(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162295
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】レベラーおよびカソード仕上げ機
(51)【国際特許分類】
C25C 7/02 20060101AFI20221017BHJP
B30B 3/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C25C7/02 304
B30B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067049
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 範幸
(72)【発明者】
【氏名】竹中 和己
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
【テーマコード(参考)】
4E090
4K058
【Fターム(参考)】
4E090AA04
4E090AB02
4E090BA05
4E090HA01
4K058FA10
4K058FA30
(57)【要約】
【課題】異物がローラーに噛み込むことを防止できるレベラーおよびかかるレベラーを備えたカソード仕上げ機を提供する。
【解決手段】カソード仕上げ機1において種板Sを矯正するレベラー20であって、レベラー20は、種板Sを挟むワークローラー21A,21Bと、ワークローラー21A,21Bの反種板側に設けられるバックアップローラー22,32と、種板Sから落下した異物を除去する除去手段40と、を備えている。種板Sから落下した異物をバックアップローラー32近傍から除去するので、異物がワークローラー21A,21Bやバックアップローラー22,32に噛み込まれることを防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード仕上げ機において種板を矯正するレベラーであって、
該レベラーは、
種板を挟むワークローラーと、
該ワークローラーの反種板側に設けられるバックアップローラーと、
種板から落下した異物を前記バックアップローラー近傍から除去する除去手段と、を備えている
ことを特徴とするレベラー。
【請求項2】
前記バックアップローラーの反種板側に設けられる、種板から落下した異物を受け止めるトレーを備えており、
前記除去手段は、
前記トレー内の異物を前記レベラー外に排出する機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載のするレベラー。
【請求項3】
前記除去手段は、
前記バックアップローラーと前記トレーとの間の空間に、間欠的および/または常時、種板から落下した異物をレベラー外に噴きとばす気体を吹き付けるエアブロー機構を有している
ことを特徴とする請求項2記載のレベラー。
【請求項4】
前記エアブロー機構は、
該レベラーにおいて該レベラーに種板が装入される装入側の端部または該レベラーから種板が排出される排出側の端部に設けられた、前記バックアップローラーと前記トレーとの間の空間に種板の搬送方向に沿って気体を噴き出すノズルを備えており、
該ノズルは、
該レベラーの装入側の端部または該レベラーの排出側の端部から、種板の搬送方向に沿って離間した位置に設けられている
ことを特徴とする請求項3記載のレベラー。
【請求項5】
前記ノズルから吹き出される気体の圧力が0.5MPa~1.0MPaに調整されており、
前記ノズルは、
その先端が、種板の搬送方向において、該レベラーの装入側の端部または該レベラーの排出側の端部までの距離が、100mm~200mmとなる位置に設けられており、
その開口径が0.5mm~1.5mmに調整されている、
ことを特徴とする請求項4記載のレベラー。
【請求項6】
前記除去手段は、
前記バックアップローラー側に位置する前記トレーの内面に沿って移動し、該トレーの内面上の異物をレベラー外に掃き出す掃き出し部材を有している
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のレベラー。
【請求項7】
前記トレーは、
前記バックアップローラー側に位置する内面が移動し、該トレーの内面上の異物をレベラー外に搬出する機能を有している
ことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のレベラー。
【請求項8】
前記トレー内から排出された異物を回収する回収機構を備えている
ことを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載のレベラー。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のレベラーを備えている
ことを特徴とするカソード仕上げ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベラーおよびカソード仕上げ機に関する。さらに詳しくは、非鉄金属などの電解精製工程に使用されるカソードの歪を抑制するレベラーおよびかかるレベラーを備えたカソード仕上げ機に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の電解精製あるいは電解採取に代表される金属電解においては、アノードとなる母板(粗金属板)とカソードを交互に並べて電解槽に供給して電解操業を行っている。例えば、銅の電解精製であれば、カソードと精製粗銅鋳造アノードとを交互に電解槽に供給し通電する。すると、電解の進行につれアノードから銅が溶け出し、この溶け出した銅がカソード上に電着して製品となる電気銅が得られる。
【0003】
このような金属電解においては、生産性向上のためアノードとカソードは、可及的に小さい間隔をもって電解槽内に供給され、また不利益を生じない限り高い電流密度において電解される。このため、カソードの種板の形状が不整な場合、例えば、種板が曲がっているような場合には、アノードとカソードの間隔を狭くし過ぎると、両極の接触、すなわちショートを起こして電解に寄与しない電流が流れることとなり、電解効率を悪化させることになる。また、アノードとカソードが接触しない場合でも、電解槽内のアノードとカソードに流れる電流にばらつきが生じる可能性があり、カソードの種板において突起や曲がりが生じている箇所には電流が集中し、アノードとカソードが接触していなくてもショートが発生する可能性がある。したがって、電解槽に供給されるカソードの種板には、その形状(平坦度など)が整ったものが求められる。
【0004】
金属電解に用いるカソードの種板は、電解精製などの方法でステンレス板等の母板に金属電着させたのち、その母板から剥ぎ取った薄板を使用するのが一般的である。しかし、電着によって作られる薄板からなる種板は、電着歪みや母板から剥ぎ取る時に歪が生じ易い。また、種板は薄いので、運搬時やハンドリング時においても非常に曲がり易い。このように、種板は、その平坦度等の形状を整った状態に維持すること困難であるため、カソード仕上げ機において、カソードを作製する際に矯正や溝付け処理等が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1~3には、カソード仕上げ機において、カソードにおける種板の形状(平坦度など)を整える技術が開示されている。具体的には、千鳥状に配置されたローラーを有するレベラーによって種板を矯正するとともに、上下一対の溝付けローラーによって種板に溝状の変形を与えることによって、作製されたカソードにおける種板の形状を整えている。つまり、作製されたカソードにおけるカソード歪を小さくすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-176880号公報
【特許文献2】特開2001-192879号公報
【特許文献3】特開2004-360050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、種板の表面上には、種板の表面に付着した銅粒子や、種板の周縁に形成された切れ端(以下、異物という場合がある)が存在している場合がある。上述したレベラーは、隣り合うワークローラーの隙間は種板の厚みと同程度であるため、種板の表面に異物が存在していた場合、種板がワークローラーに接触した際に異物が剥離し、剥離した異物はレベラー内に堆積してしまうという現象が生じている。
【0008】
レベラーにおいて種板の表面に接触するワークローラーは、複数のバックアップローラーによって支えられている。種板Sから剥離した異物がバックアップローラーに付着した場合、異物がバックアップローラーとワークローラーの間に噛み込んだり、ワークローラーの間に噛みこんだりする場合がある。すると、ワークローラーを正常に回転させることができず、種板とワークローラーとの間に発生する摩擦が増大して、種板の内部応力を正常に除去することが困難となる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、異物がローラーに噛み込むことを防止できるレベラーおよびかかるレベラーを備えたカソード仕上げ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<レベラー>
第1発明のレベラーは、カソード仕上げ機において種板を矯正するレベラーであって、該レベラーは、種板を挟むワークローラーと、該ワークローラーの反種板側に設けられるバックアップローラーと、種板から落下した異物を前記バックアップローラー近傍から除去する除去手段と、を備えていることを特徴とする。
第2発明のレベラーは、第1発明において、前記バックアップローラーの反種板側に設けられる、種板から落下した異物を受け止めるトレーを備えており、前記除去手段は、前記トレー内の異物を前記レベラー外に排出する機能を有していることを特徴とする。
第3発明のレベラーは、第2発明において、前記除去手段は、前記バックアップローラーと前記トレーとの間の空間に、間欠的および/または常時、種板から落下した異物をレベラー外に噴きとばす気体を吹き付けるエアブロー機構を有していることを特徴とする。
第4発明のレベラーは、第3発明において、前記エアブロー機構は、該レベラーにおいて該レベラーに種板が装入される装入側の端部または該レベラーから種板が排出される排出側の端部に設けられた、前記バックアップローラーと前記トレーとの間の空間に種板の搬送方向に沿って気体を噴き出すノズルを備えており、該ノズルは、該レベラーの装入側の端部または該レベラーの排出側の端部から、種板の搬送方向に沿って離間した位置に設けられていることを特徴とする。
第5発明のレベラーは、第4発明において、前記ノズルから吹き出される気体の圧力が0.5MPa~1.0MPaに調整されており、前記ノズルは、その先端が、種板の搬送方向において、沿って該レベラーの装入側の端部または該レベラーの排出側の端部までの距離が、100mm~200mmとなる位置に設けられており、その開口径が0.5mm~1.5mmに調整されていることを特徴とする。
第6発明のレベラーは、第2から第5発明のいずれかにおいて、前記除去手段は、前記バックアップローラー側に位置する前記トレーの内面に沿って移動し、該トレーの内面上の異物をレベラー外に掃き出す掃き出し部材を有していることを特徴とする。
第7発明のレベラーは、第2から第6発明のいずれかにおいて、前記トレーは、前記バックアップローラー側に位置する内面が移動し、該トレーの内面上の異物をレベラー外に搬出する機能を有していることを特徴とする。
第8発明のレベラーは、第2から第7発明のいずれかにおいて、前記トレー内から排出された異物を回収する回収機構を備えていることを特徴とする。
<カソード仕上げ機>
第9発明のカソード仕上げ機は、第1から第8発明のいずれかに記載のレベラーを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
<レベラー>
第1発明によれば、種板から落下した異物をバックアップローラー近傍から除去するので、異物がワークローラーやバックアップローラーに噛み込まれることを防止できる。
第2発明によれば、異物をトレーに受け止めることができ、トレーで受け止めた異物を除去するので、異物を効果的に除去することができる。
第3から第5発明によれば、気体を吹き付けて異物を除去するので、除去手段の構成を簡素化できる。
第6、第7発明によれば、トレーで受けとめた異物を、確実にトレーから除去することができる。
第8発明によれば、異物が周囲に飛散することを防止できるので、異物を確実に改修することができる。
<カソード仕上げ機>
第9発明によれば、種板の矯正を確実に行うことができるので、適切な形状を有するカソードを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)はレベラー20の概略説明図であり、(B)はバックアップローラーアッセンブリ30の概略断面図である。
【
図2】複数のバックアップローラーアッセンブリ30を設けたレベラー20の概略説明図である。
【
図3】(A)はカソード仕上げ機1の要部を示した図であり、(B)は内部応力除去部2のレベラー20におけるローラー押込み量Wの概略説明図である。
【
図4】(A)はカソード仕上げ機1の溝つけ部10に採用される溝つけローラー対11~13の一例を示した図であり、(B)はカソード仕上げ機1によって溝gが形成された種板Sの概略平面図であり、(C)は溝つけローラー対11~13の鍔部15~17の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態のレベラーは、電解精製に使用されるカソードを製造するカソード仕上げ機において種板をローラーで挟んで内部応力を除去するために使用されるものであり、種板表面に付着した異物がローラーに噛み込まれることを防止できるようにしたことに特徴を有している。
【0014】
本実施形態のレベラーは、電解精製による電気銅の作製に使用されるカソードを製造するカソード仕上げ機におけるカソードの変形防止に適しているが、本実施形態のレベラーが採用されるカソード仕上げ機はとくに限定されない。例えば、電気ニッケル電解製錬による電気ニッケルの作製に使用されるカソード等のように、変形を防止することが求められるカソードを製造するカソード仕上げ機に本実施形態のレベラーを採用することができる。
【0015】
なお、請求項9にいう本実施形態のカソード仕上げ機は、本実施形態のレベラーを採用したカソード仕上げ機を意味している。
また、上述した異物はとくに限定されない。例えば、銅粒子、及び種板の周縁に形成された切れ端などの銅粉を異物として挙げることができるが、異物はこれらに限定されない。
【0016】
<カソードC>
まず、本実施形態のレベラー20を採用したカソード仕上げ機1によって作製されるカソードCの概略を説明する。
図5に示すように、カソードCは、種板Sを吊り手shでカソードビームBから吊り下げたものである。種板Sは、例えば、縦幅が約1000~1150mm、横幅が約1000~1150mm、厚さが約0.6~1.0mmの金属板である。電気銅の作製に使用される場合には、種板Sには、純度が99.99%の電気銅が使用される。
【0017】
なお、本実施形態のカソード仕上げ機1では、図示しない種板電解工程から得られた種板Sが収容された種板パレットをカソード仕上げ機1の供給口に移送すれば、カソードビームBが取り付けられた状態のカソードCが作製される。
【0018】
ここで、種板電解工程とは、例えば、電気銅を作製する場合であれば、純度が99.99%の電気銅の種板を得る工程を意味している。この種板電解工程では、純度98%程度の粗銅であるアノード(陽極)とステンレス製やチタン製の母板(陰極)とを、電解液を満たした電解槽に交互に供給した状態で実施される。この状態で、電解槽に対する電解液の給液を行いつつ、例えば、電流密度250A/m2程度となるように両電極間に電流を供給すれば、純度が99.99%の電気銅の種板を得ることができる。この種板電解工程で使用される電解液はとくに限定されないが、例えば、膠、アビトン等が添加された銅の硫酸溶液が好ましい。
【0019】
そして、このカソードCの種板Sには、その上下方向(カソードCを吊り下げたときに鉛直方向となる方向、
図5では上下方向)に沿って延びる溝gが複数本形成されている。この複数本の溝gは、本実施形態のカソード仕上げ機1によって形成される。この複数本の溝gを形成することによって、カソードCの種板Sの上下方向における種板Sの凹凸が小さくなり、カソード歪を抑制することができる。したがって、かかるカソードCを使用すれば、通電工程における電力量の消費を抑えることができるので、電解精製の生産効率を向上することができる。
【0020】
なお、カソード歪とは、種板Sを上下方向の端縁からみたときにおける、種板Sの厚さを意味している(
図5のX参照)。
【0021】
<本実施形態のカソード仕上げ機1>
つぎに、本実施形態のカソード仕上げ機1の概略を説明する。
【0022】
本実施形態のカソード仕上げ機1は、厚さ測定部、内部応力除去部2、溝付け部10、吊り手形成部、カソードビーム取り付け部、を備えており(
図3(A)参照)、内部応力除去部2に本実施形態のレベラー20を有している。
【0023】
なお、
図3では、厚さ測定部、吊り手形成部、カソードビーム取り付け部、は記載を省略している。
また、カソード仕上げ機1は、上記以外にも、種板の裁断やカソード歪の測定などを行う機能を有していてもよい。
さらに、カソード仕上げ機1は、内部応力除去部2を有していれば、溝付け部10は必ずしも設けなくてもよい。
【0024】
カソード仕上げ機1には、種板電解工程で得られた所定の寸法の種板Sと、種板Sを所定の寸法(例えば、縦約0.1m×横約0.3m)に加工した吊り手shと、が供給される。
なお、所定の寸法の種板Sを形成する方法は、バリが少なく平滑な板となった種板Sが得られる方法であればよく、とくに限定されない。
【0025】
<厚さ測定部>
厚さ測定部は、内部応力除去部2へ供給する種板Sの厚さを測定するものである。後述の溝付け部10では、この厚さ測定部での測定値に基づいて、各溝付けローラー対11~13の鍔部15~17同士の隙間(クリアランスCL、
図3(C)参照)が調整される。
【0026】
厚さ測定部が種板Sの厚さを測定する方法はとくに限定されない。例えば、ノギスによって種板Sの厚さを直接測定してもよいし、レーザー光、放射線、超音波等を使用した機器によって非接触で厚さを測定してもよい。レーザー光等を使用した機器によって種板Sの厚さを測定する場合には、例えば、種板Sを挟んで上下方向に上記機器を設置し、機器から種板Sの表面までの距離を測定すれば、機器から種板Sの表面までの距離から種板Sの厚さを求めることができる。
【0027】
<内部応力除去部2>
内部応力除去部2は、ローラーによって種板Sを挟んで、種板Sの内部応力を除去するものである。具体的には、内部応力除去部2はレベラー20を備えている。レベラー20は、種板Sに直接接触し種板Sを挟んで矯正するワークローラー21を備えたものであるが、詳細は後述する。
【0028】
<溝付け部10>
溝付け部10は、内部応力除去部2によって内部応力を除去された種板Sに溝gを形成するものである。具体的には、種板Sを搬送しながら、内部応力除去部2における種板Sの搬送方向と平行な複数本の溝gを種板Sに形成する。この溝付け部10は、
図4(A)に示すように、3対の溝付けローラー対11~13を備えている。この3対の溝付けローラー対11~13は、いずれも上下一対の溝付けローラー11A~13Bを備えている。
【0029】
図4(A)、(C)に示すように、各溝付けローラー対11~13の溝付けローラー11A~13Bは、その軸方向の所定の位置に鍔部15~17が設けられたものである。鍔部15~17は、溝付けローラー対11~13ごとに設けられる位置が異なるが、対となる溝付けローラー(例えば溝付けローラー11A,11B)では同じ位置に設けられる。また、対となる溝付けローラー11A~13Bでは、一方には谷鍔部が設けられ、他方には山鍔部が設けられる(
図4(C)参照)。このため、対となる溝付けローラー11A~13B間に種板Sが通されると、種板Sには、鍔部15~17に挟まれた部分に谷鍔部側に凹んだ溝gが形成される。
【0030】
そして、カソード仕上げ機1は、各溝付けローラー対11~13の鍔部15~17同士の隙間(クリアランスCL、
図4(C)参照)を調整する隙間調整部を備えている。この隙間調整部は、各溝付けローラー対11~13において、対になる溝付けローラー間の距離を調整する調整機構を有している。例えば、調整機構は、シリンダ機構やネジ機構等によって構成することができる。この場合、各溝付けローラー対11~13の溝付けローラー11A~13Bを回転可能に保持する軸受を調整機構に連結する。すると、調整機構によって軸受を移動させれば、軸受に保持されている溝付けローラー11A~13Bを移動させて、対になる溝付けローラー間の距離、つまり、クリアランスCLを調整することができる。
【0031】
この隙間調整部には、溝付けを行う種板Sの基準板厚が入力されている。そして、基準板厚の種板Sを用いてカソードCを作製する際には、クリアランスCLが基準クリアランスになるように隙間調整部がクリアランスCLを調整する。基準クリアランスとは、基準板厚の種板Sに対して、適切な力で溝を形成できるクリアランスCLのことである。例えば、基準クリアランスは、種板Sの基準板厚が0.5~1.0mmの範囲である場合には、通常、1.3~2.0mmの範囲に設定される。そして、クリアランスCLは、厚さ測定部での測定値に基づいてさらに調整される。
【0032】
このように、基準クリアランスを基準板厚の種板Sに対応した値に設定し、厚さ測定部での測定値に基づいてクリアランスCLを調整することは、さまざまな種板Sに対応した値に設定するよりも、設定時の板厚のばらつきの影響を受けにくく、信頼性の高いクリアランスが得られる利点がある。
【0033】
なお、種板Sの基準板厚には、種板Sの精製条件から決まる標準的な種板Sの厚みを用いるのが好ましい。例えば、電解精製による電気銅の精製に使用されるカソードの種板Sを精製する場合には、0.5~1.0mmの範囲における任意の値を種板Sの基準板厚とすることができる。
【0034】
なお、溝付け部10において種板Sを搬送する搬送速度は特に限定されない。カソードCの作製量に応じて適宜設定すればよく、例えば、25~35m/分に設定することができる。
【0035】
<吊り手形成部>
吊り手形成部は、溝付け部10によって溝がつけられた種板Sに吊り手shを取り付けるものである。具体的には、帯状の板を、輪状になるようにその両端を種板Sの両面に固定して吊り手shが形成される。例えば、一対の吊り手sh,shを取り付ける場合には、
図4に示すような位置に取り付けられる。
【0036】
<カソードビーム取り付け部>
カソードビーム取り付け部は、吊り手shにカソードビームBを取り付けるものである。具体的には、輪状になっている吊り手sh(例えば、一対の吊り手sh,sh)にカソードビームBを挿通する。このように、カソードビームBを吊り手shに取り付ければ、カソードCが完成する(
図5参照)。
【0037】
<レベラー20>
図1に示すように、本実施形態のレベラー20は、種板Sに直接接触し種板Sを挟んで矯正する複数のワークローラー21A,21Bを備えている。この複数のワークローラー21A,21Bは、上下に千鳥状に配置されており、種板Sは、その上下方向が複数のワークローラー21A,21Bによって種板Sを搬送する方向と一致するように、上下のワークローラー21A,21B間に送り込まれる。上下のワークローラー21A,21B間に送り込まれた種板Sは、上下のワークローラー21A,21B間を移動する間に、複数のワークローラー21A,21Bで繰り返し板厚方向に曲げられるので、搬送方向における種板Sの反りや凹凸幅を小さくすることができる。つまり、種板Sでカソードを形成したときに、上下方向の反りや凹凸幅を小さくすることができる。
【0038】
図1(A)に示すように、レベラー20は、ワークローラー21A,21Bの反種板側、つまり、ワークローラー21A,21Bが種板Sと接触する側の反対側に設けられるバックアップローラー22,32を備えている。
図1(A)であれば、上方のワークローラー21Aであれば、その上方にバックアップローラー22が設けられ、下方のワークローラー21Bであれば、その下方にバックアップローラー32が設けられる。
【0039】
図1(A)および
図1(B)に示すように、下方のバックアップローラー32は、バックアップローラーアッセンブリ30の構成要素となっている。具体的には、バックアップローラーアッセンブリ30は、ワークローラー21A,21Bによるローラー押し込み量を調節するユニットであり、複数のバックアップローラー32と、支持部材31と、高さ調節機構33と、を備えている。
【0040】
なお、ローラー押し込み量とは、上段の各ワークローラー21と種板Sが接触する点を繋いで形成される第1接触面A1と、下段の各ワークローラー26と種板Sが接触する点を繋いで形成される第2接触面A2と、の距離Wのことである(
図3(B)参照)。
【0041】
支持部材31は、レベラー20における種板Sの搬送方向に垂直な方向の断面が凹形状に形成された部材であり、底板になるトレー31aと、一対の側板31b,31bと、を有している。そして、バックアップローラー32は、その両端部が回転可能に支持部材31の一対の側板31b,31bに支持されている。なお、支持部材31において、レベラー20における種板Sの搬送方向の両端には、開口31sを有する端部壁31dが設けられている。
【0042】
高さ調節機構33は、支持部材31を昇降させる機能を有しており、高さ調節機構33によって支持部材31の高さを調節することによって、ローラー押し込み量を調節することができるようになっている。具体的には、支持部材31は、その下面が傾斜面、具体的には、
図1(A)では右から左に下傾した傾斜面となっており、高さ調節機構33は、レベラー20のベース35の上面と支持部材31の傾斜面との間に配置された楔形の移動部材33aを備えている。この移動部材33aには、レベラー20における種板Sの搬送方向と平行にネジ孔hが形成されており、このネジ孔hには、ネジ軸33bの先端に形成された雄ネジが螺合している。このネジ軸33bは、その基端部がベース35に立設された支持部材33cに回転可能に支持されている。したがって、ハンドルを回転させてネジ軸33bを回転させれば、移動部材33aを種板Sの搬送方向に沿って移動させることができる。すると、移動部材33aを支持部材31の傾斜面に接近する方向(つまり
図1(a)では左方向)に移動させることにより、支持部材31を上昇させることができる。反対に、移動部材33aを支持部材31の傾斜面から離間する方向に移動させることにより、支持部材31を下降させることができる。つまり、ネジ軸33bを回転させれば、ローラー押し込み量を調節することができるようになっている。
【0043】
なお、高さ調節機構33の構成は、支持部材31を昇降させてローラー押し込み量を調節できる構成であればよく、上述した構成に限定されない。
【0044】
<除去手段40>
レベラー20は、レベラー20に送り込まれた種板Sの表面から剥離した異物を除去する除去手段40を有している。種板Sの表面に付着した異物は、ワークローラー21A,21Bに接触することにより種板Sから剥離し、隣り合うワークローラー21B間の隙間や、バックアップローラー32間の隙間を介して、支持部材31内に落下する。除去手段40は、この支持部材31内に落下した異物をレベラー20外に排出する機能を有している。
【0045】
図1(A)に示すように、支持部材31の端部、具体的には、支持部材31のレベラー20における種板Sの搬送方向の排出側の端部(以下、単に支持部材31の排出側の端部という場合がある。)には、ノズル41が設けられている。このノズル41は、端部壁31dの開口31sを通して、その噴射口をバックアップローラー32と支持部材31のトレー31a上面との間の空間31hに向けた状態で設置されている。このノズル41には、圧縮空気配管42を介して図示しない圧縮空気供給装置と接続されており(
図2(B)参照)、この圧縮空気供給装置から圧縮空気をノズル41に供給すれば、ノズル41から空間31h内に、連続してまたは間欠的に圧縮空気を噴き出すことができるようになっている。
【0046】
以上のように、レベラー20に除去手段40を設ければ、種板Sから剥離した異物をレベラー20から外部に排出することができる。つまり、支持部材31のトレー31a上面に落下した異物や、空間31hを落下している異物に対してノズル41から圧縮空気を噴きつければ、異物をレベラー20における種板Sの搬送方向の排出側に移動させることができる。すると、支持部材31のレベラー20における種板Sの搬送方向の装入側の端部(以下、単に支持部材31の装入側の端部という場合がある。)に設けられた端部壁31dの開口31sから外部に異物を排出できる。すると、種板Sから異物が落下しても、異物をバックアップローラー32近傍から除去することができるので、異物がバックアップローラー32に噛み込まれることを防止できる。
【0047】
なお、支持部材31の装入側の端部には、支持部材31から排出された異物を回収する回収機構を設けてもよい。かかる回収機構を設ければ、支持部材31から排出された異物が周囲に飛散することを防止できる。回収機構の構成はとくに限定されないが、例えば、
図1(A)に示すような構成を採用することができる。
【0048】
図1(A)に示すように、支持部材31の装入側の端部には回収シュート45が設けられている。この回収シュート45は、その開口が支持部材31の装入側の端部壁31dの開口31sと対向するように、支持部材31の装入側の端部近傍に設けられている。好ましくは、回収シュート45の開口と支持部材31の装入側の端部壁31dの開口31sとが連結された状態となるように、回収シュート45を設置する。すると、支持部材31の装入側の端部から排出された異物を回収シュート45が受けて止めて、異物を回収シュート45内に回収することができる。
【0049】
また、上記例では、ノズル41を支持部材31の排出側の端部に設けた場合を説明したが、ノズル41は支持部材31の装入側の端部に設けてもよい。この場合、回収機構を設ける場合には、回収機構は支持部材31の排出側の端部に設ける。
【0050】
また、
図2に示すように、レベラー20が複数のバックアップローラーアッセンブリ30を有する場合には、各バックアップローラーアッセンブリ30の除去手段40のノズル41にそれぞれ別の圧縮空気供給装置から圧縮空気を供給するようにしてもよい。また、一つの圧縮空気供給装置から複数の除去手段40のノズル41に圧縮空気を供給するようにしてもよい。この場合には、各ノズル41に接続されている分岐配管に制御弁を設けることが望ましい。すると、圧縮空気供給装置が供給する圧縮空気の流量が一定でも、各ノズル41から噴出す圧縮空気の流量を独立して制御できるし、各ノズル41に対する圧縮空気の供給と閉止も独立して制御できる。
【0051】
また、ノズル41の噴射口の軸方向は、レベラー20における種板Sの搬送方向と平行でもよいし、若干トレー31a上面側に向けた状態(つまり若干下向き)としてもよい。ノズル41の噴射口をトレー31aの上面側に向けた状態とすれば、トレー31a上面に堆積した異物を排出側の端部壁31dの開口31sに向けて移動させやすくなる。
【0052】
<ノズル41の位置について>
ノズル41は、端部壁31dの開口31sを通して支持部材31の空間31h内に圧縮空気を噴き付けることができるのであれば、その配置はとくに限定されない。例えば、ノズル41の先端が端部壁31dの開口31sを通して空間31h内に配置されていてもよいし、端部壁31dの開口31sと同じ位置に配置されていてもよい。また、ノズル41の先端が、端部壁31dよりも若干外方(つまり端部壁31dと離間した位置)に配置されていてもよい(
図1(A)参照)。端部壁31dよりも若干外方にノズル41の先端を配置すれば、トレー31a上の異物を、支持部材31の空間31h内全体に圧縮空気を噴き付け易くなるので、異物を効率よく他方の端部に向かって吹き飛ばしやすくなる。
【0053】
ノズル41の先端を、端部壁31dよりも若干外方(つまり端部壁31dと離間した位置)に配置する場合、ノズル41の先端の位置はとくに限定されない。
図1に示すように、ノズル41の先端から端部壁31dまでの離間距離L2(水平方向の距離L2)、支持部材31の側壁31bからの距離W2(水平方向の距離W2)、支持部材31のトレー31aの上面からの距離H2(鉛直方向の距離H2)は、異物を圧縮空気で適切に噴きとばすことができる限り特に限定されない。実際に異物を噴きとばす試験などの方法によって、適切な位置を定めればよい。
【0054】
例えば、支持部材31のトレー31aの上面とバックアップローラー32とに挟まれる空間31hの大きさが、種板Sの搬送方向に沿った方向の長さL1が520mm、幅W1が260mm、高さH1が50mmとする(
図1参照)。この場合には、ノズル41の先端の配置の一例として、離間距離L2が100mm~200mm、距離H2が25mm、距離W2が130mmとなる位置に配置することを上げることができる。
【0055】
<ノズル41から噴き出す気体について>
ノズル41から噴き出す圧縮空気の空気圧や圧縮空気の流量は、ノズル41が設けられた端部から反対側の端部まで異物を噴きとばすことができる空気圧や流量であってもよく、とくに限定されない。
【0056】
例えば、離間距離L2が100mm~200mmであれば、ノズル41の噴出口の口径を0.5mm~1.5mm、圧縮空気の空気圧を0.5MPa~1.0MPaに調節することができる。
【0057】
ノズル41から噴き出す気体は上述した圧縮空気に限られず、ノズル41が設けられた端部から反対側の端部まで、支持部材31の空間31h内の異物を噴きとばすことができる気体であればよく、とくに限定されない。
【0058】
<除去手段40について>
上記例では、除去手段40が、ノズル41から支持部材31の空間31h内に圧縮空気を噴き付けて支持部材31から異物を排出する構成とした場合を説明したが、除去手段40は、支持部材31から異物を排出できるのであれば、その構成はとくに限定されない。
【0059】
例えば、上述したような回収シュート42を設けた場合であれば、回収シュート45の他端に、回収シュート45内の空気、つまり、支持部材31の空間31h内の空気を吸引する吸引機構を設けてもよい。この場合でも、回収シュート45に向かう空気の流れを支持部材31の空間31h内に形成することができるので、支持部材31の空間31h内の異物を回収シュート45に回収することができる。
【0060】
また、支持部材31内に、支持部材31のトレー31aの上面に沿って支持部材31の装入側の端部と排出側の端部との間を移動するブラシを設けて除去手段40としてもよい。この場合、回収機構が設けられた端部に向かってブラシを移動させれば、トレー31aの上面に堆積した異物を支持部材31内から回収機構に排出することができる。
【0061】
さらに、トレー31aの上面に沿って移動するベルト等を設け、このベルト等を回収機構が設けられた端部に向かって移動させるようにしてもよい。この場合には、ベルト等の上に堆積した異物をベルト等とともに回収機構まで移動させれば、支持部材31の端部において、ベルト等から回収機構内に異物を落下させることによって異物を支持部材31内から回収機構に排出することができる。
【0062】
<ローラー押し込み量について>
レベラー20のローラー押込み量はとくに限定されないが、入口側が大きく、出口側が小さくなるように調整することが好ましい。第1接触面A1と第2接触面A2が一致する場合を基準、つまり、距離W=0とする。すると、第1接触面A1に対して第2接触面A2が下方に位置する場合には、距離Wはプラス量として規定され(
図3(B)の状態)、第1接触面A1に対して第2接触面A2が上方に位置する場合には、距離Wはマイナス量として規定される。つまり、この距離Wを調整することによって、種板Sの内部応力を効果的に除去することが可能である。例えば、ローラー押し込み量Wは、種板Sの基準板厚が0.5~1.0mmの範囲である場合には、入り口側で-2.0~0.0mm、出口側で0.5~1.5mmの範囲に設定することができる。
【0063】
レベラー20において種板Sを搬送する搬送速度は特に限定されない。希望する処理量(つまりカソードCの作製量)に応じて都度設定すればよい。レベラー20における種板Sの搬送速度は、例えば、25~35m/分の範囲に設定される。
【実施例0064】
本発明のレベラーを有するカソード仕上げ機1を使用することによって、カソードの歪を抑制できること、および、ワークローラーやバックアップローラーに異物が噛み込まれることを防止できることを確認した。
【0065】
実験では、
図3(A)に示す構造のカソード仕上げ機においてカソードを作製した。カソード仕上げ機は、内部応力除去部のレベラーとして、除去手段を有する本発明のレベラーを使用したもの(実施例1、2)と、除去手段を有しないレベラーを使用したもの(比較例1)と、を使用した。
【0066】
そして、実施例1、2のカソード仕上げ機で作製されたカソードと、比較例1のカソード仕上げ機で作製されたカソードとについて、カソード歪を比較した。また、カソードを作製した後において、実施例1、2のカソード仕上げ機および比較例1のカソード仕上げ機について、ワークローラーやバックアップローラーへの異物の噛み込を比較した。
【0067】
カソード仕上げ機に供給する種板は以下の方法で作製した。
純度98%程度の粗銅であるアノード(陽極)とステンレス製の母板(陰極)を電解槽の電解液に供給し、24時間通電した後、母板から電着している銅を剥がして種板を作製した。使用した銅電解液は、銅濃度47±2g/l、硫酸濃度180±20g/l、膠100±10g/電着銅トン、アビトン10±5g/電着銅トン、チオ尿素110±10g/電着銅トンのものである。陽極と陰極との間に流す電流の電流密度は250A/m2であり、電解槽に供給する電解液の給液量は25L/minに調整した。
【0068】
なお、作製された種板は、いずれも純度99.99%の電気銅であり、その寸法は、縦1000mm×横1000mm×厚さ0.6~1.0mmの平板状であった。
【0069】
作製された種板をカソード仕上げ機に装入してカソードの作製を行った。カソード仕上げ機の運転条件は、内部応力除去部のレベラーにおけるローラー押し込み量は、実施例1、2および比較例1ともに、入り口側で-0.6mm、出口側で+0.8mmとし、溝付け部の溝付けローラーの基準クリアランスは1.3mm、基準厚みは0.8mmとした。
なお、カソードの吊り手は、作製された種板から切り出した板を使用した。板の寸法は、縦300mm×横100mm×厚さ0.6~1.0mmの帯状のものを使用した。
【0070】
カソード歪は、吊り手が取り付けられた種板にカソードビーム(24×42×1394mm)を通し、カソードビームを保持してカソードを吊り下げた状態で測定した。カソード歪は、
図5に示すXの値である。つまり、種板を板の端縁から見たときにおける種板の幅を(電解用極版の平坦度測定装置(特開平7-190744)に開示されている測定装置)によって測定し、カソード歪とした。
【0071】
なお、実施例1、2および比較例1のいずれも、バックアップローラーと支持部材のトレーの上面との間に形成される空間(
図1の空間31h)は、長さL1(
図1参照)が520mm、幅W1(
図1参照)が260mm、高さH1(
図1参照)50mmであった。
【0072】
<実施例1>
実施例1では、除去手段としてノズルから圧縮空気を噴き出す構成を採用した。
ノズルは、ワークローラーに種板Sを装入する側の端部から種板Sの搬送方向に沿って離間した位置に配置した。具体的には、ノズルの先端が、離間距離L2(
図1参照)100mm、高さH2(
図1参照)25mm、距離W2(
図1参照)130mmとなる位置に配置に配置した。
【0073】
使用したノズルは、先端の噴出口の口径が0.5mmであり、ノズルに供給する圧縮空気の空気圧は0.5MPaである。
【0074】
このノズルから、1日当たり2回(正午と夕方の2回)、ノズルから10秒間圧縮空気を噴き出して異物の除去を行う操業を6か月間継続した。
その結果、製造されるカソードのカソード歪を8mm以内にすることができた。また、6か月経過後にワークローラーへの異物の噛み込み状況を確認したところ、異物の噛み込みは発生していなかった。
【0075】
<実施例2>
実施例2は、離間距離L2(
図1参照)100mmとし、ノズルの先端の噴出口の口径を1.5mm、ノズルに供給する圧縮空気の空気圧は1.0MPaとした以外は、実施例1と同じ条件で実施した。
その結果、実施例1と同様に、製造されるカソードのカソード歪を8mm以内にすることができた。また、6か月経過後にワークローラーへの異物の噛み込み状況を確認したところ、実施例1と同様に、異物の噛み込みは発生していなかった。
【0076】
<比較例1>
比較例1は、レベラーにノズルを設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして行った。
その結果、カソード歪が10mmを超えるカソードが発生した。また、10本あるワークローラーのうち4本に噛み込みが発生していることが確認された。
【0077】
以上のように、除去手段としてノズルから圧縮空気を噴き出す構成を採用したレベラーを使用すれば、種板から剥離した異物がレベラー内に堆積することを抑制すでき、異物がレベラー内のローラーに噛み込むことを防止し、カソード歪を低減できることが確認された。