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特開2022-162915シリコンウェーハの洗浄方法及び自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法
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  • 特開-シリコンウェーハの洗浄方法及び自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162915
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの洗浄方法及び自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221018BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20221018BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
C30B29/06 B
C30B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067983
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健作
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【テーマコード(参考)】
4G077
5F157
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077FJ01
4G077HA12
5F157AA82
5F157BD33
5F157BE12
5F157BE23
5F157BE33
5F157BE44
5F157BE46
5F157CB32
5F157CE05
5F157CE83
5F157DB03
5F157DB37
5F157DB54
(57)【要約】
【課題】
パーティクル品質を良好に保ちつつ、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の膜厚を所定の範囲内に再現性良くかつ精度高く制御できるシリコンウェーハの洗浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
シリコンウェーハの洗浄方法であって、シリコンウェーハをフッ酸により洗浄する第1洗浄工程と、前記フッ酸により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第2洗浄工程と、前記オゾン水により洗浄された前記シリコンウェーハをSC1洗浄液により洗浄する第3洗浄工程と、前記SC1洗浄液により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第4洗浄工程とを含むシリコンウェーハの洗浄方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの洗浄方法であって、
シリコンウェーハをフッ酸により洗浄する第1洗浄工程と、
前記フッ酸により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第2洗浄工程と、
前記オゾン水により洗浄された前記シリコンウェーハをSC1洗浄液により洗浄する第3洗浄工程と、
前記SC1洗浄液により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第4洗浄工程とを含むことを特徴するシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記第4洗浄工程の洗浄時間を調整することで前記シリコンウェーハの表面に形成される前記自然酸化膜の厚さを制御することを特徴する請求項1に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
予め、自然酸化膜が形成されたシリコンウェーハをオゾン水により洗浄する時間と、前記自然酸化膜が形成されたシリコンウェーハをオゾン水により洗浄することで増加する自然酸化膜厚さとの相関関係を求めておき、該相関関係に基づいて前記第4洗浄工程の洗浄時間を設定することを特徴とする請求項2に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記相関関係に基づいて、前記第2洗浄工程で前記シリコンウェーハの表面に形成された自然酸化膜の厚さと同等の自然酸化膜厚さとなるように前記第4洗浄工程の洗浄時間を設定することを特徴とする請求項3に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
前記第3洗浄工程後かつ前記第4洗浄工程より前にSC2洗浄液により前記シリコンウェーハを洗浄するSC2洗浄工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項6】
自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法であって、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシリコンウェーハの洗浄方法により自然酸化膜付きシリコンウェーハを製造することを特徴する自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの洗浄方法及び自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用の単結晶シリコンウェーハの製造工程において、その主表面は研磨工程において仕上げられる。さらに、シリコンウェーハ表面に研磨工程で付着した研磨剤と金属不純物を除去するために洗浄工程がある。この洗浄工程ではRCA洗浄と呼ばれる洗浄方法が用いられている。このRCA洗浄とは、SC1(Standard Cleaning 1)洗浄、SC2(Standard Cleaning 2)洗浄、DHF(Diluted Hydrofluoric Acid)洗浄を、目的に応じて組み合わせて行う洗浄方法である。
【0003】
SC1洗浄は、アンモニア水と過酸化水素水を任意の割合で混合し、アルカリ性の洗浄液によるシリコンウェーハ表面のエッチングによって付着パーティクルをリフトオフさせ、さらにシリコンウェーハとパーティクルの静電気的な反発を利用して、シリコンウェーハへの再付着を抑えながらパーティクルを除去する洗浄方法である。SC2洗浄は、塩酸と過酸化水素水を任意の割合で混合した洗浄液で、シリコンウェーハ表面の金属不純物を溶解除去する洗浄方法である。また、DHF洗浄は、希フッ酸によってシリコンウェーハ表面の自然酸化膜を除去する洗浄方法である。さらに、強い酸化力を有するオゾン水洗浄も使用される場合があり、シリコンウェーハ表面に付着している有機物の除去や、DHF洗浄後のシリコンウェーハ表面に自然酸化膜の形成を行っている。洗浄後のシリコンウェーハのパーティクル品質は重要であり、目的に応じてこれらの洗浄を組み合わせて行われている。
【0004】
半導体シリコンウェーハの表面には、MOS(Metal Oxide Semiconductor)キャパシタやトランジスタ等の半導体素子が形成される。これら半導体素子に形成されるゲート酸化膜等の絶縁膜は高い電界強度下で使用され、このような絶縁膜としては形成が簡便なシリコン酸化膜が良く用いられる。
【0005】
絶縁性が高い緻密なシリコン酸化膜は、シリコンウェーハを熱酸化することで作製されるが、一般的にパーティクル付着等の観点から出荷時のシリコンウェーハには洗浄で形成した自然酸化膜が存在する。このため、熱酸化は自然酸化膜が形成されたシリコンウェーハに対し処理されることが多い。この際、熱酸化膜の厚さは、熱酸化前の自然酸化膜の膜質(膜厚や構造)に影響されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-207923号公報
【特許文献2】特開2012-129409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体集積回路の微細化、多層化に伴って、素子を構成する絶縁膜を含めた各種膜についてより一層の薄膜化が要求されている。この薄膜化により、極薄の絶縁膜即ちシリコン酸化膜を、基板の面内あるいは基板間で均一にかつ再現性良く形成する必要がある。そのためには、シリコン酸化膜の品質に影響を与えるシリコンウェーハ出荷時の自然酸化膜の膜質、特に膜厚を制御することが求められる。一般的には、自然酸化膜が厚いと熱酸化膜の厚さも厚くなる。熱酸化膜を薄くしたい場合は自然酸化膜も薄い方が良く、熱酸化膜を厚くしたい場合は自然酸化膜も厚い方が良い。したがって、所定の範囲内に自然酸化膜の厚さを再現性良くかつ精度高く制御することが、近年特に求められている。
【0008】
特許文献1には、フッ酸による洗浄(単に、「DHF洗浄」、「HF洗浄」とも表記される)をしていないシリコンウェーハをSC1洗浄した後、酸化力を有する洗浄液(オゾン水又は過酸化水素水)で洗浄することで、自然酸化膜厚さを厚くする洗浄方法が記載されている。しかしながら、特許文献1ではDHF洗浄をしていないため、SC1洗浄で除去されなかったパーティクルがウェーハ表面に残留し、パーティクル品質が悪化する場合があった。また、実施例に記載の全ての自然酸化膜の膜厚が1.0nmであり、自然酸化膜の膜厚を所定の範囲内に制御できているとは言えない。
【0009】
特許文献2には、SC1洗浄した後、SC1洗浄で除去されなかったパーティクルをHF洗浄で除去し、その後オゾン水洗浄を行うことでパーティクルの再付着を抑制し、かつウェーハの表面粗さを低減させる洗浄方法が記載されている。しかしながら、ベア面に対しオゾン水洗浄を行うことで酸化が急激に進行するため、再現性良く均一な厚さの酸化膜を形成することはできるが、急激な酸化反応であるため自然酸化膜の厚さを所定の範囲内において変化させて制御することは困難であった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、パーティクル品質を良好に保ちつつ、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の膜厚を所定の範囲内に再現性良くかつ精度高く制御できるシリコンウェーハの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、シリコンウェーハの洗浄方法であって、シリコンウェーハをフッ酸により洗浄する第1洗浄工程と、前記フッ酸により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第2洗浄工程と、前記オゾン水により洗浄された前記シリコンウェーハをSC1洗浄液により洗浄する第3洗浄工程と、前記SC1洗浄液により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第4洗浄工程とを含むシリコンウェーハの洗浄方法を提供する。
【0012】
このようなシリコンウェーハの洗浄方法であれば、フッ酸による洗浄(HF洗浄)とSC1洗浄の両方を行うことで、パーティクル品質を良好にできる。また、第4洗浄工程を行うことで自然酸化膜厚さも再現性良くかつ精度高く制御することができる洗浄方法となる。
【0013】
このとき、前記第4洗浄工程の洗浄時間を調整することで前記シリコンウェーハの表面に形成される前記自然酸化膜の厚さを制御するシリコンウェーハの洗浄方法とすることができる。
【0014】
これにより、簡便に、再現性がより良くかつより精度高くシリコンウェーハの表面に形成される自然酸化膜の厚さを制御することができる。
【0015】
このとき、予め、自然酸化膜が形成されたシリコンウェーハをオゾン水により洗浄する時間と、前記自然酸化膜が形成されたシリコンウェーハをオゾン水により洗浄することで増加する自然酸化膜厚さとの相関関係を求めておき、該相関関係に基づいて前記第4洗浄工程の洗浄時間を設定するシリコンウェーハの洗浄方法とすることができる。
【0016】
このような相関関係を用いることで、より簡便に洗浄時間を設定することができる。
【0017】
このとき、前記相関関係に基づいて、前記第2洗浄工程で前記シリコンウェーハの表面に形成された自然酸化膜の厚さと同等の自然酸化膜厚さとなるように前記第4洗浄工程の洗浄時間を設定するシリコンウェーハの洗浄方法とすることができる。
【0018】
これにより、SC1洗浄によるエッチングで薄くなった自然酸化膜厚を、SC1洗浄前と同等の厚さとすることができる。
【0019】
このとき、前記第3洗浄工程後かつ前記第4洗浄工程より前にSC2洗浄液により前記シリコンウェーハを洗浄するSC2洗浄工程を含むシリコンウェーハの洗浄方法とすることができる。
【0020】
これにより、シリコンウェーハ表面の金属不純物を溶解除去して、シリコンウェーハの品質をより良好にすることができる。
【0021】
このとき、自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法であって、上記シリコンウェーハの洗浄方法により自然酸化膜付きシリコンウェーハを製造する自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法とすることができる。
【0022】
これにより、パーティクル品質が高く、再現性良くかつ精度高く自然酸化膜厚さを制御して、自然酸化膜付きシリコンウェーハを製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法によれば、HF洗浄とSC1洗浄の両方を行うことで、パーティクル品質を良好にできる。また、第4洗浄工程を行うことで自然酸化膜厚さを再現性良くかつ精度高く制御することができる洗浄方法となる。その結果、熱酸化膜を形成する場合においても熱酸化膜の膜厚の制御を容易に精度高く行うことが可能なシリコンウェーハを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るシリコンウェーハの洗浄方法の一例を示すフローチャートである。
図2】シリコンウェーハ表面に形成された自然酸化膜厚さの洗浄条件による違いを示す。
図3】熱酸化により形成された熱酸化膜厚さの洗浄条件による違いを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
上述のように、パーティクル品質を良好に保ちつつ、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の膜厚を所望の範囲内に再現性良くかつ精度高く制御できるシリコンウェーハの洗浄方法が求められていた。
【0027】
本発明者らは上記課題を解決するために、パーティクル品質向上のためのHF洗浄を行ったシリコンウェーハについて、自然酸化膜の膜厚を所定の範囲内に変動させ精度高く制御できないか、鋭意検討した。
【0028】
その結果、本発明者らは、シリコンウェーハの洗浄方法であって、シリコンウェーハをフッ酸により洗浄する第1洗浄工程と、前記フッ酸により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第2洗浄工程と、前記オゾン水により洗浄された前記シリコンウェーハをSC1洗浄液により洗浄する第3洗浄工程と、前記SC1洗浄液により洗浄された前記シリコンウェーハをオゾン水により洗浄する第4洗浄工程とを含むシリコンウェーハの洗浄方法により、HF洗浄とSC1洗浄の両方を行うことで、パーティクル品質を良好にでき、また、第4洗浄工程を行うことで自然酸化膜厚さも再現性良くかつ精度高く制御することができる洗浄方法となることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
以下、図面を参照して説明する。
【0030】
[シリコンウェーハの洗浄方法]
図1は、本発明に係るシリコンウェーハの洗浄方法の一例を示すフローチャートである。本発明において洗浄するシリコンウェーハとしては特に限定されず、研磨後のシリコンウェーハ、エピタキシャルウェーハ、SOIウェーハなどが挙げられる。特に、研磨に用いられた砥粒などが付着した研磨後のシリコンウェーハ等の洗浄に好適に適用できる。
【0031】
(第1洗浄工程)
まず、図1のS1のように、シリコンウェーハをフッ酸により洗浄する(HF洗浄)。用いるフッ酸のHFの濃度は0.3~3.0重量%、温度は10~30℃、洗浄時間は60~360秒とすることが好ましい。これにより、例えば研磨工程で残留した砥粒、自然酸化膜と強く結びついたパーティクルや自然酸化膜中の金属を、自然酸化膜と共に除去することができる。この第1洗浄工程(S1)を実施しないと、後述する第3洗浄工程(S3)でのSC1洗浄の負荷が大きくなり、例えば自然酸化膜と強く密着したパーティクルのようなSC1洗浄で除去されにくいパーティクルが残留してしまう。以下、「第1洗浄工程」を単に「S1」ということもある。
【0032】
(第2洗浄工程)
次に、S2のようにオゾン水により洗浄を行う。用いるオゾン水のオゾンの濃度は3~25ppm、温度は10~30℃、洗浄時間は60~360秒とすることが好ましい。S1のHF洗浄後は、シリコンウェーハ表面が疎水面となりパーティクルが付着しやすい状態となってしまう。そこで、オゾン水洗浄により短時間でシリコンウェーハ表面に自然酸化膜を形成して親水面にすることで、パーティクルの再付着も抑制できる。以下、「第2洗浄工程」を単に「S2」ということもある。
【0033】
なお、S2の工程のオゾン水洗浄の時間を変えることで自然酸化膜厚さを所望の範囲内に変動させることは難しい。表面に酸化膜が存在する場合はシリコンの酸化がシリコンと酸化膜の界面で進行するため、酸化種は酸化膜中を拡散する必要があり、ベア面(むき出しのシリコン面)の酸化の場合よりも酸化の進行が遅れる。これに対してベア面の場合は、酸化膜が存在しないため酸化が急激に進行する。急激な反応を制御することは再現性の観点からも実用性に欠ける。反応性を下げるために、オゾン水濃度を下げることもできるが、その場合酸化反応が面内均一に起こらず、酸化膜の面内ムラが大きくなってしまう。本発明者らが検討した結果、ベア面に対してオゾン水洗浄を行うことで酸化膜厚さを所定の範囲内に変化させるのは困難であった。したがって、後述のようにSC1洗浄(S3)後に再度オゾン水により洗浄(S4)することで、自然酸化膜の膜厚を再現性良くかつ精度高く制御できることを見出した。
【0034】
(第3洗浄工程)
次に、S3のようにSC1洗浄液による洗浄を行う。SC1洗浄液の混合比(体積比)は例えばアンモニア水(28重量%):過酸化水素水(30重量%):水を1:1:10、温度は30~80℃、洗浄時間は90~360秒とすることが好ましい。なお、パーティクル品質が十分確保できる範囲内で、SC1のエッチング量を少なくした方が良い。以下、「第3洗浄工程」を単に「S3」ということもある。
【0035】
(SC2洗浄工程)
また、S3のSC1洗浄後、かつ、後述のS4のオゾン水洗浄の前に、SC2洗浄液による洗浄を行うこともできる。S1のHF洗浄で金属不純物はある程度除去されているが、さらに金属汚染濃度を低減させるにはSC2洗浄が有効であり、必要に応じて行うことができる。
【0036】
(第4洗浄工程)
次に、S4のように、S3でSC1洗浄液により洗浄され、好ましくはさらにSC2洗浄されたシリコンウェーハをオゾン水により洗浄する。このオゾン水洗浄により自然酸化膜の膜厚が増加する。以下、「第4洗浄工程」を単に「S4」ということもある。S4のオゾン水洗浄では、シリコンウェーハの表面には既に自然酸化膜が形成されている。そのため、ベアな表面をオゾン水洗浄で酸化する場合に比べて酸化の進行が緩やかになり、自然酸化膜の膜厚を再現性良くかつ高い精度で制御することが可能となる。
【0037】
S4のオゾン水洗浄では、特に洗浄時間を調整することでシリコンウェーハの表面に形成される自然酸化膜厚さを調整することが好ましい。洗浄時間の調整は最も簡便かつ制御性及び精度が高いためである。このとき、濃度と温度はS2と同等とすることができる。
【0038】
図2に、洗浄条件(洗浄工程)と形成される自然酸化膜の厚さの関係を示す。S1,S2洗浄後(S1→S2)のシリコンウェーハ、S1,S2,S3洗浄後(S1→S2→S3)のシリコンウェーハ、S1,S2,S3、S4洗浄後(S1→S2→S3→S4)であって、オゾン水洗浄を3分、12分、30分実施したシリコンウェーハの、それぞれの自然酸化膜厚さを示している。S1→S2で形成された酸化膜は、S3のSC1洗浄を行うことで膜厚が薄くなることがわかる。これはパーティクル品質を良好にするためのSC1洗浄(S3)で自然酸化膜がエッチングされるためである。その後S4洗浄を行うことで自然酸化膜の膜厚が厚くなること、しかも、自然酸化膜の膜厚はオゾン水洗浄の洗浄時間に依存し、洗浄時間が長くなると自然酸化膜厚さが厚くなっていることが分かる。したがって、S4の洗浄時間を調整することでS3のSC1洗浄で薄くなった自然酸化膜を所定の範囲内で厚くすることができることがわかる。
【0039】
予め、S1,S2,S3洗浄後のシリコンウェーハのように自然酸化膜が形成されたシリコンウェーハを複数枚用意し、S4のオゾン水洗浄する時間を変えて洗浄し、洗浄時間とオゾン水洗浄で増加する自然酸化膜厚さとの相関関係を調査し求めておき、この相関関係に基づいて目的の厚さとなるS4の洗浄時間を設定することも好ましい。このような相関関係を用いることで、より簡便に洗浄時間を設定することができる。
【0040】
さらに、相関関係に基づいて、S2の第2洗浄工程で形成された自然酸化膜の厚さと同等の自然酸化膜厚さとなるように、第4洗浄工程の洗浄時間を設定することもできる。これにより、SC1洗浄(S3)によるエッチングで薄くなった自然酸化膜厚を、SC1洗浄前と同等の厚さとすることができる。
【0041】
図3は、図2に示したシリコンウェーハと同じ水準のウェーハを用い、狙い厚さ5.1nmで熱酸化した後の酸化膜厚さを示している。各水準間で比較すると、自然酸化膜が最も薄いS1,S2,S3洗浄水準のものは熱酸化膜の厚さも最も薄く、自然酸化膜が最も厚いS1,S2,S3,S4洗浄水準のうちのS4におけるオゾン水洗浄時間を30分とした水準のものでは、熱酸化膜の厚さも最も厚くなることがわかる。また、図3から、例えば狙いの熱酸化膜厚さを5.09nmとする場合は、S4のオゾン洗浄時間を3分に設定することで達成することができる。また、例えば酸化膜の電気特性をより良好にするために、S4の洗浄時間を12分にすると、S1,S2洗浄水準のものと同等の自然酸化膜厚さ(図2)とすることができ、その結果、S1,S2洗浄水準のものと同等の熱酸化膜厚さ(図3)とすることもできる。このように、本発明の洗浄方法を用いることで自然酸化膜の厚さを所定の範囲内に精度よく制御することができる。
【0042】
[自然酸化膜付きシリコンウェーハの製造方法]
上記のような本発明に係るシリコンウェーハの洗浄方法により、所望の自然酸化膜厚さを有し、パーティクルレベルが低く良質な自然酸化膜が形成された自然酸化膜付きシリコンウェーハを製造することができる。
【実施例0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0044】
(実施例)
研磨後のシリコンウェーハを用意した。用意したシリコンウェーハをHF洗浄し(S1)、その後オゾン水洗浄(S2)を行い、さらにSC1洗浄(S3)を行った後、最後にオゾン水洗浄(S4)を行った(実施例1,3,5,7)。また、S3のSC1洗浄後にSC2洗浄を行った後、S4のオゾン水洗浄を行う水準(実施例2,4,6,8)も用意した。
【0045】
S1のHF洗浄は、HF濃度が0.5重量%で、洗浄時間は3分とした。S2のオゾン洗浄は、オゾン濃度が20ppmで、洗浄時間を3分とした。S3のSC1洗浄は、アンモニア水(28重量%):過酸化水素水(30重量%):水を1:1:10の混合液とし、液温70℃、洗浄時間を3分とした。SC2洗浄は、塩酸:過酸化水素:水を1:1:100の混合液とし、洗浄時間を3分とした。S4のオゾン洗浄は、オゾン濃度が20ppmで、洗浄時間を3、6、12、30分とした。洗浄後のウェーハ表面のパーティクル品質をKLA製パーティクルカウンターSP5の19nm以上の粒径で評価し、自然酸化膜厚さをJ.A.Woollam社製分光エリプソメトリーM-2000Vで評価した。
【0046】
表1に、実施例におけるウェーハの洗浄条件、自然酸化膜厚さ、パーティクル個数を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
初めにSC2の有無の影響を比較すると、実施例1と2、実施例3と4、実施例5と6、実施例7と8の対比から明らかなように、パーティクル品質と自然酸化膜の品質(自然酸化膜厚さ)は同等であった。したがって、SC2洗浄はパーティクル品質、自然酸化膜の品質に影響を与えないことから、シリコンウェーハ表面の金属濃度をより低減したい場合にSC2洗浄を行うことができることがわかる。
【0049】
パーティクル品質について、検出されたパーティクル個数は15~23pcsとなり、後述するHF洗浄を行わない水準(比較例1)の72pcsと比較すると良好であった。S1のHF洗浄とS3のSC1洗浄の両方を行ったことで、パーティクル品質が良好になったと考えられる。自然酸化膜はS4のオゾン洗浄時間が長いほど厚くなり、S4のオゾン洗浄時間で自然酸化膜厚さを精度高く制御できることがわかる。
【0050】
また、S4のオゾン水洗浄の時間を、3分(実施例1,2)から12分(実施例5,6)としたことによる自然酸化膜の厚膜化量は、実施例1,5から1.199-1.128=0.072nm、実施例2,6から1.203-1.129=0.074nmだった。
【0051】
(比較例1)
比較例1では、実施例と同じ研磨後のシリコンウェーハを用意してSC1とSC2洗浄を行った後、オゾン水洗浄を行った。SC1、SC2は実施例と同条件で、オゾン水洗浄は実施例のS2と同条件の濃度20ppmで3分とした。実施例と同様に、洗浄後のウェーハのパーティクル品質をパーティクルカウンターで評価し、自然酸化膜厚さを分光エリプソメトリーで評価した。
【0052】
表2に、比較例におけるウェーハの洗浄条件、自然酸化膜厚さ、パーティクル個数を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、比較例1におけるパーティクル品質は72pcsと、実施例1~8よりも多かった。比較例1では、HF洗浄を行わず、SC1洗浄のみを行ったためである。自然酸化膜厚さは実施例1,2と同等になった。これはオゾン水洗浄時間が実施例1,2のS4と同じためである。
【0055】
(比較例2,3)
比較例2,3では、用意したシリコンウェーハをHF洗浄(S1)し、その後オゾン水洗浄(S2)を3分(比較例2)及び12分(比較例3)行い、さらにSC1洗浄(S3)とSC2洗浄を行った。HF洗浄、SC1洗浄、SC2洗浄は実施例と同条件である。この結果、表2に示すように、得られた自然酸化膜のパーティクル品質は実施例と同等であった。一方、自然酸化膜厚さは、S2のオゾン洗浄時間を3分とした比較例2で1.022nm、12分とした比較例3で1.034nmとなり、厚膜化量(1.034-1.022=0.012nm)は、上述の実施例1,5及び実施例2,6で得た厚膜化量(0.072nm,0.074nm)と比較して非常に小さかった。したがって、比較例2,3のような方法では、自然酸化膜厚さを適切に制御することはできない。
【0056】
(比較例4,5)
比較例4,5では、シリコンウェーハをSC1洗浄した後、HF洗浄を行い、オゾン水洗浄を3分(比較例4)及び12分(比較例5)行った。SC1洗浄とHF洗浄は実施例と同条件である。表2に示すように、パーティクル品質は比較例4で25pcs、比較例5で24pcsとなり実施例と同等であった。一方、自然酸化膜厚さは、オゾン洗浄時間を3分とした比較例4で1.201nm、12分とした比較例5で1.213nmとなり、厚膜化量(1.213-1.201=0.012nm)は、上述の実施例1,5及び実施例2,6で得た厚膜化量(0.072nm,0.074nm)と比較して非常に小さかった。したがって、比較例4,5のような方法では、自然酸化膜厚さを適切に制御することはできない。
【0057】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、パーティクルの品質を向上しつつ、自然酸化膜厚さを高い再現性でかつ精度高く制御することができることがわかった。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
(比較例4,5)
比較例4,5では、シリコンウェーハをSC1洗浄した後、HF洗浄を行い、オゾン水洗浄を3分(比較例4)及び12分(比較例5)行った。SC1洗浄とHF洗浄は実施例と同条件である。表2に示すように、パーティクル品質は比較例4で25pcs、比較例5で21pcsとなり実施例と同等であった。一方、自然酸化膜厚さは、オゾン洗浄時間を3分とした比較例4で1.201nm、12分とした比較例5で1.213nmとなり、厚膜化量(1.213-1.201=0.012nm)は、上述の実施例1,5及び実施例2,6で得た厚膜化量(0.072nm,0.074nm)と比較して非常に小さかった。したがって、比較例4,5のような方法では、自然酸化膜厚さを適切に制御することはできない。