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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162849
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20221018BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/235 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q11/00
A61K8/37
A61K8/35
A61K47/08
A61K47/10
A61K31/05
A61K31/235
A61P1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067881
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 忠杜
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076BB22
4C076CC31
4C076DD22
4C076DD36
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD57
4C076DD60
4C076EE23
4C076FF67
4C083AB172
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC432
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC481
4C083AC482
4C083AC692
4C083AC782
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE38
4C206AA02
4C206CA17
4C206DB17
4C206DB43
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA77
4C206NA06
4C206ZA67
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、フェノール化合物を含みながらも、口腔内に適用した際に知覚される刺激が抑制されている口腔用組成物を提供することである。
【解決手段】口腔用組成物において、フェノール化合物と共にモノテルペンを含有させることにより、フェノール化合物に起因する刺激を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物、及びモノテルペンを含有する、口腔用組成物。
【請求項2】
前記フェノール化合物が、チモール及び/又はパラオキシ安息香酸エステルである、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記モノテルペンが、カンフル及び/又はメントールである、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記フェノール化合物の総量1重量部当たり、前記モノテルペンが0.01~100重量部含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
前記フェノール化合物の含有量が0.001~5重量%である、請求項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記モノテルペン化合物の含有量が0.001~5重量%である、請求項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項7】
フェノール化合物を含む口腔用組成物の刺激を抑制する方法であって、
口腔用組成物に、フェノール化合物及びモノテルペンを配合する、刺激抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール化合物を含み、口腔内に適用した際に知覚される刺激が抑制されている口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チモール(2-イソプロピル-5-メチルフェノール)は、バイオフィルムに浸透して殺菌作用を示すことが知られており、歯磨剤や洗口剤等の口腔用組成物に広く使用されている。また、パラオキシ安息香酸エステルは、防腐剤として口腔用組成物に広く使用されている。従来、チモールやパラオキシ安息香酸エステル等のフェノール化合物を含む口腔用組成物の製剤技術について種々報告されている。例えば、特許文献1には、チモールやパラオキシ安息香酸エステル等のフェノール系殺菌剤と、アニオン性界面活性剤と、非イオン性界面活性剤とを含有し、アニオン性界面活性剤に対する非イオン性界面活性剤の重量比が0.1~3であり、且つ、組成物中の水分含量が40重量%以下である口腔用組成物は、フェノール系殺菌剤の容器吸着を防止し、フェノール系殺菌剤の経日安定性が向上することが記載されている。
【0003】
一方、チモールやパラオキシ安息香酸エステル等のフェノール化合物を含む口腔用組成物では、口腔内に適用した際に刺激が生じ、使用感を低下させるという欠点がある。従来、フェノール化合物を含む口腔用組成物の刺激性を低減する手法としては、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、エリスリトール等の甘味料を味覚マスキング剤として配合する方法が知られている。しかしながら、このような味覚マスキング剤を配合した口腔用組成物では、甘みが呈され、必ずしも満足できる使用感を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-322554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フェノール化合物を含みながらも、口腔内に適用した際に知覚される刺激が抑制されている口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、口腔用組成物において、フェノール化合物と共にモノテルペンを含有させることにより、フェノール化合物に起因する刺激を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
項1. フェノール化合物、及びモノテルペンを含有する、口腔用組成物。
項2. 前記フェノール化合物が、チモール及び/又はパラオキシ安息香酸エステルである、項1に記載の口腔用組成物。
項3. 前記モノテルペンが、カンフル及び/又はメントールである、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4. 前記フェノール化合物の総量1重量部当たり、前記モノテルペンが0.01~100重量部含まれる、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5. 前記フェノール化合物の含有量が0.001~5重量%である、項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項6. 前記モノテルペン化合物の含有量が0.001~5重量%である、項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項7. フェノール化合物を含む口腔用組成物の刺激を抑制する方法であって、
口腔用組成物に、フェノール化合物及びモノテルペンを配合する、刺激抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、口腔用組成物にフェノール化合物と共にモノテルペンを含有させることにより、口腔内に適用した際にフェノール化合物の刺激を抑制でき、優れた使用感を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、フェノール化合物、及び並びにモノテルペンを含有することを特徴とする。以下、本発明の口腔用組成物について詳述する。
【0010】
[フェノール化合物]
本発明の口腔用組成物は、フェノール化合物を含有する。本明細書において、フェノール化合物とは、フェノール骨格を有する化合物の総称である。
【0011】
本発明で使用されるフェノール化合物の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、チモール、パラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0012】
パラオキシ安息香酸エステルとしては、具体的には、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
【0013】
これらのフェノール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
これらのフェノール化合物の中でも、好ましくはチモール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチルが挙げられる。
【0015】
本発明の口腔用組成物におけるフェノール化合物の含有量については、使用するフェノール化合物の種類、口腔用組成物の形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、フェノール化合物の総量で0.001~5重量%が挙げられる。フェノール化合物の刺激をより一層効果的に抑制するという観点から、本発明の口腔用組成物におけるフェノール化合物が総量で、好ましくは0.005~2重量%、より好ましく0.01~1重量%、更に好ましくは0.05~0.3重量%が挙げられる。
【0016】
[モノテルペン]
本発明の口腔用組成物は、フェノール化合物に加えて、モノテルペンを含有する。フェノール化合物とモノテルペンを共存させることにより、フェノール化合物の刺激を抑制することが可能になる。
【0017】
モノテルペンとは、分子内にイソプレン単位が2個含まれる構造を有し、清涼化作用等を有する公知の成分である。
【0018】
本発明で使用されるモノテルペンの種類については、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、メントール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、シネオール、テルピネオール等のアルコール系モノテルペン;シトラール、シトロネラール、ペリルアルデヒド、サフラナール等のアルデヒド系モノテルペン;カンフル、メントン、カルボメントン、ヨノン等のケトン系モノテルペン等が挙げられる。これらのモノテルペンは、光学異性体が存在する場合には、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。これらのモノテルペンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
また、本発明の口腔用組成物において、モノテルペンとして、モノテルペンを含む精油の状態で使用してもよい。モノテルペンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。なお、本明細書におけるモノテルペンの含有量や比率に関する記載は、モノテルペンを含む精油を使用する場合は、当該精油に含まれるモノテルペン量に換算した値である。
【0020】
これらのモノテルペンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらのモノテルペンの中でも、フェノール化合物の刺激をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはケトン系モノテルペン、アルコール系モノテルペン、更より好ましくはカンフル、メントールが挙げられる。
【0022】
本発明の口腔用組成物において、フェノール化合物に対すモノテルペンの比率については、使用するフェノール化合物及びモノテルペンの種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、フェノール化合物の総量1重量部当たり、モノテルペンが総量で0.01~100重量部が挙げられる。フェノール化合物の刺激をより一層効果的に抑制するという観点から、フェノール化合物の総量1重量部当たり、モノテルペンが総量で、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは0.5~20重量部、更に好ましくは1~10重量部が挙げられる。
【0023】
本発明の口腔用組成物におけるモノテルペンの含有量としては、例えば、0.001~5重量%が挙げられる。フェノール化合物の刺激をより一層効果的に抑制するという観点から、本発明の口腔用組成物におけるモノテルペンの含有量が、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1重量%が挙げられる。
【0024】
[1価低級アルコール]
本発明の口腔用組成物は、更に1価低級アルコールを含んでいてもよい。1価低級アルコールとしては、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、炭素数2~5の1価アルコール、具体的には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらの1価低級アルコールの中でも、好ましくはエタノールが挙げられる。これらの1価低級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の口腔用組成物に1価低級アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、更に好ましくは0.5~3重量%が挙げられる。
【0026】
[多価アルコール]
本発明の口腔用組成物は、更に多価アルコールを含んでいてもよい。多価アルコールについては、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、好ましくはグリセリンが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明の口腔用組成物に多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1~50重量%、好ましくは1~40重量%、更に好ましくは10~35重量%が挙げられる。
【0028】
[水]
本発明の口腔用組成物は、基剤として水が含まれていることが好ましい。本発明の口腔用組成物における水の含有量については、添加する成分を除いた残部であればよく、口腔用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、10~99.9重量%、好ましくは15~99重量%、より好ましくは35~98重量%、更に好ましくは40~88重量%が挙げられる。
【0029】
[その他の含有成分]
本発明の口腔用組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物の形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、局所麻酔剤、血行促進剤、増粘剤、湿潤剤、甘味剤、色素、消臭剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0030】
[剤型・形態]
本発明の口腔用組成物の剤型については、口腔内への適用が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられる。
【0031】
本発明の口腔用組成物の形態については、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液が挙げられる。
【0032】
2.刺激抑制方法
本発明は、更に、フェノール化合物を含む口腔用組成物の刺激を抑制する方法であって、口腔用組成物に、フェノール化合物及びモノテルペンを配合する、刺激抑制方法を提供する。
【0033】
本発明の刺激抑制において、フェノール化合物の種類や配合量、モノテルペンの種類や配合量、配合できる他の成分やその配合量、pH、口腔剤型、形態等については、前記「1.口腔用組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例0034】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
試験例
表1及び2に示す組成の液剤を常法に従って調製した。味覚試験に関して訓練されている評価者の口に、得られた液剤500μlを含ませ、下記の判定基準に従って、刺激性を評価した。
<刺激性の判定基準>
6:舌にピリピリとした刺激を全く感じない。
5:舌にピリピリとした刺激を殆ど感じない。
4:口に含ませてから10秒程度経過した以降に、舌にピリピリとした刺激を若干感じる。
3:口に含ませてから5秒程度経過した時点で、舌にピリピリとした刺激を感じる。
2:口に含ませてから2~3秒程度経過した時点で、舌にピリピリとした刺激を感じる。
1:口に含ませた直後から、舌にピリピリとした刺激を感じる。
【0036】
結果を表1及び2に示す。カンフル又はメントール非存在下でチモール又はパラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル又はパラオキシ安息香酸エチル)を含む場合には、刺激が認められた(比較例1~5)。これに対して、チモール又はパラオキシ安息香酸エステルと共にカンフル又はメントールを含む場合には、刺激を抑制できていた(実施例1~12)。とりわけ、チモール又はパラオキシ安息香酸エステル1重量部当たり、カンフル又はメントールを1重量部以上含む場合には、刺激抑制効果が顕著に認められた(実施例2~6及び8~12)。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
製造例
表3に示す組成の練歯磨剤、及び表4に示す組成の洗口液を調製した。得られた練歯磨剤及び洗口液を使用して、刺激性を確認したところ、いずれも、フェノール化合物に起因する刺激が低減されていた。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】