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特開2022-162843水溶性ビタミンドリンク用原液及び水溶性ビタミンドリンク
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  • 特開-水溶性ビタミンドリンク用原液及び水溶性ビタミンドリンク 図1
  • 特開-水溶性ビタミンドリンク用原液及び水溶性ビタミンドリンク 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162843
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】水溶性ビタミンドリンク用原液及び水溶性ビタミンドリンク
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067873
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 元
(72)【発明者】
【氏名】村上 美穂
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LK06
4B117LK10
4B117LK16
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】酸性水溶液の条件でも水溶性ビタミンを安定して保持することができるビタミンドリンク用原液を提供することを課題とする。
【解決手段】(1)水溶性ビタミンと、(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンヒマシ油から選ばれる1種以上と、(3)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる1種以上と、(4)多価アルコールと、を含有してなる、水溶性ビタミンドリンク用原液。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水溶性ビタミンと、
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンヒマシ油から選ばれる1種以上と、
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる1種以上と、
(4)多価アルコールと、を含有してなる、
水溶性ビタミンドリンク用原液。
【請求項2】
さらに(5)脂溶性物質を含有してなる、請求項1に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
【請求項3】
水溶性ビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、コリン、及びビタミンCからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
【請求項4】
水溶性ビタミンが、ビタミンB12(シアノコバラミン)である、請求項3に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
【請求項5】
酸性である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液を、水、緩衝液及び水性液剤からなる群から選ばれる1種以上で希釈してなる、水溶性ビタミンドリンク。
【請求項7】
酸性である、請求項6に記載の水溶性ビタミンドリンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ビタミンドリンク用原液及び水溶性ビタミンドリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンは、生命活動を維持するために必要な代謝をサポートする重要な栄養素であり、体内で合成できない、または合成できても十分な量が得られないため、外部から摂取する必要がある。
ビタミンを外部から摂取する方法の一つとしてビタミン主製剤による摂取が挙げられ、該ビタミン主製剤は錠剤の形態で使用されるのが一般的である。錠剤としてのビタミン主製剤の開発は広く行われており、例えば、以下に示す文献には、水溶性ビタミンの一種であるビタミンB12又はビタミンCを含む錠剤に関する技術が開示されている。
特許文献1には、不活性担体にビタミンB12を付着させ、さらにその周囲を不活性糖類で被覆してなる固形製剤とすることにより、ビタミンB12の分解を防止することができる技術が開示されている。
特許文献2には、アミノ酸又はその塩、ビタミンC、及び変色抑制剤を含む固形製剤とすることにより、アミノ酸又はその塩とビタミンCとが共存することにより生じる色調の変化を抑制することができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-027007号公報
【特許文献2】特開2020-132586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、水溶性ビタミンを含むビタミン主製剤を錠剤として使用するための開発は幅広く行われているが、ドリンクとして使用するための開発はこれまでほとんど行われていなかった。これは、ビタミン主製剤をドリンクの形態で使用する場合、例えば水溶性ビタミンであるビタミンB12は中性の水溶液中では安定して保持することができるが、香味の観点で好ましい酸性水溶液中では分解し、またビタミンCは、水に溶解すると溶存酸素により分解してしまうなど、問題があったためである。
そこで本発明は、酸性水溶液の条件でも、水溶性ビタミンを安定して保持することができるビタミンドリンク用原液及び水溶性ビタミンドリンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、水溶性ビタミンを含むドリンク用原液に、複数の特定の物質を含ませることにより、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] (1)水溶性ビタミンと、
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンヒマシ油から選ばれる1種以上と、
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる1種以上と、
(4)多価アルコールと、を含有してなる、
水溶性ビタミンドリンク用原液。
[2] さらに(5)脂溶性物質を含有してなる、[1]に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
[3] 水溶性ビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、コリン、及びビタミンCからなる群から選ばれる1種以上である、[1]または[2]に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
[4] 水溶性ビタミンが、ビタミンB12(シアノコバラミン)である、[3]に記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
[5] 酸性である、[1]~[4]のいずれかに記載の水溶性ビタミンドリンク用原液。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の水溶性ビタミンドリンク用原液を、水、緩衝液及び水性液剤からなる群から選ばれる1種以上で希釈してなる、水溶性ビタミンドリンク。
[7] 酸性である、[6]に記載の水溶性ビタミンドリンク。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸性水溶液の条件でも水溶性ビタミンを安定して保持することができるビタミンドリンク用原液及び水溶性ビタミンドリンクを提供することができ、長期間の安定的な保存が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例における紫外可視吸光度の測定結果に係るグラフである。
図2】実施例における目視観察の結果を示す図である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0010】
<水溶性ビタミンドリンク用原液>
本発明の一実施形態である水溶性ビタミンドリンク用原液(以下、単に「水溶性ビタミンドリンク用原液」又は「ドリンク用原液」とも称する。)は、
(1)水溶性ビタミンと、
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンヒマシ油から選ばれる1種以上と、
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる1種以上と、
(4)多価アルコールと、を含有する、
水溶性ビタミンドリンク用原液である。
【0011】
水溶性ビタミンは、酸性条件では分解してしまう。しかしながら、上記の水溶性ビタミンドリンク用原液では、上記の(2)~(4)の成分が水溶性ビタミンを囲うような構造が形成されるため、水溶性ビタミンと該構造より外部に存在する物質との相互作用を抑制することができる、つまり酸性条件下でも水溶性ビタミンを安定して保持することができる、と本発明者らは考察している。また、一般的に、水溶性ビタミンは、塩基性及び中性の環境下では安定して存在できるため、上記の水溶性ビタミンドリンク用原液は、酸性の
みならず、中性及び塩基性を含むあらゆるpHの条件で利用することができる。さらに上記の水溶性ビタミンは、これらの安定性に加え、透明性が高い点でも有利である。
上記の水溶性ビタミンドリンク用原液の効果は、これを特定の液体で希釈して得られるビタミンドリンクにおいても同様に得ることができる。
ドリンク用原液は、上述のように、酸性、中性、塩基性のいずれの条件においても、水溶性ビタミンを安定させることができるが、香味の観点から、酸性であることが好ましい。
【0012】
本明細書において、「水溶性ビタミンドリンク用原液」とは通常、水、緩衝液、及び水性溶剤の合計含有量が25重量%未満の液体であるが、後述する成分(1)~(4)の合計含有量が60重量%以上である液体であってもよく、さらに、成分(1)~(5)の合計含有量が60重量%以上である液体であってもよい。また、後述する「水溶性ビタミンドリンク」とは通常、水溶性ビタミンドリンク用原液を水、緩衝液、及び水性溶剤からなる群から選ばれる1種以上で希釈してなる液体であり、具体的には、水、緩衝液、及び水性溶剤の合計含有量が25重量%以上の液体であるが、後述する成分(1)~(4)の合計含有量が60重量%未満である液体であってもよく、さらに、成分(1)~(5)の合計含有量が60重量%未満である液体であってもよい。
【0013】
[水溶性ビタミン]
ドリンク用原液に含まれる水溶性ビタミン(以下、成分(1)とも称する。)の種類は、特段制限されず、例えば、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、コリン、ビタミンC(アスコルビン酸)等が挙げられ、酸性または水溶性条件での分解抑制の向上の観点から、ビタミンB5、ビタミンB12、ビタミンCがより好ましく、さらに酸性水溶液条件下での分解抑制の観点から、ビタミンB12であることが特に好ましい。なお、コリンは、一般的にビタミン様作用物質であるが、本明細書においては水溶性ビタミンの一種として扱う。また、水溶性ビタミンは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の種類および比率で併用してもよい。
【0014】
ドリンク用原液中の成分(1)の合計含有量は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの十分な効果を得る観点から、通常0.00001重量%以上であり、0.00005重量%以上であることが好ましく、0.0001重量%以上であることがより好ましく、0.0005重量%以上であることがさらに好ましく、0.001重量%以上であることが特に好ましく、また、十分な安定性を確保する観点から、通常30重量%以下であり、27.5重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましく、22.5重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることが特に好ましい。
【0015】
[ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油]
ドリンク用原液は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンヒマシ油から選ばれる1種以上の成分(以下、成分(2)とも称する。)を含むが、乳化力の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が含まれることが好ましい。なお、ドリンク用原液は、これらのヒマシ油以外のヒマシ油を含んでいてもよい。
【0016】
ドリンク用原液中の成分(2)の合計含有量は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点からから、通常1重量%以上であり、1.5重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、2.5重量%以上であることがさらに好ましく、3重量%以上であることが特に好ましく、また、通常30重量%以下であり、25重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく
、15重量%以下であることがさらに好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
【0017】
ドリンク用原液中における、上記の成分(1)の含有量に対する成分(2)の含有量の比率は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常0.03以上であり、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましく、また、通常3000000以下であり、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。
【0018】
成分(2)の平均HLB(Hydrophile-Lipophile Balance、親水性親油性バランス)は、特に制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常1.0以上であり、5.0以上であることが好ましく、10.0以上であることがより好ましく、12.0以上であることがさらに好ましく、また、通常20.0以下であり、18.0以下であることが好ましく、17.0以下であることがより好ましく、16.0以下であることがさらに好ましい。
【0019】
[ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル]
ドリンク用原液は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる1種以上の成分(以下、成分(3)とも称する。)を含むが、より安定化させる観点からポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが含まれることがより好ましい。
【0020】
ドリンク用原液中の成分(3)の合計含有量は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常1重量%以上であり、1.5重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、2.5重量%以上であることがさらに好ましく、5重量%以上であることが特に好ましく、また、通常40重量%以下であり、35重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、25重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
ドリンク用原液中における、上記の成分(1)の含有量に対する成分(3)の含有量の比率は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常0.03以上であり、0.0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましく、また、通常4000000以下であり、1000000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、20000以下であることがさらに好ましい。
【0022】
ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸の種類は、特段制限されず、味および乳化安定性のバランスの観点から、ステアリン酸、パルミチン酸、およびエルカ酸が好ましい。
【0023】
成分(3)の平均HLBは、特に制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常0.01以上であり、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましく、また、通常20.0以下であり、19.5以下であることが好ましく、19.0以下であることがより好ましく、18.0以下であることがさらに好ましい。
【0024】
[多価アルコール]
ドリンク用原液は、多価アルコール(以下、成分(4)とも称する。)を含むが、その種類は特段制限されず、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレグリコール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等が挙げられ、特に水溶性化合物の可溶化量を増大させる効果が高いという観点からグリセリンが好ましい。
【0025】
ドリンク用原液中の成分(4)の合計含有量は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常30重量%以上であり、35重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、45重量%以上であることがさらに好ましく、50重量%以上であることが特に好ましく、また、通常80重量%以下であり、75重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、65重量%以下であることがさらに好ましく、60重量%以下であることが特に好ましい。
【0026】
ドリンク用原液中における、上記の成分(1)の含有量に対する成分(4)の含有量の比率は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常1以上であり、1.250以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、また、通常80000000以下であり、5000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、60000以下であることがさらに好ましい。
【0027】
ドリンク用原液における上記の成分(1)~(4)の含有量の比率は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、成分(1):成分(2):成分(3):成分(4)で、通常0.00001~30:1~30:1~40:30~80であり、0.00005~27.5:1.5~25:1.5~35:35~75であることが好ましく、0.0001~25:2~20:2~30:40~70であることがより好ましく、0.001~20:3~10:3~20:50~60であることがさらに好ましい。
【0028】
[脂溶性物質]
ドリンク用原液は、さらに脂溶性物質(以下、成分(5)とも称する。)を含んでいてもよく、例えば、脂溶性ビタミン、特にビタミンE類(例えば、d-α-トコフェロール)、ビタミンA類、β-カロチン、ビタミンD類及び/又はビタミンK類等の脂溶性ビタミン、中鎖脂肪酸およびその誘導体(例えば中鎖脂肪酸トリグリセリド)が挙げられ、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、特に、d-α-トコフェロール、および中鎖脂肪酸トリグリセリドが好ましい。
【0029】
ドリンク用原液中の成分(5)の合計含有量は、特段制限されないが、通常0.005重量%以上であり、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましく、1重量%以上であることが特に好ましく、また、通常40重量%以下であり、35重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、25重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることが特に好ましい。
【0030】
ドリンク用原液中における、上記の成分(1)の含有量に対する成分(5)の含有量の比率は、特段制限されないが、水溶性ビタミンの安定性を確保する観点から、通常0.0005以上であり、0.005以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましく、また、通常4000以下であり、350
0以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることがさらに好ましい。
【0031】
水溶性ビタミンドリンク用原液中の上記の成分(1)~(4)の合計含有量は、通常60重量%以上であり、60.5重量%以上であることが好ましく、61重量%以上であることがより好ましく、61.5重量%以上であることがさらに好ましく、62重量%以上であることが特に好ましく、75重量%以上であってもよく、また、通常95重量%以下であり、94.5重量%以下であることが好ましく、94重量%以下であることがより好ましく、93.5重量%以下であることがさらに好ましく、93重量%以下であることが特に好ましい。
水溶性ビタミンドリンク用原液中の上記の成分(1)~(5)の合計含有量は、通常60重量%以上であり、60.5重量%以上であることが好ましく、61重量%以上であることがより好ましく、61.5重量%以上であることがさらに好ましく、62重量%以上であることが特に好ましく、75重量%以上であってもよく、また、通常95重量%以下であり、94.5重量%以下であることが好ましく、94重量%以下であることがより好ましく、93.5重量%以下であることがさらに好ましく、93重量%以下であることが特に好ましい。
【0032】
[その他の成分]
ドリンク用原液は、上記の成分(1)~(5)以外の成分を含んでいてもよく、例えば、水、pH調整剤、生薬等が挙げられる。
【0033】
ドリンク用原液は、水等の上記の成分以外にも、緩衝液及び水性溶剤も含まれ得るが、水、緩衝液、及び水性溶剤からなる群から選ばれる1種以上の合計含有量は、通常25重量%未満であり、24.75重量%以下であってもよく、24.5重量%以下であってもよく、24.25重量%以下であってもよく、また、0重量%であってもよいが、通常5重量%以上である。
上記の水の態様は特段制限されず、例えば脱塩水等の精製水が挙げられる。
上記の緩衝液は特段制限されない。
上記の水性溶剤は、上記の成分(1)~(4)を溶解させることができる水溶性の溶剤であれば特段制限されず、例えば、アルコール等が挙げられる。
【0034】
[水溶性ビタミンドリンク用原液の特性]
(粒度分布)
ドリンク用原液の粒度分布の測定から得られる平均粒子径は、特段制限されないが、保存安定性の観点から、通常0.001μm以上であり、0.002μm以上であることが好ましく、0.003μm以上であることがより好ましく、0.005μm以上であることがさらに好ましく、また、通常20μm以下であり、15μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。この平均粒子径は、例えば、脂溶性物質の含有量を増加させることにより増加させることができ、該含有量を減少させることにより減少させることができる。
上記の平均粒子径を求めるための粒度分布は、粒度分布計(例えば、株式会社堀場製作所製 HOLIBA LA-950 V2)を用いて測定することができる。
【0035】
[水溶性ビタミンドリンク用原液の製造方法]
水溶性ビタミンドリンク用原液の製造方法は、上述の各成分を混合させることができれば特段制限されず、例えば、上述の各成分を配合する配合工程、該配合工程で準備した原料を混合する混合工程を含む方法とすることができ、さらに該混合工程で得られた混合物を高圧処理する高圧処理工程を含む方法とすることができる。
配合工程における各成分の配合温度は、通常60~90℃であり、70~85℃である
ことが好ましい。
混合工程における各成分の混合は、例えば、プロペラ式、アンカー式等の単純攪拌機、及び/又はホモジナイザー、ホモミキサー等の高剪断乳化機等を用いて行うことができる。また、混合工程は、全ての原料を一括で混合してもよいが、原料ごとに分けて別に混合した混合物を最後に併せて混合してもよい。また、ビタミンB12は、分散性を向上させるため、脱塩水等の水に分散させてから他の原料と混合することが好ましい。
高圧処理工程における混合物の高圧処理は、例えば、高圧ホモジナイザー、高速加圧乳化機等を用いて行うことができ、高圧処理時の液剤温度は、特段制限されないが、通常は常温~約90℃であり、好ましくは60~80℃である。また、高圧処理時の圧力は特に限定されないが、通常は100~5000kg/cm(9807~490350kPa)であり、好ましくは150~2000kg/cm(19614~196140kPa)であり、さらに好ましくは200~1800kg/cm(29421~17656kPa)である。
【0036】
<水溶性ビタミンドリンク>
本発明の別の実施形態である水溶性ビタミンドリンク(以下、単に「水溶性ビタミンドリンク」とも称する。)は、上述の水溶性ビタミンドリンク用原液を水、緩衝液、及び水性溶剤からなる群から選ばれる1種以上の液体で希釈してなる液体、つまり、水溶性ビタミンドリンク用原液と、水、緩衝液、及び水性溶剤からなる群から選ばれる1種以上と、を含む液体である。
水溶性ビタミン、並びに水、緩衝液、及び水性溶剤からなる群から選ばれる1種以上は、酸性(pHが7未満)、中性(pHが7)、塩基性(pHが7超)のいずれであってもよいが、香味の観点から、酸性又は中性であることが好ましく、酸性であることがより好ましい。
水溶性ビタミンドリンク中の上記の成分(1)~(4)の合計含有量は、通常0.0000001重量%以上であり、0.000001重量%以上であることが好ましく、0.0000025重量%以上であることがより好ましく、0.000005重量%以上であることがさらに好ましく、0.00001重量%以上であることが特に好ましく、また、通常75重量%未満又は60重量%未満であり、40重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましく、25重量%以下であることが特に好ましく、20重量%以下であることが最も好ましい。
水溶性ビタミンドリンク中の上記の成分(1)~(5)の合計含有量は、通常0.0000001重量%以上であり、0.000001重量%以上であることが好ましく、0.0000025重量%以上であることがより好ましく、0.000005重量%以上であることがさらに好ましく、0.00001重量%以上であることが特に好ましく、また、通常75重量%未満又は60重量%未満であり、40重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましく、25重量%以下であることが特に好ましく、20重量%以下であることが最も好ましい。
水溶性ビタミンドリンク中の水、緩衝液、及び水性溶剤からなる群から選ばれる1種以上の合計含有量は、99.999999重量%未満であれば特段制限されないが、99.9999975重量%以下であってもよく、99.999995重量%以下であってもよく、99.99999重量%以下であってもよく、また、通常25重量%以上である。
【0037】
(pH)
水溶性ビタミンドリンクは、ドリンク用原液と同様に、酸性、中性、塩基性のいずれの条件でも使用し得るが、香味の観点から、酸性であることが好ましく、具体的には、20℃における水溶性ビタミンドリンクのpHは、通常1以上であり、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、2.5以上であってもよく、3以上であ
ってもよく、また、通常7未満であり、6.5以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5.5以下であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましく、4.5以下であることがさらに好ましく、3.5以下であることが最も好ましい。
上記のpHの制御方法及び測定方法は、ドリンク用原液のpHの制御方法及び測定方法を同様に適用することができる。
【0038】
水溶性ビタミンドリンクの製造方法は特段制限されず、上述した水溶性ビタミンドリンク用原液と、精製水、緩衝液、及び水性溶剤からなる群から選ばれる1種以上の液体とを混合することにより製造することができる。
上記の混合を行う方法は、ドリンク用原液における混合方法を同様に適用することができる。
【実施例0039】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0040】
<原料>
本実施例における各成分に係る原料は、以下のものを用いた。
[成分(1)]
・シアノコバラミン;三菱ケミカルフーズ製のB-CBL5、B-CBL12
[成分(2)]
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HLB値:14);日光ケミカルズ製のHCO-60イヤク
[成分(3)]
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB値:2);三菱ケミカルフーズ製のER-290
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB値:16);三菱ケミカルフーズ製のS-1670
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB値:15);三菱ケミカルフーズ製のP-1570
・ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB値:12);三菱ケミカルフーズ製のDecaglyn1-SV
[成分(4)]
・グリセリン;キシダ化学製のグリセリン(食添)
[成分(5)]
・酢酸d-α-トコフェロール;タマ生化学製のEMA1360
・中鎖脂肪酸トリグリセリド;日清オイリオ製のODO-H
【0041】
<実施例1>
遮光下において、表1の水相1’に示した配合量で、シアノコバラミン(ビタミンB12)の粉末を脱塩水に分散、70℃で溶解させてシアノコバラミン水溶液を得た。
次いで、表1の油相’に示した各成分を、湯浴で70℃に加熱し、マグネット撹拌子で攪拌混合しながら、上記のシアノコバラミン水溶液をゆっくり滴下し、乳化物1を得た。その後、得られた乳化物1に対してホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製 IKA ULTRA TURRAX T25 Basic、以下のホモジナイザーも同様)を使用して、24,000rpm×10分(3セット)で処理を行い、乳化物2を得た。
ここで、表1の水相2に示した各成分を、湯浴で75℃に加熱し、マグネット撹拌子で攪拌混合しながら、上記の乳化物2の一部(この乳化物2の一部における各成分の含有量を表1の水相1及び油相に示す。)を混合させ、乳化物3を得た。その後、得られた乳化剤3に対してホモジナイザーを使用して、10,000rpm×3分で処理を行った後に室温まで放冷し、赤色透明の水溶性ビタミンドリンク用原液を得た。
なお、本実施例において、脱塩水は、本発明者が自ら調製したものを用いた。
【0042】
【表1】
【0043】
<実施例2>
遮光下において、シアノコバラミン以外の表2の水相に示した各成分を、湯浴で75℃に加熱し、マグネット撹拌子で攪拌混合しながら、シアノコバラミン粉末を添加し、その後、表2に示した油相に示した各成分の混合物を添加し、乳化物を得た。その後、得られた乳化物に対してホモジナイザーを使用して、10,000rpm×3分で処理を行った後に室温まで放冷し、赤色透明の水溶性ビタミンドリンク用原液を得た。
【0044】
【表2】
【0045】
<実施例3>
遮光下において、表3の油相に示した各成分を、湯浴で70℃に加熱し、マグネット撹拌子で攪拌混合し、油液を得た。この油液では、シアノコバラミン粉末は、油液中で分散していたが、溶解はしていなかった。次いで、表3の水相に示した各成分を、湯浴で75℃に加熱し、マグネット撹拌子で攪拌混合しながら、上記の油液を添加し、乳化物を得た。その後、得られた乳化剤に対してホモジナイザーを使用して、10,000rpm×3分で処理を行った後に室温まで放冷し、赤色透明の水溶性ビタミンドリンク用原液を得た。
【0046】
【表3】
【0047】
<実施例4>
表4に示した配合に従い、実施例1と同様の方法で水溶性ビタミンドリンク用原液を得た。
【0048】
【表4】
【0049】
<実施例5>
表5に示した配合に従い、かつ、乳化物3に対して行うホモジナイザーの高圧処理の条件を、10,000rpm×3分から、10,000rpm×5分に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水溶性ビタミンドリンク用原液を得た。
【0050】
【表5】
【0051】
<粒子径>
水溶性ビタミンドリンク用原液の粒度分布を、粒度分布計(株式会社堀場製作所製 HOLIBA LA-950 V2)を用いて測定した(測定に際してフローセルを使用した)。この測定から得られた粒子のメジアン径及び平均粒子径を表6に示す。
表6から、実施例1、3、4、及び5の水溶性ビタミンドリンク用原液の粒子径がサブミクロンオーダーであることが分かった。
【0052】
【表6】
【0053】
<紫外可視吸光度測定>
水溶性ビタミンドリンク用原液の紫外可視吸光度を、分光光度計(島津製作所製 UV-1800)を用いて、下記の測定条件で測定した(測定に際して石英セルを使用した)。また
、データ取込ソフトとして、島津製作所製のUV Prove2.31を使用した。
遮光下で、実施例1、2、3、及び4の水溶性ビタミンドリンク用原液について、それぞれ1gを脱塩水及びpH3.0のクエン酸緩衝液で希釈して、200gの希釈液を調製した。また、遮光下で、脱塩水は40℃で、クエン酸緩衝液は室温と40℃で保存し、経時的に測定を実施した。この際、後述するpH測定も併せて実施した。これらの希釈液は、上述の水溶性ビタミンドリンクに相当する。
また、比較試料として、水溶性ビタミンドリンク用原液の希釈液と同濃度になるように、シアノコバラミン粉末を脱塩水及びpH3.0のクエン酸緩衝液で希釈して調製したシアノコバラミン希釈液を用いて測定を行った。シアノコバラミンは波長277~279nm、360~362nm、及び548~552nmに吸収の極大を示す。これらのうち、360~362nm及び548~552nmの吸収は、それぞれソーレ帯及びQ帯と呼ばれており、コリン環の吸収に基づく。コリン環の配位子や側鎖のアミドの変化が起こると電子密度が変化するため、これらの吸収帯の吸光度も変化すると考えられる。そこで、360~362nmの吸収極大が最も大きいこと、EMA-10Kの吸収波長も考慮し、361nmの吸光度について初期値と比較することで、シアノコバラミンの残存率を算出した(第十七改正日本薬局シアノコバラミンの定量法を参考)。
シアノコバラミンの脱塩水希釈液、及び実施例1の水溶性ビタミンドリンク用原液の脱塩水希釈液を用いた紫外可視吸光度測定の結果を、それぞれ図1(a)及び(b)に示し、また、シアノコバラミン、及び実施例1、2、3、4の水溶性ビタミンドリンク用原液の脱塩水希釈液及びクエン酸緩衝液希釈液のシアノコバラミン残存率の結果を表7及び8に示す。表7は、40℃で保存した場合の評価結果であり、表8は、室温で保存した場合の評価結果である。
【0054】
<pH測定>
上記の紫外可視吸光度測定で用いた各希釈液の20℃におけるpHを、pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製 TOA HM-40V pH METER)を用いて測定した。測定結果を
表7及び8に示す。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
図1、並びに表7及び8から、pH3.0、40℃6か月保存後までの希釈液は全て均一透明であり、シアノコバラミン水溶液と比較してシアノコバラミンの分解率が1~4%程度であり、分解が有意に抑制されることが分かった。
【0058】
<目視観察>
遮光下で、実施例1、2、3、及び4の水溶性ビタミンドリンク用原液について、これらの原液と、それぞれの原液の濃度が1重量%、及び5重量%となるように脱塩水を加え
て脱塩水希釈液を調製して得られた希釈液を用いて、室温保存及び40℃保存でそれぞれ6ヶ月間の目視観察を行った。原液調整直後の各原液の写真を図2に示す。
なお目視観察の結果、実施例1、4、及び5における室温保存では、6ヶ月保持後も分離が起こらず均一透明であったが、原液を40℃保存では、いずれも1ヶ月保存後から二層に分離する傾向が確認された。また、実施例2及び3における原液の40℃保存では、6ヶ月保存後も分離が起こらず均一透明であり、安定な状態であった。
【0059】
以上より、本発明によれば、酸性条件でも水溶性ビタミンを安定して保持することができるビタミンドリンク用原液を提供することができる。
図1
図2