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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162546
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】焼結体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/486 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
C04B35/486
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064528
(22)【出願日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2021067398
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021122113
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川村 謙太
(72)【発明者】
【氏名】吹上 拓
(72)【発明者】
【氏名】西山 聡
(72)【発明者】
【氏名】永山 仁士
(57)【要約】
【課題】
焼結体の破壊抵抗を超える衝撃に対し、脆性破壊の発生に先立ち、衝撃吸収を発生させることによって、耐衝撃性が改善された焼結体を提供する。
【解決手段】
安定化元素を含有するジルコニアを含み、塑性変形する領域を有する焼結体であって、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.5mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする焼結体。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化元素を含有するジルコニアを含み、塑性変形する領域を有する焼結体であって、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする焼結体。
【請求項2】
該安定化元素の含有量が1.5mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
前記希土類元素がネオジム、ガドリニウム、イッテルビウム、ホルミウム及びサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体。
【請求項4】
前記安定化元素がさらにイットリウムを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の焼結体。
【請求項5】
イットリウムの含有量が1.5mol%以下であることを特徴とする請求項4に記載の焼結体。
【請求項6】
落球破壊エネルギーが0.5J以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の焼結体。
【請求項7】
アルミナを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の焼結体。
【請求項8】
顔料を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の焼結体。
【請求項9】
安定化元素を含有するジルコニアを含み、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満である粉末。
【請求項10】
請求項9に記載の粉末を使用することを特徴とするに記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼結体に関し、特に、高い耐衝撃性を有し、主としてジルコニアからなる焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニアをマトリックスとする焼結体は、粉砕媒体や構造材料など強度を必要とする従来用途に加え、時計、携帯電子機器、自動車、家電等の装飾部品などの装飾用途への適用が検討されている。装飾用途へ適用される焼結体は、外的な衝撃による破壊を防ぐため、高強度・高靭性であることが求められる。これまで、信頼性の高い材料として、高強度・高靭性を備える種々の焼結体が報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中和共沈法で製造された3mol%イットリア含有ジルコニア粉末と、アルミナ粉末とを混合した混合粉末をマイクロ波焼結することで得られたジルコニア-アルミナ複合焼結体が報告されている。当該焼結体は、3点曲げ試験(スパン長さ8mm、クロスヘッドの送り速度0.5mm/min)で測定された曲げ破壊強度が1030MPa以上1540MPa以下であり、IF法により測定される破壊靭性値(Klc)が6.02MPa・m0.5以上6.90MPa・m0.5以下であることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、リン、二酸化ケイ素及びアルミナを含むジルコニア粉末を熱間静水圧プレス(HIP)処理することで得られた焼結体が報告されている。当該焼結体は、JIS R 1601に規定される方法で測定された曲げ破壊強度が1100MPa以上1280MPa以下であり、JIS R 1607に規定される方法で測定された破壊靭性値が6MPa・m0.5以上~11MPa・m0.5以下であることが記載されている。
【0005】
ジルコニアセラミックス等の焼結体は、亀裂が発生及び進展することによる破壊、いわゆる脆性破壊が生じやすい。落下や衝突など、材料に瞬間的に大きな衝撃が加わることによって材料の破壊抵抗を超える荷重が印可された場合、脆性破壊が発生する。そのため、特許文献1及び2に開示されるような曲げ破壊強度や破壊靭性値の改善によって、材料の衝撃性は向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-226555号公報
【特許文献2】特開2011-178610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、荷重の印可に伴い材料が塑性変形を起こす場合には、脆性破壊の発生に先立ち、塑性変形により衝撃を吸収し、亀裂の発生や進展を抑えることができる。
【0008】
本開示は、焼結体の破壊抵抗を超える衝撃に対し、脆性破壊の発生に先立ち、衝撃吸収を発生させることによって、優れた耐衝撃性を示す焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は特許請求の範囲のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 安定化元素を含有するジルコニアを含み、塑性変形する領域を有する焼結体であって、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする焼結体。
[2]該安定化元素の含有量が1.5mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする[1]に記載の焼結体。
[3] 前記希土類元素がネオジム、ガドリニウム、イッテルビウム、ホルミウム及びサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載の焼結体。
[4] 前記安定化元素がさらにイットリウムを含むことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の焼結体。
[5] イットリウムの含有量が1.5mol%以下であることを特徴とする[4]に記載の焼結体。
[6] 落球破壊エネルギーが0.5J以上であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の焼結体。
[7] アルミナを含むことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の焼結体。
[8] 顔料を含むことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載の焼結体。[9] 安定化元素を含有するジルコニアを含み、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満である粉末。
[10] [9]に記載の粉末を使用することを特徴とする焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、焼結体の破壊抵抗を超える衝撃に対し、脆性破壊の発生に先立ち衝撃吸収を発生させることによって、優れた耐衝撃性を示す焼結体及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】デュポン式落球試験機を使用した落球試験の様子を示す模式図
図2】落球試験後の撃芯部(凹部の形成)の一例を示す模式図。
図3】落球試験後の従来の焼結体の撃芯部付近の一例を示す模式図
図4】落球試験における測定試料の配置の一例を示す模式図
図5】衝撃痕の深さの測定方法を示す模式図
図6】落球試験により破壊の態様の一例を示す模式図 (a)破壊が生じた状態 (b)破壊が生じていない状態
図7】落球試験後の実施例2の焼結体の外観(倍率:20倍)
図8】落球試験後の実施例2の焼結体に形成された衝撃痕の外観(倍率:50倍)
図9】落球試験後の比較例2の焼結体の外観(倍率:20倍)
図10】ビッカース硬度測定後の実施例11の焼結体の外観(倍率:200倍)
図11】ビッカース硬度測定後の比較例2の焼結体の外観(倍率:150倍)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の焼結体について、実施形態の一例を示して説明する。
【0013】
本実施形態の焼結体は、安定化元素を含有するジルコニアを含み、塑性変形する領域を有する焼結体であって、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする焼結体、である。
【0014】
本実施形態の焼結体は、塑性変形する領域を有する。塑性変形する領域とは、例えば、衝撃力が印加された場合に衝撃痕が形成される領域が挙げられる。本実施形態において「塑性変形」とは、外力の印加により生じる焼結体の変形であって、なおかつ、該外力の除去後に焼結体に残るものをいう。そのため、塑性変形は、外力を取り去った後に変形が残らない変形(いわゆる、弾性変形)や、焼結体が変形しないまま、亀裂などの欠陥の発生及び進展による破壊(いわゆる、脆性破壊)とは異なる。さらに、本実施形態における塑性変形は、高温域(例えば、800℃以上の温度域)で一定のひずみ速度で変形させた場合において、結晶粒界すべりが連続的に発生することで延びる現象、いわゆる超塑性現象による変形とも異なる。本実施形態の焼結体の耐衝撃性が改善する理由、すなわち耐衝撃性が向上する理由のひとつとして、衝撃痕が形成される領域などの塑性変形する領域(以下、「塑性変形領域」ともいう。)が、印可された衝撃力によって、伝わるエネルギーを吸収及び分散する機能を示すことが考えられる。これにより、衝撃力が印加された場合に、少なくとも、脆性破壊の発生に先立ち塑性変形が生じ、その結果、脆性破壊の発生が抑制され、耐衝撃性が向上することが考えられる。
【0015】
本実施形態の焼結体は、少なくとも焼結体の一部に塑性変形領域を有していればよい(すなわち、塑性変形領域を有する焼結体であればよい)が、主として塑性変形領域からなっていてもよく、塑性変形領域からなる焼結体であってもよい。
【0016】
「衝撃力」とは、焼結体にエネルギーを伝える力であり、特に動的な外力、好ましくは焼結体の破壊抵抗を超える外力、より好ましくは焼結体の破壊抵抗を超える動的な外力、さらには弾性エネルギーを焼結体に及ぼす動的な外力である。
【0017】
「衝撃力が印加される」とは、少なくとも焼結体の一部にエネルギーが加えられることであり、例えば、焼結体の落下による地面等への接触や、落下物の焼結体への接触など、焼結体が被接触物と接触することによって焼結体にエネルギーが動的に加えられること、が挙げられる。
【0018】
「衝撃痕」とは、焼結体に衝撃力が印加された痕跡、好ましくは衝撃力の印加によって焼結体に形成された痕跡である。換言すると、衝撃痕は、焼結体に塑性変形が生じた痕跡であり、破壊に先立ち発生した塑性変形の痕跡である。具体的な衝撃痕の態様として、撃芯部(後述)における、凹部や凹凸部、更には凹部、また更には衝撃力の印加方向に沿った凹部が例示できる。
【0019】
本実施形態において、焼結体が塑性変形領域を有するか否かは、任意の方法で焼結体に衝撃力(例えば、当該焼結体の破壊を進行させる動的な外力)を印加することで、これを確認することができる。例えば、焼結体に対して衝撃力を印加し、印加後の焼結体に、凹部や凹凸部など、塑性変形が生じた痕跡(特に、破壊に先立ち変形が生じた痕跡)としての衝撃痕の形成が確認できることによって、焼結体が塑性変形領域を有することを確認できる。本実施形態の焼結体において、衝撃痕は、塑性変形に由来して形成されるが、その後(衝撃痕の形成後)に発生する亀裂などの脆性破壊に基づく欠陥を含んでいてもよい。一方、衝撃力の印加後において、亀裂などの脆性破壊に基づく欠陥のみを有する場合(すなわち、塑性変形による衝撃痕の形成を伴わずに欠陥のみが確認される場合)や、ヘルツ破壊のように破壊に由来する変形のみを有する場合(すなわち、最初に発生した亀裂等の破壊の進展により形成された変形のみが確認される場合)は、塑性変形領域を有さないと判断することができる。
【0020】
塑性変形領域の存在を確認する好ましい方法として、例えば、JIS K 5600 5-3に準拠したデュポン式落球試験機を使用し、室温下、300gの落下重りを、落下高さ200mmから落下させる落球試験(以下、単に「落球試験」ともいう。)、が挙げられる。
【0021】
図1はデュポン式落球試験機を使用した落球試験を示す模式図である。図1に示すように、落球試験において、測定試料(101)は保護テープ(107)を裏面に貼付し、円筒状の落球試験機の試料台(106)に配置され、固定用テープ(105)をその側面に貼付されることで試料台に固定されている。落下重りは、重り(104)と打ち型(ポンチ:punch;102)からなり、打ち型(102)は測定試料(101)の表面に配置されている。落球試験は、該打ち型から落下高さに相当する高さ(図1中、両矢印部に相当する高さ;200mm)から重り(104)を投下させることで行えばよい。打ち型(102)は球状(半球状)の先端を備えた円柱形状を有している。重り(104)をデュポン式落球試験機のガイド(103a,103b)に沿って落とすことで、打ち型(102)を介して測定試料(101)に所望の衝撃力を印加することができる。
【0022】
図2は落球試験後の本実施形態の焼結体の外観を示す模式図である。図2で示すように、本実施形態の焼結体は、落球試験によって落下重り(打ち型)による衝撃力が印可された領域(以下、「撃芯部」ともいう。)に衝撃痕が形成されたことが確認できる。図2における衝撃痕は、撃芯部付近に凹部が形成された状態を示しており、塑性変形領域を有することが目視で確認できる。なお、図示はしていないが凹部付近に、亀裂などの脆性破壊に基づく欠陥を有していてもよい。これに対し、図3は、落球試験後の従来の焼結体の外観を示す模式図である。図3で示すように、従来の焼結体は、撃芯部での衝撃痕の形成が確認できず、亀裂など脆性破壊に基づく欠陥のみが発生している。
【0023】
塑性変形領域の存否は、目視及び光学顕微鏡による観察の少なくともいずれか、更には目視、により確認すればよい。光学顕微鏡による観察における観察倍率として、1~100倍、好ましくは10~50倍が例示できる。
【0024】
なお、図示はしていないが、破壊靭性が高い従来の焼結体は、落球試験前後でその外観に変化はなく、衝撃痕を確認することができない。一方、塑性変形領域を有する焼結体においては、脆性破壊に先立ち塑性変形が生じる。衝撃痕を確認することができない場合、衝撃痕が確認できるまで落下高さを高くして繰り返し落球試験を行い、凹部の形成等の衝撃痕の形成を確認することで、塑性変形領域の存否を確認することもできる。
【0025】
時計や携帯電子機器の外装材などの装飾部品として許容される耐衝撃性を備えた塑性変形領域の有無を評価するため、本実施形態において、300gの落下重りを、落下高さ200mmから落下する落球試験によって塑性変形領域の有無を確認することが好ましい。
【0026】
本実施形態における落球試験は、JIS K 5600 5-3に準拠したデュポン式落球試験機を使用し、室温下(20~30℃)で行うことができる。落球試験の条件として、以下の条件が挙げられる。
【0027】
落下重り : (形状)半径6.35mmの球状の先端を備えた円柱状の打ち型
(質量)300g
落球高さ : 200mm
測定試料 : 縦40mm×横30mm×厚み2mmの板状であり、両表面の表面粗さRaが0.02μm以下である焼結体
測定試料は、試料片の飛散防止のため、落球試験機の試料台と、測定試料の一方の表面(縦40mm×横30mmの面;主面)を両面テープで固定して、測定試料を配置する。配置後の測定試料を固定した面と対になる主面の縦方向に沿って固定用テープ(保護テープ)を貼付し、測定試料を固定する(図4)。固定後の測定試料に対して落球試験を実施すればよい。落球試験により形成される衝撃痕の深さとして、例えば、焼結体の厚み[mm](図2:203)に対する衝撃痕の最深部の深さ[mm](図2:204)として、0%を超え3.5%以下、更には0.5%以上3%以下であること、が挙げられる。なお、図2における衝撃痕(凹部)の深さ(204)は深さを強調して示している。
【0028】
本実施形態において、衝撃痕の深さは、一般的なレーザー顕微鏡(例えば、VK-9500/VK-9510、キーエンス社製)を使用して測定することができる。観察倍率としては10~50倍、更には20倍であること、及び、レーザー波長は408nmであることが例示できる。
【0029】
図5に、衝撃痕の深さの測定方法の一例を示す模式図を示す。衝撃痕の深さの測定方法は、以下に示す方法に限定されるものではない。本実施形態における衝撃痕の深さの測定は、落球面の上面視で略円形状に形成される衝撃痕の最大径方向であるX軸方向(503A)、及び、X軸方向に直交し、かつ、落球面内に延びるY軸方向(503B)に、それぞれラインプロファイルを行い、X軸及びY軸と直交するZ軸方向に関して、落球面の高さと衝撃痕表面の高さの差、すなわち衝撃痕の深さ(504)を測定する。X軸方向に沿って測定した最大深さをL1、Y軸方向に沿って測定した最大深さをL2とし、最大深さを平均し(=(L1+L2)/2)、得られた長さをもって、試料の衝撃痕の深さとすればよい。最深部の長さの計測における計測条件は、0.5μm/ステップが例示できる。なお、測定に先立ち、パターン長さが既知である装置付属の標準試料(例えば、パターンが刻まれたSi基板等)を測定し、その解析精度を調整すればよい。
【0030】
このようなラインプロファイル及びZ軸方向の最深部の計測などの解析は、レーザー顕微鏡に付属された解析ソフト等(例えば、ソフト名:VK-H1A9VK ANALYZER Version3.0.1.0)による画像解析で行うことができる。
【0031】
本実施形態の焼結体に含まれるジルコニアは安定化元素を含有する。安定化元素は、ジルコニアを安定化させる元素であり、希土類元素を挙げることができる。本実施形態の焼結体に含まれるジルコニアは、安定化元素として、イットリア以外の希土類元素を少なくとも1種を含む。該希土類元素はセリウム(Ce)以外であることが好ましい。該希土類元素は、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、イッテルビウム(Yb)及びホルミウム(Ho)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、サマリウム、ガドリニウム、イッテルビウム及びホルミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、サマリウム、ガドリニウム及びイッテルビウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが更に好ましい。少ない安定化元素量で焼結しやすい点で、希土類元素は、ガドリニウム及びイッテルビウムの少なくともいずれかを含むことが好ましい。焼結体のb値が高くなりやすいため、希土類元素はサマリウムを含むことが好ましく、落球強度(以下、「落球破壊エネルギー」ともいう。)が高くなりやすいため、希土類元素はガドリニウムを含むことが好ましく、水熱劣化耐性が高くなりやすいため、希土類元素はイッテルビウムを含むことが好ましい。本実施形態の焼結体に含まれるジルコニアは、該希土類元素を2種類以上含んでいてもよい。例えば、本実施形態の焼結体に含まれるジルコニアは、ガドリニウム及びイッテルビウムを含むことが好ましい。
【0032】
なお本実施形態の焼結体に含まれるジルコニアにおいて、安定化元素がさらにイットリウムを含んでいてもよい。
【0033】
安定化元素の含有量(以下、「安定化元素量」ともいう。)は、ジルコニアが部分安定化される量であればよい。安定化元素量は、酸化物換算で0mol%超、1.0mol%以上、1.5mol%以上又は1.8mol%以上であり、また、3mol%未満、2.8mol%以下又は2.5mol%以下であることが挙げられ、更に、0mol%を超え3mol%未満であることが挙げられ、0mol%を超え2.8mol%以下であることが好ましく、1.8mol%以上2.8mol%以下であることがより好ましい。本実施形態において、安定化元素量は、ジルコニア及び酸化物換算した安定化元素の合計に対する、酸化物換算した安定化元素の合計の割合(mol%)である。例えば、サマリウム及びイットリウムを含有するジルコニアを含む焼結体(サマリウム及びイットリウム安定化ジルコニア焼結体)における安定化元素量は{(Sm+Y)/(Sm+Y+ZrO)}×100(mol%)として求めることができる。
【0034】
安定化元素の酸化物換算は、例えば、ネオジムがNd、サマリウムがSm、ガドリニウムがGd、イッテルビウムがYb、ホルミウムがHo、及び、イットリウムがYとすればよい。
【0035】
本実施形態の焼結体は、上述の安定化元素量を満たしていれば、各安定化元素の含有量(以下、安定化元素がネオジム等である場合の各安定化元素の含有量を、それぞれ、「ネオジム含有量」等ともいう。)は任意である。すなわち、本実施形態の焼結体における安定化元素の含有量とは、焼結体に含まれるすべての安定化元素の含有量の合計含有量をいう。本実施形態の焼結体における各安定化元素の含有量として、ネオジム含有量が、例えば、1.5mol%以上、2.0mol%以上又は2.5mol%以上であり、また、3.0mol%未満であることが挙げられ、サマリウム含有量が1.5mol%以上、2.0mol%又は2.5mol%以上であり、また、3.0mol%未満であることが挙げられる。
【0036】
また、本実施形態の焼結体は、ガドリニウム含有量が、例えば、1.0mol%以上又は1.5mol%以上であり、3.0mol%未満又は2.8mol%以下であることが挙げられ、イッテルビウム量が1.0mol%以上又は1.5mol%以上であり、また、3.0mol%未満又は2.8mol%以下であることが挙げられ、ホルミウム含有量は1.0mol%以上又は1.5mol%以上であり、また、3.0mol%未満又は2.8mol%以下であることがより好ましい。
【0037】
安定化元素としてネオジム、サマリウム、ガドリニウム、イッテルビウム及びホルミウムの少なくとも1種と、イットリウムとを含有するジルコニアを含む焼結体において、各安定化元素の含有量は、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、イッテルビウム及びホルミウムの少なくとも1種の含有量が0mol%を超え、かつ、安定化元素量が1.5mol%以上、2.0mol%以上又は2.2mol%以上であり、かつ、3.0mol%未満であることが挙げられる。
【0038】
本実施形態における各安定化元素の含有量は、ジルコニア及び酸化物換算した安定化元素量の合計に対する、酸化物換算した各安定化元素の割合(mol%)である。
【0039】
本実施形態の焼結体は、顔料を含んでいてもよい。顔料とは、ジルコニア焼結体を着色する機能を有する物質である。ジルコニア由来の呈色と顔料由来の呈色を組み合わせることで、所望の色調の焼結体を得ることが可能となる。なお顔料は、ジルコニア焼結体を白色に着色するものであってもよい。
【0040】
本実施形態の焼結体に含まれる顔料は、希土類元素以外でジルコニアを着色する機能を有する元素及びその化合物の少なくともいずれかであり、例えば、金属元素、更には遷移金属元素であることが好ましい。具体的な顔料として、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)、の群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、鉄、コバルト及びマンガンの群から選ばれる1以上であることがさらに好ましい。
【0041】
本実施形態の焼結体に含まれる顔料は、ペロブスカイト構造又はスピネル構造を有する金属酸化物であることがより好ましく、ペロブスカイト構造又はスピネル構造を有する遷移金属酸化物であることが更に好ましい。
【0042】
ペロブスカイト構造を有する金属酸化物は、ABOで表され、なおかつ、Aが、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びビスマス(Bi)の群から選ばれる1以上であり、Bがバナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及びアルミニウム(Al)の群から選ばれる1以上である酸化物が挙げられる。
【0043】
スピネル構造を有する金属酸化物は、ABで表され、なおかつ、A及びBが、それぞれ、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ビスマス、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及びアルミニウムの群から選ばれる1以上である酸化物が挙げられ、好ましくは、ABで表される酸化物が挙げられる。具体的なスピネル構造を有する金属酸化物として、CoAl、Fe(Fe2+Fe3+ )、Mn(Mn2+Mn3+ )、SrAl及びCaAl、の群から選ばれる少なくともいずれかが例示できる。
【0044】
本実施形態の焼結体は、顔料の含有量が少ないほど、塑性変形が発現しやすい。顔料の含有量は0質量%を超え、0.001質量%以上であることが好ましい。焼結体が塑性変形領域を有していれば、顔料の含有量は任意であるが、顔料の含有量の上限として、例えば、5質量%以下、3質量%未満、2.5質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下又は0.7質量%以下であることが挙げられる。顔料の含有量は、酸化物換算した焼結体の質量に対する、酸化物換算した顔料の合計質量の割合、として求めることができる。酸化物換算における顔料は、例えば、コバルトはCo、鉄はFe、マンガンはMnO、亜鉛はZnOであればよい。
【0045】
本実施形態の焼結体は、アルミナ(Al)を含んでいてもよい。これにより、機械的特性、例えば静的強度のような機械的特性、が高くなる傾向がある。本実施形態の焼結体は、アルミナを含まなくてもよいため、アルミナ含有量は0質量%以上である。アルミナを含む場合、アルミナ含有量は0質量%を超え30質量%未満が挙げられ、好ましくは0質量%を超え25質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上20質量%以下である。また、アルミナ含有量は0質量%以上、0質量%超、0.005質量%以上、0.5質量%以上又は1質量%以上であり、なおかつ、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってもよい。アルミナ含有量は、ジルコニア、酸化物換算した安定化元素、及びAl換算したアルミニウムの合計量に対する、Al換算したアルミニウムの質量割合、として求めればよい。例えば、アルミナと、安定化元素としてネオジム及びイットリウムを含有するジルコニアを含む焼結体におけるアルミナ含有量は、{Al/(ZrO+Nd+Y+Al)}×100(質量%)として求めることができる。焼結体が顔料Mを含む場合のアルミナ含有量は、ジルコニア、酸化物換算した安定化元素、酸化物換算した顔料M及びAl換算したアルミニウムの合計量に対する、Al換算したアルミニウムの質量割合、として求めることができる。
【0046】
アルミナ(Al)は焼結体の機械的特性に与える影響が大きく、ジルコニアを着色する効果がほとんどない。そのため、本実施形態においてアルミナ、すなわち金属元素等と複合酸化物を形成していないアルミニウムの酸化物、は顔料に含まれないものとする。
【0047】
本実施形態の焼結体は、安定化元素を含有するジルコニアを含み、安定化元素を含有するジルコニアをマトリックス(母材)とする焼結体、いわゆるジルコニア焼結体、又は部分安定化ジルコニア焼結体、であることが好ましい。本実施形態の焼結体に占める安定化元素を含有するジルコニアの質量割合(以下、「ジルコニア含有量」ともいう。)は、65質量%以上、70質量%以上、75質量%を超え、80質量%以上又は95質量%以上であることが好ましい。焼結体は、ジルコニア含有量が100質量%以下であり、安定化元素を含有するジルコニアのみからなる焼結体において、ジルコニア含有量は100質量%となる。ジルコニア含有量は、酸化物換算した焼結体の質量に対する、ジルコニア及び酸化物換算した安定化元素の合計質量の割合、として求めることができる。
【0048】
本実施形態の粉末は、アルミナの他、例えば、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、酸化ガリウム(Ga)、酸化ゲルマニウム(GeO)、酸化ニオブ(Nb)及び酸化タンタル(Ta)の群から選ばれる1以上、など焼結体の機械的特性に与える影響が大きく、ジルコニアを着色する効果がほとんどない酸化物を含んでいてもよい。
【0049】
本実施形態の焼結体は、ハフニア(HfO)等の不可避不純物を含んでいてもよいが、安定化元素、ジルコニア、アルミナ、必要に応じて顔料、及び不可避不純物以外は含まないことが好ましい。本実施形態において、焼結体の各成分の含有量の算出は、ハフニア(HfO)をジルコニア(ZrO)とみなしてこれらの値を算出すればよい。
【0050】
例えば、本実施形態の焼結体が、顔料成分として、それぞれ、ABO又はABで表される複合酸化物、アルミナ及びシリカを含み、なおかつ、安定化元素としてホルミウム及びイットリウムを含むジルコニアの焼結体である場合、各成分の含有量は以下のように求めればよい。以下の式において、HfOの質量はZrOの項に含まれているものとする。
【0051】
顔料成分量[質量%]={(ABO+AB)/(Ho+Y+ZrO
+Al+SiO+ABO+AB)}×100
アルミナ量[質量%]={Al/(Ho+Y+ZrO
+Al+SiO+ABO+AB)}×100
シリカ量[質量%]={SiO/(Ho+Y+ZrO
+Al+SiO+ABO+AB)}×100
安定化元素量[mol%]={(Ho+Y)/
(Ho+Y+ZrO)}×100
ホルミウム量[mol%]={(Ho)/
(Ho+Y+ZrO)}×100
イットリウム量[mol%]={(Y)/
(Ho+Y+ZrO)}×100
本実施形態の焼結体は、密度が高いことが好ましく、相対密度として98%以上、好ましくは99%以上100%以下に相当する密度であることがより好ましい。
【0052】
本実施形態において、実測密度はアルキメデス法により求めることができ、アルキメデス法で求まる体積に対する、質量測定により求まる質量として求まる値である。また本実施形態において、相対密度は理論密度に対する実測密度の割合から求めることができる。本実施形態において、理論密度(g/cm)は、焼結体のジルコニアの結晶相が全て正方晶であるとみなし、かつ、該ジルコニアの単位格子体積(cm)に対する単位格子質量(g)から求めればよい。単位格子体積は、以下の条件で測定される粉末X線回折パターンにおける、正方晶(004)面に相当するXRDピーク(以下、「T004」ともいう。)及び正方晶(220面)に相当するXRDピーク(以下「T220」ともいう。)のピークトップの2θとブラッグの式を使用して面間隔を求め、ここから算出した格子定数より求めればよい。また、単位格子質量は、焼結体の組成分析の結果を使用し、該単位格子に含まれる陽イオン(ジルコニウム原子、ハフニウム原子、安定化元素原子)及び陰イオン(酸素原子)の合計質量として求めればよい。
【0053】
本実施形態の焼結体のジルコニアの結晶相は、少なくとも正方晶を含むことが好ましく、正方晶と、立方晶及び単斜晶の少なくともいずれかとからなっていてもよい。
【0054】
本実施形態において、焼結体の粉末X線回折パターンは、一般的な結晶性解析X線回折装置(例えば、装置名:X‘pert PRO MPD、スペクトリス社製)により測定することができる。
【0055】
測定条件として、以下の条件が挙げられる。
【0056】
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
管電圧 :45kV
管電流 :40mA
高速検出器 :X‘Celerator + Niフィルター
微小部光学系 :モノキャピラリー 直径0.1mm
測定角度 :70~80°
ゴニオメータ :半径240mm
上記測定において、T004の回折強度は2θ=72.5±1°にピークトップを有するXRDピークの面積強度として、T220の回折強度は2θ=74±1°にピークトップを有するXRDピークの面積強度として、それぞれ、確認される。
【0057】
本実施形態の焼結体の形状は、例えば、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、立方体状、直方体状、多面体状及び略多面体状の群から選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。更に、各種用途等、所期の目的を達成するための任意の形状であればよい。
【0058】
本実施形態の焼結体は、落球強度が0.5J以上、さらには0.6J以上であることが好ましい。落球強度は耐衝撃性を示す指標のひとつであり、この値が高いほど耐衝撃性が高くなる。焼結体の落球強度として、例えば、5J以下、2J以下又は1J以下が例示できる。
【0059】
落球強度(J)= 落下重り質量(g)×落下高さ(mm)×重力加速度(m/s)×10-6
重力加速度として、9.8m/sを使用すればよい。
【0060】
落球強度は、落球高さを以下に示す任意の高さとすること以外は、上述の落球試験と同様な方法により測定することができる。
【0061】
落球高さ : 50~500mm
破壊の判定は、測定試料が2以上に分割された状態をもって破壊が生じているとみなすことができる(図6(a))。一方、一端から他端まで達していない亀裂が生じた場合(図6(b))は、破壊が生じていないとみなせばよい。特定の落下高さにおける落球試験で破壊が生じなかった場合、破壊が生じるまで、落下高さを500mmまで一定の高さずつ(例えば、50mmずつ)高くして繰り返し落球試験を行い、同様に目視による観察を行えばよい。若しくは、落球高さの代わりに落下重りの重さを変更して繰り返し落球試験を行ってもよい。例えば、落球高さが500mmに達しても破壊が生じなかった場合、落下重りの質量を300gから500gに変更して、再度500mmの落下高さにて落球試験を行うことで、より高い落球強度まで測定が可能である。
【0062】
本実施形態の焼結体のビッカース硬度(Hv)は特に限定されないが、焼結体表面に傷がつきにくくなるため、例えば8GPa以上であることが挙げられ、10GPa以上であることが好ましく、11GPa以上であることがより好ましい。ビッカース硬度は15GPa以下、13GPa以下又は12GPa以下であることが例示できる。
【0063】
本実施形態において、ビッカース硬度は、JIS R1610:2003に準じた方法によって測定することができる。ビッカース硬度の測定条件として、以下の条件が例示できる。
【0064】
測定試料 :(試料厚み) 1.5±0.5mm
(測定表面粗さ)Ra≦0.02μm
測定荷重 :10kgf又は20kgf
測定は、ダイヤモンド製の正四角錘の圧子を備えた一般的なビッカース試験機(例えば、MV-1、マツザワ社製)を使用して行うことができる。測定は、圧子を静的に測定試料表面に押し込み、測定試料表面に形成した押込み痕を形成させ、該押込み痕の対角長さを目視にて計測する。得られた対角長さを使用して、以下の式からビッカース硬度を求めることができる。
【0065】
Hv=F/{d/2sin(α/2)}×9.8×10-3
上の式において、Hvはビッカース硬度(GPa)、Fは測定荷重(10kgf又は20kgf)、dは押込み痕の対角長さ(mm)、及び、αは圧子の対面角(136°)である。
【0066】
本実施形態における焼結体の破壊抵抗の指標として、破壊靭性値が例示できる。破壊靭性値はJIS R 1607で規定される方法によって測定される破壊靭性の値(MPa・m0.5)である。なお、JIS R 1607では、IF法及びSEPB法の二通りの破壊靭性の測定が規定されている。IF法は簡易的な測定方法であるが、SEPB法と比べて測定される値が大きくなる傾向にある。そのため、本実施形態におけるSEPB法で測定された破壊靭性値と、IF法で測定された破壊靭性値とは、絶対値での比較はできない。
【0067】
本実施形態の焼結体はIF法による破壊靭性値が13MPa・m0.5以上又は14MPa・m0.5であり、また、20MPa・m0.5以下又は18MPa・m0.5以下であることが挙げられる。なお、SEPB法における破壊靭性値は5MPa・m0.5以上又は6MPa・m0.5以上であり、また、15MPa・m0.5以下又は13MPa・m0.5以下であることが例示できる。
【0068】
本実施形態において、曲げ強度は、JIS R 1601に準じた3点曲げ試験によって測定することができる。本実施形態の焼結体の曲げ強度としては900MPa以上又は1000MPa以上であり、また、1500MPa以下又は1300MPa以下であることが挙げられる。
【0069】
本実施形態の焼結体の色調は任意であるが、顔料を含まない焼結体の場合、CIE1976(L)色空間における明度Lが70以上、75以上又は80以上であることが例示できる。なお、明度Lの上限は100以下である。
【0070】
明度Lは、JIS Z8722に準じた方法で、一般的な分光測色計(例えば、CM-700d、コニカミノルタ社製)を使用して測定することができる。明度Lの測定条件として、以下の条件が挙げられる。測定は、背景として黒色板を使用した測定(いわゆる黒バックの測定)とすることが好ましい。
【0071】
光源 : D-65光源
視野角 : 10°
測定方式 : SCI
測定試料として、直径20mm×厚さ2.7mmの円板形状の焼結体を使用し、評価する表面を鏡面研磨処理(Ra≦0.02μm)し、色調を評価すればよい。また、色調評価有効面積として直径10mmが挙げられる。
【0072】
本実施形態の焼結体、特に顔料を含まない焼結体は、上記の明度Lを有することが好ましい。この場合、本実施形態の焼結体の彩度a及びbは、それぞれ、-3≦a≦0、かつ、-2≦b≦25であることが例示できる。
【0073】
本実施形態の焼結体が顔料を含む場合の色調としてLが0以上100以下、aが-5以上15以下、かつ、bが-30以上40以下であることが挙げられる。
【0074】
本実施形態の焼結体は、従来の焼結体、特に構造材料、光学材料、歯科用材料等のジルコニア焼結体の用途に適用できるが、装飾品、時計や筐体などのアクセサリーのカバー用途、携帯電話などの携帯電子機器の外装部材など、比較的高い耐衝撃性が要求される部材として使用することができる。
【0075】
以下、本実施形態の焼結体の製造方法について説明する。
【0076】
本実施形態の焼結体は、上記の要件を満たす焼結体が得られればその製造方法は任意である。本実施形態の焼結体の製造方法の一例として、安定化元素源と、ジルコニアとを含む成形体を焼結する工程、を有する製造方法が例示できる。
【0077】
上記の工程(以下、「焼結工程」ともいう。)に供する成形体は、安定化元素源と、ジルコニアとを含む成形体(圧粉体)である。成形体は目的とする焼結体と同様な組成であればよい。
【0078】
安定元素源は、安定化元素を含む化合物であればよく、ネオジア、サマリア、ガドリニア、イッテルビア及びホルミア、若しくはこれらの前駆体となるネオジム、サマリウム、ガドリニウム、イッテルビウム及びホルミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物であればよい(以下、安定化元素がネオジム等である場合の安定化元素源を、それぞれ、「ネオジム源」等ともいう。)。本実施形態の焼結体は、安定化元素源として、イットリア、若しくはその前駆体となるイットリウムを含む化合物をさらに含んでいてもよい。
【0079】
ネオジム源は、ネオジア(酸化ネオジム)及びその前駆体となるネオジム化合物の少なくともいずれかであればよく、塩化ネオジム、ネオジア及び炭酸ネオジムの群から選ばれる1以上が挙げられ、ネオジアであることが好ましい。
【0080】
サマリウム源は、サマリア(酸化サマリウム)及びその前駆体となるサマリウム化合物の少なくともいずれかであればよく、塩化サマリウム、サマリア及び炭酸サマリウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、サマリアであることが好ましい。
【0081】
ガドリニウム源は、ガドリニア(酸化ガドリニウム)及びその前駆体となるガドリニウム化合物の少なくともいずれかであればよく、塩化ガドリニウム、ガドリニア及び炭酸ガドリニウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、ガドリニアであることが好ましい。
【0082】
イッテルビウム源は、イッテルビア(酸化イッテルビウム)及びその前駆体となるイッテルビウム化合物の少なくともいずれかであればよく、塩化イッテルビウム、イッテルビア及び炭酸イッテルビウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、塩化イッテルビウムであることが好ましい。
【0083】
ホルミウム源は、ホルミア(酸化ホルミウム)及びその前駆体となるホルミウム化合物の少なくともいずれかであればよく、塩化ホルミウム、ホルミア及び炭酸ホルミウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、ホルミアであることが好ましい。
【0084】
イットリウム源は、イットリア(酸化イットリウム)及びその前駆体となるイットリウム化合物の少なくともいずれかであればよく、塩化イットリウム、イットリア及び炭酸イットリウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、イットリアであることが好ましい。
【0085】
成形体における安定化元素源の含有量は、目的とする焼結体の安定化元素量と同等であればよい。
【0086】
成形体は、アルミナ源を含んでいてもよい。アルミナ源は、アルミナ(Al)及びその前駆体となるアルミニウム(Al)を含む化合物の少なくともいずれかであり、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム及びアルミナの群から選ばれる1以上が挙げられ、アルミナであることが好ましい。
【0087】
成形体におけるアルミナ源の含有量は、目的とする焼結体のアルミナ含有量と同等であればよい。
【0088】
形状安定性の改善のため、成形体は結合剤を含んでいてもよい。結合剤は、セラミックスの成形に使用される有機バインダーであればよく、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス及び可塑剤の群から選ばれる1以上が挙げられる。結合剤の含有量として、成形体の体積に占める結合剤の割合が25容量%以上65容量%以下であることが例示できる。また、成形体100質量%中、結合剤が0質量%を超え10質量%以下であることが例示できる。
【0089】
成形体の形状は、焼結による収縮を考慮し、目的に応じた任意の形状であればよく、例えば、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、立方体状、直方体状、多面体状及び略多面体状の群から選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。
【0090】
成形体の製造方法は任意であり、ジルコニア、安定化元素源、並びに、必要に応じて顔料源及びアルミナ源の少なくともいずれか、を任意の方法で混合した混合物(以下、「原料組成物」ともいう)を、成形することが挙げられる。また、ジルコニア及び安定化元素源に代わり、又は、ジルコニア及び安定化元素源に加え、安定化元素含有ジルコニアを使用してもよい。成形体の製造に供する原料組成物は、目的とする成形体と同様な組成を有していればよく、例えば、安定化元素を含有するジルコニアを含み、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満である粉末、が挙げられる。該粉末は、これを使用することを特徴とする焼結体の製造方法、好ましくは該粉末を使用することを特徴とする本実施形態の焼結体の製造方法、に使用できる。
【0091】
ジルコニアとして、安定化元素含有ジルコニアを使用する場合、ジルコニアに安定化元素を含有させる方法は任意である。例えば、水和ジルコニアゾルと、目的とする安定化元素含有量と同等の安定化元素源とを混合し、乾燥、仮焼及び水洗することが挙げられる。
【0092】
成形体は、必要に応じ、顔料源を含んでいてもよい。顔料源は、顔料及びその前駆体の少なくともいずれかであればよい。顔料の前駆体としては、ジルコニアを着色する機能を有する元素を含む化合物が挙げられ、例えば金属元素を含む化合物が好ましく、金属の、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、蓚酸塩、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる1以上が例示でき、好ましく金属の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物及び炭酸塩の群から選ばれる1以上が挙げられる。具体的な顔料の前駆体として、酸化カルシウム、酸化マンガン、アルミナ、酸化鉄及び酸化コバルトの群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0093】
顔料がペロブスカイト構造ABO又はスピネル構造ABを有する金属酸化物である場合、当該顔料は、例えば当該金属酸化物を構成する遷移金属A及びBそれぞれの、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、蓚酸塩、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる1以上を必要に応じて混合し、大気雰囲気、1200℃~1500℃で焼成することで得ることができる。好ましい顔料源として、CoAl、Fe、Mn、ZnO及びSrAl、の群から選ばれる1以上が例示できる。顔料源は市販されているものを使用してもよく、本実施形態においては、例えば、CoAl、Fe、ZnO、Mn、SrAl及びCaAlの群から選ばれる1以上を使用することができる。
【0094】
成形体における顔料源の含有量は、目的とする焼結体の顔料の含有量と同等であればよい。
【0095】
混合方法は任意であり、好ましくは乾式混合及び湿式混合の少なくともいずれか、より好ましくは湿式混合、更に好ましくはボールミルを使用した湿式混合である。
【0096】
成形方法は、混合粉末を圧粉体としうる公知の成形方法であればよく、好ましくは一軸加圧成形、等方加圧成形、射出成形、押出成形、転動造粒及び鋳込み成形の群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは一軸加圧成形及び等方加圧成形の少なくともいずれか、更に好ましくは冷間静水圧プレス処理及び一軸加圧成形(粉末プレス成形)の少なくいずれかである。
【0097】
焼結工程は、成形体を焼結して焼結体を得る。焼結方法は任意であり、常圧焼結、加圧焼結、真空焼結等、公知の焼結方法が例示できる。好ましい焼結方法として常圧焼結が挙げられ、簡便であるため、焼結方法は常圧焼結のみであることが好ましい。これにより、本実施形態の焼結体を、いわゆる常圧焼結体として得ることができる。常圧焼結とは、焼結時に成形体(又は仮焼体)に対して外的な力を加えず、単に加熱することによって焼結する方法である。
【0098】
常圧焼結の条件は、焼結温度として、1250℃以上1600℃以下、好ましくは1300℃以上1580℃以下、1300℃以上1560℃以下、が例示できる。また、焼結囲気として、大気雰囲気及び酸素雰囲気の少なくともいずれかが挙げられ、大気雰囲気であることが好ましい。
【実施例0099】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明する。しかしながら、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
(塑性変形領域の確認)
JIS K 5600 5-3に準拠したデュポン式落球試験機(装置名:H-50、東洋精機社製)を使用した落球試験により、焼結体試料の塑性変形領域の存否を確認した。試験条件を以下に示す。
【0100】
落下重り : (形状)半径6.35mmの球状の先端を備えた円柱状の打ち型
(質量)300g、すなわちSUS製、横80mm×厚み20m
m×高さ30mmの直方体状の質量300gの重り
落球高さ : 200mm
測定試料 : 縦40mm×横30mm×厚み2mmの板状であり、両表面(縦40mm×横30mmの面;主面)の表面粗さがRa≦0.02μmの焼結体
測定試料は、試料片の飛散防止のため、落球試験機の試料台と、測定試料の一方の表面(縦40mm×横30mmの面)を両面テープで固定して、測定試料を配置した。配置後の測定試料の固定した面と対になる面の縦方向に沿ってテープを貼付し、測定試料を固定した)。固定後の測定試料の中央付近に落下重りが落ちるように、打ち型を配置し、落球試験を実施した。
(落球強度の測定)
落球高さを変更したこと以外は、塑性変形領域の確認における落球試験と同様な方法で落球強度を測定した。すなわち、落下重り投下後の測定試料の状態を目視で確認し、測定試料に破壊が生じていた落球高さにおける落球強度を以下の式から求めた。
【0101】
落球強度(J)= 落下重り質量(g)×落下高さ(mm)×重力加速度(9.8m/s)×10-6
破壊の判定は、測定試料が2以上に分断された状態をもって破壊が生じているとみなした。なお、チッピングのような極微小な破片が生じ、測定試料が板状形状を維持している状態は破壊とはみなさなかった。特定の落下高さにおける落球試験で破壊が生じなかった場合、破壊が生じるまで、落下高さを50mmから500mmまで50mmずつ高くして落球試験を繰り返した。落球高さが500mmに達しても破壊が生じなかった場合、落下重りの質量を300gから500g、500gから1kgに変更して、再度500mmの落下高さにて落球試験を行った。落下重りの質量が1kgで落下高さ500mmの落球試験において破壊が生じなかった測定試料については、便宜的に、落球強度を>5J(5J超)とした。
【0102】
(ビッカース硬度)
ビッカース硬度は、ダイヤモンド製の正四角錘の圧子を備えた一般的なビッカース試験機(装置名:MV-1、マツザワ社製)を使用して行った。
【0103】
圧子を測定荷重10kgfにて静的に測定試料表面に押し込み、測定試料表面に形成した押込み痕の対角長さを目視にて測定し、得られた対角長さを使用して、上述の式からビッカース硬度(GPa)を求めた。
【0104】
(密度)
焼結体試料の実測密度は、アルキメデス法で測定される体積に対する、質量測定で測定された質量の割合(g/cm)として求めた。測定に先立ち、乾燥後の焼結体の質量を測定した後、焼結体を水中に配置し、これを1時間煮沸し、前処理とした。理論密度(g/cm)は、焼結体のジルコニアの結晶相が全て正方晶であるとみなし、かつ、該ジルコニアの単位格子体積(cm)に対する単位格子質量(g)から求めた。単位格子体積は、以下の条件で測定される粉末X線回折パターンにおける、正方晶(004)面に相当するXRDピーク(以下、「T004」ともいう。)及び正方晶(220)面に相当するXRDピーク(以下「T220」ともいう。)のピークトップの2θとブラッグの式を使用して面間隔を求め、ここから算出した格子定数より求めればよい。
XRD測定の条件は以下の通りである。
【0105】
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
管電圧 :45kV
管電流 :40mA
高速検出器 :X‘Celerator + Niフィルター
微小部光学系 :モノキャピラリー 直径0.1mm
測定角度 :70~80°
ゴニオメータ :半径240mm
(破壊靭性)
焼結体試料の破壊靭性値は、JIS R 1607に規定される方法で測定した。
【0106】
(曲げ強度)
焼結体試料の曲げ強度は、JIS R 1601に準じた3点曲げ試験で測定した。
【0107】
(色調の測定)
JIS Z 8722に準じた方法で、焼結体試料の色調を測定した。測定には、一般的な分光測色計(装置名:CM-700d、コニカミノルタ社製)を使用し、背面に黒色板を使用した黒バック測定とした。測定条件は以下のとおりである。
【0108】
光源 : D-65光源
視野角 : 10°
測定方式 : SCI
焼結体試料は、直径20mm×厚さ2.7mmの円板形状のもの使用した。焼結体試料の一方の表面を鏡面研磨処理(Ra≦0.02μm)し、当該表面を評価面として色調を評価した。色調評価有効面積は直径10mmとした。
【0109】
(顔料)
実施例3、15乃至21、及び23乃至26においては、以下に示す顔料を使用した。
【0110】
顔料1 :CoAl(NF-2800 日研株式会社)
顔料2 :Fe (酸化鉄(III)価 1級 関東化学株式会社)
顔料3 :ZnO (酸化亜鉛 特級 キシダ化学株式会社)
顔料4 :SrAl(アルミン酸ストロンチウム 2N 株式会社高純度化学研究所)
顔料5 :Mn(ブラウノックス 東ソー株式会社)
実施例22においては、以下に示す方法で顔料6を合成して使用した。
【0111】
顔料6:CaAl
酸化カルシウム(CaO)の粉末とアルミナ(Al)の粉末をCa:Al=1:2(モル比)になるようにメノウ乳鉢で混合後、大気雰囲気、1200℃で2時間加熱することにより、CaAlを得た。
【0112】
実施例1
オキシ塩化ジルコニウム水溶液を加水分解反応して水和ジルコニアゾルを得た。サマリウム濃度が1.7mol%、及び、イットリウム濃度が1.1mol%となるように、サマリア及びイットリアを、それぞれ、水和ジルコニアゾルに添加及び混合した。混合後、大気雰囲気で乾燥した後、大気雰囲気、1150℃で2時間仮焼して、サマリウム及びイットリウム安定化ジルコニア仮焼粉末を得た。得られた仮焼粉末を純水で水洗及び乾燥し、サマリウム含有量が1.7mol%及びイットリウム含有量が1.1mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなるジルコニア粉末を得た。
【0113】
得られたジルコニア粉末に純水を添加してスラリーとし、直径10mmのジルコニア製ボールを粉砕媒体としたボールミルで、48時間、粉砕混合した。粉砕混合後のスラリーを大気雰囲気、110℃で乾燥後、篩分けにより凝集径180μmを超える粗大粒を取り除くことで、サマリウム含有量が1.7mol%及びイットリウム含有量が1.1mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。
【0114】
縦40mm×横30mmの板状の金型に充填し、成形圧力50MPaでの一軸加圧、及び、成形圧力196MPaでの冷間静水圧プレス(CIP)処理により、板状の成形体を得た。得られた成形体を以下の条件で焼結して、焼結体の厚さが1.8mm厚となるように研削及び研磨を行うことで、サマリウム含有量が1.7mol%かつイットリウム含有量が1.1mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。焼結条件を以下に示す。得られた焼結体の相対密度は99%であった。
【0115】
焼結方法 : 常圧焼結
焼結雰囲気 : 大気雰囲気
焼結温度 : 1550℃
焼結時間 : 2時間
実施例2
サマリウム含有量が0.5mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%となるようにサマリア及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、サマリウム含有量が0.5mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%、曲げ強度は1052MPaであった。
【0116】
実施例3
サマリウム含有量が1.5mol%かつイットリウム含有量が0.5mol%となるようにサマリア及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、サマリウム含有量が1.5mol%かつイットリウム含有量が0.5mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなるジルコニア粉末を得た。
【0117】
得られたジルコニア粉末と、Al粉末と、顔料1乃至3とを、Al含有量が5質量%、CoAl含有量が0.0040質量%、Fe含有量が0.013質量%及びZnO含有量が0.0063質量%となるように、純水に添加してスラリーとし、これを、直径10mmのジルコニア製ボールを粉砕媒体としたボールミルで、22時間、粉砕混合した。粉砕混合後のスラリーを、乾燥し、Alを5質量%、CoAlを0.040質量%、Feを0.013質量%及びZnOを0.0063質量%含み、残部がサマリウム含有量1.5mol%及びイットリウム含有量0.5mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。
【0118】
得られた粉末を造粒して粉末顆粒とした後、縦40mm×横30mmの板状の金型に充填し、成形圧力50MPaでの一軸加圧、及び、成形圧力196MPaでの冷間静水圧プレス(CIP)処理により、板状の成形体を得た。得られた成形体を以下の条件で焼結して、Alを5質量%、CoAlを0.0040質量%、Feを0.013質量%及びZnOを0.0063質量%含み、残部がサマリウム含有量1.5mol%及びイットリウム含有量0.5mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。焼結条件を以下に示す。
【0119】
焼結方法 : 常圧焼結
焼結雰囲気 : 大気雰囲気
焼結温度 : 1400℃
焼結時間 : 2時間
実施例4
サマリアの代わりに、ガドリニアを用い、ガドリニウム含有量が0.5mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%となるようにガドリニア及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が0.5mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%、曲げ強度は1044MPaであった。
【0120】
実施例5
サマリアの代わりに、ガドリニアを用い、ガドリニウム含有量が1.5mol%かつイットリウム含有量が0.5mol%となるようにガドリニア及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が1.5mol%かつイットリウム含有量が0.5mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%、曲げ強度は1042MPaであった。
【0121】
実施例6
サマリアの代わりに、塩化イッテルビウム(III)6水和物を用い、イッテルビウム含有量が0.9mol%かつイットリウム含有量が1.1mol%となるように塩化イッテルビウム(III)6水和物及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、イッテルビウム含有量が0.9mol%かつイットリウム含有量が1.1mol%であるイッテルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は99%であった。
【0122】
実施例7
サマリアの代わりに、酸化ホルミウムを用い、酸化ホルミウム含有量が1.0mol%かつイットリウム含有量が1.0mol%となるように酸化ホルミウム及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、酸化ホルミウム含有量が1.0mol%かつイットリウム含有量が1.0mol%であるホルミウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%、曲げ強度は1056MPaであった。
【0123】
実施例8
サマリアの代わりに、酸化ホルミウムを用い、ホルミウム含有量が0.4mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%となるように酸化ホルミウム及びイットリアを水和ジルコニアに添加し、1450℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法で、酸化ホルミウム含有量が0.4mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%であるホルミウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0124】
実施例9
サマリアの代わりに、ガドリニアを用い、ガドリニウム含有量が0.3mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%となるようにガドリニア及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が0.3mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%であった。
【0125】
実施例10
イットリアを用いず、サマリウム含有量が2.6mol%となるようにサマリアを水和ジルコニアに添加し、1400℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法で、サマリウム含有量が2.6mol%である、サマリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0126】
実施例11
サマリア、イットリアの代わりに、ガドリニアのみを用い、ガドリニウム含有量が2.0mol%となるようにガドリニアを水和ジルコニアに添加し、1450℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が2.0mol%である、ガドリニウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%、曲げ強度は913MPaであった。
【0127】
実施例12
サマリア、イットリアの代わりに、酸化ホルミウムのみを用い、酸化ホルミウム含有量が2.0mol%となるように酸化ホルミウムを水和ジルコニアに添加したこと、及び、1450℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法で、ホルミウム含有量が2.0mol%である、ホルミウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%であった。
【0128】
実施例13
サマリア及びイットリアの代わりに、ガドリニア及び塩化イッテルビウム(III)6水和物を用い、ガドリニウム含有量が1.5mol%かつイッテルビウム含有量が0.7mol%となるようにガドリニア及び塩化イッテルビウム(III)6水和物を水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が1.5mol%及びイッテルビウム含有量が0.7mol%であるガドリニウム及びイッテルビウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0129】
実施例14
サマリア及びイットリアの代わりに、ガドリニア及び塩化イッテルビウム(III)6水和物を用い、ガドリニウム含有量が1.0mol%かつイッテルビウム含有量が1.0mol%となるようにガドリニア及び塩化イッテルビウム(III)6水和物を水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が1.0mol%及びイットリウム含有量が1.0mol%であるガドリニウム及びイッテルビウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の曲げ強度は1044MPaであった。
【0130】
比較例1
サマリアを用いず、イットリウム含有量が2.8mol%となるようにイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、イットリウム含有量が2.8mol%であるイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は100%であった。
【0131】
比較例2
サマリアを用いず、イットリウム含有量が2.0mol%となるようにイットリアを水和ジルコニアに添加し、1450℃で焼結をおこなったこと以外は実施例1と同様な方法で、イットリウム含有量が2.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0132】
比較例3
サマリア、イットリアの代わりに、ガドリニアのみを用い、ガドリニウム含有量が3.4mol%となるようにガドリニアを水和ジルコニアに添加し、1450℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が3.4mol%である、ガドリニウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0133】
比較例4
サマリア、イットリアの代わりに、塩化イッテルビウム(III)6水和物のみを用い、イッテルビウム含有量が3.6mol%となるように塩化イッテルビウム(III)6水和物を水和ジルコニアに添加し、1450℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法で、イッテルビウム含有量が3.6mol%である、イッテルビウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0134】
以上の実施例及び比較例の評価結果を下表に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
表1において、落球試験後の状態において衝撃痕が確認できたものについて「衝撃痕の形成」欄を「〇」とし、衝撃痕が確認できなかったものを「×」として示した。図7および図8に実施例2の落球試験後の焼結体の外観を示す。図7および図8より、落球試験による落下重りが接触した領域が、亀裂等の破壊を伴わずに、衝撃痕(凹部)を形成していること、すなわち、塑性変形の痕跡としての衝撃痕(凹部)が目視により確認できる。実施例1乃至14の焼結体はいずれも、目視により塑性変形の痕跡としての衝撃痕を確認することができ、落球破壊エネルギーは0.5J以上であった。これらの焼結体は、目視により、図8と同様な、塑性変形の痕跡としての衝撃痕を確認することができた。
【0137】
実施例1乃至14の焼結体はIF法における破壊靭性値がいずれも13MPa・m0.5以上を示しており、高い破壊靭性値を有することがわかる。なお、SEPB法による破壊靭性値は、7.9MPa・m0.5(実施例2)、7.4MPa・m0.5(実施例4)、8.8MPa・m0.5(実施例5)、6.1MPa・m0.5(実施例9)、及び10.7MPa・m0.5(実施例11)であり、いずれもIF法における破壊靭性値より低かった。
【0138】
安定化元素としてイットリウムのみを含有する比較例1及び比較例2の焼結体、並びに、安定化元素を3.4mol%以上含有する比較例3及び比較例4の焼結体は、破壊靭性値、落球破壊エネルギー共に、実施例1乃至14と比較して低い値であった。落球試験においても塑性変形領域を有していないことが確認された。
【0139】
図9に落球試験後の比較例1の焼結体の光学顕微鏡観察(倍率:20倍)による外観を示す。安定化元素としてイットリアのみを含有する比較例1では、塑性変形による衝撃痕を形成することなく、焼結体に亀裂が進展し、焼結体が破壊されている様子が観察できる。
【0140】
図10及び図11に、実施例11及び比較例2の焼結体の、ビッカース硬度測定用圧子押下によって形成された圧痕周辺の、光学顕微鏡観察(倍率:200倍(実施例11)、50倍(比較例2))による外観を示す。比較例2の焼結体は、菱型の圧痕が確認された。これに対し、実施例11の焼結体には、菱型の圧痕に加え、該圧痕の周辺に皺状の模様が形成されたことが確認できる。
【0141】
以上より、本実施例の焼結体は高い破壊強度、破壊靭性及び優れた耐衝撃性を有することが確認された。
【0142】
実施例15
実施例5で得られたジルコニア粉末を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で、Alを5質量%、CoAlを0.0040質量%、Feを0.013質量%及びZnOを0.0063質量%含み、残部がガドリニウム含有量1.5mol%及びイットリウム含有量0.5mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0143】
実施例16
Alを0.75質量%、CoAlを3.5質量%使用し、Fe及びZnOを加えなかったこと、1400℃で焼結を行ったこと以外は実施例15と同様な方法で、Alを0.75質量%、CoAlを3.5質量%含み、残部がガドリニウム含有量1.5mol%及びイットリウム含有量0.5mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0144】
実施例17
Alを0.75質量%、CoAlを3.5質量%使用し、Fe及びZnOを加えなかったこと、1400℃で焼結を行ったこと以外は実施例3と同様な方法で、Alを0.75質量%、CoAlを3.5質量%含み、残部がサマリウム含有量1.5mol%及びイットリウム含有量0.5mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0145】
実施例18
Alを20質量%使用し、CoAl、Fe及びZnOを加えなかったこと以外は実施例15と同様な方法で、Alを0.75質量%、CoAlを3.5質量%含み、残部がガドリニウム含有量1.5mol%及びイットリウム含有量0.5mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0146】
実施例19
サマリアの代わりに、ガドリニアを用い、ガドリニウム含有量が1.4mol%かつイットリウム含有量が0.4mol%となるようにガドリニア及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が1.4mol%かつイットリウム含有量が0.4mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなるジルコニア粉末を得た。当該ジルコニア粉末を使用したこと、Alを10質量%使用したこと、SrAlを0.10質量%使用したこと、CoAl、Fe及びZnOを加えなかったこと、及び、1400℃で焼結を行ったこと以外は実施例15と同様な方法で、Alを10質量%、SrAlを0.10質量%含み、残部がガドリニウム含有量1.4mol%及びイットリウム含有量0.4mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0147】
実施例20
サマリアの代わりに、ガドリニアを用い、ガドリニウム含有量が1.3mol%かつイットリウム含有量が0.4mol%となるようにガドリニア及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ガドリニウム含有量が1.3mol%かつイットリウム含有量が0.4mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなるジルコニア粉末を得た。当該ジルコニア粉末を使用したこと、Alを20質量%使用したこと、Feを0.40質量%使用したこと、CoAl及びZnOを加えなかったこと、及び、1450℃で焼結を行ったこと以外は実施例15と同様な方法で、Alを20質量%、Feを0.40質量%含み、残部がガドリニウム含有量1.3mol%及びイットリウム含有量0.4mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0148】
実施例21
CoAlを0.10質量%使用したこと、及び、Feを加えなかったこと以外は実施例20と同様な方法で、Alを20質量%、CoAlを0.10質量%含み、残部がガドリニウム含有量1.3mol%及びイットリウム含有量0.4mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0149】
実施例22
SrAlの代わりに顔料6のCaAlを使用したこと、及び、1450℃で焼結を行ったこと以外は実施例19と同様な方法で、Alを10質量%、CaAlを0.10質量%含み、残部がガドリニウム含有量1.4mol%及びイットリウム含有量0.4mol%であるガドリニウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0150】
実施例23
Alを10質量%、SrAlを0.10質量%使用し、CoAl、Fe及びZnOを加えなかったこと、及び、1550℃で焼結を行ったこと以外は実施例3と同様な方法で、Alを10質量%、SrAlを0.10質量%含み、残部がサマリウム含有量1.5mol%及びイットリウム含有量0.5mol%であるサマリウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0151】
実施例24
実施例6で得られたジルコニア粉末に対して、Mn含有量が0.50質量%となるように、顔料5と純水を添加してスラリーとし、これを、直径10mmのジルコニア製ボールを粉砕媒体としたボールミルで、48時間、粉砕混合した。粉砕混合後のスラリーを、乾燥し、Mnを0.50質量%含み、残部がイッテルビウム含有量1.1mol%及びイットリウム含有量0.9mol%であるイッテルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。
【0152】
当該粉末を使用したこと、及び、1400℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法でMnを0.50質量%含み、残部がイッテルビウム含有量1.1mol%及びイットリウム含有量0.9mol%であるイッテルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0153】
実施例25
サマリアの代わりに、酸化ホルミウムを用い、ホルミウム含有量が0.3mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%となるように酸化ホルミウム及びイットリアを水和ジルコニアに添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、ホルミウム含有量が0.3mol%かつイットリウム含有量が1.5mol%であるホルミウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなるジルコニア粉末を得た。当該ジルコニア粉末を使用したこと、及び、Alを用いなかったこと以外は実施例16と同様の方法で、CoAlを3.5質量%含み、残部がホルミウム含有量0.3mol%及びイットリウム含有量1.5mol%であるホルミウム及びイットリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0154】
実施例26
実施例10で得られたジルコニア粉末に対して、Fe含有量が0.50質量%となるように、顔料3と純水を添加してスラリーとし、これを、直径10mmのジルコニア製ボールを粉砕媒体としたボールミルで、48時間、粉砕混合した。粉砕混合後のスラリーを、乾燥し、Feを0.50質量%含み、残部がサマリウム含有量2.6mol%であるサマリウム安定化ジルコニアからなる本実施例のジルコニア粉末を得た。
【0155】
当該粉末を使用したこと、及び、1350℃で焼結を行ったこと以外は実施例1と同様な方法で、Feを0.50質量%含み、残部がサマリウム含有量2.6mol%であるサマリウム安定化ジルコニアからなる本実施例の焼結体を得た。
【0156】
以上の実施例の評価結果を、実施例3の評価結果と共に下表に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
各実施例および比較例の焼結体は、表2に示す色調を呈していた。これにより、安定化元素の種類及び顔料の添加量を変更することで、異なる色調を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0159】
100: 落球試験の概要を示す外観図
101: 焼結体
102: 打ち型(ポンチ)
103a、103b: ガイド
104: 落下重り
105: 固定用テープ
106: 落球試験機の試料台
107: 保護テープ
200: 落球試験後の本実施形態の焼結体
201: 焼結体
202: 衝撃痕(凹部)
203: 衝撃痕(凹部)の深さ
300: 落球試験後の従来の焼結体
301: 焼結体
302: 欠陥(亀裂)
400: 落球試験機の試料台への焼結体の設置状態を示す図
401: 焼結体
402: 固定用テープ
403: 落球試験機の試料台
404: 両面テープ(保護テープ)
500: 衝撃痕深さの測定方法を示す図
501: 焼結体
502: 衝撃痕(凹部)
503A,B: ラインプロファイル
504: 衝撃痕の深さ
601: 分割された状態の焼結体
602: 欠陥(亀裂)
702: 衝撃痕(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化元素を含有するジルコニアを含み、塑性変形する領域を有する焼結体であって、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする焼結体。
【請求項2】
該安定化元素の含有量が1.5mol%以上3.0mol%未満であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
前記希土類元素がネオジム、ガドリニウム、イッテルビウム、ホルミウム及びサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体。
【請求項4】
前記安定化元素がさらにイットリウムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体。
【請求項5】
イットリウムの含有量が1.5mol%以下であることを特徴とする請求項4に記載の焼結体。
【請求項6】
落球破壊エネルギーが0.5J以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体。
【請求項7】
アルミナを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体。
【請求項8】
顔料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体。
【請求項9】
安定化元素を含有するジルコニアを含み、該安定化元素がイットリウム以外の希土類元素を少なくとも1種含み、なおかつ、該安定化元素の含有量が1.0mol%以上3.0mol%未満である粉末。
【請求項10】
請求項9に記載の粉末を使用することを特徴とする焼結体の製造方法。