IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図1
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図2
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図3
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図4
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図5
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図6
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図7
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図8
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図9
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図10
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図11
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図12
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図13
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図14
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図15
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図16
  • 特開-自動分析装置および自動分析方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162076
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】自動分析装置および自動分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133313
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2020208104の分割
【原出願日】2018-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2017249513
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風間 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】飯島 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】藪谷 千枝
(72)【発明者】
【氏名】小暮 研二
(57)【要約】
【課題】2種類以上の複数の光度計を備える自動分析装置に関して、測定時の異常等があった場合でも、複数の光度計の測定結果およびデータアラームからの好適な出力を実現できる技術を提供することである。
【解決手段】自動分析装置は、定量範囲が異なる例えば2種類の光度計と、対象の検体について2種類の光度計を用いた測定を含む分析を制御する分析制御部とを備える。分析制御部は、2種類の光度計を用いた2種類の測定結果に、測定時の異常等に応じた、2種類のデータアラームが付記されている場合(ステップS204-(C))には、2種類のデータアラームの組み合わせに対応させて、出力する測定結果およびデータアラームを選択して分析結果としてユーザに対して出力する(ステップS205)。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の検体について定量範囲が異なる複数の検量線を用いた分析を制御する分析制御部を備え、
前記分析制御部は、
ひとつの検査項目に対し、前記複数の検量線を用いた複数の測定値を含む複数の測定結果を取得し、
前記複数の検量線を用いた測定の際に、異常を検知した場合には、前記複数の測定結果のうちの対応する検量線を用いた測定結果に、前記異常の種別に応じたデータアラームを付記し、
前記複数の測定結果に複数のデータアラームが付記されている場合には、
前記複数の測定結果および前記複数のデータアラームから、測定結果と閾値との比較に基づいて、出力する測定結果およびデータアラームを選択する、
自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記複数の検量線として、所定濃度範囲の検体分析に用いる第1検量線と、所定濃度範囲より高濃度の検体分析に用いる第2検量線とを含み、
前記分析制御部は、前記第2検量線を用いた測定結果が閾値を超える場合、前記第2検量線を用いた測定結果およびそれに対応するデータアラームのみを選択する、
自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記複数の検量線として、所定濃度範囲の検体分析に用いる第1検量線と、所定濃度範囲より高濃度の検体分析に用いる第2検量線とを含み、
前記分析制御部は、前記第1検量線を用いた測定結果が閾値未満である場合、前記第1検量線を用いた測定結果およびそれに対応するデータアラームのみを選択する、
自動分析装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の自動分析装置において、
散乱光度計と、吸光光度計と、を有し、
前記分析制御部は、前記散乱光度計による測定値の分析には前記第1検量線を使用し、前記吸光光度計による測定値には前記第2検量線を使用する、
自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記対象の検体について前記複数の検量線を用いた測定は、同一の反応容器に収容された前記対象の検体に対する、それぞれの検量線による、反応過程の測定である、
自動分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記分析制御部は、前記複数のデータアラームの組み合わせに対応させて、前記対象の検体に関する自動再検の要否と、前記自動再検で使用する検量線の種類と、前記自動再検での再測定条件と、を含む自動再検情報を選択し、前記自動再検情報に従って前記自動再検を制御する、
自動分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の自動分析装置において、
前記データアラームは、複数のレベルとして、高レベル、中レベル、低レベルに分類され、
前記高レベルは、前記自動再検が必要であり、前記自動再検のためにユーザによる状態改善作業が必要であるレベルであり、
前記中レベルは、前記自動再検が必要であり、前記自動再検のために前記ユーザによる状態改善作業が不要であるレベルであり、
前記低レベルは、前記自動再検が不要であるレベルであり、
前記分析制御部は、前記データアラームの組み合わせについて、前記レベルを判別し、前記レベルに対応させて、出力する前記自動再検情報を選択する、
自動分析装置。
【請求項8】
請求項7記載の自動分析装置において、
前記高レベルのデータアラームとして、検体不足アラーム、試薬不足アラーム、詰まり検知アラーム、洗剤不足アラーム、および光度計異常アラームのうちの少なくとも1つを有する、
自動分析装置。
【請求項9】
請求項7記載の自動分析装置において、
前記中レベルのデータアラームとして、反応過程異常に由来するデータアラームと、検体濃度異常に由来するデータアラームと、を有し、
前記反応過程異常に由来するデータアラームとして、セルブランク異常アラーム、吸光度差異常アラーム、散乱光強度差異常アラームのうちの少なくとも1つを有し、
前記検体濃度異常に由来するデータアラームとして、プロゾーンアラーム、定量範囲上限オーバアラーム、および定量範囲下限オーバアラームのうち少なくとも1つを有する、
自動分析装置。
【請求項10】
請求項7記載の自動分析装置において、
前記低レベルのデータアラームとして、血清情報アラームと試薬有効期限切れアラームとの少なくとも一方を有する、
自動分析装置。
【請求項11】
請求項6記載の自動分析装置において、
前記分析制御部は、
前記検量線の種類毎の測定結果に、前記データアラームを付記する判断と共に、前記自動再検に関する判断を行った結果に基づいて、前記自動再検の制御のための再検フラグ情報を付加し、
前記複数の測定結果に付加されている複数の再検フラグ情報の組み合わせに対応させて、出力する前記測定結果、前記データアラーム、および前記自動再検情報を選択する、
自動分析装置。
【請求項12】
請求項1記載の自動分析装置において、
予め、優先出力設定として、前記複数の検量線のいずれの検量線を優先出力として使用するかが設定されており、
前記分析制御部は、前記データアラームの組み合わせとして特定の組み合わせの場合には、前記優先出力設定に従って、前記出力する前記測定結果および前記データアラームを選択する、
自動分析装置。
【請求項13】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記データアラームとして、生じ得る複数のデータアラームには、重要度に応じた順位が設定されており、
前記分析制御部は、前記検量線の種類毎の前記測定結果について、前記データアラームを付記する際、前記重要度に応じて選択した1つのデータアラームを付記する、
自動分析装置。
【請求項14】
請求項6記載の自動分析装置において、
前記再測定条件として、前回の測定時の条件に対し、同じ条件と、検体量を減量する条件と、検体量を増量する条件と、を有する、
自動分析装置。
【請求項15】
自動分析装置における自動分析方法であって、
前記自動分析装置は、対象の検体について定量範囲が異なる複数の検量線を用いた分析を制御する分析制御部を備え、
前記分析制御部において実行されるステップとして、
ひとつの検査項目に対し、前記複数の検量線を用いた複数の測定値を含む複数の測定結果を取得するステップと、
前記複数の検量線を用いた測定の際に、異常を検知した場合には、前記複数の測定結果のうちの対応する検量線を用いた測定結果に、前記異常の種別に応じたデータアラームを付記するステップと、
前記複数の測定結果に複数のデータアラームが付記されている場合には、前記複数の測定結果および前記複数のデータアラームから、測定結果と閾値との比較に基づいて、出力する測定結果およびデータアラームを選択するステップと、
を有する、自動分析方法。
【請求項16】
請求項15記載の自動分析方法において、
前記分析制御部が、前記複数のデータアラームの組み合わせに対応させて、前記対象の検体に関する自動再検の要否と、前記自動再検で使用する検量線の種類と、前記自動再検での再測定条件と、を含む自動再検情報を選択し、前記自動再検情報に従って前記自動再検を制御するステップを有する、
自動分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査用の自動分析装置の技術に関する。また、本発明は、自動分析装置における異常やエラー等に応じたアラーム出力の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査用の自動分析装置は、血液や尿等の検体(試料とも呼ばれる)中に含まれる目的成分物質の濃度や成分量を光学的な測定に基づいて検出する。目的成分物質の検出方法としては、検体の透過光量を測定する吸光光度法を用いるものが多い。吸光光度法では、光源からの光を検体または反応液(検体と試薬との混合液)に照射し、その結果得られる1つ以上の波長の透過光量等を測定して吸光度を算出する。そして、吸光光度法では、ランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則に従い、吸光度と濃度との関係から、目的成分物質の成分量を求める。
【0003】
また、臨床検査用の自動分析装置としては、例えば、より大きな光量変化を捉えやすい散乱光の光量変化を利用する光散乱検出法を用いて、免疫分析の高感度化を実現するものが知られている。光散乱検出法では、抗原抗体反応で生成される凝集塊に光を照射し、その凝集塊によって散乱された散乱光の光量または光強度の少なくとも一方を測定する。そして、光散乱検出法では、その光量または光強度と濃度との関係から、目的成分物質の成分量を求める。
【0004】
吸光光度法を用いる光度計である吸光光度計と、光散乱検出法を用いる光度計である散乱光度計とでは、測定および定量が可能な範囲(「定量範囲」等と記載する場合がある)を含め特性に違いがある。そこで、近年では、それらの2種類の両方の光度計の特性の違いを利用し、2種類の光度計を1台に搭載して測定のダイナミックレンジを広げた自動分析装置が開発されている。
【0005】
上記自動分析装置に関する先行技術例として、特開2014-6160号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1では、自動分析装置として、散乱光度計と吸光光度計のうち濃度範囲に応じて最適な光度計を決定できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-6160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、臨床検査用の自動分析装置は、測定結果の信頼性を高めるため、以下のようなアラームを出力する機能(データアラーム機能と記載する場合がある)を有するものが多い。この機能では、測定中の異常やエラー等を監視し、検知した場合に、測定結果情報に、その異常等の種別を表す所定のデータをデータアラームとして付記して出力する。
【0008】
測定時の異常等が軽微である場合には、例えば検体の希釈等の対処の後に、再測定等を行うことで、適切な測定結果が得られる可能性が高い。そのため、その異常等に応じて自動的に再測定を含む再検査を行う機能(自動再検機能と記載する場合がある)を有する自動分析装置も開発されてきた。
【0009】
例えば、特許文献1の自動分析装置では、正常な測定の場合、言い換えると異常等が検知されなかった場合に、2種類の光度計の測定結果から出力を選択する手法が開示されている。しかしながら、2種類以上の複数の光度計を備え、データアラーム機能、および測定結果を選択する機能等を有する自動分析装置では、測定時の異常等がある場合に、2種類以上の複数の測定結果およびデータアラームから、どのように出力を選択すれば好適であるかについては、未検討である。例えば、その装置では、2種類の光度計を用いた分析の際、各光度計の測定で異常等が検知され、2種類の測定結果の両方に、それぞれのデータアラームが付記される場合が生じ得る。すなわち、同時に2種類以上の複数のデータアラームが生じる場合がある。その場合、ユーザに対する出力をどのように選択すれば好適であるかは不明であった。
【0010】
上記自動分析装置では、複数の種類の測定結果およびデータアラームの全てを出力する場合、あるいは1つの測定結果およびデータアラームを選択して出力する場合、いずれの場合でも、ユーザにとって判断しにくい場合がある。ユーザとしては、その出力がどのような状態や意味を表しているのかがわかりにくく、測定の正誤や適切性、再検査や対処作業の要否等の判断が必要であり、判断に応じた作業や操作が必要である。すなわち、上記自動分析装置では、出力に対してユーザの負荷が大きく、判断ミスや結果報告遅延等も発生する可能性がある。
【0011】
また、上記自動分析装置で、さらに自動再検機能との組み合わせを考えた場合、2種類以上の複数のデータアラームが生じた場合に再測定をどのように制御すれば好適であるかについても未検討であり、自動再検機能の有効活用ができない。
【0012】
本発明の目的は、2種類以上の複数の光度計を備える自動分析装置の技術に関して、測定時の異常等があった場合でも、複数の光度計の測定結果およびデータアラームからの好適な出力を実現できる技術を提供することである。すなわち、出力に対するユーザの負荷を軽減でき、判断ミスや結果報告遅延等を防止できる技術を提供することである。また、本発明の他の目的は、さらに自動再検機能を有する自動分析装置の場合でも、好適な再測定の制御によって、より正確な測定を高速に実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のうち代表的な実施の形態は、自動分析装置であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。一実施の形態の自動分析装置は、対象の検体について定量範囲が異なる複数の検量線を用いた分析を制御する分析制御部を備え、前記分析制御部は、ひとつの検査項目に対し、前記複数の検量線を用いた複数の測定値を含む複数の測定結果を取得し、前記複数の検量線を用いた測定の際に、異常を検知した場合には、前記複数の測定結果のうちの対応する検量線を用いた測定結果に、前記異常の種別に応じたデータアラームを付記し、前記複数の測定結果に複数のデータアラームが付記されている場合には、前記複数の測定結果および前記複数のデータアラームから、測定結果と閾値との比較に基づいて、出力する測定結果およびデータアラームを選択する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、2種類以上の複数の光度計を備える自動分析装置の技術に関して、測定時の異常等があった場合でも、複数の光度計の測定結果およびデータアラームからの好適な出力を実現できる。すなわち、出力に対するユーザの負荷を軽減でき、判断ミスや結果報告遅延等も防止できる。また、代表的な実施の形態によれば、さらに自動再検機能を有する自動分析装置の場合でも、好適な再測定の制御によって、より正確な測定を高速に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1の自動分析装置の全体概略構成を示す図である。
図2】実施の形態1の自動分析装置で、主に分析制御部の機能ブロック構成を示す図である。
図3】実施の形態1の自動分析装置で、2種類の光度計の特性を示す図である。
図4】実施の形態1の自動分析装置で、データアラームの分類定義の表を示す図である。
図5】実施の形態1の自動分析装置で、データアラームと出力との対応表として、第1部分を示す図である。
図6】実施の形態1の自動分析装置で、対応表として、第2部分を示す図である。
図7】実施の形態1の自動分析装置で、対応表として、第3部分を示す図である。
図8】実施の形態1の自動分析装置で、対応表として、第4部分を示す図である。
図9】実施の形態1の自動分析装置で、出力制御処理のフローを示す図である。
図10】実施の形態1で、優先出力アラーム判定処理のフローを示す図である。
図11】実施の形態1で、高レベルデータアラーム処理のフローを示す図である。
図12】実施の形態1で、中レベルデータアラーム処理の第1部分のフローを示す図である。
図13】実施の形態1で、中レベルデータアラーム処理の第2部分のフローを示す図である。
図14】実施の形態1で、低レベルデータアラーム処理のフローを示す図である。図である。
図15】本発明の実施の形態2の自動分析装置における、処理フロー例を示す図である。
図16】本発明の実施の形態3の自動分析装置における、中レベルデータアラーム処理の第1部分のフローを示す図である。
図17】実施の形態3で、中レベルデータアラーム処理の第2部分のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
[課題等]
前提や課題等について補足説明する。検体と試薬との反応には、呈色反応と凝集反応との、大別して2種類の反応が用いられる。呈色反応は、基質と酵素との反応であり、生化学分析で用いられる。生化学分析では、呈色した反応液による光の吸収量(吸光度として表される)を測定し、成分量を求める。凝集反応は、抗原と抗体との反応であり、免疫分析で用いられる。免疫分析では、抗原と抗体との凝集により変化する反応液の濁り(濁度として表される)を透過光量の変化から測定し、成分量を求める。免疫分析で測定される目的成分物質は、通常、血中濃度が低く、高感度な検出システムが要求される。そのため、免疫分析では、ラテックス免疫比濁法等が開発されてきた。ラテックス免疫比濁法では、ラテックス粒子表面に抗体または抗原を感作、結合させた試薬を用い、抗原抗体反応で生成する凝集塊のサイズを大きくすることで、濁度変化を大きくし、高感度な測定を可能とする。
【0018】
光散乱検出法は、一般的に、低濃度検体では検出感度が高く定量性が良いが、高濃度検体では、凝集塊が多く、多重散乱の影響によって、定量性が良くない。一方、吸光光度法は、一般的に、低濃度検体での検出感度は高くないが、光散乱検出法と比べ、高濃度検体では定量性が良く、定量可能な濃度範囲も広い。吸光光度法を用いる光度計である吸光光度計と、光散乱検出法を用いる光度計である散乱光度計とでは、上記のように、測定および定量が可能な範囲を含め特性に違いがある。そこで、近年では、それらの2種類の両方の光度計の特性の違いを利用し、2種類の光度計を1台に搭載して測定のダイナミックレンジを広げた自動分析装置が開発されている。この自動分析装置では、例えば、低濃度領域では散乱光度計の測定結果を使用し、高濃度領域では吸光光度計の測定結果を使用する。
【0019】
特許文献1では、光度計の選択基準について、各光度計の検量線の作成に用いる標準液の測定値のばらつきから、高感度な光度計を選択する手法が開示されている。また、予め複数の濃度範囲が設定され、光度計の測定値が該当する濃度範囲に応じて、2種類の光度計を切り替える手法が開示されている。
【0020】
本発明の実施の形態に対する比較例の自動分析装置として、従来の2種類の光度計として、吸光光度法を用いる吸光光度計および光散乱検出法を用いる散乱光度計を備える自動分析装置を考える。また、この自動分析装置では、2種類の光度計を用いて同時に測定および分析を行う機能である同時分析機能を有するとする。また、この自動分析装置では、測定時の異常等の検知に応じて測定結果にデータアラームを付記する機能であるデータアラーム機能を有するとする。また、この自動分析装置では、同時分析の際、2種類の光度計の測定結果から、所定の判断に基づいて、いずれか一方の好適な測定結果を選択して出力する機能を有するとする。その出力選択のための判断基準および方式としては、例えば、対象検体の濃度について、好適な定量範囲を持つ方の光度計の測定結果を選択する方式が挙げられる。
【0021】
しかしながら、この比較例の自動分析装置では、同時分析の際、測定時の異常等があった場合には、2種類の測定結果に伴って2種類のデータアラームが生じる場合がある。吸光光度計と散乱光度計とで、それぞれ独立に、測定結果およびデータアラームが得られる。この場合に、2種類の測定結果およびデータアラームから、どのように出力する測定結果およびデータアラームを選択すれば好適であるかについて、従来では未検討であった。比較例の装置で、上記2種類の測定結果およびデータアラームが生じた場合に、信頼性が低い方の測定結果およびデータアラームを選択して出力してしまうことは、ユーザの判断ミスや結果報告遅延等につながるため、望ましくない。
【0022】
(実施の形態1)
図1図14を用いて、本発明の実施の形態1の自動分析装置および自動分析方法について説明する。実施の形態1の自動分析方法は、実施の形態1の自動分析装置において実行されるステップを有する方法である。
【0023】
実施の形態1の自動分析装置は、2種類の光度計として吸光光度計および散乱光度計を備え、データアラーム機能および同時分析機能等を有する。データアラーム機能は、測定時の異常等を検知した場合に、測定結果にその異常等に応じたデータアラームを付記する機能である。同時分析機能は、2種類の光度計を用いて同時に測定および分析(「吸光・散乱同時分析」)を行う機能である。実施の形態1の自動分析装置は、同時分析の際、検査項目の目的成分物質や、各種の光度計の好適な定量範囲に応じて、複数の測定結果から好適な測定結果を選択する機能を有し、広いダイナミックレンジでの測定が可能である。
【0024】
そして、実施の形態1の自動分析装置は、同時分析の際、測定時の異常等に応じて、2種類の測定結果およびデータアラームが得られた場合でも、好適に測定結果およびデータアラームを選択して出力する機能(出力制御機能と記載する場合がある)を有する。この機能では、データアラームの組み合わせに応じて、出力する測定結果およびデータアラーム等を好適に選択する。なお、測定結果は、測定値や計算値等の定量値、シグナル値、分析結果情報等を含む。
【0025】
さらに、実施の形態1の自動分析装置では、自動再検機能も有し、上記のように2種類の測定結果およびデータアラームが得られた場合でも、上記出力制御機能によって、好適に自動再検を制御する。すなわち、実施の形態1の自動分析装置は、データアラームの組み合わせに応じて、出力する測定結果、データアラーム、および自動再検情報を好適に選択し、自動的な再測定等を制御する。なお、自動再検情報は、自動再検の要否、使用する光度計の識別情報、再測定条件(例えば検体の希釈等の条件)等を含む。
【0026】
[自動分析装置]
図1は、実施の形態1の自動分析装置1の全体概略構成を示す。自動分析装置1は、検体ディスク10、反応ディスク20、試薬ディスク30、検体分注機構41、試薬分注機構42、コンピュータ100、インタフェース回路101等を備える。検体ディスク10には駆動部12を備える。反応ディスク20には駆動部22を備える。試薬ディスク30には駆動部32を備える。また、反応ディスク20には、吸光光度計44と散乱光度計45との2種類の光度計が設置されている。また、反応ディスク20には、恒温槽28を備える。また、反応ディスク20には、撹拌部43や洗浄部46等が設置されている。
【0027】
コンピュータ100は、分析制御部50、記憶部70、出力部71、入力部72等を備える。分析制御部50は、信号線等を含むインタフェース回路101を通じて、各駆動部や各機構と接続されている。コンピュータ100は、例えばPCで構成されるが、これに限らず、LSI基板等の回路基板で構成されてもよいし、それらの組み合わせで構成されてもよい。記憶部70は、ROM、RAM、不揮発性記憶装置等の記憶装置で構成される。
【0028】
検体ディスク10には、複数の検体カップ15が設置され保持されている。検体カップ15は、検体2を収容する検体容器である。各検体カップ15は、検体ディスク10のディスク本体11上に、周方向に沿って相互に離間させて並設されて保持されている。
【0029】
検体ディスク10の駆動部12は、分析制御部50(図2の制御部53)からの制御に従って検体ディスク10を駆動制御する。その際、駆動部12は、ディスク本体11を回動させて、複数の検体カップ15を周方向に沿って移動させる。検体ディスク10は、駆動部12の駆動制御によって、ディスク本体11に設置されている複数の検体カップ15のうちの1つの検体カップ15を、周方向に沿った所定位置に配置する。所定位置は、例えば検体分注機構41による検体吸入位置等である。
【0030】
なお、図1の構成例では、検体ディスク10は、複数の検体カップ15がディスク本体11上に周方向に沿って一列の円周に配置されている。これに限らず、ディスク本体11の同心円状に複数列に検体カップ15が配置される構成としてもよい。また、図1の構成例では、ディスク方式の検体ディスク15を有するが、これに限らず、ラック方式としてもよい。ラック方式では、複数の検体容器が1次元または2次元で配列されて保持される検体ラックを用いる。
【0031】
試薬ディスク30は、反応ディスク20の隣に設置されている。試薬ディスク30のディスク本体31には、複数の試薬ボトル35が設置され保持されている。試薬ボトル35は、試薬4を収容する試薬容器である。各試薬ボトル35は、ディスク本体31の周方向に沿って相互に離間させて並設されて保持されている。試薬ボトル35には、自動分析装置1での検査項目の目的成分物質に応じた種類の試薬4が収容されている。試薬4の種類毎に、別々の試薬ボトル35に収容されている。
【0032】
試薬ディスク30の駆動部32は、分析制御部50からの制御に従って、ディスク本体31を回動させて、複数の試薬ボトル35を周方向に沿って移動させる。試薬ディスク30は、駆動部32の駆動制御によって、ディスク本体31に設置されている複数の試薬ボトル35のうちの使用する1つの試薬ボトル35を、試薬ディスク30の所定位置に配置する。所定位置は、例えば試薬分注機構42による試薬吸入位置等である。
【0033】
試薬ディスク30には、冷却機構を備えた試薬保冷庫38が設けられている。ディスク本体31上に配置されている複数の試薬ボトル35は、ディスク本体31が回動しても、試薬保冷庫38の冷却環境に常時保持された状態で冷却される。これにより、試薬4の劣化防止が図られている。試薬保冷庫38の冷却機構としては、例えば、低温水を循環する方式、あるいはペルチェ素子により気相中にて冷却する方式等が用いられる。
【0034】
反応ディスク20は、検体ディスク10と試薬ディスク30との間に設置されている。反応ディスク20のディスク本体21には、複数の反応容器25が設置され保持されている。反応容器25は、反応液3が作製される容器である。反応液3は、検体2と試薬4との混合液である。検体分注機構41によって反応容器25内に検体2が分注され、試薬分注機構42によって試薬4が分注され、その検体2と試薬4との混合液によって反応液3が作製される。各反応容器25は、ディスク本体21の周方向に沿って相互に離間させて並設されて保持されている。反応容器25は、吸光光度計44および散乱光度計45による測定のために、透光性材料により構成されている。反応ディスク20の駆動部22は、分析制御部50からの制御に従って、ディスク本体21を回動させて、複数の反応容器25を周方向に沿って移動させる。反応ディスク20は、ディスク本体21の回動によって、複数の反応容器25のうちの1つの反応容器25を、周方向に沿って設けられた所定位置に配置する。所定位置は、例えば検体分注機構41による検体吐出位置や、試薬分注機構42による試薬吐出位置等である。
【0035】
反応ディスク20のディスク本体21上に配置されている複数の各々の反応容器25は、恒温槽28内の恒温槽水(恒温流体ともいう)に常時浸漬されている。これにより、反応容器25内の反応液3が一定の反応温度(例えば37℃程度)に保たれる。恒温槽28内の恒温槽水は、分析制御部50(図2の恒温流体制御部54)によって、温度および流量が制御され、反応容器25に供給される熱量が制御される。
【0036】
反応ディスク20の周上および周付近には、検体分注機構41および試薬分注機構42に加え、互いの位置を異ならせて、撹拌部43、吸光光度計44、散乱光度計45、洗浄部46等が配置されている。
【0037】
検体分注機構41は、検体ディスク10と反応ディスク20との間に設置されている。検体分注機構41は、検体ディスク10の検体吸入位置の検体カップ15から検体2を吸入し、反応ディスク20の検体吐出位置の反応容器25に吐出する動作である検体分注動作を行う。検体分注機構41は、可動アームや分注ノズルを備える。分注ノズルは、可動アームに取り付けられたピペットノズルから成る。検体分注機構41は、検体分注動作の際、分注ノズルを検体ディスク10上の検体吸入位置に移動させ、検体吸入位置に配置された検体カップ15から、分注ノズル内に所定量の検体2を吸入して収容する。その後、検体分注機構41は、分注ノズルを反応ディスク20上の検体吐出位置に移動させて、検体吐出位置に配置された反応容器25内に、分注ノズル内の検体2を吐出する。
【0038】
試薬分注機構42は、試薬ディスク30と反応ディスク20との間に設置されている。試薬分注機構42は、試薬ディスク30の試薬吸入位置の試薬ボトル35から試薬4を吸入し、反応ディスク20の試薬吐出位置の反応容器25に吐出する動作である試薬分注動作を行う。分注される試薬4は、対象の検体2に対応して設定された分析項目(検査項目等とも呼ばれる)である目的成分物質の定量に用いられる試薬である。試薬分注機構42は、同様に、可動アームや分注ノズルを備える。試薬分注機構42は、試薬分注動作の際、分注ノズルを試薬ディスク30上の試薬吸入位置に移動させ、試薬吸入位置に配置された試薬ボトル35から分注ノズル内に所定量の試薬4を吸入して収容する。その後、試薬分注機構42は、分注ノズルを反応ディスク20上の試薬吐出位置に移動させて、試薬吐出位置に配置された反応容器25内に、分注ノズル内の試薬4を吐出する。
【0039】
検体分注機構41および試薬分注機構42には、異なる種類の検体2あるいは試薬4の分注に備えて、それぞれ、洗浄槽46が設けられている。洗浄槽46は、分注ノズルを洗浄するための機構である。各分注機構は、各分注ノズルを、分注動作の前後に洗浄槽46で洗浄する。これにより、検体2同士あるいは試薬4同士のコンタミネーションが防止される。また、各分注機構の分注ノズルには、検体2あるいは試薬4の液面を検知するセンサが備え付けられている。これにより、検体2あるいは試薬4の不足による測定異常が監視および検知可能である。加えて、検体分注機構41には、分注ノズルの詰まりを検知する圧力センサが備え付けられている。これにより、検体2に含まれるフィブリン等の不溶性物質が分注ノズルに詰まることで発生する分注異常が監視および検知可能である。分析制御部50は、それらのセンサを含む機構を通じて、測定時の各種の異常等を監視および検知可能である。
【0040】
撹拌部43は、反応ディスク20上の所定位置である撹拌位置に配置された反応容器25内の検体2と試薬4との混合液を撹拌する。これにより、反応容器25内の混合液は、均一に攪拌されて、その反応が促進され、反応液3として作製される。撹拌部43には、例えば攪拌翼を備える攪拌機、あるいは超音波を用いた攪拌機構を備える。
【0041】
2種類の光度計における、第1種光度計として1つの吸光光度計44を有し、第2種光度計として1つの散乱光度計45を有する。吸光光度計44および散乱光度計45の各光度計は、基本的な構造として、光源および受光部を有する。各光度計の光源は、例えば、反応ディスク20の内周側に配置されており、各光度計の受光部は、反応ディスク20の外周側に配置されている。各光度計は、分析制御部50(図2の測定部51)と接続されている。
【0042】
吸光光度計44は、反応ディスク20上の所定位置である測定位置(特に第1測定位置)に配置された反応容器25の反応液3についての測定を行う。散乱光度計45は、反応ディスク20上の所定位置である測定位置(特に第2測定位置)に配置された反応容器25の反応液3についての測定を行う。図1の構成例では、吸光光度計44および散乱光度計45の2つの光度計は、反応ディスク20の周上で、反応ディスク20の回動中心を通る対角線上に対向する所定位置に設置されている。第1測定位置に対して吸光光度計44が、第2測定位置に対して散乱光度計45が配置されている。なお、周上、第1測定位置と第2測定位置との間の所定位置には、撹拌部43や洗浄部46が配置されている。
【0043】
吸光光度計44は、光源から第1測定位置の反応容器25の反応液3に光を照射する。その際、吸光光度計44は、反応液3から得られる透過光を、受光部によって検出し、単一または複数の波長の透過光の光量または光強度の少なくとも一方(光量/光強度と記載する場合がある)を測定する。また、吸光光度計44は、その測定値に基づいて、所定の計算によって、濃度等の定量値を得てもよい。吸光光度計44は、測定値または計算値を含む信号を出力する。
【0044】
散乱光度計45は、光源から第2測定位置の反応容器25の反応液3に光を照射する。その際、散乱光度計45は、反応液3から得られる散乱光を、受光部によって検出し、散乱光の光量または光強度の少なくとも一方(光量/光強度)を測定する。また、散乱光度計45は、その測定値に基づいて、所定の計算によって、濃度等の定量値を得てもよい。散乱光度計45は、測定値または計算値を含む信号を出力する。
【0045】
洗浄部46は、反応ディスク20上の洗浄位置に配置された反応容器25についての洗浄を行う。洗浄部46は、測定および分析が終了した反応容器25から、残っている反応液3を排出し、その反応容器25を洗浄する。洗浄された反応容器25は再使用可能となる。すなわち、その反応容器25には、再び、検体分注機構41から次の検体2が分注され、試薬分注機構42から次の試薬4が分注されることになる。
【0046】
[分析制御部]
図2は、図1の構成のうち主に分析制御部50の機能ブロック構成を示す。分析制御部50は、自動分析装置1の全体および自動分析シーケンスを制御し、測定を含む分析を制御する。分析制御部50は、インタフェース回路101、出力部71、入力部72等と接続されている。分析制御部50は、出力部71に対して出力(すなわち画面表示や音声出力等)を行う。分析制御部50は、入力部72からの入力(すなわちユーザによる操作等)を受け付ける。自動分析装置1のユーザは、出力部71および入力部72を介して臨床検査に関わる操作や作業を行う。出力部71は、表示装置等の出力装置を含む。表示装置の表示画面には、分析制御部50の出力制御によって、測定結果やデータアラーム等の情報が表示される。出力部71は、音声出力装置を含んでもよく、アラーム音声を発してもよい。入力部72は、キーボードやマウス、あるいは操作ボタンを含む操作パネル等の入力装置を含む。
【0047】
コンピュータ100および分析制御部50は、実装例としてPCで一体的に実現できるが、これに限らず実装可能である。分析制御部50は、例えばPCのCPU等のマイクロプロセッサによって、記憶部70から読み出したプログラムに従った処理を実行する。これにより、測定部51等の各部が実現される。分析制御部50は、ソフトウェアプログラム処理等によって実現される機能ブロックとして、測定部51、解析部52、制御部53、恒温流体制御部54、データ格納部55、同時分析判定部56、自動再検判定部57、測定時異常チェック部58、優先出力判定部59、および優先出力アラーム判定部60を有する。分析制御部50は、後述の同時分析機能、測定結果選択機能、データアラーム機能、出力制御機能、および自動再検機能等を含む各種の機能を制御する。分析制御部50は、主に測定部51、解析部52、および制御部53によって、分析依頼があった検体2についての分析処理として、自動分析装置1の各機構や部位の作動制御処理、測定データ制御処理等を行う。
【0048】
データ格納部55は、記憶部70を用いて構成され、各種のデータの読み書き等を行う。データ格納部55には、分析に係わる、測定結果、データアラーム、および自動再検情報等を含む各種のデータが格納される。
【0049】
測定部51は、2種類の光度計である吸光光度計44および散乱光時計45の測定値等を含む信号を入力して、測定処理を行う。この測定処理は、所定の計算を含む。この計算は、例えば、測定値である光量/光強度に基づいて目的成分物質の濃度を計算すること、あるいは、測定値である光量から光強度を計算すること等である。測定部51は、測定結果(測定値や計算値)を、測定データとして、データ格納部55に格納する。
【0050】
解析部52は、データ格納部55の測定結果の測定データを参照して、自動分析に対応する解析処理を行う。この解析処理は、例えば測定データの光強度から検量線を用いて濃度を計算することである。あるいは、この解析処理は、計算済みの濃度を用いて、目的成分物質の成分量を計算することである。また、解析部52は、それぞれの種類の光度計の測定結果毎に、測定時の異常等の有無を判断し、その異常等がある場合には、その測定結果に、その異常等を表すデータアラームを付記する。なお、解析部52での判断は、光度計の種類毎に独立した判断である。なお、解析部52は、測定時の異常等の判断の際には、制御部53によってデータ格納部55に格納された制御結果情報等を参照して判断を行う。
【0051】
制御部53は、自動分析シーケンスに従い、各機構の駆動制御を行う駆動制御部である。制御部53は、データ格納部55に格納された対象の検体2の分析依頼情報等に基づいて、駆動制御を行う。制御部53は、駆動部12、駆動部22、駆動部32、検体分注機構41、試薬分注機構42、吸光光度計44、散乱光時計45等の各機構を含む各部位を制御する。例えば、駆動部12は、制御部53からの制御に従って、検体ディスク10を駆動して回動させる。また、例えば、制御部53は、検体分注機構41を駆動制御して検体分注動作を行わせる。また、例えば、制御部53は、吸光光度計44を駆動制御して、所定の期間の各測定時点で測定を行わせる。制御部53は、分析時、各部位の動作を制御し、その制御の状態や結果を表す制御結果情報を、データ格納部55に格納する。なお、機構に異常等がある場合や、機構で異常等を検出した場合には、制御結果情報に、その異常等を表す情報が含まれている。
【0052】
制御部53は、検体ディスク10等の各ディスクを回動させ、各ディスクの所定位置に対象の検体カップ15等の容器を配置する。ディスクの回動によって、各容器は、周上で単位距離の回転移動と静止とを繰り返す。制御部53は、各ディスクや検体分注機構41等の動作の制御によって、反応ディスク20上の複数の各々の反応容器25に、複数の各々の検体2の反応液3を作製する。そして、制御部53は、同時分析の場合、2種類の光度計の制御によって、反応ディスク20上の各測定位置に配置された対象の反応容器25の反応液3について、光量/光強度の測定を行わせる。
【0053】
恒温流体制御部54は、反応ディスク20の恒温槽28内の恒温槽水の温度および流量を制御して、反応容器25内の反応液3の温度を調整する。
【0054】
同時分析判定部56は、同時分析の場合の2種類の光度計の測定結果およびデータアラームに基づいて、出力制御のための判定を行う。自動再検判定部57は、言い換えると異常等判定部であり、一方の種類の光度計を用いた測定結果について、測定時の異常等に基づいて、自動再検の要否等を判定する。測定時異常チェック部58は、2種類の光度計の測定結果に、データアラームで表される異常等が発生していたかどうかを判定、チェックする。優先出力判定部59は、2種類の光度計の測定結果について、所定の判断や優先出力設定の判断に基づいて、優先して出力する測定結果等を判定する。優先出力アラーム判定部60は、2種類の測定結果に付記されている2種類のデータアラームのうち優先して出力するデータアラーム等を判定する。
【0055】
[光度計の特性]
図3は、実施の形態1で用いる2種類の光度計である吸光光度計44および散乱光時計45の特性を示す。2種類の光度計は、図3のように、定量範囲の特性が異なる。図3のグラフで、対象検体の目的成分物質の濃度に関して、横軸は理論値(単位[U/mL])、縦軸は各光度計の測定値(単位[U/mL])である。破線の領域は、第1種光度計である吸光光度計44の定量範囲を示す。一点鎖線の領域は、第2種光度計である散乱光度計45の定量範囲を示す。範囲301は、吸光光度計44の定量範囲のうちの正常出力範囲を示す。正常出力範囲は、言い換えると、好適に測定および定量が可能な範囲を示す。範囲302は、散乱光度計45の定量範囲のうちの正常出力範囲を示す。範囲303は、それらの2種類の範囲301,302における重複範囲を示す。範囲303は、基本的にいずれの種類の光度計の測定結果を使用してもよい範囲である。分析制御部50では、出力制御用に、予め、光度計毎の好適な定量範囲が設定されている。すなわち、範囲301、範囲302、範囲303等に対応する各範囲(少なくともその範囲を規定する上限値や下限値等)が設定されている。
【0056】
吸光光度計44の範囲301では、概ね、基準直線300を中心として狭い幅(理論値に対する測定値の範囲)を持つ形状であり、線形の特性となっている。範囲301よりも値が小さい範囲では、基準直線300よりも広がる幅を持つ形状であり、誤差が大きい特性となっている。散乱光度計45の範囲302では、概ね、基準直線300を中心とする狭い幅を持つ形状であり、線形の特性となっている。範囲302よりも値が大きい範囲では、基準直線300よりも下側の領域で広がる幅を持つ形状であり、誤差が大きい特性となっている。
【0057】
分析制御部50は、同時分析で2種類の測定結果が得られた際、以下のように、上記特性(対応する範囲)の判断に基づいて、出力する測定結果を選択する。この判断は、後述の対応表の規定に含まれている。目的成分物質の濃度について、相対的に高濃度の範囲(例えば10U/mL程度以上の範囲)については、範囲301で示すように、吸光光度計44の定量の方が正確であり、好適である。そのため、吸光光度計44の測定結果が出力として選択される。また、反対に、相対的に低濃度の範囲(例えば5U/mL程度以下の範囲)については、範囲302で示すように、散乱光度計45の定量の方が正確であり、好適である。そのため、散乱光度計45の測定結果が出力として選択される。
【0058】
さらに、範囲303に対応した、相対的に中程度の濃度の範囲(例えば5U/mL程度以上で10U/mL程度以下の範囲)では、2種類の測定結果のいずれも基本的には使用可能である。この範囲の場合、例えば後述の優先出力設定に応じて、いずれかの一方の種類の光度計の測定結果が出力として選択される。検査項目毎に、優先出力設定を有する。
【0059】
[優先出力設定]
優先出力設定は、吸光光度計44と散乱光度計45との2種類のいずれの光度計の測定結果およびデータアラームを優先的に使用および出力するかについての設定である。自動分析装置1は、優先出力設定機能を有し、予め事業者によって実装上のデフォルト設定として優先出力設定が行われており、対応する優先出力設定情報が記憶されている。優先出力設定情報として、いずれの種類の光度計を優先するかが、優先順位等の所定の形式の値で設定されている。優先出力設定情報は、例えば予め入力部72を通じて設定可能である。自動分析装置1では、優先出力設定機能のオン状態またはオフ状態も設定されており、その状態も事業者またはユーザによって可変設定できる。優先出力設定機能を無効にしたい場合にはオフ状態に設定される。後述のように、オン状態の場合には、優先出力設定情報に基づいて、優先出力判定が行われ、オフ状態の場合には行われない。
【0060】
[吸光・散乱同時分析機能]
自動分析装置1は、上記2種類の光度計の特性に基づいて、対象の検体2について、2種類の光度計を用いて同時に測定および分析を行う機能である同時分析機能を有する。自動分析装置1は、検体2の目的成分物質についての同時分析依頼を受けた場合、吸光・散乱同時分析を行う。この機能では、対象の同じ1つの検体2の同じ1つの検査項目の目的成分物質について、吸光光度計44による測定と散乱光度計45による測定とを行い、2種類の測定結果を得る。その際、自動分析装置1は、対象の検体2の反応容器25の反応液3の反応過程を、2種類の光度計を用いて概略同時に測定する。なお、反応ディスク20上の2種類の測定位置で各測定を行うので、所定の時間差を有する。なお、反応過程は、光度計の測定位置に反応容器25が静止する所定の時間における、時間軸上の所定の複数回の時点毎の測定を含む、継続的な測定過程である。
【0061】
自動分析装置1は、同時分析の際の2種類の測定結果から、上記特性に基づいて、好適な測定結果を選択する。自動分析装置1は、相対的に高濃度範囲(例えば範囲301から範囲303を除いた範囲)に該当する場合には、吸光光度計44の方の測定結果を選択して吸光分析を行う。自動分析装置1は、相対的に低濃度範囲(例えば範囲302から範囲303を除いた範囲)に該当する場合には、散乱光度計45の測定結果を選択して散乱光分析を行う。これにより、高濃度および低濃度を含む広い濃度範囲で、精度良く測定および分析が可能である。
【0062】
[自動再検機能]
自動分析装置1は、測定時の異常等が検知された場合に、所定の判断に応じて、自動的に再検査を行うように制御する機能である自動再検機能を有する。実施の形態1では、この自動再検機能は、データアラーム機能および出力制御機能との関連で制御される機能である。出力制御機能は、自動再検機能のための自動再検情報を選択する機能を含む。
【0063】
測定時の異常等として、例えば検体濃度異常等の軽微な異常等の場合には、検体2の希釈や検体量の低減または増量等の対処の後に、再測定を行うことで、適切な結果が得られる可能性が高いと推測される。そのため、自動分析装置1では、測定時の異常等を検知した場合、対応するデータアラームの組み合わせに応じて、自動再検の要否および必要の場合の再測定条件等を、出力の一部の自動再検情報として選択する。そして、自動分析装置1は、自動再検機能によって、その自動再検情報に従い、自動的に再測定を制御し、再検査の結果を出力する。
【0064】
なお、自動分析装置1は、自動再検を行う場合、自動再検依頼情報および自動再検情報に従って、対象の検体2が格納されている検体カップ15から新たな検体2を採取して、反応容器25に格納する分注等を含む再処理を行う。自動分析装置1は、その反応容器25に対し、選択された種類の光度計を用いて再測定を行う。なお、自動再検の結果に、さらにデータアラームが付記される場合には、データアラームの組み合わせに応じた出力選択を同様に適用してもよいし、適用しない形態としてもよい。
【0065】
[データアラーム機能]
自動分析装置1は、光度計の測定結果に対し、検知された異常等を表すデータアラームを付記する機能であるデータアラーム機能を有する。自動分析装置1は、同時分析の場合にも、2種類の光度計の各測定結果に対し、異常等の検知に応じて、それぞれのデータアラームを付記する。特に、解析部52は、吸光光度計44の測定の際に、異常等があった場合には、吸光光度計44の第1測定結果に、その異常等を表す第1データアラームを付記する。また、解析部52は、散乱光度計45の測定の際に、異常等があった場合には、散乱光度計45の第2測定結果に、その異常等を表す第2データアラームを付記する。データアラームが付記された測定結果を含む解析データが、データ格納部55に格納される。
【0066】
[出力制御機能]
上記測定時に異常等があった場合で、複数(2種類)の光度計の全て(両方)の測定結果にデータアラームが付記される場合が生じ得る。自動分析装置1は、その場合に、データアラームの組み合わせに応じて、出力する測定結果およびデータアラーム等を選択する機能である出力制御機能を有する。また、この出力制御機能は、自動再検機能を制御する機能を含み、出力する自動再検情報を選択する機能を含む。
【0067】
[測定時の異常等の例]
自動分析装置で発生し得る異常やエラー等の例として以下が挙げられる。機構の異常の例としては、検体量の不足、試薬量の不足、検体2に含まれるフィブリンの流路詰まりによる分注ミス、検体2の成分の異常等が挙げられる。検体2の成分の異常の例としては、検体濃度異常として、検体2の濃度が光度計の定量範囲の外になる場合が挙げられる。すなわち、検体2の濃度が、光度計の定量範囲に比べて高すぎる場合または低すぎる場合が挙げられる。また、血球成分の溶出による検体2の赤色変化の場合や、脂質異常症患者にみられる検体2の濁りが発生している場合等が挙げられる。
【0068】
[データアラーム]
図4は、自動分析装置1における、発生し得る異常やエラー等に応じて出力され得る複数の種類のデータアラームについての分類の定義を、表形式で示す。以下、まず、各種の異常やデータアラームについて説明する。一般的に、自動分析装置では、測定および分析中に発生する異常やエラー等に基づいて、ユーザに注意喚起するための技術的手段として、大別して以下の2つがある。
【0069】
第1手段は、測定結果にデータアラームを付記して出力する技術である。この技術では、各検体に対して1つ以上存在する検査項目の目的成分物質のそれぞれの測定結果について、正常か異常かを表す識別情報、および異常の場合にはその異常等の種別を表す所定の情報を、データアラームとして付記する。異常等の種別を表す情報は、例えば識別コード、マーク、説明文等が挙げられる。
【0070】
ユーザは、自動分析装置からデータアラーム付きの測定結果の情報が出力された場合、表示画面でその情報をみて確認することで、発生した異常等の種別を認識できる。そして、ユーザは、そのデータアラームで表される異常等に応じて、対処作業等を行う。例えば、ユーザは、そのデータアラームの識別コードや、自動分析装置の操作マニュアル(紙に限らず表示画面でのガイドでもよい)等に従って、対処作業を行う。対処作業は、自動分析装置の異常等の状態を正常に戻るように改善して再検査が可能な状態にするための作業や操作である。
【0071】
第2手段は、システムアラームを出力する技術である。この技術では、例えば温度異常や、機構の異常等、自動分析装置の全体に関わる異常を、システムアラームとして、ユーザに対しアラーム(例えば音声出力)を発する。なお、システムアラームについても、データアラームのうちの1種として、システムアラーム識別情報を付記したデータアラームとして、画面表示させることが可能である。
【0072】
実施の形態1の自動分析装置1は、少なくとも上記第1手段に対応するデータアラーム機能を有する。自動分析装置1では、図4のように、異常等の種別に応じて予め定義される複数の種類のデータアラームを有する。実施の形態1で、複数の種類のデータアラームは、以下に示すように、3つのグループおよびレベルに大別される。図4の表で、(A)は、高レベルおよび第1グループのデータアラーム、(B)は、中レベルおよび第2グループのデータアラーム、(C)は、低レベルおよび第3グループのデータアラームを示す。なお、高、中、低は、相対的なものである。
【0073】
(A)第1グループおよび高レベル: 第1グループおよび高レベルは、異常等があるため正確な測定結果を得るためには再検査が必要であるが、そのためにはユーザによって状態が改善された後でなければその再検査ができないという場合に対応する。状態の改善とは、検体2や試薬4の改善、すなわち反応容器25の反応液3の改善や、分注機構や洗浄機構等の機構の状態の改善を含む。状態の改善とは、例えば、反応容器25の反応液3の検体量が多い場合に検体2を減量した状態に変更することや、検体量が少ない場合に検体2を増量した状態に変更すること等である。自動分析装置1は、このような場合に、出力制御として、高レベルのデータアラームを出力させ、自動再検については即座には行わないようにし、ユーザによる状態の改善を含む対処作業や操作を促す。自動分析装置1は、状態が改善された状態となった後に、自動再検を行わせる。
【0074】
(B)第2グループおよび中レベル: 第2グループおよび中レベルは、異常等があるために再検査が必要であるが、そのためにユーザの操作を必要とせずにその再検査が可能である場合に対応する。この場合は、再測定条件を制御した再検査によって、良好な測定結果が得られると推測できる場合に対応する。自動分析装置1は、この場合に、再測定条件として、例えば反応液3の試薬量を、前回の測定時(すなわち異常等が検知された測定時)と同じ条件、または増量した条件、または減量した条件とする。自動分析装置1は、このような場合に、中レベルのデータアラームを出力させ、その再測定条件で再測定を行わせることで、良好な測定結果の取得を試みる。
【0075】
(C)第3グループおよび低レベル: 第3グループおよび低レベルは、得られた測定結果において、再測定が不要であり、その測定結果を参考値として取り扱って出力が可能な場合に対応する。自動分析装置1は、この場合に、低レベルのデータアラームを出力させる。
【0076】
上記各グループおよびレベルのデータアラームは、さらに、以下のように各種のデータアラームを含むものとして定義される。なお、各データアラームは、説明上および実装上、識別コード等が付けられる。識別コードの例を“A1”,“B1”等で示す。
【0077】
(A) 第1グループおよび高レベルのデータアラームは、例えば以下の5つのデータアラームがある。図4の(A)には、対応する表部分を示す。表の各行で、括弧内の“A1”等は、データアラームの識別コードを示す。本例では、検体不足アラームA1、試薬不足アラームA2、詰まり検知アラームA3、洗剤不足アラームA4、光度計異常アラームA5を有する。
【0078】
(1) 検体不足アラームA1は、検体分注機構41に備える液面検知センサ等によって、検体カップ15または反応容器25内の反応液3の検体2の量が不足であると判定された際に発生するデータアラームである。
【0079】
(2) 試薬不足アラームA2は、試薬分注機構42に備える液面検知センサ等によって、試薬ボトル35または反応容器25内の反応液3の試薬4の量が不足であると判定された際に発生するデータアラームである。
【0080】
(3) 詰まり検知アラームA3は、検体分注機構41に備える圧力センサ等によって、検体2の吸引時に分注ノズルに異物が混入した場合等、流路に詰まりが発生したと判定された際に発生するデータアラームである。
【0081】
(4) 洗剤不足アラームA4は、洗浄部46での分注ノズルや反応容器25の洗浄に用いる洗剤の不足によって発生するデータアラームである。
【0082】
(5) 光度計異常アラームA5は、吸光光度計44や散乱光度計45における光学系や基板等(前述の光源や受光部)に異常が検知された場合に発生するデータアラームである。
【0083】
(B) 第2グループおよび中レベルのデータアラームは、大別して、(B-1)反応過程異常に由来するデータアラームと、(B-2)検体濃度異常に由来するデータアラームとがある。それぞれ、例えば以下のようなデータアラームが挙げられる。図4の(B)には、対応する表部分を示す。
【0084】
(B-1)反応過程異常に由来するデータアラームとしては、セルブランク異常アラームB1、吸光度差異常アラームB2、散乱光強度差異常アラームB3、計算不能アラーム等が挙げられる。
【0085】
(1) セルブランク異常アラームB1は、検体2の目的成分物質の分析前に測定されるセルブランク値が、自動分析装置1に事前に記憶されているセルブランク値と乖離した場合、または比較対象とする別の反応容器のセルブランク値と乖離していた場合に発生するデータアラームである。なお、セルブランク値は、反応容器25に反応液3が入れられていない状態での光学的な測定値である。
【0086】
(2) 吸光度差異常アラームB2は、吸光光度計44で測定した目的成分物質の反応過程における、特定の測定時点間の吸光度差または吸光度変化率が、事前に設定されている規定の閾値に満たない場合、または閾値を超える場合に発生するデータアラームである。
【0087】
(3) 散乱光強度差異常アラームB3は、散乱光度計45で測定した目的成分物質の反応過程における、特定の測定時点間の散乱光強度差または散乱光強度変化率が、事前に設定されている規定の閾値に満たない場合、または閾値を超える場合に発生するデータアラームである。
【0088】
これらの反応過程異常に由来するデータアラームは、自動分析装置1の機構、検体2、試薬4等に異常がある可能性は低いため、ユーザによる状態改善作業無しで自動再検が可能な場合に対応する。そのため、この場合、自動分析装置1は、出力制御として、正確な測定結果を得るために、再測定条件として前回の測定時と同じ条件として、自動再検を行わせる。
【0089】
(B-2)試料濃度異常に由来するアラームとしては、プロゾーンアラームB4、定量範囲上限オーバアラームB5、吸光度・散乱光強度オーバアラーム、定量範囲下限オーバアラームB6、リピート上限アラーム、リピート下限アラーム等がある。
【0090】
(1) プロゾーンアラームB4は、免疫分析での検体2中の抗原または抗体の量が過剰な場合に発生するデータアラームである。これに関する判定方法としては、公知の反応速度比法や、抗原/抗体再添加法等がある。反応速度比法では、検査項目の目的成分物質の反応過程から、反応初期の単位時間当たりの吸光度変化量(または散乱光強度変化量)と反応終了時点での吸光度変化量(または散乱光強度変化量)との比を算出して、事前に設定されている閾値と比較する。抗原/抗体再添加法では、反応終了後に抗原または抗体を追加で添加し、添加直後の単位時間当たりの吸光度変化量または散乱光強度変化量を算出して、事前に設定されている閾値と比較する。
【0091】
(2) 定量範囲上限オーバアラームB5は、テクニカルリミットオーバの1つであり、事前設定されている光度計の種類毎の好適な定量範囲の上限値を超える場合に発生するデータアラームである。例えば、反応液3の検体2の濃度が、光度計の定量範囲に対して高過ぎる場合に、このデータアラームが発生する。例えば、前述の図3で、吸光光度計44での測定の場合に、検体2の濃度が、正常出力範囲301の上限値を超える場合、このデータアラームが発生する。
【0092】
(3) 定量範囲下限オーバアラームB6は、テクニカルリミットオーバの1つであり、事前設定されている光度計の種類毎の好適な定量範囲の下限値を超える場合に発生するデータアラームである。例えば、反応液3の検体2の濃度が、光度計の定量範囲に対して低過ぎる場合に、このデータアラームが発生する。例えば、前述の図3で、吸光光度計44での測定の場合に、検体2の濃度が、正常出力範囲301の下限値を下回る場合、このデータアラームが発生する。
【0093】
通常、プロゾーンアラームB4に対応する異常が発生した検体2には、目的成分物質が過剰に含まれ、濃度が高いため、定量範囲上限オーバアラームB5も同時に発生する。プロゾーンアラームB4は、定量範囲上限オーバアラームB5の場合よりも目的成分物質が過剰な場合に発生する。そのため、自動分析装置1は、これらの2つのデータアラームが同時に発生した場合には、出力制御として、プロゾーンアラームB4のみを選択して出力させる。これらのデータアラームは、自動分析装置1の機構、検体2、試薬4等には異常が無いため、自動再検が可能な場合に対応する。
【0094】
プロゾーンアラームB4や定量範囲上限オーバアラームB5が発生した場合、検体2中の目的成分物質の濃度が高過ぎることを示している。そのため、自動分析装置1は、この場合、再測定条件として、反応液3の検体量を減量した状態(または検体2を試薬4で希釈した状態)として、自動再検を行わせる。また、定量範囲下限オーバアラームB6が発生した場合、検体2中の目的成分物質の濃度が低過ぎることを示している。そのため、この場合、自動分析装置1は、再測定条件として、反応液3の検体量を増量した状態として、自動再検を行わせる。
【0095】
(C) 第3グループおよび低レベルのデータアラームとしては、例えば以下の2つが挙げられる。図4の(C)には、対応する表部分を示す。本例では、血清情報アラームC1、試薬有効期限切れアラームC2、検体キャリーオーバを有する。
【0096】
(1) 血清情報アラームC1は、血液等の検体2に目的成分物質の分析に影響を与える共存物質が混入している場合に発生するデータアラームである。共存物質には、脂質、ヘモグロビン、ビリルビン等がある。それらの共存物質が混入した検体2(異常検体ともいう)は、それぞれ、乳ビ、溶血、黄色と呼ばれる。溶血(赤色変化ともいう)と黄色は、検体2の色変化を起こすため、主に吸光光度計44への影響が大きい。乳ビは、検体2の濁度変化を起こすため、主に散乱光度計45への影響が大きい。血清情報は、上記のような共存物質に関する情報である。血清情報は、通常、検査項目の目的成分物質の分析とは別に、検体2と反応しない試薬4を用いて各共存物質に対応した波長の光を用いて検体2自体の吸光度を測定することで判定される。測定された各吸光度を、事前に設定されている各閾値と比較し、閾値を超えたものに対し、血清情報アラームC1が付加される。
【0097】
(2) 試薬有効期限切れアラームC2は、自動分析装置1に登録されている試薬4の有効期限が切れている場合に発生するデータアラームである。
【0098】
これらの低レベルのデータアラームが出力された場合、測定自体は正常に終了して測定結果が得られている。そのため、自動分析装置1は、出力制御として、その測定結果を参考値として取り扱って出力させる。また、この場合、検体2または試薬4を交換しなければ状態が改善しない。そのため、自動分析装置1は、自動再検を不要とし、行わないようにする。
【0099】
自動分析装置1の出力制御機能では、2種類の光度計の測定毎に、異常等の検知、上記データアラームの定義、および分析制御部50(特に解析部52)による所定の判断に基づいて、選択された基本的に1つのデータアラームが、測定結果に付記される。測定結果にデータアラームが付記された情報が、一旦データ格納部55に格納される。同時分析判定部56等の各部は、データ格納部55の情報を参照して、出力制御を行う。
【0100】
なお、異常等の種別によっては、1種類の光度計の測定結果に関して、複数のデータアラームが、付記の候補となる場合もある。自動分析装置1では、その場合には、事前の設定や所定の判断に基づいて、1つのデータアラームを選択して付記する。この設定は、データアラーム機能の設計事項である。例えば、予めデータアラームの定義として、複数の種類のデータアラーム(対応する異常等)の間には、重要度や優先順位が設定される。図4では図示していないが、例えばデータアラーム毎に、優先順位番号が設定される。解析部52は、候補の複数のデータアラームのうち最も優先順位が高いデータアラームを選択する。なお、変形例の自動分析装置としては、上記のような優先順位設定を持たず、1つの測定結果に複数のデータアラームが付記されてもよい。
【0101】
上記では、3つのレベルのデータアラームおよび対応する異常等についていくつかの具体例を挙げて説明したが、これらに限定されず、他の各種類の異常等およびデータアラームについても同様に適用可能である。図4の表では、識別コードを付けていない他の種類のデータアラームの例も記載しており、実施の形態では出力制御には使用しないが、他の実施の形態では同様に使用可能である。
【0102】
[分析処理(1)]
次に、自動分析装置1の出力制御機能に関するデータアラームの組み合わせに応じた出力制御処理について説明する。まず、第1段階として、図2の分析制御部50の測定部51、解析部52、および制御部53によって行われる分析処理について説明する。分析制御部50は、分析依頼を受けた対象の検体2の分析処理を行う。その際、制御部53は、分析依頼として同時分析依頼が設定されているか否かを判定する。制御部53は、同時分析依頼が設定されている場合には、測定部51および解析部52に、2種類の光度計から得られる各測定値(前述の信号)に基づいて、対象の検体2の各分析処理(吸光分析および散乱光分析)を行わせる。制御部53は、同時分析依頼が設定されておらず、2種類の光度計の一方による分析(「単一分析」として「吸光分析」または「散乱光分析」)の分析依頼が設定されている場合には、測定部51および解析部52に、対応する一方の光度計の測定値に基づいて、対象の検体2の分析処理を行わせる。
【0103】
測定部51は、光度計の種類毎に、光度計からの信号に含む測定値または計算値に基づいて、対象の検体2について、光量/光強度を測定する。測定部51は、吸光光度計44からの測定値に基づいて、その測定値が取得された反応容器25の反応液3による透過光の光量/光強度を求める。また、測定部51は、散乱光度計45からの測定値に基づいて、その測定値が取得された反応容器25の反応液3による散乱光の光量/光強度を求める。例えば、測定部51は、測定値である透過光または散乱光の光量に基づいて、光強度を計算する。そして、測定部51は、その光強度の情報を、対象の検体2が分注されている対象の反応容器25の情報、またはその検体2の分析依頼情報と対応付けた測定データとして、データ格納部55に格納する。なお、測定部51では、光強度に限らず、他のパラメータを測定や計算してもよい。また、測定データは、光度計で測定された反応過程の情報(すなわち測定時点毎の測定値等)を含む。分析依頼情報には、対象の検体2や試薬4等の情報を含む。
【0104】
解析部52は、測定部51による測定データの情報を参照し、対象の反応液3中の検体2の目的成分物質を解析し、目的成分物質の濃度または成分量の少なくとも一方(「濃度/成分量」)を求める。解析部52は、測定データにおける透過光の光量/光強度、あるいは散乱光の光量/光強度を読み出して、目的成分物質の濃度を求める。例えば、解析部52は、光強度を参照し、また、検量線の情報を参照し、その光強度から目的成分物質の濃度を計算する。その際、解析部52は、事前に作成されている、反応液3に用いられた試薬4に対応する検量線を用いて、光強度から濃度へ換算する。吸光光度計44を用いる場合、解析部52は、透過光強度を、吸光光度計44用の検量線を用いて、目的成分物質の濃度に換算する。散乱光度計45を用いる場合、解析部52は、散乱光強度を、散乱光度計45用の検量線を用いて、目的成分物質の濃度に換算する。
【0105】
検量線は、既知の濃度の目的成分物質を含んでいる標準物質等の検体を用いて求められた各目的成分物質の濃度と、透過光あるいは散乱光の光量/光強度との関係を表す。予め、データ格納部55には、試薬ディスク30の各試薬ボトル35の試薬4の検量線データが格納されている。
【0106】
そして、解析部52は、解析で得た濃度の情報を、対象の検体2の反応容器25または分析依頼の情報と対応付けた解析データとして、データ格納部55に格納する。なお、実施の形態では、測定結果として、主に、目的成分物質の濃度を扱う。なお、測定結果は、分析結果や解析結果等と言い換えも可能である。
【0107】
また、解析部52は、上記解析の際、各光度計で測定された反応過程や、解析した濃度、および事前に設定されている分析パラメータ情報等に基づいて、対象の検体2についての測定時に異常やエラー等が発生していたかどうかを判定する。その異常等の例は前述の通りである。解析部52は、測定時の異常等が発生していると判定した場合には、光度計の種類に応じた濃度を含む測定結果に、その異常等の種別に対応したデータアラームを付記し、それらを解析データとしてデータ格納部55に格納する。解析部52は、データアラームを付記する際には、図4のような分類定義および所定の判定に従って選択したデータアラームを付記する。
【0108】
制御部53は、対象の検体2の分析作業中、検体ディスク10や検体分注機構41や各光度計を含む各機構等の部位の制御と共に、それらの部位の異常やエラー等の発生を監視および判定している。制御部52で機構の異常等を検知した場合、その異常等を表す情報を含む制御結果情報が、データ格納部55に格納される。解析部52は、データ格納部55から測定データに加えてその制御結果情報を参照する。解析部52は、測定データおよび制御結果情報に基づいて、測定時の異常等の有無や、その異常等の種別を判定する。
【0109】
上記のように、第1段階として、測定部51、解析部52、および制御部53による分析結果として、測定結果を含むデータが、データ格納部55に格納される。測定時の異常等があった場合には、測定結果にデータアラームが付記されたデータが得られる。同時分析の場合には、光度計の種類毎に、それぞれのデータが得られる。その上で、分析制御部50は、第2段階として、対象の検体2についての分析結果の出力制御処理を、以下のように行う。分析制御部50は、第2段階の処理を、同時分析判定部56、自動再検判定部57、測定時異常チェック部58、優先出力判定部59、および優先出力エラー判定部60等によって行う。分析制御部50は、それらを用いて、出力部71の表示画面に対する分析結果の出力を行う。
【0110】
[分析処理(2)]
次に、図2等を参照しながら、第2段階の出力制御処理について説明する。分析制御部50は、同時分析の場合、データ格納部55を介して、上記2種類の光度計毎の測定結果を含む解析データを、同時分析判定部56に出力する。同時分析判定部56は、データ格納部55からその解析データを参照する。また、分析制御部50は、必要に応じて、自動再検判定部57、測定時異常チェック部58、優先出力判定部59、および優先出力エラー判定部60等に処理を行わせる。
【0111】
分析制御部50は、同時分析の結果を、出力部71の表示画面でユーザに対して出力する際、同時分析判定部56によって、2種類の測定結果から、前述の特性に基づいて、目的成分物質の濃度の高低等に応じて、好適な一方の測定結果を選択する。さらに、分析制御部50は、2種類の測定結果に1つ以上のデータアラームが付記されている場合には、下記のように、データアラームの組み合わせに応じて、出力する測定結果、データアラーム、および自動再検情報を選択する出力制御処理を行う。
【0112】
[対応表]
図5図8は、自動分析装置1で、出力制御に用いる、複数のデータアラームの組み合わせと出力との対応付けが定義されている対応表を示す。特に、前述の中レベルのデータアラームに関する対応表を示す。分析制御部50および出力制御機能は、このような対応表の規定に従った出力制御処理を行う。実施の形態1では、この出力制御処理が、後述の処理フローのようにソフトウェアプログラム処理として実装されている。なお、この対応表は、実装上のテーブル等として保持されていてもよいし(すなわちそのテーブルを参照して判定等が行われてもよい)、処理フローとして実装されることでそのテーブル等が省略されてもよい。
【0113】
図5は、対応表の第1部分として、前述の中レベルのデータアラームの組み合わせと出力との対応付けの第1例を示す。図5の(A)は、特に(B-1)反応過程異常に由来するデータアラームの組み合わせについて示す。対応表の第1列「吸光」は、吸光光度計44を用いた第1測定結果に関する第1データアラームを示す。第2列「散乱」は、散乱光度計45を用いた第2測定結果に関する第2データアラームを示す。すなわち、第1列と第2列との組は、2種類のデータアラームの組み合わせを示す。対応表の第3列「出力」は、第1列と第2列との組である場合に選択される出力内容として特に測定結果に関する選択を示す。対応表の第4列「再検」は、選択される1つである自動再検機能による自動再検の要否(有無)を示す。対応表の第5列「条件」は、選択される1つである自動再検依頼を行う場合の自動再検条件(すなわち再測定条件等)を示す。
【0114】
図5の(A)では、第1列「吸光」や第2列「散乱」の値として、図4に従って、1.「吸光度差異常」(B2)/「散乱光強度差異常」(B3)と、2.「セルブランク異常」(B1)と、3.「計算不能」とを有する。これらの3種類の値の組み合わせとして、3×3=9の組み合わせがある。ここでは吸光度差異常アラームB2と散乱光強度差異常アラームB3とを1つにまとめているが、さらにそれらの組み合わせを考えてもよい。各組み合わせの行毎に、第3列「出力」、第4列「再検」、第5列「条件」の値が規定されている。第3列「出力」の値としては、「吸光」(値1)、「散乱」(値2)、「優先」(値3)の3種類の値がある。「吸光」(値1)は、吸光光度計44の方の第1測定結果および第1データアラームの選択を表す。「散乱」(値2)は、散乱光度計45の方の第2測定結果および第2データアラームの選択を表す。「優先」(値3)は、優先出力設定の判定に従った、2種類の一方の測定結果およびデータアラームの選択を表す。第4列「再検」の値としては、「有」(値1)、「無」(値2)の2種類の値がある。「有」(値1)は、自動再検の必要(有り)を表す。「無」(値2)は、自動再検の不要(無し)を表す。第5列「条件」の値としては、「同」(値1)、「減量」(値2)、「増量」(値3)の3種類の値がある。「同」(値1)は、前回の測定時と同じ条件(再測定条件等)を表す。「減量」(値2)は、前回の測定時の条件に対して検体2を減量した条件に変更することを表す。「増量」(値3)は、前回の測定時の条件に対して検体2を減量した条件に変更することを表す。
【0115】
例として、第1行の組み合わせ(1-1)では、「吸光」-「散乱」のデータアラームの組として「B2/B3」-「B2/B3」であり、「出力」=「優先」(値3)、「再検」=「有」(1)、「条件」=「同」(値1)である。この場合、分析制御部50は、優先出力設定の判定に従って一方の光度計の測定結果およびデータアラーム(B2/B3)を選択して出力し、前回と同じ条件で自動再検依頼を行う自動再検情報とする。他の各行の組み合わせでも同様の出力となっている。
【0116】
図5の(B)は、同様に、特に(B-2)検体濃度異常に由来するデータアラームの組み合わせについて示す。図5の(B)では、第1列「吸光」や第2列「散乱」の値として、図4に従い、1.「吸光度・散乱光強度オーバ」と、2.「プロゾーン」(B4)と、3.「定量範囲上限オーバ」(B5)と、4.「定量範囲下限オーバ」(B6)とを有する。これらの4種類の値の組み合わせとして、4×4=16の組み合わせがある。
【0117】
例として、第4行から第8行は、「吸光」のデータアラームがプロゾーンアラームB4である4つの組み合わせであり、出力選択としては、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「減量」(値2)である。これらの場合、分析制御部50は、吸光光度計44の第1測定結果および第2データアラーム(B4)を選択して出力し、前回の条件に対し減量した条件で自動再検依頼を行う自動再検情報とする。第9行から第12行は、「吸光」のデータアラームが定量範囲上限オーバアラームB5である4つの組み合わせの場合であり、出力選択としては、同様となっている。第13行から第16行は、「吸光」のデータアラームが定量範囲下限オーバアラームB5である4つの組み合わせの場合である。第13行、第14行、第15行の組み合わせでは、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「増量」(値3)である。これらの場合、分析制御部50は、吸光光度計44の第1測定結果および第1データアラーム(B6)を選択して出力し、前回の条件に対し増量した条件で自動再検依頼を行う自動再検情報とする。第16行の組み合わせでは、出力選択として、「出力」=「散乱」(値2)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「増量」(値3)である。この場合、分析制御部50は、散乱光度計45の第2測定結果および第2データアラーム(B6)を選択して出力し、前回の条件に対し増量した条件で自動再検依頼を行う自動再検情報とする。
【0118】
図6は、対応表のうちの第2部分として、中レベルのデータアラームで、(B-1)反応過程異常と(B-2)検体濃度異常との組み合わせの部分を示す。ここでは、第1列「吸光」、第2列「散乱」の値として、前述の「B2/B3」、「B1」、「計算不能」、「吸光度・散乱光強度差オーバ」、「B4」、「B5」、「B6」の7種類の値がある。
【0119】
例として、第1行から第4行は、「吸光」のデータアラームが(B-1)反応過程異常のうちの「B2/B3」であり、「散乱」のデータアラームが(B-2)検体濃度異常である、4つの組み合わせの場合である。第1行~第3行では、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「同」(値1)である。第4行では、出力選択としては、「出力」=「散乱」(値2)、「再検」=「有」(1)、「条件」=「増量」(値3)である。第5行から第8行は、「吸光」のデータアラームが(B-1)反応過程異常のうちの「B1」であり、「散乱」のデータアラームが(B-2)検体濃度異常である、4つの組み合わせの場合である。出力選択としては、第1行~第4行と同様となっている。
【0120】
また、例えば、第16行から第18行は、「吸光」のデータアラームが(B-2)検体濃度異常のうちのプロゾーンアラームB4であり、「散乱」のデータアラームが(B-1)反応過程異常である、3つの組み合わせの場合である。第16行~第18行では、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「減量」(値2)である。また、例えば、第19行から第21行は、「吸光」のデータアラームが(B-2)検体濃度異常のうちの定量範囲上限オーバアラームB5であり、「散乱」のデータアラームが(B-1)反応過程異常である、3つの組み合わせの場合である。第19行~第21行では、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「減量」(値2)である。また、例えば、第22行から第24行は、「吸光」のデータアラームが(B-2)検体濃度異常のうちの定量範囲下限オーバアラームB6であり、「散乱」のデータアラームが(B-1)反応過程異常である、3つの組み合わせの場合である。第22行~第24行では、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「増量」(値3)である。
【0121】
図7は、対応表のうちの第3部分として、中レベルの(B-1)反応過程異常のデータアラームと低レベルのデータアラームとの組み合わせの部分を示す。ここでは、第1列「吸光」、第2列「散乱」の値として、前述の「B2/B3」、「B1」、「計算不能」、「血清情報(C1)」、「検体キャリーオーバ」、「試薬有効期限切れ(C2)」の6種類の値がある。
【0122】
例として、第1行から第4行は、「吸光」のデータアラームが(B-1)反応過程異常のうちの「B2/B3」であり、「散乱」のデータアラームが低レベルの3種類である、3つの組み合わせの場合である。第1行~第3行では、出力選択として、「出力」=「散乱」(値2)、「再検」=「無」(値2)、「条件」=「-」(値無し)である。これらの場合、分析制御部50は、散乱光度計45の第2測定結果および第2データアラーム(低レベル)を選択して出力し、自動再検依頼を行わない。同様に、第4行~第6行は、「吸光」のデータアラームが「B4」であり、「散乱」のデータアラームが低レベルの3種類である、3つの組み合わせの場合である。これらの場合も、同様の出力選択となっている。
【0123】
第10行から第12行は、「吸光」のデータアラームが低レベルの血清情報アラーム(C1であり、「散乱」のデータアラームが(B-1)反応過程異常の3種類である、3つの組み合わせの場合である。第10行~第12行では、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「無」(値2)、「条件」=「-」(値無し)である。これらの場合、分析制御部50は、吸光光度計44の第1測定結果および第1データアラーム(低レベル)を選択して出力し、自動再検依頼を行わない。同様に、第16行~第18行は、「吸光」のデータアラームが試薬有効期限切れアラームC2であり、「散乱」のデータアラームが(B-1)反応過程異常の3種類である、3つの組み合わせの場合である。これらの場合も、同様の出力選択となっている。
【0124】
図8は、対応表のうちの第4部分として、中レベルの(B-2)検体濃度異常のデータアラームと低レベルのデータアラームとの組み合わせの部分を示す。ここでは、第1列「吸光」、第2列「散乱」の値として、前述の「吸光度・散乱光強度オーバ」、「B4」、「B5」、「B6」、「血清情報(C1)」、「検体キャリーオーバ」、「試薬有効期限切れ(C2)」の7種類の値がある。
【0125】
例として、第1行から第4行は、「吸光」のデータアラームが(B-2)検体濃度異常のうちの「吸光度・散乱光強度オーバ」であり、「散乱」のデータアラームが低レベルの3種類である、3つの組み合わせの場合である。第1行~第3行では、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「減量」(値2)である。同様に、第4行~第6行は、「吸光」のデータアラームが「B4」であり、「散乱」のデータアラームが低レベルの3種類である、3つの組み合わせの場合である。これらの場合も、同様の出力選択となっている。同様に、第7行~第9行は、「吸光」のデータアラームが「B5」であり、「散乱」のデータアラームが低レベルの3種類である、3つの組み合わせの場合である。これらの場合も、同様の出力選択となっている。同様に、第10行~第12行は、「吸光」のデータアラームが「B6」であり、「散乱」のデータアラームが低レベルの3種類である、3つの組み合わせの場合である。これらの場合、出力選択として、「出力」=「散乱」(値2)、「再検」=「無」(値2)、「条件」=「-」である。
【0126】
第13行から第16行は、「吸光」のデータアラームが低レベルの血清情報アラームC1であり、「散乱」のデータアラームが(B-2)検体濃度異常の4種類である、4つの組み合わせの場合である。第13行~第15行では、出力選択として、「出力」=「吸光」(値1)、「再検」=「無」(値2)、「条件」=「-」である。第16行では、出力選択として、「出力」=「散乱」(値2)、「再検」=「有」(値1)、「条件」=「増量」(値3)となっている。同様に、第17行から第20行の組み合わせでは、同様の出力選択となっている。同様に、第21行から第24行の組み合わせでは、「吸光」のデータアラームが低レベルの試薬有効期限切れアラームC2の場合であり、同様の出力選択となっている。
【0127】
[処理フロー]
次に、図9図14を参照しながら、自動分析装置1の分析制御部50による出力制御処理のフローについて説明する。
【0128】
[(1)出力制御処理]
図9は、分析制御部50の第1処理のフローを示す。この第1処理は、2種類の光度計の一方または両方を用いて、出力する測定結果およびデータアラーム等を選択する出力制御処理を示す。本フローはステップS201~S210を有する。以下、ステップの順に説明する。なお、図9以降の複数の処理フローは、説明上、複数のフロー図として分けて図示および説明している。これらの処理フローは、ステップ間で論理的に接続されており、全体で1つの処理フローとして捉えることもできる。すなわち、分析制御部50のCPU等による全体で1つのプログラム処理としても実現できる。
【0129】
(S201) 同時分析判定部56は、対象の検体2についての分析依頼の形式が、同時分析依頼であるか否かを確認する。同時分析依頼である場合(Y)にはS204へ、同時分析依頼ではない場合(N)にはS202へ進む。なお、同時分析依頼ではない場合とは、吸光光度計44または散乱光度計45のいずれか一方による単一分析依頼(吸光分析依頼または散乱光分析依頼)が設定されていることに対応する。他の形式の分析依頼があってもよい。例えば、「吸光2項目同時分析」依頼があってもよい。「吸光2項目同時分析」は、吸光光度計44のみを用いて、同じ対象の検体2の反応容器25内の反応液3について、2種類の目的成分物質を同時に測定および分析するものである。
【0130】
(S202) 単一分析依頼の場合、同時分析判定部56は、依頼された一方の光度計で測定された全てのデータ(測定結果およびデータアラームを含む)を出力部71に出力させる。これにより、出力部71の表示画面には、単一分析の結果として、測定結果である濃度や、測定時の異常等があった場合に付記されているデータアラームが表示される。
【0131】
(S203) さらに、自動再検判定部57では、単一分析の測定結果について、測定時の異常等に基づいて、自動再検の要否等を判定する。自動再検判定部57は、測定結果にデータアラームが付記されていない場合や、高レベルまたは低レベルのデータアラームが付記されている場合には、自動再検が不要と判定する。不要の場合(否)には、自動再検依頼を行わず、本フローを終了する。自動再検判定部57は、測定結果に、中レベルのデータアラームが付記されている場合には、自動再検が必要と判定し、その場合(要)にはS210へ進む。
【0132】
(S210) 自動再検判定部57は、そのデータアラームの種類に応じた自動再検条件による自動再検依頼を行う。すなわち、自動再検判定部57は、再測定条件等を含む自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。分析制御部50の自動再検機能は、その自動再検依頼情報に従って自動再検を制御する。
【0133】
一方、同時分析判定部56は、S201で同時分析依頼である場合、その依頼があった対象の検体2についての、吸光光度計44を用いた第1測定結果と、散乱光度計45を用いた第2測定結果との両方を含む全てのデータを、以下のように、測定時異常チェック部58を介して出力させる。上記全てのデータは、前述の測定部53および解析部52によってデータ格納部55に格納されている。
【0134】
(S204) 測定時異常チェック部58は、2種類の光度計の測定結果である第1測定結果および第2測定結果に、データアラームが付記されているか否かを判定する。すなわち、測定時異常チェック部58は、各測定結果に、データアラームで表される測定時の異常等が発生していたかどうかをチェックする。この判定の結果として、第1測定結果のみに異常等があった場合(A)にはS207へ進み、第2測定結果のみに異常等があった場合(B)にはS209へ進む。また、判定の結果として、第1測定結果と第2測定結果との両方に異常等があった場合(C)にはS205(図3)へ進む。また、判定の結果として、第1測定結果と第2測定結果との両方に異常等が無かった場合(D)にはS206へ進む。
【0135】
(S207) 測定時異常チェック部58は、第2測定結果を含む、散乱光分析に係わる全てのデータを、出力部71から出力させる。これにより、出力部71の表示画面では、同時分析の結果として、散乱光度計45を通じて得られた濃度を含む、異常等が無いデータが、優先的にユーザに対して出力される。
【0136】
(S209) 測定時異常チェック部58は、第1測定結果を含む、吸光度分析に係わる全てのデータを、出力部71から出力させる。これにより、出力部71の表示画面では、吸光光度計44を通じて得られた濃度を含む、異常等が無いデータが、優先的にユーザに対して出力される。
【0137】
(S205) 優先出力アラーム判定部60は、後述(図10)の優先出力アラーム判定処理を行う。この処理は、概要としては、第1測定結果に付記された第1データアラームと、第2測定結果に付記された第2データアラームとのいずれのデータアラームを選択して優先的に出力するかを判定する処理である。
【0138】
(S206) 優先出力判定部59は、2種類の光度計の測定結果である第1測定結果と第2測定結果とについて、優先出力判定処理を行う。この処理は、2種類の光度計の測定結果のうちいずれの種類の測定結果を選択して優先的に出力するかを判定する処理である。優先出力判定部59は、この判定の際、分析依頼の事前に設定されている優先出力設定情報をデータ格納部55から参照する。例えば、分析依頼情報のパラメータの1つとして、優先出力設定情報が設定されている。優先出力設定情報は、例えば、第1測定結果と第2測定結果とのいずれを優先出力とするかを表す優先出力順位の設定値を含む。例えば、優先出力順位として、値1が第1測定結果を優先出力する設定(「吸光優先設定」)を表し、値2が第2測定結果を優先出力する設定(「散乱優先設定」)を表す。いずれの優先設定も、基本的には一方の種類の光度計の測定結果のみを出力させるものである。優先出力判定部59は、分析依頼情報の優先出力設定情報に従って、第1測定結果と第2測定結果との一方を選択する。
【0139】
S206で、優先出力設定機能のオン状態の場合で、「散乱優先設定」である場合(A)にはS207へ進み、「吸光優先設定」である場合(B)にはS209へ進む。また、優先出力設定機能のオフ状態の場合、すなわち2種類の光度計の間に優先出力設定が無い場合(C)には、S208へ進む。
【0140】
(S207) 優先出力判定部59は、散乱光度計45の第2測定結果を含む全てのデータを、出力部71から出力させる。これにより、出力部71の表示画面では、第2測定結果を含む異常等が無い全データが、優先的にユーザに対して出力される。
【0141】
(S209) 優先出力判定部59は、吸光光度計44の第1測定結果を含む全てのデータを、出力部71から出力させる。これにより、出力部71の表示画面では、第1測定結果を含む異常等が無い全データが、優先的にユーザに対して出力される。
【0142】
(S208) 優先出力判定部59は、第1測定結果と第2測定結果とを含む、両方の全データを、出力部71から出力させる。これにより、出力部71の表示画面では、2種類の光度計の各測定結果を含む異常等が無い全データが、ユーザに対して出力される。S207、S208、またはS209の後、本フローが終了する。
【0143】
[(2)優先出力アラーム判定処理]
次に、図10以降を用いて、図9のステップS205の優先出力アラーム判定処理の内容について説明する。図10は、S205の優先出力アラーム判定部60による優先出力アラーム判定処理のうち、第1処理として、データアラームレベル分類判定処理に関わるフローを示す。この処理では、2種類の光度計の各測定結果に伴うデータアラームについて、前述のグループおよびレベルの分類定義に基づいて、いずれに該当するか、分類を判定する。本フローはステップS301~S305を有する。以下、ステップの順に説明する。
【0144】
(S301) 優先出力アラーム判定部60は、吸光光度計44の第1測定結果に付記されている第1データアラームと、散乱光度計45の第2測定結果に付記されている第2データアラームとの2種類のデータアラームを参照する。優先出力アラーム判定部60は、2種類のデータアラームについて、その一方または両方に、第3グループおよび高レベルのデータアラームが含まれているか否かを判定する。含まれている場合(Y)にはS302へ進み、含まれていない場合(N)にはS303へ進む。
【0145】
(S302) 優先出力アラーム判定部60は、後述(図11)の高レベルデータアラーム処理を実行し、その後、本フローを終了する。
【0146】
(S303) 優先出力アラーム判定部60は、2種類のデータアラームについて、その一方または両方に、第2グループおよび中レベルのデータアラームが含まれているか否かを判定する。含まれている場合(Y)にはS304へ進み、含まれていない場合(N)にはS305へ進む。
【0147】
(S304) 優先出力アラーム判定部60は、後述(図12図13)の中レベルデータアラーム処理を実行し、その後、本フローを終了する。
【0148】
(S305) 上記S303で、含まれていない場合(N)とは、すなわち第3グループおよび低レベルのデータアラームが含まれている場合に相当する。S305では、優先出力アラーム判定部60は、後述(図14)の低レベルアラーム処理を実行する。
【0149】
[(3)高レベルデータアラーム処理]
図11は、上記S302の高レベルデータアラーム処理のフローを示す。図11は、ステップS401~S405を有する。以下、ステップの順に説明する。
【0150】
(S401) 優先出力アラーム判定部60は、第1測定結果と第2測定結果との両方に高レベルのデータアラームが付記されているかどうか、言い換えると、第1データアラームと第2データアラームとの両方が高レベルのデータアラームであるかどうかを確認する。両方が高レベルである場合(Y)にはS402へ進み、そうでない場合(N)にはS403へ進む。
【0151】
(S402) 優先出力アラーム判定部60は、出力として、第1データアラームと第2データアラームとの両方の高レベルのデータアラームを、出力部71に出力させ、本フローを終了する。
【0152】
(S403) 優先出力アラーム判定部60は、第1データアラームと第2データアラームとの一方、例えば吸光の方の第1データアラームが、高レベルのデータアラームであるかどうかを確認する。優先出力アラーム判定部60は、第1データアラームが高レベルである場合(Y)にはS404へ進み、そうではない場合(N)にはS405へ進む。
【0153】
(S404) 優先出力アラーム判定部60は、吸光の方の第1測定結果および第1データアラームを、出力部71に出力させ、本フローを終了する。
【0154】
(S405) S405へ進む場合とは、すなわち、散乱の方の第2測定結果に付記されている第2データアラームが高レベルのデータアラームである場合に対応する。そのため、S405で、優先出力アラーム判定部60は、第2測定結果および第2データアラームを、出力部71に出力させ、本フローを終了する。
【0155】
上記処理に関して、高レベルのデータアラームが生じた場合には、測定が失敗しており、測定結果が得られていないことが多い。そのため、この場合には、出力制御としては、測定結果の濃度等を出力せずに、データアラームのみを出力するだけでもよい。測定結果が得られている場合には、その測定結果およびデータアラームを出力させてもよい。
【0156】
また、高レベルのデータアラームは、前述のように、異常等に対する、ユーザによる機構、検体2、試薬4等の状態の改善作業が必要な場合に付記される。そのため、上記のように、両方の測定結果に高レベルのデータアラームが付記されている場合、S402のように、それらの全てのデータアラームを出力させて、ユーザに注意喚起し、改善作業を促すことが望ましい。また、その際には、前述したシステムアラームを、データアラームと同時に出力させるようにしてもよい。
【0157】
[(4)中レベルアラーム処理]
図12図13は、上記S304の中レベルデータアラーム処理を示す。この処理は、あり得る場合の大別としては、(a)第1データアラームと第2データアラームとの両方が中レベルである場合と、(b)第1データアラームのみが中レベルである場合と、(c)第2データアラームのみが中レベルである場合と、を有する。図12は、ステップS501からステップS508までの部分を示す。図13は、図12の続きとして、ステップS509以降のステップS520までを示す。
【0158】
(S501) 優先出力アラーム判定部60は、吸光光度計44の第1測定結果に付記されている第1データアラームと、散乱光度計45の第2測定結果に付記されている第2データアラームとについて、前述の分類定義に基づいて、さらに詳しい種別を判定する。S501で、優先出力アラーム判定部60は、吸光の方の第1データアラームが、検体2の高濃度に由来するデータアラームであるか否かを判定する。この種別のデータアラームとしては、前述のプロゾーンアラームB1、定量範囲上限オーバアラームB2等が相当する。この種別のデータアラームである場合(Y)にはS502へ進み、そうでない場合(N)にはS504へ進む。
【0159】
(S502,S503) S502で、優先出力アラーム判定部60は、第1測定結果および第1データアラームを、出力部71に出力させる。そして、S503で、優先出力アラーム判定部60は、吸光光度計44を用いた自動再検を必要とし、対象の検体2の反応容器25の検体量を減量する条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。分析制御部50は、その自動再検依頼情報に従い、その条件での自動再検を行い、その結果を格納し、出力部71に出力させる。S503の後、本フローが終了する。
【0160】
上記S501~S503の場合では、以下のような判断や出力制御が行われている。高濃度成分の測定に好適な吸光光度計44を用いた第1測定結果において、検体2の目的成分物質の濃度が高過ぎると判定された場合、低濃度成分の測定に好適な散乱光度計45での第2測定結果の信頼性も低い。そのため、S502のように、吸光の方の第1測定結果および第1データアラームのみを出力し、S503のように、減量した条件での自動再検を行わせる。これにより、再検時の測定結果が吸光光度計44の好適な定量範囲(前述の正常出力範囲)に入るように試みる。
【0161】
(S504) 優先出力アラーム判定部60は、散乱の方の第2データアラームが、検体2の低濃度に由来するデータアラームであるか否かを判定する。この種別のデータアラームとしては、前述の定量範囲下限オーバアラームB3が相当する。この種別のデータアラームである場合(Y)にはS505へ進み、そうではない場合(N)にはS507へ進む。
【0162】
(S505,S506) S505で、優先出力アラーム判定部60は、散乱の方の第2測定結果および第2データアラームを、出力部71に出力させる。そして、S506で、優先出力アラーム判定部60は、散乱光時計45を用いた自動再検を必要とし、対象の検体2の反応容器25の検体量を増量する条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。分析制御部50は、その自動再検依頼情報に従い、その条件での自動再検を行い、その結果を格納し、出力部71に出力させる。S506の後、本フローが終了する。
【0163】
上記S504~S506の場合では、以下のような判定および出力制御が行われている。低濃度成分の測定に好適な散乱光度計45を用いた第2測定結果において、検体2の目的成分物質の濃度が低過ぎると判定された場合、高濃度成分の測定に好適な吸光光度計44での第1測定結果の信頼性が低い。そのため、S505のように、散乱の方の第2測定結果および第2データアラームのみを出力し、S506のように、増量した条件での自動再検を行わせる。これにより、再検時の測定結果が散乱光度計45または吸光光度計44の好適な定量範囲に入るように試みる。
【0164】
(S507) 優先出力アラーム判定部60は、散乱の方の第2測定結果の第2データアラームについて、低レベルのデータアラームであるか否かを判定する。この種別のデータアラームとしては、前述の血清情報アラームC1等が相当する。この低レベルである場合(Y)にはS508へ進み、そうではない場合(N)にはS509(図13)へ進む。
【0165】
(S508) 優先出力アラーム判定部60は、散乱の方の第2測定結果および第2データアラームを、出力部71に出力させる。この場合、第2測定結果については参考値として出力させ、自動再検については不要として行わずに、本フローを終了する。
【0166】
上記S508の場合、2種類のデータアラームの組み合わせとしては、第1測定結果に、反応過程異常に由来するデータアラーム、または検体2の低濃度に由来するデータアラームが付記され、第2測定結果に、低レベルのデータアラームが付記されている状態が該当する。この組み合わせでは、測定に用いた検体2または試薬4の少なくとも一方が、低レベルのデータアラームを発生させる原因を有している。なおかつ、この組み合わせでは、検体2の目的成分物質の濃度が、吸光光度計44の定量範囲の下限値を下回っていた。そのため、散乱光度計45では定量可能であったが、吸光光度計44では濃度が低く定量できなかった。その結果、このような組み合わせが発生したと考えられる。つまり、この組み合わせの場合では、散乱光度計45を用いた測定自体は正常に行われたと判断できる。そのため、この場合では、散乱の方の第2測定結果を参考値として出力させ、自動再検を行わないようにしている。
【0167】
(S509) 図13のS509で、優先出力アラーム判定部60は、散乱光度計45を用いた第2測定結果の第2データアラームについて、検体2の高濃度に由来するアラームであるか否かを判定する。その種別のデータアラームである場合(Y)にはS510へ進み、そうではない場合(N)にはS513へ進む。
【0168】
(S510) 優先出力アラーム判定部60は、吸光光度計44を用いた第1測定結果および第1データアラームを、出力部71に出力させる。
【0169】
(S511) さらに、優先出力アラーム判定部60は、第1データアラームについて、反応過程の異常に由来するアラームであるか否かを判定する。その種別のデータアラームである場合(Y)にはS516へ進み、そうではない場合(N)にはS512へ進む。
【0170】
(S516) 優先出力アラーム判定部60は、自動再検を必要とし、第1データアラームで表す異常等(すなわち反応過程異常等)が発生した前回の条件と同じ条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。S516の場合、データアラームの組み合わせとしては、第1測定結果に、反応過程異常に由来するデータアラームが付記され、かつ、第2測定結果に、検体2の高濃度に由来するデータアラームが付記されている状態が該当する。この場合、検体2の目的成分物質の濃度が散乱光度計45の定量範囲の上限値を超えており、吸光光度計44では測定に失敗したと判断できる。そのため、この場合、前回と同じ条件で再測定を行わせる。自動分析装置1は、自動再検の結果、検体2の目的成分物質の濃度が、吸光光度計44の定量範囲内に入るか否かを確認する。この際、検体量を減量する条件での自動再検を行う場合を考えると、散乱光度計45の定量範囲を下回る可能性がある。そのため、前回と同じ条件での自動再検を行わせている。S516の後、本フローを終了する。
【0171】
(S512) S512へ進んだ場合、さらに、優先出力アラーム判定部60は、吸光の方の第1データアラームについて、検体2の低濃度に由来するアラームであるか否かを判定する。その種別のデータアラームである場合(Y)にはS506へ進み、そうではない場合(N)には、自動再検を不要として行わずに、本フローを終了する。
【0172】
上記S512からS506に進んだ場合では、前述と同様に、検体量を増量する条件で自動再検が行われる。この場合、データアラームの組み合わせとしては、第2測定結果で、散乱光度計45の定量範囲の上限値を超え、第1測定結果で、吸光光度計44の定量範囲の下限値を下回っている状態が該当する。この場合、2種類の光度計の両方で測定に失敗している可能性が高い。そのため、上記のように、同じ条件で再測定を行わせて、正常な結果の取得を試みる。
【0173】
上記S512からそうではない場合(N)で自動再検せずに終了する場合、データアラームの組み合わせとしては、第2測定結果に、検体2の高濃度に由来するデータアラームが付記され、第1測定結果に、低レベルのデータアラームが付記されている状態が該当する。この組み合わせは、測定に用いた検体2または試薬4の少なくとも一方が、低レベルのデータアラームを発生する原因を有していることに対応する。なおかつ、この組み合わせは、検体2の目的成分物質の濃度が、散乱光度計45の定量範囲の上限値を超えるため、散乱光度計45では定量できなかったが、吸光光度計44では定量可能であったことに対応する。そのため、この組み合わせが発生したと考えられる。つまり、この組み合わせの場合、第1測定結果では、正常に測定が行われたと判断できる。そのため、この場合、吸光の方の第1測定結果を参考値として出力させ、自動再検を行わないようにする。
【0174】
(S513) 優先出力アラーム判定部60は、吸光の方の第1データアラームについて、反応過程異常に由来するデータアラームであるか否かを判定する。その種別のデータアラームである場合(Y)にはS514へ進み、そうではない場合(N)にはS518へ進む。
【0175】
(S514) 優先出力アラーム判定部60は、事前にパラメータとして設定されている「優先出力設定」に従って、2種類の測定結果およびデータアラームから、優先出力する一方の測定結果およびデータアラームを選択して出力させる。この際、優先出力アラーム判定部60は、前述の優先出力設定情報の設定値を参照して判定する。その設定値が、「吸光優先設定」を表す値である場合(A)にはS515へ進み、「散乱優先設定」を表す値である場合(B)にはS517へ進む。前述のように、「吸光優先設定」では、吸光光度計44の方が散乱光時計45よりも優先出力順位が高い光度計として設定されている。「散乱優先設定」では、逆の優先出力順位が設定されている。
【0176】
(S515) 優先出力アラーム判定部60は、「吸光優先設定」に応じて、吸光光度計44の第1測定結果および第1データアラームを選択して、出力部71に出力させる。S515の後、S516へ進む。
【0177】
(S517) 優先出力アラーム判定部60は、「散乱優先設定」に応じて、散乱光度計45の第2測定結果および第2データアラームを選択して、出力部71に出力させる。S517の後、S516へ進む。
【0178】
(S516) S515またはS517の後、S516で、優先出力アラーム判定部60は、自動再検を必要とし、前回と同じ条件での自動再検依頼を行う。すなわち、優先出力アラーム判定部60は、データアラームが表す異常等が発生した時の条件と同じ再測定条件等とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。
【0179】
上記S513~S517の場合におけるデータアラームの組み合わせは、第1測定結果と第2測定結果との両方にそれぞれ反応過程異常に由来するデータアラームが付記されている状態が該当する。この場合、2種類の光度計の両方で測定に失敗したと判断できる。そのため、この場合、基本的には、2種類のいずれの光度計の測定結果およびデータアラームを出力しても構わない。そのため、上記処理例では、S514で「優先出力設定」の判定に基づいて一方の測定結果およびデータアラームを選択し、S516で前回と同じ条件での自動再検を行わせて、正常な結果の取得を試みている。
【0180】
(S518,S519) S518で、優先出力アラーム判定部60は、吸光の方の第1測定結果および第1データアラームを、出力部71に出力させる。さらに、S519で、優先出力アラーム判定部60は、第1データアラームについて、検体2の低濃度に由来するアラームであるか否かを判定する。その種別のデータアラームである場合(Y)にはS520へ進み、そうではない場合(N)には、自動再検を行わずに本フローを終了する。
【0181】
(S520) 優先出力アラーム判定部60は、検体量を増量する条件での自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納し、自動再検を行わせる。
【0182】
上記S518~S520の場合におけるデータアラームの組み合わせは、第2測定結果に、反応過程異常に由来するデータアラームが付記され、第1測定結果に、検体2の低濃度に由来するデータアラームが付記さている状態が該当する。この場合、散乱光度計45では測定が失敗していると判断できる。そのため、S519では、吸光の方の第1測定結果および第1データアラームを出力させ、S520で自動再検を行わせる。これにより、自動再検時の測定結果が、吸光光度計44の定量範囲に入るように試みている。
【0183】
上記S519でそうではない場合(N)で自動再検を行わずに終了する場合、データアラームの組み合わせとしては、第2測定結果に、反応過程異常に由来するデータアラームが付記され、第1測定結果に、低レベルのデータアラームが付記されている状態が該当する。この場合、散乱光度計45では測定に失敗し、吸光光度計44では測定自体は正常に終了したと判断できる。そのため、この場合、S519で第1測定結果を参考値として出力させ、第1データアラームを出力させ、自動再検を行わない。
【0184】
[(5)低レベルアラーム処理]
図14は、上記S305の低レベルデータアラーム処理を示す。図14は、ステップS601~S607を有する。以下、ステップの順に説明する。
【0185】
(S601) 優先出力アラーム判定部60は、吸光光度計44の第1測定結果に付記されている第1データアラームと、散乱光度計45の第2測定結果に付記されている第2データアラームとの両方が、低レベルのデータアラームであるか否かを確認する。両方が低レベルである場合(Y)にはS602へ進み、そうではない場合(N)にはS605へ進む。
【0186】
(S602) 優先出力アラーム判定部60は、「優先出力設定」に基づいた優先出力判定を行い、優先出力する一方の測定結果およびデータアラームを選択して出力させる。優先出力アラーム判定部60は、「散乱優先出力」である場合(B)にはS603へ進み、「吸光優先出力」である場合(A)にはS604へ進む。
【0187】
(S603) 優先出力アラーム判定部60は、「散乱優先出力」に応じて、第2測定結果および第2データアラームを選択して、出力部71に出力させる。その後、自動再検を行わず、本フローを終了する。
【0188】
(S604) 優先出力アラーム判定部60は、「吸光優先出力」に応じて、第1測定結果および第1データアラームを選択して、出力部71に出力させる。その後、自動再検を行わず、本フローを終了する。
【0189】
(S605) 優先出力アラーム判定部60は、吸光の方の第1データアラームのみが低レベルであるかどうかを確認する。第1データアラームのみが低レベルである場合(Y)にはS606へ進み、そうではない場合(N)、すなわち散乱の方の第2データアラームのみが低レベルである場合にはS607へ進む。
【0190】
(S606) 優先出力アラーム判定部60は、吸光の方の第1測定結果および第1データアラームを選択して、出力部71に出力させる。その後、自動再検を行わず、本フローを終了する。
【0191】
(S607) 優先出力アラーム判定部60は、散乱の方の第2測定結果および第2データアラームを選択して、出力部71に出力させる。その後、自動再検を行わず、本フローを終了する。
【0192】
上記のように、低レベルのデータアラームを含む各組み合わせの場合には、測定自体は正常に終了していると判断できるため、測定結果を参考値として出力させ、自動再検を行わない。
【0193】
[効果等]
上記のように、実施の形態1の自動分析装置1は、吸光光度計44と散乱光度計45との2種類の光度計を備え、各検査項目の目的成分物質について2種類の光度計を用いた同時分析を行う。自動分析装置1は、2種類の測定結果に付記され得る2種類のデータアラームを参照する。そして、自動分析装置1は、2種類の測定結果の両方に測定時の異常等を原因とする2種類のデータアラームがある場合に、それらのデータアラームの組み合わせに応じて、出力する好適な測定結果およびデータアラーム等を選択する。このように、自動分析装置1は、2種類の光度計を用いた測定で異常等がある場合でも、ユーザに対する分析結果出力の情報量を限定、削減するように出力制御を行う。これにより、自動分析装置1によれば、従来技術例よりも、同時分析で正確な分析結果が得られると共に、測定時の異常等がある場合にも、分析結果出力に対するユーザの判断や操作等の負荷を低減できる。ユーザとしては、表示画面で分析結果出力を見た場合に、好適な測定結果およびデータアラーム等の情報が自動的に選択され限定されているので、状態の認識や判断が容易であり、対処作業がしやすい。そのため、ユーザによる判断ミスを防止でき、結果報告遅延を防止できる。
【0194】
また、自動分析装置1は、2種類の光度計を用いた測定時に異常等があった場合でも、データアラームの組み合わせに応じて、自動的に好適な自動再検の制御を行う。自動分析装置1は、2種類の測定の両方に異常等があった場合でも、装置状態または検体成分状態の少なくとも一方を反映するように自動再検の要否および条件を判定する。自動分析装置1は、組み合わせに応じて、好適な自動再検の要否や条件を決定して、自動再検を制御し、その結果を出力する。よって、自動分析装置1の自動再検機能を有効活用でき、自動再検によって、より正確な結果(濃度等)を、より短時間で得ることができ、ユーザによる結果報告遅延を防止できる。
【0195】
[変形例(1)]
実施の形態1の自動分析装置1の変形例として以下が挙げられる。実施の形態1では、2種類の2つの光度計を備える場合を説明したが、これに限らず、3種類以上の3つ以上の光度計を備える場合でも、同様に適用可能である。また、ある種類の光度計を複数個備える場合にも、同様に適用可能である。例えば、3種類の光度計を備える場合に、3種類の光度計を用いた同時分析を行ってもよい。あるいは、その3種類のうち、設定や分析依頼に従って選択された2種類の光度計を用いた同時分析を行ってもよい。それらの複数の測定結果に付記される複数のデータアラームの組み合わせに対応させて、同様に出力選択制御を行えばよい。
【0196】
[変形例(2)]
実施の形態1では、異常等に対応するデータアラームを、大別して3つのグループおよびレベルに分類し、それらの組み合わせに応じて、異なる出力制御が行われる旨を説明した。上記データアラームの分類は、3つに限らず可能である。対応表として示したように、複数の種類の光度計の測定結果に関するデータアラームの組み合わせ毎に、測定結果およびデータアラームを含む出力選択の対応付けが規定されている構成であればよい。
【0197】
[変形例(3)]
実施の形態1では、2種類の測定結果およびデータアラームのうちどちらの情報を出力してもユーザへの影響が小さいため特に問題無い、という組み合わせが発生した場合には、「優先出力設定」に基づいて、一方の情報を選択して出力させている。これに限らず、変形例としては、上記のような特定の組み合わせの場合に、「優先出力設定」機能を使用しない形態としてもよい。この変形例では、実装上の固定的な設定に基づいて、上記のような特定の組み合わせの場合に、規定の一方のみの情報が出力されるか、あるいは両方の情報が出力される。
【0198】
[変形例(4)]
前述の各フロー図では、出力制御処理上の処理順序の一例を示したが、これに限らず可能である。例えば、各レベルや異常等の種別の判定の順序を変更した処理フローとする構成も勿論可能である。実施の形態1の処理フロー構成の変形例として以下も可能である。図12の中レベルデータアラーム処理のステップS507で、判定結果(Y)によってステップS508へ進む前に、以下のステップS507-1を設ける。そのステップS507-1では、吸光の方の第1測定結果に低レベルのデータアラームが付記されているか否かを判定する。付記されている場合(Y)には、図14のステップS601へ進み、否の場合(N)には、ステップS508へ進む。すなわち、このフロー構成の場合、中レベルデータアラーム処理と低レベルデータアラーム処理とが1つのフロー図として実現される。この場合、図10の処理フローでは、S301の高レベルに関する判定のみを行う構成とする。S301で高レベルが含まれる場合(Y)には、S302の高レベルデータアラーム処理を行い、高レベルが含まれない場合(N)には、上記の中レベルおよび低レベルの処理が統合された処理フローが行われる。
【0199】
(実施の形態2)
図15を用いて、本発明の実施の形態2の自動分析装置について説明する。実施の形態2等における基本的な構成は、実施の形態1と同様であり、以下では、実施の形態2等における実施の形態1とは異なる構成部分について説明する。
【0200】
[処理フロー]
実施の形態1では、複数(2種類)の光度計に係わるデータアラームを、前述の3つのグループおよびレベルに分類した。中レベルについては、さらに、(B-1)反応過程異常に由来するデータアラームと、(B-2)検体濃度異常に由来するデータアラームとに分類した。また、検体濃度異常に由来するデータアラームについては、高濃度に由来するデータアラームと、低濃度に由来するデータアラームとに分類した。そして、図5等に示したように、データアラームの組み合わせに応じて、出力を選択するようにした。
【0201】
実施の形態2では、複数(2種類)の光度計に係わるデータアラーム(対応する異常やエラー等)を、前述のグループおよびレベルに分類することは必須ではなく、発生し得る複数の個々のデータアラームを把握していればよい。実施の形態2の自動分析装置では、処理フロー上、個々の光度計を用いた測定結果に付記される個々のデータアラームを参照し、それらのデータアラームの組み合わせに応じて、直接的に出力を選択する。実施の形態2で、データアラームの組み合わせと出力との対応付けは、前述の対応表の例と同様に、予め規定されている。その規定に基づいて、実施の形態2での処理フローが実装されている。分析制御部50は、解析部52による処理結果としてデータ格納部55に格納された、2種類の測定結果およびデータアラーム等のデータを参照する。分析制御部50は、処理フロー上、参照したデータアラームの組み合わせを判定し、その組み合わせに応じて、対応付けられる出力として、測定結果、データアラーム、および自動再検情報を選択する。
【0202】
実施の形態2の処理フロー構成は、実施の形態1の処理フロー構成に対し、前述の図9のステップS205の優先出力アラーム判定処理の内容(図10等)が異なる。図15は、実施の形態2の自動分析装置1における処理フロー構成例の一部を示す。自動分析装置1では、2種類の光度計を用いた同時分析に関する出力制御処理の際、前述の図10等のフローに代えて、図15のようなフローで処理を行う。図15のフローで、分析制御部50は、例えば、まず、ステップS151で、吸光光度計44の第1測定結果に、第1データアラームとして前述の検体不足アラームA1が付記されているか否かを判定する。付記されている場合(Y)にはS152へ進み、付記されていない場合(N)には他のステップ(省略)へ進む。S152で、分析制御部50は、散乱光度計45を用いた第2測定結果に、第2データアラームとして検体不足アラームA1が付記されているか否かを判定する。付記されている場合(Y)にはS153へ進み、付記されていない場合(N)にはS154へ進む。S152で付記されている場合(Y)とは、すなわち、2種類のデータアラームの組み合わせとして、両方が検体不足アラームA1である場合に該当する。S151,S152では、そのような組み合わせの確認が行われている。その組み合わせ、例えば第1組み合わせとすると、分析制御部50は、S153で、その第1組み合わせに応じた出力として、2種類の両方のデータアラームである第1データアラームおよび第2データアラームを出力させる。この際の処理内容は、実施の形態1の図11の高レベルデータアラーム処理のS401,S402の処理内容と同様である。
【0203】
また、例えば、S154では、分析制御部50は、第2測定結果の第2データアラームとして、前述の試薬不足アラームA2が付記されているか否かを判定する。付記されている場合(Y)にはS155へ進み、付記されていない場合(N)には他のステップ(省略)へ進む。すなわち、S151,S154では、第1データアラームが検査不足アラームA1で、第2データアラームが試薬不足アラームA2である組み合わせについて確認している。分析制御部50は、その組み合わせ、例えば第2組み合わせとすると、S155では、その第2組み合わせに応じた出力として、第1データアラームおよび第2データアラームを出力させる。
【0204】
上記処理フロー例のように、実施の形態2の自動分析装置1では、2種類のデータアラームについて、発生し得る全てのデータアラームの組み合わせのうちの該当する組み合わせを判別し、判別した組み合わせに応じて、実施の形態1と同様に、所定の基準に基づいて、出力を選択する。
【0205】
上記のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0206】
(実施の形態3)
図16図17を用いて、本発明の実施の形態3の自動分析装置について説明する。実施の形態3の自動分析装置1では、分析制御部50の判断によって、2種類の光度計の各測定結果に、測定時の異常等に応じたデータアラームが付記されるだけでなく、自動再検機能に係わる自動再検情報が作成され付加される。特に、解析部52は、ある光度計の測定結果に、異常等に応じたデータアラームを付記すると共に、自動再検の要否および再測定条件等を判断する。そして、解析部52は、自動再検の要否および再測定条件等の情報を含む自動再検情報を、対象の検体2または反応容器25の情報、測定結果およびデータアラームに関連付けて付加して、解析データとしてデータ格納部55に格納する。
【0207】
分析制御部50の同時分析判定部56等の処理部は、上記データ格納部55に格納された、2種類の光度計のそれぞれに係わる、測定結果、データアラーム、および自動再検情報を含む解析データを参照する。そして、同時分析判定部56等は、それらの2種類のデータにおけるデータアラームおよび自動再検情報の組み合わせに応じて、所定の対応表で規定された基準に基づいて、出力を選択する。選択される出力(すなわち分析結果出力情報)は、実施の形態1と同様に、測定結果、データアラーム、および自動再検情報を含む。上記のように、実施の形態3の自動分析装置1では、実施の形態1に対し、自動再検機能に係わる処理が異なる。上記のように、実施の形態3では、解析部52で、一旦、個別の光度計の測定結果毎に、自動再検機能に係わる判断を行い、自動再検情報を作成して付加する。なお、解析部52で付加する自動再検情報(下記の再検フラグ情報)は、前述の自動再検情報とは意味が異なる。その後、分析制御部50は、自動再検情報を含む2種類の測定結果およびデータアラームの組み合わせに応じて、あらためて総合的に、自動再検情報を含む出力を選択、決定する。
【0208】
[自動再検情報(再検フラグ)]
実施の形態3で、解析部52は、所定の形式の自動再検情報(再検フラグ情報と記載する)を作成し、付加する。解析部52は、例えば、吸光光度計44を用いた第1測定結果に、測定時の異常等に応じた第1データアラームを付記する際、自動再検の要否、および必要の場合の再測定条件等を判断する。解析部52は、判断結果に応じた自動再検情報(第1再検フラグ)を、第1測定結果および第1データアラームに付加する。同様に、解析部52は、散乱光度計45を用いた第2測定結果に、測定時の異常等に応じた第2データアラームを付記する際、自動再検の要否、および必要の場合の再測定条件等を判断する。解析部52は、判断結果に応じた自動再検情報(第2再検フラグ)を、第2測定結果および第2データアラームに付加する。
【0209】
再検フラグは、対応する種類の光度計を用いた、自動再検の要否(有無)、および再測定条件等を表す値である。解析部52は、測定結果、データアラーム、再検フラグを含むデータを、対象の測定値を取得した反応容器25または対応する検体2の分析依頼情報と対応付けるようにして、データ格納部55に格納する。
【0210】
実施の形態3で、再検フラグとしては、データアラームの種別に応じて、以下の4つに分類される。再検フラグの識別子として、F1~F4とする。
【0211】
(1)第1再検フラグF1=「再検無しフラグ」: 第1再検フラグF1は、自動再検が不要(無し)であることを表す。なお、第1再検フラグF1の付加の代わりに、再検フラグ自体を付加しないこととしてもよい。
【0212】
(2)第2再検フラグF2=「同条件再検フラグ」: 第2再検フラグF2は、自動再検が必要(有り)であること、かつ、条件として、前回の測定時(すなわち異常等が検知された時)と同じ再測定条件等とすることを表す。
【0213】
(3)第3再検フラグF3=「減量再検フラグ」: 第3再検フラグF3は、自動再検が必要(有り)であること、かつ、前回の測定時の条件に対し検体量を減量した条件とすることを表す。
【0214】
(4)第4再検フラグF4=「増量再検フラグ」: 第4再検フラグF4は、自動再検が必要(有り)であること、かつ、前回の測定時の条件に対し検体量を増量した条件とすることを表す。
【0215】
実施の形態3での処理フローとしては、例えば前述の実施の形態1の図10のレベル判定処理、図11の高レベルデータアラーム処理の部分については、同様である。
【0216】
[処理フロー]
図16図17は、実施の形態3で、分析制御部50(特に同時分析判定部56等)による中レベルデータアラーム処理のフローを示す。図16は、ステップS701からステップS708までを示す。図17は、図16に続き、ステップS709からステップS720までを示す。この処理は、図10のステップS304への流れのように、2種類の測定結果に付記されるデータアラームに、中レベルのデータアラームが含まれている場合に行われる。図16の処理例では、上記再検フラグの判断に基づいて出力を選択している。
【0217】
(S701) 分析制御部50は、吸光光度計44の第1測定結果および第1データアラームに、再検フラグとして「減量再検フラグ」(第3再検フラグF3)が付加されているか否かを判定する。付加されている場合(Y)にはS702へ進み、付加されていない場合(N)にはS704へ進む。
【0218】
(S702,S703) S702で、分析制御部50は、第1測定結果および第1データアラームを、出力部71に出力させる。そして、S703で、分析制御部50は、自動再検を必要と判断し、前回の条件に対して検体量を減量する条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。分析制御部50は、その自動再検依頼情報に従って自動再検を制御し、結果を出力する。S703の後、本フローを終了する。
【0219】
上記「減量再検フラグ」(第3再検フラグF3)は、検体2の目的成分物質の濃度が高過ぎる場合に付加される。高濃度成分の測定に好適な吸光光度計44を用いた第1測定結果で、検体2の目的成分物質の濃度が高過ぎる(例えば定量範囲の上限値を超える)と判定された場合、低濃度成分の測定に好適な散乱光度計45を用いた第2測定結果の信頼性も低い。そのため、この場合、第1測定結果の方を出力させ、上記のように減量する条件で自動再検を行わせる。これにより、再検時の測定結果が吸光光度計44の定量範囲に入るように試みる。
【0220】
(S704) 分析制御部50は、散乱光度計45の第2測定結果および第2データアラームに、「増量再検フラグ」(第4再検フラグF4)が付加されているか否かを判定する。付加されているか場合(Y)にはS705へ進み、付加されていない場合(N)にはS707へ進む。
【0221】
(S705,S706) S705で、分析制御部50は、第2測定結果および第2データアラームを、出力部71に出力させる。そして、S706で、分析制御部50は、前回の条件に対して検体量を増量する条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。分析制御部50は、その自動再検依頼情報に従って自動再検を制御する。S705の後、本フローを終了する。
【0222】
上記「増量再検フラグ」(第4再検フラグF4)は、検体2の目的成分物質の濃度が低過ぎる場合に付加される。低濃度成分の測定に好適な散乱光度計45を用いた第2測定結果で、検体2の目的成分物質の濃度が低過ぎる(例えば定量範囲の下限値を下回る)と判定された場合、高濃度成分の測定に好適な吸光光度計44を用いた第1測定結果の信頼性が低い。そのため、この場合、第2測定結果の方を出力させ、上記のように増量する条件で自動再検を行わせる。これにより、再検時の測定結果が散乱光度計45または吸光光度計44の定量範囲に入るように試みる。
【0223】
(S707) 分析制御部50は、第2測定結果および第2データアラームに、「再検無しフラグ」(第1再検フラグF1)が付加されているか否かを判定する。あるいは、このステップS707は、再検フラグ自体が付加されていないかどうかの確認としてもよい。付加されている場合(Y)にはS708へ進み、付加されていない場合(N)にはS709へ進む。
【0224】
(S708) 分析制御部50は、第2測定結果および第2データアラームを、出力部71に出力させ、自動再検を行わず、S708の後、本フローを終了する。
【0225】
(S709) 図17で、S709に進む場合、第2測定結果に伴う再検フラグとしては、「減量再検フラグ」(第3再検フラグF3)または「同条件再検フラグ」(第2再検フラグF2)である場合に対応する。S709で、分析制御部50は、第2測定結果および第2データアラームに、「減量再検フラグ」(第3再検フラグF3)が付加されているか否かを判定する。付加されている場合(Y)にはS710へ進み、付加されていない場合(N)にはS713へ進む。
【0226】
(S710) 分析制御部50は、吸光光度計44の第1測定結果および第1データアラームを、出力部71を介して出力させる。
【0227】
(S711) さらに、分析制御部50は、第1測定結果に、同条件再検フラグ(第2再検フラグF2)が付加されているか否かを判定する。付加されている場合(Y)にはS716へ進み、付加されていない場合(N)にはS712へ進む。
【0228】
(S716) 分析制御部50は、前回の測定時の条件と同じ条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。分析制御部50は、その自動再検依頼情報に従って自動再検を制御する。S716の後、本フローを終了する。
【0229】
(S712) また、S712へ進んだ場合、分析制御部50は、さらに、第1測定結果に、増量再検フラグ(第4再検フラグF4)が付加されているか否かを判定する。付加されている場合(Y)にはS706へ進み、付加されていない場合(N)には、自動再検を行わずに、本フローを終了する。
【0230】
(S713) 分析制御部50は、第1測定結果に、同条件再検フラグ(第2再検フラグF2)が付加されているか否かを判定する。付加されている場合(Y)にはS714へ進み、付加されていなに場合(N)にはS718へ進む。
【0231】
(S714) 分析制御部50は、「優先出力設定」に従って優先出力判定を行う。「吸光優先出力」である場合(A)にはS715へ進み、「散乱優先出力」である場合(B)にはS717へ進む。
【0232】
(S715) 分析制御部50は、「吸光優先出力」に応じて、吸光光度計44を用いた第1測定結果および対応する第1データアラームを、出力部71に出力させる。
【0233】
(S717) 分析制御部は、「散乱優先出力」に応じて、散乱光度計45を用いた第2測定結果および対応する第2データアラームを、出力部71に出力させる。
【0234】
(S716) S715またはS717の後、S716で、分析制御部50は、前回の測定時の条件と同じ条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。
【0235】
(S718) 分析制御部50は、吸光光度計44を用いた第1測定結果および第1データアラームを、出力部71に出力させる。
【0236】
(S719) さらに、分析制御部50は、第1測定結果に、増量再検フラグ(第4再検フラグF4)が付加されているか否かを判定する。付加されている場合(Y)にはS720へ進み、付加されていない場合(N)には、自動再検を行わずに本フローを終了する。
【0237】
(S720) 分析制御部50は、前回の条件に対し検体量を増量する条件とした自動再検依頼情報を、データ格納部55に格納する。S720の後、本フローを終了する。
【0238】
上記処理例のように、実施の形態3では、各種類の光度計毎の、測定結果、データアラーム、および再検フラグの組み合わせに応じて、総合的に、出力(測定結果、データアラーム、および自動再検情報)を選択する。これにより、2種類の測定の両方に異常等がある場合でも、適切に自動再検を制御して速やかに再測定ができる。したがって、より正確な結果が得られると共に、ユーザの結果報告遅延等を防止できる。
【0239】
なお、上記自動再検の条件である再測定条件等として、検体量を減量する条件や増量する条件を決める際に、例えば以下のような方式を用いてもよい。その方式として、予め設定された所定の量あるいは比率等の値を用いて、前回の条件の値に、その所定の量や比率等の値を加算や乗算で反映することで、再測定条件の検体量等を決定する。あるいは、他の方式として、予め、いくつかの候補となる検体量の条件を定義および設定しておき、それらの条件から選択、切り替えるようにして、再測定条件の検体量を決定してもよい。
【0240】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0241】
1…自動分析装置、2…検体、3…反応液、4…試薬、25…反応容器、44…吸光光度計、45…散乱光度計、50…分析制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17