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特開2022-162107ホットメルト接着樹脂組成物及びホットメルト接着樹脂積層体
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  • 特開-ホットメルト接着樹脂組成物及びホットメルト接着樹脂積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162107
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ホットメルト接着樹脂組成物及びホットメルト接着樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20221014BHJP
   C09J 161/04 20060101ALI20221014BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C09J123/26
C09J161/04
C09J11/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134123
(22)【出願日】2022-08-25
(62)【分割の表示】P 2018171482の分割
【原出願日】2018-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】武井 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 宏和
(57)【要約】
【課題】短時間の加熱により接着し、高い接着力を発揮でき、特別な保管条件を要しないホットメルト接着樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含み、(A)成分と(B)成分との合計含有量100質量部中において、(A)成分の含有量は10質量部以上40質量部以下であり、(A)成分と(C)成分とは、(A)成分が含有する官能基1.0当量に対して、(C)成分が含有する官能基が1.0当量を超え5.0当量以下となるように配合されたことを特徴とする、ホットメルト接着樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むホットメルト接着樹脂組成物であって、
厚さ75μmの基材層に前記ホットメルト接着樹脂組成物を乾燥膜厚20μmで塗布したフィルムに、厚みが100μmのアルミニウム板を積層し、温度170℃、圧力0.4MPa、圧着時間10分間で加熱圧着させることにより得た積層体において、
前記アルミニウム板と、前記フィルムとをそれぞれ固定し、引張り速度300mm/minにて、剥離角度180°の条件で前記フィルムを剥離したとき、前記アルミニウム板に対する前記フィルムの接着力(単位:N/15mm)が、10N/15mm以上であることを特徴とする、ホットメルト接着樹脂組成物。
(A)成分:官能基をポリオレフィンに導入した変性ポリオレフィン。
(B)成分:固体フェノール樹脂。
(C)成分:架橋剤。
【請求項2】
前記(A)成分は、カルボン酸又は無水カルボン酸で変性された変性ポリオレフィンである、請求項1に記載のホットメルト接着樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分は熱溶融型フェノール樹脂である、請求項1又は2に記載のホットメルト接着樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)成分は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イソシアネート樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、アミノ基含有樹脂、ポリアミン、アミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のホットメルト接着樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有するホットメルト接着樹脂積層体であって、前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備え、
前記接着層は、請求項1~4のいずれか1項に記載のホットメルト接着樹脂組成物から構成されたものである、ホットメルト接着樹脂積層体。
【請求項6】
前記基材層は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリケトン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載のホットメルト接着樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着樹脂組成物及びホットメルト接着樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属等の被着体に接着する材料としてホットメルト接着剤が用いられている。特許文献1には、熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、絶縁性球状無機質充填剤と、を含む回路部材接続用フィルム状接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3991268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のホットメルト接着剤は、架橋反応を進行させるため長時間の加熱工程や光エネルギー照射工程を要する場合がある。また、ホットメルト接着剤と水分とを接触させることにより架橋させる場合には、特殊な架橋設備が必要となる場合もある。
【0005】
一方、短時間で架橋反応を進行させるためにはホットメルト接着剤は反応性の高い設計となる。このような場合、ホットメルト接着剤を保管するためには、低温保管、防湿保管、遮光保管等の特別な保管条件を設定する必要であった。
【0006】
このような状況において、短時間で架橋反応が進行し、保管が容易なホットメルト接着剤が望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、短時間の加熱により接着し、高い接着力を発揮でき、保管が容易なホットメルト接着樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含み、(A)成分と(B)成分との合計含有量100質量部中において、(A)成分の含有量は10質量部以上40質量部以下であり、(A)成分と(C)成分とは、(A)成分が含有する官能基1.0当量に対して、(C)成分が含有する官能基が1.0当量を超え5.0当量以下となるように配合されたことを特徴とする、ホットメルト接着樹脂組成物。
(A)成分:官能基をポリオレフィンに導入した変性ポリオレフィン。
(B)成分:固体フェノール樹脂。
(C)成分:架橋剤。
[2]前記(A)成分は、カルボン酸又は無水カルボン酸で変性された変性ポリオレフィンである、[1]に記載のホットメルト接着樹脂組成物。
[3]前記(B)成分は熱溶融型フェノール樹脂である、[1]又は[2]に記載のホットメルト接着樹脂組成物。
[4]前記(C)成分は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イソシアネート樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、アミノ基含有樹脂、ポリアミン、アミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂からなる群より選択される1種以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のホットメルト接着樹脂組成物。
[5]樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有するホットメルト接着樹脂積層体であって、前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備え、前記接着層は、[1]~[4]のいずれか1つに記載のホットメルト接着樹脂組成物から構成されたものである、ホットメルト接着樹脂積層体。
[6]前記基材層は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリケトン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる群より選択される1種以上である、[5]に記載のホットメルト接着樹脂積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短時間の加熱により接着し、高い接着力を発揮でき、保管が容易なホットメルト接着樹脂組成物を提供することができる。
ここで、「短時間の加熱」とは、100℃から200℃の加熱温度で、5分間~15分間加熱することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体を金属板に積層した試験用積層体の断面の模式図。
図2】本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体を金属板に積層した試験用積層体を折り曲げたときの断面の模式図。
図3】比較例のホットメルト接着樹脂積層体を金属板に積層した試験用積層体を折り曲げたときの断面の模式図。
図4】比較例のホットメルト接着樹脂積層体を金属板に積層した試験用積層体を折り曲げたときの断面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
【0012】
<ホットメルト接着樹脂組成物>
本実施形態のホットメルト接着樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む。
(A)成分:官能基をポリオレフィンに導入した変性ポリオレフィン。
(B)成分:固体フェノール樹脂。
(C)成分:架橋剤。
【0013】
本実施形態において、(A)成分と(B)成分との合計含有量100質量部中において、(A)成分の含有量は10質量部以上40質量部以下である。
さらに、(A)成分と(C)成分とは、(A)成分が含有する官能基1.0当量に対して、(C)成分が含有する官能基が1.0当量を超え5.0当量以下となるように配合されている。
以下、本実施形態のホットメルト接着樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
【0014】
≪(A)成分≫
(A)成分は、官能基をポリオレフィンに導入した変性ポリオレフィンである。ここで「官能基」とは、被着体の表面と相互作用する官能基であり、本実施形態においてはカルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸性官能基であることが好ましい。(A)成分は、接着性に寄与する成分である。ここで「被着体の表面と相互作用する」とは、被着体表面の極性基と、(A)成分が有する酸性官能基との間で水素結合等の化学結合を形成することを意味する。
【0015】
本実施形態において(A)成分としては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン樹脂であって、ポリオレフィン樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものが好ましい。
【0016】
(A)成分は、官能基をポリオレフィンに導入することにより製造できる。導入方法としては、共重合方法又は酸変性方法が挙げられる。
共重合方法としては、酸官能基含有モノマーとオレフィン類とを共重合させる方法が挙げられる。
酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、ポリオレフィン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
本実施形態においては、ポリオレフィン樹脂を酸変性して(A)成分を製造することが好ましい。
【0017】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとオレフィン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。
共重合する場合の前記オレフィン系モノマーとしては、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
【0018】
なかでも(A)成分としては、接着性、耐久性等の観点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0019】
・重量平均分子量
本実施形態において、(A)成分の重量平均分子量は、40000以上が好ましく、50000以上がより好ましく、60000以上が特に好ましい。また、140000以下がより好ましく、130000以下がより好ましく、120000以下が特に好ましい。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0020】
・酸付加量
変性に用いるカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などが挙げられる。またその誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などが挙げられ、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、アクリル酸メチル、メタクル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N - ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸、およびその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸または無水フタル酸が好適である。
本実施形態において、(A)成分のカルボン酸付加量が、0.5質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
【0021】
・融点
本実施形態において、(A)成分の融点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく。60℃以上が特に好ましい。また融点の上限値は、110℃以下が好ましく、105℃以下がより好ましく、100℃以下が特に好ましい。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。本実施形態においては、50℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0022】
≪(B)成分≫
(B)成分は、固体フェノール樹脂である。(B)成分は熱溶融型のフェノール樹脂が好ましい。具体的には、ノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:100g/eq~110g/eq、軟化点:75℃~125℃)、クレゾール型フェノール樹脂(水酸基当量:110g/eq~120g/eq、軟化点:80℃~130℃)、またはこれらの混合物が挙げられる。このような(B)成分の例としては、エア・ウォーターベルパール株式会社製の、ベルパールSタイプが挙げられる。このような(B)成分を用いると、硬化後の接着層に剛直な構造を付与でき、例えば180℃程度の高温環境下に置かれた場合にも、接着力を維持できる。
【0023】
(B)成分の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上が特に好ましい。また、10000以下がより好ましく、9000以下がより好ましく、8000以下が特に好ましい。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
(B)成分の重量平均分子量が上記の範囲であると、ホットメルト接着樹脂組成物に耐湿性を付与できる。
【0024】
(B)成分の軟化点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく。60℃以上が特に好ましい。また軟化点の上限値は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下が特に好ましい。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0025】
(B)成分の軟化点が上記の範囲であると、(C)成分との反応が過度に進行せず、保管性が良好となる。
ここで「保管性」とは、25℃から40℃程度の温度で、遮光設備や防湿設備を要することなく数か月間保管が可能である性質を意味する。
【0026】
本実施形態において、(A)成分と(B)成分との合計含有量100質量部中において、(A)成分の含有量は10質量部以上40質量部以下であり、15質量部以上35質量部以下がより好ましい。
【0027】
(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、接着力を高めることができる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、例えば180℃程度の高温環境下に置かれた場合にも、接着力を維持できる。
【0028】
本実施形態において、(A)成分と(B)成分との合計含有量100質量部中において、(B)成分の含有量は60質量部以上90質量部以下であり、65質量部以上85質量部以下が好ましい。
【0029】
(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、例えば180℃程度の高温環境下に置かれた場合にも、接着力を維持できる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、接着力を高めることができる。
【0030】
≪(C)成分≫
(C)成分は架橋剤である。(C)成分は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イソシアネート樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、アミノ基含有樹脂、ポリアミン、アミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの中でも、エポキシ樹脂又はイソシアネート樹脂が好ましい。
【0031】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0032】
イソシアネート樹脂としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などのポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0033】
本実施形態において、(A)成分と(C)成分とは、(A)成分が含有する官能基1.0当量に対して、(C)成分が含有する官能基が1.0当量を超え5.0当量以下となるように配合されている。
【0034】
ここで、(A)成分が有する官能基とは、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸性官能基である。
上述した樹脂において、(C)成分が有する官能基とは、エポキシ樹脂である場合にはエポキシ基であり、フェノキシ樹脂である場合にはヒドロキシ基であり、イソシアネート樹脂である場合にはイソシアネート基であり、オキサゾリン基含有樹脂の場合にはオキサゾリン基であり、アミノ基含有樹脂の場合はアミノ基であり、ポリアミンの場合にはアミンであり、アミド樹脂の場合にはアミド基であり、メラミン樹脂の場合にはアミド基であり、尿素樹脂の場合にはアミノ基である。
【0035】
(A)成分に対する(C)成分の配合量を決定するため、まず、(A)成分と(C)成分について、官能基の濃度を電位差滴定法又は指示薬滴定法により求める。下記に、(A)成分の官能基の濃度(酸価(-COOH)又は水酸基価(-OH))を指示薬滴定法により算出する場合の一例を記載する。
【0036】
[酸価の測定方法]
1)試料を約3gを量りとり、200mLトールビーカに投入する。
2)滴定溶剤20mLを添加する。
3)ビーカ加熱装置にて液温を20℃に加熱し、試料を溶解させる。
4)液温が20℃で一定になった後、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定を行い、酸価を求める。
【0037】
[酸価の算出]
酸価(mg/g)=(EP1-BL1)×FA1×C1×K1/SIZE
上記式において、各記号は以下の数値を意味する。
EP1:滴定量(mL)
BL1:ブランク値(0.0mL)
FA1:滴定液のファクタ(1.00)
C1 :濃度換算値(5.611mg/mL )
(0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)
K1 :係数(1)
SIZE :試料採取量(g)
【0038】
上記の方法により得られた官能基の濃度を、(A)成分が含有する官能基1.0当量に対して、(C)成分が含有する官能基が1.0当量を超え5.0当量以下となるように配合する。
【0039】
(A)成分の酸価から、(C)成分の具体的な配合量(質量部)を下記の方法により算出する。まず、下記式で(A)成分の官能基当量を求める。
(A)成分の官能基当量=KOHの分子量×1000/酸価
【0040】
(C)成分の官能基当量は、例えばエポキシであればJIS K 7236に規定された方法を用いることが出来る。
【0041】
イソシアネートであればJIS K 7301に規定された方法を用いることが出来る。
[イソシアネート当量の測定方法]
1) 試料3gを200mL三角フラスコに採取する。
2) 脱水トルエン20mLを加えて、試料を溶解させる。
3) 2mol/Lジノルマルブチルアミン溶液20.0mLを加える。
4) 振り混ぜて均一にしてから、20分以上放置する。
5) イソプロピルアルコール100mLを加える。
6) 1mol/L 塩酸溶液を用いて滴定を行い、イソシアネート当量を求める。
【0042】
[イソシアネート当量の算出]
イソシアネート当量=(SIZE/((BL1-EP1)×FA1))×K2
EP1:滴定量(mL)
BL1:ブランク値(39.888mL)
FA1:滴定液のファクタ(1.00)
K2 :係数(1000)
SIZE:試料採取量(g)
【0043】
(A)成分の配合量をXとすると、(C)成分の配合量Yは下記式で示せる。
Y=(C)成分の官能基当量×X/(A)成分の官能基当量
【0044】
(C)成分を上記下限値を超えるように配合すると、例えば180℃程度の高温環境下に置かれた場合にも、接着力を維持できる。
(C)成分を上記上限値以下となるように配合すると、(A)成分と(C)成分とが過度に反応することがないため、保管性が良好となる。
【0045】
本実施形態のホットメルト接着樹脂組成物は、上記構成としたことにより、短時間の加熱により接着できるという高い反応性と、保管性を両立させることができる。また、本実施形態のホットメルト接着樹脂組成物は、特に金属に対する接着力が高く、高温環境下に置かれた場合にも接着力を維持できる。
【0046】
≪任意成分≫
本実施形態においては任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併せて用いてもよい。
【0047】
<ホットメルト接着樹脂組成物の製造方法>
ホットメルト接着樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じて任意の成分を、一括又は適切な順序で混合することにより製造できる。
【0048】
<ホットメルト接着樹脂積層体>
本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体は、樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有する。本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体は、前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備える。接着層は、上述した本実施形態のホットメルト接着樹脂組成物から構成されたものである。
【0049】
前記基材層は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリケトン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0050】
本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体の積層例を以下に記載する。
・積層例1
接着層と基材層と、を積層した積層体。
・積層例2
第1の接着層/基材層/第2の接着層を、この順で積層した積層体。但し、第1の接着層と第2の接着層はともに本実施形態のホットメルト接着樹脂組成物から構成されたものである。
【0051】
本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体を用いて接着する被着体は、金属、ガラス、プラスチックなど各種の被着体を用いることができる。上記本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体は金属に対して高い接着性を発揮できるため、被着体として金属を好適に用いることができる。
【0052】
金属は一般に知られている金属板、金属平面板もしくは金属箔を用いることができる。これらに用いられる金属としては例えば、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、チタン、クロムであってよく、合金であるステンレス等であってもよい。また、金属によるめっきや金属を含む塗料による塗布加工により表面加工処理をされた金属もしくは非金属を被着体として用いてもよい。特に好ましくは、鉄、アルミニウム、チタン、ステンレス、表面加工処理をされた金属からなる金属平面板もしくは金属箔であり、これらを被着体として用いることにより、本実施形態のホットメルト接着樹脂積層体が特に強固な接着力を発揮する。
【0053】
<ホットメルト接着樹脂積層体の製造方法>
ホットメルト接着樹脂積層体は、水又は溶剤に、分散又は溶解させたホットメルト接着樹脂組成物を、基材上に塗工し、乾燥させることにより製造できる。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0055】
<ホットメルト接着樹脂組成物の製造>
下記表1に示すA成分、B成分及びC成分を、表1に示す配合比で含み、固形分が50質量%のホットメルト接着樹脂組成物1~9の水分散液を得た。下記表1中C成分の「当量」とは、A成分が含有する官能基1.0当量に対して、C成分が含有する官能基当量である。A成分の官能基量(酸価)は下記の方法により算出した。
【0056】
[酸価の測定方法]
1)試料を約3gを量りとり、200mLトールビーカに投入する。
2)滴定溶剤20mLを添加する。
3)ビーカ加熱装置にて液温を20℃に加熱し、試料を溶解させる。
4)液温が20℃で一定になった後、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定を行い、酸価を求める。
【0057】
[酸価の算出]
酸価(mg/g)=(EP1-BL1)×FA1×C1×K1/SIZE
上記式において、各記号は以下の数値を意味する。
EP1:滴定量(mL)
BL1:ブランク値(0.0mL)
FA1:滴定液のファクタ(1.00)
C1 :濃度換算値(5.611mg/mL )
(0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)
K1 :係数(1)
SIZE :試料採取量(g)
【0058】
【表1】
【0059】
表1中、各記号は以下の材料を意味する。
【0060】
【表2】
【0061】
<ホットメルト接着樹脂積層体の製造>
得られたホットメルト接着樹脂組成物1~9の水分散液を、基材上にハンドコートにより塗布し、110℃で1分間乾燥させ、基材層/接着層の2層のホットメルト接着樹脂積層体(実施例1~9、比較例1~4)を製造した。基材層には、表3に示す材料をそれぞれ用いた。以下、基材層/接着層の2層のホットメルト接着樹脂積層体をフィルムと記載することがある。
【0062】
表3中、基材層の略語は下記材料を意味する。
・PI:ポリイミド
・PEN:ポリエチレンナフタレート
・SPS:ポリフェニレンサルファイド
・COC:シクロオレフィンコポリマー
・PP:ポリプロピレン
【0063】
<評価>
≪剥離強度の測定≫
・試験用積層体の製造
試験用積層体について、図1を参照して説明する。
図1に示す試験用積層体1は、基材層10及び接着層11を備えるフィルムの積層体11側に、厚みが100μmのアルミニウム板12を積層し、加熱圧着させることにより得た。
加熱圧着の条件は、温度170℃、圧力0.4MPa、圧着時間10分間とした。試験用積層体1の寸法は、図4に示す幅l1を20mm、長さ50mmとした。
【0064】
・剥離強度試験
試験用積層体1のアルミニウム板と、フィルムとをそれぞれ固定し、引張り速度300mm/minにて、剥離角度180°の条件でフィルムを剥離し、アルミニウム板に対するフィルムの接着力(単位:N/15mm)を測定した。測定は、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で実施した。測定した接着力を、下記の基準で評価した。
〇:10N/15mm以上
△:7N/15mm以上
×:7N/15mm未満
【0065】
≪180℃での浮き評価≫
図1に示す試験用積層体1を。符号lの位置で基材層10の面が内側になるように折り曲げた。折り曲げ角度は90°とした。折り曲げた状態で、温度180℃で10分間加熱した。加熱後、折り曲げた状態での折り曲げ部分のフィルムの接着性を下記の基準で評価した。
〇:図2に示す断面のように、折り曲げ部分のフィルムの浮きがなく、アルミニウム板12に接着層11が接着している。
△:図3に示す斜視図のように、折り曲げ部分のフィルムが、符号4に示す箇所において一部剥離して浮きが見られ、アルミニウム板12に接着層11が一部剥離している。
×:図4に示す斜視図のように、折り曲げ部分全体が剥離して浮きが見られ、折り曲げ部分全体においてアルミニウム板12を接着層11が完全に剥離している。
【0066】
≪保管性評価≫
上述のフィルムを40℃の温度条件で5日間放置した。保管の前後で、上記≪剥離強度の測定≫と同様の方法により、アルミニウム板に対するフィルムの接着力(単位:N/15mm)を測定した。保管前に接着力に対する保管後の接着力の割合(%)を測定し、下記の基準で評価した。
〇:70%以上
△:50%以上
×:50%未満
【0067】
【表3】
【0068】
上記結果に示したとおり、本発明を適用したホットメルト接着樹脂積層体は、10分間という短時間の加熱により接着し、高い接着力を発揮できた。さらに、低温保管、遮光設備又は防湿設備等の特別な保管条件で保管せずとも、保管の前後で接着力に劣化が見られなかった。
【符号の説明】
【0069】
1:積層体、10:基材層、11:接着層、12:アルミニウム板
図1
図2
図3
図4