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特開2022-162479濾過膜一体型イオン交換装置及びこれを用いた二次純水製造装置
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  • 特開-濾過膜一体型イオン交換装置及びこれを用いた二次純水製造装置 図1
  • 特開-濾過膜一体型イオン交換装置及びこれを用いた二次純水製造装置 図2
  • 特開-濾過膜一体型イオン交換装置及びこれを用いた二次純水製造装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162479
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】濾過膜一体型イオン交換装置及びこれを用いた二次純水製造装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20060101AFI20221017BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20221017BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20221017BHJP
   B01D 61/16 20060101ALI20221017BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20221017BHJP
   B01J 39/18 20170101ALI20221017BHJP
   B01J 41/12 20170101ALI20221017BHJP
   B01J 47/022 20170101ALI20221017BHJP
   B01J 47/04 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/32
C02F1/20 A
B01D61/16
C02F1/44 A
B01J39/18
B01J41/12
B01J47/022
B01J47/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067363
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA32
4D006HA01
4D006JA14A
4D006JA18Z
4D006KA02
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB14
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC02
4D025AA04
4D025AB05
4D025BA08
4D025BA13
4D025BB03
4D025BB04
4D025BB07
4D025DA01
4D025DA04
4D025DA05
4D037AA03
4D037AB02
4D037BA18
4D037BA23
4D037CA03
4D037CA15
(57)【要約】
【課題】 省スペース化が可能で取り扱い性の良いイオン交換装置と膜濾過装置とを一体化した濾過膜一体型イオン交換装置を提供する。
【解決手段】 濾過膜一体型イオン交換装置1は、イオン交換樹脂Rが充填されている容器2の周縁部に一次純水W1の流入管3を挿通するとともに、該容器2の中央部に流出部4となっていて、この流出部4には筒状の限外濾過膜5が配置されている。限外濾過膜5の下端側には、ストレーナ5Aが設けられている。そして、この該限外濾過膜(UF膜)5内には、中空糸膜6が複数設けられているとともに、上側には限外濾過膜5の処理水(超純水)W2の吐出部7とドレン水の排出部8とがそれぞれ形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の流入部及び処理水の流出部を有した容器及び該容器内に収容されたイオン交換樹脂を有するイオン交換装置と、このイオン交換装置の後段に配置される膜濾過装置とを一体化した濾過膜一体型イオン交換装置であって、
前記イオン交換装置の流入部が前記容器の周縁部に形成されているとともに前記流出部が前記容器の中央部に形成されており、
前記膜濾過装置の一部又は全部が前記流出部内に収容されている、濾過膜一体型イオン交換装置。
【請求項2】
前記容器内に収容されたイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の両方である、請求項1に記載の濾過膜一体型イオン交換装置。
【請求項3】
前記膜濾過装置が限外濾過膜である、請求項1または2に記載の濾過膜一体型イオン交換装置。
【請求項4】
一次純水製造装置で製造された一次純水を処理する二次純水製造装置であって、紫外線酸化装置と、脱気装置と、請求項1~3のいずれか1項に記載の濾過膜一体型イオン交換装置とを備える、二次純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置を構成する非再生式イオン交換装置とこの後段に設けられる膜濾過装置との組合せ構造体に関し、特に省スペース化が可能で取り扱い性の良い非再生式イオン交換装置と膜濾過装置とを一体化した濾過膜一体型イオン交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主に電子分野で使用される超純水は、前処理装置、一次純水製造装置、二次純水製造装置(サブシステム)から構成される超純水製造システムで原水を処理することにより製造される。例えば、図3に示すように二次純水製造装置21は、一次純水W1を貯留するサブタンク22と、このサブタンク22から一次純水W1を送給する送液ポンプ23と、一次純水W1の熱を回収する熱交換器24と、一次純水W1中の有機物を分解する紫外線酸化装置25と、膜式脱気装置26と、非再生式イオン交換装置27と、膜分離装置としての限外濾過(UF)膜28とから構成される。そして、このような二次純水製造装置21で製造された二次純水(超純水)W2は、供給路29からユースポイント30に供給され、使用されなかった超純水W2は、返送路31からサブタンク22に還流する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、少なくとも非再生式イオン交換装置27と、限外濾過(UF)膜28とは、通常それぞれ複数系列の設置が必要であり、広い設置面積が必要で、それぞれを連結する配管構造も複雑になる、という問題点があった。
【0004】
もし超純水製造装置のイオン交換装置と膜分離装置とをコンパクト化し、両者の配管を簡略化することができれば、二次純水装置の省スペース化が図れ、半導体製造工場などにおける設置場所の自由度が向上できるだけでなく、設置作業を簡略化できて望ましい。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、省スペース化が可能で取り扱い性の良いイオン交換装置と膜濾過装置とを一体化した濾過膜一体型イオン交換装置を提供することを目的とする。また、本発明はこのような濾過膜一体型イオン交換装置を用いた二次純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、被処理水の流入部及び処理水の流出部を有した容器及び該容器内に収容されたイオン交換樹脂を有するイオン交換装置と、このイオン交換装置の後段に配置される膜濾過装置とを一体化した濾過膜一体型イオン交換装置であって、前記イオン交換装置の流入部が前記容器の周縁部に形成されているとともに、前記流出部が前記容器の中央部に形成されており、前記膜濾過装置の一部又は全部が前記流出部内に収容されている、濾過膜一体型イオン交換装置を提供する(発明1)。
【0007】
かかる発明(発明1)によれば、イオン交換装置と膜濾過装置とを一体化しているので、省スペース化を図ることができる。また、イオン交換装置と膜濾過装置とを連結する配管を省略できるので、構造の簡略化とイオン交換装置と膜濾過装置との間のバルブ切り替え作業のミスをなど減少することができる。
【0008】
上記発明(発明1)においては、前記容器内に収容されたイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の両方であることが好ましい(発明2)。
【0009】
かかる発明(発明2)によれば、二次純水装置を構成するイオン交換装置として好適な性能を発揮することができる。
【0010】
上記発明(発明1,2)においては、前記膜濾過装置が限外濾過膜であることが好ましい(発明3)。
【0011】
かかる発明(発明3)によれば、二次純水装置の下流側のユースポイントの直前の微粒子除去膜として好適な性能を発揮することができる。
【0012】
また、本発明は第二に、一次純水製造装置で製造された一次純水を処理する二次純水製造装置であって、紫外線酸化装置と、脱気装置と、発明1~3のいずれかに記載の濾過膜一体型イオン交換装置とを備える、二次純水製造装置を提供する(発明4)。
【0013】
かかる発明(発明4)によれば、濾過膜一体型イオン交換装置により、省スペース化を図ることができるので、これを備えた二次純水装置、さらには超純水製造装置の設置スペースを縮小することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の濾過膜一体型イオン交換装置によれば、イオン交換装置と膜濾過装置とを一体化しているので、省スペース化と構造の簡略化とを図ることができる。特に容器内に収容されたイオン交換樹脂をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の両方とし、膜濾過装置を限外濾過膜とすることにより、二次純水装置の構成エレメントとして好適なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による濾過膜一体型イオン交換装置を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態による超純水製造装置の二次純水装置を示す概略図である。
図3】従来の超純水製造装置の二次純水装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の濾過膜一体型イオン交換装置の一実施形態について添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0017】
〔濾過膜一体型イオン交換装置〕
図1は、本発明の一実施形態による濾過膜一体型イオン交換装置を示しており、本実施形態において、濾過膜一体型イオン交換装置1は、超純水製造システムのサブシステム(二次純水装置)を構成する非再生式イオン交換装置である。図1において、濾過膜一体型イオン交換装置1は、コンディショニングされたイオン交換樹脂Rが充填されている容器2の周縁部の一か所に処理原水(一次純水)W1の流入部としての流入管3を挿通するとともに、該容器2の中央部に流出部4となっていて、この流出部4には膜濾過装置としての筒状の限外濾過膜5が配置されている。限外濾過膜5の下端側には、吸水部としてのストレーナ5Aが設けられている。そして、この該限外濾過膜(UF膜)5内には、中空糸膜6が複数本設けられているとともに、上側には限外濾過膜5の処理水(超純水)W2の吐出部7とドレン水の排出部8とがそれぞれ形成されている。
【0018】
上述したような濾過膜一体型イオン交換装置1において、容器2内に充填されるイオン交換樹脂としては、カチオン交換樹脂又はアニオン交換樹脂を単独で充填しても、両者を充填してもよいが、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の両方を充填することが好ましい。このアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とは、積層状態で充填しても混合状態で充填してもよいが、混合状態で充填することが特に好ましい。この場合において、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とは、容量比で1:3~3:1程度、特に2:3~3:2程度の割合で混合して充填ればよい。
【0019】
〔二次純水製造装置〕
次に前述したような濾過膜一体型イオン交換装置1を備えた二次純水装置について説明する。
【0020】
本実施形態の二次純水装置は、図2に示すような構成であり、基本的には図3に示す二次純水装置と同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。図2において、二次純水製造装置21は、一次純水W1を貯留するサブタンク22と、このサブタンク22から一次純水W1を送給する送液ポンプ23と、一次純水W1の熱を回収する熱交換器24と、一次純水W1中の有機物を分解する紫外線酸化装置25と、膜式脱気装置26と、本実施形態の濾過膜一体型イオン交換装置1とから構成される。
【0021】
上述したような二次純水製造装置21において、紫外線酸化装置25で有機物を分解し、さらに膜式脱気装置26で溶存気体を除去された一次純水W1が濾過膜一体型イオン交換装置1の流入管3から容器2に供給する。この供給された一次純水W1は、イオン交換樹脂Rを透過する過程で微量のイオン性不純物が除去される。続いて、ストレーナ5Aから限外ろ過膜5を透過することで、微粒子が除去された超純水W2が吐出部7から得られる。一方、限外ろ過膜5のドレン水W3は、排出部8から排出される。そして、この製造された二次純水(超純水)W2は、供給路29からユースポイント30に供給され、使用されなかった超純水W2は、返送路31からサブタンク22に還流する。
【0022】
このような本実施形態の濾過膜一体型イオン交換装置1によれば、イオン交換装置と限外濾過(UF)膜とを一体化しているので、従来の非再生式イオン交換装置27と限外濾過(UF)膜28と有する二次純水装置と比べて、約50%以上の省スペース化を図ることができる。また、イオン交換装置と膜濾過装置とを連結する配管を省略できるので、構造の簡略化とイオン交換装置と膜濾過装置との間のバルブ切り替え作業のミスをなど減少することができる。このような濾過膜一体型イオン交換装置1を用いることにより超純水製造装置の設置スペースも縮小することができる。
【0023】
このような、本実施形態の二次純水装置は、粒径50nm以上の微粒子が10個/mL以下、もしくは超純水中の金属濃度が10ng/L以下の超純水中を製造するのに好適である。
【0024】
以上、本発明について添付図面を参照にして前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、二次純水装置21の構成は図2に限定するもの限定されず、電気脱イオン装置や過酸化水素除去装置など他の構成要素を有していてもよい。
【実施例0025】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0026】
[比較例1]
図3に示すように一次純水W1を貯留するサブタンク22と、このサブタンク22から一次純水W1を送給する送液ポンプ23と、一次純水W1の熱を回収する熱交換器24と、一次純水W1中の有機物を分解する紫外線酸化装置25と、膜式脱気装置26と、非再生式イオン交換装置27と、膜分離装置としての限外濾過(UF)膜28とから構成される二次純水装置21において、超純水製造フロー流量100m/hで超純水を製造するように装置を設計したところ、非再生式イオン交換装置27は12本、限外濾過(UF)膜28は8本必要であり、設置面積は72mで、これら非再生式イオン交換装置27と限外濾過(UF)膜28とを配管により接続する必要があった。この二次純水装置21により、粒径50nm以上の微粒子数が<0.1個/mLで、処理水中金属濃度は<0.01ng/Lの超純水W2を製造することができた。
【0027】
この二次純水装置21における超純水製造フロー流量、非再生式イオン交換装置の本数、限外濾過(UF)膜の本数、設置面積、処理水中の微粒子数及び処理水中の金属濃度を表1に示す。
【0028】
[実施例1]
図2に示すように一次純水W1を貯留するサブタンク22と、このサブタンク22から一次純水W1を送給する送液ポンプ23と、一次純水W1の熱を回収する熱交換器24と、一次純水W1中の有機物を分解する紫外線酸化装置25と、膜式脱気装置26と、濾過膜一体型イオン交換装置1とから構成される二次純水装置21において、超純水製造フロー流量100m/hで超純水を製造するように装置を設計したところ、濾過膜一体型イオン交換装置1は12本必要であり、設置面積は42mであり、比較例1の約58%の面積であった。この二次純水装置21により、粒径50nm以上の微粒子数が<0.1個/mLで、処理水中金属濃度は<0.01ng/Lの超純水W2を製造することができた。
【0029】
この二次純水装置21における超純水製造フロー流量、非再生式イオン交換装置の本数、限外濾過(UF)膜の本数、設置面積、処理水中の微粒子数及び処理水中の金属濃度を表1にあわせて示す。
【0030】
[比較例2]
比較例1において、図3に示す二次純水装置21を超純水製造フローで流量500m/hで超純水を製造するように装置を設計したところ、非再生式イオン交換装置27は60本、限外濾過(UF)膜28は40本必要であり、設置面積は360mで、本数の異なる非再生式イオン交換装置27と限外濾過(UF)膜28とを配管により接続する必要があった。このような二次純水装置21により、粒径50nm以上の微粒子数が<0.1個/mLで、処理水中金属濃度は<0.01ng/Lの超純水W2を製造することができた。
【0031】
この二次純水装置21における超純水製造フロー流量、非再生式イオン交換装置の本数、限外濾過(UF)膜の本数、設置面積、処理水中の微粒子数及び処理水中の金属濃度を表1にあわせて示す。
【0032】
[実施例2]
図2に示すように一次純水W1を貯留するサブタンク22と、このサブタンク22から一次純水W1を送給する送液ポンプ23と、一次純水W1の熱を回収する熱交換器24と、一次純水W1中の有機物を分解する紫外線酸化装置25と、膜式脱気装置26と、濾過膜一体型イオン交換装置1とから構成される二次純水装置21において、超純水製造フロー流量500m/hで超純水を製造するように装置を設計したところ、濾過膜一体型イオン交換装置1は60本必要であり、設置面積は210mであり、比較例1の約58%の面積であった。この二次純水装置21により、粒径50nm以上の微粒子数が<0.1個/mLで、処理水中金属濃度は<0.01ng/Lの超純水W2を製造することができた。
【0033】
この二次純水装置21における超純水製造フロー流量、非再生式イオン交換装置の本数、限外濾過(UF)膜の本数、設置面積、処理水中の微粒子数及び処理水中の金属濃度を表1にあわせて示す。
【0034】
【表1】
【符号の説明】
【0035】
1 濾過膜一体型イオン交換装置
2 容器
3 流入管(流入部)
4 流出部
5 限外濾過膜(膜濾過装置)
5A ストレーナ
6 中空糸膜
7 吐出部
8 排出部
21 二次純水製造装置 (サブシステム)
22 サブタンク
23 送液ポンプ
24 熱交換器
25 紫外線酸化装置
26 膜式脱気装置
29 供給路
30 ユースポイント
31 返送路
W1 処理原水(一次純水)
W2 超純水(二次純水)
W3 ドレン水
R イオン交換樹脂
図1
図2
図3