(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163202
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ストリップ包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 75/30 20060101AFI20221018BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221018BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B65D75/30 A
B65D65/40 D
B65D75/34
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129874
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2018004132の分割
【原出願日】2018-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大
(72)【発明者】
【氏名】美尾 篤
(72)【発明者】
【氏名】古川 秀一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
(57)【要約】
【課題】PTP包装と同様に蓋材を容易に突き破って収容物を取り出すことができ、その際に収容物の変形や潰れの発生がなく、また、取り出す際に強い力を必要としないストリップ包装体を提供する。
【解決手段】収容物16の両側に包装材料11,12が配置され、収容物16の周囲において包装材料11,12がシールされてなるシール部14に囲まれた収容室15が複数形成され、各収容室15に収容物16が1個ずつ個包装されたストリップ包装体10であって、収容物10の片側の包装材料12が金属箔からなり、反対側の包装材料11が、少なくとも基材層と、シール部14においてシールされるシーラント層とを含む総厚みが150μm未満の積層フィルム11からなり、かつ、積層フィルム11が、収容室15に収容物16を収容できる形状に成形された成形部13を有し、成形部13の深さdが1~6mm、成形部13の幅Wが10~30mmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物の両側に包装材料が配置され、前記収容物の周囲において前記包装材料がシールされてなるシール部に囲まれた収容室が複数形成され、各収容室に前記収容物が1個ずつ個包装されたストリップ包装体であって、
前記収容物の片側の包装材料が、金属箔からなり、
前記片側の包装材料と対向する反対側の包装材料が、少なくとも基材層と、前記シール部においてシールされるシーラント層とを含む積層フィルムからなり、前記積層フィルムの総厚みが150μm未満であり、かつ、前記積層フィルムが、前記収容室に前記収容物を収容できる形状に成形された成形部を有し、前記成形部の深さdが1~6mm、前記成形部の幅Wが10~30mmであることを特徴とするストリップ包装体。
【請求項2】
前記成形部の形状が、凸状であることを特徴とする請求項1に記載のストリップ包装体。
【請求項3】
前記成形部が、圧空成形、真空成形または深絞り成形により成形されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のストリップ包装体。
【請求項4】
前記成形部の深さdに対して、前記成形部の幅Wが、W×0.01≦d≦W×0.50の範囲であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のストリップ包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップ包装体に関し、更に詳しくは、主に医薬品などの錠剤を包装するストリップ包装体において、収容物を取り出す際の開封が容易で、かつ、収容物の変形や潰れの発生を防止するストリップ包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品などの錠剤やカプセル等の個包装には、主に、ストリップ包装またはPTP(プレス・スルー・パッケージ)と呼ばれる包装形態が採用されている。PTPは、錠剤等を収納するポケットを成形する側の材料に比較的厚みのあるプラスチックシートを使用し、ポケット開口部を封止する蓋材にはアルミニウム箔を主体とする薄い積層材を用いている。このため、PTPによる包装体には剛性があり、錠剤等の収容物の保護性に優れると共に、収容物を取り出す際にはポケット側から蓋材側に押すことにより収容物の押圧で容易に蓋材を突き破って収容物を取り出すことができる。
【0003】
これに対してストリップ包装は、一般的に包装材料がPTPよりも薄い積層フィルムであり、PTP包装と比較して剛性が低く容易に変形する。このため、ストリップ包装体は、収容物を取り出す際の開封方法として、例えば、周囲のヒートシール部の外側端部にノッチや微細な傷痕群、あるいは、ぎざぎざの切断端などを設け、そこから積層フィルムを引き裂いて開封する方法を採用していた。この場合、開封自体は比較的容易であるが、開口部が大きくなりやすく、また、引き裂き位置が安定しにくいため、錠剤などの収容物が飛び出し、汚したり、紛失したりする問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、収容物の取り出しにフィルムを引き裂くのではなく、収容物を包装フィルムの外側から指先で押し出して簡単に取り出すことができるようにしたストリップ包装が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3035529号公報
【特許文献2】特開2008-201437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のストリップ包装用フィルムは、シーラント層を除く表面のフィルム全面に多数の孔を設けているので、錠剤などの収容物を取り出す際のフィルムの突き破りは容易になるが、包装体としての防湿性の低下が大きくなる問題があった。
また、特許文献2に記載のストリップ包装体は、収容物と重なる位置にハーフカット線が設けられているので、収容物をハーフカット線の位置に合わせて押し出す必要がある。このため、押し出し方によっては、取り出しが困難であるほか収容物の潰れや欠け、変形などを生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたものであり、その課題は、医薬品等の錠剤などを包装するストリップ包装体において、PTP包装と同様に蓋材を容易に突き破って収容物を取り出すことができ、その際に収容物の変形や潰れの発生がなく、また、取り出す際に強い力を必要としないストリップ包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。
すなわち、第1の発明は、収容物の両側に包装材料が配置され、前記収容物の周囲において前記包装材料がシールされてなるシール部に囲まれた収容室が複数形成され、各収容室に前記収容物が1個ずつ個包装されたストリップ包装体であって、前記収容物の片側の包装材料が、金属箔からなり、前記片側の包装材料と対向する反対側の包装材料が、少なくとも基材層と、前記シール部においてシールされるシーラント層とを含む積層フィルムからなり、かつ、前記積層フィルムが、前記収容室に前記収容物を収容できる形状に成形された成形部を有することを特徴とするストリップ包装体を提供する。
【0009】
第2の発明では、前記成形部の形状が、凸状である。
第3の発明では、前記成形部が、圧空成形、真空成形または深絞り成形により成形されてなる。
第4の発明では、前記片側の包装材料を構成する金属箔が、前記積層フィルムとシールされる側にヒートシール剤を有する。
第5の発明では、前記成形部の深さdに対して、前記成形部の幅Wが、W×0.01≦d≦W×0.50の範囲である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収容物の取り出しがPTP包装と同様に金属箔を容易に突き破って取り出すことができ、その際に収容物の変形や潰れの発生がなく、また、取り出す際に強い力を必要としないストリップ包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のストリップ包装体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明のストリップ包装体の一実施形態を示す断面図である。
図2は、一方の包装材料となる積層フィルムの一例を示す断面図である。
図3は、他方の包装材料となる金属箔の一例を示す断面図である。なお、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの図面の内容に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態のストリップ包装体10は、
図1に示すように、収容物16の両側を包装材料11,12で挟み、個々の収容物16の周囲をシール部14で封止して包装したものである。収容物16を収容する収容室15が、所定の間隔をおいて複数配置されている。特に図示しないが、ストリップ包装体10の平面視において、収容室15が縦と横にそれぞれ複数並列されてもよい。
【0014】
収容物16は、例えば錠剤やカプセル剤等の固形物である。シール部14は、個々の収容物16が収容される収容室15を区画している。各収容室15には収容物16が1個ずつ収容されている。なお、収容物16の個数は、硬カプセル剤のようにボディーからキャップを取り外すことができる場合でも、収容室15内で一体性が保たれる限り、1個とする。
【0015】
収容室15の平面形状は、特に限定されず、例えば円形、楕円形、四角形、六角形、多角形等が挙げられる。収容室15の平面形状が収容物16の輪郭形状と略相似となるように合わせてもよい。
【0016】
積層フィルム11は、少なくとも基材層11cと、シール部14においてシールされるシーラント層11aとを含む。積層フィルム11が、基材層11cとシーラント層11aの2層から構成されてもよい。シーラント層11aと基材層11cとの間に金属箔11b等の中間層が積層されて、3層以上の構成でもよい。
【0017】
基材層11cとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムなどの二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレン(PP)フィルム、二軸延伸ナイロン(Ny)フィルムなどの樹脂フィルムを基材フィルムとして使用することができる。この他、防湿セロハン、紙、合成紙などの基材を基材層11cに使用することができる。
【0018】
シーラント層11aは、包装体のシール部14を形成する際のシール面となり、収容室15においては収容物16と接触する。例えば、基材層11c側の合わせ面にアンカーコート層を塗工した後に、シーラント樹脂を押出ラミネートする方法、またはシーラント樹脂フィルムをサンドラミネートする方法、もしくは基材層11c側の合わせ面に接着剤層を塗工した後にシーラント樹脂フィルムを貼り合わせるドライラミネート工法等により形成することができる。
【0019】
このようなシーラント層11aに使用されるシーラント樹脂としては、例えば、高圧法等による低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリエチレン(PE)系樹脂が挙げられる。シーラント樹脂として、ポリプロピレン(PP)系樹脂を採用することもできる。シーラント層11aの厚みは、5~50μmの範囲が好ましく、20~40μmの範囲が更に好ましい。
【0020】
積層フィルム11に積層される金属箔11bとしてはアルミニウム箔、アルミニウム合金箔等が挙げられる。金属箔11bと基材層11cとの間には、ポリエチレン、酸変性ポリエチレン等の樹脂層を設けてもよい。
【0021】
ストリップ包装体10を構成する積層フィルム11を、外側に基材層11c、内側にシーラント層のシーラント層11aが順に積層された構成としているので、基材層11cにより必要な各種機械的強度や印刷適性が付与される。収容物16の性質から遮光性や水蒸気、酸素バリヤー性が必要な場合には、中間層にアルミニウム箔等の金属箔11bを配置することにより、優れたガスバリヤー性、防湿性、遮光性が付与され、収容物16の保存性が高められる。また、シーラント層11aにより優れたヒートシール性が付与される。
【0022】
収容物16の両側に配置される包装材料11,12のうち片側の包装材料12が、金属箔からなる。具体的には、
図3に示すように、金属箔12aの片面にヒートシール剤12bを有してもよい。この場合、シーラント層11aにヒートシール剤12bを対向させてヒートシールすることにより、シール部14の接着力を増大させることができる。シーラント層11aを構成するシーラント樹脂が、酸変性樹脂のように金属箔12aに対する接着性が高い樹脂である場合、ヒートシール剤12bを省略することも可能である。
【0023】
片側の包装材料12が、金属箔12aからなることにより、収容物16の取り出しがPTP包装と同様に金属箔12aを容易に突き破って取り出すことができる。また、取り出しの際に収容物16の変形や潰れの発生がなく、また、取り出す際に強い力を必要としないストリップ包装体を提供することができる。金属箔12aの厚さは、特に限定されないが、例えば20~40μmが挙げられる。
【0024】
片側の包装材料12に積層される金属箔12aとしてはアルミニウム箔、アルミニウム合金箔等が挙げられる。金属箔12aは突き破りが容易なので、特許文献1,2に記載されるような孔やハーフカット線などを設ける必要がない。金属箔12aにヒートシール剤12bを設ける場合、ヒートシール剤層の厚さは、金属箔12aの突き破り性を損なわない程度に薄いことが好ましい。ヒートシール剤12bの厚さとして、例えば10μm以下、1~2μm程度が挙げられる。
【0025】
ヒートシール剤12bは、シール部14に対応する位置にのみパターン状に設けられてもよいが、収容室15に対応する位置を含めた金属箔12aの全面に塗布されてもよい。ヒートシール剤12bとしては、ポリエチレンや酸変性ポリエチレン等の接着性樹脂が挙げられる。ヒートシール剤12bの塗布には、接着性樹脂を溶剤等に分散させた塗液を用いてもよい。
【0026】
積層フィルム11は、収容室15に収容物16を収容できる形状に成形された成形部13を有する。これにより、片側の包装材料12が突き破り容易な金属箔12aから構成されていて、保管や輸送の際に振動等で収容物16が片側の包装材料12に接触しても、金属箔12aが破れにくくなる。この観点から、成形部13の深さをdとし、収容物16の厚さをtとするとき、成形部13の深さdが収容物16の厚さt以上であることが好ましい。成形部13の深さdとしては、例えば3~6mmが挙げられる。
【0027】
成形部13が形成される積層フィルム11の総厚みは、従来のPTP包装においてポケットが成形するシートよりも薄くされる。具体的には、積層フィルム11の総厚みが150μm未満であり、例えば、80μm程度、100μm程度、120μm程度等が挙げられる。積層フィルム11が薄いので、PTP包装で用いられるシートよりも剛性が低く、収容物16の押し出しが容易になる。また、ストリップ包装体10を1個または少数の収容室15ごとに切り分けたときも、積層フィルム11の切断端が柔らかく、人体に触れても傷付きを抑制できる。
【0028】
成形部13の幅Wは、収容物16の径Dよりも大きい。ここで、幅W及び径Dは、片側の包装材料12の面に沿った最大寸法である。平面形状が円形の場合は、円の直径に相当する。平面形状が矩形(四角形)の場合は、一般に対角線の長さである。例えば、収容物16の径Dが5~8mmの場合、成形部13の幅Wとして15~25mm程度が例示される。
【0029】
収容物16の径Dに対して、成形部13の幅Wが十分に大きい場合、収容室15に収容物16を収容した後にシール部14をヒートシールするときに、熱が収容物16に影響しにくくなり、好ましい。例えば、径Dに対して幅Wが2倍以上としてもよい。収容室15ごとに収容物16が1個ずつ個包装されているので、収容室15内で収容物16の振動や衝突などが抑制される。
【0030】
成形部13の深さdに対して、成形部13の幅Wが、W×0.01≦d≦W×0.50の範囲であることが好ましく、W×0.03≦d≦W×0.45の範囲であることがより好ましく、W×0.05≦d≦W×0.40の範囲であることがさらに好ましい。例えば、成形部13の深さdが1~6mm程度、より好ましくは3~6mm程度である場合に、成形部13の幅Wが10~30mm程度、より好ましくは15~25mm程度が好ましい。成形部13の幅Wが大きいと、ストリップ包装体10をシール部14において収容室15ごとに切り分けても小さくなりにくいので、紛失や誤飲などを抑制することができる。
【0031】
成形部13は、圧空成形、真空成形または深絞り成形により成形することができる。積層フィルム11は、シーラント層11a、金属箔11b、基材層11c等の塑性変形により、収容物16が成形部13に収容されない状態でも形状を維持することができる。成形部13の形状は、シール部14から離れるほど、片側の包装材料12からの垂直距離が増大するような凸状であることが好ましい。成形部13の具体的な形状としては、半球状または球面の一部となる形状が好ましい。
【0032】
圧空成形の場合は、積層フィルム11の片側に型を設け、型の反対側を加圧することにより、積層フィルム11を型の表面に密着させ、成形部13を形成することができる。真空成形の場合は、積層フィルム11の片側に型を設け、型の内側を減圧することにより、積層フィルム11を型の表面に密着させ、成形部13を形成することができる。深絞り成形の場合は、積層フィルム11の片側に凸状の型を、反対側の凹状の型を設けて、凸状の型と凹状の型を積層フィルム11に接触させることにより、型の間で積層フィルム11を変形させることができる。
【0033】
いずれの成形方法においても、成形部13の成形前から成形中には積層フィルム11が変形しやすいように積層フィルム11を加熱し、成形後には成形部13の形状が安定するように積層フィルム11を冷却することが好ましい。成形部13は、通常のストリップ包装体において積層フィルム11の弾性変形のみで変形しているのとは異なり、弾性的に復元しないように変形されている。このため、収容物16を収容しても、収容物16を介して片側の包装材料12に押圧力が作用しない。
【0034】
積層フィルム11において、シール部14から成形部13が屈曲される角度θは、シール部14の垂線と成形部13の接線との成す角度として、5°以上が好ましく、例えば5~10°程度が挙げられる。これにより、積層フィルム11が薄くても、屈曲部における破断を抑制することができる。屈曲角度θが大きすぎると、成形部13の成形時に積層フィルム11に生じる歪みが小さいため、成形性が悪くなりやすい。
【0035】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…ストリップ包装体、11…積層フィルム(包装材料)、11a…シーラント層、11b…金属箔、11c…基材層、12…片側の包装材料、12a…金属箔、12b…ヒートシール剤、13…成形部、14…シール部、15…収容室、16…収容物。