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特開2022-162510符号化画像品質評価装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162510
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】符号化画像品質評価装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 17/00 20060101AFI20221017BHJP
   H04N 19/154 20140101ALI20221017BHJP
【FI】
H04N17/00 A
H04N19/154
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139272
(22)【出願日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2021067348
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】中島 奈緒
【テーマコード(参考)】
5C061
5C159
【Fターム(参考)】
5C061BB07
5C061CC09
5C061EE21
5C159KK47
5C159MA04
5C159MA05
5C159PP05
5C159PP06
5C159PP07
5C159TB04
5C159TC02
5C159TC10
5C159TD03
5C159TD05
5C159TD06
5C159UA02
5C159UA05
5C159UA11
(57)【要約】
【課題】符号化画像の時間方向のよるチラつきを客観的に評価可能とする。
【解決手段】符号化画像品質評価装置1は、符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するアクティビティ算出部11と、アクティビティの時間変動を品質評価値として算出するアクティビティ変動算出部13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化画像の品質を評価する符号化画像品質評価装置であって、
符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、
前記アクティビティの時間変動を品質評価値として算出するアクティビティ変動算出部と、
を備える符号化画像品質評価装置。
【請求項2】
符号化画像の品質を評価する符号化画像品質評価装置であって、
符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、
前記アクティビティを正規化して正規化アクティビティを算出するアクティビティ正規化部と、
前記正規化アクティビティの時間変動を品質評価値として算出する正規化アクティビティ変動算出部と、
を備える符号化画像品質評価装置。
【請求項3】
符号化画像の品質を評価する符号化画像品質評価装置であって、
符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、
前記アクティビティの時間変動を算出するアクティビティ変動算出部と、
前記アクティビティの時間変動を正規化して品質評価値として算出するアクティビティ変動正規化部と、
を備える符号化画像品質評価装置。
【請求項4】
前記アクティビティ算出部は、前記フレームに二次微分フィルタを掛けた画像の各画素値の平均値を前記アクティビティとして算出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の符号化画像品質評価装置。
【請求項5】
動画像に含まれる全フレームの前記品質評価値に基づいて、動画像全体の品質を示す動画像品質評価値を求める動画像品質評価部を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の符号化画像品質評価装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の符号化画像品質評価装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化画像の品質を評価する符号化画像品質評価装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
AVC/H.264(例えば、非特許文献1参照)やHEVC/H.265(例えば、非特許文献2参照)などの非可逆符号化方式では、予測(イントラ予測及びインター予測)、変換(DCT変換などの直交変換)、量子化、及び符号割り当て(ハフマン符号・算術符号などの情報源符号化)の4つの処理を順番に施すことで原画像(入力画像)を圧縮データに変換する。量子化処理において変換係数を離散化することが、原画像と符号化画像(圧縮データを復号して得られる画像)が一致しない原因である。なお、原画像と符号化画像の不一致を符号化劣化(符号化歪み)と呼ぶ。
【0003】
符号化画像の画像品質を客観的に評価する代表的な指標として、PSNR(Peak Signal to Noise Ratio)がある。PSNRは、フレームごとに原画像と符号化画像を比較し、その差分量を数値化することで符号化歪みを評価する指標である。PSNRの具体的な算出方法を式(1)(2)に示す。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、Sorg(x,y,T)は時刻Tに表示されるフレームの原画像であり、Sdec(x,y,T)は時刻Tに表示されるフレームを符号化した後に復号した符号化画像である。xは各フレームの横方向の画素位置を示し、yは各フレームの縦方向の画素位置を示す。Xは各フレームの横方向の画素数を示し、Yは各フレームの縦方向の画素数を示す。MAXは画素の最大値であり、例えばビット深度が8bitの画像の場合はMAX=255である。
【0006】
PSNRはフレームごとに算出される値であるため、動画像の符号化劣化を評価する際には、動画像に含まれる全フレームのPSNR(t)を平均した値を用いることが一般的である。しかし、動画像に含まれるフレームのそれぞれのPSNRが高い場合でも、時間的に隣接するフレーム間において輝度レベルなどの符号化劣化傾向の大きな変動が発生した場合にはチラつきが視認される。このチラつきに起因する符号化画像の品質低下の度合いは、PSNRでは評価できない。そこで、フレーム間における輝度レベルの変動(フリッカ)を測定する手法として、式(3)が知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0007】
【数2】
【0008】
フリッカは、隣接フレーム間の画像差分が符号化によって拡大又は縮小した度合いを示すものである。式(3)において、{Sorg(x,y,t)-Sorg(x,y,t-1)}は原画像の隣接フレーム間の画像差分を示し、{Sdec(x,y,t)-Sdec(x,y,t-1)}は符号化画像の隣接フレーム間の画像差分を示す。
【0009】
図8は、8K動画像をHEVC/H.265符号化方式によって符号化した際の符号化画像の輝度信号のPSNR及びフリッカの測定値例を示す図である。横軸は、フレーム番号を示している。縦軸は、図8(a)ではPSNRを示し、図8(b)ではフリッカを示している。図8は、符号化対象の900フレームにおける先頭フレームのフレーム番号を0とし、最終フレームのフレーム番号を899をとした場合の、フレーム番号352-479に該当する128フレームのPSNRとフリッカを示している。この測定に使用した符号化対象画像は、ITE超高精細・広色域標準動画像-Aシリーズの「No.2 電車B」である。また、GOP(Group Of Pictures)構造をLong GOP(Pピクチャ間隔:M=4、Iピクチャ間隔:N=32)とし、レート制御を200M[bps]及び400M[bps]の固定ビットレート(CBR)とし、「No.2 電車B」の冒頭タイトル60フレームを除く900フレームを符号化した。
【0010】
図9は、PSNR及びフリッカの測定対象とする画像領域を示す図である。図9は、「No.2 電車B」の画像を示しており、画像サイズは8Kである。符号化画像の画像サイズも原画像と同じ8Kであるが、図8のPSNR及びフリッカは、図9に示す256×256画素サイズの領域画像を測定対象として算出した。
【0011】
Long GOP符号化では、フレーム内予測のみを用いて符号化されたIピクチャ、片方向予測によるフレーム間予測を用いて符号化されたPピクチャ、及び双方向予測によるフレーム間予測を用いて符号化されたBピクチャにより映像符号化ストリームが構成される。フレーム間予測を用いることで符号量を低減することが可能であり、各ピクチャに割り当てる符号量はIピクチャが最も多く、Pピクチャが次に多く、Bピクチャが最も少ない。図8(a)では、4フレームに1回の頻度で出現するPピクチャのPSNRが、Iピクチャ及びBピクチャのPSNRよりも高いことが確認できる。図8(b)では、32フレームに1回の頻度で出現するIピクチャのフリッカ値が大きいことが確認できる。このIピクチャ出現時のフリッカは、イントラフリッカと称される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Rec. ITU-T Rec. H.264 | ISO/IEC 14496-10 Advanced Video Coding
【非特許文献2】Rec. ITU-T Rec. H.265 | ISO/IEC 23008-2 High Efficiency Video Coding
【非特許文献3】X. Fan, W. Gao, Y. Lu, and D. Zhao, “Flickering reduction in all Intra frame coding,” JVT-E070, 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図10は、「No.2 電車B」をHEVC/H.265で符号化した際の原画像及び符号化画像の一部を示す図である。具体的には、フレーム番号464-468の5フレームの一部分をそれぞれ切り出した55×55画素サイズの画像を示している。いずれのフレームも、切り出し範囲は図9に示した55×55画素サイズの範囲である。図10(a)は原画像を示しており、図10(b)はレート制御を400M[bps]の固定ビットレートとした場合の符号化画像を示しており、図10(c)はレート制御を200M[bps]の固定ビットレートとした場合の符号化画像を示している。また、55×55画素の各画素位置に、Y信号(輝度信号)の画素値に相当する濃度の黒を表示している。符号化条件は、図8のPSNR及びフリッカの測定時と同じである。
【0014】
図10から、原画像(図10(a))は精細なテクスチャを保持しているが、符号化画像(図10(b)(c))は精細感が失われていることが判る。フレーム番号が異なる(表示時刻の異なる)同一位置の画像に注目すると、フレームごとに精細感の失われ方や、その度合いが異なることが判る。なお、一つのフレーム内においても位置によって精細感の失われ方や、その度合いが異なる。この精細感の失われ方や度合いの時間的変化は、動画像として視聴した際にチラつきとして視認される。また、符号化画像には、符号化時にブロック単位で予測や、量子化の処理を行うことに起因すると考えられる階段状の模様が発生している。この模様も、フレームごとに形を変えるため、動画像として視聴した際にチラつきとして視認される。これらのチラつきによる符号化画像の品質低下の度合いは、従来技術であるPSNRやフリッカでは評価することが困難であった。
【0015】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、イントラフリッカとは異なる、符号化画像の時間方向の画像品質変動によるチラつきを客観的に評価することが可能な符号化画像品質評価装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、一実施形態に係る符号化画像品質評価装置は、符号化画像の品質を評価する符号化画像品質評価装置であって、符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、前記アクティビティの時間変動を品質評価値として算出するアクティビティ変動算出部と、を備える。
【0017】
また、上記課題を解決するため、一実施形態に係る符号化画像品質評価装置は、符号化画像の品質を評価する符号化画像品質評価装置であって、符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、前記アクティビティを正規化して正規化アクティビティを算出するアクティビティ正規化部と、前記正規化アクティビティの時間変動を品質評価値として算出する正規化アクティビティ変動算出部と、を備える。
【0018】
また、上記課題を解決するため、一実施形態に係る符号化画像品質評価装置は、符号化画像の品質を評価する符号化画像品質評価装置であって、符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、前記アクティビティの時間変動を算出するアクティビティ変動算出部と、前記アクティビティの時間変動を正規化して品質評価値として算出するアクティビティ変動正規化部と、を備える。
【0019】
さらに、一実施形態において、前記アクティビティ算出部は、前記フレームに二次微分フィルタを掛けた画像の各画素値の平均値を前記アクティビティとして算出してもよい。
【0020】
さらに、一実施形態において、動画像に含まれる全フレームの前記品質評価値に基づいて、動画像全体の品質を示す動画像品質評価値を求める動画像品質評価部を更に備えてもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記符号化画像品質評価装置として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画像品質変動によるチラつきを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置の構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置が算出したアクティビティの例を示す図である。
図3】第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置の構成例を示すブロック図である。
図4】第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置が算出した正規化アクティビティの例を示す図である。
図5】第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置が算出した品質評価値の例を示す図である。
図6】第3の実施形態に係る符号化画像品質評価装置の構成例を示すブロック図である。
図7】第4の実施形態に係る符号化画像品質評価装置の構成例を示すブロック図である。
図8】符号化画像の輝度信号のPSNR及びフリッカの測定値の例を示す図である。
図9】PSNR及びフリッカの測定対象とした画像領域を示す図である。
図10】ITE超高精細・広色域標準動画像-Aシリーズの「No.2 電車B」をHEVC/H.265で符号化した際の原画像及び符号化画像の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す符号化画像品質評価装置1は、アクティビティ算出部11と、アクティビティ記憶部12と、アクティビティ変動算出部13と、を備える。
【0026】
符号化画像品質評価装置1は、符号化画像(圧縮データを復号して得られる画像)を入力(取得)し、符号化画像の品質を客観的に評価する装置である。
【0027】
アクティビティ算出部11及びアクティビティ変動算出部13により制御演算回路(コントローラ)を構成する。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。
【0028】
アクティビティ算出部11は、符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出する。アクティビティ算出部11は、例えば式(4)に示すように、各フレームにラプラシアンフィルタなどの二次微分フィルタを掛けた画像の各画素値の平均値をアクティビティとして算出する。そして、アクティビティ算出部11は、算出したアクティビティをアクティビティ記憶部12及びアクティビティ変動算出部13に出力する。式(4)において、Fは二次微分フィルタを意味する。ここで用いられる二次微分フィルタFは、画像中の画素値の勾配を検出することを目的とするため、そのタップ数や係数は限定されない。
【0029】
【数3】
【0030】
図2は、アクティビティ算出部11が算出したアクティビティの例を示す図である。横軸はフレーム番号を示し、縦軸はアクティビティを示している。図2(a)は、図8で測定対象とした画像領域と同じく、切り出し範囲の256×256画素サイズの領域画像を対象に算出したアクティビティを示す。図2(b)は、図10の各画像と同じく、切り出し範囲の55×55画素サイズの領域画像を対象に算出したアクティビティを示す。図中の一点鎖線は原画像のアクティビティを示しており、点線はレート制御を400M[bps]の固定ビットレートとした場合の符号化画像のアクティビティを示しており、実線はレート制御を200M[bps]の固定ビットレートとした場合の符号化画像のアクティビティを示している。図2から、符号化画像は原画像に比べてアクティビティ(精細感)が著しく低下していることが判る。
【0031】
アクティビティ変動算出部13は、アクティビティ算出部11から入力したアクティビティの時間変動を品質評価値として求める。アクティビティ変動算出部13は、例えば式(5)に示すように、アクティビティ算出部11から入力した現フレームのアクティビティと、アクティビティ記憶部12に記憶された過去のフレームのアクティビティとの差分値を算出する。そして、アクティビティ変動算出部13は、算出した品質評価値QE(t)を符号化画像品質評価装置1の外部に出力する。
【0032】
【数4】
【0033】
上述したように、本実施形態に係る符号化画像品質評価装置1は、符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出し、アクティビティの時間変動を品質評価値QE(t)として求める。そのため、イントラフリッカとは異なる、符号化画像の時間方向の画像品質変動によるチラつきを客観的に評価することが可能となる。また、品質評価値QE(t)は測定対象の動画像のみを用いて算出される値であるため、符号化画像の劣化を測定する際に、原画像を必要としないノンリファレンス画像品質評価を行うことが可能となる。また、符号化画像品質評価装置1は、二次微分フィルタを用いることにより、符号化画像の品質評価に適したアクティビティを高精度に算出することが可能となる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置について説明する。図3は、第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置の構成例を示すブロック図である。図3に示す符号化画像品質評価装置2は、アクティビティ算出部11と、アクティビティ記憶部12と、アクティビティ正規化部14と、正規化アクティビティ記憶部15と、正規化アクティビティ変動算出部16と、を備える。符号化画像品質評価装置2は、第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置1と比較して、アクティビティ変動算出部13に代えて、アクティビティ正規化部14、正規化アクティビティ記憶部15、及び正規化アクティビティ変動算出部16を備える点が相違する。
【0035】
アクティビティ算出部11、アクティビティ正規化部14、及び正規化アクティビティ変動算出部16により制御演算回路を構成する。該制御演算回路は、ASIC、FPGAなどの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。
【0036】
アクティビティ算出部11は、第1の実施形態と同様に、例えば式(4)によりアクティビティを算出し、アクティビティ記憶部12に出力する。
【0037】
アクティビティ正規化部14は、アクティビティ記憶部12から複数フレームのアクティビティを取得し、各フレームのアクティビティを正規化して、正規化されたアクティビティ(正規化アクティビティ)を算出する。アクティビティ正規化部14は、例えば式(6)から式(9)を用いて正規化アクティビティを算出する。そして、アクティビティ正規化部14は、正規化アクティビティを正規化アクティビティ記憶部15及び正規化アクティビティ変動算出部16に出力する。
【0038】
【数5】
【0039】
式(6)では各フレームのアクティビティをTフレームのアクティビティの平均値で割った値を正規化アクティビティとする。式(7)では各フレームのアクティビティをTフレームのアクティビティの最大値で割った値を正規化アクティビティとする。式(8)では各フレームのアクティビティをTフレームのアクティビティの分散値で割った値を正規化アクティビティとする。式(9)では各フレームのアクティビティをTフレームのアクティビティの標準偏差で割った値を正規化アクティビティとする。ここで、Tは、符号化画像のフレーム数である。Tで指定されるフレームは任意とすることができるが、例えば、現フレームを中心とした1GOP分フレーム数のフレーム、現フレームを含む1GOPのフレーム、又は現フレームを最後尾とした1GOP分フレーム数のフレームとしてよい。
【0040】
正規化アクティビティ記憶部15は、正規化アクティビティを記憶する。なお、アクティビティ記憶部12及び正規化アクティビティ記憶部15を説明の便宜上区別して記載しているが、これらを一体化して一つの記憶部としてもよい。
【0041】
図4(a),(b)は、図2(a),(b)に示したアクティビティを、それぞれ式(6)を用いて正規化した正規化アクティビティを示す図である。横軸はフレーム番号を示し、縦軸は正規化アクティビティを示している。ここでは、フレーム数T=900とした。
【0042】
図4から、符号化画像では原画像には見られない正規化アクティビティ(正規化された精細感)の小刻みな変動が見られ、その傾向は200M[bps]よりも400M[bps]において顕著であることが判る。この正規化アクティビティ(正規化された精細感)の小刻みな変動が、図10を用いて説明した時間方向のチラつきを示している。
【0043】
正規化アクティビティ変動算出部16は、アクティビティ正規化部14から入力した正規化アクティビティの時間変動を品質評価値として求める。正規化アクティビティ変動算出部16は、例えば式(10)に示すように、アクティビティ正規化部14から入力した現フレームの正規化アクティビティと、正規化アクティビティ記憶部15に記憶された過去のフレームのアクティビティとの差分値を算出する。そして、正規化アクティビティ変動算出部16は、算出した品質評価値QE(t)を符号化画像品質評価装置2の外部に出力する。
【0044】
【数6】
【0045】
アクティビティの時間変動は、変動量が同程度であってもアクティビティが大きい場合には目立たず、アクティビティが小さい場合には目立つ。そこで、本実施形態係る符号化画像品質評価装置2では、アクティビティを正規化した後に、時間変動を算出することとした。そのため、符号化画像品質評価装置2は、より人間の視覚特性に近い評価を行うことができ、第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置1よりも更に評価精度を向上させることが可能となる。
【0046】
図5は、式(10)を用いて図4(a),(b)に示した正規化アクティビティから、算出した品質評価値QE(t)を示す図である。横軸はフレーム番号を示し、縦軸は品質評価値QE(t)を示している。図5では、ビットレートが200M[bps]の場合よりも400M[bps]の場合の方が、品質評価値QE(t)が大きくなっている。すなわち、200M[bps]よりも400M[bps]の方が、画像品質が悪い(チラつきが激しい)という結果になっている。一般的に、映像符号化ではビットレートが高い符号化画像の方が、ビットレートが低い符号化画像よりも画像品質が良い傾向があり、図8(a)に示したPSNRでも200M[bps]の符号化画像よりも400M[bps]の符号化画像の方が高い画像品質(PSNR値)を示している。しかし、今回の測定対象とした符号化画像においては、200M[bps]の符号化画像の方が400M[bps]の符号化画像よりも主観画像品質が高いことを、DSCQS(Double Stimulus Continuous Quality Scale;二重刺激連続品質尺度)法による主観画像品質評価試験を実施して確認することができた。したがって、符号化画像品質評価装置2は、上記の品質評価値QE(t)を導入することで、より主観画像品質に近い品質評価値を、客観的に求めることが可能となる。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る符号化画像品質評価装置について説明する。図6は、第3の実施形態に係る符号化画像品質評価装置の構成例を示すブロック図である。図6に示す符号化画像品質評価装置3は、アクティビティ算出部11と、アクティビティ記憶部12と、アクティビティ変動算出部13と、アクティビティ変動記憶部17と、アクティビティ変動正規化部18と、を備える。符号化画像品質評価装置3は、第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置1と比較して、アクティビティ変動記憶部17及びアクティビティ変動正規化部18を更に備える点が相違する。第2の実施形態では、アクティビティを正規化した後に、正規化アクティビティの時間変動(隣接フレーム間差分)を算出したが、本実施形態では、アクティビティの隣接フレーム間差分を算出した後に、アクティビティの隣接フレーム間差分を正規化する。
【0048】
アクティビティ算出部11、アクティビティ変動算出部13、及びアクティビティ変動正規化部18により制御演算回路を構成する。該制御演算回路は、ASIC、FPGAなどの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。
【0049】
アクティビティ算出部11は、第1の実施形態と同様に、例えば式(4)によりアクティビティを算出し、アクティビティ記憶部12及びアクティビティ変動算出部13に出力する。
【0050】
アクティビティ変動算出部13は、第1の実施形態と同様に、例えば式(11)によりアクティビティの時間変動(以下、アクティビティ変動という。)を算出し、アクティビティ変動記憶部17及びアクティビティ変動正規化部18に出力する。
【0051】
【数7】
【0052】
アクティビティ変動正規化部18は、アクティビティ変動記憶部17から複数フレームのアクティビティ変動を取得し、各フレームのアクティビティ変動を正規化して、正規化されたアクティビティ変動を品質評価値QE(t)として算出する。アクティビティ変動正規化部18は、例えば式(12)から式(15)を用いて品質評価値QE(t)を算出する。そして、アクティビティ変動正規化部18は、算出した品質評価値QE(t)を符号化画像品質評価装置3の外部に出力する。
【0053】
【数8】
【0054】
式(12)では各フレームのアクティビティ変動をTフレームのアクティビティ変動の平均値で割った値を品質評価値とする。式(13)では各フレームのアクティビティ変動をTフレームのアクティビティ変動の最大値で割った値を品質評価値とする。式(14)では各フレームのアクティビティ変動をTフレームのアクティビティ変動の分散値で割った値を品質評価値とする。式(15)では各フレームのアクティビティ変動をTフレームのアクティビティ変動の標準偏差で割った値を品質評価値とする。ここで、Tは、符号化画像のフレーム数である。Tで指定されるフレームは任意とすることができるが、例えば、現フレームを中心とした1GOP分フレーム数のフレーム、現フレームを含む1GOPのフレーム、又は現フレームを最後尾とした1GOP分フレーム数のフレームとしてよい。
【0055】
アクティビティの時間変動は、瞬時的な変動量が同程度であっても、時間軸方向にある程度の期間における包括的な変動量が大きい場合には目立たず、時間軸方向にある程度の期間における包括的な変動量が小さい場合には目立つ。そこで、本実施形態係る符号化画像品質評価装置3では、アクティビティ変動を算出した後に正規化することとした。そのため、符号化画像品質評価装置3は、より人間の視覚特性に近い評価を行うことができ、第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置1よりも更に評価精度を向上させることが可能となる。
【0056】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る符号化画像品質評価装置について説明する。図7は、符号化画像品質評価装置4の構成例を示すブロック図である。図7に示す符号化画像品質評価装置4は、アクティビティ算出部11と、アクティビティ記憶部12と、アクティビティ正規化部14と、正規化アクティビティ記憶部15と、正規化アクティビティ変動算出部16と、品質評価値記憶部19と、動画像品質評価部20と、を備える。符号化画像品質評価装置4は、第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置2と比較して、品質評価値記憶部19及び動画像品質評価部20を更に備える点が相違する。
【0057】
アクティビティ算出部11、アクティビティ正規化部14、正規化アクティビティ変動算出部16、及び動画像品質評価部20により制御演算回路を構成する。該制御演算回路は、ASIC、FPGAなどの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。
【0058】
品質評価値QE(t)の求め方は第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置2と同じであるため、説明を省略する。本実施形態に係る正規化アクティビティ変動算出部16は、算出した品質評価値QE(t)を符号化画像品質評価装置4の外部に出力するとともに、品質評価値記憶部19にも出力する。
【0059】
品質評価値記憶部19は、品質評価値を記憶する。なお、アクティビティ記憶部12、正規化アクティビティ記憶部15、及び品質評価値記憶部19を説明の便宜上区別して記載しているが、これらを一体化して一つの記憶部としてもよい。
【0060】
動画像品質評価部20は、品質評価値記憶部19から動画像に含まれる全フレームの品質評価値QE(t)(t=1,2,・・・,T)を取得し、該全フレームの品質評価値QE(t)に基づいて動画像全体の品質を示す動画像品質評価値を求める。そして、動画像品質評価部20は、動画像品質評価値を符号化画像品質評価装置4の外部に出力する。動画像品質評価部20は、例えば動画像に含まれる全フレームの品質評価値の平均値を動画像品質評価値とする。また、動画像品質評価部20は、動画像に含まれる全フレームの品質評価値QE(t)の最大値を動画像品質評価値としてもよい。また、動画像品質評価部20は、所定の閾値を超える品質評価値QE(t)の出現頻度(出現回数/全フレーム数)を動画像品質評価値としてもよい。
【0061】
符号化画像品質評価装置4は、第2の実施形態に係る符号化画像品質評価装置2の構成に品質評価値記憶部19及び動画像品質評価部20を加えた構成であるが、同様に、第1の実施形態に係る符号化画像品質評価装置1又は第3の実施形態に係る符号化画像品質評価装置3の構成に品質評価値記憶部19及び動画像品質評価部20を加えた構成であってもよい。
【0062】
品質評価値QE(t)はフレームごとに算出される値であるが、本実施形態に係る符号化画像品質評価装置4は、品質評価値記憶部19及び動画像品質評価部20を備えることにより、動画像全体のチラつきも同時に評価することが可能となる。
【0063】
(プログラム)
上記の符号化画像品質評価装置1,2,3,4として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0064】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0065】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0066】
例えば、コンピュータを上記の符号化画像品質評価装置1として機能させるためのプログラムは、符号化画像のフレームごとの精細感を数値化したアクティビティを算出するステップと、アクティビティの時間変動を品質評価値として求めるステップと、をコンピュータに実行させる。コンピュータを上記の符号化画像品質評価装置2として機能させるためのプログラムは、アクティビティを正規化して正規化アクティビティを算出するステップを更にコンピュータに実行させる。コンピュータを上記の符号化画像品質評価装置3として機能させるためのプログラムは、アクティビティの時間変動を正規化するステップを更にコンピュータに実行させる。コンピュータを上記の符号化画像品質評価装置4として機能させるためのプログラムは、動画像に含まれる全フレームの品質評価値から、動画像全体の品質を示す動画像品質評価値を求めるステップを更にコンピュータに実行させる。
【0067】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3,4 符号化画像品質評価装置
11 アクティビティ算出部
12 アクティビティ記憶部
13 アクティビティ変動算出部
14 アクティビティ正規化部
15 正規化アクティビティ記憶部
16 正規化アクティビティ変動算出部
17 アクティビティ変動記憶部
18 アクティビティ変動正規化部
19 品質評価値記憶部
20 動画像品質評価部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10