IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特開-外径測定器 図1
  • 特開-外径測定器 図2
  • 特開-外径測定器 図3
  • 特開-外径測定器 図4
  • 特開-外径測定器 図5
  • 特開-外径測定器 図6
  • 特開-外径測定器 図7
  • 特開-外径測定器 図8
  • 特開-外径測定器 図9
  • 特開-外径測定器 図10
  • 特開-外径測定器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162143
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】外径測定器
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/08 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
G01B5/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135202
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2018057524の分割
【原出願日】2018-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輔
(57)【要約】
【課題】一種類の材料、一つの形状の部品で幅広く外径測定器の温度特性を調整する。
【解決手段】ワーク55の外径を測定する接触式の外径測定器において、一端がワークに55当接する接触子21を有する先端部Sとされ、他端は接触子21の移動距離を検出するセンサ部Gのリニアスケール6に接続されたセンサロッド20と、を有し、センサ部Gは、リニアスケール6の移動距離を検出することで接触子21の移動距離を検出するセンサ4が設けられた基板3と、基板3の基板取付穴7を介して基板3が固定される取付板1と、取付板1に対して、より低熱膨張材とされたセンサ部本体10-2と、取付板1に設けられた二箇所の取付穴2のそれぞれを介して取付板1をセンサ部本体10-2へ固定する複数のねじ5と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに当接する接触子を有するセンサロッドと、
前記接触子の移動距離を検出するセンサ部と、を備え、
前記センサ部は、センサ部本体と、前記センサ部本体に固定される取付板と、前記センサ部本体を貫通する前記センサロッドの前記接触子と反対側の端部に接続されたリニアスケールと、前記リニアスケールの移動距離を検出するセンサと、を有し、
前記センサ部本体は、前記取付板よりも低熱膨張の部材であり、
前記センサは、前記取付板の伸び量に応じて移動し、
前記取付板は、内側から外側までの範囲で前記センサ部本体に対する固定位置を調整できる、ことを特徴とする外径測定器。
【請求項2】
前記取付板は、前記範囲内に取付穴を有し、前記取付穴に取り付けられる固定部材により前記センサ部本体に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の外径測定器。
【請求項3】
前記取付穴は、複数の取付穴を含み、
前記固定部材は、複数の固定部材を含み、
前記取付板は、前記複数の取付穴にそれぞれ取り付けられる前記複数の固定部材により前記センサ部本体に固定される、請求項2に記載の外径測定器。
【請求項4】
前記取付板は、前記範囲の中央部にV字状の切込みが設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の外径測定器。
【請求項5】
前記切込みの深さは、前記取付穴の位置よりも深い、ことを特徴とする請求項4に記載の外径測定器。
【請求項6】
前記取付板は、前記複数の固定部材がそれぞれ取り付けられる前記複数の取付穴の間に設けられた円弧状のリブJと、前記取付穴が設けられたリブLと、前記リブJと前記リブLとを繋げるX字状のリブKと、を備える、ことを特徴とする請求項3に記載の外径測定器。
【請求項7】
前記取付板は、前記範囲の中央部を挟んで左右に設けられた2つの前記取付穴にそれぞれ取り付けられる2つの前記固定部材により前記センサ部本体に固定される、ことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の外径測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば円柱状のワークの外径等を高精度に測定する接触式の外径測定器及びその温度特性を調整する方法に関し、特に工作機械、研削装置等に外径測定器を取り付けて自動測定するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の多様化、商品寿命の短期化といった市場の流れに対応する生産設備の手段として加工機のフレキシブル化、自動化については、小中量、大量生産に係らず、加工品質の維持、監視など、インプロセス計測が必要となる。インプロセス計測は、加工現場での環境下で信頼性の高い、高精度かつ高能率な測定が必要とされる。また、切粉、切削液、温度変動、機械振動などの影響を十分回避するために、接触子をマスタ、ワークに当接させる接触式の外径測定装置が広く用いられている。
【0003】
例えば自動車のエンジン等に用いられるクランクシャフト研削盤等のクランクシャフト加工機において、ジャーナルの軸線を中心に回転するクランクピンの外径寸法をクランクピンの研削加工中に外径測定用ゲージで測定することでインプロセス計測が行われている。外径測定器としては、V字に広がったブロックとブロックの間にある接触子との三点でクランクピンの外周に接触してその半径を測定することが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
また、測定装置の組み立て誤差に基づく測定変動の恐れやワークの加工中にびびり等の振動が発生しても、ワークをより確実に保持して正確なワーク径を得るため、ワークに当接する接触子を先端部に有するデジタルセンサと、デジタルセンサを収容する貫通穴が中央部に形成され長手方向に延びるVベースと、を設けること、センサとしては、その先端部が測定対象に当接し、測定対象を押圧するように付勢され、測定対象のサイズの変動を先端部の移動距離として検出するリニアセンサとすることが知られ、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-160458号公報
【特許文献2】特開2017-67512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に記載の外径測定用ゲージは、クランクピンの外径寸法をクランクピンの研削加工中に測定するので、機械振動ばかりでなく、加工現場の環境下での大きな温度変動、加工中のワークからの伝熱によって精度への影響を大きく受ける。したがって、クランクピンの測定のように加工中のワークを測定する場合、特に、外径測定器の温度特性を調整する必要がある。また、外径測定器の温度特性は、同じ形状の異なる熱膨張係数の部品を組み付けて調整を行う方法をとっている。
【0007】
そのため、温度特性を調整するための部品は、複数の材料で同一形状の部品を事前に複数用意して交換しなければならず、在庫を管理することが困難であった。さらに、複数の材料で同一形状の部品を用意することは少量生産となること、調整時の部品交換の度に工数が掛かること、より、コスト高となっていた。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、少ない種類、理想的には一種類の材料、一つの形状の部品で幅広く外径測定器の温度特性を調整することにある。また、それによって、在庫管理を容易とし、簡単で簡素化した調整、工数の削減、コスト低減を行うことにある。さらに、他の目的としては、加工現場の環境条件、特に温度条件に係らず、高精度で、安定した測定精度、繰り返し精度を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の構成は、以下のとおりである。
[1] ワークに当接する接触子を有するセンサロッドと、上記接触子の移動距離を検出するセンサ部と、を備え、上記センサ部は、センサ部本体と、上記センサ部本体に固定される取付板と、上記センサ部本体を貫通する上記センサロッドの上記接触子と反対側の端部に接続されたリニアスケールと、上記リニアスケールの移動距離を検出するセンサと、を有し、上記センサ部本体は、上記取付板よりも低熱膨張の部材であり、上記センサは、上記取付板の伸び量に応じて移動し、上記取付板は、内側から外側までの範囲で上記センサ部本体に対する固定位置を調整できる、ことを特徴とする外径測定器。
[2] 上記取付板は、上記範囲内に取付穴を有し、上記取付穴に取り付けられる固定部材により上記センサ部本体に固定される、ことを特徴とする[1]に記載の外径測定器。
[3] 上記取付穴は、複数の取付穴を含み、上記固定部材は、複数の固定部材を含み、上記取付板は、上記複数の取付穴にそれぞれ取り付けられる上記複数の固定部材により上記センサ部本体に固定される、[2]に記載の外径測定器。
[4] 上記取付板は、上記範囲の中央部にV字状の切込みが設けられている、ことを特徴とする[3]に記載の外径測定器。
[5] 上記切込みの深さは、上記取付穴の位置よりも深い、ことを特徴とする[4]に記載の外径測定器。
[6] 上記取付板は、上記複数の固定部材がそれぞれ取り付けられる上記複数の取付穴の間に設けられた円弧状のリブJと、上記取付穴が設けられたリブLと、上記リブJと上記リブLとを繋げるX字状のリブKと、を備える、ことを特徴とする[3]に記載の外径測定器。
[7] 上記取付板は、上記範囲の中央部を挟んで左右に設けられた2つの上記取付穴にそれぞれ取り付けられる2つの上記固定部材により上記センサ部本体に固定される、ことを特徴とする[3]乃至[6]のいずれかに記載の外径測定器。
【0010】
本発明の他の構成は、ワークの外径を測定する接触式の外径測定器において、一端が前記ワークに当接する接触子を有する先端部とされ、他端は前記接触子の移動距離を検出するセンサ部のリニアスケールに接続されたセンサロッドを有し、前記センサ部は、前記リニアスケールの移動距離を検出することで前記接触子の移動距離を検出するセンサが設けられた基板と、前記基板の少なくとも2つの基板取付穴を介して前記基板が固定される取付板と、前記取付板に対して、より低熱膨張材とされたセンサ部本体と、前記取付板に設けられた二箇所の取付穴のそれぞれを介して前記取付板を前記センサ部本体へ固定する複数のねじと、を備えたものである。
【0011】
また、上記のものにおいて、前記取付穴は左右に複数ずつ設けられ、いずれか二箇所を選択して前記ねじにより前記取付板を前記センサ部本体へ固定することにより、前記取付板の拘束される間隔を可変可能としたことが望ましい。
【0012】
さらに、前記取付板は、前記二箇所の取付穴の間の中央部に左右対称のV字状の切込みが設けられていることが望ましい。
【0013】
さらに、前記被測定物を挿入して前記被測定物の姿勢を規制するガイドを備えたことが望ましい。
【0014】
さらに、前記取付板には、前記中央部で前記切込みに対して前記センサ部側の位置に前記センサ部方向へ膨らんだ円弧が設けられ、該円弧の左右端は、前記二箇所の取付穴の中心を結ぶ直線からの最短距離が前記中央部に比べて小さくなっていることが望ましい。
【0015】
さらに、前記取付板は、前記センサ部方向において前記切込みと前記円弧との間に貫通穴を設けたことが望ましい。
【0016】
さらに、前記センサは前記基板の中央部で少なくとも2つの前記基板取付穴とは左右方向で略一直線上に位置することが望ましい。
【0017】
さらに、上記のものにおいて、前記取付板は、前記二箇所の取付穴の間に設けられた円弧状で細いリブJと、前記基板取付穴が設けられたリブLと、前記リブJと前記リブLとを繋げるX字状のリブKと、を備えたことが望ましい。
【0018】
また、本発明は、一端がワークに当接する接触子を有する先端部とされ、他端は前記接触子の移動距離を検出するセンサ部のリニアスケールに接続されたセンサロッドを有し、前記ワークの外径を測定する接触式の外径測定器の温度特性を調整する方法であって、前記センサ部は、前記リニアスケールの移動距離を検出することで前記接触子の移動距離を検出するセンサが設けられた基板と、前記基板の基板取付穴を介して前記基板が固定される取付板と、前記取付板に対して、より低熱膨張材とされたセンサ部本体と、前記取付板に設けられた二箇所の取付穴のそれぞれを介して前記取付板を前記センサ部本体へ固定する複数ねじと、を有し、前記取付穴は左右に複数ずつ設けられ、いずれか二箇所を選択して前記ねじにより前記取付板を前記センサ部本体へ固定して前記取付板の拘束される間隔を可変することを特徴とする外径測定器の温度特性を調整することを特徴とする。
【0019】
さらに、内燃機関のクランク軸が有するクランクピンであるワークを回転させる駆動機構と、回転運動し回転軸に直角な方向に進退自在な砥石と、前記砥石に当接して配置される前記ワークに接触子が当接する位置に配置される外径測定器と、一端側を前記砥石の駆動機構に回動可能に固定されたアームと、を有し、前記外径測定器が前記ワークの位置に追随可能になるように前記アームが回動可能である研削装置において、前記外径測定器は、一端が前記ワークに当接する接触子を有する先端部とされ、他端は前記接触子の移動距離を検出するセンサ部のリニアスケールに接続されたセンサロッドを有し、前記センサ部は、前記リニアスケールの移動距離を検出することで前記接触子の移動距離を検出するセンサが設けられた基板と、前記基板の基板取付穴を介して前記基板が固定される取付板と、前記取付板に対して、より低熱膨張材とされたセンサ部本体と、前記取付板に設けられた二箇所の取付穴のそれぞれを介して前記取付板を前記センサ部本体へ固定する複数のねじと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、先端部に接触子を有するセンサロッドで接触子の移動距離を検出する外径測定器において、センサが設けられた基板の取付板は、取付板の二箇所の取付穴を介して、取付板より低熱膨張材とされたセンサ部本体へ固定されるので、温度上昇した際に、取付板の左右方向の歪を長手方向に変換することができる。そして、少ない種類の形状である取付板によって幅広く外径測定器の温度特性を調整することができる。
【0021】
したがって、在庫管理を容易とし、簡単で簡素化した調整、工数の削減を可能とし、加工現場の環境条件、特に温度条件に係らず、高精度で、安定した測定精度、繰り返し精度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による一実施形態に係る外径測定器を備える研削装置の正面図
図2図1の側面図
図3】本発明による一実施形態に係る外径測定器の先端部を一部断面とした平面図
図4図3におけるセンサ部Gを拡大した平面図
図5図3におけるセンサ部Gの断面図
図6】本発明による一実施形態に係る外径測定器に熱が加わったときの取付板の変位を説明する図
図7】本発明による一実施形態に係る取付板の詳細な形状を示す平面図
図8】本発明による一実施形態に係る取付板を温度上昇させたときシミュレーション結果を示す図
図9】他の実施形態に係わる取付板の詳細な形状を示す平面図
図10】他の実施形態に係わるセンサ部Gを拡大した平面図
図11】他の実施形態に係る取付板を温度上昇させたときシミュレーション結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施例に係る外径測定器10及びそれを備える研削装置80の概略図であり、図1は研削装置80の正面図、図2は研削装置80の側面図である。研削対象であるワーク55は、内燃機関のクランク軸が有するクランクピン55である。
【0024】
図1において、研削装置80では、回転運動(図1では反時計回りの回転)する砥石84が砥石支持部材83に回転可能に支持されている。なお、砥石84は図2に示すように、回転駆動機構(モータ)88により回転駆動される。砥石支持部材83は、砥石84の回転軸に直角な方向に進退(B/F)可能に設けられた砥石ベース82に固定されている。
【0025】
砥石ベース82の下面には、間隔を置いてガイドレール81に係合する直動ガイド85が設けられている。直動ガイド85は、基礎に固定されたレール上を滑動する。砥石ベース82を進退させる直動機構86が砥石ベース82上に配置されている。
【0026】
砥石支持部材83の上部には、アーム12の一端が、回転中心12aで回転可能に取り付けられている。アーム12の他端には、外径測定器10が回転中心12bで回転可能に取り付けられている。砥石84にはワークであるクランクピン55が当接しており、外径測定器10の先端部はクランクピン55と砥石84との当接部とは異なる周方向位置で、クランクピン55に当接する。砥石84とクランクピン55とが安定して当接する。クランクピン55が旋回運動すると、それに応じて砥石84が進退(F/B)するが、外径測定器10はクランクピン55に追従して移動する。
【0027】
図2において、紙面の前側にはクランクシャフト50を駆動するクランクシャフト駆動部が、後側には砥石部がそれぞれ配置されている。クランクシャフト駆動部は、クランクシャフト50の両端部を回転支持する回転支持部62を有し、クランクシャフト50の一方端に取り付けた回転駆動機構(モータ)64により、クランクシャフト50は回転駆動される。
【0028】
クランクシャフト50の回転を図示しないセンサで検出して、制御装置100に入力信号94として入力する。一方、制御装置100からはモータ64を制御する制御出力信号96が指令される。同様に、砥石84と砥石ベース82を駆動する直動機構86から回転信号93や位置信号92が制御装置100に入力され、制御装置100からそれぞれ指令信号97,98が出力される。この時、外径測定器10からワークであるクランクピン55の外径が制御装置100に入力信号91として入力される。
【0029】
制御装置100は、これらの各入力信号92~94に基づいて各駆動装置64、88、86を駆動し、ピン径測定装置10の入力信号91に基づいて、研削装置80がクランクピン55を所定値まで研削したか否かを判断する。そして、クランクピン55の外径が所定の許容範囲に入ったら、研削を終了する。
【0030】
図3から図5に、外径測定器10の詳細を示す。図3は、外径測定器10の先端部Sを一部断面とした平面図、図4は、センサ部Gを拡大した平面図、図5は、センサ部Gの断面図である。図1に示したように外径測定器10は、一端側をアーム12に回転可能に取り付けられた細長い概略矩形で箱状のゲージ本体10-1と、それに固定されたセンサ部本体10-2を有している。ゲージ本体10-1の先端部Sには、中央部に外径測定センサであるセンサロッド20が保持されるように断面矩形状または台形状または円形の穴が貫通したVベース19が固定されている。
【0031】
Vベース19の先端部Sに設けられた接触子21は、測定対象であるワーク55に当接し、測定対象を押圧するように付勢される。また、センサロッド20は、先端部Sからゲージ本体10-1を貫通してセンサ部Gまで伸びて接続されている。測定対象のサイズの変動は、センサロッド20の接触子21の移動距離として捉えられ、ゲージ本体10-1の他端側に設けられたセンサ部Gで検出するタイプである。
【0032】
Vベース19のワーク55に当接する側は、矩形断面をV字型にカットした形状であり、さらに、研削装置80に取り付けられた場合に上側になる部分は、砥石84との干渉を避けるため、上下方向をカットされた形状となっている。Vベース19の中央部を貫通して配置されるセンサロッド20はセンサ部Gでリニアスケール6と接続され、センサ4と共に、リニアセンサを構成する。先端部にルビー等の球で形成された接触子21を有する。
【0033】
Vベース19のV字を構成する斜面には、断面が台形状の上側取付板44と下側取付板45が取り付けられており、各取付板44、45にはワーク55に点接触するように配置された上側保持部材41と下側保持部材42が固定されている。ここで、上側保持部材41と下側保持部材42には、ワーク55を傷つける恐れがないようまた研削加工中変形しないよう、金属製の丸棒または丸チューブを用いている。
【0034】
センサ部Gでは、センサ部本体10-2に取付板1が取付穴2を介して、ねじ5で固定される。取付穴2は複数、図4で左右に三箇所ずつ取付板1の先端部S側に設けられ、固定はそのいずれか二箇所で行われる。いずれか二箇所を選択することにより、取付板1の固定される間隔を可変することができる。
【0035】
基板3の中央部にはセンサ4が設けられ、基板3は取付板1の少なくとも2つの基板取付穴7を介して例えばネジなどで固定される。センサロッド20は、一端にワークに当接させるための接触子21を有し、他端にセンサ部G内に収納されるリニアスケール6が接続されている。リニアスケール6は、センサロッド20の移動と共に移動する。リニアスケール6には、例えば白黒の細かいパターンが描かれ、センサ4はリニアスケール6のパターンへ発光して受光し、その移動量を検出する。
【0036】
図6は外径測定器10に熱が加わったときの実施形態1による取付板1の変位を説明する図である。取付板1の材質はステンレスであり、センサ部本体10-2の材質は取付板1に対して、より低熱膨張材であるNi系合金を用いる。熱膨張率の大きい取付板1が低熱膨張材であるセンサ部本体10-2に二箇所、ねじ5で拘束される。
【0037】
したがって、取付板1はポアソン効果によって、拘束された部分の伸び(左右方向Bの歪)が拘束されていない方向(長手方向A)への変形(歪み)に変換される。つまり、拘束した部分の伸び量に応じて拘束されていない方向への伸び量を変えることができる。
【0038】
図6の(a)では、左右にそれぞれ三箇所に設けられた取付穴2のうち一番外側の位置で取付板1がセンサ部本体10-2へ固定されている。(b)では一番内側の位置で取付板1が固定される。したがって、(a)の方が矢印方向の伸び量が(b)よりも大きくなる。
【0039】
同じ温度上昇であれば、基板取付穴7の位置は(a)の方が図6で長手方向Aへ大きく移動することになる。少なくとも2つの基板取付穴7には基板3が取り付けられ、センサ4は基板3の中央部で基板取付穴7とは左右方向で略一直線上に位置するので、センサ4の位置がモーメントを受けて回転せずに長手方向Aに移動することとなる。したがって、センサ4による検出誤差が少なくなり、温度上昇が有っても高精度化を図ることができる。
【0040】
また、取付板1、基板3は、図4に示すように取り付けられているので、図6の長手方向Aの伸び量は、センサ4がリニアスケール6に対して図3、4、5で矢印Aの方向へ移動したこととなる。外径測定器10の環境条件として温度上昇が有った場合、センサロッド20の矢印A方向への、伸び量、移動量が大きくなり、ワーク55の径が大きく測定される。それに対して、センサ4がリニアスケール6に対して図3、4、5で矢印Aの方向へ移動することは、この温度上昇によるセンサロッド20(図3)の伸び量、移動量を補償することになる。
【0041】
しかし、この補償量は加工現場の環境下が異なること、外径測定器10自体の特性などで外径測定器10の温度特性として調整する必要がある。これに対して、図6(a)(b)に示すように取付板1のセンサ部本体10-2への固定位置を取付穴2の位置を変えることにより、外径測定器10の温度特性として調整することができる。したがって、取付板1として、一種類の材料、一つの形状の部品で幅広く外径測定器の温度特性を調整でき、在庫管理を容易とし、簡単で簡素化した調整、工数の削減を行いコスト低減となる。
【0042】
図7は、取付板1の詳細な形状を示す平面図である。この形状は、熱膨張で左右方向Bの伸びを長手方向Aに効率良く変換するように定められる。固定部であるE部は、既に述べたように、取付穴2を複数設け、固定個所の間隔を変えることでセンサロッド20の伸び量などに応じて長手方向Aの伸び量を変えることができる。
【0043】
F部は、V字状の切込みFを左右の取付穴2の中央部に設けている。このV字状の切込みFによって、取付板1は切込みがない場合に比べて、左右方向Bから力が加わった場合、長手方向Aへの伸びに変換される。さらに、取付穴2で低熱膨張材であるセンサ部本体10-2に固定されるので、取付板1にはセンサ部本体が取付板1に相当する熱膨張材の場合と比較してより大きく逆方向へ圧縮応力が掛かる。そして、左右方向Bに大きくなった伸びは長手方向Aに効率良く変換される。つまり、温度に対する長手方向Aの補償量を大きく、感度を高くする効果がある。
【0044】
また、V字状の切込みFの各角部は応力集中を避けるため、丸味を持たせるためRが付けられている。V字状の切込みFが無い形状、四角の切込み形状では、中央部で圧縮応力が相殺され縦方向への歪み(伸び)は大きく得られない。V字状の深さは、取付穴2の位置より深くすること、左右対称のV字とすること、が望ましい。
【0045】
H部は、図7で左右の略取付穴2の下側(ゲージ本体10-1からセンサ部Gへ向けて、A方向)に設けた貫通穴Hであり、V字状の切込みFと同様の作用がある。I部は、貫通穴Hのさらに下側(A方向)に位置し、左右の略取付穴2の中央部、左右方向Bの中央部が下側(A方向)に膨んだ円弧Iaとされている。つまり、貫通穴Hはセンサ部方向において切込みFと円弧Iaとの間に設けられている。
【0046】
円弧Iaの左右端Ibは、図7のように取付穴2から長手方向Aの距離が、中央部に比べて小さくなっている。ここで取付穴2から長手方向Aの距離とは、複数の取付け穴の中心(ネジ止めをする二箇所の取付穴2の中心)を結ぶ直線からの最短距離を意味する。したがって、温度上昇による伸び量は、中央部に比べて円弧Iaの左右端では小さくなり、基板取付穴7の間隔が広がることを防いでいる。これにより、基板3に加わる温度上昇による左右方向Bの応力を低減している。なお、ねじ5はセンサ部本体10-2に取付板1を固定しているが、温度上昇によって、拘束力が変化しないように取り付けられる。
【0047】
図8は、取付板1を温度上昇させたときの変形方向などを示す数値解析によるシミュレーション結果であり、図中の矢印が方向と大きさを表しており、A方向に伸びることが分かる。
【0048】
図9は、他の実施形態による取付板1bを示す。取付穴2は左右にそれぞれ一箇所だけ設けている。取付穴2の間は円弧状で細いリブJとされ、2つの基板取付穴7が設けられたリブLとはX字状のリブKで繋がっている。温度上昇に伴いリブJが熱膨張で左右方向Bに伸びようとするが、取付穴2が低熱膨張材であるセンサ部本体10-2へ固定される。したがって、リブJは中央部J-1付近が図9で長手方向Aへ歪む。リブJは円弧状で細いので変形量は大きくなる。
【0049】
リブKはX字状とされているので、変形し易く図9で下方向への伸びは緩和される。基板取付穴7の位置は温度上昇によって図9で上方向、長手方向Aに移動する。したがって、センサ部本体10-2への取り付け位置は、実施形態1の取付板1とは逆方向(図9で上がA方向)となるようにセンサ部本体10-2へ取付穴2で固定する。これにより、実施形態1の取付板1と同様に温度上昇によるセンサロッド20(図3)の伸び量、移動量を補償することができる。
【0050】
図10は、他の実施形態による取付板1bを用いたときのセンサ部Gを拡大した平面図であり、図4で示したものと異なり、取付穴2の位置が基板3の中央部に設けられたセンサ4よりA方向側になっている。基板3は取付板1bの基板取付穴7を介して固定される。センサ部本体10-2に取付板1bが左右に設けられた取付穴2を介して、ねじ5で固定される。図11では取付穴2が左右に一箇所とされているが、図4のものと同様に左右に複数ずつ設けてもよい。ただし、取付板1bの方が細いリブJ、K、Lで構成されているので、図4のものより移動量を大きくすることができると共に、リブJ、K、Lの太さ、特にX字部の太さを変えることで移動量を可変し易い。したがって、リブJ、K、Lの太さ、特にX字部の太さを変えたものを用意することでもよい。
【0051】
図11は、取付板1bを温度上昇させたときの変形方向などを示す数値解析によるシミュレーション結果であり、円弧状で細いリブJが図10で上方向に伸びることが分かり、基板取付穴7の位置は温度上昇によって、ゲージ本体10-1からセンサ部Gへ向けて、A方向へ移動することが分かる。
【符号の説明】
【0052】
1、1b…取付板、2…取付穴、5…ねじ、3…基板、4…センサ、6…リニアスケール、7…基板取付穴、F…V字状の切込み、H…貫通穴、Ia…円弧、Ib…左右端、J、K、L…リブ、J-1…中央部、10…外径測定器、10-1…ゲージ本体、10-2…センサ部本体、S…先端部、G…センサ部、12…アーム、12a、12b…回転中心、19…Vベース、20…センサロッド、21…接触子、30…測定機構、41…上側保持部材、42…下側保持部材、44…上側取付板、45…下側取付板、50…クランクシャフト、52…リアフランジ、53…ジャーナル、54…クランクウェブ、55…ワーク(クランクピン)、61…クランクシャフト・ベース、62、63…回転支持部、64…回転駆動機構(モータ)、80…研削装置、81…ガイドレール、82…砥石ベース、83…砥石支持部材、84…砥石、85…直動ガイド、86…直動機構、88…回転駆動機構(モータ)、91~94…入力信号、96~98…出力信号、100…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11