比べて著しく変動する。
【0032】
一方、図5(a)に示すように、CMP装置1では、バッキングフィルム60がウェハWの外径よりも小径に形成されている。そして、リテーナリングホルダ41が厚くポケット深さHが十分に確保されている場合には、図5(b)に示すように、エア室Aに圧縮空気が導入されて、メンブレンフィルム50が下向きに弾性変形すると、バッキングフィルム60がウェハWを研磨パッド5に押圧する。このとき、バッキングフィルム60は周縁を除くウェハWの全面に接触して、ウェハWの周縁には過剰な押圧力が作用しない。また、バッキングフィルム60とリテーナリングホルダ41との間を跨ぐように設けられて圧縮空気の圧力を受けるメンブレンフィルム50の部分50aが、従来のようなCMP装置70と比べて拡大することにより、バッキングフィルム60の外周縁に作用する反力が圧縮空気の圧力上昇に伴って増大する。したがって、ウェハWの周縁を研磨するのに必要な押圧力を確保することができる。
【0033】
また、リテーナリングホルダ41の厚みが経時的に変化して、ポケット深さHが小さくなった場合、図5(c)に示すように、バッキングフィルム60が、ウェハWの周縁を回り込むように弾性変形することがなく、ウェハWの周縁にはウェハWの他の領域に比べて過剰な押圧力が作用することを抑制できる。
【0034】
なお、本実施形態では、ウェハWがバッキングフィルム60に押圧される際に、ウェハWがバッキングフィルム60に対して回転可能である否かは何れもであっても構わない。
【0035】
ウェハWがバッキングフィルム60に対して回転不能な状態で押圧されるとは、例えば、バッキングフィルム60の下面に適量の脱イオン水等を塗付し、バッキングフィルム60とウェハとを密着させることにより、ウェハWがバッキングフィルム60に吸着されてバッキングフィルム60と一体で回転する場合等が考えられる。ウェハWとバッキングフィルム60とを略同心状に配置されることから、バッキングフィルム60が、ウェハWの外径より小径に形成されれば、バッキングフィルム60がウェハWの周縁よりも外周側に回り込んでウェハWが過剰に押圧することは抑制される。
【0036】
一方、ウェハWがバッキングフィルム60に対して回転可能に押圧されるとは、ウェハWが、バッキングフィルム60に吸着されずに収容ポケット41a内を水平方向にスライド可能である場合等が考えられる。このような場合には、図6に示すように、バッキングフィルム60は、ウェハWがリテーナリングホルダ41の内周に接した状態でウェハWの周縁からはみ出さないように設定されている。すなわち、バッキングフィルム60の半径R1、ウェハWの半径R2及び収容ポケット41aの半径R3は、R1<2R2-R3の関係式を満たすように設定される。
【0037】
次に、本実施形態の変形例について説明する。図7(a)~(c)は、本変形例に係るCMP装置1の要部拡大図である。なお、本変形例は、上述した実施形態と比べて、収容ポケット41aが拡径して、リテーナリングホルダ41とバッキングフィルム60との距離が離間している点が異なる。以下に説明する構成以外の構成は、上述した実施形態の構成と同様である。
【0038】
図7(a)に示すように、本変形例に係るCMP装置1では、収容ポケット41aが拡径して形成されている。これにより、バッキングフィルム60とリテーナリングホルダ41との距離が遠く設定されている。
【0039】
これにより、図7(b)に示すように、バッキングフィルム60とリテーナリングホルダ41との間を跨ぐように設けられて圧縮空気の圧力を受けるメンブレンフィルム50の部分50aが拡大することにより、リテーナリングホルダ41の内周縁に作用する反力F1及びバッキングフィルム60の外周縁に作用する反力F2が圧縮空気の圧力上昇に伴ってそれぞれ増大する。したがって、リテーナリングホルダ41が摩耗してポケット深さHが十分に確保されている場合であっても、ウェハWを押圧する押圧力を周縁のみ局所的に増大させることができる。
【0040】
また、図7(c)に示すように、ポケット深さHが小さくなった場合には、メンブレンフィルム50が受ける圧縮空気の圧力が増大することにより、これを支持するリテーナリングホルダ41及びバッキングフィルム60の反力F1、F2も増大する。したがって、ウェハWに作用する押圧力を周縁のみ局所的に増大させることができる。
【実施例0041】
次に、上述した実施形態及びその変形例に係るCMP装置1並びに従来のCMP装置70を比較した評価データについて説明する。なお、以下では、図4に対応する従来のCMP装置70を比較例とし、図5に対応するCMP装置1を実施例1、図7に対応するCMP装置1を実施例2と表記する。
【0042】
図8~10は、主に半導体デバイスの研磨に用いられる硬質パッドを用いて熱酸化膜を研磨した場合の研磨レートを示すものである。図8~10は、縦軸に研磨レート、横軸に研磨ヘッドの回転中心を原点として径方向座標を表している。なお、本評価で設定された主な研磨条件は、表1の通りである。
【0043】
【表1】
【0044】
図8は、比較例における研磨レートの評価データである。具体的には、リテーナリングホルダ71の内径が102mm、バッキングフィルムの外径が101mmにそれぞれ設定されている。リテーナリングホルダ71の使用開始直後に対応するポケット深さ700μmでは、ウェハWの周縁の研磨レートがその他の領域よりも低いことが分かる。しかしながら、リテーナリングホルダ71が摩耗するにしたがって、ポケット深さ500μmでは、ウェハWの周縁の研磨レートがその他の領域よりも高くなり、ポケット深さ300μmでは、ウェハWの周縁の研磨レートがその他の領域よりも更に高くなることが分かる。すなわち、リテーナリングホルダ71の厚みが経時的に変化することに伴い、ウェハWの周縁における研磨レートがウェハWの他の領域と比べて大きく変動することが分かる。
【0045】
図9は、実施例1における研磨レートの評価データである。具体的には、リテーナリングホルダ41の内径が102mm、バッキングフィルムの外径が96mmにそれぞれ設定されている。図9によれば、リテーナリングホルダ41の摩耗につれて、すなわちポケット深さHの減少に伴って、ウェハWの周縁における研磨レートが、ウェハWの他の領域における研磨レートと同様に増大していることが分かる。すなわち、リテーナリングホルダ41の厚みに経時的な変化が生じても、ウェハWの周縁における研磨レートがウェハWの他の領域と同様に変動していることが分かる。
【0046】
図10は、実施例2における研磨レートの評価データである。具体的には、リテーナリングホルダ41の内径が104mm、バッキングフィルムの外径が96mmにそれぞれ設定されている。図10によれば、リテーナリングホルダ41の厚みに経時的な変化が生じても、ウェハWの周縁における研磨レートが、ウェハWの他の領域における研磨レートと同様に変動していることが分かる。
【0047】
図11~13は、主に、基板の研磨に用いられる軟質パッドを用いて熱酸化膜を研磨した場合の評価データを示すものである。図11~13は、縦軸に研磨レート、横軸に研磨ヘッドの回転中心を原点として径方向座標を表している。なお、本評価の研磨条件は、研磨パッドにスエードパッドを用いて、ドレスにナイロンブラシを用いた以外は、表1で示した硬質パッドの研磨条件と同様に設定されている。
【0048】
図11は、比較例における研磨レートの評価データである。具体的には、リテーナリングホルダ71の内径が102mm、バッキングフィルムの外径が101mmにそれぞれ設定されている。リテーナリングホルダ71の使用開始直後では、ウェハW全面で同様の研磨レートであることが分かる。しかしながら、リテーナリングホルダ71が摩耗するにしたがって、ポケット深さ500μmでは、ウェハWの周縁の研磨レートがその他の領域よりも高くなり、ポケット深さ300μmでは、ウェハWの周縁の研磨レートがその他の領域よりも更に高くなることが分かる。すなわち、リテーナリングホルダ71の厚みに経時的な変化に伴い、ウェハWの周縁における研磨レートがウェハWの他の領域と比べて大きく変動することが分かる。
【0049】
図12は、実施例1における研磨レートの評価データである。具体的には、リテーナリングホルダ41の内径が102mm、バッキングフィルムの外径が96mmにそれぞれ設定されている。図12によれば、リテーナリングホルダ41の摩耗につれて、ウェハW全面の研磨レートが低下しているものの、ウェハWの周縁における研磨レートは、ウェハWの他の領域における研磨レートと同様に低下していることが分かる。すなわち、リテーナリングホルダ41の厚みに経時的な変化が生じた場合であっても、ウェハWの周縁における研磨レートがウェハWの他の領域と同様に変動していることが分かる。
【0050】
図13は、実施例2における研磨レートの評価データである。具体的には、リテーナリングホルダ41の内径が104mm、バッキングフィルムの外径が96mmにそれぞれ設定されている。図13によれば、リテーナリングホルダ41の厚みに経時的な変化が生じても、ウェハWの周縁における研磨レートが、ウェハWの他の領域における研磨レートと同様に変動していることが分かる。
【0051】
このようにして、本実施形態及び変形例に係るCMP装置1は、リテーナリングホルダ41の厚みに経時的な変化が生じた場合であっても、ウェハWの周縁における研磨レートが、ウェハWの他の領域における研磨レートと同様に変動することから、ウェハWを所望の研磨形状に加工することができる。
【0052】
以下に、いくつかのCMP装置の例を付記する。
[1]ウェハを研磨パッドに押し当てて前記ウェハを研磨するCMP装置であって、円環状に形成され、中央に前記ウェハを収容可能な収容ポケットを備えたテンプレートと、前記テンプレートの上面に貼着されたメンブレンフィルムと、前記ウェハより小径に形成され、前記収容ポケット内で前記メンブレンフィルムに貼着されたバッキングフィルムと、を備えている。
この構成によれば、テンプレートが摩耗してテンプレート厚が徐々に薄くなる場合であっても、バッキングフィルムがウェハの周縁を押圧する押圧力が過度に高くなることが抑制されるため、テンプレート厚が経時的に変化しても、ウェハの周縁における研磨レートが、ウェハの他の領域における研磨レートと比べて著しく変動することを抑制できる。
【0053】
[2]前記バッキングフィルムは、前記ウェハが前記テンプレートの内周に接した状態で前記バッキングフィルムが前記ウェハの周縁からはみ出さないように形成されている[1]に記載のCMP装置。
この構成によれば、ウェハがバッキングフィルムに対して相対的に移動する場合であっても、バッキングフィルムが常にウェハの内側を押圧することにより、バッキングフィルムがウェハの周縁を押圧する押圧力が過度に高くなることが抑制されるため、テンプレート厚が経時的に変化しても、ウェハの周縁における研磨レートが、ウェハの他の領域における研磨レートと比べて著しく変動することをさらに抑制できる。
【0054】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0055】
1 ・・・CMP装置
2 ・・・プラテン
3 ・・・回転軸
4 ・・・モータ
5 ・・・研磨パッド
10 ・・・研磨ヘッド
10a・・・回転軸
20 ・・・ヘッド本体
21 ・・・回転部
30 ・・・キャリア
31 ・・・エアライン
32 ・・・キャリア押圧手段
40 ・・・リテーナリング
41 ・・・リテーナリングホルダ(テンプレート)
41a・・・収容ポケット
42 ・・・スナップリング
43 ・・・リテーナ押圧部材
44 ・・・リテーナ押圧手段
50 ・・・メンブレンフィルム
60 ・・・バッキングフィルム
A ・・・エア室
W ・・・ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13