(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162352
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】樹脂改質剤
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20221017BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20221017BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L23/04
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067143
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 淳
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA00Y
4J002BB03X
4J002BB22W
4J002BB22Y
4J002CL01Y
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】エチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体とエチレン系重合体からなり、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂の透明性を阻害せずに、耐衝撃性等の機械物性を改質できる樹脂改質剤を提供する。
【解決手段】少なくとも下記要件(1)を満足するエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)5~99重量部、下記要件(2)を満足するエチレン系重合体(B)1~95重量部((A)及び(B)の合計は100重量部)を含むことを特徴とする樹脂改質剤。
(1)エチレン含量60~95mol%、ビニエルエステル含量0.5~39.5mol%、ビニルアルコール含量0.5~39.5mol%(エチレン含量とビニルエステル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%)
(2)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が930~960kg/m3。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記要件(1)を満足するエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)5~99重量部、下記要件(2)を満足するエチレン系重合体(B)1~95重量部((A)及び(B)の合計は100重量部)を含むことを特徴とする樹脂改質剤。
(1)エチレン含量60~95mol%、ビニエルエステル含量0.5~39.5mol%、ビニルアルコール含量0.5~39.5mol%(エチレン含量とビニルエステル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%)
(2) JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が930~96 0kg/m3。
【請求項2】
前記エチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)の エチレン含量が65~92mol%、ビニルエステル含量が0.5~32mol%、ビニルアルコール含量が3~34.5mol%(エチレン含量とビニルエステル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂改質剤。
【請求項3】
前記エチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)の JISK 6924-2に準拠して示差走査熱量計で測定した溶融温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の樹脂改質剤。
【請求項4】
前記エチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)のビニルエステル(VAC)とビニルアルコール(VOH)のモル比(VAC/VOH)が0.1以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の樹脂改質剤。
【請求項5】
前記エチレン系共重合体(B)がエチレンの単独重合体若しくはプロピレン、1-ブテンなど炭素数2~12のα-オレフィン等との共重合体であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の樹脂改質剤。
【請求項6】
前記エチレン系共重合体(B)を分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に炭素数6以上の長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の樹脂改質剤。
【請求項7】
前記エチレン系共重合体(B)がゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0~7.0の範囲であり、Mnが15,000以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の樹脂改質剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の樹脂改質剤(X)が0.5~50重量部、熱可塑性樹脂(Y)が50~99.5重量部((X)と(Y)の合計値が100重量部)含まれることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
上記熱可塑性樹脂(Y)がエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種類以上が用いられることを特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
上記熱可塑性樹脂(Y)がエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド6から選ばれる少なくとも1種類以上が用いられることを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の樹脂組成物を含む層が積層されたことを特徴する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体とエチレン系重合体を含むことを特徴とする樹脂改質剤に関する。また、樹脂改質剤とエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物に関する。さらに、これらの樹脂組成物からなる層が積層された積層体に関する。当該積層体は、透明性、耐衝撃性、柔軟性に優れるものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材料は、内容物劣化の防止を目的として、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性などに優れるビニルアルコール成分が多いエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)が、種々の用途で使用されている。
【0003】
しかしながら、EVOHは耐衝撃性に劣る樹脂であるため、耐衝撃性に優れるポリオレフィンを併用する場合があり、例えば、ポリオレフィンとの積層化やポリオレフィンとブレンドする手法が挙げられる。このなかで後者の手法は、単純なブレンドではポリオレフィンとEVOHの相溶性が低いため、ガスバリア性と耐衝撃性の両立が不十分となるケースが多い。
【0004】
ブレンドによるEVOHの耐衝撃性の改良手段として、例えば、ポリオレフィンとEVOHからなる樹脂組成物(特許文献1)、EVOH、ポリオレフィン及び架橋剤を溶融条件下で動的に架橋処理した熱可塑性重合体組成物(特許文献2)、EVOH、エラストマー及び架橋剤を溶融条件下で動的に架橋処理した熱可塑性重合体組成物(特許文献3)などが挙げられる。
【0005】
これらの手法を用いることにより、EVOH単体の高度なガスバリア性を維持しつつ、柔軟性や耐衝撃性などの機械物性が大きく改善された成形品を得ることができる。しかしながら、これらの成形体は透明性に劣るため、意匠性や内容物や異物の目視確認の容易性が求められる食品包装、飲料、医薬品等向けのフィルム、シート、トレイ、ボトル等のような用途には適さない。
【0006】
一方、特許文献4のEVOHとエチレン系重合体からなる樹脂組成物は、特定の物性を有するエチレン系重合体を用いることによりEVOHの透明性を維持できると記載されている。しかしながら、本樹脂組成物はEVOHとエチレン系重合体との相溶性が低く、満足できる耐衝撃性は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-241546号公報
【特許文献2】特開2004-331708号公報
【特許文献3】特許第4439698号
【特許文献4】特開2020-176232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであり、EVOHの透明性を損なわずに、耐衝撃性や柔軟性等を付与できる樹脂改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の物性を有するエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体とポリエチレン系樹脂を配合した樹脂改質剤を用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、少なくとも下記要件(1)を満足するエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)5~99重量部、下記要件(2)を満足するエチレン系重合体(B)1~95重量部((A)及び(B)の合計は100重量部)を含むことを特徴とする樹脂改質剤である。
(1)エチレン含量60~95mol%、ビニエルエステル含量0.5~39.5mol%、ビニルアルコール含量0.5~39.5mol%(エチレン含量とビニルエステル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%)
(2)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が930~960kg/m3。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂改質剤は、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂の透明性を阻害せずに、耐衝撃性等の機械物性を改質することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明における樹脂改質剤を構成するエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)(以下、(A)又は(A)成分と略記することがある)は、主としてエチレン単位とビニルエステル単位とビニルアルコール単位とからなる三元共重合体である。
【0014】
(A)成分は、特に限定するものではないが、例えばエチレン・ビニルエステル共重合体を構成するビニルエステルの一部を加水分解することにより得ることができる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサチック酸ビニル等が挙げられるが、この中で酢酸ビニルを用いたエチレン・酢酸ビニル共重合体が製造コストの観点から好ましい。
【0015】
エチレン・ビニルエステル共重合体の加水分解方法は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレン・ビニルエステル共重合体を製造し、次いで、これを加水分解することによって(A)成分を製造することができる。
【0016】
エチレン・ビニルエステル共重合体の加水分解には、酸触媒又はアルカリ触媒を使用することができ、エチレン・ビニルエステル共重合体のペレットをアルカリ中で直接加水分解処理する方法を例示することができる。
【0017】
(A)成分は、エチレン含量が60~95mol%、ビニルエステル含量が0.5~39.5mol%、ビニルアルコール含量が0.5~39.5mol%(エチレン含量とビニルエステル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%)であり、好ましくはエチレン含量が65~92mol%、ビニルエステル含量が0.5~32mol%、ビニルアルコール含量が3~34.5mol%(エチレン含量とビニルエステル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%)である。なかでも、衝撃強度および透明性の良好さの観点から、エチレン含量が71~79mol%、ビニルエステル含量が1~26mol%、ビニルアルコール含量が3~28mol%(エチレン含量とビニルエステル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%)であることが最も好ましい。
【0018】
また(A)成分は、JIS K6924-2に準拠して示差走査熱量計(以下、DSCと略記することがある)で測定した溶融温度が80℃以上の場合、後述する熱可塑性樹脂(Y)との相溶性が良好であるため好ましく、より好ましくは85℃以上、最も好ましくは95℃以上である。
【0019】
また(A)成分は、後述するエチレン系重合体(B)との相溶性の観点から、(A)成分のビニルエステル含量(VAC)とビニルアルコール含量(VOH)のモル比(VAC/VOH)が0.1以上であることが好ましい。
【0020】
本発明に用いる(A)成分は、成形加工性の観点より、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレイト(以下、MFRと略記することがある)が0.1~100g/10分が好ましく、より好ましくは0.5~80g/10分である。
【0021】
また本発明における(A)成分は1種単独又は2種以上を組み合わせたブレンド物のいずれでも構わない。
【0022】
(A)成分を2種以上用いる場合、2種以上のエチレン・ビニルエステル共重合体をあらかじめ混合し、得られた組成物に加水分解処理を行う方法、2種以上の(A)成分を混合して用いる方法のいずれの方法を用いてもよい。
【0023】
(A)成分を2種以上用いる場合、各成分の分散性をさらに高めるために、該組成物に架橋剤を添加して架橋変性させてもよい。架橋剤としては、各成分を架橋できるものあればよく、反応性などを考慮して有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0024】
架橋変性方法としては、架橋剤の添加が一般的であり、加水分解処理前のエチレン・ビニルエステル共重合体を架橋する方法、或いはエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体を架橋する方法が選択される。
【0025】
架橋剤の有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げることができる。これらは単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。
【0026】
なかでも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサンが反応性の観点から好ましく用いられる。また、前記架橋剤と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの架橋助剤を用いてもよい。
【0027】
また本発明におけるエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体に対して、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、シリコンオイル、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、発泡剤、香料などの一般的に使用される添加剤を1種または2種以上を含有していてもよい。
【0028】
本発明に用いるエチレン系重合体(B)(以下、(B)又は(B)成分と略記することがある)は、JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が930~960k g/m3である。密度が930kg/m3未満の場合、960kg/m3を超える場合は透明性が低下するため好ましくない。より好ましくは密度が935~955kg/m3である。
【0029】
本発明に用いるエチレン系重合体(B)としては、特に限定するものではないが、エチレンの単独重合体若しくはプロピレン、1-ブテンなど炭素数2~12のα-オレフィン等との共重合体等が例示される。具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等が挙げられ、エチレン系重合体(B)は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0030】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、成形加工時の溶融張力を維持するために、分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの炭素数6以上の長鎖分岐数が主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有することが好ましい。
【0031】
エチレン系重合体(B)は、GPCにより測定した数平均分子量(Mn)が15,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは15,000~100,000、特に15,000~50,000が好ましい。Mnが15,000以上である場合、衝撃強度が高くなるため好ましい。
【0032】
また、エチレン系重合体(B)は、分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの割合が、(B)成分全体の40%未満であることが好ましい。分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの割合が、(B)成分全体の40%未満である場合、透明性が向上する。
【0033】
エチレン系重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0~7.0であることが好ましく、より好ましくは3.0~6.5、最も好ましくは3.0~6.0である。より狭いMw/Mnの方が良好な透明性が得られる。
【0034】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、透明性の観点からGPCによる分子量測定において複数のピークを示すことが好ましい。ピークトップ分子量(Mp)はGPC測定によって得られた分子量分布曲線を後述の方法で2個のピークに分割し、高分子量側のピークと低分子量側のピークのトップ分子量を評価し、その差が100,000以上である場合を2つのMpを有するとした。100,000未満である場合は、実測された分子量分布曲線のトップ分子量を1つのMpとした。
【0035】
分子量分布曲線の分割方法は以下のとおりに行った。GPC測定によって得られた、分子量の対数であるLogMに対して重量割合がプロットされた分子量分布曲線のLogMに対して、標準偏差が0.30であり、任意の平均値(ピークトップ位置の分子量)を有する2つの対数分布曲線を任意の割合で足し合わせることによって、合成曲線を作成する。さらに、実測された分子量分布曲線と合成曲線との同一分子量(M)値に対する重量割合の偏差平方和が最小値になるように、平均値と割合を求める。偏差平方和の最小値は、各ピークの割合がすべて0の場合の偏差平方和に対して0.5%以下にした。偏差平方和の最小値を与える平均値と割合が得られた時に、2つの対数正規分布曲線に分割して得られるそれぞれの対数分布曲線のピークトップの分子量をMpとした。
【0036】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、成形時の加工安定性の観点よりJIS K6922-1に準拠し、190℃、2160g荷重下で測定したメルトマスフローレイト(以下、MFRと略記することがある)が0.1~15g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~10.0g/10分である。
【0037】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、例えば、特開2012-126862号公報、特開2012-126863号公報、特開2012-158654号公報、特開2012-158656号公報、特開2013-28703号公報、特開2020-176232号公報等に記載の方法により得ることができる。
【0038】
本発明に用いる樹脂改質剤(X)(以下、(X)又は(X)成分と略記することがある)の(A)成分および(B)成分の配合割合は(A)成分が5~99重量部、(B)成分が1~95重量部である((A)と(B)の合計値が100重量部)。(A)成分が5重量部未満の場合、EVOHとの相溶性が低下して衝撃強度が悪化する。(A)成分が95重量部を超える場合、透明性が悪化する。また、衝撃強度の良好さの観点から、好ましくは(A)成分が20~99重量部、(B)成分が1~80重量部((A)と(B)の合計値が100重量部)であり、最も好ましくは(A)成分が25~99重量部、(B)成分が1~75重量部((A)と(B)の合計値が100重量部)である。
【0039】
(A)成分と(B)成分の溶融混練の方法は、各成分を均一に分散しうる溶融混練装置であれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロールなどの溶融混練装置が挙げられる。溶融温度は(B)成分の融点~260℃程度が好ましい。また本発明の樹脂改質剤(X)は、ペレットやパウダーなどの任意の形態で使用することができる。
【0040】
本発明の(X)成分には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、通常用いられる公知の添加剤、例えば酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、有機系あるいは無機系の顔料、紫外線吸収剤、分散剤等を適宜必要に応じて配合することができる。本発明に関わる(X)成分に上記の添加剤を配合する方法は特に制限されるものではないが、例えば、重合後のペレット造粒工程で直接添加する方法、また、予め高濃度のマスターバッチを作製し、これを成形時にドライブレンドする方法等が挙げられる。
【0041】
本発明の樹脂改質剤(X)は、極性基を有する樹脂、特に透明性を有する熱可塑性樹脂(Y)(以下(Y)又は(Y)成分と略記することがある)に添加することが好ましい。
【0042】
熱可塑性樹脂(Y)としては、エチレン含量が55mol%以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなどの分子中に多くの極性基を含む樹脂を例示することができる。
【0043】
なおEVOHとしては、主としてエチレン単位とビニルアルコール単位とからなる共重合体であり、本願の(X)成分を構成するエチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)と区別され、そのエチレン含量は55mol%以下である。EVOHにおけるエチレン含量は、好ましくは10~50mol%、最も好ましくは25~48mol%である。また、EVOHのビニルアルコール含量は気体、有機液体等に対する遮断性の高さと成形加工性の良好さの点から45~99mol%であることが好ましく、より好ましくは50~90mol%、最も好ましくは52~75mol%である。なお、EVOHは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
またEVOHは、エチレン単位及びビニルアルコール単位に加えて、少量(好ましくは、全構成単位に対して5mol%以下)であれば、他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、プロピレン、イソブチレン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステル、安息香酸ビニルエステル等のカルボン酸ビニルエステル等から誘導される単位を挙げることができる。またEVOHは、アルキルチオ基などの官能基を末端に有していてもよい。
【0045】
本発明において使用されるEVOHとしては、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。EVOHの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレンとビニルエステル共重合体を製造し、次いで、これをケン化することによってEVOHを製造することができる。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば(株)クラレからエバールの商品名で、三菱ケミカル(株)からソアノールの商品名で各々市販されている。
【0046】
またポリエステルとしては、主成分としてジカルボン酸成分とジオール成分からなる共重合体である。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、セパシン酸、ドデカンジカルボン酸などの炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、またはシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸の単独ないしは混合物が挙げられる。また、ジオール成分としてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオールなどの脂肪族グリコール、脂環式グリコールの単独または混合物が挙げられる。ポリエステルとしては、特に限定されるものではないが、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)およびPETG樹脂(エチレングリコールと1,4-シクロヘキサンジオールをジオール成分とした共重合樹脂)等が例示される。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東洋紡(株)からバイロペットの商品名で、東レ(株)からトレコンの商品名で各々市販されている。
【0047】
またポリアミド(ナイロン)としては、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4.6等のような脂肪族系ポリアミド樹脂、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドのような芳香族系ポリアミド樹脂およびそれらの変性物またはそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば宇部興産(株)からUBEナイロンの商品名で、東レ(株)からアミランの商品名で、旭化成ケミカルズ(株)からレオナの商品名で各々市販されている。
【0049】
本発明に用いる樹脂組成物を構成する(X)成分および(Y)成分の配合割合は、透明性の観点から、(X)と(Y)の合計100重量部中、好ましくは(X)成分が0.5~50重量部、(Y)成分が50~99.5重量部、より好ましくは(X)成分が1~40重量部、(Y)成分が60~99重量部であり、最も好ましくは(X)成分が1~30重量部、(Y)成分が70~99重量部である。
【0050】
本発明の(X)成分と(Y)成分からなる樹脂組成物の製造方法は、(X)成分と(Y)成分のドライブレンド物を、成形加工装置の押出機のホッパーに投入する方法などが例示できる。また(X)成分と(Y)成分の少なくともいずれかをサイドフィーダー等から添加してもよい。
【0051】
(X)成分と(Y)成分のドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどを使用してもよく、そのような設備がない場合は(X)成分を個別にフィードしてもよい。
【0052】
また、(X)成分と(Y)成分以外に、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンや(Y)成分に使用される添加剤を添加することもできる。
【0053】
主として(X)成分と(Y)成分からなる樹脂組成物の成形法としては通常の成形加工装置を用いて成形加工することができ、成形加工方法としては、例えば、押出成形、ブロー成形、シート成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形、真空成形、フィルム成形、押出ラミネート成形、共押出ブロー成形、共押出シート成形、共押出キャスト成形、共押出インフレーション成形、共押出ラミネート成形、共射出成形などの各種共押出成形などの任意の方法が挙げられ、シート状、フィルム状、パイプ状、ブロック状その他任意の形状に成形することができる。また該樹脂組成物を含む層が他の素材と積層された積層構造を採用することによって、該積層体に、水蒸気バリア性、耐油性、耐候性、機械的特性など、他の素材の有する特性を付与することも可能である。
【0054】
本発明の樹脂組成物を含む成形体や積層体は、接着性及び酸素等に対するガスバリア性が高いものとなり、これらの性質が要求される食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材や容器などに好適に使用することができる。
【実施例0055】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0056】
<(A)成分、(B)成分、(Y)成分>
実施例、比較例に用いた(A)成分、(B)成分、(Y)成分の諸性質は下記の方法により評価した。
【0057】
[エチレン含量、ビニルエステル含量、ビニルアルコール含量]
JIS K7192(1999年)に準拠してビニルエステル含量を測定し、下記計算式に従いエチレン含量およびビニルアルコール含量を算出した。
・エチレン含量(mol%)=100×{100―(エチレン・ビニルエステル共重合体のビニルエステル含量)/28}/[{100―(エチレン・ビニルエステル共重合体のビニルエステル含量)/28}+{(エチレン・ビニルエステル共重合体のビニルエステル含量)/86}]
・ビニルエステル含量(mol%)={100-(エチレン含量)}/100×[100-{(エチレン・ビニルエステル共重合体のビニルエステル含量)-(エチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体のビニルエステル含量)}/(エチレン・ビニルエステル共重合体のビニルエステル含量)×100]
・ビニルアルコール含量(mol%)=100-エチレン含量-ビニルエステル含量
[溶融温度]
JIS K6924-2に準拠して示差走査熱量計で溶融温度を測定した。
[メルトマスフローレイト(MFR)]
実施例で用いた(A)成分のMFRは、メルトインデクサー(宝工業製)を用いてJIS K6924-1に基づき測定した。また(B)成分のMFRはJIS K6922-1に基づき測定した。
[密度]
密度は、JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した。
[分子量、分子量分布]
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)およびピークトップ分子量(Mp)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
[分子量分別]
分子量分別は、カラムとしてガラスビーズ充填カラム(直径:21mm、長さ:60cm)を用い、カラム温度を130℃に設定して、サンプル1gをキシレン30mLに溶解させたものを注入する。次に、キシレン/2-エトキシエタノールの比率が5/5のものを展開溶媒として用い、留出物を除去する。その後、キシレンを展開溶媒として用い、カラム中に残った成分を留出させ、ポリマー溶液を得る。得られたポリマー溶液に5倍量のメタノールを添加しポリマー分を沈殿させ、ろ過および乾燥することにより、Mnが10万以上である成分を回収した。
[長鎖分岐]
長鎖分岐数は、日本電子(株)製JNM-GSX400型核磁気共鳴装置を用いて、13C-NMRによってヘキシル基以上の分岐数を測定した。溶媒はベンゼン-d6/オルトジクロロベンゼン(体積比30/70)である。主鎖メチレン炭素(化学シフト:30ppm)1,000個当たりの個数として、α-炭素(34.6ppm)およびβ-炭素(27.3ppm)のピークの平均値から求めた。
【0058】
実施例、比較例では、下記の方法により製造した(A)成分、(B)成分および市販品を用いた。
【0059】
(1)エチレン・ビニルエステル・ビニルアルコール共重合体(A)
下記の製造方法で得られたもの又は市販品を用いた。
【0060】
(A-1)の製造方法
5Lセパラブルフラスコにビニルエステル含量25mol%、メルトマスフローレイト3g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体(アランセオ社製、商品名レバプレン500)800gを入れた後、5重量%ー水酸化ナトリウムメタノール溶液2400gを添加し、60℃下での加水分解処理を5時間行った。このメタノール溶液を濾別後、40℃の1重量%塩酸メタノール溶液、純水で各1回洗浄し、80℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより(A-1)を得た。(A-1)の組成及び諸物性は表1に示す通りだった。
【0061】
(A-2)の製造方法
ビニルエステル含量19mol%、メルトマスフローレイト70g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760)を2重量%の水酸化ナトリウムメタノール溶液中で60℃での加水分解処理を4時間行った以外は(A-1)と同様の方法で製造し、(A-2)を得た。(A-2)の組成及び諸物性は表1に示す通りだった。
【0062】
(A-3)の製造方法
ビニルエステル含量11mol%、メルトマスフローレイト5.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン751)を5重量%の水酸化ナトリウムメタノール溶液中で65℃での加水分解処理を15時間行った以外は(A-1)と同様の方法で製造し、(A-3)を得た。(A-3)の組成及び諸物性は表1に示す通りだった。
【0063】
(A-4)の製造方法
ビニルエステル含量11mol%、メルトマスフローレイト5.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン751)を2重量%の水酸化ナトリウムメタノール溶液中で50℃での加水分解処理を4時間行った以外は(A-1)と同様の方法で製造し、(A-4)を得た。(A-4)の組成及び諸物性は表1に示す通りだった。
【0064】
(A-5)
東ソー(株)製、商品名ウルトラセン751(ビニルエステル含量11mol%、メルトマスフローレイト5.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体)を用いた。
【0065】
【0066】
(2)エチレン系重合体(B)
下記の製造方法で得られたもの又は市販品を用いた。
【0067】
(B-1)の製造方法
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸18.8g及びジメチルヘキサコシルアミン(Me2N(C26H53)、常法によって合成)49.1g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより140gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を14μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2、4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0重量%)
[(B-1)の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を75mg(固形分9.0mg相当)加え、80℃に昇温後、1-ブテンを8.3g加え、分圧が0.85MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:850ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで58.5gのポリマー(B-1)を得た。(B-1)の諸物性は表2示す通りだった。
【0068】
(B-2)の製造方法
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸17.5g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)49.4g(140mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより132gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.4重量%)。
【0069】
(B-2)の製造
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を52mg(固形分6.4mg相当)加え、70℃に昇温後、1-ブテンを17.6g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:590ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで61.8gのポリマー(B-2)を得た。(B-2)の諸物性は表2示す通りだった。
【0070】
(B-3)の製造方法
[変性粘土の調製]
脱イオン水4.8L、エタノール3.2Lの混合溶媒に、ジメチルベヘニルアミン;(C22H45)(CH3)2N 354gと37%塩酸83.3mLを加え、ジメチルベヘニルアミン塩酸塩溶液を調製した。この溶液に合成ヘクトライト1,000gを加え終夜撹拌し、得られた反応液をろ過した後、固体分を水で十分洗浄した。固体分を乾燥させたところ、1,180gの有機変性粘土を得た。赤外線水分計で測定した含液量は0.8%であった。次に、この有機変性粘土を粉砕し、平均粒径を6.0μmに調製した。
[重合触媒の調製]
5Lのフラスコに、[変性粘土の調製]の項で得た有機変性粘土450g、ヘキサン1.4kgを加え、その後トリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液1.78kg(1.8モル)、ビス(n-ブチル-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド7.32g(18ミリモル)を加え、60℃に加熱して1時間撹拌した。反応溶液を45℃に冷却し、2時間静置した後に傾斜法で上澄液を除去した。次に、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン1重量%溶液1.78kg(0.09モル)を添加し、45℃で30分間反応させた。反応溶液を45℃で2時間静置した後に傾斜法で上澄液を除去し、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液0.45kg(0.45モル)を加え、ヘキサンで再希釈して全量を4.5Lとし重合触媒を調製した。
[(B-3)の製造]
内容量300Lの重合器に、ヘキサンを135kg/時、エチレンを20.0kg/時、ブテン-1を0.3kg/時、水素5NL/時および[重合触媒の調製]の項で得られた重合触媒を連続的に供給した。また、助触媒として液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度を0.93ミリモル/kgヘキサンとなるように、それぞれ連続的に供給した。重合温度は85℃に制御し。得られたポリマー(B-3)の諸物性は表2に示す通りだった。
【0071】
(B-4)
東ソー(株)製、商品名ペトロセン205(メルトマスフローレイト3.0g/10分、密度924kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン)を用いた。
【0072】
【0073】
(3)熱可塑性樹脂
それぞれ以下の市販品を用いた。
(Y-1):(株)クラレ製、商品名F171B(EVOH、エチレン含量32mol%、メルトマスフローレイト1.7g/10分)
(Y-2):(株)クラレ製、商品名C109B(EVOH、エチレン含量35mol%、メルトマスフローレイト8.5g/10分)
(Y-3): 宇部興産(株)製、商品名UBEナイロン1022B(ポリアミド6、融点220℃)
【0074】
<樹脂改質剤の製造方法>
(X-1)の製造方法
(A-1)成分75重量部、(B-1)成分25重量部のドライブレンド品を、溶融温度190℃で、40mm単軸押出機((株)プラコー製)で溶融混錬しペレット状の(X-1)を得た。
【0075】
(X-2)の製造方法
(A-1)成分50重量部、(B-1)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-2)を得た。
【0076】
(X-3)の製造方法
(A-1)成分25重量部、(B-1)成分75重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-3)を得た。
【0077】
(X-4)の製造方法
(A-2)成分50重量部、(B-1)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-4)を得た。
【0078】
(X-5)の製造方法
(A-3)成分50重量部、(B-1)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-5)を得た。
【0079】
(X-6)の製造方法
(A-4)成分50重量部、(B-1)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-6)を得た。
【0080】
(X-7)の製造方法
(A-1)成分50重量部、(B-2)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-7)を得た。
【0081】
(X-8)の製造方法
(A-1)成分50重量部、(B-3)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-8)を得た。
【0082】
(X-9)の製造方法
(B-1)成分100重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-9)を得た。
【0083】
(X-10)の製造方法
(A-2)成分100重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-10)を得た。
【0084】
(X-11)の製造方法
(A-5)成分50重量部、(B-1)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-11)を得た。
【0085】
(X-12)の製造方法
(A-1)成分50重量部、(B-4)成分50重量部とした以外は(X-1)と同様の方法で製造し(X-12)を得た。
【0086】
<実施例及び比較例>
(1)フィルムの製造
樹脂改質剤(X)と熱可塑性樹脂(Y)の樹脂組成物からなるフィルムは以下方法により製造した。フィルムは単層キャストフィルム成形機(住重モダン(株)製)を用いて設定温度200℃、回転数40rpm、引取速度10m/minにより作製した。
(2)シートの評価
[ヘーズ]
厚み50μmの上記(1)の方法で製造されたフィルムをヘーズメーター(日本電色工業製、NDH7000型)でヘーズ測定した。同じ試料について10カ所を選択し、評価し、その平均値をヘーズ値とした。
ヘーズ値は以下のように評価した。
×:ヘーズ値が30%以上
△:ヘーズ値が20%以上30%未満
○:ヘーズ値が15%以上20%未満
◎:ヘーズ値が15%未満
[衝撃強度]
パンクチャー衝撃強度は、実施例により得られたフィルムから幅100mm、長さ100mmに切り出した試験片を使用しデジタルインパクトテスター(東洋精機(株)製)を用いて測定した。測定条件は、アーム仕様が3J、アーム先端が半球状であり、パンクチャー衝撃強度は破壊されたときの荷重をフィルムの厚みで除した値(kJ/m)とした。
衝撃強度は以下のように評価した。
×:パンクチャー衝撃強度が3.0kJ/m未満
△:パンクチャー衝撃強度が3.0kJ/m以上6.0kJ/m未満
○:パンクチャー衝撃強度が6.0kJ/m以上
【0087】
実施例1
樹脂改質剤(X-1)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部をドライブレンドした後、200℃に設定した単層キャスト成形機でフィルム成形を実施し、樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0088】
実施例2
樹脂改質剤(X-2)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0089】
実施例3
樹脂改質剤(X-3)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0090】
実施例4
樹脂改質剤(X-1)を1重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を99重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0091】
実施例5
樹脂改質剤(X-1)を45重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を55重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0092】
実施例6
樹脂改質剤(X-4)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0093】
実施例7
樹脂改質剤(X-5)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0094】
実施例8
樹脂改質剤(X-6)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0095】
実施例9
樹脂改質剤(X-7)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0096】
実施例10
樹脂改質剤(X-8)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0097】
実施例11
樹脂改質剤(X-2)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-2)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0098】
実施例12
樹脂改質剤(X-2)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-3)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0099】
【0100】
比較例1
樹脂改質剤(X-9)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表4に示す通り衝撃強度に劣っていた。
【0101】
比較例2
樹脂改質剤(X-10)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表4に示す通り透明性に劣っていた。
【0102】
比較例3
樹脂改質剤(X-11)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表4に示す通り衝撃強度に劣っていた。
【0103】
比較例4
樹脂改質剤(X-12)を15重量部、熱可塑性樹脂(Y-1)を85重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表4に示す通り透明性に劣っていた。
【0104】
比較例5
熱可塑性樹脂(Y-1)を100重量部とした以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ヘーズおよび衝撃強度を評価したところ、表4に示す通り衝撃強度に劣っていた。
【0105】